【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は本発明に従い、請求項1の特徴を有する方法によっておよび請求項10の特徴を有するケーブルセットによって解決される。有利な発展形態は従属請求項に記載されている。ケーブルセットに関連して説明した効果および有利な実施形は方法にも同様に当てはまり、その逆もまたそのとおりである。
【0010】
この場合、方法は、例えば自動車分野、航空機製造または機械製造のためのケーブルセット、特に予め組み立てられたケーブルセットを製造するために役立つ。この場合、製造の最中に、複数の単一導線が導線束にまとめられ、続いてこの導線束が集束要素を備え付けられる。この集束要素は織物状の繊維絡み合い物として形成され、この繊維絡み合い物は導線束内の導線を、導線束としてひとまとめにする。
【0011】
その際、導線は絶縁物を備えた単一の導線芯または多数の導線芯からなる導線ケーブルである。この場合、導線芯は一般的にそれぞれ絶縁物を備え、導線ケーブルの導線芯はさらに、付加的に絶縁する被覆物を備えている。導線芯として、用途に応じて、中実ワイヤ導体または撚り導体が設けられる。若干の場合、導線束内に、中実ワイヤ導体と撚り導体が含まれている。
【0012】
集束要素、ひいては織物状の繊維絡み合い物を形成するために、ケーブルセットの製造範囲内で、懸濁液が導線束に塗布され、懸濁液は結合剤とほどけた繊維を含んでいる。懸濁液は一種の「繊維織物溶液」のように作用する。この繊維織物溶液は任意に形成された表面に塗布可能であり、「繊維織物溶液」の「溶剤」を取り除くことによって、一種の繊維織物、すなわち繊維織物絡み合い物に固化または変化させられるので、形状安定性のある形成物が生じる。その際、固化は一般形には、例えば加熱または紫外線照射のような能動的な後処理によってあるいは能動的な後処理をせずに例えば乾燥相の間の受動的な乾燥によって行われる。その結果、織物状の繊維絡み合い物が懸濁液を塗布した表面に接触するので、織物状の繊維絡み合い物、ひいては集束要素の形が導線束の形状に自動的に適合する。懸濁液は一般的に、液体であり、特に繊維を含む水のような稠度の液体である。
【0013】
従って、従来の方法と異なり、テープ縛りあるいは繊維織物またはフリースを使用する場合のような、導線束の面倒な当てがいまたは巻き付けが不要である。本発明の場合には、懸濁液内に繊維がほどけて含まれている。個々の繊維は予め製作された(面状)形成物のように互いに連結されていない、すなわち特に織物、編物またはフリースを形成していない。従って、個々の繊維は形をなしていない。懸濁液を塗布し、それに続いて固化した後で初めて、繊維絡み合い物としての繊維形成物、ひいては集束要素が形成される。
【0014】
上記方法の他の利点は、懸濁液が室温で塗布される、すなわち懸濁液を温める必要がないことにある。
【0015】
さらに、懸濁液は導線束に簡単に塗布され、塗布のために型は不要である。塗布は特に、例えば塗料の塗布のために知られている、噴霧、噴射などにより吹き付ける方法で行われる。繊維絡み合い物は特に、導線束の不連続個所にのみ塗布され、導線束を完全に被覆するために役立たない。特に、互いに離隔された複数の繊維絡み合い物が導線束の長さにわたって分配されて塗布される。
【0016】
これにより、任意のあらゆる形を、織物状の繊維絡み合い物によって包囲、被覆または局所的にコーティングすることができる。従って、織物状の繊維絡み合い物を製造するための製造プロセスは比較的に簡単であり、よって例えば個々の作業プロセスステップまたは製造プロセスステップを容易に自動化することができる。さらに、織物状の繊維絡み合い物の形が簡単に適合可能であり、かつ特にいろいろな幾何および表面形状に簡単に適合可能であるので、古典的なテープ縛りだけでなく、導線の集束のために使用される波形管や被覆物も、織物状の繊維絡み合い物によって置き換えることができる。さらに、織物状の繊維絡み合い物を、容積範囲、すなわち例えば中空室に充填することができる。この場合、織物状の繊維絡み合い物は組成に応じて、封止作用を達成するため、そしてこれによって2つの室範囲を例えば互いに液密に分離するためにも適している。
【0017】
さらに、集束要素は要求に応じて、懸濁液の多数回の塗布よって、場合によっては乾燥相または後処理と交代して、あるいは異なる懸濁液の塗布と後処理の連続によって有利に製造される。同じ懸濁液の多数回の塗布によって、例えば異なる太さまたは異なる厚さの集束要素を形成することができる。例えば懸濁液の1回の塗布によって、幾何学的寸法に関して従来技術のテープ縛りに類似する繊維絡み合い物が形成される。これに対して、多数回の塗布と場合によっては後処理によって、従来技術の被覆物に類似し、対応する幾何学的寸法を有する集束要素が製造される。
【0018】
さらに、異なる頻度の塗布により、繊維絡み合い物の物理特性を可変に設定することができる。この場合、塗布の数が増大するにつれて、一般的には集束要素の可撓性と弾性が低下し、強度が増大する。この作用は、中身の物質ではなく混合比が異なっている異なる懸濁液を使用することにより、さらに強まる。しかし、いかなる場合でも、集束要素は0.1〜20mm、特に0.2〜5mmの範囲の厚さまたは太さまたは壁厚を有する。
【0019】
さらに、懸濁液が溶剤を含んでいると有利である。この溶剤には結合剤が溶けており、この溶剤が後処理の最中に懸濁液から取り出されるので、それによって織物状の繊維絡み合い物が形成される。有利な発展形態では、一般的に室内条件で蒸発または気化する溶剤が使用されるので、懸濁液を織物状の繊維絡み合い物に変換するための能動的な後処理は不要であり、簡単な受動的乾燥で十分である。この場合、例えば温度を高め、および/または空気流れを設定することにより、迅速な乾燥にとって有利になるように室内条件を適合させると好都合である。
【0020】
製造プロセスの詳細に関係なく、導線の集束と集束要素の製造が一部または完全自動化して、さらに作業範囲を区切ってまたは閉鎖して行われると有利である。作業範囲を区切ってまたは閉鎖することは特に、操作人に対する万一の影響を回避するためである。
【0021】
特に自動化を有利に行うためにさらに、懸濁液が導線束に吹き付けられると有利である。この場合、懸濁液が十分に高い粘稠度を有するので、懸濁液は導線束に付着する、すなわち四散や滴下することがない。
【0022】
適当な吹き付けのために、懸濁液と発泡ガスまたは発泡剤からエアゾールが製造されると有利である。それによって、懸濁液の塗布は、車体への塗料の塗布と類似するように行われる。
【0023】
エアゾールおよび/または懸濁液の有利な組成は、文献欧州特許第1910600B1号明細書に記載されている。この文献が参照されることを明記する。繊維としては、例えば木綿繊維、亜麻繊維またはガラス繊維が使用されると有利である。この場合、繊維の60%以上、好ましくは約80%が30mmよりも短い長さ、特に0.02〜10mmの長さを有する。さらに、懸濁液はほとんどの用途で2つのタイプの繊維を含んでいる。一方のタイプは一般的にポリマー繊維である。さらに、結合剤またはバインダとして、熱可塑性エラストマー−ブロック共重合体、すなわち例えばポリビニルアセタート(PVAC)またはポリビニルブチラル(PVB)が使用されると有利である。希釈剤または溶剤としては例えばアセトンメタノールまたはエチルアセタートが使用される。他のバリエーション、組成および混合比は欧州特許第1910600B1号明細書に詳しく記載されており、これに関連してこの文献の対応する開示内容が参照される。
【0024】
既に前述したように、ここで提案した方法は、集束要素の形成を適当に適合させることによって集束要素をいろいろな要求に柔軟に適合させることを可能にする。その際、適合は特に、塗布と場合によっては後処理の適切な変形によって行われる。1つのケーブルセットの場合、用途に応じて、いろいろなまたは異なるように形成された集束要素が使用される。
【0025】
懸濁液は例えば若干の場合、集束要素が結局テープ状に、例えば0.2〜1mmのテープ厚さを有するように形成されて、導線束をリング状に取り巻くように塗布される。この場合、集束要素は局所的にケーブルバインダまたはケーブルループのように作用する。この集束要素が導線束にのみ接触し、個々の導線を互いに押圧しないと有利である。他の場合、集束要素が結局テープ状に、例えば0.2〜0.5mmのテープ厚さを有するように形成されて、導線束を一区間にわたってらせん状に取り巻くように塗布される。この変形は、小数の細いまたは薄い導線が大きな区間にわたって束にまとめられるときに特に有利である。
【0026】
これに対して、太い多数の導線または導線ケーブルをまとめて互いに保持するときには、集束要素が例えば2〜10mmの被覆厚さを有する被覆物のように形成されると有利である。そのために、懸濁液の複数回の塗布が、場合によっては乾燥相または後処理と交代して行われると有利である。
【0027】
さらに、若干の状況では、集束要素が結局二股または分岐のように形成されるように、懸濁液の塗布が行われる。この二股または分岐により、導線束の少なくとも1本の導線が残りの導線から離されるかあるいはその逆に行われる。後者の場合、少なくとも1本の導線が既に形成された導線束に付け加えられる。
【0028】
方法はさらに、前述の実施形の変形を互いに組み合わせることあるいは互いに融合させることおよび従って比較的に複雑な構造体を形成することを可能にする。
【0029】
いかなる場合でも、方法の最中に、無秩序または無定形の繊維分布を有する織物状の繊維絡み合い物が製造される。織物状繊維絡み合い物が繊維分布、繊維絡み合いおよび製構造に関してフリースに似ているが、織物状の繊維絡み合い物の引き裂き強度は織られた繊維に匹敵する。これは主として、バインダと結合剤が繊維複合物を通過し、個々の繊維の
間の保持作用を強めることになる。
【0030】
織物状の繊維絡み合い物内の繊維の容積割合は、使用される懸濁液の組成に依存して、60%以上、特に75%以上になり、若干の場合80%以上になると有利である。この場合、繊維は、バインダによって部分的に被覆または網状化される場合よりも浅くバインダ内に埋められている。それによって、織物状の繊維絡み合い物の構造体から、個々の繊維を認識することができ、視覚的な現象は若干の場合綿菓子を思い出させる。
【0031】
個々の繊維の相互保持作用は一般的には、織物状繊維絡み合い物と懸濁液が塗布された表面との間の付着作用よりもはるかに大きい。従って、織物状の繊維絡み合い物は一般的に、織物状の繊維絡み合い物を損傷させずに、表面から剥がすことができる。これにより、織物状の繊維絡み合い物を例えば後で表面から剥がして、導線束に沿ってずらすことができる。
【0032】
さらに、織物状の繊維絡み合い物はほとんどの場合、可撓性だけでなく弾性でもある。若干の場合、可撓性はいわゆるゴムテープに匹敵するので、例えば必要時に後で他の導線を導線束に挿入して、織物状の繊維絡み合い物に通すことができる。織物状の繊維絡み合い物が弾性変形の範囲内で、伸張の方向における伸び率に関して5%以上、特に10%以上伸張可能であると有利である。弾性は弾性的な繊維および/または弾性的なバインダによって達成される。
【0033】
織物状の繊維絡み合い物の場合にはさらに必要時に繊維複合体を通過するバインダによって、導線束の表面への付着を生じる付着作用が得られるので、織物状の繊維絡み合い物は接着テープと異なり、通常はコーティングされていない。すなわち、特に片側に塗布した接着コーティングを備えていない。この接着コーティングは往々にして所望されるほど長寿命ではないので、数時間経過した後で作用が消える。それによって、導線束内での保持作用が消えて無くなる。この問題は織物状の繊維絡み合い物の場合には一般的に発生しない。
【0034】
織物状の繊維絡み合い物のほかに、異なるようにかつ特にテープ縛りとして形成された他の集束要素が配置されると有利である。この集束要素は特に、導線束の縦方向に繊維絡み合い物から離隔して取付けられている。必要時には、他の集束要素を繊維絡み合い物の周りに付加的に配置することができる。
【0035】
有利な実施形では、他の集束要素が導線束の負荷される範囲、特に曲げ負荷される範囲に取付けられる。この範囲は、導線束が曲げ部または分岐部を有する範囲あるいは使用状態で例えば現場での導線束の規定通りの運動によって曲げ負荷が予想される範囲であると理解される。
【0036】
次に、概略的な図に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。