特許第6374135号(P6374135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社宮本製作所の特許一覧

特許6374135洗濯廃水からなる植物栽培用肥料、この肥料を用いた植物栽培方法及び洗濯廃水を植物栽培用肥料として利用する方法
<>
  • 特許6374135-洗濯廃水からなる植物栽培用肥料、この肥料を用いた植物栽培方法及び洗濯廃水を植物栽培用肥料として利用する方法 図000002
  • 特許6374135-洗濯廃水からなる植物栽培用肥料、この肥料を用いた植物栽培方法及び洗濯廃水を植物栽培用肥料として利用する方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6374135
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】洗濯廃水からなる植物栽培用肥料、この肥料を用いた植物栽培方法及び洗濯廃水を植物栽培用肥料として利用する方法
(51)【国際特許分類】
   C05D 5/00 20060101AFI20180806BHJP
   C05F 7/00 20060101ALI20180806BHJP
   C05G 5/00 20060101ALI20180806BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C05D5/00
   C05F7/00
   C05G5/00 A
   A01G7/00 604Z
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-500818(P2018-500818)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2017007141
【審査請求日】2018年1月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508141689
【氏名又は名称】株式会社宮本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隆
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5312663(JP,B1)
【文献】 特開2002−234723(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104926439(CN,A)
【文献】 MISRA,R.K., et al.,Reuse potential of laundry greywater for irrigation based on growth, water and nutrient use of tomat,Journal of Hydrology,Vol.386, No.1-4,pp.95-102 (2010).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00− 21/00
C05C 1/00− 13/00
C05D 1/00− 11/00
C05F 1/00− 17/02
C05G 1/00− 5/00
A01G 1/00− 1/02
A01G 1/06− 1/12
A01G 5/00− 7/06
A01G 16/00− 17/02
A01G 17/18
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯用洗剤を用いず、洗濯物を水及び金属マグネシウム(Mg)を50重量%以上含有するマグネシウム材料を用いて洗濯した後の、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を含有する洗濯廃水からなる、植物栽培用肥料。
【請求項2】
上記マグネシウム材料が、金属マグネシウム(Mg)を実質的に100重量%含有するものであることを特徴とする、請求項1記載の植物栽培用肥料。
【請求項3】
上記マグネシウム材料の形態が、水を透過する網体で封入された複数個の粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の植物栽培用肥料。
【請求項4】
上記マグネシウム材料の形態が、洗濯用容器の容器本体の内面に形成された層であることを特徴とする、請求項1または2に記載の植物栽培用肥料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の植物栽培用肥料を用いて、植物を栽培することを特徴とする、植物栽培方法。
【請求項6】
洗濯用洗剤を用いず、洗濯物を水及び金属マグネシウム(Mg)を50重量%以上含有するマグネシウム材料を用いて洗濯した後の、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を含有する洗濯廃水を、植物栽培用肥料として利用することを特徴とする、洗濯廃水の利用方法。
【請求項7】
上記マグネシウム材料が、金属マグネシウム(Mg)を実質的に100重量%含有するものであることを特徴とする、請求項6記載の洗濯廃水の利用方法。
【請求項8】
上記マグネシウム材料の形態が、水を透過する網体で封入された複数個の粒子であることを特徴とする、請求項6または7に記載の洗濯廃水の利用方法。
【請求項9】
上記マグネシウム材料の形態が、洗濯用容器の容器本体の内面に形成された層であることを特徴とする、請求項6または7に記載の洗濯廃水の利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を含有する洗濯廃水からなる植物栽培用肥料、この肥料を用いた植物栽培方法及び水酸化マグネシウムを含有する洗濯廃水を植物栽培用肥料として利用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは植物の五大栄養素の一つであり、葉緑素の主成分であると同時に、リン酸の吸収や植物体内での移動を促進する重要な役割を果たす。植物はマグネシウムが欠乏すると、葉面が黄色化したり、落葉したり、さらには枯死したりする。
【0003】
しかしながら、マグネシウムは、植物体内への吸収、降雨などによる流出等により土壌中から自然に減少していくため、肥料によって定期的に土壌に供給する必要がある。
【0004】
土壌にマグネシウムを供給するための肥料としては、従来、苦土肥料[酸化マグネシウム:MgO]、水酸化苦土肥料[水酸化マグネシウム:Mg(OH)]、硫酸苦土肥料[硫酸マグネシウム:MgSO]などのマグネシウム含有肥料が利用されている(特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−244313号公報
【特許文献2】特開2003−128484号公報
【特許文献3】特開2003−095780号公報
【特許文献4】特開2002−234723号公報
【特許文献5】特開2001−233687号公報
【特許文献6】特許第5312663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マグネシウム含有肥料の中でも、水酸化苦土肥料は、酸性土壌の酸度を矯正するアルカリ分として作用するため好ましいものである。
【0007】
しかしながら、工業的に生産される水酸化苦土肥料は水酸化マグネシウムの粒状物であり、輸送や保存中に微粉化しない程度の機械的強度を有する必要があり、一方、施肥された後に、速やかに崩壊し微粉となって土壌に分散される崩壊性を有する必要があるため、これらの機械的強度及び崩壊性を両立させることは容易ではない。さらに、このような水酸化マグネシウムの粒状物を工業的に生産し、輸送・保存するには、コストや手間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、洗濯物を水及び金属マグネシウム(Mg)を主成分として含有するマグネシウム材料(以下、単に「マグネシウム材料」ともいう。)を用いて洗濯した後の、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を含有する洗濯廃水を有効に利用し、上記の課題を解決するものである。
【0009】
本発明者等は、先に、マグネシウムと水との反応により発生する水素が、洗濯用洗剤である界面活性剤の汚れを落とす作用を促進させることを見出し、複数個の金属マグネシウム(Mg)単体を50重量%以上含有する粒子を網体で封入した洗濯用洗浄補助用品およびこれを用いた洗濯方法についての特許を取得した(特許文献6)。
【0010】
本発明者等は、洗濯用洗剤を用いず、マグネシウム材料を用いて洗濯した場合でも、水とマグネシウム材料との反応[Mg+2HO→H+Mg(OH) ]によって生じる、水素および水酸化マグネシウムにより、適度な洗浄作用が得られることを見出すと共に、この洗濯廃水が植物栽培用肥料として有効に利用できることを見出し、この発明をなしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、洗濯物を水及びマグネシウム材料を用いて洗濯した後の、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を含有する洗濯廃水を、植物栽培用肥料として有効に利用することができる。
【0012】
また、工業的に生産された水酸化マグネシウムの粒状物のように、輸送や保存中の微粉化、施肥された後の崩壊性等の問題もなく、経済的かつ効率的に植物に吸収されるMg2−イオンを植物に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、粒子形態のマグネシウム材料の例を示す斜視図である。
図2図2は、内面層形態のマグネシウム材料の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明者等は、洗濯用洗剤を用いず、洗濯物を水及びマグネシウム材料を用いて洗濯した場合でも、水とマグネシウム材料との反応[Mg+2HO→H+Mg(OH) ]によって生じる、水素および水酸化マグネシウムにより、適度な洗浄作用が得られることを見出した。
【0016】
このマグネシウム材料による洗浄作用は、
1)発生する水素による、洗濯物の繊維の織り目深くまで浸透する作用、
2)発生する水素による、汚れを乳化させる作用、
3)生じる水酸化マグネシウムによる、洗濯液を弱アルカリ性にする作用
等により生じると考えられる。
【0017】
洗濯液として洗濯用洗剤を用いず水のみを用いた洗濯方法は、洗濯用洗剤を用いないため経済的であり、さらに、洗濯用洗剤に過敏に反応する者の衣類等の洗濯に好適である。
【0018】
さらに、本発明者等は、このように洗濯した後の洗濯廃水は、水とマグネシウム材料との反応[Mg+2HO→H+Mg(OH) ]によって生じた水素[H]及び水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を溶解しており、洗濯物から除去された皮脂、蛋白等の汚れを含有しているが、洗濯用洗剤等の植物に害を及ぼす物質は何ら含有していないため、植物栽培用肥料として有効に利用できることも見出し、本発明を成した。
【0019】
本発明の洗濯に用いられる、マグネシウム材料の組成としては、上記のように、マグネシウムは室温の水と比較的ゆっくりと反応して水素を発生することから、水素の発生量を多くするため、金属マグネシウム(Mg)単体を比較的高い割合で含有するものが好ましい。具体的には、金属マグネシウム(Mg)単体を50重量%以上含有するものが好ましく、80重量%以上含有するものがより好ましく、実質的に100重量%含有するものが最も好ましい(この「実質的に」とは、「現在一般に知られており、現場の生産ベースで採用される通常の精製手段によっては、除去しきれない不純物を、マグネシウム材料の成分からは除外して考えた場合」を意味する。)。
【0020】
マグネシウム材料が含有できる、主成分の金属マグネシウム(Mg)以外の成分としては、
1)マグネシウム鉱石が含有していたり、マグネシウムの精錬、加工などの工程で随伴してくる、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などの不純物
2)上記第一および第二の水素発生に伴う作用、並びに上記第三の洗濯液を弱アルカリ性にする作用を阻害しない物質
が挙げられる。
【0021】
本発明の洗濯に用いられるマグネシウム材料の形態としては、水を透過する網体等で封入された複数個の粒子の形態(以下、「粒子形態」ともいう。)であってもよいし、洗濯用容器の容器本体の内面に形成された層の形態(以下、「内面層形態」ともいう。)であってもよい。
【0022】
粒子形態のマグネシウム材料の例としては、図1に示すように、複数個の、マグネシウム材料の粒子1を、網袋2で封入してなる洗濯用洗浄補助用品3が挙げられる。この洗濯用洗浄補助用品3を、洗濯物、水と共に洗濯槽等の洗濯容器に投入して洗濯が行われる。
【0023】
また、内面層形態のマグネシウム材料の例としては、図2に示すように、容器本体内面5を、マグネシウム材料で形成した洗濯用容器4が挙げられる。この洗濯用容器4に、洗濯物と水を投入して洗濯が行われる。
【0024】
本発明の洗濯物を水及びマグネシウム材料を用いて洗濯した後の洗濯廃水は、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を含有していることから、この洗濯廃水を肥料として、水酸化苦土肥料[水酸化マグネシウム:Mg(OH)]に代えて有効に再利用して、植物を栽培することができる。
【0025】
本件発明の植物栽培方法は、洗濯廃水を有効に利用して、安全かつ経済的に植物を栽培できるという優れた効果を奏するものである。
【0026】
さらに、本件発明の洗濯廃水を肥料として栽培された野菜等の植物は、マグネシウムを多く含有しているため、これを食する人のマグネシウム不足をも改善することができる。
【0027】
本発明の洗濯物を水及びマグネシウム材料を用いて洗濯した後の洗濯廃水を、植物栽培用肥料として利用する方法としては、各家庭単位で家庭菜園において利用してもよいし、各農家単位で農場において利用してもよい。さらに、貯蔵設備に蓄積した洗濯廃水を、タンクローリー等の車両を用いて集積・運搬し、他の地域において利用することもできる。さらに、タンクローリー等の車両を用いて各家庭、地域から集積・運搬・貯蔵した洗濯廃水を、原油・石油を運搬してきた石油タンカーの帰りのバラスト水として運搬し、他国において利用することもできる。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 : マグネシウム材料の粒子
2 : 網袋
3 : 洗濯用洗浄補助用品
4 : 洗濯用容器
5 : 容器本体内面
【要約】
本発明の課題は、植物にマグネシウムを与えるための水酸化マグネシウム[Mg(OH)]肥料をコストや手間を要することなく提供すること及び水酸化マグネシウム[Mg(OH)]肥料を用いて安全かつ経済的に植物を栽培することである。
上記の課題は、洗濯物を水及び金属マグネシウム(Mg)を主成分として含有するマグネシウム材料を用いて洗濯した後の、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]を含有する洗濯廃水を水酸化マグネシウム[Mg(OH)]肥料として有効に利用することにより解決できる。
図1
図2