特許第6374131号(P6374131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6374131
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】船外機昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/00 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   B63H20/00
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-63066(P2018-63066)
(22)【出願日】2018年3月28日
【審査請求日】2018年4月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴彦
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−030573(JP,A)
【文献】 特開2003−175893(JP,A)
【文献】 特開2012−081899(JP,A)
【文献】 特開2016−169657(JP,A)
【文献】 特開平02−102892(JP,A)
【文献】 特開平08−270608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機を昇降させる船外機昇降装置において、
互いに異なる駆動特性を有する複数の電動モータと、
前記電動モータによって駆動されるピストンと、
船体状態信号を参照して前記ピストンの昇降速度を制御する制御部と
前記電動モータにより回転する回転部と、
前記電動モータの駆動力を前記回転部に伝達する減速機と、を備え
前記ピストンは、当該回転部の回転によって昇降し、
前記制御部は、前記船体状態信号を参照して、前記減速機に接続する電動モータを切り替えることを特徴とする船外機昇降装置。
【請求項2】
船外機を昇降させる船外機昇降装置において、
電動モータと、
前記電動モータによって駆動されるピストンと、
船体状態信号を参照して前記ピストンの昇降速度を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記船体状態信号を参照して、航行状態及び停船状態を判定し、
前記航行状態と判定した場合に、前記ピストンの昇降速度を遅くするように制御し、
前記停船状態と判定した場合に、前記ピストンの昇降速度を速くするように制御することを特徴とする船外機昇降装置。
【請求項3】
前記電動モータにより回転する回転部を更に備え、
前記ピストンは、当該回転部の回転によって昇降する
ことを特徴とする請求項に記載の船外機昇降装置。
【請求項4】
前記電動モータは、減速機を介さずに前記回転部に接続されている
ことを特徴とする請求項に記載の船外機昇降装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記船体状態信号を参照して、前記電動モータへの供給電力を制御することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の船外機昇降装置。
【請求項6】
前記船体状態信号は、前記船外機が備えるエンジンに接続されたジェネレータの出力電圧であり、
前記制御部は、前記ジェネレータの出力電圧が、電圧に関する第1閾値以上である場合に、前記航行状態と判定する
ことを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の船外機昇降装置。
【請求項7】
前記船体状態信号は、前記船外機が備えるエンジンに接続されたジェネレータの出力電圧であり、
前記制御部は、前記ジェネレータの出力電圧が、電圧に関する第2閾値を超える場合に、前記航行状態と判定する
ことを特徴とする請求項に記載の船外機昇降装置。
【請求項8】
前記船体状態信号は、前記船外機のエンジン回転数に関連する信号であり、
前記制御部は、前記エンジン回転数が、回転数に関する第1閾値以上である場合に、前記航行状態と判定する
ことを特徴とする、請求項に記載の船外機昇降装置。
【請求項9】
前記船体状態信号は、前記船外機のエンジン回転数に関連する信号であり、
前記制御部は、前記エンジン回転数が、回転数に関する第2閾値を超える場合に、前記航行状態と判定する
ことを特徴とする、請求項に記載の船外機昇降装置。
【請求項10】
前記船体状態信号は、アナログ信号であり、
前記制御部は、
前記船体状態信号が入力されるベース電極を有する第1のスイッチング素子と
前記第1のスイッチング素子のエミッタ電流に応じた信号が入力されるゲート電極、及び、前記電動モータに接続されたソース電極を有する第2のスイッチング素子と
を備えていることを特徴とする請求項2から9の何れか1項に記載の船外機昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体の船外機を昇降させる船外機昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船体の分野において、主として船外機を水面上に上昇させたり水面下に下降させたりするためのチルトシリンダと、主として水面下における船外機の角度を変更するためのトリムシリンダとを有する船外機昇降装置が知られている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭58−028159号公報
【特許文献2】特開平2−99494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、船外機昇降装置では、船外機の昇降の速さを変更できることが好ましい。
【0005】
本発明は、船外機の昇降の速さを変更することのできる船外機昇降装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る船外機昇降装置は、船外機を昇降させる船外機昇降装置において、電動モータと、前記電動モータによって駆動されるピストンと、船体状態信号を参照して前記ピストンの昇降速度を制御する制御部とを備えている構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、船外機の昇降の速さを好適に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る船外機昇降装置の使用例及び船外機の概略的な内部構成を示す図である。
図2】実施形態1に係る船外機昇降装置の構成の一例を示す正面図である。
図3】実施形態1に係る船外機昇降装置の側断面図である。
図4】実施形態1に係る船外機昇降装置のシリンダユニットを制御部と共に示す図である。
図5】実施形態1に係る制御部の一構成例を示す回路図である。
図6】実施形態1に係る制御部によるピストンの昇降速度の制御の一例を示す図である。
図7】シリンダユニットの変形例を制御部と共に示す図である。
図8図7に示した変形例のギヤ構造を模式的に示す平面図である。
図9】シリンダユニットの変形例を制御部と共に示す図である。
図10】シリンダユニットの変形例を制御部と共に示す図である。
図11】実施形態1に係る船外機のエンジン周辺の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1に係る船外機昇降装置1について、図1図11を参照して説明する。
【0010】
船外機昇降装置1は、船外機300を昇降させるための装置である。図1の(a)は、船外機昇降装置1の使用例を示す図であり、船体(本体)200の後部と船外機300とに取り付けられた船外機昇降装置1を示している。図1の(a)における実線は、船外機300が下降した状態を示し、図1の(a)における破線は、船外機300が上昇した状態を示している。図1の(b)は、船外機300の内部構成を概略的に示す模式図である。図1の(b)に示すように、船外機300は、エンジン301と、プロペラ303と、エンジン301からプロペラ303に動力を伝達する動力伝達機構302とを備えている。ここで、動力伝達機構は、例えば、シャフトやギヤによって構成される。
【0011】
図2は、船外機昇降装置1の構成の一例を示す正面図であり、図3は、船外機昇降装置1の側断面図である。図2に示すように、船外機昇降装置1は、シリンダユニット10と、船体200の後部に取り付けられる1対のスターンブラケット70と、船外機300に取り付けられるスイベルブラケット80とを備えている。
【0012】
シリンダユニット10は、一例として、図2に示すように、電動モータ14、ピストン25、上部ジョイント22、基部24を備えている。電動モータ14は、基部24に対して相対移動不能に設けられている。
【0013】
なお、シリンダユニット10が備える電動モータ14の数は本実施形態を限定するものではなく、複数の電動モータ14を備える構成も本実施形態に含まれる。また、そのように任意の数の電動モータ14を有するシリンダユニット10に対しても以下の説明が成り立つ。
【0014】
電動モータ14には、電動モータ14により回転する回転部15と、回転部15の回転によって昇降するピストン25とが連結されている(図4参照)。
【0015】
また、図2に示すように、基部24とスターンブラケット70には、それぞれ貫通孔が形成されており、これらの貫通孔を貫通するアンダーシャフト26を介して、基部24とスターンブラケット70とが相対回転可能に接続されている。
【0016】
また、図2に示すように、ピストン25の先端には、上部ジョイント22が設けられており、スイベルブラケット80には、支持部材28が固定されている。上部ジョイント22及び支持部材28には、それぞれ貫通孔が形成されており、こられの貫通孔を貫通するアッパーシャフト23を介して、上部ジョイント22とスイベルブラケット80とが相対回転可能に接続されている。
【0017】
また、スターンブラケット70及びスイベルブラケット80の上部一端にはそれぞれ貫通孔が形成されており、図3に示すように、これらの貫通孔を貫通する支持軸32によって、スターンブラケット70とスイベルブラケット80とが相対回転可能に接続されている。
【0018】
(可動域)
電動モータ14によってピストン25が駆動され、ピストン25が上昇及び下降することにより、スイベルブラケット80が上昇及び下降するので、船外機300が上昇及び下降する。
【0019】
ピストン25の上昇及び下降によって調整される船外機300の角度領域は、図1の(a)に示した可動域から構成される。
【0020】
(シリンダユニット10の構成)
図4は、船外機昇降装置1のシリンダユニット10を制御部100と共に示す図である。図10に示すように、シリンダユニット10において、1つの電動モータ14を備えている電動モータ14の出力軸14aには、当該出力軸14aの軸線上に回転部15としてボールねじが接続されている。図4に示す例では、回転部15は、電動モータ14の出力軸に、動力伝達機構や減速機を介さずに直接接続されている。
【0021】
回転部15には、ボールねじである回転部15が回転することによって昇降するピストン25が接続されている。電動モータ14により回転部15が回転することによりピストン25が電動モータ14の出力軸の軸線方向に沿った直線運動を行う。本実施形態では、ピストン25を上昇させる電動モータの回転方向を「正転」とし、ピストン25を下降させる電動モータの回転方向を「反転」とする。このように、ピストン25は、電動モータ14により回転部15が回転することで昇降する。
【0022】
電動モータ14が、制御部100によって船体状態信号SIG_INを参照して制御されることにより、ピストン25の昇降速度が制御される。
【0023】
なお、本実施形態では、回転運動をピストン25の直線運動に変換する回転部15の一例としてボールねじを挙げて説明したが、回転部15はこれに限らず回転運動をピストン25の直線運動に変換することができる構成であれば、いかなる構成を適用してもよい。
【0024】
(制御回路)
次に、船外機昇降装置1の制御回路について説明する。
電動モータ14は、運転者による船外機の昇降指示を示す昇降信号SIG_UDに応じて、「正転」「反転」「停止」の何れかの動作を行う。電動モータ14により回転部15が回転すると、回転部15の回転によってピストン25が昇降する。
【0025】
制御部100は、船体200のイグニッションのオンオフを示すイグニッション信号SIG_IG、船体状態信号SIG_IN、及び、運転者による船外機300の昇降指示を示す昇降信号SIG_UDを参照し、電動モータ14への供給電力を制御するための制御信号SIG_CONTを生成する。生成した制御信号SIG_CONTは電動モータ14に供給される。
【0026】
なお、船体状態信号SIG_INの一例として、船外機300の状態を示す状態信号が挙げられるが、本明細書に記載の実施形態はこれに限定されるものではない。船体状態信号の様々な例については後述する。
【0027】
制御部100を備えることにより、船外機昇降装置1は、船外機300の状態に応じて船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。
【0028】
(制御部100の構成例)
以下では、制御部100の具体的な構成例について参照する図面を替えて説明する。
【0029】
図5は、制御部100の一構成例を示す回路図である。本例では、イグニッション信号SIG_IG、船体状態信号SIG_IN、昇降信号SIG_UDは、すべてアナログ信号として制御部100に入力される。
【0030】
図5に示すように、本例に係る制御部100は、第1のコネクタ101〜第4のコネクタ104、及び、第1のスイッチング素子121〜第5のスイッチング素子125等を備えて構成される。ここで、第1のスイッチング素子121、第3のスイッチング素子123、及び第4のスイッチング素子124は、例えばトランジスタによって構成されており、第2のスイッチング素子122は、例えばFET(電界効果トランジスタ)によって構成されている。
【0031】
第1のスイッチング素子121のコレクタ電極及び第3のスイッチング素子123のコレクタ電極、並びに、第2のスイッチング素子122のドレイン電極には、第1のコネクタ101を介してイグニッション信号SIG_IGが入力される。
【0032】
第1のスイッチング素子121のベース電極には、第2のコネクタ102及びダイオード111を介して船体状態信号SIG_INが入力され、第3のスイッチング素子123のベース電極には第1のスイッチング素子121のエミッタ電流がダイオード112を介して入力される。また、第4のスイッチング素子124のベース電極には、第3のコネクタ103及びダイオード113を介して昇降信号SIG_UDが入力され、第5のスイッチング素子125のベース電極には、第3のコネクタ103及びダイオード114を介して昇降信号SIG_UDが入力される。
【0033】
第2のスイッチング素子122のゲート電極には、第1のスイッチング素子121のエミッタ電流に応じた信号が、第3のスイッチング素子123及び第4のスイッチング素子124を介して、又は、第3のスイッチング素子123及び第5のスイッチング素子125を介して入力される。より具体的には、第2のスイッチング素子122のゲート電極には、ダイオード115を介して、第4のスイッチング素子124のエミッタ電流及び第5のスイッチング素子125のエミッタ電流が入力される。
【0034】
第2のスイッチング素子122のソース電極からは、第4のコネクタ104を介して、制御信号SIG_CONTが電動モータ14に供給される。
【0035】
なお、図5に記載した構成例は、制御部100を限定するものではない。制御部100にはアナログ信号に変えて、デジタル信号が入力される構成としてもよい。
【0036】
(船体状態信号SIG_INの具体例)
上述した船体状態信号SIG_INの一例として、船外機300が備えるエンジン301の状態を示すエンジン信号が挙げられる。ここで、エンジン信号とは、例えば、エンジン301の回転数を示す信号であり、一例としてエンジン301から取得することができる。なお、エンジンの回転数が0であればエンジンはオフであり、エンジンの回転数がゼロでなければエンジンはオンであるので、エンジンの回転数を示す信号はエンジンのオンオフを示す信号でもある。
【0037】
船体状態信号SIG_INをエンジン信号とすることにより、以下に見るように、船外機昇降装置1は、船外機300が備えるエンジン301の状態に応じて船外機の昇降の速さを柔軟に変更することができる。
【0038】
また、船体状態信号SIG_INの他の一例として、船外機300の備える動力伝達機構302が、動力伝達可能な状態、すなわちインギヤの状態にあるのか否かを示すギヤ信号が挙げられる。ギヤ信号は、一例として動力伝達機構302から取得することができる。
【0039】
船体状態信号SIG_INをギヤ信号とすることにより、以下に見るように、船外機昇降装置1は、船外機300が備える動力伝達機構302の状態に応じて船外機の昇降の速さを柔軟に変更することができる。
【0040】
なお、上述のエンジン信号、及びインギヤ信号は、船外機300の状態を示す状態信号の一例である。
【0041】
(船外機昇降装置1の動作例)
(上昇動作)
昇降信号SIG_UDが「上昇」を示している場合、制御部100は、電動モータ14を正転させ、ピストン25を上昇させる。ここで、上昇速度を遅くする場合には、制御部100は、例えば6Vといった相対的に低い電圧を供給し、上昇速度を速くする場合には、例えば12Vといった相対的に高い電圧を供給する。なお、電動モータ14の内部抵抗は、温度によって多少の変動はあるものの概ね一定であるので、上昇速度を遅くする場合には、制御部100は、電動モータ14への供給電力を相対的に小さくし、上昇速度を速くする場合には、電動モータ14への供給電力を相対的に大きくすると表現してもよい(以下同様)。
【0042】
(下降動作)
昇降信号SIG_UDが「下降」を示している場合、制御部100は、電動モータ14を反転させ、ピストン25を下降させる。ここで、下降速度を遅くする場合には、制御部100は、例えば6Vといった相対的に低い電圧を供給し、下降速度を速くする場合には、例えば12Vといった相対的に高い電圧を供給する。
【0043】
(保持状態)
昇降信号SIG_UDが「上昇」及び「下降」の何れも示していない場合、制御部100は、電動モータ14を停止させる。そうすると、ピストン25の昇降が停止し、船外機300が保持される。なお、本明細書では、昇降信号SIG_UDが「上昇」及び「下降」の何れも示していない場合を、便宜的に、昇降信号SIG_UDが「保持」を示している場合と表現することもある。
【0044】
(電動モータの制御例)
以下では、図6を参照して、制御部100による電動モータ14の制御例について説明する。
【0045】
図6は、船体状態信号SIG_INが示す船外機300の状態、昇降信号SIG_UDが示す運転者による船外機の昇降指示、及び、制御部100によって制御されたピストン25の昇降速度を例示する表である。
【0046】
図6に示す例では、船体状態信号SIG_INが「エンジンオン」又は「インギヤ」を示している場合、昇降信号SIG_UDが「上昇」「下降」の何れを示しているのかに関わらず、制御部100はピストン25の昇降速度を遅くする。
【0047】
一例として、船体状態信号SIG_INは、船外機300が備えるエンジン301のエンジン回転部に関連する信号であり、制御部100は、エンジン回転数が回転数に関する第1閾値以上である場合に、航行状態と判定し、ピストン25の昇降速度を遅くする。ここで、回転数に関する第1閾値は、適宜設定された正の値を有している。また、制御部100は、エンジン回転数が回転数に関する第2閾値を超える場合に、航行状態と判定し、ピストン25の昇降速度を遅くする構成でもよい。ここで、回転数に関する第2閾値は、適宜設定された0以上の値を有している。
【0048】
このように、制御部100は、船体状態信号SIG_INを参照して、航行状態及び停船状態を判定し、航行状態と判定した場合に、ピストン25の昇降速度を遅くするように電動モータ14に供給する電力を制御する。
【0049】
したがって、エンジン301がオンであるか又は動力伝達機構302がインギヤの状態では、ピストン25が相対的にゆっくりと上昇及び下降することによって船外機300の角度調整が行われる。
【0050】
一方で、図6に示す例では、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、昇降信号SIG_UDが「上昇」を示す場合に、制御部100はピストン25の昇降速度を速くする。
【0051】
このように、制御部100は、船体状態信号SIG_INを参照して、航行状態及び停船状態を判定し、停船状態と判定した場合に、ピストン25の昇降速度を速くするように制御する。
【0052】
したがって、エンジン301がオフであるか又は動力伝達機構302がインギヤでない状態において、船外機300を上昇させる場合、エンジン301がオンであるか又は動力伝達機構302がインギヤの状態に比べて、ピストン25が速く上昇する。
【0053】
また、船外機300の保持状態において、ピストン25よって船外機300をしっかりと保持することができる。
【0054】
また、図6に示す例では、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、昇降信号SIG_UDが「下降」を示す場合に、制御部100はピストン25の昇降速度を遅くする。
【0055】
なお、ピストン25の昇降速度の制御は、上記の例に限定されるものではなく、ユーザの使い勝手や外力に対する船外機昇降装置1の適応性等を鑑みて、適宜設定することができる。
【0056】
例えば、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、昇降信号SIG_UDが「下降」を示す場合に、制御部100はピストン25の昇降速度を速くしてもよい。
【0057】
この場合、エンジン301がオフであるか又は動力伝達機構302がインギヤでない状態において、船外機300を下降させる場合、エンジン301がオンであるか又は動力伝達機構302がインギヤである状態に比べて、船外機300を速く下降させることができる。
【0058】
なお、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、
昇降信号SIG_UDが「下降」を示す場合に、ピストン25の昇降速度を遅くするのか、速くするのかの選択は、制御部100によって行われる構成としてもよい。このような構成の場合、制御部100はユーザからの指示を示すユーザ指示信号を参照してピストン25の昇降速度を遅くするのか、速くするのかの何れかを選択してもよいし、他の信号を参照してピストン25の昇降速度を遅くするのか、速くするのかの何れかを選択してもよい。
【0059】
本実施形態においては、上記構成によれば、船外機の状態に応じて昇降の速さを柔軟に変更することのできる船外機昇降装置1を実現できる。
【0060】
(変形例1)
図7図10は、シリンダユニット10の変形例を制御部100と共に示す図である。
【0061】
図7は、1つの電動モータ14と、電動モータ14の駆動力を回転部15に伝達する減速機27を備えているシリンダユニット10aの例を示す図である。図8は、減速機27の構成を模式的に示す平面図である。
制御部100は、船体200のイグニッションのオンオフを示すイグニッション信号SIG_IG、船体状態信号SIG_IN、及び、運転者による船外機300の昇降指示を示す昇降信号SIG_UDを参照し、電動モータ14への供給電力を制御するための制御信号SIG_CONTを生成する。生成した制御信号SIG_CONTは電動モータ14に供給される。制御部100は、シリンダユニット10aを、図4に示したシリンダユニット10と同様に制御する。
【0062】
電動モータ14の出力軸14aには、当該出力軸14aを中心に、出力軸14aの回転に伴って回転するギヤ14bが取付けられている。図7に示す例では、回転部15は、電動モータ14の出力軸14aと並行に配置された回転軸を有しており、当該回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転するギヤ15aが取り付けられている。減速機27は、ギヤ14b及びギヤ15aと噛合し、電動モータ14の駆動力によって回転するギヤ14bの回転をギヤ15aに所定の減速比で伝達する。
【0063】
減速機27は、複数の減速機27a,27bから構成されている。複数の減速機27a,27bは、それぞれ異なる歯数を有している。シリンダユニット10aには、図示は省略するが、制御部100によって制御され、ギヤ14b及びギヤ15aと噛合する減速機27を減速機27a、及び27bの何れか一方に切り換える切替機構が設けられている。制御部100は、ギヤ14b及びギヤ15aと噛合する減速機27を切り替えることで、ピストン25の昇降速度を変更する。
【0064】
この構成によれば、電動モータ14とピストン25とを並列配置することができるため、シリンダユニット10の高さ(ピストン25の伸び縮み方向に沿ったシリンダユニット10の長さ)を抑えることができる。また、減速機27を介して電動モータ14の駆動力を回転部15に伝達するため、電動モータ14の駆動力に対するピストン25の昇降速度をより精度良く制御することができる。
【0065】
(変形例2)
図9は、2つの電動モータ213,214と、各電動モータ213,214の駆動力をそれぞれ回転部15に伝達する減速機227a,227bと、を備えているシリンダユニット10bの例を示す図である。制御部100は、船体200のイグニッションのオンオフを示すイグニッション信号SIG_IG、船体状態信号SIG_IN、及び、運転者による船外機300の昇降指示を示す昇降信号SIG_UDを参照し、各電動モータ213,214への供給電力を制御するための制御信号SIG_CONTを生成する。生成した制御信号SIG_CONTは各電動モータ213,214に供給される。なお、制御部100は、2つの電動モータ213,214のうちどちらか一方に電力を供給し、他方には電力供給しないという制御を行うことができてもよい。
【0066】
第1の電動モータ213の出力軸213aには、当該出力軸213aを中心に、出力軸213aの回転に伴って回転するギヤ213bが取付けられている。図9に示す例では、第2の電動モータ214の出力軸214aには、当該出力軸214aを中心に、出力軸214aの回転に伴って回転するギヤ213bが取付られている。回転部15は、電動モータ213,214の出力軸213a,214bと並行に配置された回転軸を有しており、当該回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転するギヤ15aが取り付けられている。
【0067】
第1の減速機227aは、ギヤ213b及びギヤ15aと噛合し、電動モータ213の駆動力によって回転するギヤ213bの回転をギヤ15aに所定の減速比で伝達する。第2の減速機227bは、ギヤ214b及びギヤ15aと噛合し、電動モータ214の駆動力によって回転するギヤ214bの回転をギヤ15aに所定の減速比で伝達する。
【0068】
このように、複数の電動モータ213,214の駆動力を減速機227a,227bを介して回転部15に伝達することができるため、複数の電動モータ213,214のそれぞれの負荷を低減することができる。また、複数の電動モータ213,214のそれぞれの出力を制御することでピストン25の昇降速度を精度良く制御することができる。
【0069】
例えば、制御部100は、電動モータ213,214に対して相対的に低い電圧を供給することで、ピストン25の昇降速度を遅くすることができる。また、制御部100は、電動モータ213,214に対して相対的に高い電圧を供給することで、ピストン25の昇降速度を速くすることができる。制御部100は、シリンダユニット10bを、図4に示したシリンダユニット10と同様に制御する。
【0070】
(変形例3)
図10は、2つの電動モータ313,314と、各電動モータ313,314の駆動力をそれぞれ回転部15に伝達する減速機327a,327bと、駆動力を回転部15に伝達する電動モータ313,31を切り替える切替部328a,328bと、を備えているシリンダユニット10cの例を示す図である。
【0071】
2つの電動モータ313,314は、それぞれ互いに異なる駆動特性を有する電動モータである。例えば、電動モータ313,314のうち一方を高回転(低トルク)型の電動モータとし、他方を高トルク(低回転)型の電動モータとしてもよい。
【0072】
制御部100は、船体200のイグニッションのオンオフを示すイグニッション信号SIG_IG、船体状態信号SIG_IN、及び、運転者による船外機300の昇降指示を示す昇降信号SIG_UDを参照し、制御信号SIG_CONTを生成する。制御部100は、減速機に接続する電動モータを切り替えるための制御信号SIG_CONTと、各電動モータ313,314への供給電力を制御するための制御信号SIG_CONTと生成する。制御部100は、減速機に接続する電動モータを切り替えるための制御信号SIG_CONTを各切替部328a,328bに供給するとともに、各電動モータ313,314への供給電力を制御するための制御信号SIG_CONTを各電動モータ313,314に供給する。
【0073】
第1の電動モータ313の出力軸313aには、当該出力軸313aを中心に、出力軸313aの回転に伴って回転するギヤ313bが取付けられている。図10に示す例では、第2の電動モータ314の出力軸314aには、当該出力軸314aを中心に、出力軸314aの回転に伴って回転するギヤ314bが取付けられている。回転部15は、電動モータ313,314の出力軸313a,314bと並行に配置された回転軸を有しており、当該回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転するギヤ15aが取り付けられている。
【0074】
切替部328a,328bは、油圧モータや電動モータを含むアクチュエータを備え、減速機327a,327bを、電動モータ313,314の出力軸313a,314bの軸線方向に沿って昇降させる。切替部328a,328bは、制御部100の制御に応じて減速機に接続する電動モータを切り替える。例えば、電動モータ313を減速機327aに接続する場合には、制御部100は、減速機327aをギヤ313b及びギヤ15aと噛合させるべく上昇させ、減速機327bを下降させることにより電動モータ314と切り離す。また、電動モータ314を減速機327bに接続する場合には、制御部100は、減速機327bをギヤ314b及びギヤ15aと噛合させるべく上昇させ、減速機327aを下降させることにより電動モータ313と切り離す。
【0075】
ギヤ313b、314b、ギヤ15a、減速機327a、及び減速機327bは、隣接するギヤ同士が互いに噛み合うことができる、側面視で台形形状に形成されている。ギヤ313b、314b、ギヤ15a、減速機327a、及び減速機327bは、例えば、はすば歯車であってもよいし、そうでなくてもよい。このように、上昇、及び下降させることにより、噛合、及び切り離しを行うことができる減速機327a,327bにおいて、ギヤを側面視で台形形状に形成することで、作動時に互いに噛み込みやすくすることができる。
【0076】
これにより、互いに異なる駆動特性を有する複数の電動モータ313,314のうち、回転部15に駆動力を伝達する電動モータを切り替えることで、ピストン25の昇降速度を制御することができる。
【0077】
電動モータ313を高回転型とし、電動モータ314を高トルク型(低回転型)とした場合を例に具体的に説明すると、制御部100は、ピストン25の昇降速度を速くする場合には、高回転型の電動モータ313の駆動力を回転部15に伝達させる。また、制御部100は、ピストン25の昇降速度を遅くする場合には、高トルク型の電動モータ314の駆動力を回転部15に伝達させる。これにより、電動モータ313,314の駆動特性を利用して、効率よくピストン25の昇降速度を制御することができる。制御部100は、シリンダユニット10cを、図4に示したシリンダユニット10と同様に制御する。
【0078】
なお、制御部100は、2つの電動モータ313,314の両方を減速機327a,327bにそれぞれ接続し、2つの電動モータ313,314の駆動力を回転部15に伝達することでピストン25を昇降させることができてもよい。
【0079】
〔実施形態2〕
以下では、実施形態2として、実施形態1において説明した船体状態信号SIG_INの他の具体例について説明する。船体状態信号SIG_INは、実施形態1において説明した具体例に代えて、又は、実施形態1において説明した具体例に加えて、後述する他の具体例の1又は複数を含む構成とすることができる。
【0080】
船体状態信号SIG_INに含まれ得る信号は、
(A)船外機300から取得可能な船外機性能信号
(B)船体(本体)200から取得可能な船体(本体)性能信号
に分類される。
【0081】
船外機300から取得可能な船外機性能信号、及び、当該船外機性能信号を参照した制御部100(以下単に制御部とも記載する)による制御例は以下の通りである。
【0082】
(A−1)イグニッション信号
イグニッション信号は、船外機300のイグニッションのオンオフを示す信号である。
【0083】
制御部は、例えば、イグニッションオンである場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、イグニッションオフである場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0084】
(A−2)チルト/トリム制御信号
チルト/トリム制御信号は船外機300のチルト及び/又はトリムを制御するための信号である。
【0085】
制御部は、チルト/トリム制御信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。
【0086】
(A−3)エンジンニュートラル信号
エンジンニュートラル信号は、船外機300のエンジンがニュートラルであるか否かを示す信号である。
【0087】
制御部は、例えば、エンジンがニュートラルでない場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンがニュートラルである場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0088】
(A−4)トリム角度信号
トリム角度信号は、船外機300のトリムの角度を示す信号である。
【0089】
制御部は、例えば、船外機300のトリムの角度が所定の値よりも小さい場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、船外機300のトリムの角度が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0090】
(A−5)エンジン水温信号
エンジン水温信号は、船外機300のエンジンの水温を示す信号である。
【0091】
制御部は、例えば、エンジンの水温が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンの水温が所定の値よりも小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0092】
(A−6)エンジン油温信号
エンジン水温信号は、船外機300のエンジンの油温を示す信号である。
【0093】
制御部は、例えば、エンジンの油温が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンの油温が所定の値よりも小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0094】
(A−7)エンジン油圧信号
エンジン油圧信号は、船外機300のエンジンの油圧を示す信号である。
【0095】
制御部は、例えば、エンジンの油圧が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンの油温が所定の値よりも小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0096】
(A−8)水位信号
水位信号は、船外機300における水面の水位を示す信号である。
【0097】
制御部は、水位信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、水位信号の示す水位が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、水位信号の示す水位が所定の値より小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0098】
(A−9)スロットル開度信号
スロットル開度信号は、船外機300のエンジンのスロットルの開度を示す信号である。
【0099】
制御部は、例えば、スロットルの開度が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、スロットルの開度が所定の値より小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0100】
(A−10)船速信号(水流信号)
船速信号は、船速を示す信号である。船速は水流の速さを参照して特定されるので、船速信号は、水流信号と呼んでもよい。
【0101】
制御部は、船速が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、船速が所定の値より小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0102】
(A−11)バッテリー電圧信号
バッテリー電圧信号はバッテリーの電圧を示す信号である。
【0103】
制御部は、バッテリーの電圧に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、バッテリーの電圧が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、バッテリーの電圧が所定の値より小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0104】
(A−12)大気圧信号
大気圧信号は、大気圧を示す信号である。制御部は、大気圧に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。
【0105】
(A−13)ジェネレータ出力電圧
上述した実施形態1及び本実施形態に係る船外機300は、当該船外機300が備えるエンジン301に接続されたジェネレータを備えている。
【0106】
図11は、船外機300のエンジン301周辺の構成を示すブロック図である。図11に示すように、船外機300は、エンジン301、エンジン301からプロペラ303に動力を伝達する動力伝達機構302、エンジン301により駆動されるジェネレータ(発電機)310、及びメインバッテリー311を備えている。また、一例として船外機300は、メインバッテリー311に加え、予備バッテリーも搭載可能に構成されている。
【0107】
図11に示すように、ジェネレータ310からは、メインバッテリー310aへの導線310aに加え、予備バッテリーへの導線310bが引き出されている。当該導線310bは制御部100、100a、100bに接続され、当該導線310bの電位は、制御部によりジェネレータの出力電圧として参照される。
【0108】
本例に係る制御部は、船体状態信号SIG_INとして、ジェネレータの出力電圧を参照し、当該ジェネレータの出力電圧が、電圧に関する第1閾値以上である場合に、航行状態と判定し、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行う。ここで、電圧に関する上記第1閾値は、例えば、適宜設定された正の値を有する。
【0109】
また、制御部は、船体状態信号SIG_INとして、ジェネレータの出力電圧を参照し、当該ジェネレータの出力電圧が、電圧に関する第2閾値を超える場合に、航行状態と判定し、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行う構成としてもよい。ここで、電圧に関する上記第2閾値は、例えば、適宜設定された0以上の値を有する。
【0110】
なお、以上例示した信号のうち、(A−1)〜(A−11)、及び(A−13)は、船外機300の状態を示す状態信号と捉えることもできる。
【0111】
続いて、船体200から取得可能な船体(本体)性能信号、及び、当該船体(本体)性能信号を参照した制御部による制御例は以下の通りである。
【0112】
(B−1)衝撃信号
衝撃信号は、船体200が受ける衝撃を示す信号である。
【0113】
制御部は、衝撃信号に応じてピストン25の昇降速度を制御する。より具体的には、制御部は、船体200が受ける衝撃、又は衝撃信号自体の有無に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、衝撃が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、衝撃が所定の値より小さい場合、または、信号が無い場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0114】
(B−2)方位信号
方位信号は、船体200の進行方向を示す信号である。制御部は、方位信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。
【0115】
(B−3)ソナー信号
ソナー信号は、船体200が備えるソナーから供給される信号である。
【0116】
制御部は、ソナー信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。より具体的には、制御部は、ソナー信号が示す障害物の有無、又は、ソナー信号自体の有無に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、障害物がある場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、障害物がない場合、または、信号が無い場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0117】
(B−4)GPS信号
GPS信号は、船体200が備えるGPS(Global Positioning System)装置から供
給される信号である。なお、GPS装置は船体の上または近辺にあっても良い。
【0118】
制御部は、GPS信号が示す船速が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、GPS信号が示す船速が所定の値より小さい場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0119】
(B−5)トランサム振動信号
トランサム振動信号は、船体200が備えるトランサムの振動を示す信号である。
【0120】
制御部は、トランサム振動信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。より具体的には、制御部は、トランサム振動信号の示す振動、又は、トランサム振動信号自体の有無に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、トランサムの振動が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、トランサムの振動が所定の値より小さい場合、または、信号が無い場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0121】
(B−6)水温信号
水温信号は、船体200の周囲の水温を示す信号である。制御部は、水温信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。
【0122】
(B−7)振動信号
振動信号は、船体200の振動を示す信号である。
【0123】
制御部は、振動信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。より具体的には、制御部は、振動信号の示す振動、又は振動信号自体の有無に応じてピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、振動信号の示す振動が所定の値以上である場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、振動信号の示す振動が所定の値より小さい場合、または、信号が無い場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0124】
(B−8)IP画像信号
IP画像信号は、船体200の周辺の状況を示す画像信号である。
【0125】
制御部は、IP画像信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。より具体的には、制御部は、IP画像信号の示す障害物の有無、または、IP画像信号自体の有無に応じてピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、障害物がある場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、障害物がない場合、または、信号が無い場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0126】
(B−9)レーダー信号
レーダー信号は、船体200が備えるレーダーから供給される信号である。
【0127】
制御部は、レーダー信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。より具体的には、制御部は、レーダー信号が示の障害物の有無、または、レーダー信号自体の有無に応じてピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、障害物がある場合に、図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、障害物がない場合、または、信号が無い場合に、図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0128】
(B−10)音声信号
音声信号は、操船者(ユーザ)の音声を示す信号である。
【0129】
制御部は、音声信号に応じて、ピストン25の昇降速度を制御する。制御部は、例えば、音声信号に含まれる音声指示を参照して、図6の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0130】
なお、以上例示した信号のうち、(B−1)〜(B−9)は、船体(本体)200の状態を示す状態信号と捉えることもできる。
【0131】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御部100は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0132】
後者の場合、制御部100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラム
を伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0133】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0134】
1 船外機昇降装置
10 シリンダユニット
14、213、213、313、314 電動モータ
15 回転部
25 ピストン
27、227a、227b、327a、327b 減速機
100 制御部
300 船外機
328a,328b 切替部
【要約】
【課題】船外機の昇降の速さを変更することのできる船外機昇降装置を実現する。
【解決手段】船外機(300)を昇降させる船外機昇降装置(1)において、電動モータ(24)と、電動モータ(14)によって駆動されるピストン(25)と、船体状態信号を参照して前記ピストン(25)の昇降速度を制御する制御部(100)とを備えている
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11