(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧測定部は、前記第2測定モードでは、前記M個の単電池セルのうち前記第1測定モードで測定された電圧が最も低い単電池セルの電圧を測定し、当該単電池セルの電圧の測定値をM倍した値を前記電池の出力電圧の推定値とする請求項1に記載の半導体装置。
前記電圧測定部は、前記第2測定モードでは、前記M個の単電池セルのうち前記第1測定モードで測定された電圧が最も低い単電池セルの電圧を測定し、当該単電池セルの電圧の測定値をM倍した値を前記電池の出力電圧の推定値とする請求項8に記載の電池パック。
前記制御部は、前記充電制御用トランジスタをオンさせるとともに前記放電制御用トランジスタをオフさせることで前記電池の充電を可能にし、前記充電制御用トランジスタをオフさせるとともに前記放電制御用トランジスタをオンさせることで前記電池の放電を可能にし、前記電池の放電中に、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えたことが検出されたら、前記放電制御用トランジスタをオンさせた状態で更に前記充電制御用トランジスタをオンさせる、請求項8に記載の電池パック。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0018】
〔1〕(電流測定部とは異なる電流検出部によって放電電流の大幅な増加を検出し、放電電流が増加した状態での電池電圧と放電電流を測定するFGIC)
本願の代表的な実施の形態に係る、電池(11)の状態を監視するための半導体装置(10、30)は、下記の構成を有する。本半導体装置は、前記電池の電圧を測定するための電圧測定部(106)と、前記電池の充電電流及び放電電流を測定するための電流測定部(105)と、前記電圧測定部及び前記電流測定部の測定結果(Ia,Ib,Va,Vb)に基づいて、電池の状態を示す状態情報を生成するデータ処理制御部(100)と、を有する。本半導体装置は更に、前記放電電流が所定の閾値を超えていることを検出するための電流検出部(105、305)と、を有する。前記電圧測定部及び前記電流測定部は、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えたことが検出されたら、前記電圧及び前記放電電流の測定が可能にされる。前記データ処理制御部は、前記電流検出部による検出に応じて前記電圧測定部が測定した電圧測定値(Vb)と、前記電流検出部による検出に応じて前記電流測定部が測定した電流測定値(Ib)とに基づいて、前記電池の内部抵抗(R)を推定し、その推定値に基づいて前記電池から供給可能な最大電力量(Pmax)を算出する。
【0019】
これによれば、電池の放電電流として大電流が発生したときの電池電圧と放電電流を容易に測定することができ、大電流発生時の電池の内部抵抗を高精度に推定することができる。これにより、電池から供給可能な最大電力量の算出精度が向上する。
【0020】
〔2〕(放電電流の増加時にA/D変換器の分解能を下げて放電電流を測定する)
項1の半導体装置において、前記電流測定部は、デルタ・シグマ方式のA/D変換回路(1041)を含む。前記A/D変換回路は、前記電流検出部による検出に応じてその分解能が低くされる。
【0021】
これによれば、大電流が発生している期間に放電電流の測定を完了させることができる。また、大電流発生時の放電電流を測定するためのA/D変換回路を別途設ける必要がないため、半導体装置の回路規模の増大を抑えることができる。
【0022】
〔3〕(放電電流の増加時に充電制御用トランジスタをオンさせる)
項1又は2の半導体装置(30)は、前記電池と外部装置(20)との間の電力の供給経路に直列に接続される充電制御用トランジスタ(MNC)及び放電制御用トランジスタ(MND)を制御するための制御部(303)を更に有する。前記制御部は、前記充電制御用トランジスタをオンさせることで前記電池の充電を可能にする。また、前記制御部は、前記放電制御用トランジスタをオンさせることで前記電池の放電を可能にする。更に前記制御部は、前記電池の放電中に、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えたことが検出されたら、前記放電制御用トランジスタをオンさせた状態で更に前記充電制御用トランジスタをオンさせる。
【0023】
これによれば、放電時に大電流が発生したときに、電池と外部装置との間の電力供給経路にトランジスタのボディダイオード1段分の順方向電圧降下が起きなくなるので、放電時の電力供給量を増加させることができる。また、これによれば、上記電力供給経路におけるトランジスタのボディダイオードの寄生抵抗成分による電圧降下が小さくなるので、電池から出力可能な最大電流が大きくなり、最大電力量を更に増大させることができる。
【0024】
〔4〕(電流検出部の構成:センス抵抗間の電圧と基準電圧とを比較するコンパレータ回路)
項1乃至3の何れかの半導体装置(10、30)において、前記電流検出部は、前記放電電流に応じた検出電圧(Vs)と前記所定の閾値(Ith)に応じた基準電圧(Vth)とを比較するコンパレータ回路(1052)を含む。
【0025】
これによれば、前記放電電流が前記所定の閾値を超えたか否かを容易に判定することができる。
【0026】
〔5〕(電流検出部の構成:コンパレータ回路の比較結果に応じて割り込み信号を生成する信号生成回路)
項4の半導体装置において、前記電流検出部は、前記検出電圧が前記基準電圧を超えている状態が所定期間(TD)継続したら、測定の実行を指示する割り込み信号(VINT)を出力する信号生成回路(1053、3053)を更に有する。前記電圧測定部及び前記電流測定部は、前記割り込み信号に応じて測定を開始する。
【0027】
これによれば、ノイズ等に起因する瞬間的な電流の増加を誤って検出することを防止できる。
【0028】
〔6〕(電流検出部の構成:コンパレータ回路の前段に設けられたレベルシフタ+ゲイン調整回路)
項5の半導体装置において、前記電流検出部は、前記検出電圧の信号レベルを増大させて前記コンパレータ回路に供給する増幅部(1051、1054)を更に有する。
【0029】
これによれば、前記電池と外部装置との間の電力の供給経路に直列に接続される、放電電流の検出電圧を生成するためのセンス抵抗の抵抗値を更に小さくすることができる。
【0030】
〔7〕(電池パック)
本願の代表的な実施の形態に係る電池パック(1、3)は、複数の二次電池セル(Cell1〜CellM)から構成される組電池(11)と、前記組電池を外部装置に接続するための第1端子(PB1)及び第2端子(PB2)と、前記第1端子と前記組電池との間の電力供給経路に直列に接続された充電制御用トランジスタ(MNC)及び放電制御用トランジスタ(MND)と、備える。前記電池パックは更に、前記第2端子と前記組電池との間の電力供給経路に直列に接続されたセンス抵抗(Rs)と、前記組電池の状態を監視するとともに前記充電制御用トランジスタ及び前記放電制御用トランジスタのオン・オフを制御する電池制御IC(10、30)と、を備える。前記電池制御ICは、前記組電池の出力電圧(Vbat)を測定するための電圧測定部(106)と、前記センス抵抗の両端の電圧(Vs)に基づいて、前記組電池の放電電流と充電電流(Id)とを測定するための電流測定部(104)と、を有する。前記電池制御ICは更に、前記電圧測定部及び前記電流測定部の測定結果に基づいて電池の状態を示す状態情報を生成するデータ処理制御部(100)と、センス抵抗の両端の電圧が所定の閾値電圧(Vth)を超えたことを検出するための電流検出部(105、305)と、前記充電制御用トランジスタ及び前記放電制御用トランジスタを制御するための制御部(103、303)と有する。前記電圧測定部及び前記電流測定部は、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えたことが検出されたら、前記出力電圧及び前記放電電流の測定が可能にされる。前記データ処理制御部は、前記電流検出部による検出に応じて前記電圧測定部が測定した電圧測定値(V2)と、前記電流検出部による検出に応じて前記電流測定部が測定した電流測定値(I2)とに基づいて、前記電池の内部抵抗を推定し、その推定値に基づいて前記組電池から供給可能な最大電力量(Pmax)を算出する。
【0031】
これによれば、電池から供給可能な最大電力量の算出精度の高い電池パックを提供することができる。
【0032】
〔8〕(電池パック:放電電流の増加時にA/D変換器の分解能を下げて放電電流を測定する)
項7の電池パックにおいて、前記電流測定部はデルタ・シグマ方式のA/D変換回路(1041)を含む。前記A/D変換回路は、前記電流検出部による検出に応じてその分解能が低くされる。
【0033】
これによれば、大電流が発生している期間に放電電流の測定を完了させることができる。また、大電流発生時の放電電流を測定するためのA/D変換回路を別途設ける必要がないため、電池制御ICの回路規模の増大を抑えることができ、電池パックのコスト増を抑えることができる。
【0034】
〔9〕(電池パック:放電電流の増加時に充電制御用トランジスタをオンさせる)
項7又は8の電池パックにおいて、前記制御部は、前記充電制御用トランジスタをオンさせるとともに前記放電制御用トランジスタをオフさせることで前記電池の充電を可能にし、前記充電制御用トランジスタをオフさせるとともに前記放電制御用トランジスタをオンさせることで前記電池の放電を可能にする。前記制御部は、前記電池の放電中に、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えたことが検出されたら、前記放電制御用トランジスタをオンさせた状態で更に前記充電制御用トランジスタをオンさせる。
【0035】
これによれば、放電時に大電流が発生したときの電力損失が小さく、且つ、より大きな最大電力量が得られる電池パックを提供することができる。
【0036】
〔10〕(電池パックを搭載した携帯端末)
本願の代表的な実施の形態に係る携帯端末(200、201)は、項7乃至9の何れかに記載の電池パックと、CPU(22)を含み、前記組電池からの給電により動作可能とされる内部回路(20)と、を有する。前記内部回路は、前記CPUが第1クロック周波数(f1)で動作する通常クロック動作モードと、前記CPUが前記第1クロック周波数よりも高い第2クロック周波数(f2、f2_1〜f2_n)で動作する高速クロック動作モードとが切り替え可能に構成される。前記内部回路は、前記CPUが前記高速クロック動作モードで動作するとき、前記半導体装置によって算出された前記最大電力量に基づいて前記第2クロック周波数の大きさを決定する。
【0037】
これによれば、内部回路は、電池制御ICによって高精度に算出された最大電力量に基づいて高速クロック動作モードにおけるクロック信号の周波数を決定するから、CPUの演算性能を更に向上させることができる。
【0038】
〔11〕(第1測定モードでの測定中に大電流が検出されたら、第2測定モードで電池電圧及び放電電流を測定するFGIC)
本願の代表的な実施の形態に係る、電池(11)の状態を監視するための半導体装置(10、30)は、下記の構成を有する。本半導体装置は、前記電池の出力電圧(Vbat)を測定するための電圧測定部(106)と、前記電池の充電電流及び放電電流(Id)を測定するための電流測定部(104)と、を有する。前記半導体装置は更に、前記電圧測定部及び前記電流測定部の測定結果に基づいて、電池の状態を示す状態情報を生成するデータ処理制御部(101)と、前記放電電流が所定の閾値(Ith)を超えていることを検出するための電流検出部(105、305)と、を有する。前記電圧測定部及び前記電流測定部は、第1測定モード(通常測定モード)と第2測定モード(大電流測定モード)とを有する。前記電圧測定部は、前記第1測定モードで前記出力電圧を測定しているとき、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えていることが検出されたら、前記第2測定モードで前記出力電圧を測定する。前記電流測定部は、前記第1測定モードで前記放電電流を測定しているとき、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えていることが検出されたら、前記第2測定モードで前記放電電流を測定する。データ処理制御部は、電圧測定部及び電流測定部によって第1測定モードで測定された第1電圧測定値(Va)及び第1電流測定値(Ia)と、電圧測定部及び電流測定部によって第2測定モードで測定された第2電圧測定値(Vb)及び第2電流測定値(Ib)とに基づいて、前記電池の内部抵抗を推定し、その推定値に基づいて前記電池から供給可能な最大電力量(Pmax)を算出する。
【0039】
これによれば、電池の放電電流として大電流が発生したときの電池電圧と放電電流を容易に測定することができ、大電流発生時の電池の内部抵抗を高精度に推定することができる。これにより、電池から供給可能な最大電力量の算出精度が向上する。
【0040】
〔12〕(放電電流の増加時にA/D変換器の分解能を下げて放電電流を測定する)
項11の半導体装置において、前記電流測定部は、デルタ・シグマ方式のA/D変換回路(1041)を含む。前記A/D変換回路は、前記第2測定モードにおけるA/D変換の分解能が前記第1測定モードにおけるA/D変換の分解能よりも低くされる。
【0041】
これによれば、大電流が発生している期間に放電電流の測定を完了させることができる。また、大電流発生時の放電電流を測定するためのA/D変換回路を別途設ける必要がないため、半導体装置の回路規模の増大を抑えることができる。
【0042】
〔13〕(放電電流の増加時に充電制御用トランジスタをオンさせる)
項10又は12の半導体装置(30)は、前記電池と外部装置との間の電力の供給経路に直列に接続される充電制御用トランジスタ(MNC)及び放電制御用トランジスタ(MND)を制御するための制御部(303)を更に有する。前記制御部は、前記充電制御用トランジスタをオンさせることで前記電池の充電を可能にし、前記放電制御用トランジスタをオンさせることで前記電池の放電を可能にする。前記制御部は、前記電池の放電中に、前記電流検出部によって前記放電電流が前記所定の閾値を超えたことが検出されたら、前記放電制御用トランジスタをオンさせた状態で更に前記充電制御用トランジスタをオンさせる。
【0043】
これによれば、放電時に大電流が発生したときに、電池と外部装置との間の電力供給経路にトランジスタのボディダイオード1段分の順方向電圧降下が起きなくなるので、放電時の電力供給量を増加させることができる。また、これによれば、上記電力供給経路におけるトランジスタのボディダイオードの寄生抵抗成分による電圧降下が小さくなるので、電池から出力可能な最大電流が大きくなり、最大電力量を更に増大させることができる。
【0044】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。なお、発明を実施するための形態を説明するための全図において、同一の機能を有する要素には同一の符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【0045】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係る電池制御ICを含む電池パックを搭載した携帯端末を例示する図である。
【0046】
同図に示される携帯端末200は、例えばノートパソコンであり、システムボード(BD_SYS)2と電池パック(PAC_BAT)1とを含んで構成される。
【0047】
システムボード2は、ノートパソコンとしての機能を実現するための内部回路(SYS)20や複数の外部端子がプリント基板等の実装基板上に形成された構成とされる。同図には、複数の外部端子として、外部電源VIN_EXの供給を受ける外部電源端子P1と、電池パック1と接続するための高電位側電源端子P2及び低電位側電源端子P3と、電池パック1と通信を行うための入出力端子PIOとが代表的に例示されている。
【0048】
内部回路20は、高電位側電源端子P2及び低電位側電源端子P3を介して電池パック1から供給された電力により、動作可能にされる。高電位側電源端子P2から内部回路20への電力供給経路には配線抵抗や外部端子の接触抵抗等の寄生の抵抗成分が存在し、同図ではこの抵抗成分を参照符号Rsysとして図示している。また、内部回路20は、外部電源端子P1に外部電源(例えばACアダプタ)VIN_EXが接続された場合には、外部電源VIN_EXからダイオード21を介して供給された外部電力によっても動作可能にされる。なお、外部電源VIN_EXから供給された外部電力は、上記のように内部回路20に供給されるとともに、必要に応じて電池パック1に供給されて組電池11の充電に利用される。
【0049】
内部回路20は、例えば、CPU(GPUを含む)22や、大容量のRAM(Random Access Memory)23、SSD(Flash Solid State Drive)24等の複数の半導体部品を含んで構成される。
【0050】
CPU22は、前述した可変周波数機能を備える。すなわち、CPU22は、クロック周波数f1で動作する通常クロック動作モードと、クロック周波数f1よりも高いクロック周波数f2で動作する高速クロック動作モードとが切り替え可能に構成される。例えば、内部回路20は、通常時には通常クロック動作モードに設定し、比較的低いクロック周波数f1でCPU22を動作させることで低消費電力にするとともにCPU22の温度上昇を抑えてCPU22の信頼性の低下を抑制する。一方、アプリケーションのCPUリソース要求が増加した時には、内部回路20は高速クロック動作モードに設定し、通常クロック動作モード時のクロック周波数f1よりも高いクロック周波数f2でCPU22を動作させることで、演算性能を向上させる。ただし、CPU22のクロック周波数を高くすると、CPU22のチップ温度が上がり信頼性が低下する虞があるため、高速クロック動作モードでCPU22が動作する期間は、最大で例えば10ms程度に短く設定される。なお、CPU22を連続して高速クロック動作モードで動作させたい場合には、高速クロック動作モードでの動作期間が10msを経過したら一旦通常クロック動作モードに戻し、その後CPUのチップ温度が安全な範囲まで下がったことを確認してから、再び高速クロック動作に移行させる、というような制御が行われる。
【0051】
高速クロック動作モードでCPU22が動作する期間や高速クロック動作モード時のクロック周波数f2は、組電池11から内部回路20に供給可能な最大電力量Pmaxに基づいて決定される。例えば、CPU22は、高速クロック動作モード時のクロック周波数f2として、通常クロック動作モード時のクロック周波数f1よりも高い複数のクロック周波数f2_1〜f2_n(nは2以上の整数)が選択可能に構成されている。高速クロック動作モードへの移行時には、電池パック1から通知された最大電力量Pmaxに基づいてクロック周波数f2_1〜f2_nの中から最適なクロック周波数が選択され、選択されたクロック周波数のクロック信号CLKがCPU22に供給される。例えば、最大電力量Pmaxが大きい場合には、より高いクロック周波数が選択され、最大電力量Pmaxが小さい場合には、低めのクロック周波数が選択される。なお、最大電力量Pmaxの詳細については後述する。
【0052】
電池パック1は、組電池11、電池制御IC10、充電制御用トランジスタMNC、放電制御用トランジスタMND、センス抵抗Rs、及び複数の外部端子を含んで構成される。同図には、電池パック1における外部端子として、組電池11の高電位側電源端子PB1及び低電位側電源端子PB2と、システムボード2と通信を行うための入出力端子PBIOと、が代表的に例示されている。
【0053】
高電位側電源端子PB1及び低電位側電源端子PB2は、組電池11を電気的に外部装置(システムボード2上の内部回路20)と接続するための端子である。高電位側電源端子PB1は、システムボード2上の高電位側電源端子P2と接続され、低電位側電源端子PB2は、システムボード2上の低電位側電源端子P3と接続される。
【0054】
組電池11は、高電位側電源端子PB1と低電位側電源端子PB2との間に設けられ、例えば充電及び放電が可能な複数の単電池セルCell1〜Cellm(mは2以上の整数)を直列に接続した構成とされる。特に制限されないが、単電池セルCell1〜Cellmはリチウムイオン二次電池である。直列接続される単電池セルの個数を増やすことで組電池11を高電圧化することができる。また、直列接続される単電池セル群を複数並列接続することで組電池11を大容量化することができる。なお、同図には組電池11として単電池セルが複数個ある場合が例示されているが、システムボード2の消費電力が小さい場合には、一つの単電池セルのみを用いる構成でも良い。
【0055】
なお、組電池11の正側電極が接続されるノードを参照符号ND2で表記し、ノードND2に供給される組電池11の出力電圧を参照符号Vbatで表記する。
【0056】
充電制御用トランジスタMNC及び放電制御用トランジスタMNDは、電池制御IC10から出力された制御信号に応じてオン・オフが制御される。充電制御用トランジスタMNC及び放電制御用トランジスタMNDは、大電流出力が可能なトランジスタであり、例えばIGBTやパワーMOSトランジスタ等である。同図には一例として、充電制御用トランジスタMND及び放電制御用トランジスタMNDをNチャネル型のパワーMOSトランジスタで構成した場合が例示されている。充電制御用トランジスタMNDと放電制御用トランジスタMNDは、夫々のドレイン電極(ボディダイオードのカソード側)が対向するように、高電位側電源端子PB1とノードND2との間に直列に接続される。充電制御用トランジスタMNC及び放電制御用トランジスタMNDは、組電池11と外部装置(システムボード2)との間の電気的な接続と遮断を可能にする。例えば、充電制御用トランジスタMNCをオンさせることで組電池11の充電を可能にする。このとき、放電制御用トランジスタはオンしていても良いし、オフしていても良い。放電制御用トランジスタMNDがオフしている場合には、外部電源VIN_EXから、システムボード2におけるダイオード21、放電制御用トランジスタMNDのボディダイオードDMD、及び充電制御用トランジスタMNCを介して組電池11に充電電流が供給される。また、放電制御用トランジスタMNDをオンさせることで組電池11の放電を可能にする。このとき、充電制御用トランジスタMNCはオンしていても良いし、オフしていても良い。充電制御用トランジスタMNCがオフしている場合には、組電池11から充電制御用トランジスタMNCのボディダイオードDMCと放電制御用トランジスタMNDを介して、内部回路20に放電電流Idが供給される。なお、同図には、電池パック1における高電位側電源端子PB1とノードND2との間の電力供給経路に存在する配線抵抗や外部端子の接触抵抗等による寄生の抵抗成分が、抵抗Rbatとして図示されている。
【0057】
センス抵抗Rsは、組電池11に出入りする電流(充電電流及び放電電流)を電圧として検知する。例えば、センス抵抗Rsは、組電池110の負側電極が接続されるノードNDsnと低電位側電源端子PB2が接続されるノードNDspと間に配置される。センス抵抗Rsの両端の電圧は、充電電流又は放電電流の情報として検知され、電池制御IC10に入力される。
【0058】
電池制御IC10は、組電池11の状態を監視するとともに、組電池11の充電及び放電の実行と停止を制御する。特に制限されないが、電池制御IC10は、公知のCMOS集積回路の製造技術によって1個の単結晶シリコンのような半導体基板に形成されたワンチップのマイクロコントローラである。具体的に、電池制御IC10は、組電池11の放電電流を監視することにより、内部回路20におけるCPU22が高速クロック動作モードに切り替わったことを検知する機能を備える。更に電池制御IC10は、高速クロック動作モード時の組電池11の出力電圧Vbatと放電電流Idとを測定し、それらの測定値に基づいて組電池11の内部抵抗を推定するとともに、その推定値に基づいて最大電力量Pmaxを算出する機能を備える。以下、電池制御IC10の構成を詳細に説明する。
【0059】
電池制御IC10は、データ処理制御部100、ゲート制御部(GATE_CNT)103、選択部(SEL)107、電圧測定部(V_MES)106、電流測定部(I_MES)104、及び電流検出部(I_SEN)105を含んで構成される。
【0060】
選択部107は、データ処理制御部100からの指示に応じて電圧の測定対象を選択する。例えば、選択部107は、夫々の単電池セルCell1〜CellMの出力電圧を入力し、何れか一つの電圧を選択して出力する。電圧測定部106は、選択部107によって選択された電圧VSELを測定する。電圧測定部106は、例えばA/D変換器1061を含んで構成される。A/D変換器1061が、選択部121で選択された電圧VSELを所定の変換サイクル(例えば8ms毎)でデジタル値に変換することにより、電圧測定を実現する。A/D変換器1061は、例えばΔΣ方式のA/D変換回路である。電圧測定部106は更に、夫々の単電池セルCell1〜CellMの出力電圧の測定値に基づいて、組電池11の出力電圧Vbatを算出する。例えば、直列接続される全ての単電池セルCell1〜CellMの出力電圧の測定値を加算することによって、組電池11の出力電圧Vbatを算出する。電圧測定部106による測定結果は、レジスタ部102内の所定のレジスタに格納される。なお、レジスタ部102へのデータの格納は、電圧測定部106が直接アクセスして行っても良いし、演算部101を介して行っても良い。
【0061】
電流測定部104は、組電池11の充放電電流の測定を行う。電流測定部104は、例えばA/D変換器1041を含んで構成され、A/D変換器1041によってセンス抵抗Rsの両端の電圧を所定の変換サイクルでデジタル値に変換することで電流測定を実現する。電流測定部104は、更にクーロンカウンタを含み、クーロンカウンタによって充電電流及び放電電流の測定値を積分することで、充電・放電電荷量の情報を生成する。A/D変換器1041は、例えばΔΣ方式のA/D変換回路とされ、その分解能が変更可能にされる。詳細は後述するが、電流測定部104のA/D変換器1041は、電流検出部105からの割り込み信号VINTに応じて分解能が下がるように制御される。電流測定部104による測定結果は、レジスタ部102内の所定のレジスタに格納される。なお、レジスタ部102へのデータの格納は、電流測定部104が直接アクセスして行っても良いし、演算部101を介して行っても良い。
【0062】
ゲート制御部103は、データ処理制御部100からの指示に応じて、充電制御用トランジスタMNC及び放電制御用トランジスタMNDのオン・オフを制御するための制御信号を生成する。なお、
図1に示されるように、ゲート制御部103が充電制御用トランジスタMNC及び放電制御用トランジスタMNDを直接駆動する構成としても良いし、電池制御IC10の外部にプリドライバ回路を設け、そのプリドライバ回路がゲート制御部103から出力された制御信号に基づいて充電制御用トランジスタMNC及び放電制御用トランジスタMNDを駆動するように構成しても良い。
【0063】
データ処理制御部100は、電池制御IC10における各機能部の統括的な制御を行うとともに、各種の演算を行う。また、データ処理制御部100は、図示されない外部インターフェース回路を介して、システムボード2における内部回路20との間でデータの送受信を行う。具体的に、データ処理制御部100は、プログラムに従って演算及び制御を実行するCPUと、前記プログラムが格納される不揮発性の記憶部(マスクROMやフラッシュメモリ等)と、演算結果等を格納するための揮発性の記憶部(RAM)等を含んで構成されるプログラム処理装置によって実現される。
【0064】
図1には、データ処理制御部100として、データ処理制御部100による演算機能や制御機能を実現するための機能実現手段としての演算部(APR)101と、データ処理制御部100による演算及び制御に利用される各種レジスタから構成されるレジスタ部(REG)102と、が代表的に図示されている。レジスタ部102には、センス抵抗Rsの抵抗値、寄生抵抗Rsys、Rbatの抵抗値、充電制御用/放電制御用トランジスタMNC、MNDのオン抵抗及びボディダイオードDMC、DMDの順方向電圧、及び最低保証電圧Vmin等の各種パラメータが格納される。また、レジスタ部102には、前述したように電圧測定部106や電流測定部104による測定結果も格納される。
【0065】
演算部101は、電流測定部104によって測定された充電電流値及び放電電流値と、電圧測定部106によって測定された単電池セルCell1〜Cellmの電圧とに基づいて各種の演算を行うことにより、組電池11の状態を示す情報を生成する。生成されたこれらの情報は、入出力端子PBIOを介してシステムボード2内の内部回路20に送信される。具体的に、演算部101は、電池の状態情報として、満充電容量FCC、電池の残量RC、及び電池の充電状態SOC等を生成するとともに、最大電力量Pmaxの情報を生成する。最大電力量Pmaxを内部回路20に送信するタイミングは、内部回路20からの要求により決定され、例えば1秒毎に最大電力量Pmaxの情報が送信される。なお、最大電力量Pmaxの具体的な算出方法については後述する。
【0066】
電流検出部105は、放電電流Idが所定の閾値電流Ithを超えているか否かを判定する。
【0067】
図2に、電流検出部105の内部構成例を示す。同図に示される電流検出部105Aは、差動増幅器(AMP)1051と、コンパレータ回路(CMP)1052と、出力信号生成部(DLY)1053と、を含んで構成される。差動増幅器1051は、電池制御IC10の外部端子Psp、Psnを介して入力された検出電圧(センス抵抗Rsの両端の電圧)Vsを増幅して出力する。例えば、差動増幅器1051の増幅率を100倍としたとき、2mΩのセンス抵抗Rsに流れた500mAの放電電流Idによって生じた1mVの検出電圧Vsを、100mVに増幅して出力する。コンパレータ回路1052は、差動増幅器1051によって増幅された電圧Vsaと閾値電流Ithに応じた閾値電圧Vthとを比較し、比較結果VCMPを出力する。例えば、電圧Vsaが閾値電圧Vthより低い場合に比較結果VCMPの信号レベルをローレベルにし、電圧Vsaが閾値電圧Vthより高い場合に比較結果VCMPの信号レベルをハイレベルにする。閾値電流Ithは、内部回路20のCPU22が高速クロック動作モードで動作しているか、通常クロック動作モードで動作しているかを判別するための基準値である。例えば、閾値電流Ithは、CPU22が通常クロック動作モードで動作しているときの放電電流の想定値より大きく、且つCPU22が高速クロック動作モードで動作しているときの放電電流の想定値より小さい値に設定される。閾値電圧Vthは、閾値電流Ithに応じて設定された基準電圧である。出力信号生成部1053は、コンパレータ回路1052によって放電電流Idが閾値電流Ithを超えたことが検出されたら、割り込み信号VINTを生成する。例えば、出力信号生成部1053は、放電電流Idが閾値電流Ithを超えた状態が所定期間TD以上継続したら、割り込み信号VINTを生成する。
【0068】
図3は、電流検出部の動作例を示すタイミングチャート図である。同図に示されるように、CPU22が通常クロック動作モードで動作しているときに放電電流Iaが流れていたとする。時刻t1においてノイズ等の影響で瞬間的に放電電流が閾値電流Ithを超えたとすると、コンパレータ回路1052の比較結果VCMPが反転(例えばローレベルからハイレベルに変化)する。この場合、比較結果VCMPがハイレベルとなっている期間が所定期間TDに満たないため、出力信号生成部1053は割り込み信号VINTを生成しない。その後、時刻t2においてCPU22が通常クロック動作モードから高速クロック動作モードに切り替わり、放電電流が閾値電流Ithを超えたとすると、コンパレータ回路1052の比較結果VCMPが再びハイレベルとなる。そして、比較結果VCMPがハイレベルとなった状態が所定期間TD経過した時刻t3において、出力信号生成部1053が割り込み信号VINTを生成する。特に制限されないが、割り込み信号VINTはワンショットパルス状の信号とされる。
【0069】
電流検出部105を
図3のように構成することにより、コンパレータ回路1052によって放電電流Idが閾値電流Ithを超えたか否かを容易に判定することができる。また、出力信号生成部1053によって放電電流Idが閾値電流Ithを超えた状態が所定期間継続したら割り込み信号VINTを生成するので、ノイズ等に起因した瞬間的な放電電流の増加を誤って検出することを防止できる。更に、コンパレータ回路1052の前段に増幅部(差動増幅回路1053)を設けることにより、センス抵抗Rsの抵抗値を小さくすることができ、センス抵抗Rsで生ずる損失を低減させることができる。
【0070】
なお、センス抵抗Rsの一端がグラウンドノードに接続される場合には、電流検出部105として
図4の回路構成を採用することもできる。同図に示されるように、センス抵抗Rsの一端が接続されるノードNDsnがグラウンドノードに接続される場合には、センス抵抗Rsの他端が接続されるノードNDspの電圧を増幅部(レベルシフタ及びゲイン調整回路(LV/AMP))1054を介してコンパレータ回路1052に入力する。これによれば、前述の
図3の構成と同様の効果が得られる。
【0071】
以上のように電流検出部105によって生成された割り込み信号VINTは、電圧測定部106及び電流測定部104に入力される。以下、電圧測定部106及び電流測定部104の動作について詳細に説明する。
【0072】
電圧測定部106は、通常時(CPU22の通常クロック動作モード時)は、夫々の単電池セルCell1〜CellMの出力電圧の測定と組電池11の出力電圧Vbatの算出を定期的に実行する。また、電圧測定部106は、定期的な測定動作に加えて、割り込み信号VINTをトリガとした測定動作を行う。例えば、電圧測定部106は、割り込み信号VINTが出力されたら、夫々の単電池セルCell1〜CellMの出力電圧の測定と組電池11の出力電圧Vbatの算出処理を実行し、そのときの出力電圧Vbatの測定結果をレジスタ部102に格納する。なお、前述したように、CPU22が高速クロック動作モードで動作している期間が10msと短いため、その期間に全ての単電池セルCell1〜CellMの出力電圧の測定を完了することができない場合には、以下の手法により組電池11の出力電圧Vbatを測定する。例えば、割り込み信号VINTが出力される前の通常クロック動作モード時に出力電圧が最も小さかった単電池セルを選択部107によって選択し、選択された単電池セルの出力電圧のみを電圧測定部106によって測定する。そして、その測定値をM倍(直列接続された単電池セルの個数倍)した値を、高速クロック動作モード時の電圧測定値Vbとする。これにより、高速クロック動作モードの短い期間に組電池11の出力電圧Vbatを測定することが可能となる。
【0073】
電流測定部104は、通常時は、充放電電流の測定を定期的に実行する。また、電流測定部104は、定期的な測定動作に加えて、割り込み信号VINTをトリガとした測定動作を行う。具体的に、電流測定部104は、割り込み信号VINTが出力されたら、通常時に定期的に行っていた測定動作を一旦停止し、A/D変換の分解能を下げて新たな電流測定を実行する。例えば、電流測定部104が18bitのA/D変換の分解能で電流測定を行っているときに割り込み信号VINTが出力されると、電流測定部104は、A/D変換の分解能を例えば13bitに変更して電流測定を行う。これによれば、例えば通常時の電流測定時間が250msであったとすれば、割り込み信号VINTが出力された後の電流測定時間は約8ms(通常時の約30分の1)となり、電流測定時間が短縮される。すなわち、電流測定部104によれば、CPU22が高速クロック動作モードで動作している期間内に電流測定を完了させることが可能となる。前述したように、CPU22が高速クロック動作モードで動作する期間は10ms程度と短いため、通常クロック動作モード時と同様に高分解能のA/D変換を行うと、高速クロック動作モードの期間内に電流測定を完了することができない虞がある。また、高速クロック動作モード時の放電電流を測定するために、低分解能のA/D変換器を別途設けるとすると、電池制御IC10の回路規模が大きなってしまう。そこで、電流測定部104のように高速クロック動作モード時にA/D変換の分解能を下げることで、低分解能のΔΣA/D変換回路を別途設けることなく、高速クロック動作モードの期間内に電流測定を完了させることが可能となる。
【0074】
次に、電池制御IC10による最大電力量Pmaxの算出方法について具体的に説明する。
【0075】
前述したように最大電力量Pmaxは、組電池11から内部回路20に供給可能な最大の電力量であり、内部回路20の電源電圧が最低動作電圧を下回らない範囲において組電池11から供給可能な最大電流と、上記最低動作電圧との積によって算出される。以下、このことについて詳細に説明する。
【0076】
図5は、最大電力量Pmaxの算出方法を説明するための図である。同図には、組電池11から内部回路20への電力供給経路が簡略化して図示されている。また、同図において、組電池11を構成する直列接続された単電池セルCell1〜CellMを一つの単電池セルとみなして図示するとともに単電池セルCell1〜CellMの総セル電圧をVCELLと表記し、単電池セルCell1〜CellMの総内部抵抗をRCELLと表記している。また、同図において、Idは組電池11の放電電流を表す。更に、同図において、システムボード2側の電流経路に設けられた抵抗R1には、配線抵抗や外部端子の接触抵抗等から成る寄生抵抗Rsysが含まれるものとし、電池パック1側の電流経路に設けられた抵抗R2には、配線抵抗や外部端子の接触抵抗等から成る寄生抵抗Rbatのみならず、放電制御用トランジスタのオン抵抗も含まれているものとする。なお、同図では、充電制御用トランジスタMNCのボディダイオードDMCによる電圧降下を無視している。
【0077】
図5に示されるように、組電池11から内部回路20に電力を供給するとき、組電池11の正側電極(ノードND2)から内部回路20の高電位側の電源供給端子(ノードND1)に向かって放電電流Idが流れる。このとき、内部回路20に印加される電源電圧Vsys(ノードND1の電圧)は、(式1)で表すことができる。
【0079】
更に、内部回路20の電源電圧Vsysは、内部回路20の動作を保証する最低動作電圧Vminを下回ってはならないことから、(式2)が成り立つ。
【0081】
(式2)より、内部回路20の電源電圧が最低動作電圧Vminを下回らない範囲において組電池11から供給可能な最大電流Imaxは(式3)で表すことができる。
【0083】
また、総セル電圧VCELLは(式4)で表される。ここで、VaはCPU22が通常クロック動作モードで動作しているときの組電池11の出力電圧(ノードND2の電圧)であり、IaはCPU22が通常クロック動作モードで動作しているときの放電電流である。
【0085】
(式3)に(式4)を代入することで、最大電流Imaxは(式5)で表すことができる。
【0087】
したがって、高速クロック動作モード時に組電池11から内部回路20に供給可能な最大電力量Pmaxは、(式6)で表すことができる。
【0089】
ここで、CPU22が高速クロック動作モードで動作しているときの組電池11の出力電圧をVb、CPU22が高速クロック動作モードで動作しているときの放電電流をIbとすると、内部抵抗RCELLは(式7)で表すことができる。
【0091】
(式7)から理解されるように、通常クロック動作モード時の組電池11の出力電圧Va及び放電電流Iaと、高速クロック動作モード時の組電池11の出力電圧Vb及び放電電流Ibとを測定すれば、組電池11の総内部抵抗RCELLを推定することができる。この推定された総内部抵抗RCELLを上記(式6)に代入することによって、最大電力Pmaxを算出することができる。
【0092】
次に、電池制御IC10による最大電力量Pmaxの算出処理の流れを説明する。
【0093】
図6は、実施の形態1に係る電池制御ICにおける最大電力量Pmaxの算出に係る処理フローを示す図である。
【0094】
例えば電池制御IC10のパワーオンリセットが解除されると、最大電力量Pmaxの算出に係る処理が開始される。先ず、電池制御IC10の初期設定が行われる(S10)。具体的に、初期設定では、センス抵抗Rsの抵抗値、寄生抵抗Rsys、Rbatの抵抗値、充電制御用/放電制御用トランジスタMNC、MNDのオン抵抗及びボディダイオードDMC、DMDの順方向電圧、及び最低保証電圧Vmin等のパラメータがレジスタ部102に設定される。これらのパラメータは、例えば、システムボード2上の内部回路20から供給される。その後、電流測定部104及び電圧測定部106等がイネーブル状態にされ、充放電電流及び電池電圧の測定が開始されるとともに、組電池11の状態監視が開始される。
【0095】
組電池11の状態監視が開始されると、先ず、内部回路20のCPUの動作モードの判定が行われる(S11)。具体的には、放電電流Idが閾値電流Ithを超えているか否かによって内部回路20のCPUの動作モードが判定される。例えば、放電電流Idが閾値電流Ithを超えておらず、電流検出部105から割り込み信号VINTが出力されていない場合には、電池制御IC10は通常測定モードで動作する(S13)。具体的には、電圧測定部106が、前述した方法により、組電池11の出力電圧Vbatの測定を周期的に実行する(S131)。このときの電圧測定部106による測定結果は、通常クロック動作モード時の電圧測定値Vaとしてレジスタ部102に格納される。同様に、電流測定部104が、前述した高分解能のA/D変換によって放電電流Idの測定を行う(S132)。このときの電流測定部104による測定結果は、通常クロック動作モード時の電流測定値Iaとしてレジスタ部102に格納される。通常測定モードでの出力電圧Vbat及び放電電流Idの測定は、放電電流Idが閾値電流Ithを超えるまで繰り返し実行される。
【0096】
放電電流Idが閾値電流Ithを超え、電流検出部105から割り込み信号VINTが出力された場合には、電池制御IC10は大電流測定モードで動作する(S12)。具体的には、電圧測定部106が、通常測定モードでの出力電圧Vbatの測定を停止し、前述した方法により出力電圧Vbatの測定を行う(S121)。このときの電圧測定部106による測定結果は、高速クロック動作モード時の電圧測定値Vbとしてレジスタ部102に格納される。同様に、電流測定部104が、通常測定モードでの放電電流Idの測定を停止して、前述した低分解能のA/D変換による電流測定を行う(S122)。このときの電流測定部104による測定結果は、高速クロック動作モード時の電流測定値Ibとしてレジスタ部102に格納される。
【0097】
その後、電圧測定部106及び電流測定部104から測定完了を示す割り込み信号INTV/INTIが出力されると、演算部101は最大電力量Pmaxを算出処理を開始する(S123)。具体的に、演算部101は、レジスタ部102に格納された電流測定値Ia,Ib及び電圧測定値Va、Vbを用いて、上述した(式7)に従って演算を行うことにより、組電池11の内部抵抗を算出する。そして、演算部101は、算出した内部抵抗の値と、レジスタ部102に格納されたその他のパラメータ(最低保証電圧Vmin、寄生抵抗Rsys,Rbat、放電制御用トランジスタのオン抵抗等)とを用いて、上述した(式6)に従って演算を行うことにより、最大電力量Pmaxを算出する。算出された最大電力量Pmaxの値がレジスタ部102に設定されることで、最大電力量Pmaxの値が更新される(S124)。その後は、ステップS11の動作モードの判定処理に戻り、上記の処理が繰り返し実行される(S11〜S13)。
【0098】
図7は、電池制御IC10における最大電力量Pmaxの算出に係るタイミングチャート図である。同図に示されるように、内部回路20のCPUが通常クロック動作モードで動作しているときは、電圧測定部106及び電流測定部104は通常測定モードで動作し、所定の変換サイクル毎に組電池11の出力電圧Vbat及び放電電流Idが測定され、期間Ta毎にレジスタ部102の電圧測定値Va及び電流測定値Iaの値が更新される。例えば、
図7に示されるように、時刻t1において電圧測定部106及び電流測定部104が測定動作を開始し、電流測定部104による測定が完了したタイミングt2でレジスタ部102の電圧測定値Va及び電流測定値Iaの値が更新される。ここで、電圧測定部106による測定時間を例えば約8ms、電流測定部104の測定時間は例えば約250msとすると、約250ms毎にレジスタ部102の電圧測定値Va及び電流測定値Iaが更新されることになる。
【0099】
その後、例えば時刻t3において、内部回路20のCPUが通常クロック動作モードから高速クロック動作モードに遷移したことが検出され、割り込み信号VINTが出力されたとすると、電圧測定部106及び電流測定部104は通常測定モードから大電流測定モードに遷移し、高速クロック動作モード時の電圧測定値Vb及び電流測定値Ibの測定を開始する。測定完了後の時刻t4において、電圧測定部106及び電流測定部104は、割り込み信号INTV、INTIを夫々出力するとともに、レジスタ部102の電圧測定値Vb及び電流測定値Ibの値を更新する。その後、時刻t5において、電圧測定部106及び電流測定部104は、大電流測定モードから通常クロック動作モードに戻る。このとき、電流測定部104のA/D変換器1041の分解能は高く設定される(例えば分解能が13bitから18bitに戻る。)
割り込み信号INTV、INTIを受けた演算部101は、時刻t6において、更新された電圧測定値Vb及び電流測定値Ibを用いて最大電力量Pmaxを算出する。そして、演算部101は、算出した最大電力量Pmaxをレジスタ部102に格納する。レジスタ部102に格納された最大電力量Pmaxの情報は、所定のタイミング(例えば1秒毎)に内部回路20に送信される。そして、内部回路20は、受信した最大電力量Pmaxの情報に基づいて、高速クロック動作モード時のCPU22のクロック周波数f2と高速クロック動作モードの期間を決定する。
【0100】
以上、実施の形態1に係る電池制御IC10によれば、組電池11の放電電流を監視することで内部回路20のCPUが高速クロック動作モードに遷移したことを容易に検出することができるから、高速クロック動作モード時における組電池11の出力電圧(Vb)と放電電流(Ib)を容易に測定することができ、大電流発生時の組電池11の内部抵抗を高精度に推定することができる。これにより、より正確な最大電力量Pmaxを算出することができるから、内部回路20におけるCPU22の演算性能を向上させることができる。
【0101】
≪実施の形態2≫
図8は、実施の形態2に係る電池制御ICを含む電池パックを搭載した携帯端末を例示する図である。
【0102】
同図に示される携帯端末201の電池パック3に搭載される電池制御IC30は、実施の形態1に係る電池制御IC10の機能に加え、内部回路20のCPU22の高速クロック動作モード時に充電制御用トランジスタをオンさせる機能を備える。以下、電池制御IC30について具体的に説明する。
【0103】
電池制御CI30は、電流検出部105とゲート制御部103に代えて、電流検出部305とゲート制御部303とを備える。その他の構成要素は実施の形態1に係る電池制御IC10と同様であり、同様の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0104】
図9に電流検出部305の内部構成例を示す。同図に示されるように、電流検出部305における出力信号生成部3053は、出力信号生成部1053と同様にコンパレータ回路1052の比較結果VCMPに基づいて割り込み信号VINTを生成する。更に出力信号生成部3053は、比較結果VCMPに基づいて制御信号VGCNTを生成する。例えば、出力信号生成部3053は、放電電流Idが閾値電流Ithを超えた状態が所定期間TD継続したら、制御信号VGCNTをアサートする(例えばハイレベルにする)。そして、放電電流Idが閾値電流Ithを下回ったら、制御信号VGCNTをネゲートする(例えばローレベルにする)。
【0105】
ゲート制御部303は、データ処理制御部100からの指示と制御信号VGCNTとに応じて、充電制御用/放電制御用トランジスタMND、MNCを制御する。例えば、データ処理制御部100から放電の実行の指示があった場合には、ゲート制御部303は放電制御用トランジスタMNDをオンさせ、充電の実行の指示があった場合には、ゲート制御部303は充電制御用トランジスタMNCをオンさせる。更に、ゲート制御部303は、データ処理制御部100から放電の実行が指示されているときに制御信号VGCNTがアサートされたら、放電制御用トランジスタMNDに加えて、充電制御用トランジスタMNCもオンさせる。これにより、充電制御用トランジスタMNCのボディダイオードDMCを介した電流経路に加えて充電制御用トランジスタMNCのソース・ドレイン間を経由した電流経路が形成されるので、大きな放電電流が発生したときの組電池11と内部回路20との間の電力供給経路における電圧降下を更に小さくすることができる。
【0106】
図10は、電池制御IC30の動作例を示すタイミングチャート図である。同図に示されるタイミングチャートは、前述の
図7で示した最大電力量Pmaxの生成に係るタイミングチャートに、放電制御用トランジスタMNDと充電制御用トランジスタMNCのオン・オフのタイミングを更に追加したものである。
【0107】
同図に示されるように、時刻t3において、内部回路20のCPU22が高速クロック動作モードに移行したことが検出されたら、電流検出部305は制御信号VGCNTをハイレベルにし、充電制御用トランジスタMNCをオンさせる。その後の時刻t5において、CPU22が高速クロック動作モードから通常クロック動作モードに移行したことが検出されたら、電流検出部305は制御信号VGCNTをローレベルにし、充電制御用トランジスタMNCをオフさせる。その他の制御は、実施の形態1に係る電池制御IC10と同様である。
【0108】
以上、実施の形態2に係る電池制御IC30によれば、電池制御IC10と同様に、最大電力量Pmaxを高精度に算出することができる。更に、電池制御IC30によれば、放電電流が大きくなるCPU22の高速クロック動作モード時に、放電制御用トランジスタのみならず充電制御用トランジスタもオンさせるので、組電池11と内部回路20との間の電力供給経路における電圧降下を小さくすることができ、放電時の電力供給量を増加させることができる。また、これによれば、高速クロック動作モード時に組電池11から出力可能な最大電流Imaxが更に大きくなるので、最大電力量Pmaxを更に増加させることができ、内部回路20におけるCPU22の演算性能の更なる向上に資する。
【0109】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0110】
例えば、上記の説明では、実施の形態1,2に係る電池制御ICをノートパソコンの電池パックに適用する場合を例示したが、周波数可変機能を備えたCPUを搭載したタブレット端末やスマートフォン等の電池パックにも同様に適用することができる。
【0111】
また、閾値電流Ithの大きさを組電池11の放電レートに応じて変更しても良い。例えば、放電レートが1Cの場合に閾値電流Ith(閾値電圧Vth)を低めに設定し、放電レートが4Cの場合に閾値電流Ithを高めに設定する。これによれば、高速クロック動作モードの検出精度を更に向上させることができる。
【0112】
また、実施の形態1,2に係る電池制御ICは、ワンチップのマイクロコントローラに限定されず、マルチチップで構成されたマイクロコントローラであっても良い。