特許第6374064号(P6374064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6374064
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】渦流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/32 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G01F1/32 T
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-154666(P2017-154666)
(22)【出願日】2017年8月9日
【審査請求日】2017年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103574
【氏名又は名称】株式会社オーバル
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和なぎさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義寛
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−537010(JP,A)
【文献】 米国特許第7398165(US,B1)
【文献】 特開2001−153698(JP,A)
【文献】 特開平10−246659(JP,A)
【文献】 米国特許第5576497(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00− 9/02
G01F15/00−15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦発生体に生じるカルマン渦を検出するセンサと、該センサから出力された信号に基づいて被測定流体の流量を出力する変換器とを備えた渦流量計であって、
前記変換器は、前記センサから出力された信号に含まれる不要な周波数帯域の信号を除去する帯域通過フィルタと、前記センサから出力された信号をパルス化したパルス信号の間隔に基づいて渦周波数を求めると共に、該渦周波数のうち最も高い頻度で検出された渦周波数を求める信号処理部と、該最も高い頻度で検出された渦周波数に基づいて前記帯域通過フィルタを選択するフィルタ選択部とを有し、前記センサから出力された信号を前記選択された帯域通過フィルタに通して不要な周波数帯域の信号を除去することを特徴とする渦流量計。
【請求項2】
前記帯域通過フィルタがデジタルフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の渦流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流量計に関し、より詳細には、渦発生体に生じるカルマン渦を検出するセンサと、センサから出力された信号に基づいて被測定流体の流量を出力する変換器とを備えた渦流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
渦流量計は、カルマン渦を発生させる渦発生体(ブラッフボディともいう)、カルマン渦を検出するセンサ、および、センサで検出した信号を処理する変換器から構成される。渦発生体は、例えば三角柱状に形成され、測定管内で流体の流れに直角に置かれる。センサでは、渦発生体に生ずる変動圧力(例えばカルマン渦によって発生した差圧)を検出できる。
【0003】
カルマン渦の発生する周波数(渦周波数ともいう)は流速に比例する。変換器では、検出した渦周波数から測定管内の流速を求め、この流速に測定管の断面積を乗じて流量(容積流量)を求めている。
また、変換器では、渦周波数を検出する際に、センサから出力された信号を帯域通過フィルタに通過させてノイズを除去する。例えば、特許文献1には、通過させる帯域通過フィルタを選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−153698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、変換器では、センサから出力された信号をパルス化した後、例えば、所定時間内で計測されたパルス信号の間隔とその個数から渦周波数の平均値を求めて、通過させる帯域通過フィルタを選択する手法が知られている。
【0006】
しかしながら、この渦周波数の平均値に該当する帯域通過フィルタが選択されると、例えばトリガレベルに達していない信号など、外れた値の影響を受け、適切な帯域通過フィルタを選択できないという問題がある。また、渦周波数の平均値を求めるためには、信号のサンプル数が多く必要になり、帯域通過フィルタを速やかに選択できないという問題もある。
【0007】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、適切な帯域通過フィルタを速やかに選択できる渦流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、渦発生体に生じるカルマン渦を検出するセンサと、該センサから出力された信号に基づいて被測定流体の流量を出力する変換器とを備えた渦流量計であって、前記変換器は、前記センサから出力された信号に含まれる不要な周波数帯域の信号を除去する帯域通過フィルタと、前記センサから出力された信号をパルス化したパルス信号の間隔に基づいて渦周波数を求めると共に、該渦周波数のうち最も高い頻度で検出された渦周波数を求める信号処理部と、該最も高い頻度で検出された渦周波数に基づいて前記帯域通過フィルタを選択するフィルタ選択部とを有し、前記センサから出力された信号を前記選択された帯域通過フィルタに通して不要な周波数帯域の信号を除去することを特徴としたものである。
【0009】
第2の技術手段は、前記帯域通過フィルタがデジタルフィルタであることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯域通過フィルタは、渦周波数の平均値ではなく、最高頻度の渦周波数に基づいて選択されており、渦周波数の平均値に基づいて選択した場合のような外れた値の影響を受けないので、適切な帯域通過フィルタを選択することができる。また、最高頻度の渦周波数から帯域通過フィルタを選択すれば、渦周波数の平均値に基づいて選択した場合に比べて信号のサンプル数が少なくて済むため、帯域通過フィルタを速やかに選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る渦流量計を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る渦流検出センサを示す図である。
図3図1の渦流量計の構成図である。
図4図3の可変BPFの構成図である。
図5】渦周波数の計測を説明する図である。
図6】渦周波数の解析を説明する図である。
図7】比較例などの波形データを説明する図である。
図8】本実施例の波形データを説明する図である。
図9】他の実施形態による可変BPFの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の渦流量計の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る渦流量計を示す図であり、例えばフランジ形の検出器1を示している。図2は、本発明の一実施形態に係る渦流検出センサを示す図である。
【0013】
検出器1は例えば三角柱状に形成された渦発生体3を有し、渦発生体3の側面が被測定流体の流れ(図2の矢印方向)に直角になるように、円筒状の測定管2内に設置されている。測定管2の上面には取付筒5が設けられ、例えばボルトなどの締結部材で測定管2に固定される。取付筒5の上方には、変換器10が設置されている。なお、変換器一体形の例で説明するが、変換器を検出器から分離した変換器分離形であってもよい。
【0014】
測定管2内において、渦発生体3の後方には渦流検出センサ7が設けられている。なお、渦流検出センサ7が本発明のセンサに相当する。
流体が測定管2内を流れると、渦発生体3の下流には流速に比例したカルマン渦が発生し、渦発生体3の両側には、カルマン渦による交互の圧力変動が生じる。これにより、渦流検出センサ7では、渦発生体3に生ずる変動圧力に応じた信号(渦信号ともいう)が検出され、変換器10に出力される。変換器10は流量指示計16を有し、流量指示計16には、変換器10で求めた被測定流体の流量などがデジタルで表示される。
【0015】
図3は渦流量計の構成図である。
変換器10は、上記の流量指示計16の他、制御部15、通信I/F17、アンプ部18、フィルタ部19等を有し、これらはバスで接続される。
制御部15は、通信I/F17を介して検出器1や外部機器と通信可能である。また、制御部15は、例えば1個あるいは複数個のCPU(Central Processing Unit)等からなり、例えばROMに格納されている各種のプログラムやデータをRAMにロードし、このロードしたRAM内のプログラムを実行する。これにより、渦流量計の動作を制御できる。
【0016】
アンプ部18は、例えば定電流回路20、増幅器21、出力回路22等を有する。定電流回路20は検出器1の渦流検出センサ7に電流を供給している。増幅器21は、渦流検出センサ7から出力された渦信号を増幅する。この増幅された渦信号はフィルタ部19に出力される。
フィルタ部19は、可変BPF26、コンパレータ27を有している。可変BPF26は、増幅器21で増幅された渦信号を通し、この渦信号に含まれる不要な周波数帯域の信号を除去する。コンパレータ27は可変BPF26を通過したフィルタ後波形をパルス化する。パルス化されたトリガ波形は、アンプ部18の出力回路22に出力される。
【0017】
流量に比例したパルス出力が得られると、カルマン渦の発生する周波数(渦周波数ともいう)を検出できる。渦周波数は流速に比例し、その関係式は以下のようになる。
f=St・V/d
fは渦周波数、Vは流体の平均流速、dは渦発生体の幅、Stはストローハル数(定数)である。このストローハル数は、レイノルズ数(流れの状態を決める数値)により変化するが、広範囲のレイノズル数においてほぼ一定となる。
【0018】
したがって、ストローハル数が一定の範囲では、渦周波数fは平均流速Vに比例することが分かる。また、渦発生体の幅dは既知であるため、渦周波数fを検出すれば測定管内の平均流速Vを求めることができる。そこで、出力回路22では、この平均流速Vに測定管の断面積を乗じて流量(容積流量)を求めており、流量指示計16等に出力する。
ここで、上記のように変換器10では、渦周波数を検出する際に、渦流検出センサ7から出力された渦信号を増幅器21で増幅した後、可変BPF26に通過させて不要な周波数帯域の信号を除去している。
【0019】
図4は、図3の可変BPFの構成図であり、可変BPF26は、第1BPF30、選択処理部31、第2BPF32、コンパレータ33、信号処理部34で構成されている。なお、第1BPF30が本発明の帯域通過フィルタに相当し、選択処理部31が本発明のフィルタ選択部に相当する。
第2BPF32は、第1BPF30よりも通過帯域幅が広くされており、図3で説明した増幅器21で増幅された渦信号を通す。コンパレータ33が第2BPF32を通過した渦信号をパルス化する。このパルス信号は信号処理部34に出力される。
【0020】
信号処理部34は、例えば周波数計測部34aおよび周波数解析部34bを有し、周波数計測部34aが、所定時間内にコンパレータ33で得られたパルス信号から渦周波数を計測している。なお、所定時間の計測に替えてパルス信号の個数をカウントしてもよい。
【0021】
図5は、渦周波数の計測を説明する図である。図4のコンパレータ33では、第2BPF32を通過した渦信号Sと所定の振幅値(トリガレベル)Tとを比較してパルス化し、このトリガレベルTを超えた渦信号Sがパルスとしてカウントされる。
図5に示すように、渦信号Sが連続してトリガレベルTを超えた場合には、図4のコンパレータ33によって、ピークを飛ばさない(抜かさない)連続したパルスが得られるので、周波数計測部34aでは、隣接するピークの間隔(周期)に応じた渦振動数f1,f2等が計測される。また、渦信号Sがピークを1個抜かした状態でトリガレベルTを超えた場合にはやや長いパルスが得られるため、渦振動数f3等のように計測される。さらに、渦信号Sがピークを2個抜かした状態でトリガレベルTを超えた場合にはより長いパルスが得られ、渦振動数f4のように計測される。
【0022】
次いで、この計測結果は図4の周波数解析部34bに出力される。周波数解析部34bは、周波数計測部34aで計測した渦周波数のうち最高頻度の渦周波数を求めている。
【0023】
図6は、渦周波数の解析を説明する図である。図4の周波数計測部34aが、渦周波数とその個数を、例えば50Hzが10個、90Hzが4個、100Hzが20個、110Hzが5個、120Hzが1個、200Hzが1個であると計測した場合、周波数解析部34bは、例えばヒストグラムを作成し、所定時間内で、渦周波数のうち最も高い頻度で検出された最高頻度の渦周波数を求める。つまり、図6の場合、20個が最も多いので、周波数解析部34bは100Hzを最高頻度の渦周波数と判断する。
【0024】
なお、被測定流体の流量が少ない場合には、トリガレベルに達していない渦信号(パルス抜けともいう)が多くなる。この影響により、従来のようなカルマン渦周波数の平均値は小さくなる。具体的には、上述のように渦周波数とその個数を、50Hzが10個、90Hzが4個、100Hzが20個、110Hzが5個、120Hzが1個、200Hzが1個と計測した場合、渦周波数の平均値は90.98Hzである。
【0025】
続いて、図4に示すように、周波数解析部34bの演算結果は選択処理部31に出力される。選択処理部31は、第1BPF30にセットされた複数の帯域通過フィルタのうち、上記最高頻度の渦周波数に該当するフィルタを通った信号を選択する。これにより、渦流検出センサから出力されて増幅器で増幅された渦信号は、選択処理部31に選択されたフィルタだけに通されてノイズが除去された後、図3で説明したコンパレータ27に向けて出力される。
【0026】
図7は、比較例の波形データ(流量信号例えば400Hz)を説明する図であり、図7(A)は図3の可変BPFを通過したフィルタ後波形、図7(B)は、図3のコンパレータのトリガ波形である。
【0027】
例えば、渦流検出センサの周囲温度あるいは被測定流体の温度が低い場合、渦流検出センサの感度が低下して渦信号の振幅が小さくなる。この場合、従来のようなカルマン渦周波数の平均値から選択されたフィルタは、図6の流量例でいえば50Hzや200Hzのような外れた値の影響を受けているので、フィルタ後波形は、図7(A)に示すようなピーク間隔や振幅が揃わなくなり、この波形をパルス化すると、ノイズを信号としてパルス化したり、逆に信号をノイズとしてパルス化しないため、トリガ波形は、図7(B)に示すように間隔や振幅が不揃いになる。
【0028】
なお、この場合、渦流検出センサの感度を上げるために、作業者は、渦流量計の設置現場に出向いて渦流検出センサの駆動電圧を手動で大きくしている。ただし、電気信号のノイズが大きくなり、トリガレベルに達した渦信号が多くなるので、カルマン渦周波数の平均値は大きくなる傾向にある。
【0029】
これに対し、渦流検出センサの周囲温度等が低い場合であっても、最高頻度の渦周波数を用いれば適切な帯域通過フィルタを選択できる。
詳しくは、図8は、本実施例の波形データ(流量信号例えば400Hz)を説明する図であり、上記のように渦周波数とその個数から最高頻度の渦周波数(400Hz)に該当するフィルタを選択すると、渦周波数の平均値に基づいて選択した場合のような外れた値の影響を受けないので、フィルタ後波形は、図8(A)に示すように、ピーク間隔や振幅が揃う。この波形をパルス化すれば、信号をパルス化し、逆にノイズをパルス化し難くなるため、トリガ波形は、図8(B)に示すように間隔や振幅が揃う。この結果、上記最高頻度の渦周波数に該当するフィルタを選択した図8(C)に示すように、出力パルスの各周波数が約400Hzあたりに集まり、パルス抜けの影響が見られないことが分かる。
【0030】
このように、最高頻度の渦周波数を用いれば、適切な帯域通過フィルタを選択することができ、出力パルスにノイズが混ざらなくなる。
また、最高頻度の渦周波数からフィルタを選択すれば、渦周波数の平均値から選択した場合に比べて信号のサンプル数が少なくて済むため、フィルタを速やかに選択可能になる。詳しくは、従来のように平均値から選択した場合には、フィルタの選択に300ms程度を要していたのに対し、本実施例の場合には50msで選択可能になるので、フィルタ選択の応答速度が向上する。
【0031】
図9は、他の実施形態による可変BPFの構成図である。上記実施形態では、該当するフィルタを機械的に切り替える例を挙げて説明した。しかし、図9に示すように、第1BPF40はソフトウェアなどによるデジタルフィルタであってもよい。この場合、選択処理部41が最高頻度の渦周波数に該当するフィルタを選択すると、第1BPF40が周波数特性を変更させるためのパラメータを設定し、最高頻度の渦周波数に該当するフィルタが選択される。これにより、不要な周波数帯域の信号をより確実に除去可能になる。
【符号の説明】
【0032】
1…検出器、2…測定管、3…渦発生体、5…取付筒、7…渦流検出センサ、10…変換器、15…制御部、16…流量指示計、17…通信I/F、18…アンプ部、19…フィルタ部、20…定電流回路、21…増幅器、22…出力回路、26…可変BPF、27,33…コンパレータ、30,40…第1BPF、31,41…選択処理部、32…第2BPF、34…信号処理部、34a…周波数計測部、34b…周波数解析部。
【要約】
【課題】適切な帯域通過フィルタを速やかに選択できる渦流量計を提供する。
【解決手段】渦発生体に生じるカルマン渦を検出するセンサと、センサから出力された信号に基づいて被測定流体の流量を出力する変換器とを備えた渦流量計である。変換器は、センサから出力された信号に含まれる不要な周波数帯域の信号を除去する帯域通過フィルタ30と、センサから出力された信号をパルス化したパルス信号の間隔に基づいて渦周波数を求めると共に、渦周波数のうち最も高い頻度で検出された渦周波数を求める信号処理部34と、最も高い頻度で検出された渦周波数に基づいて帯域通過フィルタを選択するフィルタ選択部31とを有する。センサから出力された信号を選択された帯域通過フィルタに通して不要な周波数帯域の信号を除去する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9