特許第6374034号(P6374034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374034
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】3Dプリント用のゲル化剤を含むインク
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20180806BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20180806BHJP
【FI】
   B29C64/112
   B33Y10/00
【請求項の数】19
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-571092(P2016-571092)
(86)(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公表番号】特表2017-527455(P2017-527455A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2015034177
(87)【国際公開番号】WO2015187933
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】62/007,631
(32)【優先日】2014年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ティタリントン,ドン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ボー
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−504860(JP,A)
【文献】 特開2013−227565(JP,A)
【文献】 特開2012−232578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00−64/40
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物品をプリントする方法において、
温度T1のインクを温度T2の基体上に噴射して、該基体上に該インクの層を形成する工程、および
前記インクの層を硬化させる工程、
を有してなり、
T1はT2より高く、
未硬化状態の前記インクは、T1より低く、T2より高い液体−ゲル転移温度を有し、
前記インクは硬化性材料およびゲル化剤を含み、該ゲル化剤は、1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分により疎水性セグメントに結合した1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含み、
前記インクの層は、T2で未硬化状態にある前記インクの逆数分で表されたゲル化速度R2の0%以内である、mg/s/in2で表された速度R1で前記基体上に堆積され、この百分率が、R1およびR2の大きい方に基づくものである、方法。
【請求項2】
R1およびR2の間の差が、R1およびR2の大きい方の20〜60%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1およびR2の間の差が、R1およびR2の大きい方の30〜50%である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
T2で未硬化状態にある前記インクのゲル化時間GTが15分と30分の間である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
T2で未硬化状態にある前記インクのゲル化時間GTが31分と45分の間である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
T1が70〜90℃であり、T2が20〜30℃である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
T2が45〜45℃である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記硬化性材料が、ウレタン(メタ)アクリレートを含む1種類以上のオリゴマー材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記硬化性材料が、前記インク中に、該インクの総質量に基づいて0〜98質量%の量で存在し、前記ゲル化剤が、前記インク中に、該インクの総質量に基づいて〜20質量%の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ゲル化剤が、化合物(A)の化合物(B)および化合物(C)との反応により形成され:
【化1】
式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から50の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;
4は、−Hまたは−CH3であり;
Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記ゲル化剤が、式(I):
【化2】
の構造を有する化学種を含み、
式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から30の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;
4は、−Hまたは−CH3であり;
Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−であり、
は、R2部分間の1つの炭素−炭素結合を表す、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記ゲル化剤が、式(II):
【化3】
の構造を有する化学種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル化剤が、化合物(A)または(A’)の化合物(B)または(B’)並びに化合物(C)または(C’)との反応により形成され:
【化4】
式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から50の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;
4は、−Hまたは−CH3であり;
Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ゲル化剤が、式(III):
【化5】
の構造を有する化学種を含み、
式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から50の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;
4は、−Hまたは−CH3であり;
Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記ゲル化剤が、式(VI):
【化6】
の化学種を含み、
式中、xは0から34の整数であり、
yは1から17の整数であり、
4はHまたはCH3である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記ゲル化剤が、式(VII):
【化7】
の化学種を含み、
式中、xは0から34の整数であり、
yは1から17の整数であり、
4はHまたはCH3である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記インクが、0℃と5℃の間の液体−ゲル転移を示す、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記インクが、.03から5mmの厚さにおいて50nmと50nmの間の波長で、少なくとも0%の透過率の光透過性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記インクの複数の層が、コンピュータ可読フォーマットにある前記三次元物品の画像にしたがって前記基体上に堆積される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、ここに全てが引用される、2014年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/007631号に米国法典第35編第119条に従う優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、インクに関し、詳しくは、三次元(3D)プリントシステムに使用するためのゲル化剤含有インクに関する。
【背景技術】
【0003】
サウスカロライナ州、ロックヒル所在の3D Systems社により製造されているProJet(商標)3D Printerなどの市販の3Dプリンタは、様々な3D物体または部品を形成するために液体としてプリントヘッドを通じて噴射される、構築材料としても知られているインクを使用する。他の3Dプリントシステムも、プリントヘッドを通じて噴射されるインクを使用する。ある場合には、インクは、周囲温度で固体であり、高温の噴射温度で液体に転化する。他の場合には、インクは、周囲温度で液体である。
【0004】
プリント物品を形成するために、あるインクは、表面にインクを噴射し、堆積させた後に、硬化させる必要がある。硬化は発熱過程であり得、硬化中の熱エネルギーの放出により、プリント速度が制限され得る。具体的には、インク層のプリントと硬化が速すぎると、堆積表面が高温になることがある。このことは転じて、堆積したインクの粘度の低下がもたらされ、それに伴い、そのインクの過剰な流動のために、プリント解像度の損失がもたらされ得る。その上、周囲温度で高い粘度を示すあるインクは、インクの貯蔵中および/またはインクがプリント物品に形成された後を含む、時間の経過と共に、インク成分の相分離も示す。例えば、ある場合には、インクの顔料および/またはワックス成分は、沈降および/または相分離を経験する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、高速および/または着色3Dプリント用途向けを含む、3Dプリント向けの改善されたインクが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、いくつかの実施の形態では、従来のインクを上回る利点を1つ以上提供するであろう、3Dプリンタに使用するためのインクがここに記載されている。いくつかの実施の形態において、例えば、ここに記載されたインクは、より速いプリント速度で、および/またはより高い特徴解像度(feature resolution)を有する、プリント部品を提供するために使用できる。さらに、ある場合には、ここに記載された特定のインクは、高い特徴解像度および高い機械的強度を有するプリント部品を得るために、特定の所望のプリント速度に適合させることができる。ここに記載されたインクは、ある場合には、貯蔵中および/またはプリント部品を形成するためのインクの硬化後に、インク成分の相分離の低下も示すことができる。ある場合には、ここに記載されたインクは、硬化されたときに、単相または二相以下から実質的になり得る。その上、ここに記載されたインクは、着色されたときに、異なる色の隣接するボクセル間の色と色の拡散または「ブリード」の低下を提供することができる。
【0007】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された3Dプリントシステムに使用するためのインクは、硬化性材料およびゲル化剤を含む。このゲル化剤は、1つ以上のウレタン部分により疎水性セグメントに結合した1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含み得る。ある場合には、その1つ以上のウレタン部分は、この疎水性セグメントを1つ以上の末端オレフィン部分に直接結合する。他の場合には、1つ以上のウレタン部分は、その疎水性セグメントを1つ以上の末端オレフィン部分に間接的に結合する。例えば、ある場合には、そのゲル化剤の化学種は、前記1つ以上のウレタン部分と前記1つ以上の末端オレフィン部分との間に配置された1つ以上の追加の疎水性セグメントをさらに含む。その上、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたゲル化剤の化学種のウレタン部分は、尿素および/またはアミド部分などの異なる窒素含有官能基により少なくとも部分的に置き換えることができる。さらに、ある場合には、その化学種は二量体である。
【0008】
さらに、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、分子染料、粒状無機顔料、または粒状有機着色剤などの着色剤をさらに含む。ここに記載されたインクは、光開始剤、防止剤、安定剤、増感剤、およびそれらの組合せからなる群より選択される1種類以上の添加剤もさらに含んでもよい。
【0009】
その上、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、20〜30℃でゲルである。さらに、そのような場合のあるものにおいて、そのインクは、約40℃と約75℃の間、約45℃と約65℃の間、または約45℃と約60℃の間の液体−ゲル転移を示す。その上、この液体−ゲル転移の融解熱は、約20J/g以下、約15J/g以下、または約10J/g以下であり得る。ある場合には、この液体−ゲル転移の融解熱は、約7J/g以下、約5J/g以下、または約3J/g以下であり得る。
【0010】
別の態様において、3D物品をプリントする方法がここに記載されている。いくつかの実施の形態において、3D物品をプリントする方法は、流体状態にあるここに記載されたインクの層を基体上に選択的に堆積させる工程を有してなる。例えば、ある場合には、そのインクは、硬化性材料およびゲル化剤を含み、このゲル化剤は、1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分により疎水性セグメントに結合した1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含む。さらに、そのインクの層は、コンピューター可読フォーマットにある3D物品の画像にしたがって堆積させることができる。さらに、ある場合には、ここに記載されたインクの1つ以上の層の厚さは、約0.03から約5mmである。その上、いくつかの実施の形態において、ここに記載された方法は、インクの層の内の少なくとも1つを支持材料で支持する工程をさらに有する。ここに記載された方法は、そのインクの層を硬化させる工程をさらに有し得る。
【0011】
さらに、ある場合には、ここに記載された3D物品をプリントする方法は、プリント速度または堆積速度を、インクのゲル化時間またはゲル化速度に適合させるまたは実質的に適合させる様式で、ここに記載されたインクの層を形成する工程を有する。例えば、ある場合には、プリントする方法は、温度T1のここに記載されたインクを温度T2の基体上に噴射して、その基体上にインクの層を形成する工程を有してなる。この方法は、そのインクの層を実質的に硬化させる工程をさらに有する。そのような実施の形態のあるものにおいて、T1はT2より高く、未硬化状態のインクは、T1より低く、T2より高い液体−ゲル転移温度を有する。さらに、そのインクの層は、T2で未硬化状態にあるインクのゲル化速度R2(逆数分)の約60%以内または約40%以内である速度R1(in2当たりのmg/s)で基体上に堆積させることができる。その上、ある場合には、T2で未硬化状態にあるインクのゲル化時間GTは、約45分以下、約30分以下、または約14分以下である。
【0012】
別の態様において、プリントされた3D物品がここに記載されている。いくつかの実施の形態において、プリントされた3D物品は、硬化性材料およびゲル化剤を含むインクなどの、ここに記載されたインクから形成され、このゲル化剤は、1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分により疎水性セグメントに結合した1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含む。
【0013】
これらと他の実施の形態が、以下の詳細な説明に、より詳しく記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】基体上に堆積した比較のインクの写真
図1B】基体上に堆積した比較のインクの写真
図1C】基体上に堆積したここに記載された1つの実施の形態によるインクの写真
図1D】基体上に堆積したここに記載された1つの実施の形態によるインクの写真
図2A】比較のインクから形成されたプリント3D物品の写真
図2B】ここに記載された1つの実施の形態によるインクから形成されたプリント3D物品の写真
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここに記載された実施の形態は、以下の詳細な説明、実施例、および図面を参照することにより、より容易に理解できる。しかしながら、ここに記載された要素、装置および方法は、その詳細な説明、実施例、および図面に提示された特定の実施の形態に制限されない。これらの実施の形態は、本発明の原理の実例にすぎないことを認識すべきである。本発明の精神および範囲から逸脱せずに、数多くの改変および適用が当業者に容易に明白となるであろう。
【0016】
その上、ここに開示された全ての範囲は、その中に含まれる任意の全ての部分的範囲を包含することを理解すべきである。例えば、「1.0から10.0」と述べられた範囲は、1.0以上の最小値で始まり、10.0以下の最大値で終わる任意の全ての部分的範囲、例えば、1.0から5.3、または4.7から10.0、または3.6から7.9を含むと考えるべきである。
【0017】
ここに開示された全ての範囲は、特に明記のない限り、その範囲の端点を含むものと考えるべきである。例えば、「5と10の間」の範囲は、一般に、端点の5および10を含むと考えるべきである。
【0018】
さらに、「まで」という句が、量または数量と共に使用されている場合、その量は、少なくとも検出可能な量または数量であると理解すべきである。例えば、特定の量「までの」量で存在する材料は、検出可能な量から、特定の量を含むそれまでの量で存在し得る。
【0019】
「三次元プリントシステム」、「三次元プリンタ」、「プリント」などの用語は、広く、選択的堆積、噴射、溶融堆積モデル形成、マルチジェットモデル形成、および三次元物体を製造するための構築材料またはインクを使用する、現在当該技術分野で公知の、または将来知られるであろう、他の技法により、三次元物品または物体を製造するための様々な固体自由形状製造技法を記述する。
【0020】
I. 3Dプリント用のインク
1つの態様において、3Dプリンタに使用するためのインクがここに記載されている。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、硬化性材料およびゲル化剤を含む。ここに記載されたインクのゲル化剤は、ある場合には、エチレン不飽和種などの硬化性種を含む。そのゲル化剤は、1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分などの、水素結合に関与できる窒素含有部分を1つ以上含んでもよい。その上、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、1つ以上の疎水性セグメントを有する化学種を含み得る。例えば、ある場合には、ゲル化剤は、1つ以上のウレタン部分により疎水性セグメントに結合した1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含む。そのような場合のあるものにおいて、その1つ以上のウレタン部分は、疎水性セグメントを1つ以上のウレタン部分に直接結合する。他の場合には、1つ以上のウレタン部分は、その疎水性セグメントを1つ以上の末端オレフィン部分に間接的に結合する。いくつかの実施の形態において、例えば、そのゲル化剤の化学種は、前記1つ以上のウレタン部分と前記1つ以上の末端オレフィン部分との間に配置された1つ以上の追加の疎水性セグメントをさらに含む。さらに、いくつかの実施の形態において、その化学種は二量体である。
【0021】
ここに記載されたインクのゲル化剤により、インクが、インクの噴射温度より低い温度で、および/または周囲温度で、ゲル状態を有することができる。例えば、ある場合には、ここに記載されたインクは、標準大気圧(1気圧)での場合を含む、25℃などの20〜30℃の温度でゲルである。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、約70℃未満、約60℃未満、約50℃未満、または約40℃未満の温度でゲルである。さらに、ゲルは、ある場合には、流体により全体積に亘り拡大される非流体網目構造を含む、それからなる、またはそれから実質的になる。ゲルは、実質的非流体相内に分散した実質的流体相を含む、それからなる、またはそれから実質的になることもある。例えば、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、インクのゲル化剤により形成された網目構造を含むゲルであり得る。さらに、そのインクの硬化性材料の少なくとも一部は、その網目構造内に分散され得る。その上、ある場合には、ここに記載されたゲルは、特定の温度の場合を含む、定常状態にあるときに、流動を示さない。さらに、ある場合には、ここに記載されたゲルは、共有結合ゲルではない。
【0022】
さらに、ある場合には、ここに記載されたゲルは、特定の例において下記に記載されるように測定した場合、20〜30℃の温度で、少なくとも約100センチポアズ(cP)、少なくとも約200cP、少なくとも約500cP、少なくとも約1000cP、少なくとも約2000cP、少なくとも約3000cP、少なくとも約5000cP、または少なくとも約10,000cPの動的剪断粘度を有する。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたゲルは、20〜30℃の温度で、約100cPと約20,000cPの間、約100cPと約10,000cPの間、約500cPと約20,000cPの間、約500cPと約5,000cPの間、約1000cPと約20,000cPの間、約1000cPと約10,000cPの間、約2000cPと約20,000cPの間、約2000cPと約10,000cPの間、約3000cPと約20,000cPの間、約3000cPと約10,000cPの間、約5000cPと約20,000cPの間、または約5000cPと約10,000cPの間の動的剪断粘度を有する。
【0023】
その上、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、約30℃と約75℃の間の液体−ゲル転移温度または融点を示す。ある場合には、そのインクは、約40℃と約50℃の間、約45℃と約70℃の間、約45℃と約65℃の間、または約45℃と約60℃の間の液体−ゲル転移温度または融点を示す。さらに、いくつかの実施の形態において、その液体−ゲル転移温度または融点は、急な液体−ゲル転移温度または融点である。例えば、ある場合には、インクは、X±10℃またはX±5℃の温度範囲に亘り液体−ゲル転移を行い、式中、Xは、転移の中心となる温度(例えば、X=55℃)である。他の場合には、インクは、X±20℃またはX±15℃の温度範囲に亘り液体−ゲル転移を行う。さらに、ここに記載されたインクの液体−ゲル転移温度は、下記の項目IIにさらに記載されるように、インクのゲル化時間で測定された温度に相当し得る。この液体−ゲル転移温度は、下記に実施例5においてさらに記載されるように、インクの粘度のステップ関数変化に基づいて決定しても差し支えない。
【0024】
さらに、ある場合には、ここに記載されたインクは、低い融解熱を有する。例えば、いくつかの実施の形態において、ここに記載された液体−ゲル転移の融解熱は、約20J/g以下、約15J/g以下、または約10J/g以下である。ある場合には、その液体−ゲル転移の融解熱は、約7J/g以下、約6J/g以下、約5J/g以下、約4J/g以下、約3J/g以下、または約2J/g以下である。いくつかの実施の形態において、その液体−ゲル転移の融解熱は、約0.5J/gと約20J/gの間、約1J/gと約15J/gの間、約5J/gと約10J/gの間、約0.5J/gと約7J/gの間、約1J/gと約5J/gの間、または約1J/gと約3J/gの間である。
【0025】
その上、ここに記載されたインクは、いくつかの実施の形態において、3Dプリントシステムで経験する噴射温度で流体である。さらに、ある場合には、インクは、3D物品または物体の製造中に、表面上に一旦堆積されたら、固化するか、またはゲルになる。あるいは、他の場合には、インクは、表面上に堆積された際に、実質的に流体のままである。さらに、ここに記載されたインクは、1つ以上の3Dプリントシステムの要件およびパラメータに調和する粘度プロファイルを有し得る。いくつかの実施の形態において、例えば、ここに記載されたインクの粘度は、ASTM規格D2983(例えば、Brookfield Model DV−II+Viscometerを使用して)にしたがって測定した場合、約80℃の温度で、約8.0cPから約14.0cP、約9.5cPから約12.5cP、または約10.5cPから約12.5cPに及ぶ。いくつかの実施の形態において、インクの粘度は、約85〜87℃の温度で、約8.0cPから約10.0cPに及ぶ。ここに記載されたインクの粘度は、ある場合には、ASTM規格D2983にしたがって測定した場合、約65℃の温度で、約8.0cPから約19.0cP、約8.0cPから約13.5cP、約11.0cPから約14.0cP、約11.5cPから約13.5cP、または約12.0cPから約13.0cPに及ぶ。
【0026】
その上、ここに記載されたインクは、いくつかの実施の形態において、分子染料、粒状無機顔料、または粒状有機着色剤などの着色剤をさらに含む。ここに記載されたインクは、光開始剤、防止剤、安定剤、増感剤、およびそれらの組合せからなる群より選択される1種類以上の添加剤もさらに含んでもよい。
【0027】
さらに、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、電磁スペクトルの可視領域を含む領域において、高い光透過性を有し得る。ある場合には、例えば、そのインクは、約0.01から10mm、約0.03から10mm、0.05から10mm、0.1から10mm、0.3から0.8mm、0.5から10mm、1から10mm、または5から10mmの厚さなどの所定の厚さで、約350nmと約750nmの間で、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の透過率の光透過性を有する。ある場合には、ここに記載されたインクは、上述した厚さなどの所定の厚さで、約350nmと約750nmの間の波長で、約70%と約95%の間、約80%と約99.99%の間、または約90%と約95%の間の透過率の光透過性を有する。ここに記載された光透過性を有するインクは、3Dプリントカラー化過程におけるインクの使用を促進させることができ、ここで、プリントされた3D物品の知覚色は、物品の表面に沿ったxおよびy方向ではなく、むしろ部品の表面と垂直な、部品のz方向における個別色のディザリングに基づく。
【0028】
ここで、インクの特定成分に移ると、ここに記載されたインクは、硬化性材料を含む。その硬化性材料は、本開示の目的に矛盾しないいかなる量で、インク中に存在しても差し支えない。ある場合には、硬化性材料は、インクの総質量に基づいて、約99質量%まで、約95質量%まで、約90質量%まで、または約80質量%までの量で存在する。ある場合には、ここに記載されたインクは、インクの総質量に基づいて、約10〜95質量%の硬化性材料を含む。いくつかの実施の形態において、インクは、約20〜80質量%の硬化性材料、約30〜70質量%の構築材料、または約70〜90質量%の硬化性材料を含む。
【0029】
その上、本開示の目的に矛盾しないいかなる硬化性材料を使用してもよい。ある場合には、硬化性材料は、1種類以上の重合性成分を含む。ここでの参照目的の「重合性成分」は、プリントされた3D物品または物体を提供するために重合または硬化できる成分を含む。重合または硬化は、本開示の目的に矛盾しないいかなる様式で行っても差し支えない。いくつかの実施の形態において、例えば、重合または硬化は、重合または架橋反応を開始するのに十分なエネルギーを有する電磁放射線を照射する工程を含む。例えば、ある場合には、紫外線(UV)放射を使用しても差し支えない。
【0030】
さらに、本開示の目的に矛盾しないいかなる重合性成分を使用してもよい。いくつかの実施の形態において、重合性成分は、1種類以上の官能基または部分であって、重合反応などにおいて、別の単量体化学種の同じまたは異なる官能基または部分と反応して、1つ以上の共有結合を形成することができる1種類以上の官能基または部分を有する化学種などの、単量体化学種を含む。重合反応は、ある場合には、エチレン不飽和の地点を含む、不飽和の地点の間のものなどの、フリーラジカル重合を含む。いくつかの実施の形態において、重合性成分は、ビニル基またはアリル基などの、少なくとも1つのエチレン不飽和部分を含む。ある場合には、重合性成分は、ここに記載されたような不飽和の1つ以上の地点などにより、追加の重合を経ることができるオリゴマー化学種を含む。いくつかの実施の形態において、重合性成分は、ここに記載された、1種類以上の単量体化学種および1種類以上のオリゴマー化学種を含む。ここに記載された、単量体化学種および/またはオリゴマー化学種は、1つの重合性部分または複数の重合性部分を有し得る。例えば、ある場合には、重合性成分は、1つ、2つ、または3つのエチレン不飽和部分を有する。
【0031】
さらに、ある場合には、重合性成分は、1種類以上の光重合性または光硬化性化学種を含む。光重合性化学種は、いくつかの実施の形態において、紫外線またはUV硬化性化学種を含む。ある場合には、重合性成分は、約300nmから約400nmに及ぶ波長で、光重合性または光硬化性である。あるいは、他の場合には、重合性成分は、電磁スペクトルの可視波長で、光重合性である。
【0032】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された重合性成分は、1種類以上の(メタ)アクリレート種を含む。ここに用いたように、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートもしくはそれらの混合物または組合せを含む。ある場合には、重合性成分は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、および/またはEBECRYL(登録商標)7100などのアクリレートアミンオリゴマー樹脂を含む。ある場合には、UV重合性または硬化性樹脂またはオリゴマーは、フリーラジカル光開始剤の存在下で重合する、インクの噴射温度で露出状態において少なくとも1週間に亘り、かつ密閉状態において少なくとも4週間に亘り、熱安定性である、および/または噴射温度より高い沸点を有する、どのメタクリレートまたはアクリレート樹脂も含み得る。いくつかの実施の形態において、重合性成分は、噴射温度より高い引火点を有する。
【0033】
ここに記載されたインクに使用するのに適したウレタン(メタ)アクリレートは、ある場合には、公知の様式で、典型的には、ヒドロキシル末端ウレタンをアクリル酸またはメタクリル酸と反応させて、対応するウレタン(メタ)アクリレートを得ることにより、もしくはイソシアネート末端プレポリマーをヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートと反応させて、ウレタン(メタ)アクリレートを得ることにより、調製できる。適切なプロセスが、特に、欧州特許出願公開第114982号および同第133908号の各明細書に開示されている。そのような(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、ある場合には、約400から10,000、または約500から7,000であり得る。ウレタン(メタ)アクリレートは、製品名CN980、CN981、CN975およびCN2901でSARTOMER Companyから、または製品名BR−741でBomar Specialties Co.(コネティカット州、ウィンステッド所在)から、市販もされている。ここに記載されたいくつかの実施の形態において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの粘度は、ASTM D2983に準拠した様式で測定した場合、約50℃で、約140,000cPから約160,000cP、または約50℃で、約125,000cPから約175,000cPに及ぶ。ここに記載されたいくつかの場合において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの粘度は、ASTM D2983に準拠した様式で測定した場合、約50℃で、約100,000cPから約200,000cP、または約50℃で、約10,000cPから約300,000cPに及ぶ。
【0034】
その上、ある場合には、重合性成分は、様々な組合せで使用できる、(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、およびトリ(メタ)アクリレートなどの1種類以上の低分子量材料を含む、いくつかの実施の形態において、例えば、重合性成分は、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、単官能性脂肪族ウレタンアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、およびトリデシルメタクリレートの1種類以上を含む。
【0035】
さらに、いくつかの実施の形態において、重合性成分は、1,3−または1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたはビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールF、もしくはエトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールSを含む、脂肪族、脂環式または芳香族ジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートエステルを含む。
【0036】
先に記載されたように、重合性成分は、ある場合には、1種類以上のトリ(メタ)アクリレートを含む。いくつかの実施の形態において、トリ(メタ)アクリレートとしては、1,1−トリメチロールプロパントリアクリレートまたはメタクリレート、エトキシル化またはプロポキシル化1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレートまたはメタクリレート、エトキシル化またはプロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリレートまたはメタクリレート、および/またはトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートが挙げられる。
【0037】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクの重合性成分は、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートまたはビス(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートなどの、1種類以上の高級官能性アクリレートまたはメタクリレートを含む。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクの(メタ)アクリレートの分子量は、約250から700に及ぶ。
【0038】
ある場合には、重合性成分としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレートおよびn−ドデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−および3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−または3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、イソデシルアクリレート、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0039】
ここに記載されたいくつかの実施の形態に有用な重合性成分の種の追加の非限定的例に以下がある:商標名SR506AでSARTOMERから市販されている、イソボルニルアクリレート(IBOA);商標名SR423AでSARTOMERから市販されている、イソボルニルメタクリレート;商標名SR611でSARTOMERから市販されている、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;商標名GENOMER1122でRAHN USAから市販されている、単官能性ウレタンアクリレート;商標名EBECRYL8402でALLNEXから市販されている、脂肪族ウレタンジアクリレート;商標名SR272でSARTOMERから市販されている、トリエチレングリコールジアクリレート;商標名SR205でSARTOMERから市販されている、トリエチレングリコールジメタクリレート;商標名SR833SでSARTOMERから市販されている、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;商標名SR368でSARTOMERから市販されている、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;およびSR339の商標名でSARTOMERから市販されている、2−フェノキシエチルアクリレート。他の市販の硬化性材料も使用してよい。
【0040】
ここに記載されたインクは、ゲル化剤も含む。ここに記載されたインクのゲル化剤は、ある場合には、エチレン不飽和種などの硬化性種を含む。例えば、いくつかの実施の形態において、ゲル化剤は、1つ以上の末端オレフィン部分を含む、1つ以上のオレフィン部分を有する化学種を含む。末端オレフィン部分は、いくつかの実施の形態において、アリル部分または(メタ)アクリレート部分を含む。他の場合には、末端オレフィン部分はビニル部分を含む。しかしながら、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、ビニルエーテル部分を含まない。
【0041】
さらに、ある場合には、ここに記載されたインクのゲル化剤は、複数の末端オレフィン部分を有する化学種を含む。さらに、ある場合には、その化学種は二量体を含み、その二量体の各単量体サブユニットは少なくとも1つの末端オレフィン部分を含む。ここに記載された硬化性種を含むゲル化剤を使用すると、ある場合には、そのゲル化剤を、インクの硬化性材料などの、ここに記載されたインクの1種類以上の他の成分に共有結合させることが可能になる。このようにして、ここに記載されたゲル化剤は、硬化したインクから相分離しないまたは実質的に相分離しないであろう。このように、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、硬化したときに、単相から実質的になることができる。
【0042】
ここに記載されたインクのゲル化剤は、水素結合に関与できる窒素含有部分を1つ以上含むこともできる。例えば、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたゲル化剤は、1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分を有する化学種を含む。ある場合には、その化学種は、複数のウレタン、尿素、および/またはアミド部分を含む。そのような化学種を含むゲル化剤を使用すると、いくつかの実施の形態において、前記インクの硬化性材料が1つ以上のウレタン含有種を含む場合を含み、20〜30℃の温度などの周囲温度で、インクのゲル相の形成を促進するであろう。
【0043】
その上、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、1つ以上の疎水性セグメントを有する化学種を含み得る。本開示の目的に矛盾しないいかなる疎水性セグメントを使用してもよい。ある場合には、その疎水性セグメントは炭化水素セグメントを含む。炭化水素セグメントは、ある場合には、6から50の炭素原子を有する。その上、疎水性セグメントは、脂肪族または芳香族炭化水素セグメントを含み得る。ある場合には、例えば、疎水性セグメントは、アルキル、アルケニル、またはアリール部分を含む。さらに、いくつかの実施の形態において、炭化水素セグメントは、線状アルキルまたはアルケニル部分などの線状炭化水素部分を含む。他の場合には、炭化水素セグメントは、アリール部分などの、環状または分岐炭化水素部分を含む。さらに、ある場合には、分岐炭化水素セグメントは、Uniqema(デラウェア州、ニューカッスル所在)から得られるPRIPOL 2033ダイマージオールまたはPRIPOL 1009ダイマー酸混合物により提供される、アルキル部分などの二量体種を含む。
【0044】
ここに記載されたゲル化剤の炭化水素セグメントは、飽和アルキル部分であっても差し支えない。そのような飽和アルキル部分は、ある場合には、2〜36の炭素原子を含む。さらに、その飽和アルキル部分は、線状であっても、または分岐していても差し支えない。いくつかの実施の形態において、飽和アルキル部分は、8〜30の炭素原子、10〜28の炭素原子、または10〜20の炭素原子を有する。他の実施の形態において、飽和アルキル部分は、12〜26の炭素原子、14〜24の炭素原子、または14〜20の炭素原子を有する。その上、ある場合には、飽和アルキル部分は、オクチル、ノニル、デシル、またはウンデシル部分を含む。他の実施の形態において、飽和アルキル部分は、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、またはエイコシル部分を含む。
【0045】
その上、ここに記載されたゲル化剤の化学種の疎水性セグメントは、ここに記載された炭化水素部分に限定されない。ここに記載されたゲル化剤の化学種に、他の疎水性セグメントも含んでよい。例えば、ある場合には、ここに記載された化学種の疎水性セグメントは、疎水性アクリル、アミド、イミド、炭酸基、エステル、エーテル、ハロカーボン、ピリジン、またはピロリドンポリマーまたはオリゴマーなどの疎水性有機ポリマーまたはオリゴマーを含む。さらに、ここに記載されたインクのゲル化点および/またはゲル化剤の化学種の融点は、ある場合には、下記にさらに記載されるように、ゲル化剤の化学種の疎水性セグメントのサイズおよび/または化学的同一性に基づいて選択することができる。
【0046】
ここに記載されるように、ゲル化剤は、1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分により、ここに記載された疎水性セグメントに結合した、ここに記載された1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含み得る。ある場合には、その1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分は、その疎水性セグメントをその1つ以上の末端オレフィン部分に直接結合させる。他の場合には、その1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分は、その疎水性セグメントをその1つ以上の末端オレフィン部分に間接的に結合させる。いくつかの実施の形態において、例えば、ゲル化剤の化学種は、その1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分と、その1つ以上の末端オレフィン部分との間に配置された、1つ以上の追加の疎水性セグメントをさらに含む。さらに、ある場合には、ゲル化剤は、先に記載されたウレタン、尿素、および/またはアミド部分の代わりに、エステルまたは炭酸エステル結合または部分を含むことも可能である。
【0047】
ここに記載された1つ以上の疎水性セグメントを含むゲル化剤を使用すると、いくつかの実施の形態において、そのゲル化剤を、インク中に含まれることのある1つ以上のオリゴマー硬化性種などの、インクの1種類以上の他の成分と部分的にまたは完全に混和性にすることが可能になる。
【0048】
さらに、ある場合には、ここに記載されたゲル化剤の化学種は、前記1つ以上のウレタン、尿素、および/またはアミド部分により疎水性セグメントに結合した複数の末端オレフィン部分を含む。他の実施の形態において、その化学種は、ここに記載された疎水性セグメントに1つ以上の末端オレフィン部分を結合する複数のウレタン、尿素、および/またはアミド部分を含み得る。さらに、ある場合には、その化学種は、複数のウレタン、尿素、および/またはアミド部分により疎水性セグメントに結合した複数の末端オレフィン部分を含む。
【0049】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、化合物(A)の化合物(B)および化合物(C)との反応により形成される:
【0050】
【化1】
式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から50の炭素原子または1から30の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;R4は、−Hまたは−CH3であり;Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−である。
【0051】
例えば、ある場合には、R1は、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、またはヘキサメチレン部分である。他の場合には、R1は、4から16の炭素原子を有する分岐アルキル部分である。いくつかの実施の形態において、R2は、C18〜C40ダイマージオールなどのダイマージオールである。ここに記載されたいくつかの実施の形態に使用するのに適したダイマージオールの非限定的例の1つは、UniqemaからのPRIPOL 2033ダイマージオールである。そのようなダイマージオールを使用すると、ある場合には、さらに下記に記載するように、二量体ゲル化剤化学種を提供することができる。さらに、いくつかの実施の形態において、R3は、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、またはヘキサメチレン部分である。他の場合には、R3は、4から16の炭素原子を有する分岐アルキル部分である。一般に、R1、R2、およびR3は、所望の融点を有するゲル化剤の化学種を得る、および/または所望の液体−ゲル転移温度を有するインクを得る、ように選択することができる。例えば、R3を、より短いおよび/またはより高度に分岐したアルキル部分であるように選択すると、液体−ゲル転移温度がより低いインクを提供することができる。
【0052】
化合物(A)、(B)、および(C)は、ここに記載されたゲル化剤を形成するために、本開示の目的に矛盾しないいかなるモル比または当量で反応させても差し支えない。ある場合には、例えば、ゲル化剤は、化合物(B)と比べて過剰な化合物(A)および/または化合物(C)から形成される。いくつかの実施の形態において、ゲル化剤は、2当量の化合物(A)、1当量の化合物(B)、および2当量の化合物(C)から形成される。さらに、いくつかの実施の形態において、化合物(A)、(B)、および(C)の反応生成物は、ポリマーまたはオリゴマーではない。その上、ある場合には、ここに記載されたゲル化剤は、所望の量の化合物(A)、(B)、および(C)の反応から形成された生成物の混合物を含む。そのようないくつかの場合において、その生成物の混合物は、生成物の統計的混合物である。いくつかの実施の形態において、ここに記載された混合物中の反応生成物の分布は、熱力学的に制御される。他の場合には、混合物中の反応生成物の分布は、速度論的に制御される。
【0053】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、式(I):
【0054】
【化2】
の構造を有する化学種を含み、式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から30の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;R4は、−Hまたは−CH3であり;Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−であり、
は、R2部分間の1つの炭素−炭素結合を表す。
【0055】
いくつかの実施の形態において、R1は−(CH2n−であり、ここで、nは2と10の間の整数であり;R2は−(CH2m−であり、ここで、mは8と22の間の整数であり;R3は−(CH2p−であり、ここで、pは2と6の間の整数であり;Xは−O−であり、R2部分間の1つの炭素−炭素結合は、R2部分の4番目の炭素と14番目の炭素との間で生じる。例えば、ある場合には、ゲル化剤は、式(II):
【0056】
【化3】
の構造を有する化学種を含む。
【0057】
さらに、いくつかの実施の形態において、ここに記載された特定のゲル化剤の化学種の1つ以上のウレタン部分は、水素結合に関与できる異なる窒素含有部分により少なくとも部分的に置き換えることができる。例えば、ある場合には、ここに記載された化学種の1つ以上のウレタン部分は、尿素またはアミド部分により置き換えられている。いくつかの実施の形態において、例えば、先の化合物(C)は、前記ゲル化剤の化学種中に尿素結合が与えられるように、化合物(C’):
【0058】
【化4】
により少なくとも部分的に置き換えることができ、式中、R3は、先に記載されたようなものである。同様に、先の化合物(A)を、化合物(A’):
【0059】
【化5】
などのモノイソシアネートと少なくとも部分的に置き換えることも可能であり、式中、R1は、先に記載されたようなものである。そのようないくつかの実施の形態において、化合物(A’)は、化合物(B)を必要とせずに、化合物(C)または化合物(C’)と反応させることができる。このようにして、ビニル部分およびウレタン結合または尿素結合を含むゲル化剤を提供することができる。さらに、ある場合には、先の化合物(B)は、化合物(B’):
【0060】
【化6】
と少なくとも部分的に置き換えることができ、式中、R2は、先に記載されたようなものである。
【0061】
このように、ある場合には、ここに記載されたインクのゲル化剤は、(1)化合物(A)または(A’)の化合物(C)または(C’)との反応および/または(2)化合物(A)または(A’)の化合物(B)または(B’)並びに化合物(C)または(C’)との反応により形成される:
【0062】
【化7】
式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から50、1から30、1から20、または1から10の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;R4は、−Hまたは−CH3であり;Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−である。例えば、ある場合には、化合物(B’)は、8から22または8から16の炭素原子を有する脂肪アルコールである。同様に、ある場合には、化合物(C)は、ビニル基、アリル基、または(メタ)アクリレート基を末端とするモノアルコールである。
【0063】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、化合物(A)の化合物(C)との反応により形成される。さらに、他の場合には、ここに記載されたインクのゲル化剤は、化合物(A)の化合物(B’)並びに化合物(C)との反応により形成される。そのような場合のあるものにおいて、R2は、(例えば、化合物(B’)が脂肪アルコールであるように)上述した線状アルキル部分を含み、Xは、(例えば、化合物(C)がアクリレート末端またはメタクリレート末端アルコールであるように)−OC(O)−である。
【0064】
化合物(A)または(A’)、(B)または(B’)、および(C)または(C’)は、ここに記載されたゲル化剤を形成するために、本開示の目的に矛盾しないいかなるモル比または当量で反応させても差し支えない。ある場合には、例えば、ゲル化剤は、ほぼ当モル量の化合物(B’)および化合物(C)から形成される。例えば、いくつかの実施の形態において、ゲル化剤は、a:b:cのモル比の化合物(A)、(B’)、および(C)の反応により形成され、ここで、aは1であり、bおよびcの各々は、独立して、0.4から0.6である。さらに、いくつかの実施の形態において、化合物(A)または(A’)、(B)または(B’)、および(C)または(C’)の反応生成物は、ポリマーまたはオリゴマーではない。
【0065】
その上、化合物(A)または(A’)、(B)または(B’)、および(C)または(C’)は、ゲル化剤を形成するために、本開示の目的に矛盾しないいかなる様式で互いに反応させても差し支えないことを理解すべきである。例えば、ある場合には、それらの化合物は、反応体化合物の全てをただ1つの反応槽に加えることにより達成されるように、互いに同時に反応させられる。あるいは、他の場合には、それらの化合物は、最初に化合物(A)または(A’)を化合物(B)または(B’)と反応させて、反応生成物を形成し、次いで、その反応生成物を化合物(C)または(C’)と反応させることにより達成されるように、「段階的」様式で反応させても差し支えない。段階的反応は、最初に化合物(A)または(A’)を化合物(C)または(C’)と反応させて、反応生成物を形成し、次いで、その反応生成物を化合物(B)または(B’)と反応させる工程も含んでよい。
【0066】
さらに、ある場合には、ここに記載されたゲル化剤は、所望の量の化合物(A)または(A’)、(B)または(B’)、および(C)または(C’)の反応により形成された生成物の混合物を含む。そのような場合のあるものにおいて、生成物の混合物は、生成物の統計的混合物である。いくつかの実施の形態において、ここに記載された混合物中の反応生成物の分布は、熱力学的に制御される。他の場合には、混合物中の反応生成物の分布は、速度論的に制御される。例えば、ある場合には、前記反応生成物は、1分子の化合物(A)が1分子の化合物(B’)および1分子の化合物(C)と反応して、2つのウレタン結合、1つの炭化水素末端、および1つのエチレン不飽和末端(ビニル、アリル、または(メタ)アクリレート末端などの)を含む種を形成している生成物などの生成物の統計的分布を含む。そのような生成物は、2つのウレタン結合および2つの炭化水素末端または2つのエチレン不飽和末端を有する種も含んで差し支えない。
【0067】
ある場合には、ここに記載されたインクのゲル化剤は、式(III):
【0068】
【化8】
の構造を有する化学種を含み、式中、R1、R2、およびR3の各々は、独立して、1から50、1から30、1から20、または1から10の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;R4は、−Hまたは−CH3であり;Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−である。例えば、ある場合には、R1は、4から8の炭素原子を有する線状アルキル部分であり、R2は、8から18の炭素原子を有する線状アルキル部分であり、R3は、2から4の炭素原子を有する線状アルキル部分であり、Xは−OC(O)−である。
【0069】
さらに、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、化合物(A)の化合物(B”)並びに化合物(C)または(C’)との反応により形成される:
【0070】
【化9】
式中、R1およびR3の各々は、独立して、1から50、1から30、1から20、または1から10の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;R4は、−Hまたは−CH3であり;R5は、−Hもしくは1から50、1から30、1から20、または1から10の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル部分であり;R6、R7、およびR8の各々は、独立して、1から50、1から30、1から20、または1から10の炭素原子を有する、線状または分岐アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキレンオキシド部分、またはアルキルアルキレンオキシド部分であり;Xは、−O−、−OCH2−、−OC(O)−、または−CH2−である。例えば、ある場合には、化合物(B”)は、R6、R7、およびR8の各々が、独立して、エチレンオキシド(EO)またはプロピレンオキシド(PO)繰り返し単位、もしくはメチレンまたはプロピレン基に結合したEOまたはPO繰り返し単位である、トリオールである。同様に、ある場合には、化合物(C)は、ビニル基、アリル基、または(メタ)アクリレート基を末端とするモノアルコールである。
【0071】
このように、ある場合には、ここに記載されたインクのゲル化剤は、式(IV):
【0072】
【化10】
の構造を有する化学種を含み、式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびXは、先に記載されたようなものである。例えば、ある場合には、R1は−(CH26−であり;R3は−(CH24−であり;R5は−Hであり;R6、R7、およびR8の各々は、メチレン基またはエチレン基に結合したエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの1から10の繰り返し単位であり;Xは−OC(O)−である。
【0073】
ここに記載されたインクのゲル化剤は、アルキル鎖に2〜36の炭素原子を有するアルキルイソシアネートおよびアルキル鎖に2〜18または2〜8の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物も含んで差し支えない。アルキルイソシアネートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの一方または両方のアルキル鎖は、いくつかの実施の形態において、線状である。他の場合には、少なくとも一方のアルキル鎖は分岐している。例えば、ある場合には、アルキルイソシアネートとしては、ドデシルイソシアネート、トリデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ペンタデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、ヘプタデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ノナデシルイソシアネート、エイコシルイソシアネート、またはそれらの組合せが挙げられる。さらに、いくつかの実施の形態において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基は、第一級アルコールを含む。他の場合には、前記ヒドロキシル基は、第二級アルコールを含む。ある場合には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、またはそれらの組合せが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、ヒドロキシヘプチル、ヒドロキシオクチル、ヒドロキシノニル、またはヒドロキシデシル(メタ)アクリレートも挙げられる。
【0074】
その上、ここに記載されたインクのゲル化剤は、アルキル鎖に2〜18の炭素原子を有するイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル鎖に4〜36の炭素原子を有する脂肪アルコールの反応生成物も含んで差し支えない。例えば、いくつかの実施の形態において、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、3−イソシアナトプロピルアクリレート、3−イソシアナトプロピルメタクリレート、4−イソシアナトブチルアクリレート、4−イソシアナトブチルメタクリレート、またはそれらの組合せが挙げられる。脂肪アルコールとしては、ある場合には、カプリルアルコール、ペラルゴンアルコール、カプリルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンエイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、モンタニルアルコール、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0075】
さらに、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、アルキル鎖に2〜36の炭素原子を有するアルキルイソシアネートおよびアルキル鎖に2〜18の炭素原子を有するアミノアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物を含む。アルキルイソシアネートおよびアミノアルキル(メタ)アクリレートの一方または両方のアルキル鎖は、いくつかの実施の形態において、線状である。他の実施の形態において、少なくとも一方のアルキル鎖は分岐している。例えば、ある場合には、アルキルイソシアネートとしては、ドデシルイソシアネート、トリデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ペンタデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、ヘプタデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ノナデシルイソシアネート、エイコシルイソシアネート、またはそれらの組合せが挙げられる。さらに、いくつかの実施の形態において、アミノアルキル(メタ)アクリレートのアミノ基は第一級アミンを含む。他の実施の形態において、アミノ基は第二級アミンを含む。いくつかの実施の形態において、アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0076】
さらに他の実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、アルキル鎖に2〜18の炭素原子を有するイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル鎖に4〜36の炭素原子を有する脂肪アミンの反応生成物を含む。例えば、いくつかの実施の形態において、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、3−イソシアナトプロピルアクリレート、3−イソシアナトプロピルメタクリレート、4−イソシアナトブチルアクリレート、4−イソシアナトブチルメタクリレート、またはそれらの組合せが挙げられる。脂肪アミンは、いくつかの実施の形態において、線状1−アルキルアミンを含む。いくつかの実施の形態において、脂肪アミンとしては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、またはエイコシルアミンが挙げられる。
【0077】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクのゲル化剤は、式(V):
【0078】
【化11】
の化学種を含み、式中、xは0から34の整数であり、yは1から17の整数であり、R4はHまたはCH3である。いくつかの実施の形態において、xは8から20または10から16の整数である。いくつかの実施の形態において、yは1から6または1から4の整数である。
【0079】
他の場合には、ここに記載されたインクのゲル化剤は、式(VI):
【0080】
【化12】
の化学種を含み、式中、xは0から34の整数であり、yは1から17の整数であり、R4はHまたはCH3である。いくつかの実施の形態において、xは8から20または10から16の整数である。いくつかの実施の形態において、yは1から6または1から4の整数である。
【0081】
さらに他の場合には、ここに記載されたインクのゲル化剤は、式(VII):
【0082】
【化13】
の化学種を含み、式中、xは0から34の整数であり、yは1から17の整数であり、R4はHまたはCH3である。ある場合には、xは8から20または10から16の整数である。いくつかの実施の形態において、yは1から6または1から4の整数である。
【0083】
さらに、ここに記載されたインクのゲル化剤は、いくつかの実施の形態において、約45℃と約95℃の間、約50℃と約90℃の間、約50℃と約80℃の間、約55℃と約75℃の間、約60℃と約90℃の間、約60℃と約75℃の間、または約65℃と約95℃の間を中心とする融点を有する。
【0084】
ここに記載されたゲル化剤は、本開示の目的に矛盾しないいかなる量でインク中に存在しても差し支えない。ある場合には、例えば、ゲル化剤は、インク中に、そのインクの総質量に基づいて、約2〜25質量%または2〜20質量%の量で存在する。他の場合には、ゲル化剤は、インク中に、そのインクの総質量に基づいて、約3〜10質量%、約3〜9質量%、約5〜20質量%、約5〜10質量%、約10〜25質量%、または約10〜20質量%の量で存在する。
【0085】
ここに記載されたインクは、着色剤も含んで差し支えない。ここに記載されたインクの着色剤は、粒状顔料などの粒状着色剤、または分子染料などの分子着色剤であり得る。本開示の目的に矛盾しないいかなるそのような粒状または分子着色剤を使用してもよい。ある場合には、例えば、インクの着色剤は、TiO2および/またはZnOなどの無機顔料を含む。いくつかの実施の形態において、インクの着色剤は、RGB、sRGB、CMY、CMYK、L***、またはPantone(登録商標)カラー化スキームに使用するための着色剤を含む。さらに、ここに記載されたインクの粒状着色剤は、ある場合には、インクの貯蔵中または非使用時に、他のインク成分から「沈降」または他の様式で相分離しない。
【0086】
その上、ここに記載されたインクは、いくつかの実施の形態において、1種類以上の添加剤をさらに含む。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、光開始剤、防止剤、安定剤、増感剤、およびそれらの組合せからなる群より選択される1種類以上の添加剤をさらに含む。例えば、ある場合には、インクは、1種類以上の光開始剤をさらに含む。本開示の目的に矛盾しないいかなる光開始剤を使用しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、光開始剤は、フリーラジカルを生じるために、好ましくは約250nmと約400nmの間、または約300nmと約385nmの間の光を吸収するように働く、アルファ開裂型(単分子分解過程)光開始剤、または水素引き抜き光増感剤−第三級アミン相乗効果剤を含む。
【0087】
アルファ開裂型光開始剤の例に、Irgacure 184(CAS 947−19−3)、Irgacure 369(CAS 119313−12−1)、およびIrgacure 819(CAS 162881−26−7)がある。光増感剤−アミンの組合せの例に、Darocur BP(CAS 119−61−9)のジエチルアミノエチルメタクリレートとの組合せがある。
【0088】
それに加え、ある場合には、適切な光開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾイルエーテル類、および酢酸ベンゾインを含むベンゾイン類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノンおよび1,1−ジクロロアセトフェノンを含むアセトフェノン類、ベンジル、ベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノンを含むアントラキノン類、トリフェニルホスフィン、ベンゾイルホスフィンオキシド類、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO)、ベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントンおよびキサントンなどのベンゾフェノン類、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体または1−フェニル−1,2−プロパンジオン、2−O−ベンゾイルオキシム、1−アミノフェニルケトンまたは1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトンおよび4−イソプロピルフェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトンなどの1−ヒドロキシフェニルケトンが挙げられる。
【0089】
適切な光開始剤としては、アセトフェノン、2,2−ジアルコキシベンゾフェノンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンまたは2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン(=2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン)などの1−ヒドロキシフェニルケトンを含む、HeCdレーザ線源に使用するのに働くことのできるものも挙げられる。それに加え、ある場合には、適切な光開始剤としては、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタールを含む、Arレーザ線源に使用するのに働くことのできるものが挙げられる。いくつかの実施の形態において、光開始剤としては、α−ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタールまたは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドもしくはそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
適切な光開始剤の別の部類は、ある場合には、化学線を吸収し、重合開始のためのフリーラジカルを生成できるイオン性染料−対イオン化合物を含む。いくつかの実施の形態において、イオン性染料−対イオン化合物を含有するインクは、約400nmから約700nmの調節可能な波長範囲内の可視光で、より可変的に硬化させられる。イオン性染料−対イオン化合物およびその作動様式が、欧州特許出願公開第0223587号、並びに米国特許第4751102号、同第4772530号、および同第4772541号の各明細書に開示されている。
【0091】
光開始剤は、本開示の目的に矛盾しないいかなる量で、ここに記載されたインク中に存在しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、光開始剤は、インク中に、そのインクの総質量に基づいて、約5質量%までの量で存在する。ある場合には、光開始剤は、約0.1質量%から約5質量%に及ぶ量で存在する。
【0092】
さらに、いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、1種類以上の増感剤をさらに含む。増感剤は、存在することもある1種類以上の光開始剤の有効性を増加させるために、インクに加えることができる。本開示の目的に矛盾しないいかなる増感剤を使用してもよい。ある場合には、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(ITX)または2−クロロチオキサントン(CTX)を含む。
【0093】
増感剤は、本開示の目的に矛盾しないいかなる量でインク中に存在しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、増感剤は、インクの総質量に基づいて、約0.1質量%から約2質量%、または約0.5質量%から約1質量%に及ぶ量で存在する。
【0094】
それに加え、ここに記載されたインクは、いくつかの実施の形態において、1種類以上の重合防止剤または安定剤をさらに含む。この組成物に追加の熱安定性を与えるために、インクに重合防止剤を加えても差し支えない。本開示の目的に矛盾しないいかなる重合防止剤を使用してもよい。ある場合には、重合防止剤は、メトキシヒドロキノン(MEHQ)を含む。安定剤は、いくつかの実施の形態において、1種類以上の酸化防止剤を含む。安定剤は、本開示の目的に矛盾しないいかなる酸化防止剤を含んでも差し支えない。ある場合には、適切な酸化防止剤としては、ここに記載されたいくつかの実施の形態において重合防止剤としても使用できる、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む、様々なアリール化合物が挙げられる。
【0095】
重合防止剤および/または安定剤は、本開示の目的に矛盾しないいかなる量でインク中に存在しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、重合防止剤は、約0.1質量%から約2質量%または約0.5質量%から1質量%に及ぶ量で存在する。同様に、ある場合には、安定剤は、インク中に、そのインクの総質量に基づいて、約0.1質量%から約5質量%、約0.5質量%から約4質量%、または約1質量%から約3質量%に及ぶ量で存在する。
【0096】
ここに記載されたインクは、硬化の前と後の両方に、先に記載された性質に加え、様々な所望の性質を示すことができる。硬化状態にあるインクは、いくつかの実施の形態において、少なくとも部分的に重合したおよび/または架橋した硬化性材料または重合性成分を含むインクを含む。例えば、ある場合には、硬化したインクは、少なくとも約10%重合または架橋している、もしくは少なくとも約30%重合または架橋している。いくつかの実施の形態において、硬化したインクは、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%重合または架橋している。ある場合には、硬化したインクは、約10%と約99%の間の割合で重合または架橋している。同様に、未硬化のインクまたは未硬化状態にあるインクは、ここに記載されたようには硬化されていないインクであって差し支えない。このように、いくつかの実施の形態において、未硬化インクは、10%未満しか重合または架橋していない、5%未満しか重合または架橋していない、3%未満しか重合または架橋していない、もしくは1%未満しか重合または架橋していないことがあり得る。
【0097】
ここに記載された硬化したインクは、ある場合には、インクの成分の相分離を示さないまたは相分離を実質的に示さない。例えば、ある場合には、インクは、硬化したときに、インクの総質量に基づいて、約10質量%未満しか抽出可能物を含まない。いくつかの実施の形態において、硬化したインクは、下記に記載されるように測定した場合、約5質量%未満、約3質量%未満、約2質量%未満、または約1質量%未満しか抽出可能物を含まない。
【0098】
その上、ここに記載された硬化したインクは、ある場合には、ASTM D638にしたがって測定した場合、約5%から約40%、約5%から約25%、または約5%から約20%の破断点伸びを有する。さらに、ここに記載された硬化したインクは、ある場合には、ASTM D638にしたがって測定した場合、約35〜55MPaまたは約40〜50MPaの引張強度を有することができる。いくつかの実施の形態において、硬化したインクは、ASTM D638にしたがって測定した場合、約1300〜2800MPaまたは約1500〜2500MPaの引張係数を有する。さらに、ある場合には、ここに記載されたインクは、硬化したときに、上述した性質を複数示すことができる。
【0099】
ここに記載されたインクは、本開示の目的に矛盾しないいかなる様式で製造しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、例えば、ここに記載されたインクを調製する方法は、インクの成分を混合する工程、その混合物を溶解させる工程、および溶解した混合物を濾過する工程を有してなる。混合物を溶解させる工程は、ある場合には、約75℃の温度または約75℃から約85℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、反応槽内にインクの全ての成分を入れ、得られた混合物を、撹拌しながら、約75℃から約85℃に及ぶ温度に加熱することにより、製造される。その加熱と撹拌は、混合物が実質的に均質な溶解状態に達するまで続けられる。一般に、溶解した混合物は、噴射や押出しと干渉するかもしれないどのような大きい望ましくない粒子も除去するために、流動性状態にある間に、濾過することができる。次いで、濾過された混合物は、周囲温度に冷却し、3Dプリントシステム内で使用する準備ができるまで、貯蔵することができる。
【0100】
II.3D物品をプリントする方法
別の態様において、3D物品または物体をプリントする方法がここに記載されている。いくつかの実施の形態において、3D物品をプリントする方法は、流体状態にあるここに記載されたインクの層を基体上に選択的に堆積させる工程を有してなる。先の項目Iに記載されたいかなるインクを使用してもよい。例えば、ある場合には、そのインクは、硬化性材料およびゲル化剤を含み、そのゲル化剤は、1つ以上のウレタン部分により疎水性セグメントに結合した1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含む。さらに、インクの層は、コンピュータ可読フォーマットにある3D物品の画像にしたがって堆積させることができる。いくつかの実施の形態において、インクは、事前に選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータにしたがって堆積される。
【0101】
さらに、ある場合には、ここに記載されたインクの1つ以上の層の厚さは、約0.03から約5mm、約0.03から約3mm、約0.03から約1mm、約0.03から約0.5mm、約0.03から約0.3mm、約0.03から約0.2mm、約0.05から約5mm、約0.05から約1mm、約0.05から約0.5mm、約0.05から約0.3mm、または約0.05から約0.2mmである。他の厚さも可能である。
【0102】
さらに、ある場合には、ここに記載された方法の基体は、3Dプリントシステムの構築台を含む。他の場合には、その基体は、構築材料またはインク、若しくは支持材料の先に堆積された層を含む。
【0103】
それに加え、いくつかの実施の形態において、ここに記載された方法は、インクの層の少なくとも1つを支持材料で支持する工程をさらに含む。本開示の目的に矛盾しないいかなる支持材料を使用してもよい。ある場合には、インクの層の少なくとも1つを支持材料で支持する工程は、3D物品の「張り出した」部分を支持する工程を含む。さらに、ある場合には、ここに記載されたインクから3D物品を形成することにより、プリント過程中に「堰き止め」または「被包」のために支持材料を使用する必要性がなくなる。
【0104】
ここに記載された方法は、インクの層を硬化させる工程をさらに含み得る。いくつかの実施の形態において、3D物品をプリントする方法は、インクを硬化させるのに十分な波長および強度の電磁放射線にそのインクを曝す工程をさらに含み、ここで、硬化させる工程は、インクの1つ以上の成分の1つ以上の重合性官能基を重合させる工程を含み得る。堆積されたインクの層は、ある場合には、インクの別の層または隣接する層の堆積の前に硬化される。
【0105】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクの事前に選択された量が、適切な温度に加熱され、適切なインクジェットプリンタのプリントヘッドまたは複数のプリントヘッドを通じて噴射されて、プリント槽内の基体を含むプリント台またはプリント基体上に層を形成する。ある場合には、インクの各層は、事前に選択されたCADパラメータにしたがって堆積される。インクを堆積させるための適切なプリントヘッドは、いくつかの実施の形態において、圧電Z850プリントヘッドである。ここに記載されたインクおよび支持材料を堆積させるための追加の適切なプリントヘッドは、様々なインクジェットプリント装置の製造業者から市販されている。例えば、XeroxプリントヘッドまたはRicohプリントヘッドも使用してよい。
【0106】
ここに記載されたインクを噴射するための選択肢として、インクを押し出す(比較的大きいオリフィスを通じることも含む)ことにより、インクを基体またはプリント表面上に選択的に堆積させることも可能である。インクを噴射することとは対照的に、ここに記載されたインクを押し出すことにより、プリントオリフィスを詰まらせずに、インク中により大きいサイズの粒状着色剤の使用を可能にすることができる。ある場合には、ここに記載されたインクは、少なくとも約0.2mm、少なくとも約0.3mm、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.5mm、または少なくとも約0.8mmの直径を有するオリフィスまたはノズルを通じてインクを押し出すことにより、選択的に堆積させることができる。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたインクは、約0.2mmと約1.0mmの間、約0.25mmと約0.8mm、または約0.35mmと約0.8mmの間の直径を有するオリフィスまたはノズルを通じて押し出すことができる。さらに、ここに記載されたインクを先の様式で押し出すと、いくつかの実施の形態において、高い特徴解像度を有するプリント物品が提供される。
【0107】
ここでの参照目的の、物品の「特徴解像度(feature resolution)」は、その物品の最小の制御可能な物理的特徴サイズであり得る。物品の特徴解像度は、マイクロメートル(μm)などの距離の単位で、または1インチ当たりのドット(dpi)の単位で記載することができる。当業者により理解されるように、より高い特徴解像度は、より高いdpi値に対応するが、μmではより小さい距離値に対応する。ある場合には、ここに記載されたインクを噴射するまたは押し出すことにより形成される物品の特徴解像度は、約500μm以下、約200μm以下、約100μm以下、または約50μm以下であり得る。いくつかの実施の形態において、物品の特徴解像度は、約50μmと約500μmの間、約50μmと約200μmの間、約50μmと約100μmの間、または約100μmと約200μmの間である。それに対応して、ある場合には、ここに記載された物品の特徴解像度は、少なくとも約100dpi、少なくとも約200dpi、少なくとも約250dpi、少なくとも約400dpi、または少なくとも約500dpiである。ある場合には、物品の特徴解像度は、約100dpiと約600dpiの間、約100dpiと約250dpiの間、または約200dpiと約600dpiの間である。
【0108】
ここに記載されたインクから作られた3D物品をプリントする方法を含むいくつかの実施の形態において、そのインクは、堆積された際に実質的に流体のままである。他の実施の形態において、そのインクは、堆積の際に、液体−ゲル相転移などの相変化を示す。さらに、ある場合には、プリント環境の温度は、インクの噴射された液滴または押し出された部分が受容面と接触した際に固化するまたはゲルになるように制御することができる。他の場合には、インクの噴射された液滴または押し出された部分は、受容面と接触した際に必ずしも固化せずまたはゲルにならず、実質的に流体状態のままである。
【0109】
さらに、いくつかの実施の形態において、インクの各層が堆積された後、堆積した材料は、次の層の堆積前に、平坦化され、電磁(例えば、UV)放射線により硬化される。必要に応じて、平坦化および硬化前に、いくつかの層を堆積しても差し支えない、または多数の層を堆積し、硬化させ、続いて、1つ以上の層を堆積し、次いで、硬化させずに平坦化しても差し支えない。平坦化により、分配された材料を平らにして、過剰な材料を除去し、プリンタの支持台上に均一に滑らかな露出されたまたは平らな上向きの表面を作り出すことにより、材料を硬化させる前に、1つ以上の層の厚さを補正することができる。ある場合には、平坦化は、1つ以上のプリント方向で逆回転するが、1つ以上の他のプリント方向で逆回転しないことがある、ローラなどのワイパー装置により行われる。いくつかの実施の形態において、このワイパー装置は、ローラおよびこのローラから過剰な材料を除去するワイパーを備えている。それに加え、ある場合には、ワイパー装置は加熱されている。硬化前のここに記載された噴射されたまたは押し出されたインクの粘稠度は、いくつかの実施の形態において、その形状を維持するのに十分であり、平坦化装置からの過剰な粘性抵抗に曝され得ないことに留意すべきである。上述の過程は、完成した3D物品が調製されるまで続けることができる。
【0110】
さらに、支持材料は、いくつかの実施の形態において、インクについてここに記載された様式に準拠する様式で堆積させることができる。支持材料は、例えば、支持材料がインクの1つ以上の層に隣接するまたは続くように、事前に選択されたCADパラメータにしたがって堆積させることができる。支持材料の噴射された液滴は、いくつかの実施の形態において、受容面と接触した際に、固化または凝固する。他の場合には、堆積された支持材料にも、平坦化が行われる。
【0111】
インクおよび支持材料の層化堆積は、3D物品が形成されるまで繰り返すことができる。さらに、いくつかの実施の形態において、3D物品をプリントする方法は、インクから支持材料を除去する工程をさらに含む。
【0112】
さらに、ある場合には、先に記載された様式でプリント3D物品の1つ以上の層を形成するために使用されるインクは、インクの所望のプリント速度または堆積速度に基づいて選択することができる。ここに記載されるように、ここに記載されたゲル化剤を含むインクを使用すると、高解像度および/または高速で3D物品をプリントできることが見出された。さらに、選択されたゲル化速度またはゲル化時間を有するインクを、選択されたプリント速度または堆積速度と組み合わせることにより、著しく望ましい結果が得られることがさらに判明した。それに加え、いくつかの実施の形態において、選択されたプリント速度または堆積速度を、選択された温度で選択されたゲル化時間または速度を有する、および/または選択された液体−ゲル転移温度を有する、インクと組み合わせることにより、特に望ましい結果が得られるであろう。例えば、ある場合には、比較的長いゲル化時間(または比較的遅いゲル化速度)を有する、ここに記載されたインクが、比較的遅いプリント速度または堆積速度を有するプリント過程に使用するのに選択される。同様に、比較的短いゲル化時間(または比較的速いゲル化速度)を有する、ここに記載されたインクを、比較的速いプリント速度または堆積速度を有するプリント過程に使用するのに選択しても差し支えない。
【0113】
ある場合には、ここに記載された3D物品をプリントする方法は、温度T1のここに記載されたインクを温度T2の基体上に噴射して、その基体上にインクの層を形成する工程、およびそのインクの層を硬化させる工程を有してなり、ここで、T1はT2より高く、未硬化状態のインクは、T1より低く、T2より高い液体−ゲル転移温度を有する。さらに、ある場合には、そのインクの層は、T2で未硬化状態にあるインクのゲル化速度R2の60%以内である速度R1で基体上に堆積される。さらに、ある場合には、R1は、R2の50%以内または40%以内である。いくつかの実施の形態において、R1とR2の間の差は、10〜60%、10〜50%、または10〜40%の範囲にある。ある場合には、R1とR2の間の差は、20〜60%、20〜50%、20〜40%、30〜60%、30〜50%、または30〜40%の範囲にある。先の百分率は、任意の所定の場合におけるR1とR2の大きい方に基づくことを理解すべきである。さらに、速度R1は、インクが堆積される基体の平方インチ当たりの毎秒の堆積されたインクのmgの単位(mg/s/in2)で表される。当業者により理解されるように、そのような堆積速度は、特定のプリントヘッドまたは他の堆積装置またはオリフィスの使用とは関係なくて差し支えない。その上、インクジェット型プリントヘッドまたはプリントヘッドのアレイを使用する場合、mg/s/in2で表された平均堆積速度R1は、使用されるプリントヘッドの数および液滴体積当たり(液滴質量当たり)およびプリントヘッドの液滴分配頻度に基づいて決定することができる。それゆえ、例えば、各々がfの液滴分配頻度およびmの液滴質量当たりを有するn個のプリントヘッドのアレイに関する堆積速度は、これらの因子(適切な単位の)を乗じて、平方インチ当たりのmg/sの積(n×f×m)を得ることにより、決定してもよい。
【0114】
速度R2は、インクのゲル化時間(GT)の逆数をとり、100倍することにより得られる、逆数分の単位で表される。インクのゲル化時間は、以下のように決定される。最初に、15gのインクをガラス瓶に入れ、80〜90℃のオーブン内で加熱して、均質液体を得る。次いで、インクを収容するガラス瓶をオーブンから取り出し、室温(25℃)まで冷ます。冷却過程中、インクのゲル化を観察する。ゲル化時間は、ガラス瓶をひっくり返し、少なくとも3秒間に亘りゲルが流れないことを観察することにより決定される、非インクが流動性になる時点である。
【0115】
ある場合には、GTは、5分と14分の間、15分と30分の間、31分と45分の間、31分と60分の間、または46分と60分の間である。それに加え、ここに記載された方法のいくつかの実施の形態において、未硬化状態のインクのGTは約45分以下であり、そのインクの層は、少なくとも約1.5mg/s/in2(約0.23mg/s/cm2)の速度で基体上に堆積される。一般に、ここに記載されたいくつかの実施の形態によるインクのゲル化時間(GT)またはゲル化速度(R2)およびプリント速度または堆積速度(R1)は、下記の表Iにしたがって選択することができる。
【0116】
【表1】
さらに、R1とR2の間の差の例示の計算は、式(1):
【0117】
【数1】
を使用して行うことができる。
【0118】
それゆえ、R1=1.7mg/s/in2(0.26mg/s/cm2)、およびR2=2.7/分について、
は37%と等しいので、R1はR2の40%以内である。
【0119】
それに加え、ここに記載された方法の温度T1および温度T2は、本開示の目的に矛盾しないいかなる温度であっても差し支えない。ある場合には、例えば、T1は、65〜95℃、70〜90℃、70〜80℃、または75〜85℃などの噴射温度であり、T2は、室温または室温に近い温度である。あるいは、T2は、発熱様式で先に硬化したインクの先に堆積されたインクの層の表面で遭遇するかもしれないような高温であってもよい。このように、いくつかの実施の形態において、T2は、約20℃と約30℃の間の温度である。例えば、ある場合には、T2は25℃である。他の場合には、T2は、25℃超、30℃超、または45℃超である。いくつかの実施の形態において、T2は、30〜40℃、35〜45℃、または50〜70℃である。
【0120】
III.プリントされた3D物品
別の態様において、プリントされた3D物品がここに記載されている。いくつかの実施の形態において、プリントされた3D物品は、ここに記載されたインクから形成される。項目Iまたは項目IIにおいて先に記載されたどのインクを使用してもよい。例えば、ある場合には、インクは、硬化性材料およびゲル化剤を含み、ここで、ゲル化剤は、1つ以上のウレタン部分により疎水性セグメントに結合した1つ以上の末端オレフィン部分を有する化学種を含む。
【0121】
いくつかの実施の形態において、プリントされた3D物品は、ここに記載されたインクから形成された複数の層から作られる。さらに、いくつかの実施の形態において、その物品の少なくとも1つの層は、約0.03から約5mmの厚さなどの、ここに記載された厚さを有する。
【0122】
ここに記載されたいくつかの実施の形態が、以下の非限定的実施例にさらに説明されている。
【実施例】
【0123】
実施例1
ゲル化剤
ここに記載された1つの実施の形態によるインクのゲル化剤を以下のように調製した。このゲル化剤をゲル化剤1と表示する。最初に、62.3g(0.371モル)のヘキサメチレンジイソシアネート(ウィスコンシン州、ミルウォーキー所在のSigma−Aldrich Chemical Co.)、100.0g(0.186モル)のダイマージオール(PRIPOL 2033、デラウェア州、ニューカッスル所在のUniqema)、および43.0g(0.371モル)の1,4−ブタンジオールビニルエーテル(Sigma−Aldrich)を、磁気撹拌子を備えた400mLのビーカーに入れた。このビーカーを、撹拌ホットプレート上の110℃のシリコーン油浴内に置き、撹拌を始めた。このビーカーに3滴の触媒(Fascat 4202、ジラウリン酸ジブチルスズ、ペンシルベニア州、フィラデルフィア所在のElf Atochem North America,Inc.)を加え、この混合物を110℃で約2時間に亘り反応させた。フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による反応生成物の分析は、出発材料のNCO官能基の全てが消費されたことを示した。詳しくは、FT−IRは、約2285cm-1でのピーク(イソシアネート部分に対応する)の不在(または消失)並びに約1740〜1680cm-1および約1540〜1530cm-1のピーク(ウレタン部分に対応する)の出現(または大きさの増加)を示した。次いで、最終的なウレタン含有生成物をアルミニウム製平鍋に注ぎ、冷ました。この生成物は、先の式(II)の構造を有する化学種を含んでいた。
【0124】
実施例2
ゲル化剤
ここに記載された1つの実施の形態によるインクのゲル化剤を以下のように調製した。このゲル化剤をゲル化剤2と表示する。最初に、50.0g(0.167モル)のオクタデシルイソシアネート(Mondur O、ペンシルベニア州、ピッツバーグ所在のBayer Corp.)、および19.6g(0.169モル)の1,4−ブタンジオールビニルエーテル(Sigma−Aldrich)を、磁気撹拌子を備えた200mLのビーカーに入れた。次いで、このビーカーを、撹拌ホットプレート上の110℃のシリコーン油浴内に置き、撹拌を始めた。2滴の触媒(Fascat 4202、ジラウリン酸ジブチルスズ、Elf Atochem)を加え、この混合物を110℃で約2時間に亘り反応させた。反応生成物のFT−IR分析は、実施例1に記載されたように、NCO官能基の全てが消費されたことを示した。次いで、最終的なウレタン含有生成物をアルミニウム製平鍋に注ぎ、冷ました。この最終生成物は、約135℃でFerranti−Shirleyコーンプレート粘度計により測定して、約2.63cPの粘度により特徴付けられた。この生成物は、式(VIII):
【0125】
【化14】
の構造を有する化学種を含んでいた。
【0126】
実施例3
ゲル化剤
ここに記載されたいくつかの実施の形態による追加のゲル化剤を以下のように調製した。これらのゲル化剤をゲル化剤3〜27と表示する。
【0127】
ゲル化剤3〜27を提供するために、項目Iにおいて先に記載されたように、表IIに特定された化合物(A)、(B)、(B’)、(B”)、および(C)を「段階」または「同時」様式のいずれかで反応させた。「段階」の場合において、イソシアネートは、概して、最初にアルコール種と反応させ、続いて、得られた生成物をエチレン不飽和種と反応させた。しかしながら、イソシアネートを最初にエチレン不飽和種と反応させ、続いて、アルコール種と反応させる逆の順序も使用して差し支えない。特定の場合に使用した順序が、表II(「Rxn」の下)に示されている。その上、表IIに使用した反応体の省略形が、下記に与えられている。さらに、ゲル化剤3〜27の合成プロトコルは、概して、実施例1および2において先に述べたものに対応した。詳しくは、ゲル化剤3〜5は、反応体を表示のように置き換えたことを除いて、実施例1のプロトコルにしたがって製造した。ゲル化剤7〜14、16、19、および22は、反応体を表示のように置き換えたことを除いて、実施例2のプロトコルにしたがって製造した。ゲル化剤15、17、18、20、21、および23〜25は、反応体を表示のように置き換え、同時過程ではなく段階過程を使用したことを除いて、実施例2にプロトコルにしたがって製造した。ゲル化剤6は、最初に、約30分間に亘り反応槽内で撹拌しながら、60℃でヘキサメチレンジイソシアネートを1,4−ブタンジオールビニルエーテルと反応させることにより製造した。次に、この反応槽に、式(IX):
【0128】
【化15】
の構造(式中、(a+b+c)=5または6)を有するトリオール(Huntsman Chamicalから得た)を加えた。次いで、温度を80℃に上昇させ、約3時間に亘りこの温度で撹拌を続けて、所望の生成物を提供した。ゲル化剤26および27は、反応器に、オクタデシルイソシアネート(約300g)およびそれぞれ、ヒドロキシブチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート(約150g)を加え、その混合物を、撹拌しながら、75℃と85℃の間の温度に加熱することにより製造した。この反応は、撹拌しながら、7〜8時間に亘りこの温度で継続した。
【0129】
【表2-1】
【0130】
【表2-2】
実施例4
インク
ここに記載されたいくつかの実施の形態によるインクを以下のように調製した。詳しくは、様々なタイプのインクを調製するために、表IIIの成分を反応槽内で混合した。表IIIの量は、インクの総質量に基づく、インクの各成分の質量%を称する。各インクについて、適切な混合物を、撹拌しながら、約75〜85℃の温度に加熱した。加熱と撹拌は、混合物が実質的に均質な溶解状態に達するまで続けた。次いで、溶解した混合物を濾過した。次に、濾過した混合物を周囲温度まで冷ませた。
【0131】
【表3】
表IIIのインク1および2の配合に対応するインクの動的振動剪断粘度は、50mmのプレート直径、0.04ラジアン(rad)の円錐角、およびプラスチック円錐を有するコーンプレート流量計を使用して測定した。粘度は、10rad/sの周波数、80%の歪み振幅、および1.0K/分の温度走査速度で測定した(平均熱工具膨張1.2μm/K)。詳しくは、温度を80℃から30℃に低下させ、その後、2分間の待機時間をおき、次いで、30℃から80℃に上昇させ、さらに2分間の待機時間をおいた。測定を開始する前にも、5分間の待機時間があった。結果が表IVに与えられている。
【0132】
【表4】
それに加え、インク1および2の配合に対応するインクの硬化サンプルについて、溶媒抽出を行った。詳しくは、溶媒抽出試験を以下のように行った。最初に、7.5×1.0cmのシリコーン製成形型に0.5gの試験インクを計り入れた。次いで、サンプルから1.4cmに配置したPhoseon EF 200 110×10AC395ランプを使用して、0.44ワットの出力で、10秒間に亘りそのインクを硬化させた。硬化したサンプルを取り出し、化学天秤で秤量して、初期質量を得た。次いで、サンプルを20分間に亘り室温で30mLのアセトン中に浸した。次に、サンプルを取り出し、2時間に亘り250mmHgの真空下において50℃で乾燥させ、再び秤量して、最終質量を得た。初期質量から最終質量を引くことにより、質量損失を計算した。初期質量の百分率としての質量損失を、抽出可能物のパーセントと解釈した。試験した各インクについて、約1%の抽出可能物が観察された。
【0133】
さらに、インク3の配合に対応するインクの小さい液滴のゲル化速度を評価するために、プリントヘッド試験(「ストロボ」)スタンドで、プリント試験を行った。詳しくは、ストロボスタンド上のXeroxプリントヘッド内にインク3のサンプルを入れ、安定な噴射性能が観察されるまで、噴射パラメータを最適化した。続いて、透明なポリエステルフイルム片をジェットスタック(jetstack)の下に置き、各オフィスの下のプラスチックフイルムの表面に、様々な数の液滴を「積み重ねた」。試験中に、ジェットスタックも、プラスチックも動かさなかった。このようにして、各ノズルの下に、インクのプールを形成し、得られた画像は、プリントヘッドのオリフィス配置を模倣していた。画像のプール形成が観察され始めるまで、各後続の運転で、吐出する液滴の数を増やしながら、一連の試験を行った。特に、オリフィス当たり、250、500、1000、および5000の液滴の運転を行った。ゲル化剤を含まない比較のインクについて、同じ試験を繰り返した。この比較のインクにおいて、適切な噴射粘度を維持するために、いくつかの成分をインク3から変えた。その結果が、図1に示されている。具体的には、図1Aおよび1Bは、比較のインクについて、それぞれ、オリフィス当たり1000滴およびオリフィス当たり5000滴でのプラスチックフイルムの表面の写真を示している。図1Cおよび1Dは、インク3について、それぞれ、オリフィス当たり1000滴およびオリフィス当たり5000滴でのプラスチックフイルムの表面の写真を示している。図1に示されるように、インク3は、ずっときれいな明確な構造を与えた。
【0134】
さらなる比較として、インク3および比較のインクを使用して、3D試験部品もプリントした。図2Aは、比較のインクから形成した試験部品の写真を示している。図2Bは、インク3から形成した試験部品の写真を示している。図2に示されるように、インク3は、比較のインクと比べて、部品の解像度が改善された試験部品を与えた。試験部品は「熱診断」構造であり、その構造の開口は、角がはっきりした矩形であることが意図されていた。その上、インク3から形成した試験部品は、支持材料による「被包」または「堰き止め」を必要とせずに、プリントされた。対照的に、比較のインクによる試験部品の形成には、被包および堰き止めが必要であった。
【0135】
インク3から形成された、プリントされ、硬化した「犬用の骨」の初期の機械的性質も測定した。この犬用の骨は、12%の破断点伸び、6800psi(約46.9MPa)の引張強度、および290kpsi(約2000MPa)の引張係数を示した。
【0136】
実施例5
インク
ここに記載されたいくつかの実施の形態による追加のインクを、実施例1のゲル化剤1を、下記の表Vに示された量の実施例3からのいくつかのゲル化剤で置き換えたことを除いて、インク1について実施例4において先に記載したのと同じ様式で調製した。表Vの質量パーセントは、インクの総質量に基づくゲル化剤の質量パーセントである。その上、下記の表VIは、表Vに列挙されたインクのいくつかに関するゲル化時間およびゲル化開始温度を与えている。ゲル化時間は、項目IIにおいて先に記載したように決定した。ゲル化開始温度は、毎分1℃で80〜90℃からインクを冷却し、粘度において大きい変化または「段階」が始まった粘度対温度曲線における最初の地点に基づいて、ゲル化が始まった温度を書き留めることにより、決定した。ここで、粘度は、先の実施例4に概して記載されたように測定した。
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
ここに参照された全ての特許文献は、その全てが引用される。本発明の様々な実施の形態を、本発明の様々な目的の達成のために記載した。これらの実施の形態は、本発明の原則の実例にすぎないことを認識すべきである。本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変およびその適用が、当業者に容易に明白であろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B