(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374147
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】タンク形真空遮断器
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20180806BHJP
H01H 33/662 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
H02B13/035 301A
H02B13/035 301G
H02B13/035 301H
H02B13/035 331
H01H33/662 R
H01H33/662 E
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-164633(P2013-164633)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-35861(P2015-35861A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年8月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】塩入 哲
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】浅利 直紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 信孝
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−045300(JP,A)
【文献】
特開平08−242513(JP,A)
【文献】
特開平11−164429(JP,A)
【文献】
特開2011−097686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60 − 33/68
H02B 13/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、
前記タンク内に設けられた第1の真空バルブと、
前記第1の真空バルブの固定側に固定された固定側電極と、
前記第1の真空バルブの可動側に固定された可動側電極と、
前記第1の真空バルブ、前記固定側電極、前記可動側電極の外周に設けられるとともに、固定側界面接続部および可動側界面接続部を設けた絶縁層と、
前記絶縁層の外周に設けられた接地層と、
前記固定側界面接続部に接続された界面接続部と固定側がい管内に収納された沿面絶縁部とを有する固定側ブッシングと、
前記可動側界面接続部に接続された界面接続部と可動側がい管内に収納された沿面絶縁部とを有する可動側ブッシングと、
前記絶縁層の固定側に設けた接地開閉空洞部を移動して前記固定側電極に接離する接地開閉棒と、
前記絶縁層の可動側に設けた開閉操作空洞部を移動するとともに、前記第1の真空バルブの可動軸に連結された絶縁操作ロッドと、
前記タンク内に封入された環境に適する絶縁ガスと、を備え、
前記第1の真空バルブ、前記接地開閉棒、前記絶縁操作ロッドを同軸上に配置したことを特徴とするタンク形真空遮断器。
【請求項2】
前記絶縁ガスは、乾燥空気、窒素ガス、二酸化炭素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のタンク形真空遮断器。
【請求項3】
タンクと、
前記タンク内に設けられた第1の真空バルブと、
前記第1の真空バルブの固定側に固定側が固定された第2の真空バルブと、
前記第2の真空バルブの可動軸に接続された接地極と、
前記第1の真空バルブ、前記第2の真空バルブの外周に設けられるとともに、固定側界面接続部および可動側界面接続部を設けた絶縁層と、
前記絶縁層の外周に設けられた接地層と、
前記固定側界面接続部に接続された界面接続部と固定側がい管内に収納された沿面絶縁部とを有する固定側ブッシングと、
前記可動側界面接続部に接続された界面接続部と固定側がい管内に収納された沿面絶縁部とを有する可動側ブッシングと、
前記絶縁層の可動側に設けた開閉操作空洞部を移動するとともに、前記第1の真空バルブの可動軸に連結された絶縁操作ロッドと、
前記タンク内に封入された環境に適する絶縁ガスと、を備え、
前記第2の真空バルブの固定側接点を固定側封着金具に固定したことを特徴とするタンク形真空遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タンク内に外部絶縁の補強をした真空バルブを収納し、接地開閉機能を付加したタンク形真空遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク形真空遮断器には、タンク内にSF6ガスのような絶縁ガスを封入し、真空バルブの外部絶縁の補強が行われている。しかしながら、環境上、SF6ガスの漏洩などを厳重に管理しなくてはならず、保守点検を困難とさせている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなタンク形真空遮断器は、架空線から受電し、電力系統の開閉を行う遮断機能ほか、母線電流切換を行う断路機能や、誘導電流開閉を行う接地開閉機能を有するとしている。しかしながら、いずれの機能も単独で有するものであり、複数機能が必要な場合にはその機能を有する複数台が必要であった(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
一方、真空絶縁容器内に、遮断用の接点と接地開閉用の接点を収納し、遮断機能と接地開閉機能を有するものが知られている。しかしながら、この真空絶縁容器は、箱体に収納され、電力ケーブルより受電されるものであり、定格電圧30kV以下の中電圧クラスに適用されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
これらのことより、架空線から受電し、定格電圧60kV以上の高電圧クラスに適用するタンク形真空遮断器において、真空バルブの外部絶縁を補強してSF6ガスのような絶縁ガスを不要とし、環境配慮形とするとともに、遮断機能と接地開閉機能を兼ね備えたものが望まれていた。複合機能化により、単独機能のものと比べて、設置面積の縮小化を図ることができる。これら環境配慮形や複合機能化は、最近の趨勢である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−229195号公報
【特許文献2】特開2001−319551号公報
【特許文献3】特開2011−120364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、真空バルブの外部絶縁を補強してSF6ガスに替わって環境に適する絶縁ガスを封入し、遮断機能とともに接地開閉機能を有して設置面積の縮小化を図ることのできるタンク形真空遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態のタンク形真空遮断器は、タンクと、前記タンク内に設けられた第1の真空バルブと、前記第1の真空バルブの固定側に固定された固定側電極と、前記第1の真空バルブの可動側に固定された可動側電極と、前記第1の真空バルブ、前記固定側電極、前記可動側電極の外周に設けられるとともに、固定側界面接続部および可動側界面接続部を設けた絶縁層と、前記絶縁層の外周に設けられた接地層と、前記固定側界面接続部に接続された界面接続部と固定側がい管内に収納された沿面絶縁部とを有する固定側ブッシングと、前記可動側界面接続部に接続された界面接続部と可動側がい管内に収納された沿面絶縁部とを有する可動側ブッシングと、前記絶縁層の固定側に設けた接地開閉空洞部を移動して前記固定側電極に接離する接地開閉棒と、前記絶縁層の可動側に設けた開閉操作空洞部を移動するとともに、前記第1の真空バルブの可動軸に連結された絶縁操作ロッドと、前記タンク内に封入された環境に適する絶縁ガスと、を備え
、前記第1の真空バルブ、前記接地開閉棒、前記絶縁操作ロッドを同軸上に配置したことを特徴とするたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係るタンク形真空遮断器の構成を示す断面図。
【
図2】本発明の実施例2に係るタンク形真空遮断器の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
先ず、本発明の実施例1に係るタンク形真空遮断器を
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るタンク形真空遮断器の構成を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、金属製の筒状のタンク1内には、軸方向に接離自在の一対の接点を有する第1の真空バルブ2が設けられている。第1の真空バルブ2の固定側には、円柱状の固定側電極3が固定されている。固定側電極3には、図示上部の側面に突出した固定側接続部4、第1の真空バルブ2と対向する軸面に窪んだ接地電極部5が設けられている。可動側には、筒状の可動側電極6が固定されている。可動側電極6には、図示上部の側面に突出した可動側接続部7が設けられ、内周部に第1の真空バルブ2の可動軸8が接触子9を介して移動自在に貫通している。
【0013】
固定側電極3、第1の真空バルブ2、可動側電極6の周りには、エポキシ樹脂をモールドして形成した絶縁層10が設けられている。絶縁層10の外周には、後述する界面接続部を除き、点線で示すように、導電性塗料を塗布した接地層11が設けられている。
【0014】
絶縁層10の固定側電極3側では、固定側接続部4がテーパ状に窪んだ固定側界面接続部となっており、また、筒状の接地開閉空洞部12が第1の真空バルブ2と同軸上に配置されている。接地電極部5は、接地開閉空洞部12に露出している。接地開閉空洞部12の絶縁層10端とタンク1の一方開口端は、フランジ13に固定されている。フランジ13の中央開口部には、接地開閉空洞部12を移動自在に移動し、接地電極部5に接離する接地電極棒14が設けられている。接地電極棒14は、接地操作機構15に連結され、接地極に接続されている。
【0015】
絶縁層10の可動側電極6側では、可動側接続部7がテーパ状に窪んだ可動側界面接続部となっており、また、筒状の開閉操作空洞部16が第1の真空バルブ2と同軸上に配置されている。開閉操作空洞部16には、可動軸8に連結された絶縁操作ロッド17が移動自在に配置されている。開閉操作空洞部16の絶縁層10端とタンク1の他方開口端は、フランジ18に固定されている。フランジ18の中央開口部には、絶縁操作ロッド17に連結された操作軸が貫通し、開閉操作機構19に連結されている。
【0016】
固定側接続部4には、固定側導体20が接続され、固定側がい管21を貫通している。固定側がい管21は、タンク1の図示左上部の開口穴に傾斜して取付けられている。固定側導体20の周りには、エポキシ樹脂をモールドした固定側絶縁層22が設けられ、図示下部側が突出した界面接続部となっており、絶縁層10に設けた固定側界面接続部と密着している。固定側絶縁層22の周りには、点線で示すように導電性塗料を塗布した固定側接地層23が設けられている。固定側がい管21内の固定側絶縁層22部分が沿面絶縁となる。固定側がい管21の先端には、一方の架空線が接続される固定側外部電極24が設けられている。
【0017】
可動側接続部7には、可動側導体25が接続され、可動側がい管26を貫通している。可動側がい管26は、タンク1の図示右上部の開口穴に傾斜して取付けられている。可動側導体25の周りには、エポキシ樹脂をモールドした可動側絶縁層27が設けられ、図示下部側が突出した界面接続部となっており、絶縁層10に設けた可動側界面接続部と密着している。可動側絶縁層27の周りには、点線で示すように導電性塗料を塗布した可動側接地層28が設けられている。可動側がい管26内の可動側絶縁層27部分が沿面絶縁となる。可動側がい管26の先端には、他方の架空線が接続される可動側外部電極29が設けられている。
【0018】
がい管21、26内を含むタンク1内には、乾燥空気、窒素ガス、二酸化炭素ガスのような環境に適するいずれかの絶縁ガスが正圧力で封入されている。接地開閉空洞部12、開閉操作空洞部17も同様である。なお、がい管21、26の外周に、貫通形変流器を設けることができる。
【0019】
これにより、絶縁層10で第1の真空バルブ2の外部絶縁を補強することができ、定格電圧60kV以上の高電圧クラスに適用するものでも、絶縁耐力がSF6ガスよりも低いとされる環境に適する絶縁ガスを封入することができる。適用する電圧クラスにより、絶縁層10の絶縁厚さや、絶縁層22、27の沿面絶縁距離を選定するものとする。また、固定側がい管21、可動側がい管26を有しているので、屋外にも設置することができ、架空線から受電することができる。更に、第1の真空バルブ2による電力系統の遮断機能と、接地電極部5と接離する接地開閉棒14を備えた接地開閉機能とを有しているので、機器の複合機能化を図ることができる。
【0020】
機器配置では、接地開閉棒14、第1の真空バルブ2、絶縁操作ロッド17を同軸上に配置し、第1の真空バルブ2を境に対称配置としているので、開閉機能と接地開閉機能の操作力を絶縁層10でバランスよく受けることができる。なお、第1の真空バルブ2によって遮断機能を有するので、電流開閉においては断路機能を有するものとなる。断路機能では、極間耐電圧が課せられるので、例えば遮断機能のものよりもギャップ長を大きくすればよい。
【0021】
接地開閉空洞部12から第1の真空バルブ2、開閉操作空洞部16までを一体の絶縁層10としたが、接地開閉空洞部12、第1の真空バルブ2、開閉操作空洞部16で分割し、互いを界面接続部で接続することができる。これにより、遮断機能と断路機能の真空バルブの入れ替えを容易とすることができる。
【0022】
ここで、固定側導体20、固定側絶縁層22、固定側接地層23などで構成される部材を、界面接続部を有する固定側ブッシングと定義する。また、可動側導体25、可動側絶縁層27、可動側接地層28などで構成される部材を、界面接続部を有する可動側ブッシングと定義する。
【0023】
上記実施例1のタンク形真空遮断器によれば、第1の真空バルブ2の外周に絶縁層10を設け、固定側に固定側がい管21に収納される固定側ブッシングを接続し、可動側に可動側がい管26に収納される可動側ブッシングを接続しているので、第1の真空バルブ2の外部絶縁を補強することができ、環境に適する絶縁ガスによっても定格電圧60kV以上の高電圧クラスに適用できるものとすることができる。また、第1の真空バルブ2による遮断機能と、固定側電極3に設けた接地電極部5と移動自在の接地開閉棒14によって接地開閉機能を持たせることができる。機器の複合機能化により、設置面積の縮小化を図ることができる。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の実施例2に係るタンク形真空遮断器を
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施例2に係るタンク形真空遮断器の構成を示す断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、接地開閉機能に第2の真空バルブを用いたことである。
図2において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0025】
図2に示すように、固定側電極3には、接離自在の一対の接点を有する第2の真空バルブ30の固定側が固定されている。第2の真空バルブ30の可動側は、接地操作機構15に連結され、接地極に接続されている。第2の真空バルブ30の外周には、絶縁層10が設けられている。
【0026】
上記実施例2のタンク形真空遮断器によれば、実施例1による効果のほかに、接地開閉機能を、投入性能や絶縁性能の優れた第2の真空バルブ30で行うことができ、縮小化を図ることができる。また、第2の真空バルブ30の固定側接点を固定側封着金具に固定しているので、可動側接点のストロークを長くすることができ、接地開閉器としての信頼性を向上させることができる。
【0027】
以上述べたような実施形態によれば、遮断性能を有する第1の真空バルブの外部絶縁を補強することができ、タンク内に環境に適する絶縁ガスを封入することができる。また、遮断機構(断路機能)と接地開閉機能を持たせることができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 タンク
2 第1の真空バルブ
3 固定側電極
6 可動側電極
10 絶縁層
11 接地層
12 接地開閉空洞部
14 接地開閉棒
16 開閉操作空洞部
30 第2の真空バルブ