特許第6374018号(P6374018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374018
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】3D印刷の彩色
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20180806BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20180806BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20180806BHJP
【FI】
   B29C64/106
   B33Y10/00
   B33Y50/00
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-554660(P2016-554660)
(86)(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公表番号】特表2017-511265(P2017-511265A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】US2015019894
(87)【国際公開番号】WO2015138567
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/978,795
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/950,906
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,マーク アール
(72)【発明者】
【氏名】シェフェルト,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ジュール ダヴリュ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】リー,ドンフーン
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111226(JP,A)
【文献】 特表2006−503735(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/077850(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00−64/40
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面彩色を有する三次元物品を印刷する方法であって、
前記物品の前記表面彩色を表わすデータを受信するステップ、
前記物品の前記表面彩色を表わす前記データを、前記物品のボクセルデータに変換するステップであって、前記ボクセルデータが、前記物品の表面に対して垂直な複数のボクセル列の(a)ロケーション値(b)色値、及び(c)透明度値含むステップ、及び
前記ボクセルデータに従って、基体上に1つ以上の造形材料の層を選択的に堆積して、前記物品を形成するステップ、
を含み、
前記複数のボクセル列の少なくとも1つの列が、該列の複数のボクセルの色の組み合わせに由来する表面色を示し、
前記物品の形成に使用される少なくとも1つの造形材料が、複合インクを含み、該複合インクが、硬化材料を含む光学的に透明又は実質的に光学的に透明なキャリアインク、及び前記複合インクの総重量に基づき、前記キャリアインクに0.01〜5質量%分散された着色剤を含み、
前記キャリアインクが、0.01〜10mmの厚さにおいて、350nm及び750nmの間の波長を有する光の少なくとも70%の透過率の光透過性を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数のボクセル列が、前記物品の前記表面に、前記物品の前記表面彩色に対応する外観をもたらし、前記複数のボクセル列の少なくとも1つの列が、異なる色値及び/又は透明度値を有するボクセルを含む、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記列が、半透明ボクセル及び不透明ボクセル、又は着色ボクセル及び無着色ボクセルを含むことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記複数のボクセル列が、前記物品のカラースキン領域を画成することを特徴とする、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記物品の前記カラースキン領域が、少なくとも2つのボクセルの厚さ、又は2〜32ボクセルの厚さを有することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記物品の前記カラースキン領域が、前記物品の不透明スキン領域、反射スキン領域、又は内部領域の上方に形成されていることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記物品の前記カラースキン領域が、不透明スキン領域の上方に形成され、前記物品の前記不透明スキン領域が、複数の不透明ボクセルで形成されていることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記物品の前記カラースキン領域が、内部領域の上方に形成され、前記内部領域の色が、黒又は白であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の造形材料の層が、前記物品のコンピュータ可読形式の画像に従って堆積されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
隣接する列が、Z方向に異なるボクセルの組合せを有し、前記隣接する列が、同じ表面色を提供することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の相互参照】
【0001】
本出願は、2014年3月11日出願の米国仮特許出願第61/950,906号、及び2014年4月11日出願の米国仮特許出願第61/978,795号の米国特許法第119条に基づく優先権を主張するものであって、各々、参照により、全内容が本明細書に組み込まれたものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は三次元(3D)印刷の方法及び材料に関し、特には、カラー3D物品又は物体を印刷するための方法及び材料に関するものである。
【背景技術】
【0003】
サウスカロライナ州ロックヒルの3Dシステムズ社が製造する、Project(商標)3Dプリンター等の市販の3Dプリンターは、液体としてプリントヘッドを通して吐出される造形材料(場合により、インクとも呼ばれる)を使用して、様々な3D物品や部品を形成する。他の3D印刷システムも、プリントヘッドを通して吐出される造形材料を使用する。一部の例において、造形材料は大気温度において固体であり、高温の吐出温度において液体に変化する。別の例において、造形材料は大気温度において液体である。更に別の3Dプリンターは、液体造形材料又は粉末造形材料の貯留器、桶、又は容器から3D物品又は物体を形成する。一部の例において、バインダー材料、又はレーザー若しくは別のエネルギー源を用いて、段階的に造形材料の層を選択的に固化又は統合して3D物品が形成される。
【0004】
3D印刷システムの造形材料は、1つ以上の着色剤又は顔料を含み、着色印刷部品を形成することができる。しかし、かかる造形材料の多くは、着色印刷部品を形成する上において、必要以上又は所望よりはるかに強く着色する。更に、多くの造形材料において、顔料の存在が、インクの吐出性、安定性、及び/又は硬化性を阻害する可能性がある。加えて、一部の着色造形材料の顔料の添加量によって、異なる色を有する造形材料を適切に硬化させるためには、異なる種類及び/又は量の光開始剤を必要とし、これによって3D印刷工程の効率の低下及び/又はコストの増加を招く恐れがある。
【0005】
更に、従来のカラー3D物品の印刷方法は、物品表面からの深さに応じた色のバリエーションを有する3D物品を提供することができず、3D印刷部品の彩色が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、カラー3D印刷の改良された方法及びカラー3D印刷のための改良された造形材料の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、カラー3D物品の印刷方法が、本明細書に記載されており、一部の実施の形態において、その印刷方法は、従来の一部の3D物品の印刷方法と比較して、1つ以上の利点を提供することができる。例えば、一部の例において、本明細書に記載の方法は、観測される色が、表面平面において、二次元方向(x及びy)にのみディザ又は混合されるような、表面の色ピクセルのみで生成されるものではない、表面彩色を有する3D印刷物品を提供することができる。むしろ、本明細書に記載の方法は、色値及び/又は三次元方向(x、y、及びz)の他の視覚効果(ハーフトーン化又はディザリング等)の組み合わせから生じる表面彩色を有する、3D印刷物品を提供することができる。一部の例において、物品の表面に対して垂直又は実質的に垂直な複数の列に配列されたボクセルを含む、着色ボクセルの薄いシェル又は「スキン」によって、かかる表面彩色を実現することができる。本明細書に記載の方法は、一部の例において、少ない数の異なる着色造形材料のみを使用して、フルカラーの表面彩色を有する3D物品を形成することができる。
【0008】
一部の実施の形態において、本明細書に記載の3D物品の印刷方法は、物品の表面彩色を表わすデータを受信するステップ、及び物品の表面彩色を表わすデータを物品のボクセルデータに変換するステップを備えている。ボクセルデータは、物品の表面に対して垂直又は実質的に垂直な複数のボクセル列の(a)ロケーション値、及び(b)色値と(c)透明度値の少なくとも一方を含んでいる。更に、本方法は、ボクセルデータに従って、基体上に1つ以上の造形材料の層を選択的に堆積して、物品を形成するステップを更に備えている。更に、複数のボクセル列の少なくとも1つが、その列の複数の積み重ねられたボクセルの色の組み合わせに由来する表面色を提示又は提供することができる。更に、一部の実施の形態において、複数のボクセル列の各々が、各々の列内のボクセルの組み合わせに由来する表面色を提示又は提供する。更に、一部の実施の形態において、複数のボクセル列全体で、物品の所望の表面彩色に対応する物品表面の外観がもたらされる。更に、一部の実施の形態において、複数のボクセル列の少なくとも1つが、異なる色値及び/又は異なる透明度値を有するボクセルを含んでいる。
【0009】
更に、一部の実施の形態において、本明細書に記載の方法に従って、物品の形成に使用される少なくとも1つの造形材料が、光学的に透明又は実質的に光学的に透明である。一部の例において、物品の形成に使用される、少なくとも1つの造形材料が、複合インクを含み、複合インクは、硬化材料を含む光学的に透明又は実質的に光学的に透明なキャリアインク、及び複合インクの総重量に基づき、キャリアインクに、約0.01〜5質量%分散された着色剤を含んでいる。別の造形材料も使用することができる。
【0010】
別の態様において、本明細書に3D印刷物品が記載されている。一部の実施の形態において、かかる3D印刷物品は、本明細書に記載の方法によって提供される。従って、一部の例において、本明細書に記載の3D印刷物品は、内部領域及び内部領域の上方に、z方向に配置されたカラースキン領域を有し、カラースキン領域が、物品の表面に対して実質的に垂直な複数のボクセル列によって画成され、複数のボクセル列の少なくとも1つが、そのボクセル列の複数の色の組み合わせに由来する表面の色を提示する。かかる物品の内部領域は、一部の例において、色が黒又は白である。本明細書に記載の物品の内部領域は、不透明、半透明、又は光反射性であってもよい。更に、一部の実施の形態において、複数のボクセル列の少なくとも1つが、異なる色値及び/又は異なる透明度値を有するボクセルを含んでいる。本明細書に記載の物品は、物品のカラースキン領域と内部領域との間のz方向に配置された、不透明スキン領域及び/又は反射スキン領域を含むこともできる。かかる不透明領域は、一部の例において、複数の不透明ボクセルで形成される。同様に、反射スキン領域は、複数の反射ボクセルで形成することができる。
【0011】
更に別の態様において、3Dプリンター及び/又は3D印刷方法に使用される造形材料が本明細書に記載され、一部の実施の形態において、従来の造形材料と比較して、1つ以上の利点を提供することができる。一部の実施の形態において、例えば、本明細書に記載の造形材料は、彩度又は色度が向上した印刷部品を提供する。加えて、一部の例において、本明細書に記載の造形材料は、優れた吐出性及び/又は高いコロイド安定性を有する硬化性インクである。
【0012】
一部の実施の形態において、本明細書に記載の造形材料は複合インクである。複合インクは、一部の例において、硬化性材料を含む光学的に透明又は実質的に透明なキャリアインク、及び複合インクの総重量に基づき、キャリアインクに約0.01〜5質量%分散された着色剤を含んでいる。更に、一部の例において、複合インクの所与の厚さにおける複合インクの彩度は、複合インク中の着色剤の最大彩度の約20%以内である。更に、本明細書に記載の着色剤は粒子顔料又は分子色素であってよい。更に、一部の実施の形態において、本明細書に記載の複合インクのキャリアインクは、約0.01〜10mmの厚さ等、所与のすべての厚さにおいて、350nm〜750nmに対し、少なくとも約70%の透過率、少なくとも約80%の透過率、又は少なくとも約90%の透過率の光透過性を有している。加えて、一部の例において、本明細書に記載の複合インクは、光開始剤、阻害剤、安定剤、増感剤、及びこれ等の組み合わせから成る群より選択される、1つ以上の添加剤を更に含んでいる。
【0013】
これ等及び他の実施の形態について、以下の詳細な説明において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の方法に基づいて形成された、3D印刷物品を示す概略図。
図2】従来の方法に基づいて形成された、3D印刷物品を示す概略図。
図3】本明細書に記載の一部の実施の形態による、3D物品の印刷方法に適切に使用されるルックアップテーブルを示す図。
図4】本明細書に記載の1つの実施の形態による、物品の概略断面図。
図5】本明細書に記載の1つの実施の形態による、物品の概略断面図。
図6】本明細書に記載の1つの実施の形態による、物品の外面のxy概略断面図。
図7】本明細書に記載の1つの実施の形態による、物品の外面のxy概略断面図。
図8】本明細書に記載の一部の実施の形態による、キャリアインクに分散された様々な顔料の彩度対層厚をプロットした図。
図9】本明細書に記載の一部の実施の形態による、キャリアインクに分散された様々な顔料の光学濃度対層厚をプロットした図。
図10】本明細書に記載の一部の実施の形態による、キャリアインクに分散された様々な顔料の明度対層厚をプロットした図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明、実施例、及び図面を参照することにより、本明細書に記載の実施の形態をより容易に理解することができる。しかし、本明細書に記載の要素、装置、及び方法は、詳細な説明、実施例、及び図面に示された特定の実施の形態に限定されるものではない。これ等の実施の形態は、本発明の原理の単なる例示であることを認識されたい。本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、多くの改良及び改作が可能であることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0016】
更に、本明細書に開示のすべての範囲は、その中に含まれるすべての部分範囲を含むと解釈されたい。例えば、記述範囲「1.0〜10.0」は、最小値1.0以上から始まり、最大値10.0以下で終わる、1.0〜5.3、4.7〜10.0、3.6〜7.9等、すべての部分範囲を含むと解釈されたい。
【0017】
また、本明細書に開示のすべての範囲も、別に明示しない限り、範囲の端点を含むと解釈されたい。例えば、範囲「5〜10」は、通常、端点5及び10を含むと解釈されたい。
【0018】
更に、量又は数量に関連して「〜まで」という語句が使用されたとき、当該の量が少なくとも検出可能な量又は数量であると理解されたい。例えば、指定された量「まで」存在する材料は、検出可能な量から指定された量まで、かつ指定量を含む量、存在することができる。
【0019】
「三次元印刷システム」、「三次元プリンター」、「印刷」等の用語は、一般に、選択的堆積、吐出、熱溶解積層法、マルチジェットモデリング、及び造形材料又はインクを使用して、三次元物体を製造する現在当技術分野で周知の若しくは将来周知となるであろう、その他の付加製造技術による、三次元物品又は物体を製造するための様々な固体自由形状製造技術の説明である。
【0020】
I.3D物品の印刷方法
1つの態様において、カラー3D物品の印刷方法が、本明細書に記載されており、一部の実施の形態において、その印刷方法が、従来の一部の3D物品の印刷方法に対し、1つ以上の利点を提供することができる。一部の例において、本明細書に記載の印刷方法は、3Dシステムズ社が製造する、Project3Dプリンター等の印刷システムを用いて実施することができる。しかし、別の3D印刷システムも使用可能であり、本明細書に記載の3D彩色方法は、特定の3D印刷システムの使用に限定されるものではない。
【0021】
前述のように、従来の3Dカラー物品の印刷方法は、物品表面からの深さに応じたボクセルの色の変化を有する3D物品を提供することができず、3D印刷部品の彩色が制限されている。例えば、従来の一部の方法は、深さに応じた色の変化を有さない着色材料の層を形成するステップを含んでいる。更に、かかる層は、多くの場合、単色の不透明な造形材料で形成される。図1及び図2は、このような従来の方法に従って形成された印刷物品の2つの例を示している。図1において、印刷物品(100)は、z方向の深さ(dで示す深さ)が、1つのボクセルのみである、着色ピクセル又はボクセル(図1において、CMYK彩色体系のC、M、Y、及びKで示す)を含んでいる。図2において、印刷物品(200)は3組の着色ボクセル(図2において、各々緑、黒、及びオレンジを表わすG、K、及びOで示す)を含んでいる。着色領域は、z方向の深さが4ボクセル(d)であるが、ボクセル(G、K、O)の色がz方向において変化しない。従来の方法に反し、本開示に記載の方法は、観測される色が、三次元におけるボクセルの色値及び/又は他の視覚効果の組み合わせに由来する、表面彩色を有する3D印刷物品を提供することができる。
【0022】
一部の実施の形態において、かかる方法は、物品の表面彩色を表わすデータを受信するステップ、及び物品の表面彩色を表わすデータを物品のボクセルデータに変換するステップであって、ボクセルデータが、物品の表面に対して垂直又は実質的に垂直な複数のボクセル列の(a)ロケーション値、及び(b)色値と(c)透明度値の少なくとも一方を含む、ステップを備えている。更に、本方法は、ボクセルデータに従って、基体上に1つ以上の造形材料の層を選択的に堆積して、物品を形成するステップを更に備えている。
【0023】
ここで、本明細書に記載の方法の具体的なステップに移ると、本明細書に記載の3D物品の印刷方法は、物品の表面彩色を表わすデータを受信するステップを備えている。本明細書において参考として、物品の「表面彩色」は、表面の色パターン又は色若しくは着色ピクセルの配列であってよい。一部の例において、表面彩色は、特定の色を有する二次元のプロット又はピクセルマップによって記述される。更に、本開示の目的に矛盾しない、任意の色域に基づいて、具体的な色を割り当てることができる。例えば、一部の例において、表面彩色プロットが、RGB、sRGB、CMY、CMYK、L、Pantone(登録商標)彩色体系、又は緑及びオレンジを含む、拡張CMYK彩色体系等、前述の1つ以上に基づく彩色体系における色である。更に、本明細書に記載の物品の表面彩色は、物品の表面を観察したとき、普通の人間の目又はその他の色検出器によって知覚される、彩色に対応させることができる。加えて、本明細書に記載の物品の表面彩色は、ハーフトーン化又はディザリング等の視覚効果又は色彩効果を含むことができる。本明細書に記載の物品の表面彩色は、不連続若しくはピクセルで構成された彩色、又は連続彩色であってもよい。
【0024】
更に、物品の表面彩色を表わすデータは、本開示の目的に矛盾しない、任意の方法で生成及び/又は受信することができる。一部の実施の形態において、例えば、データは、3D印刷システムの一部であるコンピュータから受信される。コンピュータはプロセッサー、及びプロセッサーで実行されると、3D印刷システムの1つ以上の構成要素に対し、本明細書に記載の方法を実行するための命令が供給される、コンピュータ可読プログラムコード部分を記憶するメモリを備えることができる。更に、物品の表面彩色を表わすデータは、物品のコンピュータ支援設計(CAD)形式等のコンピュータ可読形式の画像の一部であってよい。別の形式も使用可能である。表面彩色を表わすデータは、物品の無着色画像とは別の画像(コンピュータ可読形式の別の画像を含む)として供給することができる。更に、一部の例において、物品の表面彩色を表わすデータは、カメラ又は他のイメージスキャナーから受信することもできる。表面彩色データは、別の方法でも受信することができ、本開示は表面彩色データを受信する、具体的な方法に必ずしも限定されるものではない。更に、表面彩色データは、1つ以上のレンダリング又はスライスステップを実行する前、同時、又は後に受信することができる。
【0025】
本明細書に記載の方法は、表面彩色データをボクセルデータに変換するステップを備えている。また、ボクセルデータは、物品の表面に対して垂直又は実質的に垂直な複数のボクセル列の(a)ロケーション値、及び(b)色値と(c)透明度値の少なくとも一方を含んでいる。本明細書において更に説明するように、ボクセル「列」は、ボクセル列の近傍において、物品の表面に垂直又は実質的に垂直に、互いの上にz方向に1つずつ単独のボクセルを積み重ねたものであると言える。本明細書において参考として、表面、平面、又は別の方向に対して「実質的に」垂直又は直角な方向は、垂直方向から約15度以内、約10度以内、又は約5度以内の方向である。
【0026】
ボクセル列の「ロケーション」値は、列内の1つ以上のボクセルの中心の三次元座標値を含むことができる。一般に、ボクセル列のロケーション値は、列内の各ボクセルの座標値を含んでいる。ロケーション値は、本開示の目的に矛盾しない、任意の形式であってよい。例えば、ロケーション値は、列のボクセルの中心に対応する(x、y、z)値であってよい。加えて、ボクセル列の少なくとも一部のロケーション値は、列内の別のボクセルの相対値であってよい。例えば、一部の例において、ロケーション値は、列内のz方向のボクセルの「層」の順序であってよい。他のロケーション値も使用することができる。
【0027】
同様に、ボクセル列の「色」値は、列内の1つのボクセル又は1つ以上のボクセルの色値を含むことができる。一般に、ボクセル列の色値は、列内のすべてのボクセルの色値を含んでいる。加えて、色値は、RGB、sRGB、CMY、CMYK、L、又はPantone彩色体系等、本開示の目的に矛盾しない、任意の彩色体系による色値であってよい。更に、色値は、一部の例において、物品の表面彩色を表わすデータと同じ彩色体系の色値である。別の例において、色値は、物品の表面彩色を表わすデータと異なる彩色体系である。
【0028】
ボクセル列の「透明度」値は、列内の1つのボクセル又は複数のボクセルの透明度値を含むことができる。一般に、ボクセル列の透明度値は、列内のすべてのボクセルの透明度値を含んでいる。加えて、透明度値は、本開示の目的に矛盾しない、任意の透明度表示体系の透明度値であってよい。例えば、一部の例において、透明度値は、「アルファ」スケールの0(完全透明)〜1(完全不透明)である。ボクセルデータの透明度値は、約350nm〜約750nmの波長を有する光に対する、ボクセル(又はボクセルの形成に用いられる材料)の光透過性に対応させることもできる。例えば、ボクセルは、ボクセルの厚さ、又は約0.01〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mm等、所与のその他の厚さにわたり、350nm〜750nmの入射光に対し、約30%未満の透過率、約50%未満の透過率、約70%未満の透過率、約70%超の透過率、約80%超の透過率、約90%超の透過率、約70〜80%の透過率、約80〜90%の透過率、又は約90〜100%の透過率の光透過性を有することができる。
【0029】
以下に更に説明するように、本明細書に記載の表面彩色を本明細書に記載のボクセルデータに変換して、ボクセルデータに対応する造形材料又はその他の材料のボクセルを印刷することによって、所望の表面外観を達成することができる。更に、表面彩色データを本開示の目的に矛盾しない、任意の方法でボクセルデータに変換することができる。例えば、一部の例において、様々なロケーション値、色値、及び透明度値を有するn個のボクセルを、各々のボクセル列から、所望の観測される色又は色出力が得られるように、ボクセル列にマッピングすることによって、表面彩色データがボクセルデータに変換される。一部の実施の形態において、ルックアップテーブルを用いて、表面彩色データがボクセルデータに変換される。図3は、表面彩色データをボクセルデータに変換するのに使用できる、1つの非限定的なルックアップテーブルの部分を示す図である。図3において、様々な赤の色合いのRGB色値が、部分ルックアップテーブルである「要求3D部分色」に用意されている。これ等の「要求される」部分色は、物品に特定の表面彩色を与えるために、特定の場所に「要求される」色に対応させることができる。テーブルの各々の「要求される」色合いに対し、所望の赤の色合いをもたらすであろう、8つの層を有するボクセル列が用意されている。図3に示すルックアップテーブルの部分において、「M」は半透明のマゼンタのボクセルを表し、「Y」は半透明の黄色のボクセルを表し、「CL」は半透明の無着色(又は「透明」)のボクセルを表わしている。「半透明」のボクセルは、一部の実施の形態において、ボクセルの厚さ又は0.2〜1mm、0.3〜0.8若しくは1〜5mmの光路長において、350nm〜750nmの入射光に対し、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%の透過率に対応する透明度値を有するボクセルを意味することができる。z方向のボクセルのロケーション値は、層指定で表わされる。例えば、層1のボクセルは、層2のボクセルより、z方向において、物品の表面から遠方にあり、層2が層1の「上方」に配置される。x及びy方向のボクセルのロケーション値は、所与のボクセル列において同じであると仮定し、ボクセルは、xy平面において、完全又は実質的に完全に位置合わせされているものとする。
【0030】
再度図3において、以下のようにして、本明細書に記載の方法にルックアップテーブルを使用することができる。例えば、表面彩色データが、特定の場所において、RGBの色値、R=255、G=0、及びB=0を有する色を要求している場合、表面彩色データのこの部分は、積み重ねられたボクセルの8つの層であって、図3に示すルックアップテーブルの最初の行に示すように、半透明の透明度値及びマゼンタと黄色の値が交互に入れ替わる層を含むボクセル列に対応する、ボクセルデータに変換することができる。他のRGB色値は、同様の方法で取得することができる。表面彩色データが、ルックアップテーブルに的確に用意されていない色値を有する色を要求している場合には、要求された色は、ルックアップテーブルで利用可能な最も近い色にマッピングすることができる。更に、図3のテーブルは、部分テーブルであって、図3に示すのと同様のルックアップテーブルに、色及び色合いを更に含めることができることを理解されたい。
【0031】
更に、一部の例において、ルックアップテーブルは、特定の「要求3D部分色」に対し、1つ以上のボクセルデータのセット含むことができる。例えば、図4は、ボクセル(420)の複数の列(410)であって、各々の列(410)が、ボクセル(420)の8つの層(430)を含み、各々の列(410)が、同じ表面色値(440)をもたらす複数の列を含む、物品(400)の一部を示す図である。図4の実施の形態において、ボクセル(420)の各々の列(410)は、(明るい正方形で表される)「透明」ボクセル(421)と(暗い正方形で表される)半透明のシアンボクセル(422)との組み合わせを通して、ライトシアン表面色(440、観測される色のプルームとして示される)をもたらす。透明ボクセルの(421)の配置は、列(410)毎に異なり、1つの例ではシアンボクセル(422)の下方に配置され、1つの例ではシアンボクセル(422)の上方に配置され、1つの例ではシアンボクセル(422)の間に配置され、別の例では前述の位置の組み合わせに配置される。一般に、本明細書に記載の「透明」ボクセルは、z方向のディザリング及び/又はハーフトーンパターンであって、着色ボクセルによってそのものが画成されるパターンの「空白を埋める」のに用いることができることに留意されたい。例えば、所望のディザリング及び/又はハーフトーンパターンが、3つの着色ボクセルのみで所望の表面色をもたらすことを要求している場合には、列内に残る任意のボクセル(例えば、7層の列の4つの残りのボクセル)を透明ボクセルにすることができる。
【0032】
図4に示すような)本明細書に記載の一部の実施の形態において、同じ表面色をもたらす隣接ボクセル列は、z方向に異なるボクセルの組み合わせを有することができる。隣接ボクセル列において、異なるボクセル配列で、同じ色をもたらすことにより、一部の例において、高周波パターニングの認識を低減又は排除することができる。より一般的には、高周波パターニング効果、又は揺らめき効果等の特定の視覚効果の達成、又は回避に基づいて、所望の表面色を得るために使用する、特定の列のボクセルの配列を選択することができる。
【0033】
加えて、図4に示すように、3D印刷物品(400)は、断面図で示されている。ボクセル(420)の列(410)は、図示しない物品(400)の断面、又はスライスで示すこともできることを理解されたい。
【0034】
一般に、本明細書に記載のボクセル列は、本開示の目的に矛盾しない、任意の個々のボクセルの所望の組み合わせを含むことができる。前述のように、1つ又は複数の列内におけるボクセルの特性及び配列によって、特定の表面のピクセル又は表面のより大きな領域に対し、異なる表面色又はその他の視覚効果をもたらすことができる。一部の例において、少なくとも1つのボクセル列が、異なる色値及び/又は異なる透明度値を有するボクセルを含むことができる。更に、一部の実施の形態において、複数のボクセル列が、列内の別のボクセルと比較して、異なる色値及び/又は異なる透明度値を有するボクセルを含むことができる。例えば、一部の例において、1つ以上のボクセル列が、半透明ボクセル及び不透明ボクセルの両方を含んでいる。不透明ボクセルは、一部の実施の形態において、約10%以下、約20%以下、又は約30%以下の入射光を、ボクセル又は不透明ボクセルの形成に用いられる材料の所与の厚さ(0.01〜10mm、0.1〜1mm、又は1cm等)を透過する。一部の例において、不透明ボクセルは、約5%未満の入射光を、ボクセル又は不透明ボクセルの形成に用いられる材料の所与の厚さ、又は経路長(0.01〜10mm、0.1〜1mm、又は1cm等)を透過する。更に、入射光は、約350nm〜約750nm、約400nm〜約700nm、約450〜約500nm、約450nm〜約550nm、約500nm〜約570nm、約500nm〜約600nm、約600nm〜約650nm、約600nm〜約700nm、又は約650nm〜約750nmの波長を有する可視光を含むことができる。加えて、一部の実施の形態において、1つ以上のボクセル列が着色ボクセル及び無着色ボクセルを含んでいる。以下更に説明するように、着色ボクセルは、1つ以上の着色剤を含む造形材料で形成することができる。同様に、無着色ボクセルは、着色剤を含まない造形材料で形成することができる。
【0035】
更に、一部の例において、ボクセル列は、同じ色値を有する複数の着色ボクセルを含むことができる。かかる例において、複数の着色ボクセルを組み合わせて所望の彩度を達成することができる。例えば、一部の実施の形態において、同じボクセル列内の12のボクセルの各々が、その列によって示される、表面色の所望の彩度の1/12を供給することができる。ボクセル列内の別の彩度配分も可能である。一般に、nの彩度を達成するためには、各々が、1/nの彩度等、n未満の彩度に寄与する、複数のボクセルを列に組み合わせることができる。このように、本明細書に記載の方法で、より明るい色又はより彩度の低いボクセルを列に積み重ねることによって、所望のより強い彩度を達成することができる。
【0036】
加えて、ボクセル列は、x及びy方向に同じ又は実質的に同じロケーション値を有するが、z方向に異なるロケーション値を有する、着色ボクセルを含む、複数のボクセルを含むことができる。従って、列内のかかるボクセルは、x及びy方向に位置合わせされ、又は実質的に位置合わせされ、z方向に積み重ねられている。x及びy方向に「実質的に」位置合わせされボクセルは、本明細書において参考として、x及びy方向のそれぞれにおいて、0.5ボクセル長未満、0.3ボクセル長未満、0.2ボクセル長未満、0.1ボクセル長未満、0.05ボクセル長未満、0.01ボクセル長未満だけ異なる(ボクセルの中心の)x値及びy値を有することができ、x及びy方向における「ボクセル長」は、それぞれ、x及びy方向における平均のボクセル列の大きさである。一部の例において、実質的に位置合わせされたボクセルは、x及びy方向において、0〜0.4ボクセル長、0〜0.2ボクセル長、0〜0.1ボクセル長、0.01〜0.15ボクセル長、0.01〜0.1ボクセル長、又は0.01〜0.05ボクセル長だけ異なっている。かかる位置合わせされた、又は実質的に位置合わせされたボクセルを含む列は、一部の例において、色の忠実度及び/又は色の均一性が向上した表面色をもたらすことができる。
【0037】
前述のように、複数のボクセル列の少なくとも1つが、その列の複数のボクセルの色の組み合わせに由来する表面色を示すことができる。一部の例において、複数のボクセル列が、列の複数のボクセルの色の組み合わせに由来する表面色を示すことができる。更に、複数のボクセル列が、(x、y、及びz次元における、色の組み合わせ、混合、ディザリング、及び/又はハーフトーン化を通して)、3D印刷物品の表面に、物品の表面彩色データに対応する外観をもたらすことができる。更に、かかる場合、所与のボクセル列(又は複数のボクセル列)によってもたらされる表面色と対応する物品の表面彩色との色整合が高い。色整合は、一部の例において、全域色整合又は国際色コンソーシアム(ICC)のプロファイル、あるいは標準若しくはICC変換に基づく色整合であってよい。色整合はSWOP(オフセット印刷標準規格)仕様に基づくものであってもよい。更に、本明細書に記載の一部の実施の形態において、異なる色のボクセル及び/又はボクセルの形成に使用される造形材料によって広い色域を得ることができる。
【0038】
一部の例において、本明細書に記載の複数のボクセル列が、物品のカラースキン領域を画成する。かかる「カラースキン」領域は、所望の彩色、色パターン、又はその他の視覚効果をもたらす、物品表面近傍の物品領域であってよい。更に、本明細書に記載の物品のカラースキン領域は、以下に更に説明するように、1つ以上の着色剤を含む、1つ以上の造形材料で形成することができる。
【0039】
本明細書に記載の物品のカラースキン領域は、本開示の目的に矛盾しない、任意の深さ又は厚さを有することができる。一部の例において、カラースキン領域は、z方向に少なくとも2つのボクセルの深さ又は厚さを有している。一部の例において、カラースキン領域は、2〜32ボクセル、2〜24ボクセル、2〜16ボクセル、4〜32ボクセル、4〜24ボクセル、又は4〜16ボクセルの深さ又は厚さを有している。別の深さ又は厚さも可能である。更に、一部の例において、カラースキン領域の全深さ又は厚さは、約0.03mm〜約3mm、約0.05mm〜約2.5mm、又は約0.05mm〜約2mmである。本明細書に記載のカラースキン領域の厚さ又は深さは、z方向の物品の所望の色レベル及び/又は所望の色プロファイルに基づいて選択することができる。
【0040】
加えて、一部の実施の形態において、本明細書に記載のカラースキン領域は、物品の不透明スキン領域の上方に形成することができる。不透明スキン領域等の別の領域の「上方」に形成される物品のカラースキン領域は、表面に対して垂直又は実質的に垂直なz方向において、物品の表面に近い位置に配置されると理解されたい。更に、一部の例において、不透明スキン領域は、物品内部に連続不透明領域を含むことができる。かかる不透明スキン領域は、不透明ボクセルの連続層又はシェル等の複数の連続不透明ボクセルを含む、複数の不透明ボクセルで形成することができる。更に、物品の不透明スキン領域は、存在している場合、本開示の目的に矛盾しない、任意の深さ又は厚さを有することができる。一部の例において、不透明スキン領域は、z方向に少なくとも2つのボクセルの深さ又は厚さを有している。一部の例において、不透明スキン領域は、2〜32ボクセル、2〜24ボクセル、2〜16ボクセル、4〜32ボクセル、4〜24ボクセル、又は4〜16ボクセルの深さ又は厚さを有している。本明細書に記載の方法による不透明スキン領域の形成によって、一部の実施の形態において、概して不透明であるにも関わらず、本明細書に記載の方法によるz方向のボクセルの組み合わせに基づいて、表面彩色を示す3D印刷物品を提供することができる。
【0041】
同様に、一部の実施の形態において、本明細書に記載のカラースキン領域は、物品の反射スキン領域の上方に形成される。反射スキン領域は、物品内部に、連続反射領域であって、「反射領域」が、可視波長光を含む、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、又は少なくとも約70%の入射光を反射する領域を含むことができる。かかる反射スキン領域は、反射ボクセルの連続層又はシェル等の複数の連続反射ボクセルを含む、複数の反射ボクセルで形成することができる。更に、物品の反射スキン領域は、存在している場合、本開示の目的に矛盾しない、任意の深さ又は厚さを有することができる。一部の例において、反射スキン領域は、z方向に少なくとも2つのボクセルの厚さを有している。一部の例において、反射スキン領域は、2〜32ボクセル、2〜24ボクセル、2〜16ボクセル、4〜32ボクセル、4〜24ボクセル、又は4〜16ボクセルの厚さを有している。
【0042】
加えて、一部の例において、物品のカラースキン領域は、不透明スキン領域又は反射スキン領域ではない、物品の内部領域の上方に形成することもできる。しかし、不透明スキン領域又は反射スキン領域と同様に、物品の内部領域の色及び/又は透過性は、物品の外観に影響を与えることができる。例えば、一部の例において、物品の内部領域の色が黒又は白であり、その結果、内部領域を覆っているカラースキン領域の彩色が、それぞれ暗く又は明るくなる。内部領域は無色とすることもできる。更に、内部領域は、所望に応じ、不透明又は半透明であってよい。物品の内部領域は、カラースキン領域、不透明スキン領域、又は反射スキン領域の一部ではないボクセルで形成することができることを理解されたい。加えて、一部の例において、内部領域は、物品外面の少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、又は少なくとも3mm下方にある。
【0043】
ボクセルに関連して、本開示の態様についてこれまで説明してきた。本明細書に記載の「ボクセル」は、ボクセルの形成に使用される3D印刷システムが、所望サイズのボクセルを形成できることを条件に、所与の視覚効果に対し、所望又は必要な任意の所望サイズであってよいことを理解されたい。ボクセルのサイズは、本明細書に記載の方法の実行に使用される、3D印刷システムの印刷解像度、又はフィーチャー解像度に関連する、造形材料の体積に対応させることもできる。物品又はシステムの「フィーチャー解像度」は、本明細書において参考として、物品の制御可能な最も小さい物理的フィーチャーの大きさであってよい。物品のフィーチャー解像度は、マイクロメートル(μm)等の距離の単位、又は1インチ当たりのドッド数(dpi)で記述することができる。当業者には理解されるように、より高いフィーチャー解像度は、より高いdpi値に対応するが、μm単位のより短い距離に対応する。一部の例において、本明細書に記載の方法によって形成された物品は、約500μm以下、約200μm以下、約100μm以下、約50μm以下のフィーチャー解像度を有することができる。一部の実施の形態において、物品は、約50μm〜約500μm、約50μm〜約200μm、約50μm〜約100μm、又は約100μm〜約200μmのフィーチャー解像度を有している。それに対応して、一部の例において、本明細書に記載の物品は、少なくとも約100dpi、少なくとも約200dpi、少なくとも約250dpi、少なくとも約400dpi、又は少なくとも約500dpiのフィーチャー解像度を有している。一部の例において、物品のフィーチャー解像度は、約100dpi〜約600dpi、約100dpi〜約250dpi、約200dpi〜約600dpiである。一部の例において、本明細書に記載のボクセルは、(マイクロメートル等の距離単位の)フィーチャー解像度と3D印刷システムによって形成される層の厚さとの積に対応する体積を有している。一部の実施の形態において、造形材料の1つ以上の層は、約0.03〜約5mmの厚さ、約0.03〜約3mmの厚さ、約0.03〜約1mmの厚さ、約0.03〜約0.5mmの厚さ、約0.03〜約0.3mmの厚さ、約0.03〜約0.2mmの厚さ、約0.05〜約5mmの厚さ、約0.05〜約1mmの厚さ、約0.05〜約0.5mmの厚さ、約0.05〜約0.3mmの厚さ、又は約0.05〜約0.2mmの厚さを有している。別の厚さも可能である。
【0044】
本明細書に記載の3D物品の印刷方法は、印刷方法によって生成されたボクセルデータに従って、基体上に1つ以上の造形材料の層を選択的に堆積して、物品を形成するステップを備えている。1つ以上の造形材料の層は、本開示の目的に矛盾しない、任意の方法で堆積することができる。加えて、本開示の目的に矛盾しない、任意の造形材料を本明細書に記載の方法に使用することができる。
【0045】
一部の例において、本明細書に記載の方法で、物品の形成に使用される少なくとも1つの造形材料は、可視波長光を含み、光学的に透明又は実質的に光学的に透明である。「実質的に」光学的に透明な造形材料は、本明細書において参考として、約0.01〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mmの厚さ等の所与の厚さにおいて、所与の波長又は波長範囲に対し、少なくとも70%の透過率の光透過性を有している。一部の実施の形態において、本明細書に記載の造形材料は、約0.01〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mmの厚さ等の所与の厚さにおいて、約350nm〜約750nmに対し、少なくとも約80%の透過率、少なくとも約90%の透過率、又は少なくとも約95%の透過率の光透過性を有している。一部の例において、造形材料は、約0.01〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mmの厚さ等の所与の厚さにおいて、約350nm〜約750nmに対し、少なくとも98%又は少なくとも99%の透過率の透過性を有している。更に、一部の例において、本明細書に記載の造形材料は、約0.1〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mmの厚さ等の所与の厚さにおいて、約350nm〜約750nmに対し、約70%〜約95%、約80%〜約99.99%、又は約90%〜約95%の透過率の光透過性を有している。
【0046】
本明細書に記載の方法の一部の実施の形態の使用に適した、造形材料の非限定的な例が、以下のセクションIIに記載されている。別の造形材料も使用できる。一部の例において、造形材料は、焼結若しくは溶融ガラス、又はプラスチック等のガラス又はプラスチック材料を含んでいる。更に、かかる造形材料は、セクションIIに記載されている1つ以上の着色材料等の1つ以上の着色剤を含む着色造形材料であってよい。
【0047】
更に、一部の実施の形態において、本明細書に記載の方法に従って、異なる色に着色された複数の造形材料を用いて、3D印刷物品を形成することができる。更に、一部の例において、比較的少ない数の異なる色に着色された造形材料を使用して、本明細書に記載の方法に従って、フルカラーの3D印刷を行うことができ、「フルカラー」3D印刷は、前述の彩色体系等の所与の彩色体系の全色域、又は実質的に全色域にわたる色を有する物品の3D印刷を含むことができる。一部の例において、本明細書に記載の方法を用いて3、4、5、6、7、又は8つの異なる色に着色された造形材料を使用して、フルカラー印刷を行うことができる。一部の例において、8つを超える異なる色に着色された造形材料が使用される。一部の実施の形態において、2つの異なる色に着色された造形材料が、本明細書に記載の方法に使用される。複数の異なる色に着色された造形材料を使用する一部の実施の形態において、異なる造形材料を使用して、本明細書に記載の個々のボクセルが個別に形成される。
【0048】
更に、3D物品のコンピュータ可読形式の画像に従って、造形材料の層を堆積することができる。一部の実施の形態において、予め選択されたコンピュータ支援設計(CAD)のパラメータに従って、造形材料の層が堆積される。更に、一部の例において、本明細書に記載の造形材料の1つ以上の層は、約0.03〜約5mmの厚さ、約0.03〜約3mmの厚さ、約0.03〜約1mmの厚さ、約0.03〜約0.5mmの厚さ、約0.03〜約0.3mmの厚さ、約0.03〜約0.2mmの厚さ、約0.05〜約5mmの厚さ、約0.05〜約1mmの厚さ、約0.05〜約0.5mmの厚さ、約0.05〜約0.3mmの厚さ、又は約0.05〜約0.2mmの厚さを有している。別の厚さも可能である。
【0049】
更に、一部の例において、本明細書に記載の方法の基体は、3D印刷システムの造形パッドを含んでいる。本明細書に記載の方法の基体は、既に堆積された材料の層を含むこともできる。
【0050】
加えて、本明細書に記載の3D物品の印刷方法は、所謂「マルチジェット」3D印刷方法を含むことができることを理解されたい。例えば、一部の例において、3D物品のマルチジェット印刷方法は、本明細書に記載の流体状態の1つ以上の造形材料の層を、3D印刷システムの造形パッド等の基体上に、選択的に堆積するステップを備えている。加えて、一部の実施の形態において、本明細書に記載の方法は、1つ以上の造形材料の少なくとも1つの層を、支持材で支持するステップを更に備えている。本開示の目的に矛盾しない、任意の支持材を用いることができる。
【0051】
硬化性造形材料を使用する場合、本明細書に記載の方法は、1つ以上の造形材料の層を硬化させるステップも備えることができる。例えば、一部の例において、本明細書に記載の3D物品の印刷方法は、1つ以上の造形材料を、1つ以上の造形材料を硬化させるのに十分な波長及び強度の電磁放射に晒すステップを更に備え、硬化は、1つ以上の造形材料の1つ以上の成分の1つ以上の重合性部分、又は官能基を重合させるステップを含むことができる。一部の例において、堆積した造形材料は、造形材料の別の層又隣接層が堆積される前に硬化される。
【0052】
更に、一部の実施の形態において、予め選択された量の本明細書に記載の1つ以上の造形材料が、印刷室において、適切な温度に加熱され、適切なインクジェットプリンターのプリントヘッド、又は複数のプリントヘッドを通して吐出され、印刷パッド上に層が形成される。一部の例において、予め選択されたCADパラメータに従って、造形材料の各々の層が堆積される。1つ以上の造形材料を堆積するのに適した1つのプリントヘッドは、圧電プリントヘッドである。1つ以上の造形材料及び本明細書に記載の支持材を堆積するのに適した、別の適切なプリントヘッドが、様々なインクジェット印刷装置のメーカーから市販されている。例えば、一部の例において、ゼロックス、ヒューレットパッカード、又はリコーのプリントヘッドを使用することもできる。
【0053】
加えて、一部の実施の形態において、本明細書に記載の1つ以上の造形材料は、堆積時実質的に流体のままである。あるいは、別の例において、造形材料は、堆積時相変化を示し、及び/又は堆積時固化する。更に、一部の例において、吐出された造形材料の液滴が、受け面に接触すると固化するように、印刷環境温度を制御することができる。別の実施の形態において、吐出された造形材料の液滴が受け面に接触したとき固化せず、実質的に流体状態のままである。加えて、一部の例において、各々の層が堆積された後、堆積された材料が、次の層が堆積される前に、平坦化されると共に、電磁(例えばUV)放射によって硬化される。必要に応じ、平坦化及び硬化の前に、幾つかの層を堆積することができ、又は多数の層を堆積固化し、それに続き1つ以上の層を堆積し、固化せずに平坦化することができる。平坦化により、硬化前に堆積された材料を平坦にして余分な材料を除去し、一様に滑らかな露出面又は平坦な上向き面を、プリンターの支持プラットフォーム上に生成することによって、1つ以上の層の厚さを修正することができる。一部の実施の形態において、1つ以上の印刷方向に対し逆回転し、1つ以上の別の印刷方向に対し逆回転しない、ローラ等のワイパー装置を用いて平坦化が達成される。一部の例において、ワイパー装置は、ローラ及び余分な材料をローラから除去するワイパーを備えている。更に、一部の例において、ワイパー装置が加熱される。硬化前の本明細書に記載の吐出された造形材料の稠度は、一部の実施の形態において、形状を維持するのに十分、且つ平坦化装置から過度の粘性抵抗を受けないことが望ましいということに留意されたい。
【0054】
更に、支持材は、使用される場合、前述の1つ以上の造形材料の堆積方法と一致する方法で堆積することができる。支持材は、例えば、支持材が造形材料の1つ以上の層に隣接又は連続するように、予め選択されたCADパラメータに従って堆積することができる。吐出された支持材の液滴は、一部の実施の形態において、受け面に接触すると固化又は凝固する。一部の例において、堆積した支持材も平坦化される。
【0055】
3D物品が形成されるまで、1つ以上の造形材料、及び支持材の層状堆積を繰り返すことができる。一部の実施の形態において、3D物品の印刷方法が、1つ以上の造形材料から、支持材を除去するステップを更に備えている。
【0056】
II.3D印刷の造形材料
別の態様において、3Dプリンター及び/又は3D物品の印刷方法に使用される造形材料が、本明細書に記載されている。かかる造形材料は、一部の例において、マルチジェット3D印刷方法及び/又はシステムの使用に適した、吐出可能な造形材料である。加えて、一部の実施の形態において、造形材料は複合インクを含んでいる。本明細書に記載の複合インクは、一部の例において、硬化性材料を含む光学的に透明又は実質的に透明なキャリアインク、及び複合インクの総重量に基づき、キャリアインクに、約0.01〜5質量%分散された着色剤を含んでいる。一部の実施の形態において、着色剤は、キャリアインクに、約0.01〜3質量%、約0.01〜1質量%、約0.05〜5質量%、約0.05〜3質量%、約0.05〜1質量%、約0.1〜5質量%、約0.1〜3質量%、又は約0.1〜1質量%存在している。
【0057】
更に、一部の例において、複合インクの所与の厚さにおける、複合インクの彩度は、複合インク中の着色剤の最大彩度の約20%以内、約15%以内、約10%以内、又は約5%以内である。複合インク又は着色剤の「彩度」は、本明細書において参考として、CIE1931色度空間等の色度空間における、複合インク又は着色剤の色の極座標の動径成分である。更に、一部の実施の形態において、複合インク又は着色剤の最大彩度は、本明細書に記載の方法で、複合インクによって形成される層の厚さを含む、複合インクの厚さの関数であってよい。従って、一部の実施の形態において、本明細書に記載の複合インクの着色剤の添加量は、複合インクの所望の特定の層厚を含み、複合インクの彩度が最大になるように選択することができる。
【0058】
更に、本明細書に記載の複合インクの着色剤は、粒子顔料等の粒子着色剤、又は分子色素等の分子着色剤であってよい。本開示の目的に矛盾しない、任意のかかる粒子又は分子着色剤を使用することができる。一部の例において、例えば、複合インクの着色剤は、TiO、ZnO等の無機顔料を含んでいる。一部の実施の形態において、複合インクの着色剤は、RGB、sRGB、CMY、CMYK、L、又はPantone彩色体系に使用される着色剤を含んでいる。更に、一部の例において、本明細書に記載の粒子着色剤は、400nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、又は150nm未満の平均粒径等、500nm未満の平均粒径を有している。一部の例において、粒子着色剤は、50〜1000nm、50〜500nm、50〜400nm、50〜300nm、50〜200nm、70〜500nm、70〜300、70〜250nm、又は70〜200nmの平均粒径を有している。
【0059】
更に、一部の実施の形態において、本明細書に記載の複合インクのキャリアインクは、電磁スペクトルの可視領域を含む光に対し、高い透過性を有することができる。一部の例において、例えば、キャリアインクは、約0.01〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mm等の所与の厚さにおいて、約350nm〜約750nmに対し、少なくとも約70%の透過率、少なくとも約80%の透過率、少なくとも約90%の透過率、少なくとも約95%の透過率の光透過性を有している。一部の例において、キャリアインクは、約0.01〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mm等の所与の厚さにおいて、約350nm〜約750nmに対し、少なくとも98%の透過率又は少なくとも約99%の透過率の透過性を有している。更に、一部の例において、本明細書に記載のキャリアインクは、約0.1〜10mm、約0.2〜1mm、約0.3〜0.8mm、約1〜10mm、約1〜5mm、又は約5〜10mmの厚さ等の所与の厚さにおいて、約350nm〜約750nmに対し、約70%〜約95%、約80%〜約99.99%、又は約90%〜約95%の透過率の光透過性を有している。本明細書に記載の光透過性を有するキャリアインクによって、3D印刷物品の知覚される色が、部分の表面に沿ったx及びy方向ではなく、部分の表面に対して垂直である、部分のz方向の不連続な色のディザリング又はハーフトーン化に基づく、3D印刷の彩色工程において、複合インクの使用が促進される。
【0060】
加えて、本明細書に記載のキャリアインクは、硬化性材料を含んでいる。硬化性材料は、本開示の目的に矛盾しない任意の量、キャリアインクに存在することができる。一部の例において、硬化性材料は、キャリアインクの総重量に基づき、約99質量%まで、約95質量%まで、約90質量%まで、又は約80質量%までの量存在している。一部の例において、本明細書に記載の複合インクは、キャリアインクの総重量に基づき、約10〜95質量%の硬化性材料を含んでいる。一部の実施の形態において、キャリアインクは、約20〜80質量%の硬化性材料、約30〜70質量%の硬化性材料、又は約70〜90質量%の硬化性材料を含んでいる。
【0061】
更に、本開示の目的に矛盾しない、任意の硬化性材料を使用することができる。一部の例において、硬化性材料は、1つ以上の重合性成分を含んでいる。「重合性成分」は、本明細書において参考として、3D印刷物品又は物体を形成するための重合又は硬化可能な成分を含んでいる。重合又は硬化は、本開示の目的に矛盾しない、任意の方法で実行することができる。一部の実施の形態において、例えば、重合又は硬化は、重合又は架橋反応を開始するのに十分なエネルギーを有する電磁放射を照射することを含んでいる。例えば、一部の実施の形態において、紫外(UV)線放射を利用することができる。
【0062】
更に、本開示の目的に矛盾しない、任意の重合性成分を使用することができる。一部の実施の形態において、重合性成分は、別のモノマー化学種の同一又は異なる官能基又は部分と反応して、重合反応におけるような、1つ以上の共有結合を形成することができる、1つ以上の官能基又は部分を有する化学種等のモノマー化学種を含んでいる。重合反応は、一部の実施の形態において、エチレン性不飽和点を含む、不飽和点間におけるようなフリーラジカル重合を含んでいる。一部の実施の形態において、重合性成分は、少なくとも1つのビニル基又はアリル基等のエチレン性不飽和部分を含んでいる。一部の実施の形態において、重合性成分は、本明細書に記載の1つ以上の不飽和点を通したような、付加重合を起こすことができる、オリゴマー化学種を含んでいる。一部の実施の形態において、重合性成分は、本明細書に記載の1つ以上のモノマー化学種、及び1つ以上のオリゴマー化学種を含んでいる。本明細書に記載のモノマー化学種及び/又はオリゴマー化学種は、1つの重合性部分又は複数の重合性部分を有することができる。
【0063】
一部の実施の形態において、重合性成分は、1つ以上の光重合性又は光硬化性の化学種を含んでいる。光重合性の化学種は、一部の実施の形態において、UV重合性の化学種を含んでいる。一部の実施の形態において、重合性成分は、約300nm〜約400nmの波長において、光重合性又は光硬化性である。あるいは、一部の実施の形態において、重合性成分は、電磁スペクトルの可視波長において光重合性である。
【0064】
一部の実施の形態において、本明細書に記載の重合性成分は、1つ以上の(メタ)アクリレート種を含んでいる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、メタクリレート、又はこれ等の混合物若しくは組み合わせを意味する。一部の実施の形態において、重合性成分は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、及び/又はエベクリル7100等のアミンアクリレートオリゴマー樹脂を含んでいる。一部の実施の形態において、UV重合性又は硬化性樹脂又はオリゴマーは、フリーラジカル光開始剤の存在下で重合し、吐出温度に露出状態で少なくとも1週間、且つ封入された状態で少なくとも4週間、熱的に安定であり、及び/又は吐出温度より高い沸点を有する、任意のメタクリレート又はアクリレート樹脂を含むことができる。一部の実施の形態において、重合性成分は、吐出温度より高い引火点を有している。
【0065】
本明細書に記載のインクに適切に使用されるウレタン(メタ)アクリレートは、一部の実施の形態において、周知の方法で調製することができ、主として、ヒドロキシル基末端ウレタンを、アクリル酸又はメタクリル酸に反応せることによって、対応するウレタン(メタ)アクリレートを生成するか、又はイソシアネート末端プレポリマーを、ヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレートに反応させることによって、ウレタン(メタ)アクリレートが生成される。適切な方法が、特に、欧州特許出願公開第114982号明細書及び欧州特許出願公開第133908号明細書に開示されている。かかる(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、一般に、約400〜10,000又は約500〜7,000である。ウレタン(メタ)アクリレートは、SARTOMER社が、CN980、CN981、CN975、及びCN2901という製品名で、又はBomar Specialties社(コネティカット州、ウィンステッド)が、BR−741という製品名で市販している。本明細書に記載の一部の実施の形態において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ASTM D2983に合致する方法で測定した場合、約50℃において、約140,000cp〜約160,000cp、又は約50℃において、約125,000cp〜約175,000cpの動的粘度を有している。本明細書に記載の一部の実施の形態において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ASTM D2983に合致する方法で測定した場合、約50℃において、約100,000cp〜約200,000cp、又は約50℃において、約10,000cp〜約300,000cpの粘度を有している。
【0066】
一部の実施の形態において、重合性成分は、様々な組み合わせで使用することができる、メタクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレート、及びジアクリレート等の1つ以上の低分子量材料を含んでいる。一部の実施の形態において、例えば、重合性成分は、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、単官能性脂肪族ウレタンアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、及びトリデシルメタクリレートの1つ以上を含んでいる。
【0067】
一部の実施の形態において、重合性成分は、ジアクリレート及び/又は1,3−若しくは1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エトキシル化又はプロポキシル化ネオペンチルグリコール、1,4−ジ−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン若しくはビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールF、又はエトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールSを含む、脂肪族、シクロ脂肪族、若しくは芳香族ジオールのジメタクリレートエステルを含んでいる。
【0068】
重合性成分は、一部の実施の形態において、1つ以上のトリ(メタ)アクリレートを含んでいる。一部の実施の形態において、トリ(メタ)アクリレートは、1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはメタクリレート、エトキシル化若しくはプロポキシル化1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはメタクリレート
エトキシル化若しくはプロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリレート若しくはメタクリレート、又はトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含んでいる。
【0069】
一部の実施の形態において、本明細書に記載のインクの重合性成分は、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート又はビス(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート等の、1つ以上のより高い官能性アクリレート又はメタクリレートを含んでいる。一部の実施の形態において、インクの(メタ)アクリレートは、約250〜700の分子量を有している。
【0070】
一部の実施の形態において、重合性成分は、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート及びn−ドデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−及び3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート及び2−若しくは3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、2−フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、イソデシルアクリレート、又はこれ等の組み合わせを含んでいる。
【0071】
本明細書に記載の一部の実施の形態に有用な重合性成分種の更なる非限定的な例には、SARTOMER社がSR506Aという商品名で市販している、イソボルニルアクリレート(IBOA)、SARTOMER社がSR423Aという商品名で市販している、メタクリル酸イソボルニル、SARTOMER社がSR611という商品名で市販している、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、RAHN USA社がGENOMER1122という商品名で市販している、単官能ウレタンアクリレート、ALLNEX社がEBECRYL8402という商品名で市販している、脂肪族ウレタンアクリレート、SARTOMER社がSR272という商品名で市販している、トリエチレングリコールジアクリレート、SARTOMER社がSR205という商品名で市販している、トリエチレングリコールジメタクリレート、SARTOMER社がSR833Sという商品名で市販している、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、SARTOMER社がSR368という商品名で市販している、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びSARTOMER社がSR339という商品名で市販している、2−フェノキシエチルアクリレートがある。他の市販の硬化性材料も使用できる。
【0072】
本明細書に記載のキャリアインクは、一部の実施の形態において、1つ以上の添加剤を更に含んでいる。一部の実施の形態において、本明細書に記載のキャリアインクは、光開始剤、阻害剤、安定剤、増感剤、及びこれ等の組み合わせから成る群より選択される1つ以上の添加剤を更に含んでいる。例えば、一部の実施の形態において、インクは1つ以上の光開始剤を含んでいる。本開示の目的に矛盾しない、任意の光開始剤を使用することができる。一部の実施の形態において、光開始剤は、好ましくは約250nm〜約400nm、又は約300nm〜約385nmの光を吸収して、フリーラジカルを生成するように動作可能な、アルファ開裂型(単分子分解プロセス)の光開始剤、又は水素引き抜き型光増感剤−3級アミン相乗剤を含んでいる。
【0073】
アルファ開裂型の光開始剤の例には、Irgacure184(CAS947−19−3)、Irgacure369(CAS119313−12−1)、及びIrgacure819(CAS162881−26−7)がある。光増感剤−アミンの組み合わせの例には、DarocurBP(CAS119−61−9)とメタクリル酸ジメチルアミノエチルの組み合わせがある。
【0074】
一部の実施の形態において、適切な光開始剤は、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、及びベンゾインアセテートを含むベンゾイン類、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、及び1,1−ジクロロアセトフェノンを含むアセトフェノン類、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、及び2−アミルアントラキノンを含むアントラキノン類、トリフェニルホスフィン、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO)等のベンジルホスフィンオキシド類、ベンゾフェノン及び4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、チオキサンテン類及びキサントン類、アクリジン誘導体類、フェナジン誘導体類、キノキサリン誘導体類又は1−フェニル−1,2−プロパンジオール、2−O−ベンジルオキシム、1−アミノフェニルケトン、又は1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトン、及び4−イソプロピルフェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトン等の1−ヒドロキシフェニルケトン類を含んでいる。
【0075】
一部の例において、適切な光開始剤は、アセトフェノン類、2,2−ジアルキルベンゾフェノン類、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、又は2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン(=2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン)等の1−ヒドロキシフェニルケトン類を含む、HeCdレーザー放射源と共に使用可能な光開始剤を含んでいる。加えて、一部の例において、適切な光開始剤は、ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類を含む、Arレーザー放射源と共に使用可能な光開始剤を含んでいる。一部の実施の形態において、光開始剤はα−ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、又はこれらの混合物を含んでいる。
【0076】
光開始剤の別のクラスは、一部の例において、化学線を吸収して重合を開始するためのフリーラジカルを生成することができる、イオン性染料−対イオン化合物を含んでいる。一部の実施の形態において、イオン性染料−対イオン化合物を含むインクは、約400nm〜約700nmの調整可能な波長範囲内の可視波長によって、より可変的に硬化させることができる。一部のイオン性染料−対イオン化合物、及びその動作モードが、欧州特許出願公開第0223587号明細書、米国特許第4,751,102号明細書、4,772,530号明細書、及び4,772,541号明細書に開示されている。
【0077】
光開始剤は、本開示の目的に矛盾しない任意の量、本明細書に記載のインク中に存在することができる。一部の実施の形態において、光開始剤は、インクの総重量に基づき、インク中に約5重量パーセントまで存在している。一部の実施の形態において、光開始剤は、約0.1重量パーセント〜約5重量パーセント存在している。
【0078】
一部の実施の形態において、インクは1つ以上の増感剤を更に含んでいる。インクに増感剤を添加して、同様に存在することができる、光開始剤の有効性を高めることができる。本開示の目的に矛盾しない、任意の増感剤を使用することができる。一部の実施の形態において、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(ITX)を含んでいる。一部の実施の形態において、増感剤は、2−クロロチオキサントン(CTX)を含んでいる。
【0079】
増感剤は、本開示の目的に矛盾しない任意の量、インク中に存在することができる。一部の実施の形態において、増感剤は、インクの総重量に基づき、約0.1重量パーセント〜約2重量パーセント存在している。増感剤は、一部の実施の形態において、約0.5重量パーセント〜約1重量パーセント存在している。
【0080】
加えて、本明細書に記載のインクは、一部の実施の形態において、1つ以上の重合禁止剤又は安定剤を更に含んでいる。インクに重合禁止剤を添加して、組成に更なる熱安定性をもたらすことができる。本開示の目的に矛盾しない、任意の重合禁止剤を使用することができる。一部の例において、重合禁止剤はメトキシヒドロキノン(MEHQ)を含んでいる。安定剤は、一部の実施の形態において、1つ以上の酸化防止剤を含んでいる。安定剤は、本開示の目的に矛盾しない、任意の酸化防止剤を含むことができる。一部の例において、適切な酸化防止剤は、本明細書に記載の一部の実施の形態において、重合禁止剤としても使用することができる、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む、様々なアリル化合物を含んでいる。
【0081】
重合禁止剤及び/又は安定剤は、本開示の目的に矛盾しない任意の量、インク中に存在することができる。一部の実施の形態において、重合禁止剤は、約0.1質量%〜約2質量%、又は約0.5質量%〜1質量%存在している。同様に、一部の例において、安定剤は、インクの総重量に基づき、約0.1質量%〜約5質量%、約0.5質量%〜約4質量%、又は約1質量%〜3質量%インク中に存在している。
【0082】
本明細書に記載の複合インクは、その他の様々な望ましい特性を示すことができる。例えば、本明細書に記載の複合インクは、本開示の目的に矛盾しない、任意の凝固点、融点、及び/又はその他の相転移温度を有することができる。一部の実施の形態において、インクは、相変化インクを使用するように設計された3D印刷システムを含む、一部の3D印刷システムにおいて使用される温度に一致する凝固点及び融点を有している。一部の実施の形態において、インクの凝固点は約40℃より高い。一部の実施の形態において、例えば、インクは、45℃〜約55℃、又は50℃〜約80℃の温度を中心とする凝固点を有している。一部の実施の形態において、インクは約40℃又は約30℃未満の凝固点を有している。
【0083】
更に、本明細書に記載の一部の実施の形態において、複合インクは急激な凝固点又はその他の相移転を示す。一部の例において、例えば、インクは、約1〜10℃、約1〜8℃、又は約1〜5℃等の狭い温度範囲で凝固する。一部の実施の形態において、急な凝固点を有するインクは、X±2.5℃の温度範囲で凝固し、ここで、Xは凝固点の中心温度(例えば、X=65℃)である。
【0084】
加えて、本明細書に記載の複合インクは、一部の例において、3D印刷システムにおいて遭遇する吐出温度において流体である。更に、一部の実施の形態において、インクは、三次元印刷物品又は物体の製造中、表面に堆積されると固化する。あるいは、別の実施の形態において、表面に堆積された際、インクは実質的に流体のままである。インクの固化は、一部の実施の形態において、凝固等のインクの相変化によって起きる。相変化は、液体から固体への相変化、又は液体から半固体への相変化を含むことができる。更に、幾つかの例において、インクの凝固は、低粘度状態から高粘度状態への粘度の増加等の粘度増加を含んでいる。
【0085】
一部の実施の形態において、本明細書に記載の複合インクは、1つ以上の3D印刷システムの要件及びパラメータに合致する粘度プロファイルを有している。一部の実施の形態において、例えば、本明細書に記載の複合インクは、ASTM規格D2983に従って測定したとき(例えば、ブルックフィールドモデルDV−II+粘度計を使用した場合)約80℃の温度において、約8.0cp〜約14.0cpの粘度を有している。一部の実施の形態において、インクは、約80℃の温度において、約9.5cp〜約12.5cpの粘度を有している。インクは、一部の実施の形態において、約80℃の温度において、約10.5cp〜約12.5cpの粘度を有している。一部の実施の形態において、インクは、約85〜87℃の温度において、約8.0cp〜約10.0cpの粘度を有している。
【0086】
一部の実施の形態において、本明細書に記載の複合インクは、ASTM規格D2983に従って測定して、約65℃の温度において、約8.0cp〜約19.0cpの粘度を有している。一部の実施の形態において、本明細書に記載の複合インクは、約65℃の温度において、約8.0cp〜約13.5cpの粘度を有している。インクは、一部の実施の形態において、約65℃の温度において、約11.0cp〜約14.0cpの粘度を有している。一部の実施の形態において、インクは、約65℃の温度において、約11.5cp〜約13.5cp、又は約12.0cp〜約13.0cpの粘度を有している。
【0087】
更に、本明細書に記載の複合インクは、一部の実施の形態において、1つ以上の好ましい特徴の組み合わせを示す。一部の実施の形態において、例えば、未硬化状態の複合インクは、以下の特性の1つ以上を示す。
【0088】
1.約30℃〜約65℃の凝固点
2.70〜95℃において、約8cp〜約16cpの吐出粘度
3.吐出温度において少なくとも3日間の熱安定性
粘度はASTM規格D2983に従って(例えば、ブルックフィールドモデルDV−II+粘度計を使用して)測定することができる。加えて、本明細書において参考として、「熱的に安定な」材料は、特定の期間(例えば、3日間)の開始と終了時に、特定の温度(例えば、85℃の吐出温度)で測定したとき、その特定の期間に亘る粘度変化が、約35%以下である。一部の実施の形態において、粘度変化は約30パーセント以下又は約20パーセント以下である。一部の実施の形態において、粘度変化は約10パーセント〜約20パーセント、又は約25パーセント〜約30パーセントである。更に、一部の実施の形態において、粘度変化は粘度の増加である。
【0089】
本明細書に記載の複合インクは、前述の特性に加え、硬化した状態において、様々な好ましい特性を示すことができる。本明細書において、「硬化した」状態の複合インクは、少なくとも部分的に重合及び/又は架橋した、硬化性材料又は重合性成分を含むインクを含んでいる。例えば、一部の実施の形態において、硬化したインクは、少なくとも約10%重合若しくは架橋、又は少なくとも約30%重合若しくは架橋している。一部の実施の形態において、硬化したインクは、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%重合若しくは架橋している。一部の実施の形態において、硬化したインクは、約10%〜約99%重合又は架橋している。
【0090】
本明細書に記載の複合インクは、一部の実施の形態において、本開示の目的に矛盾しない、任意の方法で生成することができる。一部の実施の形態において、例えば、本明細書に記載のインク調製方法は、インクの成分を混合するステップ、混合物を融解するステップ、及び溶融混合部を濾過するステップを備えている。混合物を融解するステップは、一部の実施の形態において、約75℃又は約75℃〜約85℃の温度で実施される。一部の実施の形態において、本明細書に記載のインクは、インクのすべての成分を反応槽に入れ、得られた混合物を、撹拌しながら、約75℃〜約85℃の温度で加熱することによって生成される。加熱と撹拌は、混合物が実質的に均一な溶融状態に達するまで継続される。一般に、流動可能な状態にある間に、溶融混合物を濾過して、吐出を妨害する可能性がある望ましくない大きな粒子をすべて除去することができる。次いで、濾過された混合物は、インクジェットプリンター内で加熱されるまで、周囲温度に冷却される。
【0091】
III.3D印刷物品
別の態様において、3D印刷物品が本明細書に記載されている。本明細書に記載の3D印刷物品は、上記セクションIで説明した方法、及び/又は上記セクションIIで説明した造形材料を用いて形成することができる。例えば、一部の実施の形態において、本明細書に記載の3D印刷物品は、内部領域及び内部領域の上方に、z方向に配置されたカラースキン領域を備えている。カラースキン領域は、物品の表面に対して実質的に垂直な複数のボクセル列によって形成又は画成される。更に、一部の例において、少なくとも1つのボクセル列が、その列の複数のボクセルの色の組み合わせに由来する表面の色を示す。
【0092】
本明細書に記載の物品の内部領域は、(前述のように、物品の外面に対し垂直又は実質的に垂直な)z方向における、物品の最深領域であってよい。更に、物品の内部領域は、本開示の目的に矛盾しない、任意の色及び/又はその他の光学特性を有することができる。一部の例において、例えば、本明細書に記載の物品の内部領域は、色が黒又は白である。前述のように、カラースキン領域の下方に配置された黒の内部領域は、カラースキン領域によって示される又は生成される、1つ以上の色を暗くする役割を果たすことができる。黒に加えて、他の暗い色も使用することができる。同様に、白の内部領域は、それを覆っているカラースキン領域によって示される又は生成される、1つ以上の色を明るくする役割を果たすことができる。更に、白以外の明るい色を使用して、同様の効果を得ることもできる。更に、一部の例において、本明細書に記載の物品の内部領域は、不透明又は光反射性である。内部領域は半透明又は透明であってもよい。加えて、一部の実施の形態において、本明細書に記載の物品の内部領域は、物品の外面から、少なくとも約0.5mm、少なくとも約1mm、少なくとも約2mm、少なくとも約3mm、又は少なくとも約4mm下方に位置するか、又は下方から開始している。
【0093】
上記セクションIで説明したように、本明細書に記載の物品のカラースキン領域は、所望の表面色又はその他の視覚表面効果が得られるように選択及び配置された、複数のボクセル列で形成又は画成することができる。例えば、一部の例において、少なくとも1つのボクセル列が、異なる色値及び/又は異なる透明度値を有するボクセルを含んでいる。前述のように、単一の列内の異なる色値及び/又は異なる透明度値を有するボクセルを使用することによって、そのボクセル列が、広い範囲の色値及び/又はその列の個々のボクセルの視覚特性の組み合わせに由来する、その他の視覚効果を示すことができる。このようにして、3D印刷物品のz方向の色を変化させることによって、フルカラーの彩色体系、ディザリング、ハーフトーン化を達成することができる。一部の実施の形態において、ボクセル列が、半透明ボクセル及び不透明ボクセル、並びに/又は着色ボクセル及び無着色ボクセルを含んでいる。前述のように、着色ボクセルは、1つ以上の着色剤を含む造形材料で形成することができ、無着色ボクセルは、着色剤を含まない又は1つ以上の着色剤を意図的に付加されていない、造形材料で形成することができる。
【0094】
更に、本明細書に記載の物品のカラースキン領域は、本開示の目的に矛盾しない、任意の深さ又は厚さを有することができる。一部の例において、カラースキン領域は、z方向に少なくとも2つのボクセルの深さ又は厚さを有している。一部の実施の形態において、カラースキン領域は、2〜32ボクセル、2〜24ボクセル、2〜16ボクセル、4〜32ボクセル、4〜24ボクセル、又は4〜16ボクセルの深さ又は厚さを有している。別の深さ又は厚さも可能である。一部の例において、カラースキン領域の全深さ又は厚さは、約0.03mm〜約3mm、約0.05mm〜約2.5mm、又は約0.05mm〜約2mmである。本明細書に記載のカラースキン領域の厚さ又は深さは、z方向の物品の所望の色レベル及び/又は所望の色プロファイルに基づいて選択することができる。
【0095】
更に、一部の例において、本明細書に記載の3D印刷物品は、物品のカラースキン領域と内部領域との間に配置された、1つ以上の別の領域を更に含んでいる。例えば、一部の例において、物品は、z方向において、物品のカラースキン領域と内部領域との間に配置された、不透明スキン領域及び/又は反射スキン領域を更に含んでいる。かかる不透明スキン領域又は反射スキン領域は、任意の特性を有することができると共に、上記セクションIにおいて、不透明スキン領域又は反射スキン領域関して説明した任意の方法で形成することができる。例えば、一部の実施の形態において、本明細書に記載の物品の不透明領域は、複数の連続不透明ボクセルを含む、複数の不透明ボクセルで形成される。同様に、反射スキン領域は、一部の例において、複数の連続反射ボクセル等の、複数の反射ボクセルで形成される。
【0096】
一部の例において、不透明スキン領域及び/又は反射スキン領域は、z方向に少なくとも2つのボクセルの深さ又は厚さを有している。一部の例において、不透明スキン領域及び/又は反射スキン領域は、2〜32ボクセル、2〜24ボクセル、2〜16ボクセル、4〜32ボクセル、4〜24ボクセル、又は4〜16ボクセルの厚さを有している。別の厚さも可能である。本明細書に記載の不透明スキン領域及び/又は反射スキン領域の厚さ又は深さは、z方向の物品の所望の色レベル及び/又は本明細書に更に説明する表面効果に基づいて選択することができる。
【0097】
加えて、前述のように、本明細書に記載の3D印刷物品の1つ以上の部分又は領域は、造形材料又は造形材料の組み合わせで形成することができる。本開示の目的に矛盾しない、任意の造形材料を使用することができる。一部の例において、上記セクションIIで説明した造形材料を使用して、本明細書に記載の3D印刷物品の1つ以上のコンポーネント、領域、又はボクセルが形成される。例えば、一部の実施の形態において、物品の形成に使用される少なくとも1つの造形材料は、光学的に透明又は実質的に光学的に透明である。透明又は実質的に透明な造形材料は、本明細書に記載のカラースキン領域のボクセルの形成に特に適している。更に、ボクセル列又はより広くはカラースキン領域の個々の異なるボクセルは、異なる造形材料で形成することができることに留意されたい。特に、第1の色のボクセルは、第1の色を有する第1の造形材料で形成することができ、第2の色のボクセルは、第2の色を有する造形材料で形成することができる。かかる例において、両方の造形材料は、上記セクションIIで説明した複合インク等、セクションIIで説明した1つの造形材料であってよい。一部の例において、例えば、物品の形成に使用される少なくとも1つの造形材料は、硬化性材料を含む光学的に透明又は実質的に光学的に透明なキャリアインク、及び複合インクの総重量に基づき、キャリアインクに約0.01〜5質量%分散された着色剤を含んでいる。物品の不透明スキン領域又は内部領域等、物品の他のコンポーネント又は領域については、別の造形材料を使用することが望ましい場合がある。例えば、一部の例において、不透明な造形材料を使用して、不透明スキン領域及び/又は内部領域のボクセルを形成することができる。
【0098】
以下の非限定的な実施例において、本明細書に記載の一部の実施の形態を更に説明する。
【実施例1】
【0099】
3D彩色
図5に示すように、本明細書に記載の1つの実施の形態によるカラー3D物品を印刷した。図5において、物品(500)は、複数の不透明な白色ボクセル(511)で形成された連続内部領域(510)、及び内部領域(510)の上方に、z方向(z)に配置されたカラースキン領域(520)を有している。カラースキン領域(520)は、物品(500)の表面(540)に対して実質的に垂直な、ボクセル(531)の複数の列(530)によって画成される。加えて、ボクセル(531)の少なくとも一部の列(530)が、下方に存在する複数のボクセル(531)の色の組み合わせに由来する、表面色(550)を示す。例えば、図5の7番目の列の緑の表面色は、その下方に存在するシアン及び黄色のボクセル(531)の組み合わせに由来する緑の表面色(550)を示す。同様に、6番目の列のダークピンクの表面色(550)は、その下方に存在するマゼンタ及び黒のボクセル(531)の組み合わせに由来している。
【0100】
図5に示すように、内部領域(510)及びカラースキン領域(520)は、基体(560)上に配置されている。この基体(560)は、3D印刷システムの造形バッド、又は既に堆積された造形材料又は支持材料の層であってよい。
【0101】
更に、図5の表面(540)は、物品(500)の1つの外面、又は物品(500)の1つの外面の1つの部分に過ぎないことを理解されたい。加えて、図5は物品(500)の断面を示している。本明細書において更に説明するように、図5の表面(540)対して示したのと同様の3D印刷彩色を用いて、物品(500)の別の外面に対し、所望の表面色又は表面カラーマップを実現することができる。一部の例において、図5に示した方法と同様の方法で、本明細書に記載の物品のすべて若しくは実質的にすべての外表面、又はすべて若しくは実質的にすべての外表面領域を着色することができる。
【0102】
更に、図5の物品(500)の表面(540)に垂直なz方向(z)は、(基体(560)が3D印刷パッドである場合には、そうであるが)、必ずしも3D印刷の方向ではなく、ここで3D印刷の「方向」とは、逐次堆積される造形材料の層が築き上げられて、3D物品が形成される方向を意味する。むしろ、3D印刷の方向は、所望の形状及び表面彩色を有する、3D物品の印刷の必要性又は所望に応じ、任意の方向であってよい。一般に、本明細書に記載の物品(500)及び他の物品は、3D印刷するために物体をスライスする前に、レンダリングステップの一環として、内部領域(510)、カラースキン領域(520)、及び、存在している場合には、不透明スキン領域又は反射スキン領域に対し、ボクセルを割り当てることによって形成することができる。従って、一部の例において、スライス及び/又は物品(500)の逐次堆積される層の最も薄い寸法は、図5に示すz方向に平行ではなく、z方向に垂直に配向されていてよい。この場合、カラースキン領域は逐次堆積される層の外周に位置することができる。別の配向も可能である。
【実施例2】
【0103】
3D彩色
前述のように、本明細書に記載の3D物品の色の均一性及び精度は、所与の列内におけるx及びy方向のボクセルの位置合わせに影響され得る。位置ずれの影響を図6及び7に示す。図6において、3D印刷物品のxy平面における表面(600)が示されている。表面(600)は、8×8アレイの64のピクセル(正方形、610で示す)で規定されている。更に、ピクセル(610)は、(図6において、灰色の特定の陰影として示す)同じ色を有している。従って、ピクセルによる色の変化がないため、表面(600)は均一な色を示す。図6の表面(600)の均一な色は、本明細書に記載の一部の実施の形態に従って、複数のボクセル列によって得られる。ピクセル(610)を表わす正方形は、ボクセル列を表わすこともできることを理解されたい。各々の列は、12のボクセルを含み、表面(600)の所与のピクセル(610)の彩色は、下方の12層のボクセルの組み合わせに由来する。これ等の層を(xy平面で)層1〜12として図6に示す。図6に示すように、各々の列は、(所与の層1〜12において、灰色の正方形で示す)1つの着色ボクセル、及び(所与の層1〜12において、白色の正方形で示す)11の透明又は無着色ボクセルを含んでいる。図6の実施の形態において、各々の列のボクセルは、一連の材料層の印刷中、正確に位置合わせされ、各々の列が正確に1つの着色ボクセル及び正確に11の透明ボクセルを含んでいた。
【0104】
これに反し、図7に示す表面(700)の生成において、所与の列における所望のボクセルの実質的な位置合わせが行われておらず、結果として、表面(700)のピクセル(710)が、均一な色又は外観を有さず、代わりに、不均一又はまだらな外観を有している。図6と同様に、図7のボクセル列は、各々(灰色の正方形で示す)1つの着色ボクセル及び(白色の正方形で示す)11の透明ボクセルを含むように意図されていた。しかし、物品の印刷中における、層毎のx及びy方向のボクセルの位置ずれによって、実際には不均一な表面(700)という結果になった。表面(700)の一部のピクセル(710)は、そのピクセルの下方のボクセル列が含む着色ボクセルの数が、過剰であるため、暗くなり過ぎる一方、他のピクセルは、そのピクセルの下方のボクセル列が含む着色ボクセルの数が少な過ぎるため、明るくなり過ぎている。更に別のピクセルは、その下方のボクセル列に、正しい数(1つ)の着色ボクセルを含んでいる。
【実施例3】
【0105】
複合インク
本明細書に記載の一部の実施の形態による複合インクを以下のようにして調製した。90%を超える透過率の光透過性を有する、本明細書に記載のキャリアインクに、様々な市販の顔料を配した。具体的には、キャリアインクは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(15〜25質量%)、非オリゴマー性モノ(メタ)アクリレート(28〜42質量%)、非オリゴマー性ジ(メタ)アクリレート(28〜36質量%)、非オリゴマー性トリ(メタ)アクリレート(8〜12質量%)、安定剤(0.1〜0.2質量%)、及び光開始剤(2〜4質量%)を含んでいる。市販の顔料には、Sun UVDJ354、Sun UVDJ322、Sun UVDJ150、Sun UVDJ350、RJA D3010−FX−Y150、RJA D3410−FX−Y150、及び以下の表Iに示すその他の顔料が含まれる。次に、複合インクを様々な厚さの層に吐出して、それらの色彩特性を測定した。一部の複合インクの彩度値を、層厚の関数として、図8にプロットしてある。所与の着色剤に関し、着色剤の特定の量において、光の最適な吸収が生じる。この最適を超えると、色が暗くなり過ぎる(プロットした線が下方に湾曲開始する時点)。この最適未満では、色が明るくなり過ぎる。
【0106】
0.3mm及び0.15mmの層厚において最大色度が得られるように、シアン、黄色、及びマゼンタ顔料の添加量を調整した。黒色インクについては、最大の光学濃度(OD)又は最低の明度(L)が得られるように顔料の添加量を選択した。図9は、様々な黒色インクの光学濃度対層厚をプロットした図である。
【0107】
更なる結果は、下記の表Iに示す。
【0108】
【表1】
【0109】
本明細書において参照したすべての特許文献は、参照により全内容がそのまま本明細書に組み込まれたものとする。本発明の様々な目的を達成する、本発明の様々な実施の形態について説明してきた。これらの実施の形態は、単に本発明の原理を説明するものであることを認識されたい。本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、様々な改良及び改作が可能であることは、当業者には容易に明らかであろう。
【符号の説明】
【0110】
400、500 物品
410、530 列
420、511、531 ボクセル
430 層
440、550 表面色
510 内部領域
520 カラースキン領域
540、600、700 表面
560 基体
610、710 ピクセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10