特許第6374051号(P6374051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6374051
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】トンネルの構築方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   E21D11/40 A
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-77185(P2017-77185)
(22)【出願日】2017年4月7日
【審査請求日】2018年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100146330
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 博行
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−045695(JP,A)
【文献】 特開2015−048656(JP,A)
【文献】 特開2004−332209(JP,A)
【文献】 特開平07−317744(JP,A)
【文献】 特許第3381606(JP,B2)
【文献】 特開昭50−088830(JP,A)
【文献】 特開2007−231663(JP,A)
【文献】 特開平08−296398(JP,A)
【文献】 特開平09−177186(JP,A)
【文献】 実開平07−031934(JP,U)
【文献】 実開昭51−007934(JP,U)
【文献】 特開平08−284593(JP,A)
【文献】 特開平10−339098(JP,A)
【文献】 特開昭54−090831(JP,A)
【文献】 特開平09−268898(JP,A)
【文献】 特開2007−138427(JP,A)
【文献】 特開2012−197559(JP,A)
【文献】 米国特許第04685839(US,A)
【文献】 水谷和彦,鋼製支保工建込みロボットの開発,国土交通省北海道開発局ホームページ,日本,2018年 2月22日,URL,https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/splaat000001820o-att/29pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に分割された一対の鋼製支保工を把持可能な一対のハンドを有するエレクタ装置を搭載する重機をトンネルの切羽に配置するエレクタ配置工程と、
前記一対の鋼製支保工を前記一対のハンドの各々に把持しつつ当該ハンドを駆動することで前記一対の鋼製支保工を天端部同士で相互に連結する支保工連結工程と、
前記一対のハンドを駆動することで、前記天端部同士が連結されたアーチ状の鋼製支保工を所定の建て込み位置に配置する支保工建て込み工程と、
を有し、
前記一対の鋼製支保工をそれぞれの天端部同士で相互に連結するための連結構造は、
前記一対の鋼製支保工の天端部にそれぞれ設けられ、当該一対の鋼製支保工が連結される際に互いに当接される第1天端継手板及び第2天端継手板と、
前記第1天端継手板に凹設された雌型連結部と、
前記第2天端継手板に凸設された雄型連結部と、
を備え、
前記雄型連結部は、前記第2天端継手板から突出する棒状の雄型係止部材を有し、
前記雌型連結部は、前記第1天端継手板に貫通形成される開口孔と、前記開口孔と連通すると共に前記雄型係止部材を挿入可能な挿入口が開口形成される収納室を内部に有するケーシングと、を含み、前記挿入口から前記収納室内へ挿入された前記雄型係止部材を係止し、
前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の外周縁に設けられたガイド部材によって前記第2天端継手板をガイドして前記雌型連結部の前記挿入口に前記雄型係止部材を導き、
前記ガイド部材は、前記第1天端継手板の外周縁において角部を形成する2辺のみに設けられており、前記第1天端継手板の上縁に設けられた上方ガイド壁と、前記第1天端継手板のうち、前記一対の鋼製支保工の連結時において切羽に面する方の側縁に設けられた側方ガイド壁と、を有する、
トンネルの構築方法。
【請求項2】
前記上方ガイド壁の幅寸法が前記第1天端継手板の前記上縁の長さよりも小さい、請求項1に記載のトンネルの構築方法。
【請求項3】
前記側方ガイド壁の幅寸法が前記第1天端継手板の前記側縁の長さよりも小さい、請求項1又は2に記載のトンネルの構築方法。
【請求項4】
円弧状に分割された一対の鋼製支保工を把持可能な一対のハンドを有するエレクタ装置を搭載する重機をトンネルの切羽に配置するエレクタ配置工程と、
前記一対の鋼製支保工を前記一対のハンドの各々に把持しつつ当該ハンドを駆動することで前記一対の鋼製支保工を天端部同士で相互に連結する支保工連結工程と、
前記一対のハンドを駆動することで、前記天端部同士が連結されたアーチ状の鋼製支保工を所定の建て込み位置に配置する支保工建て込み工程と、
を有し、
前記一対の鋼製支保工をそれぞれの天端部同士で相互に連結するための連結構造は、
前記一対の鋼製支保工の天端部にそれぞれ設けられ、当該一対の鋼製支保工が連結される際に互いに当接される第1天端継手板及び第2天端継手板と、
前記第1天端継手板に凹設された雌型連結部と、
前記第2天端継手板に凸設された雄型連結部と、
を備え、
前記雄型連結部は、前記第2天端継手板から突出する棒状の雄型係止部材を有し、
前記雌型連結部は、前記第1天端継手板に貫通形成される開口孔と、前記開口孔と連通すると共に前記雄型係止部材を挿入可能な挿入口が開口形成される収納室を内部に有するケーシングと、を含み、前記挿入口から前記収納室内へ挿入された前記雄型係止部材を係止し、
前記第1天端継手板が凹面形状を有していると共に、前記第2天端継手板が、前記第1天端継手板の凹面形状と相補的な凸面形状を有していることで、前記一対の鋼製支保工が連結される際に前記第1天端継手板及び前記第2天端継手板同士が面接触するように形成されており、
前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の凹面に沿って前記雄型係止部材を摺動させることでガイドし、前記雄型係止部材を前記雌型連結部の前記挿入口に導く、
トンネルの構築方法。
【請求項5】
前記雌型連結部は、前記凹面形状を有する前記第1天端継手板の領域内において最も凹んでいる領域に配置されており、
前記雄型係止部材は、前記凸面形状を有する前記第2天端継手板の領域内において最も隆起した領域に配置されている、
請求項に記載のトンネルの構築方法。
【請求項6】
前記雌型連結部は、前記収納室に形成されると共に前記挿入口側に向かって縮径するテーパ面を有するテーパ穴と、前記テーパ穴内において周方向に複数に分割されて且つ前記テーパ面に沿って摺動可能に配置された楔状の雌型係止部材と、前記雌型係止部材の内面に複数並設された周方向の雌側係止溝と、前記雌型係止部材を前記挿入口側に向かって押圧する押圧部材と、を更に含み、
前記雄型連結部は、前記雄型係止部材の外周に複数並設された周方向の雄側係止溝を更に含み、
前記雄型係止部材が前記雌型連結部の前記挿入口から挿入される際には、前記雄型係止部材が前記押圧部材の押圧力に抗して前記雌型係止部材を前記テーパ面に沿って後退させることで当該雌型係止部材の内面を拡径しつつ前記雄型係止部材が前記収納室に挿入され、
前記収納室への前記雄型係止部材の挿入が完了した際には、前記押圧部材の押圧力によって前記雌型係止部材が前記テーパ面に沿って前記挿入口側に向かって押し戻されることで当該雌型係止部材の内面が縮径し、前記雌側係止溝及び前記雄側係止溝が相互に噛合することで、前記雄型連結部及び前記雌型連結部が一体に連結される、
請求項1から5の何れか一項に記載のトンネルの構築方法。
【請求項7】
前記重機には、吹付けコンクリートの吹付け装置が更に搭載されており、
前記建て込み位置に設置された前記アーチ状の鋼製支保工を前記一対のハンドに把持した状態で、前記吹付け装置によって吹付けコンクリートを前記鋼製支保工の脚部に吹付けて当該鋼製支保工をトンネル坑壁面に仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定工程の後、前記一対のハンドによる前記鋼製支保工の把持を解除する把持解除工程と、
トンネル坑壁面に仮固定した前記鋼製支保工と、当該鋼製支保工とトンネルの軸方向に隣接する既設の鋼製支保工との間に吹付けコンクリートを吹付け、新設の前記鋼製支保工の長手方向全域を吹付けコンクリートに埋め込む吹付け工程と、
を更に有する、請求項1から6の何れか一項に記載のトンネルの構築方法。
【請求項8】
前記鋼製支保工はH形断面を有すると共に、前記脚部のウェブに前記吹付けコンクリートと定着されるアンカー部材が凸設されており、
前記仮固定工程において、前記アンカー部材が前記吹付けコンクリートに埋没される、
請求項に記載のトンネルの構築方法。
【請求項9】
前記アンカー部材は前記ウェブの両面に凸設されている、請求項に記載のトンネルの構築方法。
【請求項10】
前記開口孔は、当該第1天端継手板の厚さ方向における内面側から外面側にかけて拡径するテーパ面を有しており、
前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の前記開口孔における前記テーパ面に沿って前記雄型係止部材を摺動させることでガイドし、前記雌型連結部の前記挿入口に前記雄型係止部材を導く、
請求項1からの何れか一項に記載のトンネルの構築方法。
【請求項11】
前記雄型係止部材の先端部には、先端に向かって縮径するテーパ面が形成されており、
前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の前記開口孔における縁部に沿って前記雄型係止部材の前記テーパ面を摺動させることでガイドし、前記雌型連結部の前記挿入口に前記雄型係止部材を導く、
請求項1から10の何れか一項に記載のトンネルの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する工法として、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)が知
られている。NATM工法は、地山が有する支保能力、強度を有効に利用してトンネルの安定を保つという考え方のもとに、吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工を適宜に用いて、地山と一体化したトンネル構造物を建設する工法である。
【0003】
NATM工法においてトンネルを構築する際に、アーチ状の鋼製支保工を設置する場合、通常、以下に説明する手順により行われている。まず、切羽の近傍に吹付け機をセットして、切羽にコンクリートを一次吹き付けし、これが完了すると、吹付け機を退出させる。次いで、切羽近傍に支保工を建て込むエレクタを備えた作業車を配置し、エレクタによりアーチ状の鋼製支保工を切羽近傍のトンネル坑壁に建て込み、これが完了すると作業車を退出させる。次に、切羽に吹付け機を再び配置し、建て込まれたトンネル支保工を埋め込むようにして、コンクリートの二次吹付けを行い、吹付け機を退出させる。
【0004】
鋼製支保工の建て込みに際しては、主にエレクタ装置やドリルジャンボ等といった重機のブーム先端で左右の鋼製支保工を把持して建て込み作業を行った後、左右の鋼製支保工の天端に設けられている継手板同士を突き合わせてボルト接合をすることでアーチ状に建て込む方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3381606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の鋼製支保工の連結構造によれば、左右の鋼製支保工に設けられた継手板同士を当接させた状態で、トンネル坑壁付近に組まれた作業足場や重機のブームに設けられたマンケージ等に人員を配置して、トンネル天端付近まで人員を移動させ、その天端付近に位置する鋼製支保工の継手板同士にボルトを挿通し、かかるボルトをナットにて締結するといった連結作業を行う必要があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性および作業性を向上することができるトンネルの構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトンネルの構築方法は、円弧状に分割された一対の鋼製支保工を把持可能な一対のハンドを有するエレクタ装置を搭載する重機をトンネルの切羽に配置するエレクタ配置工程と、前記一対の鋼製支保工を前記一対のハンドの各々に把持しつつ当該ハンドを駆動することで前記一対の鋼製支保工を天端部同士で相互に連結する支保工連結工程と、前記一対のハンドを駆動することで、前記天端部同士が連結されたアーチ状の鋼製支保工を所定の建て込み位置に配置する支保工建て込み工程と、を有し、前記一対の鋼製支保工をそれぞれの天端部同士で相互に連結するための連結構造は、前記一対の鋼製支保工の天端部にそれぞれ設けられ、当該一対の鋼製支保工が連結される際に互いに当接される第
1天端継手板及び第2天端継手板と、前記第1天端継手板に凹設された雌型連結部と、前記第2天端継手板に凸設された雄型連結部と、を備え、前記雄型連結部は、前記第2天端継手板から突出する棒状の雄型係止部材を有し、前記雌型連結部は、前記第1天端継手板に貫通形成される開口孔と、前記開口孔と連通すると共に前記雄型係止部材を挿入可能な挿入口が開口形成される収納室を内部に有するケーシングと、を含み、前記挿入口から前記収納室内へ挿入された前記雄型係止部材を係止する。
【0009】
本発明によれば、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性および作業性を向上することができるトンネルの構築方法を提供できる。
【0010】
また、本発明において、前記雌型連結部は、前記収納室に形成されると共に前方が縮径するテーパ面を有するテーパ穴と、前記テーパ穴内において周方向に複数に分割されて且つ前記テーパ面に沿って摺動可能に配置された楔状の雌型係止部材と、前記雌型係止部材の内面に複数並設された周方向の雌側係止溝と、前記雌型係止部材を前方に押圧する押圧部材と、を更に含み、前記雄型連結部は、前記雄型係止部材の外周に複数並設された周方向の雄側係止溝を更に含み、前記雄型係止部材が前記雌型連結部の前記挿入口から挿入される際には、前記雄型係止部材が前記押圧部材の押圧力に抗して前記雌型係止部材を前記テーパ面に沿って後退させることで当該雌型係止部材の内面を拡径しつつ前記雄型係止部材が前記収納室に挿入され、前記収納室への前記雄型係止部材の挿入が完了した際には、前記押圧部材の押圧力によって前記雌型係止部材が前記テーパ面に沿って前方へ押し戻されることで当該雌型係止部材の内面が縮径し、前記雌側係止溝及び前記雄側係止溝が相互に噛合することで、前記雄型連結部及び前記雌型連結部が一体に連結されても良い。
【0011】
また、本発明において、前記重機には、吹付けコンクリートの吹付け装置が更に搭載されており、前記建て込み位置に設置された前記アーチ状の鋼製支保工を前記一対のハンドに把持した状態で、前記吹付け装置によって吹付けコンクリートを前記鋼製支保工の脚部に吹付けて当該鋼製支保工をトンネル坑壁面に仮固定する仮固定工程と、前記仮固定工程の後、前記一対のハンドによる前記鋼製支保工の把持を解除する把持解除工程と、トンネル坑壁面に仮固定した前記鋼製支保工と、当該鋼製支保工とトンネルの軸方向に隣接する既設の鋼製支保工との間に吹付けコンクリートを吹付け、新設の前記鋼製支保工の長手方向全域を吹付けコンクリートに埋め込む吹付け工程と、を更に有していても良い。
【0012】
また、前記鋼製支保工はH形断面を有すると共に、前記脚部のウェブに前記吹付けコンクリートと定着されるアンカー部材が凸設されており、前記仮固定工程において、前記アンカー部材が前記吹付けコンクリートに埋没されても良い。この場合、前記アンカー部材は前記ウェブの両面に凸設されていても良い。
【0013】
また、前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の外周縁に設けられたガイド部材によって前記第2天端継手板をガイドして前記雌型連結部の前記挿入口に前記雄型係止部材を導くようにしても良い。この場合、前記ガイド部材は、前記第1天端継手板の外周縁の一部を覆うようにして設けられていても良い。また、前記ガイド部材は、前記第1天端継手板の外周縁において角部を形成する2辺に設けられていても良い。また、前記ガイド部材は、前記第1天端継手板の上縁に設けられた上方ガイド壁と、前記第1天端継手板のうち、前記一対の鋼製支保工の連結時において切羽に面する方の側縁に設けられた側方ガイド壁と、を有していても良い。
【0014】
また、前記第1天端継手板が凹面形状を有していると共に、前記第2天端継手板が、前記第1天端継手板の凹面形状と相補的な凸面形状を有していることで、前記一対の鋼製支保工が連結される際に前記第1天端継手板及び前記第2天端継手板同士が面接触するように形成されており、前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の凹面に沿って前
記雄型係止部材を摺動させることでガイドし、前記雄型係止部材を前記雌型連結部の前記挿入口に導くようにしても良い。
【0015】
また、前記雌型連結部は、前記凹面形状を有する前記第1天端継手板の領域内において最も凹んでいる領域に配置されており、前記雄型係止部材は、前記凸面形状を有する前記第2天端継手板の領域内において最も隆起した領域に配置されていても良い。
【0016】
また、前記開口孔は、当該第1天端継手板の厚さ方向における内面側から外面側にかけて拡径するテーパ面を有しており、前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の前記開口孔における前記テーパ面に沿って前記雄型係止部材を摺動させることでガイドし、前記雌型連結部の前記挿入口に前記雄型係止部材を導くようにしても良い。
【0017】
また、前記雄型係止部材の先端部には、先端に向かって縮径するテーパ面が形成されており、前記支保工連結工程において、前記第1天端継手板の前記開口孔における縁部に沿って前記雄型係止部材の前記テーパ面を摺動させることでガイドし、前記雌型連結部の前記挿入口に前記雄型係止部材を導くようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性および作業性を向上することができるトンネルの構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係るトンネル支保工の側面図である。
図2図2は、実施形態1に係る定着アンカーを説明する図である。
図3図3は、実施形態1に係るトンネル支保構造を説明する図である。
図4図4は、実施形態1に係るトンネル支保工の建て込みシステムの概略構成図である。
図5図5は、実施形態1に係る作業車の上面図である。
図6図6は、実施形態1に係る作業車の側面図である。
図7図7は、実施形態1に係るトンネル支保工へのターゲットの取付け位置を示す図である。
図8図8は、実施形態1に係るターゲットを示す図である。
図9図9は、実施形態1に係る左側鋼製支保工及び右側鋼製支保工を連結する連結構造を示す概略図である。
図10図10は、実施形態1に係る第1天端継手板を示す図である。(a)に、第1天端継手板の外面側から眺めた雌型連結部を示す。(b)に、第1天端継手板の内面側から眺めた雌型連結部を示す。
図11図11は、実施形態1に係る第2天端継手板を示す図である。(a)に、第2天端継手板の内面側から眺めた雄型連結部を示す。(b)に、第2天端継手板の外面側から眺めた雄型連結部を示す。
図12図12は、図2におけるX−X矢視断面図である。
図13図13は、実施形態1に係る雌型連結部と雄型連結部を連結した状態を示す図である。
図14図14は、実施形態1の変形例に係る連結構造を説明する図である。
図15図15は、実施形態1の変形例に係るトンネル支保工の建て込み手順を説明する図である。
図16図16は、実施形態2に係る鋼製支保工の連結構造を説明する図である。(a)は、左側鋼製支保工における第1天端継手板近傍の縦断面図である。(b)は、(a)のA矢視正面図である。(c)は、(a)のB−B矢視断面図である。
図17図17は、実施形態2における左側鋼製支保工及び右側鋼製支保工を連結する際の動作を説明する図である。
図18A図18Aは、実施形態2の変形例に係るガイド部材を示す図である。
図18B図18Bは、実施形態2の変形例に係るガイド部材を示す図である。
図19図19は、実施形態3に係る鋼製支保工の連結構造を説明する図である。(a)は、実施形態3に係る左側鋼製支保工における第1天端継手板近傍の縦断面図である。(b)は、(a)のC矢視正面図である。(c)は、実施形態3に係る第1天端継手板の概略斜視図である。
図20図20は、実施形態3に係る鋼製支保工の連結構造を説明する図である。(a)は、実施形態3に係る右側鋼製支保工の第2天端継手板近傍の縦断面図である。(b)は、(a)のD矢視正面図である。(c)は、実施形態3に係る第2天端継手板の概略斜視図である。
図21図21は、実施形態3における左側鋼製支保工及び右側鋼製支保工を連結する際の動作を説明する図である。
図22図22は、左側鋼製支保工及び右側鋼製支保工の変形例を示す図である。
図23図23は、定着アンカーの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るトンネル支保工10の側面図である。トンネル支保工10は、トンネル掘削に伴い露出する地山の崩落防止のために、掘削直後の坑壁に沿って建て込まれるアーチ状の鋼製支保工であり、トンネル軸方向に沿って一定間隔毎に設置される。本実施形態におけるトンネル支保工10は、H形断面を有するH形鋼によって形成されている。より詳しくは、トンネル支保工10は、一対の円弧状の鋼製支保工10L,10Rの天端部(上端部)同士を一体に連結することでアーチ状に形成されている。以下、鋼製支保工10Lを「左側鋼製支保工」と呼び、鋼製支保工10Rを「右側鋼製支保工」と呼ぶ。
【0022】
左側鋼製支保工10Lは、第1本体部111、第1天端継手板121、第1底板131を有する。第1本体部111は、ウェブ111a、当該ウェブ111aに直交する一対の地山側フランジ111b及び内空側フランジ111cから構成されるH形鋼である。また、第1本体部111における一端には第1天端継手板121が溶接され、他端には第1底板131が溶接されている。第1天端継手板121及び第1底板131は四角形の鋼製平板であり、第1本体部111のH形断面に対して直交方向に延在している。右側鋼製支保工10Rについても同様に、第2本体部112、第2天端継手板122、第2底板132を有する。第2本体部112は、ウェブ112a、当該ウェブ112aに直交する一対の地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cから構成されるH形鋼である。また、第2本体部112における一端には第2天端継手板122が溶接され、他端には第2底板132が溶接されている。第2天端継手板122、第2底板132は四角形の鋼製平板であり、第2本体部112のH形断面に対して直交方向に延在している。本実施形態では、第1天端継手板121及び第2天端継手板122は合同の正方形平面を有している。図1に示すように、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは、第1天端継手板121及び第2天端継手板122が互いに突き合わされた状態で連結されている。
【0023】
図1に示す符号2は、定着アンカーである。定着アンカー2は、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの各脚部に設けられており、アンカー部材に相当する。本実施形態においては、左側鋼製支保工10Lにおける第1本体部111の脚部111dに位置するウェブ111aと、右側鋼製支保工10Rにおける第2本体部112の脚部112dに位置するウェブ112aに、定着アンカー2が凸設されている。図2は、第1本体部1
11の脚部111dと第2本体部112の脚部112dに設けられた定着アンカー2を説明する図である。定着アンカー2は、ウェブ111a,112aから垂直に立設する軸部と、軸部の先端に設けられると共に軸部よりも拡径された頭部からなる。但し、定着アンカー2の形状は適宜変更することができる。また、本実施形態において、第1本体部111は、ウェブ111aの両面に定着アンカー2が凸設されている。また、第2本体部112は、ウェブ112aの両面に定着アンカー2が凸設されている。
【0024】
図3は、実施形態1に係るトンネル支保構造1を説明する図である。図3における符号3は、一次吹付けコンクリート層である。また、符号6は、二次吹付けコンクリート層である。なお、図3には、トンネル支保工10の右側鋼製支保工10Rが図示されている。本実施形態のトンネル構築方法において、切羽8の掘削によってトンネルTの側面に地山7が露出した後、この地山7に対して一次コンクリートの吹付け施工が行われることで、一次吹付けコンクリート層3が形成される。その後、トンネル坑壁面に沿って一次吹付けコンクリート層3の内空側に上述したアーチ状のトンネル支保工10が建て込まれる。トンネル支保工10は、トンネルTの坑口側に位置する既設のトンネル支保工10に対して、切羽8側に隣接し、トンネルTの軸方向に所定の間隔(例えば、1.0m〜1.5m程度)で配列される。トンネル支保工10の建て込みは、一対のブーム先端に取り付けられたハンドを備えたエレクタ装置を用いて行われる。以下、トンネル支保工10の建て込み方法について詳しく説明する。
【0025】
図4は、実施形態1に係るトンネル支保工10の建て込みシステムSの概略構成図である。図中、符号100はトンネル支保工10の建て込みを行うエレクタ装置、符号200はエレクタ装置100を搭載すると共に自走可能な作業車(重機)である。符号300はレーザ光による測距・測角儀(測量機)である自動追尾型トータルステーション、符号400はトータルステーション300を制御するトータルステーションコントローラ、符号500はトータルステーションコントローラ400と無線による送受信を可能とするトータルステーション側アンテナである。
【0026】
エレクタ装置100は、操縦席に搭載されたディスプレイ装置であるモニタ101、エレクタコントローラ102、エレクタ側アンテナ103、操作盤104、キーボード105、ポンティングデバイス106等を有する。
【0027】
トータルステーション300は、レーザ光を照射してプリズム等を含むターゲット9を自動追尾し、その測距・測角を行うことで、ターゲット9の位置を測定(測量)する測量機であり、トンネルT内において座標が既知の地点(座標既知地点)に設置される。本実施形態では、切羽8に建て込むトンネル支保工10(左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R)にターゲット9を取り付け、トンネル支保工10(左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R)の移動に伴いターゲット9を自動追尾することから、そのようなターゲットの自動追尾、および視準に障害が無いところを選んで設置するとよい。例えば、トンネル床面に設置しても良いし、天井部に架台を架設して、トータルステーション300を架台上に設置しても良い。
【0028】
トータルステーションコントローラ400は、例えば携帯可能なコンピュータを含んで構成されている。トータルステーションコントローラ400は、コンピュータに組み込まれたソフトウェアによってトータルステーション300の各種の機構を自動制御すると共に、トータルステーション300の測量データを処理する。更に、トータルステーションコントローラ400は、エレクタコントローラ102側との無線通信によりデータの送受信が可能であり、且つ、エレクタコントローラ102側からの指令によりトータルステーション300の各種の機構を無線遠隔操作することが可能である。
【0029】
図5は、実施形態1に係る作業車200の上面図である。図6は、実施形態1に係る作業車200の側面図である。作業車200は、エレクタ装置100および吹付け装置600を備えている。エレクタ装置100は、同一構成の一対のブーム17L,17Rを備えている。一対のブーム17L,17Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって伸縮動作、傾動動作、揺動動作、回動動作が自在である。また、各ブーム17L,17Rの先端には、同一構成の一対のハンド18L,18Rが連結されている。一対のハンド18L,18Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって回転動作および揺動動作が自在であり、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをそれぞれ着脱自在に挟圧把持(保持)することができる。
【0030】
以下では、符号17Lで示すブームを「左側ブーム」と呼び、符号17Rで示すブームを「右側ブーム」と呼ぶ。また、符号18Lで示すハンドを「左側ハンド」と呼び、符号18Rで示すハンドを「右側ハンド」と呼ぶ。エレクタ装置100は、左側ハンド18Lに左側鋼製支保工10Lを着脱自在に把持し、右側ハンド18Rに右側鋼製支保工10Rを着脱自在に把持することができる。本実施形態において、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは、アーチ状のトンネル支保工10が2分割された一対の支保材であり、切羽8の近傍に誘導された後、これらを切羽8で組み立ててアーチ状のトンネル支保工10を形成する。
【0031】
図7は、実施形態1に係るトンネル支保工へのターゲットの取付け位置を示す図である。図7に示すように、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは左右対称な円弧状である。ここで、左側鋼製支保工10Lは、その上端部と下端部にそれぞれ第1ターゲット9aと第2ターゲット9bが取り付けられる。また、右側鋼製支保工10Rは、その上端部と下端部にそれぞれ第3ターゲット9cと第4ターゲット9dが取り付けられる。ここで、第1ターゲット9a〜第4ターゲット9dを「ターゲット9」と総称する。図8は、実施形態1に係るターゲット9を示す図である。ターゲット9は、ホルダ91の基端部に設けられた磁石92と、ホルダ91の先端に設けられたプリズム93を有する。左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは鋼製であるため、ホルダ91に設けられた磁石92の磁力によって左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rに対してターゲット9を着脱自在に取り付けることができる。
【0032】
また、図7に示す例では、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの内空側フランジ111c,112cにターゲット9が取り付けられるようになっている。本実施形態では、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの内空側フランジ111c,112cに、各ターゲット9を取り付ける際の目印が予めペンキ等で標示されている。また、各ターゲット9は、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの内空側フランジ111c,112cに取り付けた状態において、その取付け面からプリズム93中心までの高さHpは一定である。
【0033】
次に、図5及び図6を参照して吹付け装置600について説明する。吹付け装置600は、左側ブーム17Lおよび右側ブーム17Rの間に配設されており、アーム601と、アーム601に支持される吹付けロボット602と、吹付けロボット602の先端側に設けられる吹付けノズル603等を備えている。アーム601は、伸縮動作、傾動動作等が可能である。また、吹付けロボット602は、吹付けノズル603の傾動動作、回動動作等が可能である。その他、吹付け装置600は、コンクリートポンプ、急結剤供給装置、コンプレッサ、高圧水ポンプ等を備えている。吹付けロボット602は、コンクリートポンプから供給された吹付けコンクリートを吹付けノズル603から吐出させることで、吹付けコンクリートを切羽8に吹付けることができる。
【0034】
次に、本実施形態におけるトンネル支保工10の建て込み方法について説明する。NA
TM工法は、(1)切羽8を発破又は機械によって掘削→(2)ズリの搬出→(3)一次吹付けコンクリートの吹付け→(4)トンネル支保工の建て込み→(5)二次吹付けコンクリートの吹付け→(6)ロックボルトの打設を1サイクルとして繰り返すことで、トンネルTを軸方向に延伸させる工法である。本実施形態では、(2)ズリの搬出工程が終了した後、エレクタ装置100を搭載した作業車200を切羽8近傍に配置する(エレクタ配置工程)。その際、エレクタ装置100の各ハンド18L,18Rには、それぞれ左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを、トンネル軸(トンネル延伸方向)に沿って把持した状態で作業車200を自走させ、切羽8近傍に配置する。そして、これから左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを建て込む地山7(トンネル坑壁面)に、吹付け装置600を用いて一次吹付けコンクリートを吹付けることで一次吹付けコンクリート層3を形成する。
【0035】
次に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを各ハンド18L,18Rに把持しつつ当該各ハンド18L,18Rを駆動することで左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを天端部同士で相互に連結する(支保工連結工程)。以下、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造について説明する。
【0036】
図9は、実施形態1に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する連結構造30を示す概略図である。連結構造30は、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122、第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40、第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50等を含む。図2は、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121と右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122が連結構造30を介して連結される前の状態、即ち、第1天端継手板121と第2天端継手板122が離間した状態を示している。
【0037】
ここで、符号121aは、第1天端継手板121の外面、符号121bは第1天端継手板12Lの内面である。符号122aは、第2天端継手板122の外面、符号122bは第2天端継手板122の内面である。図10(a)に、第1天端継手板121の外面121a側から眺めた雌型連結部40を示し、図10(b)に、第1天端継手板121の内面121b側から眺めた雌型連結部40を示す。また、図11(a)に第2天端継手板122の内面122b側から眺めた雄型連結部50を示し、図11(b)に、第2天端継手板122の外面122a側から眺めた雌型連結部40を示す。
【0038】
なお、符号121cは第1天端継手板121の上縁、符号121dは第1天端継手板121の下縁、符号121eは第1天端継手板121の左右の側縁である。また、符号122cは第2天端継手板122の上縁、符号122dは第2天端継手板122の下縁、符号122eは第2天端継手板122の左右の側縁である。図10に、第1天端継手板121の高さ方向及び幅方向を図示し、図11に、第2天端継手板122の高さ方向及び幅方向を図示する。第1天端継手板121の高さ方向は側縁121eの延伸方向と平行であり、且つ、第1本体部111が第1天端継手板121と連結する位置におけるウェブ111aの延伸方向と平行である。また、第1天端継手板121の幅方向は上縁121c及び下縁121dの延伸方向と平行であり、且つ、第1本体部111が第1天端継手板121と連結する位置における地山側フランジ111b及び内空側フランジ111cの延伸方向と平行である。また、第2天端継手板122の高さ方向は側縁122eの延伸方向と平行であり、且つ、第2本体部112が第2天端継手板122と連結する位置におけるウェブ112aの延伸方向と平行である。第2天端継手板122の幅方向は上縁122c及び下縁122dの延伸方向と平行であり、且つ、第2本体部112が第2天端継手板122と連結する位置における地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cの延伸方向と平行である。
【0039】
図10(a)、(b)に示すように、第1天端継手板121には、符号A1で示される第1領域と、符号A2で示される第2領域にそれぞれ雌型連結部40が設けられている。第1領域A1は、第1天端継手板121の平面領域のうち、第1本体部111のウェブ111aを境に一方側に位置すると共に、地山側フランジ111b、内空側フランジ111c及びウェブ111aによって囲まれた領域である。第2領域A2は、第1天端継手板121における平面領域のうち、第1本体部111のウェブ111aを境に他方側に位置すると共に、地山側フランジ111b、内空側フランジ111c及びウェブ111aによって囲まれた領域である。同様に、図11(a)、(b)に示すように、第2天端継手板122には、符号A1で示される第1領域と、符号A2で示される第2領域にそれぞれ雌型連結部40が設けられている。第1領域A1は、第2天端継手板122における平面領域のうち、第2本体部112のウェブ112aを境にして一方側に位置すると共に、地山側フランジ112b、内空側フランジ112c及びウェブ112aによって囲まれた領域である。第2領域A2は、第2天端継手板122の平面領域のうち、第2本体部112のウェブ112aを境にして他方側に位置すると共に、地山側フランジ112b、内空側フランジ112c及びウェブ112aによって囲まれた領域である。
【0040】
まず、第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50について説明する。第2天端継手板122には、雄型連結部50が設けられる位置に一対の開口孔122fが穿設されている。雄型連結部50は、棒状の雄型係止部材51を有している。雄型係止部材51は、第2天端継手板122の開口孔122fよりも若干小径の軸部材であり、その基端部に雄ネジ51aが刻設されている。また、雄型係止部材51の中間部には環状の鍔部51bが設けられている。また、雄型係止部材51の鍔部51bよりも先端側の部位における外周部には、雄ネジ51cが形成されている。雄型係止部材51の雄ネジ51cは、雄型係止部材51の外周に複数並設された周方向の雄側係止溝である。また、雄型係止部材51の先端部51dには、先端に向かって縮径するテーパ面51eが形成されている。
【0041】
また、第2天端継手板122の外面122a側における開口孔122fの周囲には、周囲よりも一段凹んだザグリ部122gが形成されている。雄型係止部材51の鍔部51bは、第2天端継手板122の開口孔122fの径よりも大きい。雄型係止部材51の基端側を、第2天端継手板122の外面122a側から開口孔122fに挿通し、鍔部51bをザグリ部122gに配置した状態で基端部の雄ネジ51aにナット52を螺着する。その結果、雄型係止部材51が第2天端継手板122から突出した状態で、第2天端継手板122に雄型係止部材51を固定することができる。
【0042】
次に、雌型連結部40について説明する。第1天端継手板121は、雌型連結部40が設けられる位置に一対の開口孔121fが穿設されており、その内面121bには金属製の円筒状のケーシング41が溶接wpなどによって固定されている。ケーシング41は、その軸心を開口孔121fの略中央部に位置させている。ケーシング41内には、収納室42が形成されている。収納室42の先部(前部)には、その内周面を後端側から先端側にかけて内径が徐々に縮径するテーパ面43aを有するテーパ穴43が形成されている。また、収納室42の中間部にはバネ収納部42aが形成されており、収納室42の後部内周に雌ネジ45が刻設されている。また、テーパ穴43の先端部には、挿入口48が開口形成されている。ケーシング41の前端部に位置する挿入口48は、第1天端継手板121に形成された開口孔121fと略同径で、開口孔121fと連通している。また、ケーシング41が第1天端継手板121に固定された状態で挿入口48が開口孔121fと重なった位置に配置されている。
【0043】
また、テーパ穴43内には、分割された雌型係止部材46が軸方向に摺動可能に配置されている。本実施形態では、図12に示すように、周方向に3つに分割してなる楔形の雌型係止部材46が、ケーシング41の軸(前後)方向に摺動可能に配設されている。ここ
で、雌型係止部材46の外面は、テーパ穴43におけるテーパ面43aに沿って摺動可能なテーパ面46aとして形成されている。雌型係止部材46のテーパ面46aは、先端側から後方にかけて外径が徐々に拡大している。更に、各雌型係止部材46の内面には、雌ネジ46bが形成されている。雌ネジ46bは、各雌型係止部材46の内面に、複数並設された周方向の雌側係止溝である。雌ネジ46bは、ケーシング41の軸心を中心とする円弧で且つ、軸心に沿った方向に刻設されている。以上より、複数個の雌型係止部材46によって雌ネジ穴が形成され、各雌型係止部材46のテーパ面46aがテーパ穴43のテーパ面43aに沿って後退することにより、その雌ネジ穴が拡径され、前方(先方)へ移動することにより当該雌ネジ穴が縮径するようになる。なお、各雌型係止部材46の内面に形成された雌ネジ46bは、雄型係止部材51の先端側外周部に形成された雄ネジ51cと噛合させることができる。
【0044】
また、収納室42のバネ収納部42aには、雌型係止部材46を前方(先方)に押圧(弾性付勢)する押圧部材である押圧ばね44が、各雌型係止部材46の後端に設けられるばね受け47と蓋板49との間に圧縮した状態で収納されており、押圧ばね44の押圧力によって各雌型係止部材46を常時前方に押圧している。蓋板49は、収納室42の後部内周側に刻設された雌ネジ45に螺着されることで、押圧ばね44を圧縮した状態に保持することができる。なお、蓋板49の外面には、六角穴49aが設けられており、六角レンチによって蓋板49をケーシング41から着脱自在になっている。
【0045】
以上のように構成される雌型連結部40及び雄型連結部50において、各雌型係止部材46の内面に形成された雌ネジ46bと雄型係止部材51の外周部に形成された雄ネジ51cは、ネジピッチが、JISに規定する細目ネジのピッチよりも小さく形成されている。また、本実施形態の雌型連結部40では各雌型係止部材46の内面に螺旋状の雌ネジ46bを形成したが、雌ネジ46bに代えて、各雌型係止部材46の周方向に伸びる環状の山部と環状の谷部を交互かつ並行に配置した並行溝を各雌型係止部材46の内面に設けても良い。同様に、雄型連結部50においては、雄型係止部材51の外周部に形成した雄ネジ51cに代えて、雄型係止部材51の周方向に伸びる環状の山部と環状の谷部を交互かつ並行に配置した並行溝を雄型係止部材51の外周面に設けても良い。
【0046】
次に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の連結構造30の動作について説明する。図9に示すように、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121と右側鋼製支保工10Rにおける第2天端継手板122を接近かつ対峙(対向)させた状態から、第1天端継手板121の開口孔121fに雄型連結部50(雄型係止部材51)が挿入されるように、第1天端継手板121及び第2天端継手板122の離間距離を徐々に狭めてゆく。
【0047】
ここで、雄型係止部材51の外径は、第1天端継手板121の開口孔121f及び雌型連結部40(ケーシング41)の挿入口48よりも若干小径で、且つ、各雌型係止部材46がテーパ穴43(テーパ面43a)の最前進位置に配置された状態で、各雌型係止部材46によって形成される雌ネジ穴の直径よりも若干大径に設定されている。第2天端継手板122に凸設された雄型係止部材51が第1天端継手板121の開口孔121fを通じて、雌型連結部40の挿入口48から侵入すると、押圧ばね44の押圧力によって前端部にテーパ穴43(テーパ面43a)の最前進位置に位置決めされている各雌型係止部材46の前端面46cに雄型係止部材51の先端部51dが当接する。そして、雄型係止部材51が押圧ばね44の押圧力に抗して、各雌型係止部材46をテーパ面43aに沿って、雌型連結部40(ケーシング41)の軸方向後方に向かって後退させることで、各雌型係止部材46におけるテーパ面46aの雌ネジ46bによって形成されている雌ネジ穴を拡径しつつ雄型係止部材51が収納室42内に挿入される。
【0048】
そして、第1天端継手板121の外面121aと第2天端継手板122の外面122aとが当接することで面接触し、雌型連結部40における収納室42内への雄型係止部材51の挿入が完了することで、それ以上の収納室42内への雄型係止部材51の挿入が停止されると、各雌型係止部材46は押圧ばね44の押圧力によって前方(先方)に押し戻されると共に、各雌型係止部材46のテーパ面46aによって形成される雌ネジ穴が縮径する。その結果、図13に示すように、雌型連結部40における各雌型係止部材46の雌ネジ46b(雌側係止溝)及び雄型連結部50における雄型係止部材51の雄ネジ51c(雄側係止溝)が相互に噛合する。これによって、図1に示したように、第1天端継手板121及び第2天端継手板122が面接触した状態で、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rが一体に連結される。なお、本実施形態においては、雌型連結部40に対して雄型係止部材51が挿入及び係止された状態において、第1天端継手板121及び第2天端継手板122の各外縁同士の位置がすべて合致するように設定されている。すなわち、第1天端継手板121の雌型連結部40と第2天端継手板122の雄型係止部材51が連結された状態において、第1天端継手板121の上縁121c、下縁121d、一対の側縁121eがそれぞれ第2天端継手板122の上縁122c、下縁122d、一対の側縁122eに重なるようになっている。
【0049】
ここで、図13に示したように、雌型連結部40の雌ネジ46bと雄型連結部50(雄型係止部材51)の雄ネジ51cが噛合した状態で、第1天端継手板121及び第2天端継手板122を離反する方向に外力が作用した場合、雌型連結部40における収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に引き抜き力が作用する。この引き抜き力は、互いに噛み合う雄ネジ51cと雌ネジ46bを介して各雌型係止部材46に伝達される。ところで、各雌型係止部材46のテーパ面46aは後方側から前方にかけて外径が徐々に縮小している。そのため、上記引き抜き力が各雌型係止部材46に作用しても、各雌型係止部材46がテーパ穴43の前方に向かって変位することが制限される。すなわち、本実施形態に係る連結構造30によれば、雌型連結部40の収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に外力が作用しても、当該外力に対抗して連結状態を維持することができる。つまり、実施形態における連結構造30によれば、雌型連結部40の挿入口48から雄型連結部50(雄型係止部材51)を挿入する動作だけで、雌型連結部40に対して雄型連結部50が連結されるため、簡単に左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを一体に締結できる。また、雌型連結部40における収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に引き抜き力が作用しても、雌型連結部40及び雄型連結部50の連結が解除されることを抑制できる。
【0050】
ここで、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結及び建て込みを行う際のエレクタ装置100の動作について説明する。左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結及び建て込みに際して、エレクタ装置100は、左側ブーム17Lおよび右側ブーム17Rを伸長および傾動させると共に、左側ハンド18Lおよび右側ハンド18Rを回転させることで、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをトンネル軸と直交するように移動させる。なお、エレクタ装置100における各ブーム17L,17Rおよび各ハンド18L,18Rの駆動は、操作盤104の操作によって行うことができる。
【0051】
次に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持した状態の一対のハンド18L,18Rを相対移動させて、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121及に凹設された雌型連結部40と、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50(雄型係止部材51)を相互に連結し、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをアーチ状に連結することでトンネル支保工10を形成する。その際、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rにそれぞれ取り付けたターゲット9の位置を座標既知地点から測量することで得られた測量データに基づいてハンド18L,18R
の相対移動量を設定し、駆動させる。本実施形態において、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40と、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50(雄型係止部材51)は、エレクタ装置100のハンド操作によってワンタッチで連結されるワンタッチ継手として機能する。
【0052】
例えば、エレクタコントローラ102は、トータルステーションコントローラ400を介してトータルステーション300を無線遠隔操作し、各ターゲット9(第1ターゲット9a〜第4ターゲット9d)を自動追尾して、各ターゲット9の座標を順次自動測量する。ここで、トータルステーション300は、座標既知地点(x0,y0,z0)に設置されている。このように座標既知地点に設置されたトータルステーション300からレーザ光を照射して各ターゲット9を視準して測距・測角を行うことで、第1ターゲット9a〜第4ターゲット9dの位置座標(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x3,y3,z3)、(x4,y4,z4)を求めることができる。そして、各ターゲット9の位置座標を含む測量データは、トータルステーションコントローラ400側からエレクタコントローラ102へと順次無線送信される。エレクタコントローラ102は、トータルステーション300から取得した各ターゲット9の測量データに基づいて、ハンド18L,18Rを相対移動させるためのそれぞれの駆動量を設定し、図9及び図13で説明したように左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121及び右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122を相互に連結する。
【0053】
なお、エレクタコントローラ102が設定したハンド18L,18Rの移動量は、モニタ101に表示される。本実施形態におけるトータルステーション300は各ターゲット9を自動追尾し、視準することができる。従って、ハンド18L,18Rの操作によって左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの天端部同士を相互連結するために必要な各ハンド18L,18Rの移動量は、モニタ101にリアルタイムで表示することができ、オペレータはモニタ101を見ながら操作盤104を順次操作することで左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを簡単に連結することができる。なお、ここでいうハンド18L,18Rの操作には、ハンド18L,18Rの駆動機構を作動させてハンド18L,18Rを直接的に操作することの他、ハンド18L,18Rが取り付けられているブーム17L,17Rを駆動することによってハンド18L,18Rを間接的に操作することも含まれる。
【0054】
上記のようにトンネル支保工10をアーチ状に組み上げた後、エレクタ装置100は、ハンド18L,18Rを駆動することで、トンネル支保工10を切羽8近傍における所定の建て込み位置に配置する(支保工建て込み工程)。例えば、エレクタコントローラ102は、トータルステーション300から取得した各ターゲット9(第1ターゲット9a〜第4ターゲット9d)の座標位置を含む測量データに基づいて、第1ターゲット9a〜第4ターゲット9dのそれぞれの位置をモニタ101に表示させても良い。また、モニタ101には、第1ターゲット9a〜第4ターゲット9dのそれぞれの位置に加えて、第1ターゲット9a〜第4ターゲット9dの目標位置を併せて表示させても良い。エレクタ装置100を操作するオペレータは、モニタ101を見ながら、ブーム17L,17Rやハンド18L,18Rを駆動させることで、トンネル支保工10を正規の建て込み位置に配置することができる。
【0055】
ここで、トンネル支保工10(左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R)を切羽8における所定の建て込み位置に配置した後、エレクタ装置100の各ハンド18L,18Rにトンネル支保工10(左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R)を把持(保持)した状態で、吹付け装置600の吹付けノズル603から左側鋼製支保工10Lの脚部111d及び右側鋼製支保工10Rの脚部112d(図1を参照)及びその周囲のトンネル坑壁面(一次吹付けコンクリート層3)に対して二次吹付けコンクリートを吹付
けることで、トンネル支保工10をトンネル坑壁面に仮固定する(仮固定工程)。本実施形態においては、二次吹付けコンクリートとして、鋼繊維補強吹付けコンクリート(Steel Fiber Reinforced Concrete、SFRC)を用いている。
【0056】
上記のようにトンネル坑壁面に対してトンネル支保工10を仮固定した後、エレクタ装置100のハンド18L,18Rによるトンネル支保工10の把持を解除する(把持解除工程)。ここで、本実施形態におけるトンネル支保工10の脚部111d,112dは、定着アンカー2がウェブ111a,ウェブ112aに凸設されており、トンネル支保工10をトンネル坑壁面に仮固定する際には、定着アンカー2が二次吹付けコンクリートに埋没されるように二次吹付けコンクリートを吹付ける。これにより、トンネル支保工10の脚部111d,112dと二次吹付けコンクリートと間の定着性が非常に優れたものとなる。その結果、トンネルTの軸方向に隣接する新設と既設のトンネル支保工10間につなぎ材を架け渡して相互に繋がなくても、新設のトンネル支保工10からハンド18L,18Rを外した際に、新設のトンネル支保工10の姿勢が傾いたり、倒れたりすることを好適に抑制することができる。特に、本実施形態においては、トンネル支保工10の脚部111d,112dにおけるウェブ111a,112aの両面に定着アンカー2を凸設するようにしたので、トンネル支保工10の脚部111d,112dと二次吹付けコンクリートとの間の定着力をより一層確保しやすくなる。また、トンネル支保工10と二次吹付けコンクリート層6との間の定着力を増大させることで、安定した支保構造1を構築することができる。
【0057】
次に、トンネルTの軸方向に隣接する新設のトンネル支保工10及び既設のトンネル支保工10の間(新設区間)に二次吹付けコンクリートを吹付けて、新設のトンネル支保工10の長手方向全域を二次吹付けコンクリートに埋め込むことで、新設のトンネル支保工10をトンネル坑壁面(一次吹付けコンクリート層3)に固定する(吹付け工程)。その結果、一次吹付けコンクリート層3の内空側に、所定の厚さの二次吹付けコンクリート層6が形成される。なお、吹付け工程においては、トンネル支保工10における内空側フランジ111c,112cに概ね達する厚さまで二次吹付けコンクリートが吹付けられる。次に、ロックボルトを二次吹付けコンクリート層6及び一次吹付けコンクリート層3を貫通させて地山7に打設することで、トンネルTの構築の1サイクル分が完了する。
【0058】
以上のように本実施形態におけるトンネルTの構築方法によれば、エレクタ装置100における一対のハンド18L,18Rに左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持しつつ、当該ハンド18L,18Rを駆動することで、第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40と第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50を係合させ、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの天端継手板をアーチ状に連結することができる。これによれば、従来のように、切羽近傍に組まれた作業足場やエレクタ装置のマンケージ等に人員を配置してトンネル天端付近まで人員を移動させ、一対の鋼製支保工の天端に位置する継手板同士をボルトとナットによって締結するといった切羽付近での人手作業を行う必要がないため、従来よりも安全性や施工性を向上させることができる。また、本実施形態におけるトンネル支保工10の連結構造30によれば、雌型連結部40の挿入口48から雄型連結部50(雄型係止部材51)を挿入するという動作だけで、雌型連結部40に対して雄型連結部50を係合することができるため、より短時間で簡単に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結作業を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態におけるトンネルTの構築方法によれば、作業車200に搭載したエレクタ装置100の一対のハンド18L,18Rに左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持した状態で、吹付け装置600の吹付けノズル603から吹付けコンクリートを吹付けることで左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを正規の建て込み位置に仮固定することができるため、従来のようにトンネルTの軸方向に隣接するトン
ネル支保工10同士をつなぎ材によって繋ぐ工程を省略することができる。これによれば、切羽近傍に組まれた作業足場やエレクタ装置のマンケージ等に人員を配置して、つなぎ材の設置作業を行う必要がないため、従来よりもトンネルTの安全性や施工性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、図9に示したように、雄型係止部材51の先端部51dに、先端に向かって縮径するテーパ面51eが形成されている。このため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する支保工連結工程の際に、雌型連結部40の挿入口48と雄型係止部材51の中心位置が相対的に多少ずれていたとしても、第1天端継手板121の開口孔121fの縁部に沿って雄型係止部材51のテーパ面51eを摺動させることで、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士の位置ずれ量が減少する方向に雄型係止部材51をガイドすることができる。つまり、雄型係止部材51の先端部51dにテーパ面51eを設けることによって、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する際に雌型連結部40の挿入口48と雄型係止部材51の平面位置が多少ずれていても、雄型係止部材51を雌型連結部40の挿入口48へと円滑に導くことができる。なお、雄型係止部材51の先端部51dに形成するテーパ面51eのディテールは適宜変更できる。例えば、雄型係止部材51の先端部51dを円錐形状として形成しても良い。この場合、当該円錐形状の側面がテーパ面51eとして形成される。
【0061】
<実施形態1の連結構造の変形例>
図14は、実施形態の変形例に係る連結構造30を説明する図である。本変形例に係る第1天端継手板121に形成された開口孔121fは、第1天端継手板121の厚さ方向における内面121bから外面122aにかけて拡径するテーパ面1215を有している。このように、第1天端継手板121の開口孔121fを形成することで、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する際に、雌型連結部40の挿入口48と雄型係止部材51の中心位置が相対的に多少ずれていたとしても、第1天端継手板121の開口孔121fにおけるテーパ面1215を雄型係止部材51が摺動することで、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士の位置ずれ量が小さくなる方向に雄型係止部材51をガイドすることができる。これによれば、雄型係止部材51を雌型連結部40の挿入口48へと円滑に導くことができる。
【0062】
<実施形態1の支保工建込み方法の変形例>
次に、実施形態1におけるトンネル支保工10の建て込み方法の変形例について説明する。図15は、実施形態1の変形例に係るトンネル支保工10の建て込み手順を説明する図である。まず、ステップS101において、エレクタ装置100における各ハンド18L,18Rに左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持する。その際、各ハンド18L,18Rにおける左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの掴み位置は厳密には規定せず、例えば図示しない支保工受け台に載置されている左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの大凡の位置を各ハンド18L,18Rに把持するようにしても良い。
【0063】
次に、ステップS102においては、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持した状態の一対のハンド18L,18Rを相対移動させて、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40と、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50(雄型係止部材51)を相互に連結し、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをアーチ状に連結することでトンネル支保工10を形成する(支保工連結工程)。なお、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを建て込むべき建て込み位置(設計位置)において、支保工根足部は十分に余掘りを
しておき、例えば、建て込み位置(設計位置)より数十cm程度(例えば、20cm程度)下、数十cm程度(例えば、20cm程度)手前(坑口側)の位置で、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの天端連結を行う。
【0064】
次に、ステップS103において、エレクタ装置100における一対のハンド18L,18Rのうち何れか一方をフリーにする。例えば、ハンド18Rによる右側鋼製支保工10Rの把持を解除する。そして、ハンド18Rによる右側鋼製支保工10Rの把持を解除した状態で、ハンド18Lを駆動し、アーチ状に連結されたトンネル支保工10における左側鋼製支保工10Lの脚部(例えば、第1底板131)を設計位置に移動させる。つまり、左側鋼製支保工10Lを設計位置に建て込む(支保工建て込み工程)。その後、ステップS104において、設計位置に建て込まれた左側鋼製支保工10Lの脚部に対して二次吹付けコンクリートを吹付け、左側鋼製支保工10Lの脚部をトンネル坑壁面に仮固定する(仮固定工程)。
【0065】
次に、ステップS105において、ハンド18Lによる左側鋼製支保工10Lの把持を解除すると共に、ハンド18Rによって右側鋼製支保工10Rを把持する。そして、ハンド18Lによる左側鋼製支保工10Lの把持を解除した状態で、ハンド18Rを駆動し、アーチ状に連結されたトンネル支保工10における右側鋼製支保工10Rの脚部(例えば、第2底板132)を設計位置に移動させる。つまり、右側鋼製支保工10Rの脚部を設計位置に建て込む(支保工建て込み工程)。その後、ステップS106において、設計位置に建て込まれた右側鋼製支保工10Rの脚部に対して二次吹付けコンクリートを吹付け、右側鋼製支保工10Rの脚部をトンネル坑壁面に仮固定する(仮固定工程)。
【0066】
次に、ステップS107において、ハンド18Rによる右側鋼製支保工10Rの把持を解除する。これにより、エレクタ装置100による一対のハンド18L,18Rの双方が、トンネル支保工10から取り外された状態となる。その後、ステップS108において、トンネル支保工10の肩部から天端まで区間に対して二次吹付けコンクリートを吹付け、新設のトンネル支保工10の長手方向全域を二次吹付けコンクリートに埋め込む(吹付け工程)。
【0067】
図15で説明したトンネル支保工10の建て込み手順によれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの一方をフリーにした状態で、他方の建て込み及び脚部に対するコンクリートの吹付けを行うようにし、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rに対する建て込み作業及び脚部への吹付け作業を順番に行うようにした。これによれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rに対してハンド18L,18Rから過大な力が作用することを抑制することができる。従って、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造30が損傷することを好適に抑制できる。なお、図15においては、右側鋼製支保工10Rに先行して左側鋼製支保工10Lの建て込み、脚部への吹付けを行う場合を例に説明したが、その順序を入れ替えても良い。つまり、左側鋼製支保工10Lに先行して右側鋼製支保工10Rの建て込み、脚部への吹付けを行っても良い。
【0068】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について説明する。図16は、実施形態2に係る鋼製支保工の連結構造を説明する図である。図16には、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rのうち、雌型連結部40が設けられる左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121及びその周辺構造を示している。図16(a)は、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121近傍の縦断面図である。図16(b)は、図16(a)のA矢視正面図である。図16(c)は、図16(a)のB−B矢視断面図である。なお、図16には図示していないが、本実施形態における右側鋼製支保工10Rは、実施形態1と同一構造である。また、第1天端継手板121に凹設される雌型連結部40及び第2天端継手板12
2に凸設される雄型連結部50(雄型係止部材51)についても、実施形態1と同一構造である。
【0069】
図16(a)乃至(c)に示すように、実施形態2に係る第1天端継手板121の外周縁にはガイド部材70が設けられている。ガイド部材70は、全体で概略ラッパ形状を呈し、第1天端継手板121の外周縁を覆うようにして設けられている。ガイド部材70は、平板状の鋼板によってそれぞれ形成された上方ガイド壁71、下方ガイド壁72、及び一対の側方ガイド壁73を有する。図示のように、上方ガイド壁71は、第1天端継手板121の上縁121cから第1天端継手板121に対して垂直方向に延設されている。一方、下方ガイド壁72は第1天端継手板121の下縁121dから第1天端継手板121に対して斜め方向に延設され、一対の側方ガイド壁73は第1天端継手板121の側縁121eから第1天端継手板121に対して斜め方向に延設されている。
【0070】
次に、実施形態2における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の動作について説明する。図17は、実施形態2における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の動作を説明する図である。左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する支保工連結工程において、ガイド部材70が第2天端継手板122をガイドして雌型連結部40の挿入口48に雄型連結部50の雄型係止部材51を導く。本実施形態における連結構造30は、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122、第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40、第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50、ガイド部材70を含む。
【0071】
図17に示す例では、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122における下縁122dがガイド部材70の下方ガイド壁72に当接し、当該下方ガイド壁72の表面を摺動することによって、雌型連結部40における挿入口48(第1天端継手板121の開口孔121f)と雄型連結部50における雄型係止部材51の中心同士の高さ方向のずれ量が徐々に減少する。また、本実施形態では、第2天端継手板122の上縁122cが、ガイド部材70における上方ガイド壁71に当接した状態で、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士の高さ方向のずれ量が零となるように設定されている。また、図17に図示していないが、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを相対的に接近させていく過程で、右側鋼製支保工10Rにおける第2天端継手板122の側縁122eがガイド部材70の側方ガイド壁73の表面に沿って摺動することで、雌型連結部40における挿入口48(第1天端継手板121の開口孔121f)と雄型連結部50における雄型係止部材51の中心同士の幅方向のずれ量が徐々に減少する。
【0072】
以上のように、本実施形態におけるガイド部材70は、ガイド部材70の先端側から基端側(第1天端継手板121との接続端)にかけてガイド部材70によって囲まれた有効面積が徐々に絞られている。そのため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に第1天端継手板121及び第2天端継手板122を徐々に接近させることにより、第1天端継手板121の外周縁に設けられたガイド部材70が第2天端継手板122をガイドする。これにより、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士が位置合わせされる。つまり、雄型係止部材51を雌型連結部40の挿入口48(第1天端継手板121の開口孔121f)に導くことができる。そして、雌型連結部40の挿入口48から雄型係止部材51が挿入されることで、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了する。
【0073】
また、本実施形態におけるガイド部材70は、上方ガイド壁71が第1天端継手板121の上縁121cから第1天端継手板121に対して垂直方向に延設されている。その結果、ガイド部材70における上方ガイド壁71が、第1天端継手板121の上縁121c
から外方に大きくはみ出すことがない。これによれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結作業時において、ガイド部材70の上方ガイド壁71が、トンネル坑壁の天端部に干渉(衝突)し難くすることができる。但し、ガイド部材70は、上記形状に特段限られず、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に、雌型連結部40における挿入口48の位置に雄型係止部材51が接近するようにガイドすることができれば、種々の形状を採用することができる。例えば、上述したガイド部材70はラッパ形状を有し、基端側から先端側にかけて広がった形状を採用していたが、これには限られない。また、ガイド部材70は、第1天端継手板121の外周縁における一部に設けられていても良い。
【0074】
<実施形態2の変形例>
ここで、図18A及び図18Bは、実施形態2の変形例に係るガイド部材を示す図である。図18Aに示すガイド部材70Aは、第1天端継手板121の外周縁の4辺(4面)から第1天端継手板121に対して垂直に突設された上方ガイド壁71A、下方ガイド壁72A、及び一対の側方ガイド壁73Aを有している。ここで、ガイド部材70Aの上方ガイド壁71Aは第1天端継手板121の上縁121cの中央部に立設し、下方ガイド壁72Aは第1天端継手板121の下縁121dの中央部に立設し、一対の側方ガイド壁73Aは第1天端継手板121の各側縁121eの中央部に立設している。図18Aに示す例では、上方ガイド壁71A、下方ガイド壁72A、及び側方ガイド壁73Aの幅寸法が、第1天端継手板121の上縁121c、下縁121d、及び側縁121eにおける各辺の長さに比べて小さく設定されており、ガイド部材70Aにおける上方ガイド壁71Aと側方ガイド壁73Aとの間、下方ガイド壁72Aと側方ガイド壁73Aとの間には、それぞれ隙間Gが形成されている。
【0075】
上記のように、図18Aに示すガイド部材70Aは、第1天端継手板121における外周縁の全周を覆わず、第1天端継手板121における外周縁の一部のみを覆っている。これによれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結作業時において、エレクタ装置100のオペレータが第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40を目視し易い。
【0076】
なお、図18Aに示すガイド部材70Aにおいて、第1天端継手板121の外面121aに対するガイド部材70A(上方ガイド壁71A、下方ガイド壁72A、及び一対の側方ガイド壁73Aの高さ)の突出寸法は、第2天端継手板122の外面122aから突出する雄型係止部材51の突出長さより大きな寸法に設定されている。これにより、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に、ガイド部材70Aによって第2天端継手板122を好適にガイドし、雌型連結部40における挿入口48の位置に雄型係止部材51を円滑に導くことができる。例えば、第1天端継手板121の外面121aに対するガイド部材70Aの突出寸法は、第2天端継手板122の外面122aに対する雄型係止部材51の突出長さに比べて20〜30mm程度大きな寸法に設定しても良い。
【0077】
次に、図18Bに示すガイド部材70Bについて説明する。ガイド部材70Bは、第1天端継手板121の外周縁において角部を形成する2辺(2面)に設けられたガイド壁を有している。具体的には、ガイド部材70Bは、第1天端継手板121の上縁121cから立設する上方ガイド壁71Bと、第1天端継手板121の一方の側縁121eから立設する一の側方ガイド壁73Bを有している。ここで、図18Bに示すように、上方ガイド壁71Aの幅寸法は、当該上方ガイド壁71Aが設けられている第1天端継手板121における上縁121cの長さよりも小さい。また、側方ガイド壁73Bの幅寸法は、当該側方ガイド壁73Bが設けられている第1天端継手板121における側縁121eの長さよりも小さい。
【0078】
図18Bに示すガイド部材70Bは、第1天端継手板121における外周縁のうち、角部を形成する2辺から突設する上方ガイド壁71B及び側方ガイド壁73Bから構成されているため、上方ガイド壁71B及び側方ガイド壁73B間に形成される隙間Gをより一層大きく確保することができる。よって、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時における雌型連結部40の視認性を一段と高めることができる。また、互いに直交する上方ガイド壁71B及び側方ガイド壁73Bによって入隅部が形成されるため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に第2天端継手板122における上縁122c及び側縁122eからなる角部を上記入隅部に当接するようにして、第2天端継手板122を適正な位置にガイドすることができる。その結果、雌型連結部40の挿入口48に雄型係止部材51を好適に導くことができ、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを円滑に連結できる。
【0079】
なお、図18Bに示すガイド部材70Bにおける側方ガイド壁73Bは、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時において、切羽8に面する方(すなわち、エレクタ装置100に面していない方)の側縁121eに設置されている。本実施形態におけるガイド部材70Bによれば、第1天端継手板121における下縁121d、及び、切羽8に面していない方(すなわち、エレクタ装置100に面する方)の側縁121eがガイド壁によって覆われておらず、開放されているため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時にエレクタ装置100のオペレータが第1天端継手板121の雌型連結部40をより一層目視し易くなる。
【0080】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3について説明する。図19及び図20は、実施形態3に係る鋼製支保工の連結構造を説明する図である。図19に、実施形態3における左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121の周辺構造を示す。図20に、実施形態3における右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122の周辺構造を示す。
【0081】
図19(a)は、実施形態3に係る左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121近傍の縦断面図である。図19(b)は、図19(a)のC矢視正面図である。図19(c)は、実施形態3に係る第1天端継手板121の概略斜視図である。図20(a)は、実施形態3に係る右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122近傍の縦断面図である。図20(b)は、図20(a)のD矢視正面図である。図20(c)は、実施形態3に係る第2天端継手板122の概略斜視図である。なお、図19(c)において、左側鋼製支保工10Lにおける第1本体部111の図示を省略している。また、図20(c)において、右側鋼製支保工10Rにおける第2本体部112の図示を省略している。
【0082】
実施形態3における左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121は、凹面形状S1を有している。また、実施形態3における右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122は、上記凹面形状S1と相補的な凸面形状S2を有しており、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rが連結される際に第1天端継手板121及び第2天端継手板122同士が面接触するように構成されている。
【0083】
より具体的には、第1天端継手板121は、外面121a側が凹面(凹面形状S1)となるように略V字形状(谷型)に折られた折板構造を有している。第1天端継手板121の外面121aは、平坦な凹底面部1210と、当該凹底面部1210の両側に形成された上斜面部1211及び下斜面部1212を含む。平坦な凹底面部1210を基準として、当該凹底面部1210に対する上斜面部1211及び下斜面部1212の傾斜角度は等しい。一方、第2天端継手板122は、外面122a側が凸面(凸面形状S2)となるように略V字形状(山型)に折られた折板構造を有している。第2天端継手板122の外面122aは、平坦な凸頂面部1220と、当該凸頂面部1220の両側に形成された上斜
面部1221及び下斜面部1222を含む。
【0084】
ここで、第1天端継手板121に設けられる一対の雌型連結部40は、凹底面部1210に配列されている。ここで、凹底面部1210は、凹面形状S1を有する第1天端継手板121において、相対的に最も凹んだ領域である。また、第2天端継手板122に設けられる一対の雄型連結部50(雄型係止部材51)は凸頂面部1220に配列されている。ここで、凸頂面部1220は、凸面形状S2を有する第2天端継手板122において、相対的に最も隆起した領域である。また、雌型連結部40及び雄型連結部50については、実施形態1及び2と共通である。本実施形態においては、雌型連結部40に対して雄型係止部材51が挿入及び係止された際に、第1天端継手板121及び第2天端継手板122の各外縁同士の位置がすべて合致し、且つ、第1天端継手板121の外面121a及び第2天端継手板122の外面122aが面接触するようになっている。より詳しくは、第1天端継手板121の凹底面部1210、上斜面部1211及び下斜面部1212がそれぞれ、第2天端継手板122の凸頂面部1220、上斜面部1221及び下斜面部1222と隙間を生じさせることなく面接触するように調整されている。
【0085】
図21は、実施形態3における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の動作を説明する図である。図示のように、本実施形態における鋼製支保工の連結構造においては、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際に、第1天端継手板121の凹面に沿って雄型連結部50の雄型係止部材51が摺動する。図21に示す例では、右側鋼製支保工10Rにおける上斜面部1211の表面に沿って雄型連結部50の雄型係止部材51が摺動することでガイドされ、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士が一致する方向に雄型係止部材51が導かれる。これにより、雌型連結部40における挿入口48から収納室42内に円滑に雄型係止部材51を挿入することができ、雌型連結部40に対して雄型係止部材51を係合することができる。
【0086】
なお、本実施形態においては、凹面形状S1を有する第1天端継手板121のうちの最も凹んだ領域である凹底面部1210に雌型連結部40を配置し、凸面形状S2を有する第2天端継手板122のうちの最も隆起した領域である凸面形状S2を有する第2天端継手板122において、相対的に最も隆起した領域である凸頂面部1220に雄型連結部50(雄型係止部材51)を配置するようにした。これによれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する支保工連結工程において、第1天端継手板121の凹面に沿って雄型係止部材51をガイドする際に、雌型連結部40の挿入口48に対してより一層円滑に雄型係止部材51を導くことができる。なお、図20に示す例では、第1天端継手板121の上斜面部1211を雄型係止部材51のガイド面として機能させる例を示したが、第1天端継手板121の下斜面部1212に沿って雄型係止部材51を摺動させることで、下斜面部1212を雄型係止部材51のガイド面として機能させても良い。なお、本実施形態における雌型連結部40及び雄型連結部50の構造は、上述までの実施形態と同様である。
【0087】
また、図21に示すように、雌型連結部40に雄型係止部材51が締結された状態では、第1天端継手板121の外面121a及び第2天端継手板122の外面122aが面接触されている。すなわち、第1天端継手板121の凹底面部1210、上斜面部1211及び下斜面部1212がそれぞれ、第2天端継手板122の凸頂面部1220、上斜面部1221及び下斜面部1222と面接触していることから、第1天端継手板121及び第2天端継手板122間の応力伝達を確実に行うことができる。なお、図19乃至図21に示す例では、第1天端継手板121の凹面形状S1及び第2天端継手板122の凸面形状S2を相補関係にある略V字形状とする場合を説明したが、凹面形状S1及び凸面形状S2は種々の組み合わせが採用できる。
【0088】
また、上述した図1に示す例では、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの各脚部111d,112dのみに定着アンカー2を設ける例を説明したが、これには限られない。例えば、図22に示すように、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの長手方向(延伸方向)における略全域に亘って、ウェブ111a,112aに定着アンカー2を設置しても良い。また、図22において、ウェブ111a,112aの延伸方向に沿って、定着アンカー2を2列に配列する例を示しているが、定着アンカー2の配列パターンは特に限定されない。
【0089】
また、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rに設置する定着アンカー2は種々の形状を採用することができる。図23は、定着アンカー2の変形例を示す図である。図23(a)は、第1本体部111(第2本体部112)のウェブ111a(ウェブ112a)からストレート棒状の定着アンカー2を凸設した例を示している。また、図23(b)は、第1本体部111(第2本体部112)のウェブ111a(ウェブ112a)から先端にフックが設けられたフック付き棒状の定着アンカー2を凸設した例を示している。
【0090】
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、本発明に係るトンネルの構築方法はこれらに限られず、可能な限りこれらを組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
1・・・トンネル支保構造
2・・・定着アンカー
3・・・一次吹付けコンクリート層
6・・・二次吹付けコンクリート層
7・・・地山
8・・・切羽
10・・・トンネル支保工
10L・・・左側鋼製支保工
10R・・・右側鋼製支保工
40・・・雌型連結部
41・・・ケーシング
42・・・収納室
46・・・雌型係止部材
48・・・挿入口
50・・・雄型連結部
51・・・雄型係止部材
111・・・第1本体部
112・・・第2本体部
121・・・第1天端継手板
122・・・第2天端継手板
【要約】
【課題】トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性および作業性を向上することができるトンネルの構築方法を提供する。
【解決手段】トンネルの構築方法は、一対の鋼製支保工を一対のハンドの各々に把持しつつ駆動することで鋼製支保工を天端部同士で相互に連結する工程と、ハンドを駆動することでアーチ状の鋼製支保工を建て込み位置に配置する工程を有する。一対の鋼製支保工の天端部には第1天端継手板及び第2天端継手板が設けられており、第1天端継手板に雌型連結部が凹設されていると共に第2天端継手板に雄型連結部が凸設されている。また、雄型連結部は第2天端継手板から突出する棒状の雄型係止部材を有し、雌型連結部は、第1天端継手板に貫通形成される開口孔と、開口孔と連通すると共に雄型係止部材を挿入可能な挿入口が開口形成される収納室を内部に有するケーシングを含み、挿入口から収納室内へ挿入された雄型係止部材を係止する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
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図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23