特許第6374102号(P6374102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374102ケーブルセットおよびこのケーブルセットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374102
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ケーブルセットおよびこのケーブルセットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/16 20060101AFI20180806BHJP
   D06M 23/06 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   D07B1/16
   D06M23/06
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-510541(P2017-510541)
(86)(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公表番号】特表2017-525863(P2017-525863A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015068215
(87)【国際公開番号】WO2016026711
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】102014216761.2
(32)【優先日】2014年8月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516017178
【氏名又は名称】レオニ ボルトネッツ−ジステーメ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】トニ ミュラー
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−164039(JP,A)
【文献】 特開平10−241469(JP,A)
【文献】 特開2010−154634(JP,A)
【文献】 特表2003−529902(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0041473(US,A1)
【文献】 特開平08−180754(JP,A)
【文献】 特開昭53−096038(JP,A)
【文献】 特表平08−505894(JP,A)
【文献】 特表2005−529251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00−9/00
D06M 10/00−11/84,16/00,19/00−23/18
B05D 1/00−7/26
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単一導線(4)が導線束(6、10)にまとめられ(VS3)、この導線束(6、10)が集束要素(18)を備え付けられる(VS4、VS5)、ケーブルセット(2)を製造するための方法において、前記集束要素(18)が無秩序な繊維分布を有する織物状の繊維絡み合い物(18)として形成され、そのために懸濁液が前記導線束(6、10)に塗布され、この懸濁液内にほどけた繊維(22)と結合剤(20)が含まれ、前記懸濁液が塗布後、前記織物状の繊維絡み合い物(18)を形成するために固化され、前記懸濁液と発泡剤からエアゾールが製造され(VS2)、このエアゾールが前記導線束(6、10)に吹き付けられ、それによって前記懸濁液が前記導線束(6、10)に塗布される(VS4)ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記集束要素(18)が前記懸濁液を複数回塗布すること(VS4)によってあるいはいろいろな懸濁液を塗布すること(VS4)によって製造されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液が溶剤を含み、この溶剤内に前記結合剤が溶けていることと、前記懸濁液の前記溶剤が取り除かれる(VS5)ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記懸濁液の塗布(VS4)が自動化されて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記集束要素(18)がテープ状に形成され、前記導線束(10)をリング状に(18c)またはらせん状に(18b)に取り巻くように、前記懸濁液が塗布される(VS4)ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記集束要素(18a)が前記導線束(6)を一部区間にわたって被覆物(18a)のように取り巻くように、前記懸濁液が塗布される(VS4)ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記集束要素(18a)に分岐部(8)が形成され、この分岐部によって、前記導線束(6)の少なくとも1本の導線(4、10)が残りの前記導線(4、10)から分岐されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
集束要素(18)を有する、複数の単一導線(4)からなる導線束(6、10)を備えている、特に請求項1〜のいずれか一項に記載の方法によって製造されるケーブルセット(2)において、前記集束要素(18)が無秩序な繊維分布を有する織物状の繊維絡み合い物(18)として形成され、この繊維絡み合い物が前記導線束(6、10)に接触し、かつ無秩序配置の多数の単一繊維(22)からなり、この繊維の結びつきが結合剤(20)によって強められていることを特徴とするケーブルセット(2)。
【請求項9】
前記の織物状の繊維絡み合い物(18)内の前記繊維(22)の容積割合が60%以上であることを特徴とする請求項に記載のケーブルセット(2)。
【請求項10】
前記の織物状の繊維絡み合い物(18)が弾性であることを特徴とする請求項またはに記載のケーブルセット(2)。
【請求項11】
前記の織物状の繊維絡み合い物(18)が弾性的な変形によって、伸張の方への伸び率に関して5%以上伸張可能であることを特徴とする請求項10に記載のケーブルセット(2)。
【請求項12】
前記の織物状の繊維絡み合い物(18)がコーティングされていないことを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載のケーブルセット(2)。
【請求項13】
前記の織物状の繊維絡み合い物(18)に加えて、他の集束要素(24)が前記導線束(6、10)の周りに取付けられ、この他の集束要素が特にテープ縛りとして形成されていることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載のケーブルセット(2)。
【請求項14】
前記の他の集束要素(24)が前記の織物状の繊維絡み合い物(6、10)から離隔されておよび/または導線束の曲げ負荷される範囲に取付けられていることを特徴とする請求項13に記載のケーブルセット(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単一導線が導線束にまとめられ、この導線束が集束要素を備え付けられる、特に自動車分野のためのケーブルセットを製造するための方法に関する。本発明はさらに、集束要素を有する、複数の単一導線からなる導線束を備えている、例えば独国特許出願公開第102004023334A1号明細書に記載されているようなケーブルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車分野のための予め組立てられたケーブルセットの製造の範囲では、しばしば単一導線が導線束にまとめられる。これによって特に、予め組立てられたケーブルセットの組み込みまたは組み立てが簡単になる。なぜなら、多数の単一導線の代わりに、少数の導線束を敷設または設置すればよいからである。さらに、集束することによって、方法に応じてある程度の形状安定性が達成される。この形状安定性は、例えば導線を自動車に組み込んだ後で導線が自動車内の所定の個所に接触しないようにするために所望される。集束することによってさらに、特に自動車内の既存のスペースを良好に利用することができる。
【0003】
まとめられた導線は例えばテープ縛りによって束としてひとまとめにされる。このテープ縛りは一般的に、合成樹脂テープまたは織物接着テープを導線に巻き付けることによって形成される。その代わりに、いわゆる波形管によって導線束の単一導線がひとまとめにされる。この波形管は予め製作された部品であり、この波形管内に導線が挿通されるかまたはスリットまたは他の穴に挿入される。さらに、まとめた導線に被覆物を備え付けること、すなわち例えば合成樹脂を周りに吹き付けることが知られている。若干の場合、例えば形成された多数の導線束が他のプロセスステップでさらに大きなユニットに、すなわちさらに多くの導線を有するより大きな導線束にまとめられるときに、テープ縛り、波形管および被覆物は組み合わせて使用される。
【0004】
古典的なテープ縛りのほかに、先ず最初に繊維織物またはフリースを導線の周りにあてがい、続いて特に完全なケーブル被覆物を形成するために接着剤、樹脂またはその他の結合剤または硬化剤を塗布する方法が知られている。このような方法は例えば独国特許出願公開第102013012996A1号明細書、独国特許出願公開第10149071A1号明細書または独国特許出願公開第19937446A1号明細書から読み取ることができる。
【0005】
さらに、ケーブルシースを形成するために、古典的な(射出)成形が知られている。独国特許出願公開第4321044A1号明細書から、射出成形された成形体が不連続個所で導線束に溶着される。
【0006】
これらの方法の重要な欠点は、特にテープ縛りまたは波形管への導線の挿入を通常は手動で行わなければならないことにある。なぜなら、このような作業ステップを簡単に自動化することができないからである。しかし、この自動化は所望されていた。というのは、これによって特に、ケーブルセットの製造コストを低減することができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004023334A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102013012996A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10149071A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19937446A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第4321044A1号明細書
【特許文献6】欧州特許第1910600B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これから出発して、本発明の根底をなす課題は、ケーブルセットを製造するための有利な方法と、有利に形成されたケーブルセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は本発明に従い、請求項1の特徴を有する方法によっておよび請求項10の特徴を有するケーブルセットによって解決される。有利な発展形態は従属請求項に記載されている。ケーブルセットに関連して説明した効果および有利な実施形は方法にも同様に当てはまり、その逆もまたそのとおりである。
【0010】
この場合、方法は、例えば自動車分野、航空機製造または機械製造のためのケーブルセット、特に予め組み立てられたケーブルセットを製造するために役立つ。この場合、製造の最中に、複数の単一導線が導線束にまとめられ、続いてこの導線束が集束要素を備え付けられる。この集束要素は織物状の繊維絡み合い物として形成され、この繊維絡み合い物は導線束内の導線を、導線束としてひとまとめにする。
【0011】
その際、導線は絶縁物を備えた単一の導線芯または多数の導線芯からなる導線ケーブルである。この場合、導線芯は一般的にそれぞれ絶縁物を備え、導線ケーブルの導線芯はさらに、付加的に絶縁する被覆物を備えている。導線芯として、用途に応じて、中実ワイヤ導体または撚り導体が設けられる。若干の場合、導線束内に、中実ワイヤ導体と撚り導体が含まれている。
【0012】
集束要素、ひいては織物状の繊維絡み合い物を形成するために、ケーブルセットの製造範囲内で、懸濁液が導線束に塗布され、懸濁液は結合剤とほどけた繊維を含んでいる。懸濁液は一種の「繊維織物溶液」のように作用する。この繊維織物溶液は任意に形成された表面に塗布可能であり、「繊維織物溶液」の「溶剤」を取り除くことによって、一種の繊維織物、すなわち繊維織物絡み合い物に固化または変化させられるので、形状安定性のある形成物が生じる。その際、固化は一般形には、例えば加熱または紫外線照射のような能動的な後処理によってあるいは能動的な後処理をせずに例えば乾燥相の間の受動的な乾燥によって行われる。その結果、織物状の繊維絡み合い物が懸濁液を塗布した表面に接触するので、織物状の繊維絡み合い物、ひいては集束要素の形が導線束の形状に自動的に適合する。懸濁液は一般的に、液体であり、特に繊維を含む水のような稠度の液体である。
【0013】
従って、従来の方法と異なり、テープ縛りあるいは繊維織物またはフリースを使用する場合のような、導線束の面倒な当てがいまたは巻き付けが不要である。本発明の場合には、懸濁液内に繊維がほどけて含まれている。個々の繊維は予め製作された(面状)形成物のように互いに連結されていない、すなわち特に織物、編物またはフリースを形成していない。従って、個々の繊維は形をなしていない。懸濁液を塗布し、それに続いて固化した後で初めて、繊維絡み合い物としての繊維形成物、ひいては集束要素が形成される。
【0014】
上記方法の他の利点は、懸濁液が室温で塗布される、すなわち懸濁液を温める必要がないことにある。
【0015】
さらに、懸濁液は導線束に簡単に塗布され、塗布のために型は不要である。塗布は特に、例えば塗料の塗布のために知られている、噴霧、噴射などにより吹き付ける方法で行われる。繊維絡み合い物は特に、導線束の不連続個所にのみ塗布され、導線束を完全に被覆するために役立たない。特に、互いに離隔された複数の繊維絡み合い物が導線束の長さにわたって分配されて塗布される。
【0016】
これにより、任意のあらゆる形を、織物状の繊維絡み合い物によって包囲、被覆または局所的にコーティングすることができる。従って、織物状の繊維絡み合い物を製造するための製造プロセスは比較的に簡単であり、よって例えば個々の作業プロセスステップまたは製造プロセスステップを容易に自動化することができる。さらに、織物状の繊維絡み合い物の形が簡単に適合可能であり、かつ特にいろいろな幾何および表面形状に簡単に適合可能であるので、古典的なテープ縛りだけでなく、導線の集束のために使用される波形管や被覆物も、織物状の繊維絡み合い物によって置き換えることができる。さらに、織物状の繊維絡み合い物を、容積範囲、すなわち例えば中空室に充填することができる。この場合、織物状の繊維絡み合い物は組成に応じて、封止作用を達成するため、そしてこれによって2つの室範囲を例えば互いに液密に分離するためにも適している。
【0017】
さらに、集束要素は要求に応じて、懸濁液の多数回の塗布よって、場合によっては乾燥相または後処理と交代して、あるいは異なる懸濁液の塗布と後処理の連続によって有利に製造される。同じ懸濁液の多数回の塗布によって、例えば異なる太さまたは異なる厚さの集束要素を形成することができる。例えば懸濁液の1回の塗布によって、幾何学的寸法に関して従来技術のテープ縛りに類似する繊維絡み合い物が形成される。これに対して、多数回の塗布と場合によっては後処理によって、従来技術の被覆物に類似し、対応する幾何学的寸法を有する集束要素が製造される。
【0018】
さらに、異なる頻度の塗布により、繊維絡み合い物の物理特性を可変に設定することができる。この場合、塗布の数が増大するにつれて、一般的には集束要素の可撓性と弾性が低下し、強度が増大する。この作用は、中身の物質ではなく混合比が異なっている異なる懸濁液を使用することにより、さらに強まる。しかし、いかなる場合でも、集束要素は0.1〜20mm、特に0.2〜5mmの範囲の厚さまたは太さまたは壁厚を有する。
【0019】
さらに、懸濁液が溶剤を含んでいると有利である。この溶剤には結合剤が溶けており、この溶剤が後処理の最中に懸濁液から取り出されるので、それによって織物状の繊維絡み合い物が形成される。有利な発展形態では、一般的に室内条件で蒸発または気化する溶剤が使用されるので、懸濁液を織物状の繊維絡み合い物に変換するための能動的な後処理は不要であり、簡単な受動的乾燥で十分である。この場合、例えば温度を高め、および/または空気流れを設定することにより、迅速な乾燥にとって有利になるように室内条件を適合させると好都合である。
【0020】
製造プロセスの詳細に関係なく、導線の集束と集束要素の製造が一部または完全自動化して、さらに作業範囲を区切ってまたは閉鎖して行われると有利である。作業範囲を区切ってまたは閉鎖することは特に、操作人に対する万一の影響を回避するためである。
【0021】
特に自動化を有利に行うためにさらに、懸濁液が導線束に吹き付けられると有利である。この場合、懸濁液が十分に高い粘稠度を有するので、懸濁液は導線束に付着する、すなわち四散や滴下することがない。
【0022】
適当な吹き付けのために、懸濁液と発泡ガスまたは発泡剤からエアゾールが製造されると有利である。それによって、懸濁液の塗布は、車体への塗料の塗布と類似するように行われる。
【0023】
エアゾールおよび/または懸濁液の有利な組成は、文献欧州特許第1910600B1号明細書に記載されている。この文献が参照されることを明記する。繊維としては、例えば木綿繊維、亜麻繊維またはガラス繊維が使用されると有利である。この場合、繊維の60%以上、好ましくは約80%が30mmよりも短い長さ、特に0.02〜10mmの長さを有する。さらに、懸濁液はほとんどの用途で2つのタイプの繊維を含んでいる。一方のタイプは一般的にポリマー繊維である。さらに、結合剤またはバインダとして、熱可塑性エラストマー−ブロック共重合体、すなわち例えばポリビニルアセタート(PVAC)またはポリビニルブチラル(PVB)が使用されると有利である。希釈剤または溶剤としては例えばアセトンメタノールまたはエチルアセタートが使用される。他のバリエーション、組成および混合比は欧州特許第1910600B1号明細書に詳しく記載されており、これに関連してこの文献の対応する開示内容が参照される。
【0024】
既に前述したように、ここで提案した方法は、集束要素の形成を適当に適合させることによって集束要素をいろいろな要求に柔軟に適合させることを可能にする。その際、適合は特に、塗布と場合によっては後処理の適切な変形によって行われる。1つのケーブルセットの場合、用途に応じて、いろいろなまたは異なるように形成された集束要素が使用される。
【0025】
懸濁液は例えば若干の場合、集束要素が結局テープ状に、例えば0.2〜1mmのテープ厚さを有するように形成されて、導線束をリング状に取り巻くように塗布される。この場合、集束要素は局所的にケーブルバインダまたはケーブルループのように作用する。この集束要素が導線束にのみ接触し、個々の導線を互いに押圧しないと有利である。他の場合、集束要素が結局テープ状に、例えば0.2〜0.5mmのテープ厚さを有するように形成されて、導線束を一区間にわたってらせん状に取り巻くように塗布される。この変形は、小数の細いまたは薄い導線が大きな区間にわたって束にまとめられるときに特に有利である。
【0026】
これに対して、太い多数の導線または導線ケーブルをまとめて互いに保持するときには、集束要素が例えば2〜10mmの被覆厚さを有する被覆物のように形成されると有利である。そのために、懸濁液の複数回の塗布が、場合によっては乾燥相または後処理と交代して行われると有利である。
【0027】
さらに、若干の状況では、集束要素が結局二股または分岐のように形成されるように、懸濁液の塗布が行われる。この二股または分岐により、導線束の少なくとも1本の導線が残りの導線から離されるかあるいはその逆に行われる。後者の場合、少なくとも1本の導線が既に形成された導線束に付け加えられる。
【0028】
方法はさらに、前述の実施形の変形を互いに組み合わせることあるいは互いに融合させることおよび従って比較的に複雑な構造体を形成することを可能にする。
【0029】
いかなる場合でも、方法の最中に、無秩序または無定形の繊維分布を有する織物状の繊維絡み合い物が製造される。織物状繊維絡み合い物が繊維分布、繊維絡み合いおよび製構造に関してフリースに似ているが、織物状の繊維絡み合い物の引き裂き強度は織られた繊維に匹敵する。これは主として、バインダと結合剤が繊維複合物を通過し、個々の繊維の
間の保持作用を強めることになる。
【0030】
織物状の繊維絡み合い物内の繊維の容積割合は、使用される懸濁液の組成に依存して、60%以上、特に75%以上になり、若干の場合80%以上になると有利である。この場合、繊維は、バインダによって部分的に被覆または網状化される場合よりも浅くバインダ内に埋められている。それによって、織物状の繊維絡み合い物の構造体から、個々の繊維を認識することができ、視覚的な現象は若干の場合綿菓子を思い出させる。
【0031】
個々の繊維の相互保持作用は一般的には、織物状繊維絡み合い物と懸濁液が塗布された表面との間の付着作用よりもはるかに大きい。従って、織物状の繊維絡み合い物は一般的に、織物状の繊維絡み合い物を損傷させずに、表面から剥がすことができる。これにより、織物状の繊維絡み合い物を例えば後で表面から剥がして、導線束に沿ってずらすことができる。
【0032】
さらに、織物状の繊維絡み合い物はほとんどの場合、可撓性だけでなく弾性でもある。若干の場合、可撓性はいわゆるゴムテープに匹敵するので、例えば必要時に後で他の導線を導線束に挿入して、織物状の繊維絡み合い物に通すことができる。織物状の繊維絡み合い物が弾性変形の範囲内で、伸張の方向における伸び率に関して5%以上、特に10%以上伸張可能であると有利である。弾性は弾性的な繊維および/または弾性的なバインダによって達成される。
【0033】
織物状の繊維絡み合い物の場合にはさらに必要時に繊維複合体を通過するバインダによって、導線束の表面への付着を生じる付着作用が得られるので、織物状の繊維絡み合い物は接着テープと異なり、通常はコーティングされていない。すなわち、特に片側に塗布した接着コーティングを備えていない。この接着コーティングは往々にして所望されるほど長寿命ではないので、数時間経過した後で作用が消える。それによって、導線束内での保持作用が消えて無くなる。この問題は織物状の繊維絡み合い物の場合には一般的に発生しない。
【0034】
織物状の繊維絡み合い物のほかに、異なるようにかつ特にテープ縛りとして形成された他の集束要素が配置されると有利である。この集束要素は特に、導線束の縦方向に繊維絡み合い物から離隔して取付けられている。必要時には、他の集束要素を繊維絡み合い物の周りに付加的に配置することができる。
【0035】
有利な実施形では、他の集束要素が導線束の負荷される範囲、特に曲げ負荷される範囲に取付けられる。この範囲は、導線束が曲げ部または分岐部を有する範囲あるいは使用状態で例えば現場での導線束の規定通りの運動によって曲げ負荷が予想される範囲であると理解される。
【0036】
次に、概略的な図に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ケーブルセットの側面図である。
図2】ケーブルセットを製造するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
すべての図において、互いに一致する部分にはそれぞれ同じ参照符号が付けてある。
【0039】
次に例示的に説明する、図1に示したケーブルセット2は、自動車のいわゆるケーブルハーネス(ワイヤハーネス)の一部であり、従って自動車内に設置される。ケーブルセット2は複数の単一導線4を備え、この導線は導線束6にまとめられている。この導線束6は分岐部8で2つの束部分10に分割されている。
【0040】
各束部分10は複数の導線4を備え、この導線は本実施の形態では絶縁被覆物12を有する単一導線芯として形成されている。若干の導線芯は撚り合わせ導体14として形成され、他の導線芯は中実ワイヤ導体16として形成されている。
【0041】
導線束6の個々の導線4と、両束部分10の個々の導線4はそれぞれ、織物状の繊維絡み合い物として形成された集束要素18によってひとまとめにされて束になっている。集束要素の一つ18aは被覆物のように形成され、それによって3mmの厚さを有する。集束要素18aによってさらに、分岐部8が形成される。この場合、両束部分10は分岐部8の範囲において集束要素18aによって離隔されている。
【0042】
両束部分10はそれぞれ集束要素18を備えている。より多い数の導線4を有する束部分10は集束要素18bを備えている。この集束要素はテープ状に形成され、束部分10の周りにらせん状に巻かれている。テープ状の集束要素18bの厚さは繊維製接着テープと同等であり、約0.5mmである。それに対して、少ない数の導線4を有する束部分10はテープ状に形成された2つの集束要素18cを備えている。この集束要素は束部分10をそれぞれケーブルクリップのようにリング状に取り巻いている。集束要素18cは約1mmの厚さを有する。
【0043】
図1にはさらに、好ましくはテープ縛り24として形成された他の集束要素が略示されている。この他の集束要素は織物状の繊維絡み合い物と比べてより大きな力を受け止めることができるように形成され、特に導線束6の負荷される範囲に配置されている。テープ縛り24が配置された範囲は例えば、規定どおりの使用の際に導線束6の曲げ応力が発生する範囲である。
【0044】
個々の導線4の集束と集束要素18の製造は、ケーブルセット2の製造範囲内で完全自動化されて行われる。第1方法ステップVS1では、溶剤と、それに溶ける結合剤20と、繊維22から懸濁液が製造される。図2に従ってその後に続く方法ステップVS2では、懸濁液と発泡剤からエアゾールが形成される。この場合、組成に応じて、同じ1つの成分が溶剤としておよび発泡剤としての働きをすることができるので、この場合最初の両方法ステップVS1、VS2は原理的には同じものである。
【0045】
次に説明する実施の形態は、欧州特許第1910600B1号明細書の第9頁の例2に記載した調剤に基づいている。ここにこの欧州特許明細書が参照される。次の説明に関して正確な調剤または組成は重要ではない。
【0046】
懸濁液またはエアゾールが供されると、他の方法ステップVS3において、集束のために設けられた導線4がロボットアームによってホルダ内に挿入される。次の方法ステップVS4では、エアゾールがまとめられた導線4に吹き付けられる。この場合、吹き付けは、付着する懸濁液が集束要素18の最終の形の基本形を既になすように行われる。すなわち、まとめられた導線4の周りにらせん状に案内されるテープ状集束要素18bについては、懸濁液も導線4にらせん状に塗布される。
【0047】
塗布の後で、方法ステップVS5において乾燥が行われる。この乾燥時に溶剤が蒸発する。それによって、懸濁液から織物状の繊維絡み合い物が形成される。織物状の繊維絡み合い物の所望な太さまたは厚さに応じて、方法ステップVS4、VS5が複数回交互に実施される。この場合、塗布および乾燥の度毎に、繊維絡み合い物の太さまたは厚さがさらに増大する。
【0048】
本発明は、前述の実施の形態に限定されない。専門家は、本発明の対象から逸脱することなく、この実施の形態から本発明の他の変形を導き出すことができる。特に、実施の形態に関連して説明した個々の特徴はすべて、本発明の対象から逸脱することなく、他の方法で互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
2 ケーブルセット
4 導線
6 導線束
8 分岐部
10 束部分
12 絶縁物
14 撚り合わせ導体
16 中実ワイヤ導体
18 集束要素
20 結合剤
22 繊維
24 テープ縛り
18a 分岐状の集束要素
18b らせん状の集束要素
18c リング状の集束要素
VS1 方法ステップ1
VS2 方法ステップ2
VS3 方法ステップ3
VS4 方法ステップ4
VS5 方法ステップ5
図1
図2