(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374139
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】アングルセンサー
(51)【国際特許分類】
G01B 7/30 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
G01B7/30 H
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-280407(P2011-280407)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2012-132920(P2012-132920A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2014年12月11日
【審判番号】不服2017-14895(P2017-14895/J1)
【審判請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0131195
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513276101
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】シン スンチュル
【合議体】
【審判長】
清水 稔
【審判官】
▲うし▼田 真悟
【審判官】
須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−239670(JP,A)
【文献】
特表2009−505097(JP,A)
【文献】
特開2007−155482(JP,A)
【文献】
特開2003−344009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口が形成された円盤状のケースと、
車両の操向軸と共に回転しながら前記ケースの前記開口と対応する中孔部位が形成されたリング状のメインギヤと、
前記メインギヤの回転方向の正方向に回転し、一面に第1マグネットが結合される第1サブギヤと、
前記メインギヤに噛み合わせられて前記メインギヤの回転方向の逆方向に回転し、一面に第2マグネットが結合される第2サブギヤと、
前記第1サブギヤの第1マグネットの磁界変化を感知して回転量データを出力する磁気素子とを備え、
前記第1サブギヤ及び前記第2サブギヤは同じギヤ比を有し、
前記メインギヤ及び前記第1サブギヤのギヤ比及び半径比は操向角の測定誤差を最小化するために4:1であり、
前記第1サブギヤは、前記メインギヤと噛み合わせられずに前記第2サブギヤと噛み合わせられ、
前記第1、2サブギヤは前記ケースの一面に回転可能に結合され、
前記ケースの他面にトルクセンサーが備えられ、
アングルセンサーが前記トルクセンサーと一体に形成され、
前記操向軸は前記アングルセンサーと前記トルクセンサーを貫通して配置されたことを特徴とするアングルセンサー。
【請求項2】
前記磁気素子は、ホール素子(Hall IC)であることを特徴とする請求項1に記載のアングルセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アングルセンサーに関し、より具体的には、アングルセンサーを構成するメインギヤとサブギヤとの間の最適なギヤ比を選択することにより、操向軸のアングル測定の正確性を向上させることができるアングルセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の操向の安定性を保障するための装置として、別途の動力で補助する操向装置が使用される。従来では、このような補助操向装置を油圧を用いた装置として使用していたが、最近では、動力の損失が少なく、正確性に優れた電動式操向装置(Electronic Power Steering System)が使用されている。
【0003】
前記のような電動式操向装置(EPS)は、車速センサー、アングルセンサー、およびトルクセンサーなどで感知した運行条件に基づいて電子制御装置(Electronic Control Unit)でモーターを駆動し、旋回安定性を保障し、迅速な復元力を提供することにより、運転者にとって安全な走行が可能になるようにする。
アングルセンサー(Angle Sensor)は、操向軸の回転角に比例する電気信号を出力する装置であり、最近では、操向トルクを測定するトルクセンサー(Torque Sensor)と結合されてアセンブリ(Assembly)からなることが多い。
【0004】
図1は、このようなアングルセンサーの例を示す平面図である。
アングルセンサーの場合、運転者が操向ホイールを回転するに伴い、操向軸に取り付けられたメインギヤ20が連動して回転しながら回転角度の差が発生し、このとき、メインギヤ20にギヤを介して連結されたサブギヤ21、22に取り付けられたマグネット31、32の磁場と回転方向を磁気素子が認識し、信号を電子制御装置に移送する。
【0005】
メインギヤ20とサブギヤ21、22とは、所定のギヤ比を有するように構成されるが、メインギヤ20の外周に形成されたギヤ数がより多いことが一般的である。
例えば、一般的な場合のように、メインギヤとサブギヤとのギヤ比が2:1で構成された場合、メインギヤの1回転に伴ってサブギヤは2回転し、マグネットの磁界変化を感知するホールセンサーのデジタル(digital)出力は、所定のスケールファクター(Scale Factor)に相当する利得を乗算し、14ビットのタイムカウンター(Time Counter)を用いて回転量を測定する。
【0006】
このとき、メインギヤの回転数をサブギヤの回転数を通して感知しなければならないため、スケールファクターは、メインギヤの回転数測定の正確性に影響を与えるようになる。結局、従来技術のアングルセンサーの場合、スケールファクターの値が大きいため、回転軸の回転量測定の誤差が発生するという問題が存在していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題を解消するためになされたものであって、アングルセンサーのメインギヤとサブギヤとの最適なギヤ比を選択することにより、操向軸の回転測定の誤差を最小化することができるアングルセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるアングルセンサーは、車両の操向軸の回転量を測定するアングルセンサーであって、前記操向軸と共に回転するリング状のメインギヤと、前記メインギヤの回転によって回転し、一面にマグネットが結合される第1サブギヤと、前記マグネットの磁界変化を感知して回転量データを出力する磁気素子とを備え、前記第1サブギヤは、前記メインギヤが1回転する間に4回転するアングルセンサーを提供する。したがって、メインギヤのアングルを測定するための有効データを取得する過程でスケールファクターの値が最小化されるため、測定値の誤差が最小化されるという利点がある。
【0009】
また、本発明にかかるアングルセンサーは、前記メインギヤに噛み合う第2サブギヤをさらに備え、前記第1サブギヤは、前記第2サブギヤに噛み合い、前記メインギヤと前記第1サブギヤとのギヤ比が4:1となるアングルセンサーを提供する。したがって、磁界変化の感度を確保することができる一方、測定値データの非線形性が向上するという利点がある。
【0010】
また、本発明にかかるアングルセンサーは、前記磁気素子がホール素子(Hall IC)であるアングルセンサーを提供する。したがって、磁界変化に応じた出力信号の分析が効率的に実施可能である。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明にかかるアングルセンサーは、メインギヤとサブギヤとの最適なギヤ比が設定されることにより、磁界変化の感知効率が低下しない一方、磁気素子のエラー率が減少し、結局、出力データの非線形性が増加できるため、正確なアングルの測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来技術にかかるアングルセンサーを示す平面図である。
【
図2】従来技術のアングルセンサーにおいて、メインギヤの回転量に対する測定回転量の誤差を示すグラフである。
【
図3】本発明にかかるアングルセンサーにおいて、メインギヤの回転量に対する測定回転量の誤差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施形態にかかるアングルセンサーを詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明にかかるアングルセンサーは、
図1に示すアングルセンサーの構造に基づいて説明される。
また、アングルセンサーは、車両の操向軸と共に回転するリング状のメインギヤ20と、メインギヤ20に噛み合う第2サブギヤ21と、第2サブギヤ21に噛み合う第1サブギヤ22とから構成される。
【0015】
ギヤは、ケース10の一面に回転可能に結合されるが、ケース10は、略円盤形状からなり、中心部位にメインギヤ20の中空部位に対応する開口が形成される。
車両の操向軸は、メインギヤ20の中心部位に連結されて共に回転する。
メインギヤ20の回転に伴い、第2サブギヤ21がメインギヤ20の回転方向に対して逆方向に回転し、これにより、第1サブギヤ22が正方向に回転する。
第2サブギヤ21と第1サブギヤ22とは、回転量測定の正確性および配置関係を考慮して、ギヤ比が1:1となることが好ましい。
【0016】
アングルセンサーは、操向軸に単独で結合されていてもよいが、トルクセンサー(Torque Sensor)と一体に形成されていてもよい。この場合、ケース10の他面にはトルクセンサーが形成され、操向軸は、トルクセンサーとアングルセンサーを貫通して配置される。
メインギヤ20と第1サブギヤ22とのギヤ比に応じて回転量の測定誤差が生じ得ることは前述したとおりである。
【0017】
図2は、メインギヤとサブギヤとのギヤ比が2:1である場合のメインギヤの回転量に対する測定値の誤差を示すグラフであって、横軸は、メインギヤの回転量を度(Degree)スケールで示し、縦軸は、メインギヤの実際の回転量と測定値の誤差を度(Degree)スケールで示す。
【0018】
具体的には、第1サブギヤ22の磁界変化を感知する磁気素子は、14ビット(bit)である0〜16383ステップ(step)のディジット(digit)出力を発生させる。したがって、ギヤ比が2:1の場合、メインギヤ20が1回転すると、第1サブギヤ22は2回の出力を発生させる。
【0019】
第1サブギヤ22の出力、より正確には、第1サブギヤ22に結合された第
1マグネット32の磁界変化を感知した磁気素子の出力により、パルス幅変調(PWM: Pulse Width Modulation)された出力値は4分割して、メインギヤの90度間隔で出力を発生させるのである。
【0020】
パルス幅変調された出力は、14ビット(bit)のタイムカウンター(Time Counter)を通して角度を表現し、ステップ値は、下限から25%および83%程度の範囲のデータを用いる。このとき、データの範囲は、2400〜13600程度に設定される。
【0021】
したがって、メインギヤ20が90度回転する間、第1サブギヤ22を介した出力データは、フルデータの半分である0〜8192の範囲となり、これに一定のスケールファクターを乗算することにより、設定範囲である2400〜13600のデータに変換させて角度を測定するようになる。
スケールファクターの大きさに応じて誤差の範囲が異なり得ることは前述したとおりである。
【0022】
図2では、メインギヤ20と第1サブギヤ22とのギヤ比が2:1である場合のグラフを示すものであり、メインギヤ20が略250度程度回転する間、測定値の回転量の誤差は最大1度近くになる。このとき、スケールファクターの影響により、横軸におけるデータの間には一定の線形性を表すようになる。
【0023】
したがって、本発明の概念では、回転量の誤差および線形性を低減することによって操向角の誤差を最小化させることができるように、メインギヤとサブギヤとのギヤ比が4:1に設定されたアングルセンサーを提供する。
【0024】
この場合、メインギヤ20が90度回転する間、第1サブギヤ22は1回転、すなわち、360度回転し、結局、第1サブギヤ22による出力は、14ビットのフルデータである0〜16383の値のデータとして表れるため、設定範囲である2400〜13600に相当するデータを抽出するために、少ない値のスケールファクターを用いることができる。
したがって、このような概念により、磁気素子のエラー率が減少し、結局、出力データの非線形性が増加できる。
【0025】
図3は、本発明の概念によるアングルセンサーのメインギヤの回転量に対する測定値の誤差を示すグラフである。
【0026】
メインギヤの約250度程度の回転量に対し、縦軸に示された測定値の誤差は0.5度未満となっていることに留意しなければならない。誤差範囲は、
図2におけるギヤ比が2:1の場合に比べて半分程度となったもので、これにより、データの間における線形性は低減できるのである。
【0027】
一方、磁界変化に応じたビット単位の出力の効率的な活用のために、磁気素子は、ホール素子(Hall IC)であることが好ましい。
本発明の実施形態では、第2サブギヤ21および第1サブギヤ22は、同一のギヤ比を有し、メインギヤ20に対して4:1のギヤ比を有する。したがって、ギヤ比の差は半径の差で説明可能である。すなわち、メインギヤ20と第1サブギヤ22との半径は4:1となり得る。
【0028】
ただし、第2サブギヤ21と第1サブギヤ22のギヤ数が異なって設定されてもよく、メインギヤと第1サブギヤとの間には複数のギヤが介在してもよいことはもちろんである。
【0029】
この場合、ギヤ比に対する用語は、回転量の差で修正されなければならない。すなわち、メインギヤに対する、メインギヤの回転量を測定するサブギヤの回転量の比は1:4に設定される。
【0030】
すなわち、前記のように、メインギヤ20の90度間隔で出力値を4分割して測定する場合、磁気素子のセンシング能力およびギヤの配置関係を考慮して、前記のように、略フルデータを出力できる4:1のギヤ比で行われることが最も好ましい。すなわち、磁界感知の効率性のためにマグネットの着磁位置および大きさが考慮されなければならず、マグネットの磁界変化を測定するホール素子は所定間隔離隔しているため、サブギヤの半径はある程度確保されなければならない。したがって、メインギヤとサブギヤの磁界変化の感知効率を確保することができる一方、測定誤差を最小化することができる最適なギヤ比は4:1のギヤ比となるのである。
【0031】
ただし、構造的な選択により、メインギヤに対する、メインギヤの回転量を測定するサブギヤの回転量は4の倍数になっていてもよいことはもちろんである。
以上、本発明は、実施形態および添付した図面に基づいて詳細に説明された。しかし、上記の実施形態および図面により本発明の範囲が制限されるのではなく、本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲に記載された内容によってのみ制限される。