特許第6374039号(P6374039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チェジュ ナショナル ユニバーシティー インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーションの特許一覧

特許6374039晩生温州である柑橘変種植物‘アラ温州’
<>
  • 特許6374039-晩生温州である柑橘変種植物‘アラ温州’ 図000005
  • 特許6374039-晩生温州である柑橘変種植物‘アラ温州’ 図000006
  • 特許6374039-晩生温州である柑橘変種植物‘アラ温州’ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374039
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】晩生温州である柑橘変種植物‘アラ温州’
(51)【国際特許分類】
   A01H 1/06 20060101AFI20180806BHJP
   A01H 6/78 20180101ALI20180806BHJP
【FI】
   A01H1/06
   A01H6/78
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-575559(P2016-575559)
(86)(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公表番号】特表2017-519511(P2017-519511A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】KR2015006584
(87)【国際公開番号】WO2015199497
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2016年12月22日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0078832
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217886
【氏名又は名称】チェジュ ナショナル ユニバーシティー インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キム,イン−ジュン
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 柑橘類における新品種育成と加工適性,食品工業,1986年 3月31日,第29巻第6号,p. 57-63
【文献】 我が国におけるカンキツの品種育成,日本食品科学工学会誌,Vol. 60, No. 10,p. 69-73
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00
A01H 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)宮川早生(C.unshiu Marc.cv.Miyagawa−wase)の枝(branch)の芽(bud)にガンマ線を照射(irradiation)するステップと、2)前記ステップ1)でガンマ線が照射された芽を接木して枝を誘導した後、果皮の着色時期が、前記ガンマ線を照射していない宮川早生と比較して1〜3ヶ月遅くなった突然変異を選抜して枝の芽を採取するステップと、3)前記ステップ2)で選抜されて採取された突然変異枝の芽を台木に接木するステップとを含む、開花時期は宮川早生と同一であるが、果皮の着色時期が宮川早生と比較して1〜3ヶ月遅い特性を有する、変種柑橘植物の育成方法。
【請求項2】
さらに、前記ステップ1)〜ステップ3)により育成された変種柑橘植物の枝芽を台木に接木するステップを含み、これによって前記変種柑橘植物を安定的に無性生殖繁殖させることを特徴とする、請求項1に記載の育成方法。
【請求項3】
前記ガンマ線は60Coであり、前記ガンマ線の線量は80グレイである、請求項1又は2に記載の育成方法。
【請求項4】
前記変種柑橘植物から得られる果実は、大韓民国の済州島で露地栽培する場合を基準として、果皮の着色時期が1月下旬〜2月上旬であり、果実の収穫時期が11月下旬から2月中旬であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の育成方法。
【請求項5】
前記変種柑橘植物の成熟期の果実は、果重が80〜120g、果径が55〜65mm、果皮の厚さが1.7〜3.0mm、糖度が9〜12°Brixであり、酸度が0.7〜0.9wt%であり、宮川早生と比較して浮皮果の発生が少ないため、果実の貯蔵性が向上したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色の未熟果実の糖度が果皮の着色前に成熟果実の水準に高くなった後、青色の未熟果実の時期が母種である宮川早生よりも長く維持されて、宮川早生の収穫時期から、宮川早生よりも約1〜3ヶ月遅い時期までの期間に柑橘の収穫が可能な晩生温州である、突然変異温州蜜柑新品種‘アラ温州’に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘は、典型的な亜熱帯果樹作目であるが、温州蜜柑は、商業的に栽培されている柑橘品種において最も低い温度である年平均気温15℃以上、冬季の最低気温−7℃以上であれば栽培可能である。また、温州蜜柑は、冬季の最低温度の高い亜熱帯地域では良好に着色がなされず、味が淡泊であるため、亜熱帯地域での栽培は難しい実情である。しかし、温州蜜柑は、種子がなく、皮が薄いため、剥きやすいという利点を有するので、最近は、西洋各国の柑橘育種で標本として活用されている。
【0003】
早生温州宮川早生(Satsuma Mandarine、C.unshiu Marc.cv.Miyagawa)は、済州島内で最も多く栽培されている品種であって、日本の福岡県が原生地であり、在来系の普通温州で枝が変異したことが発見された後、1925年育成された品種であって、国内にこの系統が導入されて早生温州の代表品種として栽培されている。
【0004】
宮川早生を含んだ早生温州の露地栽培面積が2013年に84%を占め(統計庁、KREI農業展望2014)、11月下旬から12月中旬にわたって集中して出荷され、出荷時期の集中化により柑橘価格の暴落などの問題が発生している。これにより、極早生、晩生などの収穫時期の多様化が必要となり、これに対して研究が進んでいる。
【0005】
済州特別自治道農業技術院の上道早生(C.unshiu ‘Sangdojosaeng’)は、佐々木温州の自然突然変異を通じて育成された品種であって、11月上旬に完熟する特性を示している。1月下旬に収穫できる温州蜜柑として、青島温州と十万温州などがあるが、浮皮果現象が発生する問題により、青島温州は、12月中旬に収穫して貯蔵した後に出荷する方法が用いられており、十万温州は、果実の大きさが大きい大果であって、果皮が厚い方であり、浮皮果が発生するため、12月上旬頃に収穫して貯蔵しておき、翌年に出荷する形態を取る。
【0006】
温州蜜柑は、種子が形成されないが、人為的な交配によって種子を得ることができる。しかし、種子が多胚性であり、花粉がほとんど形成されないため、交配による新品種の育成は非常に難しい状況である。そこで、本発明者らは、最も活発に栽培されている早生温州宮川早生に放射線突然変異育種技術を導入し、晩生温州である新たな変種柑橘植物を育種して本発明を完成した。
【0007】
温州蜜柑は、種子が形成されないが、人為的な交配によって種子を得ることができる。しかし、種子が多胚性であり、花粉がほとんど形成されないため、交配による新品種の育成は非常に難しい状況である。そこで、本発明者らは、最も活発に栽培されている早生温州宮川早生に放射線突然変異育種技術を導入し、晩生温州である新たな変種柑橘植物を育種して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0532072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、果実の成熟時期が宮川早生よりも約1〜3ヶ月遅いため、大韓民国の済州島を基準として果皮の着色時期が1月下旬〜2月上旬である特性を示す晩生温州である、アラ温州と命名された変種柑橘植物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、放射線突然変異育種方法で前記のアラ温州と命名された変種柑橘植物を育種する方法又はその無性繁殖方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願は、2014年6月26日に出願した大韓民国特許出願第10−2014−0078832号に基づく優先権の利益を有し、上記の特許出願に記載された内容は、本出願のために本出願の一部として含まれる。
【0012】
本発明は、宮川早生である母種から枝芽に突然変異を誘導し、選択された形質を有する枝芽を接木する方式で無性生殖繁殖を通じて育成する変種柑橘植物に関するもので、以下で育種方法、無性繁殖方法と共に、植物及び果実に関する特性を詳細に説明する。
【0013】
植物の樹勢だけでなく、果実の重量、大きさ、果皮の厚さ、糖度、酸度、果皮の色などのような変種柑橘植物の特性を示す本明細書の説明は、本明細書で説明する‘アラ温州’と命名された変種柑橘植物の特性を不合理に限定する意味で解釈されず、植物又は無性生殖植物自体の特性上、一般的に認定できる範囲内で、本発明で限定している特性が変化できるという点を考慮して解釈しなければならず、これによって本発明の権利範囲が制限されない。
【0014】
本発明のアラ温州と命名された変種柑橘植物が、その育種方法又は無性繁殖方法などによって栽培される場合、栽培地域、栽培位置、気候、土壌、天気、ハウス栽培であるか否かなどの条件によって、樹勢などの植物自体の特徴だけでなく、果実の重量、大きさ、果皮の厚さ、糖度、酸度、果皮の色の変化時点、収穫時期などにも一部差があり得、植物の樹齢によって果実の特徴にも差があり得る。このような相違点が、周辺環境の変化や樹木の樹齢など、品種自体の特性の差以外の要因によるもので、同一の植物品種で周辺環境などによって生じ得る特性の変化として解釈できれば、本発明の権利範囲を制限する意味として適用されない。
【0015】
本発明のアラ温州と命名された変種柑橘植物の実施例についての説明は、特に他の説明がない限り、育種が行われた大韓民国の済州島の環境で露地栽培されたものを基準に説明する。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例に係るアラ温州と命名された変種柑橘植物は、開花時期が母樹である宮川早生と同一であるが、果実の成熟時期が宮川早生よりも遅いことによって、果皮の着色時期が宮川早生と比較して1〜3ヶ月遅くなるという特徴を有し、これによって、果実の収穫時期を宮川早生と比較して15日〜75日遅らせることができる。
【0017】
前記アラ温州と命名された変種柑橘植物の果実の着色時期は、宮川早生と比較して50日〜80日、好ましくは、約2ヶ月遅くなるものであってもよい。前記アラ温州と命名された変種柑橘植物から得られる果皮の着色時期は、大韓民国の済州島で露地栽培する場合を基準として1月下旬〜2月上旬であり得る。
【0018】
また、前記アラ温州と命名された変種柑橘植物の果実は、母種である宮川早生と開花時期が同一であるという特徴と共に、果皮の着色が進行する前から、果皮の着色が進行して成熟した柑橘状態に進行する過程に果肉の糖酸度に有意な変化がないという特徴も有する。
【0019】
すなわち、前記アラ温州と命名された変種柑橘植物の果実は、宮川早生の果実成熟時期(又は収穫時期)からアラ温州の果皮の着色の進行が完了する時点までの期間に、果肉の糖酸度が宮川早生の成熟果実の糖酸度と類似の水準に維持されて、糖度が高く、酸度が低いという特性を有する。
【0020】
前記アラ温州の果実は、宮川早生の収穫時期から、アラ温州の果皮の着色の進行が完了した後、アラ温州の果肉の糖酸度が維持される時点までの長い収穫時期を有し、果実の収穫時期は、大韓民国の済州島で露地栽培した場合を基準にして11月中下旬から12月下旬乃至2月中旬であり得る。
【0021】
このようなアラ温州と命名された変種柑橘植物の収穫時期は、母種である宮川早生の果実の大韓民国の済州島での収穫時期である11月下旬〜12月中旬と比較すると、約2ヶ月遅くなったものであり、このように、果皮の着色時期や果実の収穫時期が遅い晩生温州である変種柑橘植物は、糖度が高く、酸味が少ない母樹である宮川早生と類似の果実品質を有すると共に、多量の柑橘が出荷される宮川早生などの柑橘出荷時期を避けて遅く収穫することができるので、新規品種として経済的な価値が非常に優れる。
【0022】
前記アラ温州と命名された変種柑橘植物から得られる果実は、宮川早生と比較して、浮皮果の発生が少ないという特性も有するので、果実の貯蔵性が向上するという特徴も有する。
【0023】
また、前記アラ温州と命名された変種柑橘植物から得られる果実は、緑色の果皮を有する未熟果実の時期が長く、果皮が変色する果実の成熟時期が遅いため、成熟時期に発病する病虫害に強いという特性も有し、環境に優しい栽培が可能であるという利点もある。
【0024】
前記アラ温州と命名された変種柑橘植物の成熟期の果実は、気候、土壌などの周囲環境条件や樹齢などの差によって変動できるが、果重が80〜120g、果径が55〜65mm、果皮の厚さが1.7〜3.0mm、糖度が9〜12°Brixであり、酸度が0.7〜0.9wt%であってもよい。
【0025】
前記アラ温州と命名された変種柑橘植物は、宮川早生(C.unshiu Marc.cv.Miyagawa−wase)の枝(branch)の芽(bud)にガンマ線を照射(irradiation)し、ガンマ線が照射された芽を接木して枝を誘導した後、果実の成熟時期が遅くなった突然変異を選抜して枝の芽を採取した後、前記採取した枝の芽を接木する方法を用いて育成された新品種であって、前記育成された変種植物の枝芽を台木に接木する方法で安定的に無性生殖繁殖させることができる。上述した宮川早生の枝芽に行われるガンマ線の照射は、60Coのガンマ線を80グレイ(Gray)の線量で照射するものであってもよく、接木過程で台木としては柑橘樹を適用することができる。
【0026】
本発明の他の一実施例に係る柑橘は、上述したアラ温州と命名された変種柑橘植物から収穫されたものである。前記柑橘は、母種である宮川早生と他の特性はほぼ同一であるが、収穫時期によって、果皮が緑色である未熟状態でも成熟果実と類似の水準の糖酸度を有することができ、果皮の変色時期が母種である宮川早生よりも遅いため、果皮が緑色である状態が比較的長期間維持され、収穫時期による果肉の糖酸度の品質変化がわずかであるという特性を有する。
【0027】
本発明の他の一実施例に係るアラ温州と命名された変種柑橘樹の育種方法は、1)宮川早生(C.unshiu Marc.cv.Miyagawa−wase)の枝(branch)の芽(bud)にガンマ線を照射(irradiation)するステップ;2)前記ステップ1)でガンマ線が照射された芽を接木して枝を誘導した後、果実の成熟時期が遅くなった突然変異を選抜して枝の芽を採取するステップ;3)前記ステップ2)で選抜されて採取された突然変異枝の芽を接木するステップ;を含むことによって、開花時期は宮川早生と同一であるが、果実の成熟時期が宮川早生よりも遅いことによって、果皮の着色時期が、宮川早生と比較して1〜3ヶ月遅い特性を有する晩生温州である、アラ温州と命名された変種柑橘樹を育種する方法を提供する。
【0028】
前記の宮川早生の枝芽に行われるガンマ線の照射は、60Coのガンマ線を80グレイの線量で照射するものであってもよく、前記接木は、様々な柑橘樹を用いて行うことができ、例えば、前記のステップ1)の接木は成木を、ステップ2)の接木はカラタチを台木として用いることができる。
【0029】
本発明の更に他の一実施例に係るアラ温州と命名された変種柑橘植物の無性繁殖方法は、アラ温州と命名された変種柑橘樹の枝芽を台木に接木する過程を含むことによって、アラ温州と命名された変種柑橘樹を安定的に無性生殖繁殖させる方法を提供する。このとき、台木としては、様々な柑橘樹を適用することができ、具体的に、成木、カラタチ、又はスウィングルを適用してもよいが、アラ温州と命名された変種柑橘樹を安定的に無性生殖繁殖させることができるものであれば、前記台木として適用可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の晩生温州である突然変異柑橘‘アラ温州’は、糖度が高く、酸味が少ない特性と共に、果皮の着色時期が、宮川早生と比較して約1〜3ヶ月遅くなり、宮川早生の着色時期からアラ温州の着色時期まで、宮川早生の果肉とほぼ同一の水準に果肉の糖度及び酸度が維持される特性を有する。アラ温州は、大韓民国の済州島を基準として収穫時期が11月下旬〜2月上旬であるため、宮川早生の収穫が終わる12月中旬〜2月上旬にも優れた糖酸度の柑橘の収穫が可能であるので、多量の柑橘が出荷される柑橘出荷時期(大韓民国の場合、11月下旬から12月中旬)を避けて柑橘の収穫が可能な新規品種であって、その経済的価値が非常に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例1によって育種したアラ温州が、宮川早生に比べて果実の成熟時期が遅いという特性を、果皮の色の差を基準として肉眼で確認した結果の写真である(2013年12月上旬に撮影)。
図2】本発明の実施例1によって育種したアラ温州の果実及び母種である宮川早生の果実を前記の図1と同じ時点で撮影して、アラ温州の果皮の着色時期が宮川早生よりも遅いことを示す写真である(上側の写真:後ろの果実−アラ温州、前の果実−宮川早生、下側の写真:左側−宮川早生、右側:アラ温州)。
図3】本発明の実施例1によって育種したアラ温州の果皮の着色の程度、浮皮果現象(果皮が果肉と分離されて浮く現象)が発生したか否かを2013年12月7日(左側上端)、2013年12月21日(右側上端)、2014年1月3日(左側下端)、及び2014年1月23日(右側下端)に観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0033】
本発明は、宮川早生(C.unshiu Marc.cv.Miyagawa−wase)の枝(branch)の芽(bud)に60Coのガンマ線を80グレイの線量で照射(irradiation)し、ガンマ線が照射された芽を成木に接木して枝を誘導した後、果実の成熟時期が遅くなった突然変異を選抜して枝の芽を採取した後、カラタチ台木に接木を通じて無性生殖繁殖を通じて育成された変種柑橘植物を提供する。
【0034】
この変種柑橘植物は、果皮の着色時期など、果実の成熟時期が母種である宮川早生よりも遅いため、果実の収穫時期を宮川早生よりも約1〜3ヶ月まで遅らせることができる新たな晩生温州の種であって、アラ温州と命名された変種柑橘植物である。
【0035】
アラ温州は、開花時期は宮川早生と同一であり、i)果実の糖酸度が、宮川早生の収穫期から宮川早生の果実と同じ水準以上に維持される特性と共に、ii)果皮の着色時期が宮川早生の果実よりも約1〜3ヶ月遅くなるため、iii)宮川早生の収穫期から、宮川早生の収穫期の1〜3ヶ月後までの長い収穫時期を有する特性がある。
【0036】
このようなアラ温州は、大韓民国の済州島で露地栽培した場合を基準として11月下旬から2月中旬までの長い収穫可能時期を有し、晩生温州と比較して同等以上の品質を有しながらも、晩生温州の収穫時期と同時に又は晩生温州の収穫時期よりも遅い時点である1月下旬〜2月中旬に柑橘果実の収穫が可能であるので、柑橘の出荷時期を調節できるという特性を示す。
【0037】
前記温州蜜柑の新品種であるアラ温州は、成熟期の糖度が約9〜11°Brixと高く、酸度が0.7〜0.9%と低く、果皮の着色が1月下旬〜2月上旬であるという特性があるが、気候、土壌、環境、栽培方法、果実の大きさ及び樹齢によって変わり得る。
【0038】
また、本発明は、1)宮川早生(C.unshiu Marc.cv.Miyagawa−wase)の枝(branch)の芽(bud)に60Coのガンマ線を80グレイの線量で照射(irradiation)するステップ;2)前記ステップ1)でガンマ線が照射された芽を台木に接木して枝を誘導した後、果実の成熟時期が遅くなった突然変異を選抜して枝の芽を採取するステップ;3)前記ステップ2)で選抜された突然変異枝の芽を台木に接木を通じて無性生殖で繁殖させて、収穫時期が遅いアラ温州と命名された変種柑橘植物を育種する方法を提供する。
【0039】
このとき、台木は、成木、カラタチ、スウィングルなどの様々な柑橘樹台木が適用されてもよく、本発明で適用する台木は、柑橘樹又は柑橘樹の台木として適用できる樹種であれば適用可能である。また、土壌の特性や地域的な差異点によって適用される台木の大きさや種類に差があり得るが、例えば、大韓民国の済州島ではカラタチを台木として適用することができる。
【0040】
前記アラ温州は、温州蜜柑と開花時期、果実の大きさ、重量、葉形、花形、栽培環境などがほぼ同一である一方、アラ温州は、着色時期及びこれと関連する糖度と酸度の変化時期が宮川温州と異なる。これによって、1月下旬〜2月中旬にわたって収穫可能であり、糖度が高く、酸味が少ない母樹と同じ遺伝形質が継承され、安定的に大量生産が可能であり、接木を通じて無性繁殖させることができる。
【0041】
<実施例1>放射線を用いた突然変異柑橘育種
【0042】
済州大学校放射線応用科学研究所のコバルト−60の放射線照射施設を用いて、2006年4月に済州特別自治道農業技術院から供与された宮川早生(C.unshiu Marc.cv.Miyagawa−wase)の枝の芽に80グレイ(Gray)の線量のガンマ線を照射した(gamma irradiation)。ガンマ線が照射された芽を宮川早生の成木(済州大学校付設研究実習センター東焼洞圃場)に接木して枝を誘導した後、形質を調査して選抜した。
【0043】
各突然変異枝から着果した果実を毎年11月下旬〜12月上旬にわたって収穫した後、低温貯蔵庫(5℃)に貯蔵した。これらの果重及び果径、果皮の厚さ、糖度及び酸度、果色の変化などを測定した。
【0044】
果重は、電子式指示秤(CAS(株)、Korea)を用いて、果重を0.1gの単位まで測定した。デジタルキャリパー(Digital caliper)(Mitutoyo Corporation、Japan)を用いて、縦径と横径を0.1の単位まで測定した。果径と果重を測定した後、果実の汁を採取した。酸糖度分析装置NH−2000(HORIBA、Japan)を用い、機器使用マニュアルに従って果汁約4〜5mLを注射器で挿入して糖度と酸度を測定した。果色の変化は、色差計(Chroma meter CR−400、ミノルタ)を用いて、果色の変化を示す突然変異果実の色度を測定した。
【0045】
これから再び突然変異枝の芽を採取してカラタチ台木(苗木業者から購入)に再接木し、成木の柑橘を誘導した。
【0046】
<実施例2>晩生温州である突然変異柑橘の特成分析
【0047】
前記実施例1で作製した柑橘果実の特性を着果した2013年(大韓民国の済州特別自治道西帰浦市東焼洞で露地栽培)に調査した。
【0048】
図1は、本発明の実施例1によって育種したアラ温州が宮川早生に比べて果実の成熟が遅い特性を確認した写真であり、図2は、本発明の実施例1によって育種したアラ温州の果実及び母種である宮川早生の果実を、前記の図1と同じ時点で撮影した写真である。前記図1及び図2を参照すると、アラ温州の果実は、宮川早生の果実と比較して果皮の着色進行程度が遅く、果実の成熟が遅い特性を有するという点が確認できた。
【0049】
図3は、本発明の実施例1によって育種したアラ温州の果皮の着色の程度、浮皮果現象(果皮が果肉と分離されて浮く現象)が発生したか否かを2013年12月7日(左側上端)、2013年12月21日(右側上端)、2014年1月3日(左側下端)、及び2014年1月23日(右側下端)に観察した結果である。図3の写真を参照すると、アラ温州の果実は、果実の成熟が1月末にも進行するという点を果皮の色の変化から観察することができ、浮皮果の発生も少ないことが確認できた。このような特性は、柑橘果皮の着色が11月下旬に進行し、柑橘の品質管理の問題によって一般的に収穫が12月中旬まで行われる宮川早生とは全く異なる特性であり、果皮の着色時期の観点で、アラ温州が宮川早生と全く異なる特性を有するという点を確認させる結果である。
【0050】
前記実施例1で育成した突然変異柑橘は、葉形、葉色、開花時期、樹勢、果形、果重などの特性を確認した結果、済州で栽培されている一般形質の宮川早生と他の特性はほぼ同一であるが、果皮の着色と糖酸度を考慮した収穫時期が異なるという点を確認した。
【0051】
すなわち、下記の表1に示されたように、アラ温州と命名した突然変異柑橘は、それ自体が突然変異誘導の母本である宮川早生と比較して、果実の成熟時期の面で差異点を示し、特に、大韓民国の済州島で露地栽培時に1月下旬〜2月上旬に成熟する特性を示し、果皮の着色時期や糖酸度などを考慮する場合、11月下旬から2月中旬に至る広い収穫時期を有するという点を確認した。
【0052】
【表1】
【0053】
また、前記実施例1で育成し、開花時期が5月10日〜20日である突然変異柑橘を4年にわたって12月上旬〜中旬に収穫して形質を調査し(大韓民国の済州特別自治道西帰浦市東焼洞で栽培)、その結果を下記の表2に示す。
【0054】
下記の表2に示したように、前記実施例1で育成した突然変異柑橘であるアラ温州は、同一の収穫時期を適用する場合、Hunter色差計を用いた果皮の色価(color value)のうちa値(Redness)が−8.9以下で示され、22.47以上の値を示した宮川早生と比較して着色時期が遅い特性を示し、調査年度の気候(降水量、日照量など)と果実の大きさによって形質の差が一部存在するが、全般的に果実の成熟時期が安定的に維持されるという点を確認した。
【0055】
【表2】
【0056】
また、前記実施例1で育成した突然変異柑橘を2013年12月初め、2014年1月初め及び2014年1月末に収穫し、収穫時期による果実の形質を調査し、その結果を下記の表3に示す。
【0057】
下記の表3に示したように、アラ温州は、1月中旬又は末頃から着色が進行するという点を確認した。大体1月下旬〜2月上旬にアラ温州の着色が進行した。
【0058】
また、アラ温州の柑橘は、宮川早生の柑橘の成熟時点である12月初め〜1月末の時点に宮川早生の柑橘成果と同等又はそれ以上の水準の糖度、及び同等又はそれ以下の水準の酸度を有する特性を有し、その後には、糖度と酸度の面で有意な変化が観察されないことがわかる。これは、果皮が青色を帯びる未熟果実の時から、アラ温州の柑橘の糖酸度が柑橘の収穫が可能な程度に維持され、宮川早生の柑橘の収穫時期からアラ温州の柑橘の収穫が可能であるという点を示す結果である。
【0059】
【表3】
【0060】
総合すると、実施例1で育成した突然変異柑橘であるアラ温州は、果皮の着色時期が宮川温州に比べて約1〜3ヶ月遅くなることによって、1月下旬〜2月中旬の遅い時点でも柑橘の収穫が可能であり、糖度が高く、酸味が少ない母樹と同一又は類似の遺伝形質が、母樹である宮川早生の収穫時期からアラ温州の着色時期まで維持されることによって、収穫時期の選択が容易であるという特性を有する。また、実施例1で育成した突然変異柑橘であるアラ温州は、安定的に大量生産が可能であり、接木を通じて無性繁殖する突然変異変種柑橘であることを確認した。したがって、前記の特性を全て有する新規な柑橘品種を‘アラ温州’と命名した。
【0061】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
宮川早生と比較して、i)果実の糖酸度が、宮川早生の収穫期から、宮川早生の果実と同一水準以上に維持されながら、ii)果皮の着色時期が宮川早生の果実よりも約1〜3ヶ月遅くなることによって、iii)大韓民国の済州島で露地栽培した場合を基準として、11月下旬から2月中旬までの長い収穫時期を有する新規な晩生温州の品種である、突然変異柑橘‘アラ温州’を提供する。前記アラ温州は、宮川早生と果実の品質はほぼ同一であるが、多量の柑橘が出荷される柑橘出荷時期(大韓民国の場合、11月下旬から12月中旬)を避けて収穫時期を調節することができるため、出荷量の調節による柑橘農家の輸入増大に寄与することができる。
図1
図2
図3