(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374111
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】針シールドプラーキャップ組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
A61M5/32 502
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-527639(P2017-527639)
(86)(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公表番号】特表2017-535355(P2017-535355A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】US2015063176
(87)【国際公開番号】WO2016089864
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】62/086,937
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アターバリー,ウィリアム ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ハッセンプェルグ,エリック ガスティン
(72)【発明者】
【氏名】ラフィーバー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】マッドランド,スティーブン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー,クリストファー ポール
【審査官】
杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−511177(JP,A)
【文献】
特表平11−502448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00− 9/00
A61M 31/00
A61M 39/00−39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの針の周りのシールドに取り付け可能なプラー組立体であって、前記シールドは前記シリンジを保持する装置のハウジング内の開口部を通って軸方向に突出し、前記プラー組立体は、
前記シールドを軸方向に受容する内側中空部を画定する管状体を有するグリップ構成要素を備え、前記管状体は、前記管状体を第1の配置から第2の配置に強制的に移動させるスリットを画定する、対向する傾斜端部を含み、前記内側中空部は、前記第1及び第2の配置において異なる寸法を有し、前記管状体は、前記シールドに直接係合するための径方向内方突出部を少なくとも1つ設けた径方向内側面を有し、前記管状体は、第1及び第2の軸方向端部を含み、前記第1の軸方向端部は、製造時の設置中に前記第2の軸方向端部がシールドと接触しないようにハウジングに当接するように構成されており、
さらに、ユーザによって把持可能であり、空洞を画定する表面を有する本体を含むキャップを備え、前記グリップ構成要素は、製造時の設置中に前記空洞内に挿入されたときに前記キャップによって保持され、前記シールドが前記内側中空部内に配置された状態で前記グリップ構成要素が前記空洞内に保持されると、前記グリップ構成要素の少なくとも1つの径方向内方突出部は、前記キャップが前記ハウジングから移動するときに前記シールドを前記針の周りから取り外せるように前記シールドに係合し、
前記グリップ構成要素本体が、軸方向に垂直な断面において、C形状の構成を有する、前記プラー組立体。
【請求項2】
前記グリップ構成要素が一体構造を含む、請求項1に記載のプラー組立体。
【請求項3】
前記グリップ構成要素が、関節運動可能に相互接続された複数の円弧状部分から形成される、請求項2に記載のプラー組立体。
【請求項4】
前記複数の円弧状部分が3つの部分からなる、請求項3に記載のプラー組立体。
【請求項5】
前記グリップ構成要素本体の前記第2の軸方向端部が開放されている、請求項1に記載のプラーアセンブリー。
【請求項6】
シリンジの針の周りのシールドに取り付け可能なプラー組立体であって、前記シールドは前記シリンジを保持する装置のハウジング内の開口部を通って軸方向に突出し、前記プラー組立体は、
前記シールドを軸方向に受容する内側中空部を画定する管状体を有するグリップ構成要素を備え、前記管状体は、前記管状体を第1の配置から第2の配置に強制的に移動させるスリットを画定する、対向する傾斜端部を含み、前記内側中空部は、前記第1及び第2の配置において異なる寸法を有し、前記管状体は、前記シールドに直接係合するための径方向内方突出部を少なくとも1つ設けた径方向内側面を有し、前記管状体は、第1及び第2の軸方向端部を含み、前記第1の軸方向端部は、製造時の設置中に前記第2の軸方向端部がシールドと接触しないようにハウジングに当接するように構成されており、
さらに、ユーザによって把持可能であり、空洞を画定する表面を有する本体を含むキャップを備え、前記グリップ構成要素は、製造時の設置中に前記空洞内に挿入されたときに前記キャップによって保持され、前記シールドが前記内側中空部内に配置された状態で前記グリップ構成要素が前記空洞内に保持されると、前記グリップ構成要素の少なくとも1つの径方向内方突出部は、前記キャップが前記ハウジングから移動するときに前記シールドを前記針の周りから取り外せるように前記シールドに係合し、
前記少なくとも1つの径方向内方突出部が、軸方向に間隔を置いて配置された複数の歯を含み、
前記第2の軸方向端部に最も近い前記歯の第1の歯は、前記第1の軸方向端部に近い第2の歯よりも径方向内方に延在する、前記プラー組立体。
【請求項7】
前記第1の軸方向端部に最も近い前記歯の第3の歯は、前記第1の歯よりも径方向内方に延在する、請求項6に記載のプラー組立体。
【請求項8】
前記スリットは、前記軸方向にのみ延びていることを特徴とする、請求項1に記載のプラー組立体。
【請求項9】
プラー組立体を針の周りのシールドに取り付ける方法であって、前記シールドはハウジングの開口部を通って軸方向に突出し、前記方法は、
内側中空部を画定する管状体を含むグリップ構成要素を提供することと、ここで、前記管状体は、スリットを画定する対向する傾斜端部を含み、さらに前記シールドに直接係合するための径方向内方突出部を少なくとも1つ設けた径方向内側面を有し、
前記管状体が中立配置にある場合よりも前記スリットが径方向に大きく拡張される配置で、前記内側中空部内で延在する前記シールドの周りに前記管状体を載置することと、
前記管状体の弾力性により、前記管状体を自動的に前記シールドの周りで前記中立配置に戻すことと、
把持可能なキャップを前記グリップ構成要素上に載置して、前記把持可能なキャップが前記グリップ構成要素を支えるように、前記管状体を前記把持可能なキャップの空洞内に嵌合させることにより、前記キャップが前記ハウジングから移動する際に、前記少なくとも1つの径方向内方突出部は取り外しのために前記シールドに係合することができるようにすることと
を含む前記方法。
【請求項10】
前記管状体を前記シールドの周りに配置することは、前記管状体を、前記内側中空部を軸方向に貫通し、前記シールド上に最初に嵌合する端部を有するマンドレルに沿って第1の位置から、第1の位置より直径が大きい第2の位置に摺動させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記管状体が前記第2の位置にあるとき、前記管状体の第1の軸方向端部が前記ハウジングに当接する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記管状体の弾力性により、前記管状体を自動的に前記シールドの周りで前記中立配置に戻すことが、前記内側中空部の外に前記マンドレルを移動することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤注射装置に関し、さらに詳しくは、シリンジの針を保護するシールドを取り外すための組立体に関する。
【0002】
多くの自動注射装置が、装置から取り外したときに装置のシリンジの針から保護シールドを取り除くキャップ機構を有している。保護シールドは、共に操作可能に接続された内側シールドと外側シールドを含む、複数の部品を含んでいても良い。内側シールドは、比較的可撓性または弾性を有し、針の周りに無菌バリアを提供し、例えば、針が延びるシリンジハブとの間でシールを形成する。内側シールドはまた、針がシリンジの内容物と既に流体連通しているような設計の場合などには、針の先端を密封することができる。外側シールドは、比較的剛性の材料でできており、内側シールドを保護して包囲するように係合している。シリンジから外側または剛性針シールドを引くことによって内側シールドも引き離される。
【0003】
この装置のキャップ機構は、剛性針シールドを把持し、シールドを取り外し易くする機能を有する。キャップ機構は、直径が保護シールドより大きくてもよく、または保護シールドを単独で取り外す場合よりも、特定のユーザがさらに容易に把持でき、取り外せるように、取り外しを補助する機械的な利点を備えていてもよい。キャップ機構を装置から取り外し、キャップが剛性針シールドを把持していることから、保護シールドも取り外されると、使用中に装置から延長される前には装置内に収容されていることもしばしばではあるが、針は露出して注射ができるようになる。
【0004】
剛性針シールドを把持するある周知のキャップ機構は、2つの部分からなる組立体を利用したものである。第1の部分は、予め注射針に取り付けられた保護シールドの剛性針シールド部分に嵌合するように設計された管状部分を有するプラスチックカップを含む。第2の部分は、共成形または二色成形工程により得られる軟性の把持可能な周辺部を有し、より大径の剛性のプラスチック製ベースキャップを含む。プラスチックカップの管状部分の側部を貫通して形成された2つの開口部が、撓むことが可能なように弾性を有する一対の径方向に対向したグリップフィンガを画定している。各フィンガは、鋸歯状リブを有する内面と、その上に形成された傾斜を有する外面とを有する。弾性フィンガの鋸歯状リブが、協働する剛性針シールド上の戻り止めと角度的に整列するように、プラスチックカップが剛性針シールド上に載置された後、ベースキャップがプラスチックカップに取り付けられ、プラスチックカップの管状部分がベースキャップの空洞内に挿入される。この挿入の間、空洞を画定するベースキャップの内面はグリップフィンガの傾斜部と係合し、鋸歯状リブが剛性針シールドと把持接触するようにグリップフィンガを内側へ撓ませる。ベースキャップは、空洞の基部内の径方向に突出したタブがカップ管状部分の外部の環状凹部にスナップフィットされる。それにより、ベースキャップとプラスチックカップが共に固定されてユニットとして機能することができるようなる。
【0005】
剛性針シールドを取り外すための周知のキャップ組立体は、ユーザにとって便利ではあるが、欠点がないわけではない。例えば、キャップ組立体は、製作するのに手間がかかったり、または露出された針シールドの小さな部分のみを把持するのには適していない場合もある。キャップ組立体は、取り付けるのに許容できないほどの高い力を加える必要がある場合もあり、製造中の取り付け時に針が曲がってしまったり、針に既に取り付けられた保護シールドが、針の封止に悪影響を及ぼす許容できないほどのずれが起きてしまう場合もある。
【0006】
よって、従来技術のこれら及び他の欠点のうちの1つまたは複数を克服することができるプラー組立体を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
その一つの形態では、本発明は、シリンジを保持する装置のハウジング内の開口部を通って軸方向に突出する、シリンジの針の周りのシールドに取り付け可能なプラー組立体(puller assembly)を提供する。プラー組立体は、シールドを軸方向に受容する内側中空部を画定する管状体を有するグリップ構成要素を含む。管状体は、管状体を第1の配置から第2の配置に強制的に移動させられるようにするスリットを画定する対向する傾斜端部を含み、内側中空部は、第1及び第2の配置において異なる寸法を有する。管状体は、シールドに直接係合するための径方向内方突出部を少なくとも1つ設けた径方向内側面を有する。管状体は、第1及び第2の軸方向端部を含み、第1の軸方向端部は、製造時の設置中に第2の軸方向端部がシールドと接触しないように、ハウジングに当接するように構成されている。プラー組立体は、ユーザによって把持可能であり、空洞を画定する表面を有する本体を含むキャップも含む。グリップ構成要素は、製造時の設置中に空洞内に挿入されたときにキャップによって保持される。シールドを内側中空部内に配置した状態でグリップ構成要素が空洞内に保持されると、グリップ構成要素の少なくとも1つの径方向内方突出部は、キャップがハウジングから移動するとシールドを針の周りから取り外せるように、シールドと係合する。
【0008】
また別の形態では、本発明は、プラー組立体を針の周りの、ハウジングの開口部を通って軸方向に突出するシールドに取り付ける方法を提供する。この方法は、内側中空部を画定するとともに、スリットを画定する対向する傾斜端部を含み、さらにシールドに直接係合するための径方向内方突出部を少なくとも1つ設けた径方向内側面を有する管状体を含む、グリップ構成要素を提供することと、管状体が中立配置にある場合よりもスリットが径方向に大きく拡張される配置で、内側中空部内で延在するシールドの周りに管状体を載置することと、管状体の弾力性により、管状体を自動的にシールドの周りの中立配置に戻すことと、把持可能なキャップをグリップ構成要素上に載置して、把持可能なキャップがグリップ構成要素をバックアップするように、管状体を把持可能なキャップの空洞内に嵌合させることにより、キャップがハウジングから移動する際に、少なくとも1つの径方向内方突出部を取り外しのためにシールドに係合することができるようにすることと、を含む。
【0009】
本発明の1つの利点は、針シールドを把持のために提示できる軸方向の公差の範囲内で機能することができるプラー組立体を提供できることである。
【0010】
本発明の別の利点は、許容できないほどの大きな力を加える必要がなく、針の周りのシールに悪影響を与えたりすることなく、針シールドに取り付けることができるプラー組立体を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上記の、そして他の利点と目的、及びそれらを達成するための方法は、下記の本発明の実施形態の説明をそれに伴う図面とともに参照することにより、さらに明確となり、発明自体をよりよく理解できるようになる。
【
図1】本発明の針シールドプラー組立体の第1の実施形態を備えた自動注射装置の正面図である。
【
図2】
図1の装置の、プラー組立体をさらに露呈した部分縦断面図である。
【
図3】
図2のプラー組立体の、中立状態にあるグリップ構成要素のみの正面図である。
【
図6】
図3のグリップ構成要素の上部後方斜視図である。
【
図7】
図3のグリップ構成要素の底部斜視図である。
【
図9】
図8の線9−9に沿ったグリップ構成要素の縦断面図である。
【
図10】
図2のプラー組立体のキャップのみの上面斜視図である。
【
図14】
図13の線14−14に沿ったキャップの縦断面図である。
【
図15】
図13の線15−15に沿ったキャップの縦断面の部分図である。
【
図16】プラー組立体を自動注射装置の剛性針シールドに組み付ける工程の斜視図である。
【
図17】
図16と同様の斜視図であって、その後の組み立て工程を示す図である。
【
図18】
図17と同様の斜視図であって、さらにその後の組み立て工程を示す図である。
【
図19】
図18と同様の斜視図であって、組み立てが完了した状態を示す図である。
【0012】
対応する参照文字は複数の図面に亘って対応する部分を示す。図面は本発明の実施形態を示すが、本発明をよりよく表し、説明するため、これら図面は必ずしも縮尺どおりではなく、一部の図面では機能によっては強調表示や、省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2において、全体が符号20で示される本発明のプラー組立体の第1の実施形態が、全体が200で示された自動注射装置に取り付けられた状態で示されている。プラー組立体20は、全体が符号25で示された内側部品またはグリップ構成要素と、全体が符号30で示された外側部品またはキャップとから形成される。プラー組立体20は、針シールドを把持するための手段として機能し、装置200を使用の際にその準備のため、ユーザが装置200のシリンジの針230を保護して取り囲む針シールドを便利に取り外すことができる。装置200は、本発明の一部を構成するものではなく、例えば、国際公開番号WO2014/062488に開示されているような自動注射装置であってもよく、その全体の開示は参照により本明細書に援用される。プラー組立体20は、自動ではない注射装置と共に使用することもできる。
【0014】
図3〜
図9を参照すると、グリップ構成要素25は、キャップ30から分離され、かつ針シールドを把持するためにキャップ30と共に使用される前の中立状態で示されている。グリップ構成要素25は、ポリオキシメチレンのような耐久性のある材料から形成された一体成形構造を有する。グリップ構成要素25は、内側中空部34を画定する管状体32を有する。
図8に示すように、管状体32は、ほぼ円筒形の外周35を有する。この周辺部は、管状体32が嵌合するキャップ30内の空洞と相補的に構成された、異なる形状とすることもできる。成形目的のために、外周35は、
図3において遠位に向かってまたは下方に向かって先細になっている。
【0015】
管状体32には、管状体32の、対向する傾斜端部38及び39によって画定されるスリットまたはスプリット37が設けられている。スリット37により、管状体32を操作して、設置中に中空部34のサイズを変更できるようになる。スリット37は、管状体32の第1の軸方向端部42から第2の対向する軸方向端部43まで連続的に延びている。スリット37は、直線状であり、端部42から端部43まで軸方向にのみ延在するものとして示されている。スリット37は、他の形状または角度でもよい。スリット37のために、管状体32は、概して、軸方向に垂直な断面においてC字形の形状を有する。
【0016】
管状体32は、複数の剛性の弧状部を含む。3つの弧状部44、45及び46を含む管状体32が示されているが、異なる数の弧状部が採用されてもよい。管状体部分45及び46は互いに鏡像関係にある。管状体32のヒンジ領域49及び50は、管状体部分45及び46と管状体部分44の対向する傾斜端部を関節動作可能に相互接続する。管状体部分44〜46よりも径方向の厚さが薄く形成されたヒンジ領域49及び50は、外力がない状態の管状体のC字形状をしっかりと維持するが、製造過程ならびにグリップ構成要素25の操作上の設置を容易にする管状体上の曲げまたはヒンジ点を提供する。
【0017】
管状体32は、端部42に軸方向に面した略平坦な表面52を有する。表面52は、弧状部44、45及び46それぞれの近位面54、56及び58によって形成され、表面54の切欠き59は成形目的のためのものである。表面52は、グリップ構成要素25が、針シールドが貫通する装置ハウジングに係合するための支持面を提供する。管状体32は、弧状部分44、45及び46それぞれの遠位面62、64及び66によって形成された端部43に軸方向に面する、略平坦な表面60を有する。
【0018】
図8に示すように、管状体部分45及び46は、他の外周は湾曲しているが、管状体部分44とのヒンジ連結部49及び50に周方向で近接した位置において、平坦部70、72を有する。平坦部70、72は、金型の分割線に亘って延び、バリがグリップ構成要素25のキャップ30との嵌合を損なわないようにする。
【0019】
管状体部分44、45及び46の各々は、その外側径方向周囲に沿った溝75と、溝75に通じる傾斜した遠位端76とを含む。溝75は、キャップ30のタング面150に嵌合するように79で角度が付いている。
【0020】
内側中空部34は、管状体32の軸方向全長を、管状体軸方向端部42から管状体軸方向端部43まで延在する。中空部34は、全体的に円筒形の形状を有するように示されているが、確実に把持できる限り、その形状は、グリップ構成要素25が係合しようとするシールドの形状にあわせて異なってもよい。管状体32の、表面52によってリング状となる端部42の中空部34への開口部80は、シールドの軸方向への挿入を可能にする。管状体32の中空部34への開口82は、端部43に設けられている。別の実施形態では、管状体32がその遠位端で開放されている代わりに、また、スリット37及びヒンジ領域49及び50によって提供される可撓性がなくならない限り、開口82を小さくするまたは排除することができ、その場合、中空部34は本質的に盲穴として構成するなどして、中空部34を部分的に、または完全に閉鎖してもよい。このような別の実施形態では、中空部をそのように閉鎖する管状体の領域は、好ましくは、剛性シールドが中に保持されたときに剛性シールドから軸方向に離間される。
【0021】
管状体32の内周は、中空部34内に嵌合する針シールドと係合するように構成される。まず、
図9に示すように、管状体部分44の内面100は、円周方向に延びる一連の軸方向に間隔を置いて配置された径方向内方を向いた突起または歯を有する。切欠き59の影響を受けない内面及び管状体部分44に設けられた歯は、管状体部分45及び46上にも存在し、同様に参照される。図示された歯の全てが必要なわけではなく、確実な係合を保証するように構成されていれば、針シールドを係合するために使用される歯は1つだけでよい。
【0022】
管状体部分44〜46のそれぞれの歯は、単一の歯102を含む近位列と、単一の歯106を含む遠位列と、途切れた歯103、104、105を含むそれらの間に軸方向に等しく間隔を置いた3つの列とを含む。歯103、104、105の角度方向の中断部111により、成形が容易になる。なぜなら、グリップ構成要素を形成するために使用される金型のコアは、中断部111を形成するランドを有するからである。このランドは、径方向に突出し、成形部品25が近位方向、すなわち歯102と歯106との相対的な方向に軸方向に移動して金型から剥がされる際に、管状体部分44〜46のそれぞれの遠位歯106がその上に乗って移動する面を提供する。
【0023】
各歯102〜106は、角度が付いた近位面と、軸方向を横断して配向された平面の遠位面とを含む。それらのそれぞれの遠位面から考えられる角度が付いた近位面の角度は、歯102が最も急であり、歯103〜105の勾配はより小さくて等しく、歯106の傾斜はさらに小さく、針シールドのテーパ218の角度にほぼ一致する。また、角度が付いた近位面の角度により、小さな軸方向形状の内側部分または先端を有する各歯の先端が、以下に説明する剛性シールド210の円板部220の径方向の周辺に係合する可能性を低減することもできる。また、この角度付けは、円板部220が直近の歯によって係合されたときに円板部220を収容する。それらのそれぞれの遠位面から測定した適切な角度は、歯102の場合は60度、歯103〜105のそれぞれの場合は55度、歯106の場合は50度である。最も傾斜が緩い歯106の近位面は、より厚く、より丈夫な歯の内側部分を提供するために使用される。図示の実施形態では、ヒンジ領域49及び50には歯がない。
【0024】
歯102〜106の各列の間の軸方向の間隔110と、歯の近位面の角度付けは、剛性シールド210の円板部220を収容する。歯の形状及び軸方向の間隔は、円板部220が歯の列の間に嵌合するのに十分な歯の強度及び空間を提供しながら、歯の列の数を最大にするように設計される。公称1ミリメートルの厚さのディスク部分の場合、隣接する歯102−105の下面の間の歯のピッチは約1.4ミリメートル、歯105と106の下面の間の歯のピッチは約1.5ミリメートルが適切である。軸方向に離間した歯102−106を設けることにより、グリップ構成要素25が組立後に針シールドがハウジングから軸方向にどれだけ突出するかが装置ごとに変動する可能性がある、装置製造時の許容誤差を考慮することが可能になる。例えば、歯102は、装置から、誤差を考慮して、最小限軸方向に延在する針シールドの円板部220と係合することができる。あるいは、他の極端な例では、歯106は、装置から公差内で最大限に軸方向に延びる針シールド円板部220と係合することができる。
【0025】
管状体32上の歯102は、歯103〜106の先端よりも中空部34内の径方向さらに内側にある先端113まで突き出ている。また、歯102は、歯103〜105の対応する先端部よりも先端113で軸方向に厚く、より強固なまたはより強い内縁を形成する。このさらに内部へ突出したより丈夫な設計は、使用中に、円板部220が、前にその下に位置していたシールドを把持すべきだった別の歯列の内側先端を滑って通過してしまった場合に、針シールド係合のバックアップとして作用できる能力をチップ113に与えることである。管状体32上の歯106は、管状体面100から歯103〜105よりも径方向内方に突出し、軸方向に歯103〜105の先端よりも厚く、歯102の先端とほぼ同じ厚さの先端115を含み、製造中の、離型中に先端115が金型コアに沿って摺動するときにかかる力により良好に耐えることができる丈夫な歯を形成する。中断部111と角度的に整列した歯106の部分は、歯106の残りの部分よりもさらに径方向内側に延びているので、製造中の型からの取り外しが容易になる。
【0026】
図10〜15にさらにプラー組立体キャップ30を示す。キャップ30は、中央本体部125と把持周辺部130とを有する二色成形品から形成される。本体部125は、ポリカーボネートなどの剛性材料で形成される。周辺部130は、Versaflex(商標)のような熱可塑性エラストマーなどの、より柔軟な材料で本体部125上に成形され、把持し易くするローレット132と、装置から取り外す際にどのように捻ればよいかを示す方向の矢印134を含む。
【0027】
本体部125は、面取りされた導入面144を有する概ね円筒形の内部表面領域142によって画定される中央空洞140を有するカップ部141を含む。リブ143及び145の組は、カップ部141を支持する。表面領域142は、グリップ構成要素25の上に置かれたときに、管状体32が拡張しないように管状体32を径方向に支える大きさ及び形状で、グリップ構成要素25の周りにぴったり嵌まるように設計される。このように支えられたとき、スリット37は、意に反して針シールドがグリップ構成要素25から滑り落ちるほど拡開することができない。カップ部141の基部は、ベースフランジ147によって形成されている。ベースフランジ147は、成形目的のために、空洞140内へ突出する中央凸部149を有する。
【0028】
3つの等角度間隔を置いて配置されたタング148が、空洞140内でベースフランジ147と離間した関係で開口151の上に内方に突出する。タング148の傾斜した近位面150は、キャップ30をグリップ構成要素25に接続する間に、タング148の溝75への挿入を補助する。別の実施形態ではキャップ30のグリップ構成要素25への接続は、摩擦嵌めや接着剤などの別の方法で達成することができる。
【0029】
空洞140の周りに等角度間隔で配置された円弧状の3つのカム165は、本体部125から上方に突出している。カム165は、
図2に示す装置のハウジングのベースプレート170に設けられた弧状スロット171内に嵌合する。各カム165に設けられた戻り止め167は、ベースプレート170と係合して本体部125をベースプレートと解放可能に接続し、引き抜きが所望されるまでプラー組立体20を装置200に保持するのを補助する。ユーザがプラー組立体20を装置200の残りの部分に対して矢印134の方向に回転させると、カム165がベースプレート170とカム係合し、プラー組立体20が装置の残りの部分から離れる方向に移動して、戻り止め167のベースプレート170との接続に打ち勝って、プラー組立体が取り外しやすくなる。プラー組立体20の装置200からの取り外しは、プラー組立体を回転させることなく、ユーザが軸方向に引っ張るだけで行うこともできる。
【0030】
プラー組立体20の構造は、製造業者による装置への組み立てに関する以下の説明をみれば、さらに理解されるであろう。
図16には、ベースプレート170を越えて突出して示された、装置の剛性針シールド210へプラー組立体20を取り付けるために準備された注射装置200が示されている。プラー組立体の1つ以上の内歯が適切な把持係合を達成する限り、プラー組立体25は様々な形状の針シールドと係合することができるので、図示の針シールドの構成は代表的なものであり、限定することを意図するものではない。
【0031】
剛性針シールド210は、
図2にさらに示されるように、弾性内側シールド216が見える周囲から間隔を置いた長手方向のスロット214を備えた概ね円筒形の領域212を有する。突出領域212の先端は218で先細り形状になっており、突出領域212と径方向に同一の広がりを有する円板部220と一体である。円板部220の先端側外縁部222は丸みを帯びている。内側シールド216は、装置200内のシリンジ232の針230の端部を封止する。剛性針シールド210及び内側シールド216は、217で相互接続されているので、それらが針230の端部の周りに共に設けた保護シールドは、一体として取り外し可能である。
【0032】
プラー組立体20の剛性針シールド210への組み立ては、その中立状態のグリップ構成要素25を操作して、
図16に示すように剛性針シールド210の上に位置するテーパ付きマンドレルまたは組立工具260の軸方向の上方に位置させることから始まる。装置200に対するグリップ構成要素25の回転方向は特に指定されない。この中立状態では、グリップ構成要素25は、内側中空部34が、組立が完了したときに最終的にキャップ30内に固定されるときと同じ大きさになる構成を有する。
【0033】
グリップ構成要素25は、次に、マンドレル260の先端部262が開口部80を通って中空部34に挿入され、マンドレル260の中空部の底部先端部264が針シールド210に嵌合するように操作される。グリップ構成要素25は、その後、支持面52がハウジングベースプレート170に当接するまで、マンドレル260の長さ方向に強制的に摺動される。マンドレル260は、先端部262から先端部264まで延びるにしたがって外径が大きくなるので、グリップ構成要素25のこの摺動により、管状体32が開き、スリット37のサイズまたは角度スパンが管状体構造の弾力性に抗して増加し、グリップ構成要素25は、
図17に示される拡張された構成を有し、内側中空部34は、中立状態にあるときよりも大きなサイズとなっている。この時点では、部品は
図17に示すように配置される。
【0034】
グリップ構成要素25がハウジングベースプレート170に抗して保持されている間、そして、マンドレル260は軸方向に引っ張られて針シールド210の周りから取り外される。マンドレル260が取り外された状態で、管状体32の固有の弾力性により、グリップ構成要素25は針シールド210の周りの中立状態に向かって自動的に戻る。針シールドの円板部220がベースプレート170から離間する距離がたまたま、円板部220が歯列102と歯列103との間に軸方向に配置されるような距離に来た場合、グリップ構成要素25は完全に中立状態に戻り、歯102の列の角度が付いた近位面はテーパ218内に入れ子状となる。そうでない場合、グリップ構成要素25は完全に中立状態に戻らず、むしろグリップ構成要素25の弾性によって針シールド210の径方向の外周と圧縮接触するように歯102の列が押されるまで戻る。
【0035】
そして、キャップ30が剛性針シールド210全体を包囲するグリップ構成要素25の軸方向上方の位置に移動すると、その時点では部品は
図18に示すような配置となり、その後、キャップ30は、グリップ構成要素25がキャップ30の空洞140内に挿入されるように矢印270で示される下方に移動する。
【0036】
この挿入の間、キャップ30は、グリップ構成要素25を強制的に元の形状に戻すか、または空洞140が僅かに膨張する場合には、元の形状に近い状態に戻す。このように、グリップ構成要素25を強制的に戻している間、グリップ構成要素及び針シールドの変形、及び/またはキャップ30及びグリップ構成要素25の小さな相対的軸方向移動が生じる。具体的には、歯と剛性針シールド210の既に互いに接触している部分、または強制復帰中に互いに接触する部分は、わずかに変形して、より柔らかい材料で形成されているかのようにより変形する傾向を有する剛性針シールドで、より堅い把持を形成する。歯の角度が付いた近位面によって促進される小さな軸方向シフトが発生して、剛性針シールドの円板部220を歯列間に嵌合させることもあり得る。このわずかな軸方向シフトは、シリンジ232全体が装置20内で移動してしまうような部品間の軸方向隙間や、変形を許容する内部針シールドなどの部品の仕様準拠性によるもののように、針シールに著しく影響するものではない。
【0037】
キャップが管状体部分44〜46の溝75にキャップのタング148がスナップフィットされて停止するまで、挿入が続く。スナップフィットにより、キャップ30とグリップ構成要素25が共に係止され、シールド除去のために一体として機能できるようになる。スナップフィットは、開口部151の助けによるキャップ30の弾性変形、及び/またはグリップ構成要素25及びその中の針シールド210の締め付けによって起こり得る。
図19に示すように、グリップ構成要素25及びキャップ30がそのようにして固定されると、キャップ30は、グリップ構成要素25の径方向の拡張を制限する。装置の針から、使用のために保護シールドが取り外されると、プラー組立体20は装置200から単純に取り外される。そして、歯列102〜106の1つが円板部220に係合しているため、または、歯が剛性針シールドに食い込むことにより、把持された剛性針シールド210及び剛性針シールドが保持する内側シールド216は、針230上から同時に取り外される。
【0038】
これまで、本発明を好ましい設計を有すると図示、説明してきたが、本発明は、本開示の精神と範囲にもとることなく変更が可能である。例えば、弾性内側シールドを含む剛性針シールドを把持するために使用されている場合が示されているが、動作条件が許せば、プラー組立体は弾性シールドに直接係合してもよい。よって、本出願は、その一般原理を利用して、本発明のいかなる変更、使用、または適応も含まれるものとする。さらに、本出願は、本発明が関わる従来の技術において周知の、または慣習的な実施における本開示からの逸脱も含むことを意図している。