(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374041
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】太陽電池用の接続箱
(51)【国際特許分類】
H02S 40/34 20140101AFI20180806BHJP
【FI】
H02S40/34
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-21901(P2017-21901)
(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-221095(P2017-221095A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2017年2月9日
(31)【優先権主張番号】201610385651.6
(32)【優先日】2016年6月3日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511193710
【氏名又は名称】浙江人和光伏科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】段利軍
【審査官】
嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−150277(JP,A)
【文献】
特開2011−018674(JP,A)
【文献】
特開2015−032672(JP,A)
【文献】
中国実用新案第205051644(CN,U)
【文献】
国際公開第2007/060787(WO,A1)
【文献】
特開2008−034873(JP,A)
【文献】
特開2014−33147(JP,A)
【文献】
特開2013−197464(JP,A)
【文献】
特開2012−174994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 40/34
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体を備える太陽電池用の接続箱であって、箱本体内に太陽電池セルを接続するための複数の導電片が設けられ、隣接の導電片同士はダイオードで接続され、両端にある導電片はそれぞれ母線を介して外部と接続される太陽電池用の接続箱において、
中央に位置するダイオードのチップの面積は両側に位置するダイオードのチップの面積よりも大きく、
ダイオードチップの面積差は、異なるタイプのダイオードチップを採用することにより実現されることを特徴とする太陽電池用の接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池用の接続箱において、
箱本体内においてN+1個導電片が設けられ、これらの導電片はN個のダイオードによって接続され、各ダイオードのチップの面積は、以下の条件を満たす:
Nが偶数の場合は、算式I及び算式IIの双方を満たし、
Nが奇数の場合は、算式III及び算式IVの双方を満たし、
Sはチップの面積であり、下付けはダイオードの順番であることを特徴とする太陽電池用の接続箱。
【請求項3】
請求項2に記載の太陽電池用の接続箱において、箱本体内に4つの導電片が設けられ、これらの導電片は3つのダイオードによって接続され、中央ダイオードのチップの面積は両端ダイオードのチップの面積よりも大きいことを特徴とする太陽電池用の接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電の技術分野に属し、特に太陽電池用の接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電の技術分野において接続箱は非常に重要な部品であり、太陽光電池セルによって生じた電流は、接続箱によって整流され合流した後に、インバーターによって直流電流が交流電流に変化されて配電網に取り込まれる。従来技術では通常、接続箱の構造は箱本体を含み、箱本体内には、太陽電池セルを接続するための複数の導電片が設けられている。導電片同士はダイオードで接続され、両端にある導電片は母線を介して外部と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特許第4699060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術において接続箱の最も大きな問題は発熱である。電流が導電片、ダイオードを流れる際に、これらの部品が発熱し、温度が過度に高くなると、使用に障碍が生じる。この問題を解決するためには、通常2つの方法が採用される。1つの方法は、ダイオードチップの表面積を増加させてその束を増大させることにより、発熱を低減することである。もう1つの方法は、導電片の表面積を増加させて放熱面積を増大させることにより、放熱を促進することである。しかし、これらの方法は何れも接続箱のコストを増加させてしまう。
【0005】
日本特許第4699060号に開示された太陽電池接続箱では、異なる導電片の温度上昇程度に基づき異なる放熱面積を設計しているため、全ての放熱面積は適切に使用されることができ、放熱効果及び製造コストの両立を好適に図ることができた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、経済的に且つ合理的に発熱量を低減することのできる太陽電池用の接続箱を提供することをその目的とする。
本発明にかかる太陽電池用の接続箱は、箱本体を備え、箱本体内に太陽電池セルを接続するための複数の導電片が設けられ、隣接の導電片同士はダイオードで接続され、両端にある導電片はそれぞれ母線を介して外部と接続される太陽電池用の接続箱において、中央に位置するダイオードのチップの面積は両側に位置するダイオードのチップの面積よりも大きい構成を採用している。
【0007】
より好ましくは、箱本体内においてN+1個導電片が設けられ、これらの導電片はN個のダイオードによって接続され、各ダイオードのチップの面積は、以下の条件を満たす: Nが偶数の場合は、算式I及び算式IIの双方を満たし、
Nが奇数の場合は、算式III及び算式IVの双方を満たし、
Sはチップの面積であり、下付けはダイオードの順番である。
【0008】
最も一般的な構成として、箱本体内に4つの導電片が設けられ、これらの導電片は3つのダイオードによって接続され、中央ダイオードのチップの面積は両端ダイオードのチップの面積よりも大きい。
【0009】
ダイオードチップの面積差は、異なるタイプのダイオードチップを採用することにより実現しても良いし、異なる数のダイオードチップを設けることにより実現しても良いし、チップの表面に溝を設けて面積を変化させることにより実現しても良い。
【0010】
接続箱の温度上昇は、概ねダイオードによるものである。ダイオードの束はダイオードの発熱を影響する核心的な要素である。そのため、ダイオードチップの面積を増大させてその束を増大させることにより、発熱を低減できる。しかし、単にダイオードチップを増大させることは好ましくない。本願の出願人は大量の研究を経て、異なる位置にあるダイオードの温度上昇が異なることを発見した。全体的には、中央に位置するダイオードの温度上昇は両側に位置するダイオードよりも大きい。従って、本願の出願人は、温度が上昇しやすい部分において相対的に大きいなダイオードチップを使用して温度上昇を抑制し、温度が上昇しにくい部分において相対的に小さいダイオードチップを使用しコストを抑制する。
【0011】
近年、Trenchというダイオードの加工技術があり、この技術ではチップの表面に溝を形成することにより浅溝横隔離(shallow trench isolation)領域を形成し、ダイオードの輪郭面積を変えずに束を増大させることができる。この方法も実質的にチップの面積を増大しているため、本発明の保護範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来技術にかかる接続箱の構造概略図である。
【
図5】実施例3の中間ダイオードチップの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参考して本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施例にかかる接続箱は箱本体を含み、箱本体内には、太陽電池を接続するための複数の導電片1が設けられている。隣接の導電片1同士は、ダイオード2で接続され、両端にある導電片1はそれぞれ母線を介して外部と接続されている。
図1に示されるように、従来技術では、箱本体内に4つの導電片1が設けられ、これらの導電片1は、3つのダイオード2によって接続されており、全てのダイオード2の第1チップ31の面積は等しくなっている。ダイオードチップの面積を増大させることによって発熱を低減する場合、全てのチップの面積が大きくなり、コストが増加する。
【0014】
中央に位置するダイオードは、その温度上昇程度が両側に位置するダイオードよりも大きいため、本実施例では、中央に位置するダイオードのチップを大きくし、そのチップの面積が両側にあるダイオードのチップよりも大きくなる構成を採用している。
【0015】
実施例1
図2に示されるように、本実施例の箱本体内には、太陽電池を接続するための4つの導電片1が設けられている。隣接の導電片1同士はダイオードで接続され、全部で3つのダイオードが接続を行っている。両端にある導電片1は母線を介して外部と接続されている。そのうち、中央ダイオード21に設けられた第2チップ32は、両端ダイオード22の第1チップ31とは異なるタイプのものである。両端ダイオード22の第1チップ31の面積S1は、長×幅=130mil×130mil(約3.3mm×3.3mm)であり、面積S3は、長×幅=130mil×130mil(約3.3mm×3.3mm)である。中央ダイオード21に設けられるチップ32の面積S2は、長×幅=150mil×150mil(約3.81mm×3.81mm)である(1000mil=1インチ、milはダイオードの一般的な寸法単位である)。中央ダイオード21の第2チップ32の面積は両端ダイオード22の第1チップ31よりも大きく、発熱を低減しつつ、コストの増加を抑制することができる。
【0016】
実施例2
図3に示されるように、本実施例の箱本体内には、太陽電池を接続するための4つの導電片1が設けられている。隣接の導電片1同士は、ダイオードで接続され、全部で3つのダイオードが接続を行っている。両端にある導電片1はそれぞれ母線を介して外部と接続されている。そのうち、中央ダイオード21には、2つの第1チップ31が並列に設けられている。両端ダイオード22の第1チップ31の面積S1は、長×幅=130mil×130mil(約3.3mm×3.3mm)であり、面積S3は、長×幅=130mil×130mil(約3.3mm×3.3mm)である。中央ダイオード21に設けられるチップ32の面積S2は、2×S1=2×長×幅=2×130mil×130mil(約2×3.3mm×3.3mm)である(1000mil=1インチ、milはダイオードの一般的な寸法単位である)。中央ダイオード21における2つの第1チップ31の合計放熱面積は、両端ダイオード22のチップの面積よりも大きく、発熱を低減しつつ、コストの増加を抑制することができる。
【0017】
実施例3
図4に示されるように、本実施例の箱本体内には、太陽電池を接続するための4つの導電片1が設けられている。隣接の導電片1同士は、ダイオードで接続され、全部で3つのダイオードが接続を行っている。両端にある導電片1はそれぞれ母線を介して外部と接続されている。そのうち、中央ダイオード21における第3チップ33の表面には、溝34が設けられており、この溝34により第3チップ33の面積を増大させる。第3チップ33の面積は、両端ダイオード22における第1チップ31の面積よりも大きく、発熱を低減しつつ、コストの増加を抑制することができる。
【符号の説明】
【0018】
1…導電片、2…ダイオード、21…中間ダイオード、22…両端ダイオード、31…第1チップ、32…第2チップ、33…第3チップ、34…溝