(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用前照灯においては、レーンマーク照射用付加配光パターンは自車走行レーンの左側に位置する自車線側レーンマークだけではなく自車走行レーンの右側に位置する対向車線側レーンマークも照射するように形成される。そのため、対向車線側レーンマークを照射するための光が路面によって反射され、対向車のドライバーにグレアを与えてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、対向車のドライバーに与えるグレアの発生を防止しながら、雨天走行時における車両前方の視認性向上を実現可能な車両用灯具システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る車両用灯具システムは、
(1)車両前方の水平方向に広がる拡散配光パターンを形成可能な第1光学系と、
自車線側の路肩に沿って延びる自車線側レーンマークおよび対向車線側に延びるレーンマークのうち、前記自車線側レーンマーク上およびその周辺にのみ光が照射される雨天時配光パターンを形成可能な第2光学系と、
を備え、
雨天走行時には、前記拡散配光パターンおよび前記雨天時配光パターンのうち少なくとも前記雨天時配光パターンが形成される。
この構成によれば、雨天走行時には少なくとも雨天時配光パターンが形成されるため、対向車のドライバーに与えるグレアを防止しながら、雨天走行時において自車線側レーンマーク周辺の視認性向上を実現することができる。
【0007】
(2)車線幅に応じて前記第1光学系の点消灯が切り替え可能であって、
前記車線幅が一定幅以下の場合は、前記第1光学系が消灯されて前記雨天時配光パターンのみが形成される構成としてもよい。
この構成によれば、車線幅に応じて拡散配光パターンと雨天時配光パターンとを選択的に形成可能であるため、道路状況に応じた配光パターンを適切に形成することができる。
【0008】
(3)雨量に応じて前記雨天時配光パターンの大きさが変更可能であって、
前記雨天時配光パターンは、雨量が増加するにつれて前記自車線側レーンマークの手前側に延伸される構成としてもよい。
この構成によれば、雨量の変化に応じて雨天時配光パターンの大きさを適切に変化させ、自車線側レーンマークの視認性を適切に確保することができる。
【0009】
(4)車速に応じて前記雨天時配光パターンの大きさが変更可能であって、
前記雨天時配光パターンは、車速が上がるにつれて前記自車線側レーンマークの延びる方向に沿って前記自車線側レーンマークの奥側に向けて短くなるように形成される構成としてもよい。
この構成によれば、車速の変化に応じて雨天時配光パターンの大きさを適切に変化させ、自車線側レーンマークの視認性を適切に確保することができる。
【0010】
(5)対向車線側に湾曲するカーブ路への車両進入時には前記雨天時配光パターンを消灯する構成としてもよい。
この構成によれば、運転者の視線がカーブ路の手前側に誘導されることがなく、対向車線側に湾曲するカーブ路への車両進入時の遠方視認性を確保することができる。
【0011】
(6)車両前部の自車線側に設けられて前記雨天時配光パターンを形成可能な第1の灯具ユニットと、車両前部の対向車線側に設けられて前記雨天時配光パターンを形成可能な第2の灯具ユニットとを備え、
所定の車速以上の場合には、前記第1の灯具ユニットを消灯するとともに、前記第2の灯具ユニットを点灯させる構成としてもよい。
この構成によれば、車速に応じて雨天時配光パターンを高速道路用配光パターンとしても用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対向車のドライバーに与えるグレアを防止しながら、雨天走行時において自車線側レーンマーク周辺の視認性向上を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態の例について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。また、以降の説明に用いる「右」および「左」は、運転席から車両前方を見た左右の方向を示している。
【0015】
(第1の実施形態)
図1に本発明の第1の実施形態に係る車両用灯具システムが搭載された車両の全体構成を模式的に示す。車両1は、統合制御部(ECU)10、左前照灯LHおよび右前照灯RHを備えている。
【0016】
統合制御部10は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を備え、車両1における様々な制御を実行する。統合制御部10は、ワイパ11、カメラ12、車速センサ13および雨滴センサ14と通信可能に接続されている。
【0017】
車両1の前部の左右に設けられた左右前照灯LH,RHは、それぞれ、第1灯具20と第2灯具30とを備えている。第1灯具20は、例えば、プロジェクタ型の灯具であってロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンを形成可能である。第2灯具30は、例えばフォグランプとして用いられる灯具である。統合制御部10により、第1灯具20による光の照射と第2灯具30による光の照射とが別個に制御される。
【0018】
図2は、第2灯具30から車両前方に照射される光により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンと、第2灯具30のオンオフ状態とを示す模式図である。なお、
図2(a)、(c)は、対向2車線の直線道路を左側通行で走行している様子を示しており、自車線と対向車線との間の道路中央に沿って延びる中央レーンマークLMC、自車線と左側の路肩との間に延びる自車線側レーンマークLML、対向車線と右側の路肩との間に延びる対向車線側レーンマークLMRが図示されている。
【0019】
図2(b)に示すように、第2灯具30は、第1光源30A(第1光学系の一例)と第2光源30B(第2光学系の一例)とを備えている。統合制御部10は、不図示のフォグランプスイッチの操作に応じて、第1光源30Aおよび第2光源20Bの点消灯を制御する。
第1光源30Aは、例えばパラボラ型の灯具から構成され、
図2(a)に示すように、拡散配光パターンP1を形成可能である。拡散配光パターンP1は、一般的なフォグランプ用配光パターンであり、車両前方の水平方向に広がるように光が照射されることで形成される。拡散配光パターンP1の照度は、例えば10000cd程度である。
【0020】
第2光源30Bは、例えばパラボラ型の灯具から構成され、
図2(a)に示すように、雨天時配光パターンP2を形成可能である。雨天時配光パターンP2は、自車線の左側に位置する自車線側レーンマークLMLおよび自車線の右側に位置する対向車線側のレーンマークLMC,LMRのうち、自車線側レーンマークLMLおよびその周辺のみを当該自車線側レーンマークLMLが延びる方向に沿って所定範囲にわたって照射することにより形成される。雨天時配光パターンP2の照度は、拡散配光パターンP1の照度よりも高く、例えば30000cd程度である。
【0021】
雨天走行時、例えば運転者がフォグランプスイッチ等を操作して雨天時配光パターンを形成するように指示がなされると、統合制御部10は、第1光源30Aおよび第2光源30Bを点灯させて、拡散配光パターンP1および雨天時配光パターンP2を形成する。また、統合制御部10は、ワイパ11の作動状態により雨量を検知し、ワイパ11の作動頻度が一定以上となった(すなわち、一定の雨量を超えた)と判断したときに、拡散配光パターンP1および雨天時配光パターンP2を形成してもよい。なお、カメラ12で路面を撮像して路面の冠水度を検知したり、雨滴センサ14によりフロントガラス上の雨滴の量などを感知したりすることで雨量を検知する構成としても良い。
【0022】
図2(a)に示されるように対向車線側配光パターンP0は、中央レーンマークLMCを当該中央レーンマークLMCが延びる方向に沿って所定範囲にわたって照射する配光パターンである。従来の車両用灯具システムにおいては、雨天走行時において自車線側レーンマークLML上を照射する雨天時配光パターンP2とともに対向車線側配光パターンP0を形成していた。しかし、雨天走行時に対向車線側配光パターンP0が形成されると、冠水した路面上で対向車線側配光パターンP0が反射されて、対向車のドライバーへのグレアとなってしまう場合があった。
【0023】
そこで、本実施形態においては、雨天走行時であるかどうかをフォグランプスイッチの操作やワイパ11の作動状態等により検知して、雨天走行時であると判断された場合には、第1光源30Aおよび第2光源30Bを点灯させることにより、対向車線側配光パターンP0を形成することなく、拡散配光パターンP1および雨天時配光パターンP2を形成するようにしている。これにより、対向車のドライバーに与えるグレアを防止しながら、雨天走行時における自車線側レーンマークLML周辺の視認性向上を実現することができる。
【0024】
なお、第2灯具30を通常のフォグランプとして用いたい場合は、
図2(d)に示すように、フォグランプスイッチの操作に応じて、第2光源30Bを消灯させた状態で第1光源30Aのみを点灯させることができる。これにより、
図2(c)に示すように、拡散配光パターンP1のみが形成され、通常のフォグランプとして利用できる。このように、本実施形態によれば、第1光源30Aおよび第2光源30Bの点消灯を制御して、拡散配光パターンP1および雨天時配光パターンP2の少なくとも一方を形成可能であるため、フォグランプとして用いられる第2灯具30の汎用性を高めることができる。
【0025】
また、
図2(e)に示すように、雨天走行時において、道路幅が狭い場合、例えば車両1が1車線のみの直線道路を通行する場合には、拡散配光パターンP1を形成せずに雨天時配光パターンP2のみを形成することが好ましい。
具体的には、車両前方を撮像するカメラ12により道路脇の建物等を検知して、道路幅が狭いと判断したとき、統合制御部10は、
図2(f)に示すように、第1光源30Aを消灯させた状態で第2光源30Bのみを点灯させて、雨天時配光パターンP2のみを形成することができる。道路幅が狭い場合に拡散配光パターンP1を形成すると、道路幅を大きく超えた範囲に光が照射されることとなり、自車線側レーンマークLML周辺の視認性が確保できなくなるとともに、歩行者等へのグレアを与えてしまうおそれがあるためである。
このように、本実施形態によれば、車線幅に応じて拡散配光パターンP1と雨天時配光パターンP2とを選択的に形成可能であるため、天候や道路状況に応じた配光パターンを適切に形成することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る車両用灯具システムにより形成される配光パターンを示す図である。
図1および
図2に示した第1の実施形態と同一または同等の構成要素については同一の参照番号を付与し、繰返しとなる説明は割愛する。
図3(a)に示すように、本実施形態において、雨天時配光パターンP2は、第1照射領域P2Aと、第2照射領域P2Bとを有している。第1照射領域P2Aは、自車線側レーンマークLMLの手前側の領域であり、第2照射領域P2Bは、自車線側レーンマークLMLの奥側の領域である。第1照射領域P2Aと第2照射領域P2Bがともに照射されると、第1実施形態と同様に雨天時配光パターンP2が形成される。
【0027】
本実施形態においては、雨滴センサ14等により雨量を測定して、雨量が一定量以上である(雨量が多い)と判断された場合には、
図3(a)のように、統合制御部10は、第1照射領域P2Aと第2照射領域P2Bの双方に光を照射して雨天時配光パターンP2を形成する。雨量が多い場合には、自車線側レーンマークLMLの手前側(自車線側レーンマークLMLにおける近距離部分)が見えにくくなるため、自車線側レーンマークLMLの手前側まで雨天時配光パターンP2を延伸させることが必要であるためである。
一方、雨量が一定量未満である(雨量が少ない)と判断された場合には、
図3(b)に示すように、統合制御部10は、第1照射領域P2Aに光を照射せずに、第2照射領域P2Bのみに光を照射する。雨量が少ない場合には、自車線側レーンマークLMLの奥側(自車線側レーンマークLMLにおける遠距離部分)にのみ光を照射して遠方視認性を確保するためである。
【0028】
第1照射領域P2Aの点灯および消灯の切り替えは、様々な方法により行うことができる。例えば、第1照射領域P2Aを形成する第2光源30Bと第2照射領域P2Bを形成する第2光源30Bとを別個に設けておき、雨量が少ない場合には、第1照射領域P2Aを形成する第2光源30Bを消灯させた状態で、第2照射領域P2Bを形成する第2光源30Bのみを点灯させる構成としても良い。また、第2光源30Bの近傍に不図示のリフレクタやシェードを設け、リフレクタやシェードを可動させることにより第1照射領域P2Aの点消灯を制御しても良い。さらに、例えば2つのLEDチップから構成される第2光源30Bの前方にレンズを設けたいわゆるモノフォーカス型の灯具を形成し、2つのLEDチップの点灯を切り替えることにより第1照射領域P2Aの点消灯を切り替えることもできる。
以上のように、本実施形態によれば、雨量の変化に応じて雨天時配光パターンP2の大きさを適切に変化させ、自車線側レーンマークLMLの視認性を適切に確保することができる。
【0029】
なお、第2の実施形態においては、雨量の変化に応じて雨天時配光パターンP2の大きさを変更可能な構成としているが、この例に限られない。例えば、車速の変化に応じて雨天時配光パターンP2の大きさを変更可能としてもよい。このとき、雨天時配光パターンP2は、車両1の車速が上がるにつれて自車線側レーンマークLMLの延びる方向に沿って自車線側レーンマークLMLの奥側に向けて短くなるように形成されることが好ましい。一般的に、車速が一定速度以上である場合には、自車線側レーンマークLMLの遠方視認性の向上が要求されるためである。
そのため、雨滴センサ14等により雨量を測定するとともに車速センサ13により車速を測定して、雨量が一定量未満であって車速が一定速度以上であると判断された場合には、統合制御部10は、
図3(b)に示すように、第1照射領域P2Aに光を照射せずに、第2照射領域P2Bのみを照射する。一方、車両1が高速走行中でなければ、自車線側レーンマークLMLの手前側の視認性も確保しておく必要があるため、雨量に関わらず車速が一定速度未満であると判断された場合には、統合制御部10は、
図3(a)に示すように、第1照射領域P2Aと第2照射領域P2Bの双方に光を照射して通常の雨天時配光パターンP2を形成する。
このように、高速走行中は、自車線側レーンマークLMLの手前側は消灯して奥側に向けて短くなるように雨天時配光パターンP2を形成することで、遠方側の視認性を確保することができる。
【0030】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る車両用灯具システムにより形成される配光パターンを示す図である。
一般的に、降雨量や路面の冠水状態により、自車線側レーンマークLMLの視認性は大きく変わる。例えば、雨が降り始めて路面がまだあまり濡れていない場合には自車線側レーンマークLMLの視認性が保たれているが、雨が降り続いて路面が完全に冠水している場合には、自車線側レーンマークLMLの視認性が落ちてしまう。
【0031】
そこで、本実施形態においては、
図4に示されるように、第2灯具30により、照射領域が大きく且つ照度の高い雨天時広大配光パターンP2Lと、雨天時広大配光パターンP2Lよりも照射領域が小さく且つ照度の低い雨天時狭小配光パターンP2Sとがそれぞれ形成可能に構成されている。雨天時広大配光パターンP2Lと雨天時狭小配光パターンP2Sとは、雨量の変化に応じて切り替えられる。具体的には、雨量が少ない場合には自車線側レーンマークLMLの視認性がある程度保たれているため、雨天時狭小配光パターンP2Sを形成すれば十分である。一方、雨量が一定量以上の場合には自車線側レーンマークLMLの視認性をより向上させる必要があるため、雨天時広大配光パターンP2Lを形成するようにしている。
【0032】
雨天時広大配光パターンP2Lと雨天時狭小配光パターンP2Sとの切り替えは、第2光源30Bへ印加される電流値を変動させることにより行うことができる。すなわち、第2光源30Bへ印加される電流値が高いと、広い範囲を明るく照射することが可能であり、雨天時広大配光パターンP2Lの形成に好適である。一方、第2光源30Bへ印加される電流値が低いと、照射領域は狭く照度も低くなるため、雨天時狭小配光パターンP2Sの形成に好適である。そのため、本実施形態においては、例えば、ワイパ11の作動状態により雨量を検知したり、カメラ12で路面を撮像して路面の冠水度を検知したりすることにより、第2光源30Bへ印加する電流値を変化させて、雨天時広大配光パターンP2Lと雨天時狭小配光パターンP2Sとを切り替えることができる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、第2実施形態と同様に、雨天時の道路状況に応じて雨天時配光パターンP2L,P2Sの大きさを適切に変化させて、自車線側レーンマークLMLの視認性を向上させることができる。
【0034】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態に係る車両用灯具システムにより形成される配光パターンを示す図である。
図5は、対向2車線の道路において、対向車線側に湾曲するカーブ路に車両1が進入している様子を示している。
上記第1の実施形態で説明したように、雨天時に車両1が直線道路を走行している場合には、拡散配光パターンP1および雨天時配光パターンP2が形成される。一方、本実施形態のように、車両1が対向車線側に湾曲するカーブ路へ進入するときには、雨天走行時であっても、第1光源30Aのみを点灯させて第2光源30Bは消灯させる。これにより、
図5に示すように、拡散配光パターンP1のみが形成され、自車線側レーンマークLML上を照射する雨天時配光パターンP2は消灯される。
【0035】
一般に、車両1がカーブ路へ進入する際には、運転者の視線はカーブ路の奥側に誘導されることが望ましい。しかし、車両1が対向車線側に湾曲するカーブ路へ進入するときに雨天時配光パターンP2が形成されると、車両1の正面側が照射されることとなるため、運転者の視線がカーブ路の手前側に誘導されてしまう。
そこで、本実施形態においては、雨天走行時であっても、例えば不図示のステアリングホイールの操作により車両1が対向車線側に湾曲するカーブ路へ進入すると判断された場合には、雨天時配光パターンP2を消灯して車両正面側を照射しないようにしている。なお、カメラ12により車両前方を検知して、車両1が対向車線側に湾曲するカーブ路へ進入するか否かを判断してもよい。
この構成によれば、運転者の視線がカーブ路の手前側に誘導されることがなく、対向車線側に湾曲するカーブ路への車両進入時の遠方視認性を確保することができる。
【0036】
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施形態に係る車両用灯具システムにより形成される配光パターンを示す図である。
図6は、例えば対向2車線の高速道路において、車両1が高速走行をしている様子を示している。
左側雨天時配光パターンP3は、
図1において車両1前部の自車線側に設けられた左側前照灯LH(第1の灯具ユニットの一例)の第2灯具30により形成される。この左側雨天時配光パターンP3は、自車線側レーンマークLMLを含む路肩側の領域を当該自車線側レーンマークLMLが延びる方向に沿って所定範囲にわたって照射する配光パターンである。
右側雨天時配光パターンP4は、
図1において車両1前部の対向車線側に設けられた右側前照灯RH(第2の灯具ユニットの一例)の第2灯具30により形成される。この右側雨天時配光パターンP4は、自車線側レーンマークLMLを含む自車線側の領域を当該自車線側レーンマークLMLが延びる方向に沿って所定範囲にわたって照射する配光パターンである。
【0037】
本実施形態においては、車速センサ13により車速を測定し、所定の車速以下で車両1が走行していると判断された場合は、統合制御部10は、左側前照灯LHの第2灯具30と右側前照灯RHの第2灯具30との双方を点灯させて、左側雨天時配光パターンP3と右側雨天時配光パターンP4とを形成することにより、自車線上および自車線側レーンマークLMLとその周辺に光を照射する。
一方、所定の車速以上で車両1が走行していると判断された場合には、統合制御部10は、
図6に示すように、左側前照灯LHの第2灯具30を消灯するとともに、右側前照灯RHの第2灯具30を点灯させて、右側雨天時配光パターンP4のみを形成することにより、自車線上に光を照射する。
【0038】
本実施形態によれば、車両1が高速道路等を高速走行中の場合には、対向車線側の右側前照灯RHの第2灯具30のみを点灯させて右側雨天時配光パターンP4を形成し、運転者から見て車両正面側に光を照射することで、高速走行に適した配光パターンを形成することができる。そのため、本実施形態の車両用灯具システムに備わる第2灯具30により、車速に応じて雨天時配光パターンと高速道路用配光パターンと適切に切り替えることができる。また、右側雨天時配光パターンP4は、右側前照灯RHから対向車線とは反対側(
図6における左側)に向けて照射される光により形成されるため、高速道路用配光パターンを形成する場合でも対向車のドライバーに与えるグレアを確実に防止することができる。
【0039】
上記の各実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0040】
なお、上記第2の実施形態においては、雨量が一定量を超えた場合に、第1照射領域P2Aと第2照射領域P2Bの双方を形成して、自車線側レーンマークLMLの手前側まで光を照射する構成としているが、この例に限られない。例えば、雨量が増加するにつれて雨天時配光パターンP2が自車線側レーンマークLMLの手前側に徐々に延伸される構成としてもよい。
また、車速に応じて雨天時配光パターンP2の大きさを変更する場合にも、車速が上がるにつれて雨天時配光パターンP2が自車線側レーンマークLMLの延びる方向に沿って奥側に向けて徐々に短くなるように形成される構成としてもよい。
さらに、雨量が一定量以下で車速が一定速度以上の場合には、
図7に示すように、雨天時配光パターンP2の自車線側レーンマークLMLの奥側を照射する部分を支点にして、自車線側レーンマークLMLの手前側を照射する部分を路肩側に回転させることで、雨天時配光パターンP2Cを形成してもよい。雨天時配光パターンP2Cは、雨天時配光パターンP2と比べて、自車線側レーンマークLML上を照射する部分が自車線側レーンマークLMLの奥側に向けて短くなっている。このような雨天時配光パターンP2Cは、例えば、雨量および車速に応じて第2光源30Bを回転可能に構成することで形成することができる。この構成によれば、簡便な構成で自車線側レーンマークLMLの遠方視認性の向上を図ることができる。
【0041】
上記の実施形態においては、車両1が左側通行で走行している場合の例を説明したが、車両1が右側通行車である場合も同様に適用することができる。