【実施例】
【0036】
(例1)
表4からのケース1の複合膜を、アルミニウムフレームで引っ張りながら、カーボンナノチューブ織布をポリマー溶液中に72時間ディップコーティングすることにより調製した。72時間沈めた後、複合材料を溶液から引き出し、複合体の乾燥を予防するためにFC−770溶媒によって飽和した雰囲気中に保持し、過剰な溶液は、濡れた複合体の表面から流れ出るままにしておいた。次いで複合体は、シワを除去するのに十分な張力の下で、周囲条件下で乾燥するようにした。
【0037】
次いで、乾燥された複合膜を、引張強度測定、透過性(permeability)及び透過能(permeance)試験、並びに走査型電子顕微鏡法のために、縦1インチ横2インチの試料にレーザー切断した。下記の表5は、押出、溶液キャスティング、溶融加圧、及び実験室作業台でのキャスティングを用いてTeflon(登録商標)AF−2400から形成された純なポリマーフィルムと比較した、複合膜の試験結果を記載している。
【表5】
【0038】
溶液キャスティングされたデータ及び溶融加圧されたデータは、文献中に見られるが、押出フィルムは、BioGeneral,Inc.に由来した。
【0039】
レーザー切断された複合膜のそれぞれは、ほぼ0.1mgまで秤量し、厚さは、ほぼマイクロメートルまで測定した。
【0040】
「低減されたフィルムデータ」を測定するために、カーボンナノチューブ織布の重量を、合計複合体重量から差し引いて、複合構造内部に残留しているポリマーの量を測定した。ポリマーの重量は、1cm
3当たり1.67グラムのポリマーのファクターを用いて、体積に対して重量を密度補正することにより、等価なフィルム厚さに変換した。次いで、等価なフィルム厚さを、複合膜の体積を長さ及び幅で除算することにより測定した。
【0041】
複合体は、純なポリマーよりも大きな引張強度を示し、これは「混合則(Rule of Mixtures)」の下で予想されるものより劇的に大きい。出願人は、ポリマーとカーボンナノチューブとの間での未解明の相互作用が、結果の表において実証された予想外の強化特性の原因であると考えている。
【0042】
複合体の断面画像が
図2に図示されており、約4マイクロメートルの深さまで空気を包含している、区域「A」の非対照的に形成された膜を示す。区域「B」は、約15マイクロメートルの厚さで、複合体の大部分であり、区域「C」は、断面の焦点が外れた内側縁部である。
【0043】
複合体の大部分にわたってポリマーの分布をさらに検査するために、元素分析を実施してフッ素の濃度を計測した。フッ素は、ポリマー及び溶媒のみから得られるが、溶媒は複合体の後乾燥においてほとんど残留しないことが予想された。元素分析結果は下記の表に記載されており、ここで、「層1」は、イオンミリング用の試料を調製するために使用された、エポキシポッティング化合物である:
【表6】
【0044】
この例1の複合体は、カーボンナノチューブ基布(base carbon nanotube fabric)、又は純な(neat)フィルムフォーマットにおけるポリマーのいずれよりも驚異的に高い引張強度を示す。さらに、複合膜の透過性はまた、Nielsenのモデルの下で予想されることとは著しく異なり、驚異的なことに、カーボンナノチューブ織布により妨害されない。
【0045】
(例2)
表4のケース2において記述された複合膜は、カーボンナノチューブ基布を溶液中に72時間浸漬することにより調製した。浸漬後、複合体は、ポリマー溶液の存在下のままで加圧し、続いて、ガラス表面上に置いた。過剰なポリマー溶液は、ゴム雑巾を用いて複合体から除去し、一方で、複合体表面を圧縮して、ガラスに接した複合体の真下のポリマー溶液が最小化されること、及び、ガラス表面と複合膜との間に回復された気泡を除去することを確実にした。次いで複合膜を周囲温度において乾燥し、続いて、60℃において4時間オーブンで乾燥した。
【0046】
下記の表は、複合膜に関する強度、透過性(permeability)、及び透過能(permeance)の結果を記載する:
【表7】
【0047】
複合膜の透過性は、本例に用いられた物のとき、Teflon(登録商標)AF2400フィルムに関して表5において記述された、溶液キャスティングされたフィルムの透過性に綿密に整合する。この事例において、複合膜中に残留しているポリマーの重量は、9マイクロメートルの純なポリマーフィルム厚さに相当する。
【0048】
複合膜のイオンミリングされた部分は、電子顕微鏡法下でさらに検査した。この例に従った含浸技術は、O
2/N
2選択性の点でキャスティングされたフィルムに綿密に整合するが、それでもより強い。この複合膜の電子顕微鏡法の画像は、
図3に示されている。
図3に図示された層の元素分析は、下記の表に記載されている:
【表8】
【0049】
元素分析は、複合膜の厚さの全体にわたったポリマーの分布を示しているが、この例2におけるポリマー濃度は、例1の複合膜と比較して、複合膜の厚さの全体にわたってより高いように見える。上昇したポリマー濃度は、この例2で記述された製作技術における、複合膜に適用された機械的な力によると考えられる。
【0050】
(例3)
表4のケース3に従った複合膜は、例2の手順を用いて調製した。複合膜の引張強度は、表3の溶液5からキャスティングされた膜と比較した:
【表9】
【0051】
(例4)
表4のケース4に従った複合膜を、例2に記載された手順を用いて調製し、表3、タイプ5の溶液のポリマーキャスティングされたフィルムと比較した。複合膜の透過試験は、利用されたポリマーの極めて低い透過性のため、低い選択性を示した。
【表10】
【0052】
「溶液キャスティングされた」純なポリマーフィルムからのデータは、文献から採られた。
【0053】
(例5)
表4のケース5に従った複合膜を、例2に記載された手順を用いて調製した。複合膜は、乾いた状態と水飽和した状態の両方において強度について試験し、純なポリマーのフィルムと比較した。
【表11】
【0054】
この例において利用されたポリマーは、それを横切ってイオン性種が移動することを可能にするイオン交換膜中に一般的に使用される、スルホン化テトラフルオロエチレンを含む。したがって、実施例の複合膜は、実質的にアニオン及び電子を排除して、それを横切るカチオンの輸送を可能にし得る。さらに、このポリマーはイオン伝導性膜中に一般的に使用されるが、このようなポリマーから形成されたフィルムはまた、一般的に、二酸化炭素(CO
2)に高度に選択的であり、それにより、炭素隔離用途の良好な候補材料になっている。しかしながら、スルホン化テトラフルオロエチレンポリマーのスルホン酸領域は、二酸化炭素が、溶解したカルボネート塩基、CO
3−2として輸送され得るように水和されなければならないため、乾いた複合膜では、所望のガス透過性又は選択性を発揮しないと考えられる。次いで、複合膜中のポリマーのスルホン酸部分は、バリアを横切ってイオン性種を運搬し得る。
【0055】
(例6)
例5の複合膜のイオン伝導性をさらに増強するために、表1、ケース4のカーボンナノチューブ織布を、100mL試薬グレードH
2SO
4を有する密閉フラスコ中で化学的に改質し、カバーしたままで硫酸の沸点に加熱した。次いで温度を約275℃に低下し、カーボンナノチューブ織布は、硫酸中で4時間反応させた。次いで混合物は、室温まで冷却され、その後、室温に72時間維持した。改質されたカーボンナノチューブ織布を硫酸から除去し、洗浄水がpH>5を示すまで脱イオン水ですすぎ洗いした。
【0056】
改質されたカーボンナノチューブ織布の目視検査により、この織布が水により容易に湿潤されることが示された。改質されたカーボンナノチューブ織布を、60℃において4時間オーブンで乾燥した。次いで、改質されたカーボンナノチューブ織布を、例2の手順に従ったポリマー溶液7によって含浸した。
【0057】
複合膜を、濡れた状態と乾いた状態の両方で強度について試験した:
【表12】
【0058】
複合膜はまた、濡れたペーパータオルを濡れた複合膜の上及び下の空間に置いて、試験中に湿った状態を維持しながら、透過性(permeability)についても試験した。
【表13】
【0059】
(例7)
複合膜を、5g/m
2のカーボンナノチューブ不織布(ケース4、表1)及びテフロンAF(登録商標)2400ドーパントから調製した。スチールフレームに取り付けるため、カーボンナノチューブシートを6インチ×6インチ角にレーザー切断した。ドーパント溶液を、ミネソタ州セントポールの3M社のNovec(登録商標)7500溶媒中の3重量%のTeflon AF(登録商標)2400ポリマーとして調製した。3kgのドーパント溶液を浸漬タンク内に配置し、次いでこれを水超音波処理装置内に配置した。この構成では、超音波変換器314によって放出された超音波エネルギーが、水超音波処理タンク内の水媒体から浸漬タンクを介してドーパント溶液に伝達されるように、浸漬タンクを水音波処理タンク内に配置した。超音波変換器は、400W及び30kHzの周波数で放出するフィッシャーソニッククリーナであった。
【0060】
水超音波処理タンクを加熱して、ドーパント溶液を所望の含浸温度、典型的には60〜90℃の範囲に温めてもよい。これを適用するため、ドーパント溶液を85℃に温めて、所望の粘度レベルのドーパント溶液を得た。
【0061】
ドーパント溶液が温度設定点に温められたとき、超音波変換器からの超音波処理を開始した。次に、フレーム付きカーボンナノチューブ織布を、浸漬タンク内のドーパント溶液に、60分間浸漬した(典型的な浸漬時間は30〜120分の範囲である)。次いで、超音波処理を停止し、浸漬タンク内に残っているドーパント溶液からフレーム付き膜を取り出し、周囲温度で乾燥した。
【0062】
ドーパント溶液のカーボンナノチューブ不織布への超音波処理含浸によって生成された例示的な複合膜の断面が、
図6に示されており、炭素、酸素及びフッ素の相対的な元素組成を決定するためにスペクトル分析が実施された複数の位置を特定している。複合膜断面内のスペクトル分析位置におけるフッ素及び酸素の存在は、フルオロポリマードーパントの存在を示している。スペクトル分析結果を
図7及び
図8に示し、複合膜の断面全体にわたってフッ素及び酸素が強く存在することを示している。これは、織布の断面を通る実質的に完全なドーパントの浸透が超音波処理技術によって達成されたという事実を証明している。
図7に示すチャートは、内部標準化された分散エネルギーX線による分析を示し、複合膜の厚さにわたる炭素、フッ素及び酸素の分散を示す。酸素、フッ素、及び炭素の各濃度について濃度を数値1に正規化することにより、それら個々の応答のバイアスが、炭素のそれに対して個別に除去される。
図8のチャートは、各スペクトル分析位置での炭素、フッ素、及び酸素のそれぞれの相対的な重量パーセントの寄与を示す。
【0063】
ASTM D882−12によって試験された複合膜のヤング率を、カーボンナノチューブ不織布のみと比較した。データは
図9に示され、複合膜のヤング率値が少なくとも約4GPaであることを証明している。これは、0.5GPaで「純粋」と同定されたむき出しの(bare)Nanocompの5g/m
2密度のカーボンナノチューブ不織布のヤング率、あるいは、1.7GPaで複合膜試料の低減された膜厚と実質的に等しい厚さを有する純なTeflon AF(登録商標)2400のヤング率値よりも実質的に大きい。したがって、本発明の複合膜は、混合則(Rule of Mixtures)」の下で、それぞれの成分の予測ヤング率をはるかに超えている。
【0064】
用途
本発明の複合膜の例示的用途は、気体/気体、気体/液体、及び/又は液体/液体分離におけるものである。一実施形態において、標的気体を液体から分離するためのシステム110は、チャンバ114を画定しているハウジング112、並びにチャンバ114を透過物側118及び保持物側120に隔てている複合膜116を備える。ハウジング112は、チャンバ114の保持物側120へ開口する入口122及び出口124を備える。ハウジング112は、チャンバ114の透過物側118へ開口するガスポート126をさらに備えることができる。システム110は、ガスポート126を介してチャンバ114の透過物側118を空にするためのポンプ128を備えることができ、ポンプ128は、例えばパイプ130を介してガスポート126に流体接続されている。
【0065】
標的気体を含有する液状流体は、入口122を介してパイプ132を経由して、チャンバ114の保持物側120に送達することができる。本明細書において使用される用語「パイプ」は、限定的であることは意図されておらず、所期の目的地への流体の運送を可能にする適切なサイズ、構成、及び材料の任意の運送部材を含み得ることが理解されるべきである。
【0066】
複合膜116は、標的気体を液体から保持物側120において分離することができるように適切に構成することができ、好ましくは、標的気体に対して少なくとも0.1気体透過単位(gas permeance units)(GPU)を示す、非多孔質透過性バリアを形成することができる。当技術分野において周知なように、保持物側120における液体からの標的気体の分離は、チャンバ114の透過物側118における条件により駆動することができる。したがって、チャンバ114の透過物側118は、チャンバ114の保持物側120における液状流体中の標的気体の第2の分圧より小さい標的気体の第1の分圧を発揮するように調整され得る。分圧に関するヘンリーの法則及び拡散に関するフィックの法則に従って、標的気体が、非多孔質複合フィルム116により画定されているバリアを横切って駆動され得る。ポンプ128は、標的気体の第1の分圧が保持物側120における液状流体中の標的気体の対応分圧より小さくなる程度まで、透過物側118を空にすること等により、チャンバ114の透過物側118を調整するように運転され得る。このようにして、透過物側118中に透過して分離された標的気体は、チャンバ114からガスポート126を介して除去することができる。
【0067】
チャンバ114の透過物側118は、その上又は代わりに、スイープ流体に透過物側118を通過させることにより適切に調整することができ、ここで、スイープ流体内部の標的気体分圧は、複合膜116を介した透過物側118への標的気体の透過のための駆動力を発生させるように、保持物側120における液状流体中の対応標的気体分圧より小さい。このようなスイープ流体は、ハウジング112中のポートを介して透過物側118に導入することができる。
【0068】
上記の例示的システムは、本発明で検討されている分離の構造及び方法について限定的であることは意図されていない。気体/気体、気体/液体、及び液体/液体膜分離システムは、当技術分野において周知であり、複合膜を用いる独特の本発明のシステム及び方法に適用可能であると考えられる。
【0069】
ある実施形態では、複合膜216は、複合膜216により画定されているバリアの反対側の面上において、イオン性種を第1の流体から第2の流体に輸送することができる、アイオノマーを含む。第1の流体と第2の流体との間のバリアを横切ってイオン性種を輸送するためのシステム210は、チャンバ214を画定しているハウジング212と、バリアを画定しており且つチャンバ214を第1の側218及び第2の側220に隔てている複合膜216とを備える。複合膜216は、好ましくは、混在したカーボンナノチューブの不織アレイを含む織布と、該織布に組み込まれたドーパントを含み、非多孔質透過性複合体を形成する。ある実施形態では、ドーパントは、実質的にアニオン及び電子を排除してバリアを横切ってカチオンを輸送可能にするアイオノマーである。このようなイオン交換装置は、駆動力をチャンバ214に適用することにより運転することができ、この駆動力は、複合膜216により画定されているバリアを横切ってイオン性種を動かすのに有効なものである。ある実施形態では、このような駆動力は、チャンバ214中で、反対の極性の第1の電極230と第2の電極232との間に発生した電流の形態であってもよい。
図5に示すように、第1の電極230及び第2の電極232は、複合膜216の反対側に位置しており、第1の電極230は、チャンバ214の第1の側218中に配置されており、第2の電極232は、チャンバ214の第2の側220中に位置する。第1の電極230及び第2の電極232は、電圧ポテンシャルを発生させて、第1の電極230と第2の電極232との間に電流を通過させるための電気エネルギー源240に連結されている。イオン性種の輸送を刺激するために複合膜216を横切って適用された電流は、膜ベース型イオン交換システムに関して、当技術分野において良く理解されている。
【0070】
その他の駆動力は、入口222を介してチャンバ214の第1の側220に送達された第1の流体と、入口224のチャンバ214の第2の側218に送達された第2の流体との間での、複合膜216を横切るイオン性種の輸送を刺激するのに有用であると企図されている。一事例において、このような駆動力は、複合フィルム216の反対側の面上における第1の流体及び第2の流体の特性に基づいて、発生し得る。しかしながら、最も一般的には、膜ベース型イオン交換システムは、膜を横切るイオン種の輸送を駆動する力として、印加した電流を用いる。
【0071】
本発明は、特許法に適合させるため、並びに当業者に新規な原理を応用し、要求に応じて本発明の実施形態を構築及び使用することに必要とされる情報を提供するために、非常に詳細に本明細書に記述された。しかしながら、本発明に対する様々な変更が、本発明自体の範囲から逸脱することなく達成され得ることが理解されるべきである。