(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374017
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】半導体レーザ発振器
(51)【国際特許分類】
H01S 5/065 20060101AFI20180806BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20180806BHJP
H01S 5/022 20060101ALI20180806BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20180806BHJP
【FI】
H01S5/065
H01S5/40
H01S5/022
B23K26/00 N
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-554076(P2016-554076)
(86)(22)【出願日】2015年10月13日
(86)【国際出願番号】JP2015078877
(87)【国際公開番号】WO2016060103
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-210491(P2014-210491)
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(73)【特許権者】
【識別番号】515288122
【氏名又は名称】ルーメンタム オペレーションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lumentum Operations LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】臼田 かおり
(72)【発明者】
【氏名】緒方 稔
【審査官】
百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2683158(JP,B2)
【文献】
国際公開第2014/133013(WO,A1)
【文献】
特開2013−233556(JP,A)
【文献】
特開2014−104479(JP,A)
【文献】
特開2013−197371(JP,A)
【文献】
特開2010−263063(JP,A)
【文献】
特開2012−174720(JP,A)
【文献】
特開2002−335042(JP,A)
【文献】
特開2001−284732(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0190218(US,A1)
【文献】
特表2013−521666(JP,A)
【文献】
米国特許第4439861(US,A)
【文献】
米国特許第5729568(US,A)
【文献】
米国特許第8428092(US,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0026573(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0030983(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0033590(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0019010(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0103088(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0213238(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のレーザダイオードが1つのバンクを構成し、並列に接続された複数のバンクを有するダイオードユニットを備え、
前記ダイオードユニットは、前記複数のレーザダイオードそれぞれが射出するレーザを外部共振器とグレーティングとによって波長ロックし、スペクトルビーム結合させる機構を有し、
前記複数のバンクそれぞれのレーザダイオードへの入力電流を、入力電流に応じて波長がロックされる効率である波長ロック効率の特性に対応させて個別に制御して、前記ダイオードユニット全体の出力を要求される出力に制御する制御部をさらに備える
ことを特徴とする半導体レーザ発振器。
【請求項2】
レーザダイオードがシングルエミッタのレーザダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ発振器。
【請求項3】
レーザダイオードがシングルエミッタのレーザダイオードを複数空間結合したレーザダイオードモジュールであることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ発振器。
【請求項4】
レーザダイオードがダイオードレーザバーであることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ発振器。
【請求項5】
レーザダイオードがダイオードレーザバーを複数空間結合したレーザダイオードモジュールであることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ発振器。
【請求項6】
前記複数のバンクは、入力電流が0から所定の値までの低電流時の波長ロック効率が第1の状態である第1のバンクと、前記低電流時の波長ロック効率が前記第1の状態よりも低い第2の状態である第2のバンクとを少なくとも含み、
前記制御部は、前記第2のバンクの出力を、前記ダイオードユニット全体に要求される出力が0から所定の値まで0とするよう制御する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体レーザ発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザを射出する半導体レーザ発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザ発振器は固体レーザやファイバレーザの励起用途に多く利用されてきており、高輝度化の達成により直接加工に用いるダイレクトダイオードレーザ(DDL)の加工機が普及している。DDL発振器として、高出力のシングルエミッタのレーザダイオードを複数使用した発振器がある。このDDL発振器は、複数の波長のそれぞれにロックさせスペクトルビーム結合したレーザを射出する。
【0003】
シングルエミッタのレーザダイオードから構成されるDDL発振器では、複数のレーザダイオードを複数のバンクに分割し、バングごとに同じ電流値が流れるように制御するのが一般的である。1つのバンクには、例えば30〜40個のレーザダイオードが直列に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−174720号公報
【発明の概要】
【0005】
DDL発振器においては、スペクトルビームを結合させることにより、高出力・高輝度を達成している。複数の波長のレーザのスペクトルビーム結合を実現させるためには、各波長のスペクトルを狭帯域とする必要がある。そこで、DDL発振器は、外部共振器によって、レーザを複数の所望の波長にロックさせる。
【0006】
このとき、波長ロック効率が高いほど効率的にスペクトルビーム結合させることができ、高効率なレーザ出力が得られる。波長ロック効率を高くするためには、各ロック波長に近い発振をする最適なレーザダイオードの材料を選定する必要がある。しかしながら、全てのロック波長ごとに材料を異ならせてレーザダイオードを製作することは現実的には不可能である。
【0007】
そこで、複数種類の材料によって製作されたレーザダイオードを、少なくとも高出力時に波長ロック効率が高くなるように、各ロック波長に対して振り分けるのが一般的である。
【0008】
レーザダイオードは射出するレーザの波長が1℃の温度上昇で0.25〜0.3nm程度長波長側へシフトする特性がある。よって、レーザダイオードの出力を上げると発熱量が増えて温度上昇するため、射出するレーザの波長は長波長側へシフトする。従って、高出力時に合わせて波長調整された材料は、高出力で波長ロック効率が高いものでも低出力時には波長が低波長
側へシフトするため高い波長ロック効率を維持することが困難な場合がある。
【0009】
波長ロックしていない通常のレーザダイオードの入力電流に対するレーザ出力は直線となる。しかし、レーザダイオードに高電流を流して高出力化すればするほど、低出力時との温度差が大きくなり波長シフト量も大きくなって波長ロックすると低出力時の効率が低くなりがちである。こ
のような理由によりDDL発振器における各バンクのレーザダイオードへの入力電流に対するレーザ出力との関係は直線とはならず、低出力時は下に凸の曲線状の特性となってしまう。
【0010】
波長ロック効率が低く、ロック波長以外の波長で発振したレーザは、本来の光軸から外れて射出すべきレーザのロスを増大させる。すると、そのロスが、半導体レーザ発振器の内部の発熱や伝送ファイバ入射部の局部的発熱を発生させる。よって、半導体レーザ発振器の性能を最大限に発揮することができない。
【0011】
実施形態は、波長ロックしてスペクトルビーム結合した半導体レーザ発振器において、低出力時においても高効率な波長ロックを維持できる半導体レーザ発振器を提供することを目的とする。
【0012】
実施形態の一態様によれば、直列に接続された複数のレーザダイオードが1つのバンクを構成し、
並列に接続された複数のバンク
を有するダイオードユニットを備え、前記ダイオードユニットは、
前記複数のレーザダイオードそれぞれが射出するレーザを外部共振器とグレーティングとによって波長ロックし、スペクトルビーム結合させる機構を有し、前記複数のバンクそれぞれのレーザダイオードへの入力電流を
、入力電流に応じて波長がロックされる効率である波長ロック効率の特性に対応させて個別に制御して、前記ダイオードユニット全体の出力を要求される出力に制御する制御部をさらに備えることを特徴とする半導体レーザ発振器が提供される。
【0013】
実施形態の半導体レーザ発振器によれば、波長ロックしてスペクトルビーム結合した半導体レーザ発振器において、低出力時においても高効率な波長ロックを維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態の半導体レーザ発振器を備えるレーザ加工機の全体的な構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の半導体レーザ発振器を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2中のDDLユニットの具体的な構成を示す概念図である。
【
図4】
図4は、
図2中のDDLユニットに設定されているバンクを説明するための図である。
【
図5】
図5は、レーザの波長の違いによって波長ロック効率の特性が異なることを説明するための図である。
【
図6】
図6は、一般的な入力電流とレーザパワーとの関係を示すDDLの特性図である。
【
図7】
図7は、一実施形態における指令出力値に対する各バンクへの入力電流とレーザ出力及びDDLユニット出力(バンク合計レーザ出力)の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態の半導体レーザ発振器について、添付図面を参照して説明する。まず、一実施形態の半導体レーザ発振器を備えるレーザ加工機の全体的な構成及び動作を説明する。
【0016】
図1に示すレーザ加工機100は、レーザによって被加工材を切断加工するレーザ切断加工機である場合を例とする。レーザ加工機は、レーザによって被加工材を溶接加工するレーザ溶接加工機、レーザによって被加工材の表面を改質する表面改質装置、レーザによって被加工材にマーキングするマーキング装置であってもよい。
【0017】
レーザ加工機100は、レーザLBを生成して射出するレーザ発振器11と、レーザ加工ユニット15と、レーザLBをレーザ加工ユニット15へと伝送するプロセスファイバ12とを備える。
【0018】
レーザ発振器11は、一例としてDDL発振器である。以下、DDL発振器11と称する。DDL発振器11の具体的構成及び動作については後に詳述する。レーザ発振器11は波長ロック機構を有していればよく、DDL発振器に限定されない。
【0019】
プロセスファイバ12は、レーザ加工ユニット15に配置されたX軸及びY軸のケーブルダクト(図示せず)に沿って装着されている。
【0020】
レーザ加工ユニット15は、被加工材Wを載せる加工テーブル21と、加工テーブル21上でX軸方向に移動自在である門型のX軸キャリッジ22と、X軸キャリッジ22上でX軸に垂直なY軸方向に移動自在であるY軸キャリッジ23とを有する。また、レーザ加工ユニット15は、Y軸キャリッジ23に固定されたコリメータユニット29を有する。
【0021】
コリメータユニット29は、プロセスファイバ12の出力端から射出されたレーザLBを略平行光束とするコリメートレンズ28と、略平行光束に変換されたレーザLBをX軸及びY軸に垂直なZ軸方向下方に向けて反射させるベンドミラー25とを有する。また、コリメータユニット29は、ベンドミラー25で反射したレーザLBを集光させる集光レンズ27と、加工ヘッド26とを有する。
【0022】
コリメートレンズ28、ベンドミラー25、集光レンズ27、加工ヘッド26は、予め光軸が調整された状態でコリメータユニット29内に固定されている。焦点位置を補正するために、コリメートレンズ28がX軸方向に移動するように構成されていてもよい。
【0023】
コリメータユニット29は、Y軸方向に移動自在のY軸キャリッジ23に固定され、Y軸キャリッジ23は、X軸方向に移動自在のX軸キャリッジ22に設けられている。よって、レーザ加工ユニット15は、加工ヘッド26から射出されるレーザLBを被加工材Wに照射する位置を、X軸方向及びY軸方向に移動させることができる。
【0024】
以上の構成によって、レーザ加工機100は、DDL発振器11より射出されたレーザLBをプロセスファイバ12によってレーザ加工ユニット15へと伝送させ、高エネルギ密度の状態で被加工材Wに照射して被加工材Wを切断加工することができる。
【0025】
なお、被加工材Wを切断加工するとき、被加工材Wには溶融物を除去するためのアシストガスが噴射される。
図1では、アシストガスを噴射する構成については図示を省略している。
【0026】
次に、
図2〜
図4を用いて、DDL発振器11の具体的な構成及び動作を説明する。
図2に示すように、DDL発振器11は、DDLユニット11u1〜11unのn個のDDLユニットと、DDLユニット11u1〜11unそれぞれより射出されたレーザを空間ビーム結合させるコンバイナ112とを有する。DDLユニット11u1〜11unは、ダイオードユニットの一例である。
【0027】
また、DDL発振器11は、DDLユニット11u1〜11unに電力を供給する電力供給部113と、DDL発振器11を制御する制御部114とを有する。電力供給部113は電力供給回路によって構成することができる。制御部114はマイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0028】
DDLユニット11u1〜11unのうちのいずれかを特定しないDDLユニットをDDLユニット11uと称することとする。DDLユニット11uの個数nは1以上であり、射出するレーザLBの必要とする出力に応じて適宜設定すればよい。なお、DDLユニット11uが1個の場合は、コンバイナを必要としない。
【0029】
DDLユニット11uは、具体的に、
図3に示すように構成される。DDLユニット11uは、レーザダイオードモジュールUm1〜Umnのn個のレーザダイオードモジュールを有する。
【0030】
レーザダイオードモジュールUm1〜Umnのうちのいずれかを特定しないレーザダイオードモジュールをレーザダイオードモジュールUmと称することとする。レーザダイオードモジュールUmの個数nも適宜設定すればよい。
【0031】
それぞれのレーザダイオードモジュールUmは、複数のレーザダイオードが直列に接続されて構成されている。レーザダイオードの個数は例えば14個である。レーザダイオードモジュールUmのそれぞれでロックさせるレーザの波長が異なる。
【0032】
レーザダイオードモジュールUm1〜Umnは、各レーザダイオードが光ファイバUf1〜Ufnの一方の端部に空間結合されている。各レーザダイオードのレーザを射出する側とは反対側の端面には、高反射ミラーが形成されている。光ファイバUf1〜Ufnの他方の端部は、ファイバアレイU11となっている。
【0033】
光ファイバUf1〜Ufnの先端部は、レーザの射出方向と直交する方向に一列に並べられた光ファイバ列となっている。光ファイバ列の先端部の数ミリから十数ミリの範囲が樹脂で例えば円筒状に被覆されて、ファイバアレイU11が構成されている。
【0034】
レーザダイオードモジュールUm1〜Umnより射出されたレーザは、ファイバアレイU11より射出して、コリメートレンズU12によって平行光化されて略平行光束となる。コリメートレンズU12より射出されたそれぞれのレーザは、グレーティングU13に互いに異なる角度で入射して方向が曲げられて、部分反射ミラーU14を介して射出する。
【0035】
このとき、レーザがコリメートレンズU12に入射する位置の違いによって、グレーティングU13への入射角度が決まる。
【0036】
レーザの一部は、部分反射ミラーU14で反射してレーザダイオードモジュールUmの各レーザダイオードへと戻り、高反射ミラーで反射して再び部分反射ミラーU14に入射する。
【0037】
このように、レーザは、レーザダイオードモジュールUm内部の高反射ミラーと部分反射ミラーU14との間で共振する。DDLユニット11uは外部共振器を構成する。高反射ミラー及び部分反射ミラーU14は、外部共振器ミラーを構成する。
【0038】
DDLユニット11uは、レーザを、外部共振器とグレーティングU13とによって波長ロックさせる。グレーティングU13は、波長ロックの機能に加えて、スペクトルビーム結合させる機能を有する。
【0039】
以上の構成及び動作によって、DDLユニット11uからは、複数の波長にロックされた図示のような波長スペクトルSP1を有するレーザが出力される。
【0040】
DDLユニット11uには、並列接続された複数のバンクが設定されている。
図4は、DDLユニット11uに設定されているバンクの構成例を示している。本実施形態においては、DDLユニット11uには、2つのバンクが設定されているとする。バンクの数は3以上であってもよい。
【0041】
図4に示すように、それぞれのバンクには、複数のレーザダイオードモジュールUmが直列に接続されている。
図4では、2つのレーザダイオードモジュールUmを直列接続しているが、3つのレーザダイオードモジュールUmを直列接続してもよい。
【0042】
直列接続するレーザダイオードの数は、電圧制御が容易な例えば50〜75Vの電圧となるような数とするのがよい。それぞれのバンクには、電力供給部113より50〜75Vの電圧が供給され、0〜12Aの電流が流れる。
【0043】
図4に示すバンク1,2で、DDLユニット11uは、波長λ1〜λ4それぞれの波長にロックされたレーザを出力する。なお、
図2におけるDDLユニット11u1〜11unの全体で、例えば波長910nm〜950nmのレーザを出力する。
【0044】
さて、ここで、
図5を用いて、レーザの波長の違いによって波長ロック効率の特性が異なることを説明する。
図5に示すように、波長λ1,λ2は、入力電流が0〜12Aのほぼ全出力領域で波長ロック効率が高い。一方、波長λ3,λ4は、入力電流が0〜4A程度の低出力領域で波長ロック効率が低い。
【0045】
図5に示す波長ロック効率の特性を有するレーザダイオードモジュールUmから構成されたDDLユニット11uに0〜12Aの電流を供給したとき、入力電流に対してレーザ出力は
図6に示すような特性となる。
図6において、一点鎖線は、波長λ1,λ2の波長にロックされたレーザを出力するバンク1における入力電流に対するレーザ出力特性、破線は、波長λ3,λ4の波長にロックされたレーザを出力するバンク2における入力電流に対するレーザ出力特性、実線はDDLユニット11u(バンク1とバンク2の合計)の出力特性を示している。
【0046】
入力電流とレーザパワーとの関係は、二点鎖線で示すように、理想的にはリニアである。しかしながら、一点鎖線で示す特性と破線で示す特性とを合わせることによって、実線で示すように、DDLユニット11u全体としての特性は、下に凸の曲線状となってしまう。
【0047】
そこで、本実施形態においては、バンク1,2を
図7に示すように制御する。上記のように、バンク1には、低出力から高出力まで波長ロック効率が高い波長λ1,λ2が割り当てられており、バンク2には、低出力時に波長ロック効率が低い波長λ3,λ4が割り当てられている。
【0048】
図7に示すように、制御部114は、バンク1に対しては、一点鎖線で示すように、低出力から高出力までレーザパワーを出力させるように、パワーを指令する。詳細には、指令パワー値が0から400W程度まで入力電流をリニアに増加させた後、一旦、入力電流を0とする。指令パワー値が400W程度以降では、入力電流を0から12Aまでリニアに増加させる。
【0049】
制御部114は、バンク2に対しては、破線で示すように、低出力時には出力させるレーザパワーを0とし、中出力以上でレーザパワーを出力させるように、パワーを指令する。詳細には、指令パワー値が0から400W程度まで入力電流を0とする。指令パワー値が400W程度で入力電流を6A程度に上昇させて、それ以降、入力電流を12Aまでリニアに増加させる。
【0050】
制御部114がバンク1,2を
図7に示すように制御することによって、DDLユニット11u全体では、実線で示すように出力させることができ、二点鎖線で示す理想的な特性に近付けた特性とすることができる。
【0051】
以上のように、バンク毎に入力電流制御を行うため、低出力時に波長ロック効率が低くなってしまうものは同じバンクに割り当て、中電流(中出力)以上で制御する。制御部114は、複数のバンクそれぞれのレーザダイオードへの入力電流を、波長ロック効率の特性に対応させて個別に制御する。
【0052】
制御部114は、複数のバンクそれぞれが出力するレーザを合成したレーザパワーが要求される発振器出力となるように、また発振器の全出力領域にて波長ロック効率を高く維持できるように、複数のバンクそれぞれのレーザダイオードへの入力電流を個別に制御すればよい。
【0053】
具体的には、複数のバンクが、入力電流が0から所定の値までの低電流時の波長ロック効率が第1の状態である第1のバンクと、第1の状態よりも波長ロック効率が低い第2の状態である第2のバンクとを少なくとも含むとき、制御部114は次のように制御すればよい。
【0054】
制御部114は、第2のバンクの出力を、DDLユニット11u全体に要求される出力が0から所定の値まで0とするよう制御する。
【0055】
本実施形態の半導体レーザ発振器によれば、発振器出力の低出
力時の波長ロック効率改善が可能となり、併せて電気−光変換効率も高い領域で使用することになるため、低出力時の無駄な電力を削減することができる。
【0056】
また、本実施形態の半導体レーザ発振器によれば、波長ロック効率低下による出力損失が影響する発振器内部の発熱や、伝送ファイバの局部的発熱を防ぎ、発振器出力を安定させてかつ光学部品の破損を防ぐことができる。
【0057】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0058】
レーザダイオードは、一例として、シングルエミッタのレーザダイオードである。レーザダイオードは、シングルエミッタのレーザダイオードを複数空間結合したレーザダイオードモジュールであってもよい。
【0059】
レーザダイオードは、ダイオードレーザバーであってもよい。レーザダイオードは、ダイオードレーザバーを複数空間結合したレーザダイオードモジュールであってもよい。なお、ダイオードレーザバーとは、エミッタが例えば500μm間隔で横に並んだチップである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、レーザを射出する半導体レーザ発振器に利用できる。