【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年 8月27日 公益財団法人ミズノスポーツ振興財団の下記ウェブサイト「http://www.mizuno.co.jp/zaidan/ikagaku/josei_2010.html」を通じて発表
【文献】
三脚をスポンジグリップ化。,the Things give Pleasure(個人作成のブログ),2010年11月26日,[平成29年6月23日検索],インターネット<http://quack-quack.at.webry.info/201011/article_7.html>
【文献】
木越清信 等,小学生における合理的な疾走動作習得のための補助具,体育学研究,2012年,Vol.57,215-224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前面部材における前記第1の固定端から前記第1の端部までの長さ、および前記後面部材の前記第2の固定端から前記第2の端部までの長さを55mm以上としたときの、前記第1の測定時間は、前記第2の測定時間より0.01秒以上長い、請求項4に記載の走行練習具。
請求項1〜9のいずれか1項に記載されており、かつ前記固定部材が使用者の一方の足に固定可能とする装着部と、前記接触部材と接続して前記接触部材を他方の足と接触可能なように固定する固定部とを含む走行練習具に用いられる接触部材であって、
前記固定部材の前記固定部と着脱可能に接続される接続部と、前記接続部より前記接触部側に位置する端部とを備え、
前記接触部材は長軸に沿って延びる形状を有し、
前記接触部材の長軸方向に垂直な方向の前記接続部の幅は、前記端部を含む前記接触部材の他の部分の幅より狭くなっている、接触部材。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態1)
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る走行練習具100の構造について説明する。走行練習具100は、固定部材10と接触部材20とを備える。
【0020】
図2を参照して、固定部材10は使用者の一方の足Rの一部(たとえば下腿部)に固定可能に構成されている。具体的には
図3を参照して、固定部材10は、使用者の一方の足に固定可能とする装着部11と、接触部材20と接続して接触部材20を他方の足と接触可能なように固定する固定部12とを含む。装着部11および固定部12の一方端には、固定部材10のその他の領域と着脱可能とする面ファスナー11a、12aがそれぞれ設けられている。装着部11は、一方向に延びる帯状の形状を有する。固定部12には、装着部11と交差する(
図3では直交する)ように延びる帯状の形状を有する。固定部材10全体としては、装着部11と固定部12とが交差する十字状の形状を有する。
【0021】
固定部材10の装着部11の長さは、使用者の下腿部に巻き付けて固定可能とする長さであって、使用者の体格に応じて選択することができ、たとえば200mm以上350mm以下である。装着部11の幅は、たとえば10mm以上50mm以下である。固定部12の長さは、たとえば100mm以上300mm以下である。固定部12の幅は、たとえば10mm以上50mm以下である。
【0022】
固定部材10を構成する材料としては、クロロプレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0023】
接触部材20は、使用者の一方の足Rに固定部材10が固定されたときに、他方の足Lに接触可能に構成されている。具体的には、使用者の一方の足Rの下腿部前面に固定部12が配置されるように固定部材10により固定されたときに、使用者が進行方向(前面)に対して垂直な方向(横方向)に両足を所定の距離(たとえば肩幅程度)に開いて直立した状態において、接触部材20は他方の足Lの下腿部前面と接触可能な接触部20cを含むように設けられている。なお、
図2の例では、固定部材10は使用者の一方の足として右足Rに固定されているが、固定部材10は左足Lに固定されていてもよい。この場合、接触部材20は、他方の足である右足Rに接触可能な接触部20cを含むように設けられる。
【0024】
接触部材20は長軸に沿って延びる形状を有し、長軸方向の長さは100mm以上300mm以下である。好ましくは、接触部材20の長軸方向の長さは、150mm以上300mm以下であり、より好ましくは、200mm以上250mm以下である。接触部材20の長軸に垂直な方向の幅は、10mm以上50mm以下である。また、接触部材20の厚みは、5mm以上である。
【0025】
図4を参照して、接触部材20は、固定部材10の固定部12と接続される接続部20bと、接続部20bより接触部20c側に位置する端部20aとを含む。接続部20bの幅(接触部材20の長軸方向に垂直な方向の幅)は他の部分での幅より狭くなっている。異なる観点から言えば、接続部20bの端面(
図4の上下方向での端面)には凹部が形成されている。凹部の幅は固定部12の幅と同じか、または固定部12の幅より広くなっている。
【0026】
接触部材20を構成する材料としては、樹脂材料、金属材料、木材、および繊維強化樹脂(Fiber Reinfoced Plastic)からなる群から選択される少なくとも一つを含む。好ましくは、熱可塑性ウレタン樹脂、エーテル系ウレタン樹脂、エステル系ウレタン樹脂、オレフィン系ウレタン樹脂、ポリアミド、アイオノマー樹脂、スチレン系樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、塩化ビニル等の樹脂材料から選択される少なくとも1つを含む。
【0027】
このとき、接触部材20は、接触部20cが固定部材10に対して移動可能なように固定部材10に接続されている。つまり、接触部20cは、使用者の一方の足Rに固定部材10が固定されたときに、接触部材20が屈曲することにより固定部材10に対して使用者の前面側および後面側に移動可能となるように構成されている。
【0028】
このため、走行練習具100を装着した使用者が走行動作を行った場合、走行動作において使用者の他方の足L(遊脚)は、一方の足R(支持脚)より進行方向に向かって前方に蹴り出されるときに
他方の足
Lの前面側が接触部材20の後面側と接触する。このとき、接触部20cは前面側に蹴り出されて移動することができる。さらにその後、一方の足R(遊脚)が他方の足L(支持脚)より前方に蹴り出されるときには、接触部材20の前面側が他方の足Lの後面側と接触する。このとき、接触部20cは固定部材10に対し後面側に屈曲させられる。これにより、走行練習具100は、使用者の走行動作を妨げることなく、使用者に他方の足Lと接触部20cとの接触を意識させることができる。
【0029】
また、上述のように、他方の足Lと接触部材20との接触は、それぞれの足R、Lが遊脚として前方に蹴り出されるときに発生する。そのため、使用者は遊脚を前方に蹴り出すことを強く意識して走行動作を行うことができ、これにより遊脚の蹴り出し速度を速めることができる。さらに走行動作を行っている使用者は、当該2つの接触の時間的間隔も容易に自覚することができる。またはいずれか一方の接触の後、再び同様に接触するまでの時間的間隔(例えば、他方の足Lが遊脚として蹴り出されて接触部材20と接触した後、支持脚となり、さらに遊脚として再び接触部材20と接触するまでの時間的間隔)も容易に意識することができる。このような接触の時間的間隔は、遊脚の蹴り出し速度が遅く、走行動作の所定時間内における繰り返し回数が少ないと長くなる。よって、このような接触の時間的間隔を短縮することができれば、遊脚の蹴り出し速度を速め、走行動作の所定時間内における繰り返し回数を増やすことができ、より速く走ることができる。つまり、走行練習具100を装着した使用者は、走行動作において接触部材20と他方の足とが接触するときの他方の足の蹴り出し速度を速めるように(つまり接触部材20と他方の足との接触時のインパクトを強くするように)、かつその時間的間隔を短縮するように意識して走行することにより、より速く走ることができるようになる。
【0030】
実際に、小学生を被験者として本実施の形態に係る走行練習具を用いて短距離走での走行技能の指導を行った結果、走行練習具を用いずに指導を行った場合と比べて被験者の走行速度の向上が認められた。なお、詳細は後述する。
【0031】
図3および4を参照して、固定部材10と接触部材20との接続について説明する。接触部材20は、装着部11に沿うように、かつ、接続部20bを固定部12と装着部11との交差点に重ねるように配置した上で、接続部20bのまわりを周回するように固定部12を巻きつける。そして、面ファスナー12aが固定部材10において対向する領域に貼り合わせされることにより、接触部材20は固定部材10に接続固定される。このようにして、
図1に示す、本実施の形態に係る走行練習具100が用意される。
【0032】
以上のように、本実施の形態に係る走行練習具100は、接触部材20が走行動作において他方の足と接触可能なように固定部材10により一方の足に装着されることで、使用者の走行動作を妨げることなく走行動作中の使用者にその他方の足と接触部20cとの接触を意識させることができる。このため、使用者は、走行練習具100を用いて、接触時のインパクトを強めるように、かつ接触の間隔を短縮するように意識しながら走行練習を行うことにより、遊脚の蹴り出し速度を速め、かつ走行動作の所定時間内における繰り返し回数を増やす練習を効果的に実施することができる。これにより、本実施の形態に係る走行練習具100は、走行技能の向上に対して効果的であると考えられる。また、使用者の一方の足に固定する固定部材10と他方の足と接触する接触部材20とを備えた簡便な構造を有しているため、児童も容易に使用することができる。
【0033】
図5を参照して、本実施の形態に係る接触部材20は可撓性を有していることが好ましい。このようにすることで、接触部材20は、接触部材20において固定部材10と接続されている領域における接触部20c側の端部(以下、固定端という)20fから当該固定端20fより接触部20c側に位置する接触部材20の端部20aまでの間の領域が、接触部20cが使用者の足と接触することによって固定部材10に対して移動可能である。また、同時に、接触部材20の上記領域は接触後に使用者の足により押圧される程度に応じて屈曲することができる。このようにすることで、接触部材20が剛体のように硬度が高く変形しにくい材料からなり、固定部材10との接続部を構成する固定部12が変形することで、接触部材20の端部20aが固定部材10に対して移動可能として設けられている場合よりも、使用者が走行動作を行って他方の足と接触部材20とが接触した場合に、使用者の足への負担を低減し、かつ走行動作の妨げになることを抑制することができる。
【0034】
図5を参照して、接触部材20に対して無負荷の場合における固定端20fと端部20aとを結ぶ直線L1と、端部20aを押圧することにより接触部材20を弾性変形させた(屈曲させた)状態における固定端20fと端部20aとを結ぶ直線L2との交差角θ1の最大角が、70度以上となるように接触部材20を構成することが好ましい。具体的には、たとえば、このような交差角θ1を実現することができるような弾性変形が可能な材料および形状を、接触部材20の材料および形状に採用することが好ましい。接触部材20の材料としては、たとえば、ポリウレタンやポリエチレンなどの樹脂を用いることができる。また、接触部材20の形状は、たとえば、長方形状としてもよく、その厚みは5mm以上20mm以下、より好ましくは5mm以上12mm以下とすることができる。このようにすることで、使用者が走行動作を行って他方の足と接触部材20とが接触した場合にも、使用者の足への負担を低減し、かつ走行動作の妨げになることを抑制することができる。
【0035】
本実施の形態において、固定部材10は使用者の下腿部に固定されたが、走行練習の妨げにならない限りにおいて、使用者の足において任意の場所に固定可能に構成してもよい。たとえば、使用者の一方の足のふくらはぎの下部に固定されていてもよい。このようにしても、本実施の形態と同様の効果を期待できる。
【0036】
本実施の形態において、接触部材20は、使用者の両足が進行方向に対して垂直な方向に並んでいるときに、他方の足L(
図2参照)に接触可能に構成されているが、これに限られるものではない。接触部材20は、走行動作において実現される両足間の所定の位置関係において、他方の足Lに接触可能となる接触部20cを含むように設けられてもよい。このようにしても、走行動作を行っている使用者は、接触を知覚することで両足が所定の位置関係を示していることを自覚することができる。さらに、その後両足が所定の位置関係を示すことにより再び接触するまでの時間的間隔も容易に自覚することができる。
【0037】
また、
図1に示す接触部材20は板状の構造を有しているが、これに限られるものではない。接触部材20は、固定部材10が使用者の一方の足R(
図2参照)に固定されたときに、他方の足Lと接触可能な接触部20cを含み、接触部20cが固定部材10に対して移動可能なように固定部材10に接続されている限りにおいて、任意の構造を有することができる。
【0038】
(実施の形態2)
次に
図6および
図7を参照して、本発明の実施の形態2に係る走行練習具200について説明する。本実施の形態に係る走行練習具200は、基本的には実施の形態1と同様の構成を備えるが、接触部材20が2つの層を有する積層体で構成される点で異なる。
【0039】
積層体では接触部20cにおいて2つの層が分離可能であり、当該2つの層は、固定部材10が使用者の一方の足に固定されたときに、使用者の前面側に位置する前面部材21と、使用者の後面側に位置する後面部材22とである。
【0040】
後面部材22は、固定部材10が使用者の一方の足に固定されたときに、他方の足と接触可能な直接接触部22cと、固定部材10と接続されている領域における直接接触部22c側の第2の固定端22fと、当該第2の固定端22fより直接接触部22c側に位置する第2の端部22aとを含む。
【0041】
一方、前面部材21は、後面部材22と積層したときに直接接触部22cと重なる部分である対向部21cと、固定部材10と接続されている領域における対向部21c側の第1の固定端21fと、当該第1の固定端21fより対向部21c側に位置する第1の端部21aとを含む。なお、
図6および7の例では、固定部材10は使用者の一方の足として右足Rに固定されているが、固定部材10は左足Lに固定されていてもよい。この場合、後面部材22および前面部材21は、他方の足である右足Rに接触可能な直接接触部22cと、直接接触部22cと重なる対向部21cをそれぞれ含むように設けられる。
【0042】
このとき、前面部材21と後面部材22とは、
図5に示す実施の形態1に係る接触部材20と同様に、それぞれ第1の端部21a、第2の端部22aを押圧することにより交差角θ1を70度とするまで屈曲することができる。さらにこのとき、交差角θ1が70度となるまで屈曲させてからそれぞれ第1の端部21a、第2の端部22aを開放したとき、屈曲した状態に留まっている時間は、前面部材21の方が後面部材22よりも長い。
【0043】
具体的には、前面部材21と後面部材22とは以下のような関係性を有する。
図8を参照して、前面部材21において、固定部材10と接続される部分を狭持機構30により固定する。狭持機構30により固定され、かつ第1の端部21a側に位置する部分を第1の固定端21fとする。次に、無負荷の状態にある前面部材21に対し、第1の端部21aを押圧することで屈曲させる。このとき、前面部材21に対して無負荷の状態における第1の固定端21fと第1の固定端21fより対向部21c側に位置する第1の端部21aとを結ぶ直線と、前面部材21を屈曲させた状態における第1の固定端21fと第1の端部21aとを結ぶ直線との成す角度を交差角θ2とする。そして、交差角θ2が70度となるまで前面部材21を屈曲させる。その後、第1の端部21aの押圧を開放し、交差角θ2が60度以下30度以上である時間を第1の測定時間T21とする。
【0044】
一方、上記の測定において前面部材21を後面部材22に置き換えることで同様の測定を行う。後面部材22において、固定部材10と接続される部分を狭持機構30により固定する。狭持機構30により固定され、かつ第2の端部22a側に位置する部分を第2の固定端22fとする。次に、無負荷の状態にある後面部材22に対し、第2の端部22aを押圧することで屈曲させる。このとき、後面部材22に対して無負荷の状態における第2の固定端22fと第2の固定端22fより直接接触部22c側に位置する第2の端部22aとを結ぶ直線と、第2の端部22aを押圧することで後面部材22を屈曲させた状態における第2の固定端22fと第2の端部22aとを結ぶ直線との成す角度を上述の場合と同様に交差角θ2とする。そして、交差角θ2を70度となるまで後面部材22を屈曲させる。その後、第2の端部22aを開放し、交差角θ2が60度以下30度以上である時間を第2の測定時間T22とする。
【0045】
このとき、第1の測定時間T21は第2の測定時間T22と比べて長い。第1の測定時間T21および第2の測定時間T22は、前面部材21および後面部材22の材質や構造等を適宜選択することで調整することができる。本実施の形態に係る前面部材21および後面部材22を構成する材料は、実施の形態1に係る接触部材と同様に選択することができる。たとえば、前面部材21の材料を後面部材22の材料より曲げ弾性率の低い材料とすることができる。このとき、前面部材21の厚みと後面部材22の厚みとは、同等程度とすればよい。
【0046】
図6を参照して、このように設けられた走行練習具200を装着した使用者が走行動作を行った場合、走行練習200は以下のように作用する。なお、
図6において、使用者の前面とは矢印Aの方向に向いた面であり、使用者が走行する方向は矢印Aの方向である。また、後面とはその反対側をいう。
【0047】
まず、
図6(1)を参照して、支持脚としての一方の足R(S)が遊脚としての他方の足L(I)より前方に位置する状態において、後面側から他方の足L(I)が前面側に移動する(蹴り出される)。次に、
図6(2)を参照して、他方の足L(I)が前面側に移動することで、直接接触部22cの後面側と他方の足L(I)の前面側とが接触した後、後面部材22は前面側に押し出されることにより固定部材10より前面側に屈曲させられる。このとき前面部材21も、直接接触部22cを介して対向部21cが前面側に押し出されることにより固定部材10より前面側に屈曲させられる。
【0048】
その後、
図6(3)を参照して、他方の足L(I)がさらに前方に蹴り出されることにより、他方の足L(I)と後面部材22との接触が解消されて、前面部材21および後面部材22が他方の足L(I)による押圧から開放される。この結果、前面部材21および後面部材22は接触前の無負荷の状態(
図6(1)の状態)に戻ろうとする。このとき、前面部材21は後面部材22よりも屈曲した状態に留まっている時間が相対的に長いため、後面部材22が前面部材21より先に無負荷の状態(
図6(1)の状態)に戻る。そして、前面部材21の第1の固定端21fより第1の端部21a側に位置する領域は、後面部材22の第2の固定端22fより第2の端部22a側に位置する領域に対し独立に運動した後、後面部材22の当該領域と衝突することになる。このとき衝突音が生じるため、使用者は上記接触を音としても知覚することができる。この結果、使用者は、衝突音の大きさや発生間隔から遊脚の蹴り出し速度や走行動作の所定時間内における繰り返し回数を自覚することができる。よって、使用者は、衝突音の大きさを強めるように、かつ間隔を短縮するように意識して走行することで、遊脚の蹴り出し速度を速め、走行動作の所定時間内における繰り返し回数を増やすことができる。
【0049】
また、この前面部材21と後面部材22との衝突音は使用者の周囲に居る第3者(指導者等)も知覚することができるため、指導者は当該衝突音を確認しながら使用者に対して指導を行うことができる。また、使用者は当該衝突音を利用して指導内容をより具体的に認識することができる。このようにすることで、本発明に係る走行練習具は、従来の指導方法と比べて走行技能向上の効果をより高めることができる。
【0050】
さらに、
図6(4)を参照して、その後の走行動作において、遊脚としての他方の足L(I)は支持脚としての一方の足R(S)より前方で地面に着地して、支持脚としての他方の足L(S)となる。代わって一方の足R(I)が遊脚となり、遊脚としての一方の足R(I)は前方に蹴り出される。
【0051】
図6(5)を参照して、その後、一方の足R(I)が他方の足L(S)を追い越すときに、前面部材21は、対向部21cの前面側と他方の足L(S)の後面側とが接触した後、一方の足R(I)とともに前方(前面側)に運動する固定部材10に対して相対的に後面側に屈曲させられる。このとき後面部材22も、対向部21cを介して固定部材10に対して相対的に後面側に屈曲させられる。
【0052】
図6(6)を参照して、その後、一方の足R(I)がさらに前方に蹴り出されることにより、一方の足R(I)と前面部材21との接触が解消されて、前面部材21および後面部材22が他方の足L(I)による負荷から開放されると、前面部材21および後面部材22は接触前の無負荷の状態(
図6(1)や(4)の状態)に戻ろうとする。このとき、負荷から開放された後の前面部材21は後面部材22に押し出されるように運動するため、結果的に前面部材21と後面部材22とはほぼ一体となった状態で無負荷の状態に戻る。このため、
図6(3)に示すように前面部材21と後面部材22とは独立に運動せず、上記のような衝突は起こらない。そのため、衝突音の発生は抑制される。
【0053】
つまり、本実施の形態に係る走行練習具200は、一連の走行動作において生じる2通りの接触において、
図6(1)〜
図6(3)に示すような一方の接触時においてのみ前面部材21と後面部材22との衝突音を発生させることができる。このようにすることで、走行動作中における衝突音の発生間隔を、使用者等がその長短を容易に認識することができる程度に適度に開けることができる。
【0054】
本実施の形態において、前面部材21における第1の固定端21fから第1の端部21aまでの長さ、および後面部材22の第2の固定端22fから第2の端部22aまでの長さを55mm以上としたときの、交差角θ2が60度以下30度以上となる時間である第1の測定時間T21は、第2の測定時間T22より0.01秒以上長い方が好ましい。このようにすれば、本実施の形態に係る走行練習具を装着した使用者が走行動作を行って、接触部材20を遊脚としての他方の足L(I)で蹴り出すように接触部材20と他方の足Lとを接触させた場合において、衝突音をより確実に発生させることができる。
【0055】
図8を参照して、このときの第1の測定時間T21および第2の測定時間T22は、たとえば以下のようにして測定する。まず、長軸方向の長さ220mmの前面部材21および後面部材22を用意する。次に前面部材21または後面部材22において、それぞれ固定部材10と接続する領域が位置する端部から45mmまでの領域を狭持機構30により固定する。このとき、それぞれの当該端部から45mmの部分が第1の固定端21fまたは第2の固定端22fとなる。また、当該端部に対して長軸方向の反対側に位置する第1の端部21aまたは第2の端部22aと、第1の固定端21fまたは第2の固定端22fまでの長さはいずれも175mm(55mm以上)となる。この状態で、上述のように第1の測定時間T21と第2の測定時間T22を測定する。
【0056】
また、本実施の形態において、第2の測定時間T22は0.1秒以下とするのが好ましい。このようにすれば、走行動作において、他方の足と接触部材20とが接触後に押圧(負荷)から開放されてその後再び接触するまでの間に、後面部材22を屈曲されていない状態に確実に回復させることができる。このとき、上述のように、第1の測定時間T21が第2の測定時間T22より0.01秒以上0.4秒以下程度長くなるような関係性を有するように前面部材21と後面部材22とが設けられた場合においても、
図6(1)などに示すように、後面部材22と前面部材21とが共に屈曲されていない状態に確実に回復させることができる。
【0057】
第2の測定時間T22は、より好ましくは、0.05秒以下とする。このようにすれば、走行動作において、他方の足と接触部材20とが接触後に押圧(負荷)から開放されてその後再び接触するまでの間に、後面部材22を屈曲されていない状態により確実に回復させることができる。このとき、上述のように、第1の測定時間T21が第2の測定時間T22より0.01秒以上0.45秒以下程度長くなるような関係性を有するように前面部材21と後面部材22とが設けられた場合においても、後面部材22と前面部材21とが共に屈曲されていない状態に確実に回復させることができる。
【0058】
さらに好ましくは、第2の測定時間T22は0.03秒以下とする。このようにすれば、走行動作において、他方の足と接触部材20とが接触後に押圧から開放されてその後再び接触するまでの間に、後面部材22を屈曲されていない状態により確実に回復させることができる。このとき、上述のように、第1の測定時間T21が第2の測定時間T22より0.01秒以上0.47秒以下程度長くなるような関係性を有するように前面部材21と後面部材22とが設けられた場合においても、後面部材22と前面部材21とが共に屈曲されていない状態に確実に回復させることができる。
【0059】
本実施の形態において前面部材21の材料を後面部材22の材料より曲げ弾性率の低い材料としたが、これに限られるものではない。前面部材21と後面部材22を同一の曲げ弾性率を有する材料で構成してもよい。この場合、
図9を参照して、例えば前面部材21の厚みを後面部材22の厚みよりも薄くすることにより、前面部材21の剛性を後面部材22の剛性よりも低くすることができる。そのため、第1の測定時間T21を第2の測定時間T22より長くすることができ、本実施の形態に係る走行練習具と同様の効果を奏することができる。また、
図10を参照して、例えば、前面部材21において対向部21cを構成する材料と直接接触部22cを構成する材料とは同一の曲げ弾性率を有する材料としてもよい。また、前面部材21において固定部12と接続される接続部21bを構成する材料を、後面部材22において固定部12と接続される接続部22bを構成する材料よりも曲げ弾性率が低い材料で構成してもよい。これとは逆に、接続部21bを構成する材料と接続部22bを構成する材料とを同一の曲げ弾性率を有する材料とするとともに、対向部21cを構成する材料を直接接触部22cを構成する材料よりも曲げ弾性率が低い材料で構成してもよい。このようにしても、第1の測定時間T21を第2の測定時間T22より長くすることができ、本実施の形態に係る走行練習具と同様の効果を奏することができる。
【0060】
また、
図11を参照して、例えば、前面部材21は、芯材41とその周囲を被覆している被覆材51とからなっていてもよい。また、後面部材22は、芯材42とその周囲を被覆している被覆材52とからなっていてもよい。この場合、芯材41を、芯材42よりも曲げ弾性率の低い材料で構成するとともに、被覆材51、52を同一の材料で構成してもよい。被覆材51、52を構成する材料は、足への衝撃を緩和するクッション性を有する材料であってもよいし、前面部材21と後面部材22とが衝突する際に所定の衝突音を発することができる材料(例えば、表面が平滑になっている材料など)として選択されてもよい。このようにしても、第1の測定時間T21を第2の測定時間T22より長くすることができ、本実施の形態に係る走行練習具と同様の効果を奏することができる。
【0061】
また、
図12を参照して、例えば、前面部材21は、接続部21bと対向部21cとがばね部61によって接続されている構造であってもよい。さらに、後面部材22も、接続部22bと直接接触部22cとがばね部62によって接続されてている構造であってもよい。このとき、接続部21bと接続部22b、および対向部21cと直接接触部22cとはそれぞれ同一の材料で構成されてもよい。
また、ばね部61をばね部62よりもバネ定数の低いばねで構成してもよい。このようにしても、第1の測定時間T21を第2の測定時間T22より長くすることができ、本実施の形態に係る走行練習具と同様の効果を奏することができる。
【0062】
また、
図13を参照して、例えば、一体の接触部材20の端部20aから接続部20b側に延びるスリットが形成されていることにより、対向部21cと直接接触部22cとが構成されていてもよい。この場合、対向部21cの厚みが直接接触部22cの厚みよりも薄くなるようにスリットが形成されていることにより、第1の測定時間T21を第2の測定時間T22より長くすることができ、本実施の形態に係る走行練習具と同様の効果を奏することができる。
【0063】
さらに、
図14を参照して、例えば、前面部材21における対向部21cの後面部材22側の表面には発音体71が、後面部材22における直接接触部22cの前面部材21側の表面には発音体72が、それぞれ形成されていてもよい。発音体71、72は、対向部21cと直接接触部22cとが衝突したときに所定の衝突音を発することができる任意の構成とすればよい。例えば、表面が平滑になっている材料からなっていてもよい。ここで、
図14の実施例では、
前面部材21と後面部材22とはそれぞれ同一の材料で構成されてもよい。なお、
図9〜
図14においては、前面部材21と後面部材22との構成を説明するために固定部材10は図示していない。
【0064】
また、
図15および16を参照して、本実施の形態において、前面部材21にはその表面において長軸方向に垂直な方向に延びる溝23が設けられていてもよい。
図15に示す走行練習具は、前面部材21と後面部材22とが固定部材10に溶着により接続されている。
【0065】
溝23は、前面部材21において、溶着により固定部材10と接続される部分以外に設けられる。溝23の数および間隔、ならびに形状に応じて、前面部材21において溝23が形成された領域の剛性を部分的に低下させることができる。好ましくは、溝23が形成されたことにより前面部材21において低剛性を示す領域は、溶着により固定部材10と接続される部分の近傍に設けられる。
【0066】
この場合、前面部材21と後面部材22とは、上述のように、異なる材料で構成されていてもよいが、同じ材料で構成されていてもよい。たとえば、前面部材21と後面部材22はいずれも比較的高剛性を示す材料(たとえば、低発泡ポリエチレンなど)で構成されていてもよい。このようにしても、前面部材21には溝23が形成されているため、前面部材21の全体としての剛性を後面部材22の剛性より低くすることができる。したがって、第1の測定時間T21は第2の測定時間T22より長くすることができ、走行動作における接触部材20と他方の足Lとの接触に伴って、前面部材21と後面部材22との衝突音を発生させることができる。また、前面部材21および後面部材22はいずれも高剛性であるため、高い耐久性を有することができる。なお、使用者の他方の足Lと接触する前面部材21の前面側および後面部材22の後面側には、接触による他方の足Lへの負担を和らげるための緩衝部が形成されていてもよい。
【0067】
また、
図6〜16において、前面部材21と後面部材22とは長軸方向の長さとそれに垂直な方向の幅が同一の形状を有しているが、これに限られるものではない。すなわち、前面部材21と後面部材22とが異なる形状および/またはサイズであってもよい。
【0068】
また、本実施の形態において、前面部材21と後面部材22とは、第1の測定時間T21が第2の測定時間T22よりも長くなるように設けられているが、第1の測定時間T21が第2の測定時間T22よりも短くなるように設けられていてもよい。この場合には、走行練習具200を装着した一方の足R(遊脚)を前方に蹴り出す際の、接触部材20と他方の足L(支持脚)との接触(干渉)の際に(つまり、
図6(4)〜
図6(6)に示す工程において)、前面部材21と後面部材22との衝突音を生じることができる。そのため、本実施の形態と同様の効果を期待できる。
【0069】
(実施の形態3)
次に
図17を参照して、本発明の実施の形態3に係る走行練習具について説明する。本実施の形態に係る走行練習具は、基本的には実施の形態1および2と同様の構成を備えるが、接触部材20の構成が実施の形態1および2の走行練習具とは異なっている。具体的には、接触部材20は、2つの層(前面部材21、後面部材22)を有する積層体で構成されている。前面部材21は、対向部21cが湾曲するように構成されている。また、後面部材22は、直接接触部22cが湾曲するように構成されている。前面部材21と後面部材22とは、
図17に示すように、前面部材21の第1の端部21aと、後面部材22の第2の端部22aとが接続されている。また、前面部材21の接続部21bと後面部材22の接続部22bとが接続されている。このとき、前面部材21の対向部21cと後面部材22の直接接触部22cとは間隔を隔てて対向配置されている。前面部材21と後面部材22とは同一の材料からなり、同一の厚みで構成されている。対向部21cと直接接触部22cとは曲げ剛性が同一である。
【0070】
本実施の形態に係る走行練習具が使用者の一方の足に固定されたとき、無負荷の状態において対向部21cと直接接触部22cとは分離している。しかし、走行動作において対向部21cの前面側が他方の足と接触して押圧されると、対向部21cは直接接触部22cに衝突し、衝突音を生じさせることができる。また、直接接触部22cの後面側が他方の足と接触して押圧されると、直接接触部22cは対向部21cに衝突し、衝突音を生じさせることができる。これにより、本実施の形態に係る走行練習具を用いた場合でも、使用者は、音の大きさや発生間隔から遊脚の蹴り出し速度や走行動作の所定時間内における繰り返し回数を自覚することができる。その結果、従来の指導・練習方法と比べて走行技能向上の効果をさらに上げやすくすることができる。
【0071】
なお、本実施の形態に係る走行練習具は、一方の足に固定されて走行動作がなされたとき、無負荷の状態において対向部21cと直接接触部22cとが分離しているとともに、対向部21cと直接接触部22cの少なくとも一方が他方の足と接触して押圧されたときに前面部材21と後面部材22とが衝突可能となるように構成されていてもよい。前面部材21と後面部材22とは、たとえば実施の形態2と同様に任意の構成とすることができる。具体的には、前面部材21と後面部材22とは異なる材料で構成され、曲げ剛性が異なっていても良い。また、前面部材21と後面部材22とは同一の材料からなり、異なる厚みで構成されていてもよい。さらに、
図17の例では、前面部材21と後面部材22とは、それぞれ湾曲した部分を有してるが、これに限られるものではない。例えば、一方(例えば、前面部材21)を平板形状として他方(例えば、後面部材22)のみを湾曲形状としてもよい。このようにしても、使用者は、音の大きさや発生間隔から遊脚の蹴り出し速度や走行動作の所定時間内における繰り返し回数を自覚することができ、従来の指導・練習方法と比べて走行技能向上の効果をさらに上げやすくすることができる。
【0072】
実施の形態1〜3において、走行練習具100、200は、使用者の一方の足Rに一つ固定されて用いられるが、これに限られるものではない。たとえば、一方の足Rの大腿部と下腿部に2つの走行練習具100、200を取り付けてもよい。また、両足にそれぞれ走行練習具100、200を取り付けて走行練習を行ってもよい。この場合、一方の足Rに取り付ける走行練習具100、200は他方の足Lに、他方の足Lに取り付ける走行練習具100、200は一方の足Rに、それぞれ接触可能に装着される。このとき、2つの走行練習具100、200は互いに干渉しないように、装着され得る。たとえば、一方の足Rの大腿部に取り付けた走行練習具100、200は他方の足Lの大腿部と接触するように、他方の足Lの下腿部に取り付けられた走行練習具100、200は一方の足Rの下腿部と接触するように、装着されることができる。このようにしても、上述した実施の形態1〜3と同様の効果を期待できる。
【0073】
ここで、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0074】
本発明に係る走行練習具100、200は、足に固定する固定部材10と、固定部材10に接続され、固定部材10が使用者の一方の足Rに固定されたときに、他方の足Lと接触可能な接触部20cを含む接触部材20とを備える。接触部材20は、接触部20cが固定部材10に対して移動可能なように固定部材10に接続されている。
【0075】
上記接触部材2020は可撓性を有してもよい。このようにすることで、本発明に係る走行練習具100、200を装着した使用者が走行動作を行って他方の足Lと接触部材20とが接触した場合にも、使用者の足への負担を低減し、かつ走行動作の妨げになることを抑制することができる。
【0076】
上記接触部材20は長軸に沿って延びる形状を有し、固定部材10の表面に対する長軸の角度が変更可能に、接触部材20は固定部材10に接続されていてもよい。このようにしても、本発明に係る走行練習具を装着した使用者が、走行動作を行う際に他方の足と接触部材20とが接触した場合にも、使用者の足への負担を低減し、かつ走行動作の妨げになることを抑制することができる。
【0077】
上記接触部材20は、少なくとも2つの層を有する積層体を含み、積層体では接触部において2つの層が分離可能としてもよい。2つの層は、固定部材10が使用者の一方の足に固定されたときに、使用者の前面側に位置する前面部材21と、使用者の後面側に位置する後面部材22とからなっていてもよい。接触部20cは、固定部材10が使用者の一方の足Rに固定されたときに、後面部材22に形成され、他方の足Lと接触可能な直接接触部22cを含んでもよい。このようにしても、上記接触により使用者に自身の走行動作を容易に自覚させることができるため、従来の指導方法と比べて走行技能向上の効果を上げやすくすることができる。
【0078】
上記前面部材21は、後面部材22と積層したときに直接接触部22cと重なる部分である対向部21cを含み、上記前面部材21と後面部材22とは以下の関係を有していてもよい。
図8に示したように、上記前面部材21のうち固定部材10と接続される部分を第1の固定端21fとし、前面部材21に対して無負荷の状態における第1の固定端21fと第1の固定端21fより対向部21c側に位置する第1の端部21aとを結ぶ直線と、第1の端部21aを押圧することで前面部材21を屈曲させた状態における第1の固定端21fと第1の端部21aとを結ぶ直線との成す交差角θ2を70度とした後、第1の端部21aを開放したとき、交差角θ2が60度以下30度以上である時間を第1の測定時間T21とする。
【0079】
また、後面部材22のうち固定部材10と接続される部分を第2の固定端22fとし、後面部材22に対して無負荷の状態における第2の固定端22fと第2の固定端22fより直接接触部22c側に位置する第2の端部22aとを結ぶ直線と、第2の端部22aを押圧することで後面部材22を屈曲させた状態における第2の固定端22fと第2の端部22aとを結ぶ直線との成す交差角θ2を70度とした後、第2の端部22aを開放したとき、交差角θ2が60度以下30度以上である時間を第2の測定時間T22とする。このときの第1の測定時間T21を第2の測定時間T22と比べて長くしてもよい。本発明に係る走行練習具200を装着した使用者が走行動作を行って、接触部材20を遊脚としての他方の足Lで蹴り出すように接触部材20と他方の足Lとを接触させた場合、接触部材20における前面部材21および後面部材22は、他方の足Lに押圧されていずれも進行方向前方(前面側)に屈曲した状態となる。このとき、前面部材21は後面部材22よりも屈曲した状態に留まっている時間が相対的に長くなるように設けられることにより、
図6(1)〜
図6(3)に示すように、押圧から開放された後の前面部材21の第1の固定端21fより第1の端部21a側に位置する領域は、後面部材22の第2の固定端22fより第2の端部22a側に位置する領域に対し独立に運動した後、後面部材22の当該領域と衝突することになる。このとき衝突音が生じるため、使用者は上記接触を音としても知覚することができる。この結果、使用者は、音の大きさや発生間隔から遊脚の蹴り出し速度や走行動作の所定時間内における繰り返し回数を自覚することができる。よって使用者は音の大きさを強め、音の間隔を短縮するように意識して走行することで、遊脚の蹴り出し速度を速め、走行動作の所定時間内における繰り返し回数を増やすことができる。また、この衝突音は使用者の周囲に居る第3者(指導者等)も知覚することができるため、指導者は当該衝突音を確認しながら使用者に対して指導を行うことができる。さらに、使用者は指導内容をより具体的に認識することができる。このようにすることで、本発明に係る走行練習具は、従来の指導・練習方法と比べて走行技能向上の効果をさらに上げやすくすることができる。
【0080】
なお、走行動作において接触部材20と他方の足Lとが接触する動作は、上記接触の他にも存在し、具体的には
図6(4)〜(6)に示すように、支持脚としての他方の足Lを遊脚としての一方の足Rが追い越す際にも、他方の足Lの後面側に接触部材20が接触する。この場合には、接触部材20は他方の足Lの押圧(負荷)を受けて進行方向後方(後面側)に屈曲した状態となる。押圧(負荷)から開放された後の前面部材21は後面部材22に押し出されるように共に運動するため、上記接触のような衝突は起こらず、衝突音の発生は抑制される。このようにすることで、走行動作中における衝突音の発生間隔を、使用者等がその長短を容易に認識することができる程度に適度に開けることができる。
【0081】
上記前面部材21における第1の固定端21fから第1の端部21aまでの長さ、および後面部材22の第2の固定端22fから第2の端部22aまでの長さを55mm以上としたときの、第1の測定時間T21は、第2の測定時間T22より0.01秒以上長くしてもよい。このようにすれば、本発明に係る走行練習具200を装着した使用者が走行動作を行って、接触部材20を遊脚としての他方の足Lで蹴り出すように接触部材20と他方の足Lとを接触させた場合において、衝突音をより確実に発生させることができる。
【0082】
上記第2の測定時間T22は0.1秒以下としてもよい。このようにすれば、走行動作において接触部材20と他方の足Lとの接触後に接触部材20が押圧から開放されてから再び接触部材20と他方の足Lとが接触するまでの間に、後面部材22を屈曲されていない状態に確実に回復させることができる。このとき、上述のように、第1の測定時間T21が第2の測定時間T22より0.01秒以上長くなるような関係性を有するように前面部材21と後面部材22とが設けられた場合でも、前面部材21も屈曲されていない状態に確実に回復させることができる。
【0083】
上記接触部材20の長軸方向での長さは100mm以上300mm以下としてもよい。
上記固定部材10を構成する材料は、クロロプレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。上記接触部材20を構成する材料は、ポリウレタンおよびポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0084】
本発明に係る接触部材20は、上記の走行練習具100、200に用いられる接触部材20であって、固定部材10に対し着脱可能に構成されていてもよい。これにより、接触部材20を必要に応じて容易に交換することができる。
【0085】
次に、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0086】
本願発明者らは、実施の形態1に係る走行練習具について、走行練習に用いたときの効果を評価した。以下、その結果を説明する。
【0087】
(実施例)
まず、同日の1時限目に、小学校5年生の33名(男子18名、女子15名)に対し、50m走のタイムトライアルを1人2回ずつ行った。
【0088】
その後、同日の2、3時限目に、実施の形態1に係る走行練習具を用いて、小学校5年生の33名(男子18名、女子15名)に対し、走行動作の指導および練習を行った。指導内容は、一方の足の膝下に走行練習具を固定して走行動作を行ったときの、接触部材と他方の足との接触およびその間隔を意識させ、積極的な遊脚の蹴り出しを促した。
【0089】
指導後、同日の4時限目に、走行練習具を装着しない状態で、再び50m層のタイムトライアルを1人2回ずつ行った。このとき、指導前のタイムトライアル時と風向が大きく異ならないように行った。
【0090】
(比較例)
まず、同日の1時限目に、小学校6年生の38名(男子20名、女子18名)に対し、50m走のタイムトライアルを1人2回ずつ行った。
【0091】
その後、同日の2、3時限目に、実施の形態1に係る走行練習具を用いずに、走行動作の説明および練習を行った。具体的には、遊脚の蹴り出し速度が速く、走行動作の所定時間内のおける繰返し回数が多い合理的な走行動作の連続写真、および非合理的な走行動作の連続写真を示して、合理的な走行動作について説明した。
【0092】
指導後、同日の4時限目に、走行練習具を装着しない状態で、再び50m走のタイムトライアルを1人2回ずつ行った。このとき、指導前のタイムトライアル時と風向が大きく異ならないように行った。
【0093】
(評価1:走行動作の分析)
50mのタイムトライアルにおいて、スタートから35m地点の側方にVTRカメラ(Sony社製、DCR−VX2100、露光時間1/1000秒)を設置し、VTR撮影を行った。このとき、計測地点(35m地点)を中心にパンニング撮影を行った。実長換算をするためにスタートから30m地点と40m地点との間に2m間隔で4点の較正マークを置いた。各被験者の走行動作をVTR撮影した上で、実施例および比較例の被験者の中から無作為に抽出した44名のVTR映像を基に、走行動作を分析した。
【0094】
具体的には、50mタイムトライアルにおけるスタート地点から30m以上40m以下の地点における1サイクル(2歩)の走行動作について、身体23点と較正マーク4点をビデオ動作解析システムFrame−DIAS(デイ・ケイ・エイチ社製)を用いてデジタイズした。また、較正マークを基にMATLABを用いて実長換算し、平滑化した後、身体部分の2次元座標を算出した。
【0095】
次に、上記44名の画像データをもとに、ピッチ、ストライド、30m地点と40m地点の間の区間における疾走速度を算出した。
【0096】
(評価1−1:ピッチ)
VTR映像から1歩に要した時間を求めて、これの逆数をピッチとして算出した。
【0097】
(評価1−2:ストライド)
接地している一方の足のつま先の位置座標から、他方の足が接地したときの他方の足のつま先の位置座標までの距離をストライドとして算出した。
【0098】
(評価1−3:疾走速度)
算出したピッチとストライドの積を疾走速度として算出した。
【0099】
(評価1−4:遊脚重心移動速度)
図18を参照して、遊脚重心移動速度Vは、岡田ら(1993)の示した足部、下腿部、大腿部の質量(身体質量比)、および重心位置を参考に足の重心位置を求めて、これを時間で微分することで算出した。
【0100】
(評価1−5:腿上げ角度)
図19を参照して、腿上げ角度θ3は、大転子から地面に下ろした垂線と、大転子と膝関節中心とを結んだ線分との成す角度の最大値をいう。これを身体部分の2次元座標から算出した。
【0101】
(結果)
表1に各評価項目の結果を示す。評価1−1〜評価1−5について、実施例および比較例における指導前後での平均値と標準偏差を算出した。また、指導前後の評価結果に対して、危険率5%のt検定を行い有意差の有無を判定した。
【0102】
【表1】
【0103】
実施例においては、全ての評価項目について、実施の形態1の走行練習具を用いた指導の前後で有意な差が認められた。つまり、実施の形態1の走行練習具を用いた指導の効果を確認できた。具体的には、実施の形態1の走行練習具を用いた指導によって、ピッチは高くなり、ストライドは長くなり、疾走速度は速くなり、遊脚重心移動速度は速くなった。これは走行練習具を用いた指導および練習において、接触部材と足との接触を意識したことにより、ピッチが向上するとともに遊脚の蹴り出し速度(遊脚重心移動速度)が速くなったと考えられる。遊脚の蹴り出し速度が速くなった結果、腿上げ角度が大きくなり、遊脚の着地点が伸びるためストライドが長くなったと考えられる。
【0104】
一方、比較例においては、指導の前後で有意な差が認められなかった。つまり、合理的な走行動作および非合理的な走行動作について連続写真を示して行った指導については、優位な効果を確認できなかった。
【0105】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。