(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、検量線が記憶されていない試薬組で且つ前記情報が記憶された試薬組がある場合、当該試薬組が、検量線が記憶されていない試薬組で且つ前記情報が記憶された試薬組であることを示す情報を付加して、前記指定領域にデフォルト表示する、請求項6に記載の検体分析装置。
前記制御部は、検量線が記憶されていない試薬組を用いて測定された検体について、測定後に作成された検量線を用いて検体の測定データを再計算することが可能である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体分析装置。
前記制御部は、キャリブレータの測定指示を受け付けると、検量線が記憶されていない試薬組で且つ前記情報が記憶された試薬組を自動抽出し、抽出された試薬組を用いてキャリブレータを測定する、請求項1に記載の検体分析装置。
前記制御部は、検量線が記憶されていない試薬組が複数ある場合、検量線が記憶されていない試薬組で且つ前記情報が記憶されている試薬組を、他の試薬組より優先して、キャリブレータの測定に使用する、請求項9に記載の検体分析装置。
前記制御部は、一の測定項目に使用する試薬として、検量線作成済みの試薬と、検量線が作成されていない試薬とが前記試薬庫に収納されている場合、検量線作成済みの試薬を優先して使用するよう測定部を制御し、検量線作成済みの試薬が不足すると、検量線が作成されていない試薬を使用するよう測定部を制御する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の検体分析装置及び検体分析方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施形態において、「試薬組」とは、試薬ロットの組み合わせを意味するものとする。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る検体分析装置1の斜視図であり、
図2は、
図1に示される検体分析装置1の概略平面図である。検体分析装置1は、複数の試薬を収納することができる試薬庫200を備えており、複数種類の試薬を組み合わせて使用して検体を測定することができる装置である。より詳しくは、検体分析装置1は、多項目に対応した血液凝固分析装置であって、複数種類の試薬を組み合わせて使用して検体としての血漿を測定することで、反応時間や濁度といった物理的な測定データを取得し、これを検量線に適用することで、その検体の凝固因子の量や凝固活性に関する分析パラメータに変換する装置である。
【0019】
〔装置の全体構成〕
まず、
図1〜2を参照しつつ、検体分析装置1の全体構成を説明する。
検体分析装置1は、
図1に示されるように、測定部としての測定装置2と、測定装置2の前面側に配置された搬送装置3とにより構成されている。測定装置2は、筐体4内に収容されている。
【0020】
測定装置2は、被験者から採取された検体と試薬とを混和して調製された試料を測定する機能を有する。測定装置2は、
図2に示されるように、キュベット供給部10と、検体分注部11と、検体プレート設置部12と、容器セット部13〜15と、試薬分注部17と、キュベット移送部18と、検出部19と、制御部20と、表示部21とを含んでいる。
【0021】
測定装置2は、搬送装置3から供給された検体から調製された試料に対して光学的な測定を行うことにより、当該検体に関する光学的情報を取得することが可能なように構成されている。本実施形態に係る検体分析装置1では、搬送装置3の検体容器Tから測定装置2のキュベット9内に分注された検体に対して光学的な測定が行われる。
【0022】
キュベット供給部10は、複数のキュベット9を収容しており、キュベット9を1つずつ順次所定位置に供給することが可能なように構成されている。
検体分注部11は、検体を吸引及び吐出するピペット11aを備えており、図示しない移動機構によって検体吸引位置P1と検体分注位置P2とを含む所定領域を移動可能に構成されている。検体分注部11は、搬送装置3の搬送路31上の検体吸引位置P1に搬送された検体容器Tから、当該検体容器T内に収容された検体を吸引する。そして、検体プレート設置部12に設置された検体プレートPのウェルに検体を分注するように構成されている。また、検体分注部11は、容器セット部13にセットされた洗浄液容器5及び容器セット部14にセットされた希釈液容器6から、それぞれ洗浄液及び希釈液を吸引して分注することが可能である。
【0023】
検体プレート設置部12には、複数のウェルを有する検体プレートPが並べて設置されている。検体プレートPのウェルには、検体分注部11によって吸引された検体が分注される(これを一次分注と呼ぶ)。ウェルに一次分注された検体は、測定時に再び検体吸引部11によって吸引され、キュベット移送部18に保持されたキュベット9に分注される(これを二次分注と呼ぶ)。
【0024】
測定装置2において、容器セット部13及び14は、装置の幅方向中央部に配置されており、容器セット部15は、検体分析装置1の正面(扉部4a側)に向かって左側部分にまとめて配置されている。これらの容器セット部13〜15にセットされる各種試薬容器は、それぞれ蓋を取り外した状態でセットされる。
【0025】
試薬分注部17は、試薬を分注するピペット17aを備えており、図示しない移動機構によって容器セット部15の上方(Z1方向)及び試薬分注位置P3を含む領域を移動可能に構成されている。試薬分注部17は、ピペット17aを用いて分注対象の試薬容器8から試薬を吸引し、試薬分注位置P3に配置されたキュベット9に試薬を分注するように構成されている。
【0026】
キュベット移送部18は、キュベット供給部10によって供給されたキュベット9を取り出し、検体分注位置P2、試薬分注位置P3及び検出部19などの各部へキュベット9を移送する。キュベット移送部18は、キュベット9を把持して移送可能なキャッチャ18aを備えており、図示しない移動機構によってキャッチャ18aを移動させることにより、キュベット9の取出し及び設置を行うほか、キュベット9内の検体と試薬との攪拌なども行う。
【0027】
検出部19は、検体に試薬を添加して調製された混合液(測定試料)の加温を行うとともに、測定試料の光学的な測定を行うための機能を有している。この検出部19は、キュベット9を挿入して設置可能な複数のキュベット載置穴19aを有する。キュベット載置穴19aに設置されたキュベット9内の試料は、図示しない加温機構によって所定温度に加温され、検体と試薬との反応が進行する。また、検出部19は、光源部(図示せず)から光ファイバを介して導入される測定光がキュベット載置穴19a内で試料に照射されるように構成されている。検出部19は、試料に照射された光を受光する受光素子(図示せず)を内蔵し、受光素子により受光された光を検出することにより、受光量に応じた検出信号を出力する。
【0028】
得られた検出信号は、制御部20に出力される。制御部20は、得られた検出信号に基づいて、反応時間や濁度などの測定データを取得する。また、制御部20は、筐体4の前面に配置された表示部21に分析結果を含む各種の画面表示を行うとともに、測定装置2の各部及び搬送装置3の動作制御を行う機能を有している。
【0029】
搬送装置3は、検体を収容した複数(本実施形態では、最大で10本)の検体容器Tが載置されたラックRを検体吸引位置P1まで搬送することにより、測定装置2に検体を供給するように構成されている。搬送装置3は、ラックRを測定装置2に搬送する搬送路31を備えている。
【0030】
搬送路31は、横方向に延びるように設けられ、ラック供給部31aと、ラック貯留部31bとを接続している。検体容器Tを収容したラックRはラック供給部31aにセットされる。ラック供給部31aは、セットされたラックRを順次搬送路31に供給する。搬送路31は、ラック供給部31aから供給されたラックRを検体吸引位置P1に向けて搬送する。搬送路31は、検体ラックRに載置された検体容器Tを先頭から順番に1つずつ検体吸引位置P1に位置付け、検体吸引部11が検体吸引位置P1に位置付けられた検体容器Tから検体を吸引する。このサイクルが全ての検体容器Tについて行われると、搬送路31はラックRをラック貯留部31bに向けて搬送する。ラック貯留部31bは、検体吸引済みの検体容器Tを収容したラックRを搬送路31から受け入れて貯留する。
【0031】
試薬庫200は、複数の試薬を収納可能な容器セット部15を備えている。そして、本実施形態に係る検体分析装置1は、連続測定中に試薬切れが発生することによる測定の中断を回避するために、使用中の試薬と同種類の予備の試薬バイアルをあらかじめ容器セット部15にセットしておくことで、検体測定に使用する試薬を自動的に同種類の別の試薬バイアルの試薬に切り替えて測定を継続する試薬自動切り替え機能を有している。
【0032】
本実施形態に係る検体分析装置1では、一つの測定項目に対し、容器セット部15に収納された試薬を複数種類組み合わせて使用して検体を測定することがある。たとえば、血液凝固検査の代表的な測定項目であるAPTTでは、検体である血漿に対してAPTT試薬を添加し、数分間加温した後で塩化カルシウム溶液を添加し、液中の反応を測光する。つまり、一つの測定項目に2種類の試薬が用いられることになる。血液凝固検査の項目の一つであるDダイマーでは、1回の測定プロトコルで、希釈液と、Dダイマー緩衝液と、ラテックス試薬の3種類の試薬を用いる。
【0033】
上記した例のように、一つの測定項目に2以上の複数の種類の試薬を用いる測定項目においては、試薬ロットの組み合わせ毎に検量線を作成する必要がある。例えば、或る測定項目に対し、R1、R2、R3という3種類の試薬を使用する項目があったとする。この場合、試薬R3がロットの異なる試薬R3´に切り替わる場合、試薬組「R1、R2、R3´」について検量線を作成する必要がある。新しい検量線の作成は、例えば試薬R2をロットの異なる試薬R2´に切り替える場合においても同様に必要である。また、複数種類の試薬を使用する他の測定項目についても、試薬ロットが切り替わるたびに、新たな試薬ロット組について検量線の作成が必要である。
【0034】
検量線は、通常であれば試薬がショートすることを見越してルーチン検査の前にあらかじめ作成しておくものであるが、オペレータが検量線を事前に作成し忘れたり、あるいはオペレータの予想を超える数のオーダが一つの測定項目に集中したりすると、試薬自動切り替え機能によって、検量線が作成されていない試薬組に切り替わって検体の測定が行われる場合がある。この場合、その検体について適用可能な検量線が装置内に記憶されていないため、測定データだけが記憶され、分析は行われない。したがって、その測定データを検量線によって分析して分析パラメータを得るには、測定終了後に同じ試薬組を用いて検量線を作成し、測定データを検量線に適用し、分析パラメータの再計算を行う必要がある。検量線の作成を装置にオーダする場合、オペレータは、検量線作成用試料(キャリブレータ)を準備し、検量線を作成する試薬組を指定して検量線作成オーダを装置に入力し、検量線作成オーダにしたがったキャリブレータの測定を装置に実行させる。
【0035】
検体分析装置1は、オペレータによる検量線作成オーダの入力を補助する機能として、装置内にセットされ且つ登録された試薬の組み合わせとして考えられる組み合わせを提示する機能を有している。より具体的にいえば、検体分析装置1は、検量線の作成が要求される測定項目が指定されると、その測定項目に使用される試薬の組み合わせとして考えられる全ての組み合わせを抽出し、表示部21に一覧表示する機能を有している。オペレータは、表示された試薬組の中から検量線を作成したい試薬組を選択すればよい。
【0036】
しかし、検量線は、検体の測定に使用されていない試薬組(つまり、これから使用の予定のある試薬組)について作成するのが通常である。そのため、表示される試薬の組み合わせの大半は検体測定に未使用の試薬組である。試薬自動切り替えによって検量線がない試薬組で検体の測定が行われた場合、未使用の試薬組と、既に検体測定に使用したが検量線が作成されていない試薬組とが混在することになるため、オペレータは、いくつもある未使用の試薬組の中から、既に検体測定に使用した試薬組を探し出す必要がある。
この作業は、特に、複数の試薬を使用する測定項目において煩雑になる場合がある。例えば、R1、R2、R3という3種類の試薬を使用する測定項目があったとする。R1、R2、R3についてそれぞれ予備の試薬(R1´、R2´、R3´)がセットされている場合、考えられる試薬組は2
3=8通りになる。これらの組み合わせのうち、すでに検量線が作成されているR1、R2、R3の組み合わせを除く7通りの中から、オペレータは、再計算に使用するための、試薬自動切り替えによって検体測定に使用された試薬の組み合わせを指定する必要がある。この作業は、試薬自動切り替えに使用された試薬のロットを把握しておかなければならないため、オペレータにとっては不便である。
【0037】
そこで、本実施形態では、試薬自動切り替えの結果、検量線が記憶されていない試薬組を用いて検体の測定が行われた場合、制御部20は、その測定によって得た測定データを記憶するとともに、使用された試薬組に、検量線なしに検体測定に使用されたことを示す情報を付加して記憶する。そして、制御部20は、検量線が作成可能な試薬組の候補を表示する際に、試薬組に付加した情報に基づいて、検量線なしに検体測定に使用された試薬組を自動抽出し、抽出した試薬組を、検体の分析パラメータの計算のために検量線の作成が必要である旨とともに表示部21に表示する。これにより、オペレータは、いくつもある試薬ロットの組み合わせの中から試薬自動切り替えによって使用された試薬ロットの組み合わせを選択する必要がなく、作業を円滑に進めることができる。
【0038】
〔制御部の構成〕
図3は、検体分析装置1における制御部20の構成を示す図である。
制御部20は、パーソナルコンピュータからなり、本体部400と表示入力部410から構成されている。本体部400は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、ハードディスク404と、読出装置405と、入出力インターフェース406と、画像出力インターフェース407と、通信インターフェース408を有する。
【0039】
CPU401は、ROM402に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM403にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM403は、ROM402およびハードディスク404に記憶されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM403は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401の作業領域としても利用される。
【0040】
ハードディスク404には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401に実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。
【0041】
読出装置405は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムおよびデータを読み出すことができる。
【0042】
入出力インターフェース406は、表示入力部21から出力された信号を受け付ける。画像出力インターフェース407は、画像データに応じた映像信号を表示入力部21に出力する。表示入力部21は、画像出力インターフェース407から出力された映像信号をもとに画像を表示するとともに、表示入力部21の画面を介してユーザから受け付けた指示を入出力インターフェース406に出力する。
【0043】
〔検体分析フロー〕
つぎに前述した検体分析装置1を用いた検体分析フローの一例について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る検体分析装置1の状態遷移図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る検体分析装置の操作の流れを示したフローチャートである。
検体分析装置1は、前述したように、連続測定中に試薬切れが発生すると自動的に新しいロットの試薬を使用する測定に移行することで、連続測定を継続する機能を有している。以下、検体分析装置1のかかる機能を「試薬自動切り替え」という。また、試薬自動切り替えにより、検量線が作成されていない試薬組を用いて検体の測定を行うことを「オンホールド測定」といい、オンホールド測定により分析パラメータの算出が未完了の検体を「オンホールド検体」ともいう。これに対し、測定開始前に予め検量線を作成し、バリデートされた検量線を用いて検体の測定を行うことを「通常測定」ともいう。以下では、
図5に示した作業フローの各工程における検体分析装置1の動作を、
図4の状態遷移図を参照しながら説明する。
【0044】
〔S1:メニュー画面表示〕
検体分析装置1を起動させると、検体分注部11などの各種駆動部および制御部20に内蔵されたプログラムの初期化が行われた後、
図6に示すメニュー画面100が表示される。メニュー画面には、主な機能画面へのショートカットとして機能するアイコンが複数並んで表示されている。試薬情報アイコン110は、試薬管理画面40(
図7参照)のショートカットである。検量線アイコン120は、検量線オーダ登録画面50(
図11参照)のショートカットである。ジョブリストアイコン130は、ジョブリスト画面46(
図10参照)のショートカットである。オーダアイコン140は、オーダ登録画面41(
図8参照)のショートカットである。オペレータは、メニュー画面において所望する機能のアイコンを選択することで、所望の機能画面を表示させ、検体分析装置1を操作する。
【0045】
〔S2:試薬残量の確認〕
メニュー画面100において試薬情報アイコン110が操作されると、
図7に示す試薬管理画面40が表示部21に表示される。試薬管理画面40には、容器セット部15を含む試薬庫200の保持位置の配置が模式的に表示され、各保持位置に保持された試薬容器の情報(測定項目と試薬名と残テスト数)が、それぞれの保持位置に対応付けて表示される。たとえば、保持位置C05には、測定項目「AT3」に使用する「Thro」試薬が保持されており、残テスト数が120テストであることが表示される。オペレータは、表示部21に表示される試薬画面40(
図7参照)を参照し、連続測定をするに際し試薬の補充が必要であるか否かを判断する。
【0046】
〔S3:予備の試薬のセット〕
補充が必要であれば、オペレータは予備の試薬を準備し、試薬に添付されているバーコードを読み取らせるなどして試薬の情報(測定項目、試薬ロット、残テスト数など)を検体分析装置1に登録し、試薬庫200の容器セット部15に試薬容器をセットする。試薬情報が登録され、試薬容器がセットされると、試薬管理画面40の情報が更新される。
なお、予備の試薬と使用中の試薬とがロットが同じである場合もあり得るが、ここでは説明を分かり易くするため、予備の試薬と使用中の試薬とが別ロットであることを前提として説明する。また、使用中の試薬については既に検量線が作成されており、且つバリデートされているものとする。
【0047】
〔S4:検体の測定オーダの登録〕
試薬管理画面40のツールバーから「メニュー」が選択されると、画面がメニュー画面100に遷移する。オペレータは、メニュー画面100においてオーダアイコン140を操作し、
図8に示すオーダ登録画面41を表示部21に表示させる。オペレータは、表示部21に表示される画面を介して検体の測定オーダを入力する。オーダ登録画面41では、少なくとも検体番号と測定項目が入力される。OKボタンが操作されるとオーダが登録され、メニュー画面100に遷移する。
【0048】
〔S5:測定開始指示〕
オペレータは、メニュー画面100の開始ボタン150を操作し、測定オーダを登録した検体についての測定・分析を装置に開始させる。
【0049】
〔S6:測定・分析〕
開始ボタン150が操作されると、制御部20に測定開始指示が入力される。制御部20が測定開始指示を受け付けると、検体の測定・分析が開始される。
【0050】
図9は、検体分析装置1の測定・分析の動作の流れを示したフローチャートである。
ステップS601では、検体分注部11が、搬送装置3によって搬送された検体容器Tから検体を吸引し、検体プレートPのウェルに分注する(一次分注)。ついで、ステップS602において、検体分注部11が、ウェルに分注された検体の一部をキュベット9に分注する(二次分注)。
【0051】
ステップS603において、制御部20は、分注した検体についてオーダされている測定項目について、使用中の試薬容器の残テスト数が0でないかを判断する。残テスト数が0でなければ(S603においてYes)、試薬分注部17は、使用中の試薬容器から試薬を吸引し、キュベット9に分注する(ステップS604)。検体と試薬が分注されたキュベット9はキュベット移送部18により検出部19へ移送され、検出部19において検体の光学的測定が行われる(ステップS605)。測定により得られる測定データは制御部20に出力され、制御部20は、測定に使用した試薬組のロット情報とともに測定データをハードディスク404に記憶する(ステップS607)。制御部20は、S606において記憶した測定データを検量線に適用し、分析パラメータを算出する。たとえば、AT3の測定項目が測定された場合は、測定データとして時間依存の光学特性値「dOD/min」が得られ、これを検量線に適用することで、分析パラメータとして、AT3の活性を示す「AT3(%)」が算出される。制御部20は、算出した分析パラメータをハードディスク404に記憶し(ステップS608)、測定・分析の処理を終了する。
【0052】
S603において、使用中の試薬の残テスト数が0になった場合、制御部20は試薬自動切り替えを実行する。具体的には、ステップS609において、試薬分注部17は、残テスト数が0になった使用中の試薬容器からの試薬分注を中止し、新ロットの試薬容器から試薬を吸引して、キュベット9に分注する。その後は、通常時の動作(S605、S606)と同様に光学的測定を行い、測定に使用した試薬組のロット情報とともに測定データをハードディスク404に記憶する(S610、S611)。
【0053】
ついで、制御部20は、新ロットの試薬を含む試薬組に対応する検量線があるか否かを判断する(ステップS612)。
後述するように、制御部20は、検量線を作成すると、検量線の作成に使用した試薬組の情報(各試薬のロット番号)とともに、作成した検量線をハードディスク404に記憶させるようになっている。また、作成した検量線がバリデートされると、その検量線にバリデート済みであることを示す情報が付加される。
制御部20は、測定に使用した新ロットの試薬を含む試薬組に対応するバリデート済みの検量線がハードディスク404に記憶されているか否かを判断する。対応する検量線が記憶されており、かつ、その検量線がバリデートされていれば(S612でYes)、制御部20は、記憶されているバリデート済みの検量線に測定データを適用して分析パラメータを算出し(S613)、算出した分析パラメータをハードディスク404に記憶し(S614)、測定・分析の処理を終了する。
【0054】
一方、新ロットの試薬を含む試薬組に対応するバリデート済みの検量線が記憶されていない場合(S612でNO)、制御部20は、その試薬組のステータス情報に「On Holdあり」の情報を付加する(S615)。さらに、制御部20は、検体の測定オーダの状態を表すジョブ情報に「On Hold」のフラグを付加し(S616)、測定・分析の処理を終了する。
【0055】
〔S7:ジョブリスト確認〕
図5に戻って、オペレータは、分析結果を確認するために、ジョブリストアイコン120を操作して表示部21にジョブリスト画面46を表示させる。
図10はジョブリスト画面の画面例を示している。ジョブリスト画面46には、測定のオーダが入力された検体が一覧表示される。図示された状態では、各行に個々の検体の検体情報が表示されている。オペレータは、画面左下のタブを切り替えることで表示内容を切り替え、各検体の測定・分析の結果を確認することができる。オペレータは検体の測定・分析の結果を確認し、問題がなければ、ジョブリスト画面の上部に設けられた「バリデート」ボタンを押すことで、結果をバリデートする。バリデートされた検体の行の左端の列には、バリデート済み(Validated)を示す「v」の表示が付加される。
【0056】
オペレータは、ジョブリスト画面46を確認して、オンホールド検体があるか否かを判断する。一覧表示の「測定状態」の列には、検体の測定の進捗を示す情報が表示される。「Complete」は、検体についてオーダされた全ての測定項目の測定および分析が正常に終了した場合に表示される。一方、オーダされた全ての測定項目の測定は終了したが、バリデート済みの検量線がないために分析が完了していない測定項目がある場合には、「On Hold」と表示される。この表示は、
図3のS616で「On Hold」のフラグが設定された検体に付加される。
図10に示される画面例では、検体番号12の検体の測定状態が「On Hold」と表示されている。
【0057】
〔S8:キャリブレータのセット〕
ジョブリスト画面46において測定状態が「On Hold」の検体がある場合には、その検体の測定に使用された試薬組についてキャリブレーションを行う必要がある。オペレータは、オンホールド検体の測定に使用された新ロットの試薬を含む試薬組について検量線を作成するために、キャリブレータをセットしたラックRを搬送装置3にセットする。
【0058】
〔S9:検量線作成オーダの入力〕
ついで、オペレータは、オンホールド検体の測定に用いられた試薬組を検量線の作成対象として検量線作成オーダを入力する。メニュー画面100において検量線アイコン120が選択されると、
図11の検量線オーダ登録画面が表示される。
【0059】
図11に示される検量線オーダ登録画面50では、画面の中央部に、キャリブレータの検体番号と、そのキャリブレータについて測定を依頼する測定項目を一覧表示する領域52が配置されている。オペレータは、検体番号の列を選択してキャリブレータの検体番号を入力し、測定項目の列において所望の測定項目に対応する箇所を選択することで、キャリブレータについて測定を依頼する測定項目、つまりジョブリスト画面46で「On Hold」と表示されていた検体の分析未完了の測定項目を入力する。図示例では、「SHP 502500」のキャリブレータについて、測定項目「AT3」の測定依頼が入力されている。
【0060】
図11においてOKボタンが入力されると、
図12に示される検量線オーダ入力画面54が表示部21に表示される。
図12は、検量線オーダ入力画面54の初期画面を示している。
検量線オーダ入力画面54は、検量線作成対象の試薬組を指定するための指定領域55を備えている。指定領域55には、検量線作成対象としてオペレータが指定した試薬組のロット番号の組み合わせと、当該試薬組のステータス情報が表示される。OKボタンが操作されると、指定領域55に表示された指定の試薬組が、キャリブレーションの実行対象として測定され、検量線が作成される。
図示例では、指定領域55にデフォルト表示された試薬組は、試薬「AT3Thro」としてロット番号「536331」のものと、試薬「AT3Sub」としてロット番号「520273」のものと、試薬OVB(ロット番号なし)を含んでいる。そして、指定領域55のステータス情報によれば、この試薬組は、オンホールド検体の測定に使用されており、かつ、検量線が作成されていない。
【0061】
検量線オーダ入力画面54において、指定領域55の隣にはプルダウンボタンボタン56が設けられている。プルダウンボタン56を操作すると、
図13に示されるプルダウンメニュー57が表示される。プルダウンメニュー57には、
図11の検量線オーダ登録画面で指定された測定項目に使用可能な試薬のロットの組み合わせが一覧表示される。図示した例では、AT3の測定項目に用いられる第1試薬「AT3Thro」、第2試薬「AT3Sub」、および緩衝液「OVB」のロットの組み合わせとして、試薬庫200内にあるロットの組み合わせの範囲内で考えられる全てのロットの組み合わせが表示される。
図13の画面例では、プルダウンメニュー57の最上段が表示されている。図示しないが、メニュー横のスクロールボタンを押すことで下にスクロールすることができる。
【0062】
オペレータがプルダウンメニュー57に表示された複数の試薬組の中から試薬組を一つ選択すると、指定領域55に表示されている試薬組が、選択された試薬組と入れ替わる。つまり、プルダウンメニュー57において選択された試薬組が指定領域55に表示され、領域55に表示されていた試薬組がプルダウンメニュー57に移動する。したがって、オペレータはプルダウンメニュー57の中から検量線の作成対象の試薬組を任意に選択することができる。
【0063】
プルダウンメニュー57の各行は、各試薬組に対応している。各行は、
図12の領域55の表示と同様に、組み合わせに係る各試薬のロット番号と、その試薬組のステータス情報とを含んでいる。
図示例では、プルダウンメニュー57の最上段の行から、ステータス情報が「新しい検量線あり」且つ「On Holdあり」、「検量線なし」、「新しい検量線あり」、「Validated検量線あり」の順に並んでいる。
【0064】
検量線オーダ入力画面54の指定領域55には、表示の優先順位が最も高い試薬組がデフォルトで表示される。一方、プルダウンメニュー57には、2番目に優先順位の高い試薬組が最上段に表示され、以下、優先順位にしたがって試薬組が並んで表示される。表示の優先順位は、検量線測定の対象となり得る試薬組のうち緊急度の高いものが上位になるように設定している。本実施形態では、「On Holdあり」のステータス情報を含む試薬組の優先順位が最も高く設定されている。したがって、検量線なしに検体の測定に使用された試薬組がある場合には、その試薬組が最優先で表示される。
【0065】
試薬組のステータス情報は、「On Hold」の有無に関する属性情報(以下、第1属性情報)と、検量線の状態に関する属性情報(以下、第2属性情報)を含む。第1属性情報は、「On Holdあり」か、ブランク(On Holdなし)の2通りであり、前者の優先順位の方が高い。第2属性情報は、「検量線なし」、「新しい検量線あり」および「Validated検量線あり」の3通りであり、優先順位は列記した順である。
【0066】
表示の優先順位は、第1属性情報が第2属性情報に優越し、「On Holdあり」となっている試薬組の優先順位が最も高い。これは、「On Holdあり」の試薬組については、分析パラメータを再計算して医師又は患者に早急に報告するために、検量線の作成が早急に必要になるためである。第1属性情報が同じ複数の試薬組がある場合、第2属性情報の優先順位にしたがって表示の順位が決まる。なお、「On Holdあり」は、検量線が作成されていないか、あるいは検量線はあるがバリデートされていない場合にしか付加されないので、「On Holdあり」の第1属性情報は、「検量線なし」または「新しい検量線あり」の第2属性情報とセットになることはあっても、「On Holdあり」且つ「Validated検量線あり」という属性情報の組み合わせは存在しない。
【0067】
「On Holdあり」は、前述したように試薬自動切り替え機能によって、バリデートされた検量線なしに検体の測定に用いられた試薬組のステータス情報に付加される。
図3のS615では、この属性情報が試薬組のステータス情報に付加される。「検量線なし」は、検量線が作成されておらず、かつ、検体の測定に使用されていない試薬組のステータス情報にデフォルトで設定されている。「新しい検量線あり」は、試薬組について検量線が作成されているが、オペレータによるバリデートがなされていない試薬組のステータス情報に付加される。「Validated検量線あり」は、バリデートされた検量線がある試薬組のステータス情報に付加される。
【0068】
本実施形態では、試薬自動切り替え機能によって、バリデート済みの検量線が作成されていない試薬組を用いて検体が測定された場合、制御部20が当該試薬組のステータス情報に、他の試薬組と区別するための属性情報(「On Holdあり」)を付加し、この属性情報を基に検量線作成対象の試薬組を自動抽出し、「On Holdあり」の試薬組を他の試薬組に優先して表示するようにしている。これにより、試薬自動切り替え機能によって検量線未作成の試薬組に切り替わった場合であっても、測定後に検量線を作成する際に、オンホールド検体の測定に使用された試薬組を探す手間が省け、検量線作成を迅速に行うことができる。
【0069】
〔S10:キャリブレータ測定・検量線作成〕
検量線オーダ入力画面54において、チェックボックス58がチェックされ、OKボタンが押されると、指定領域55において指定されている試薬組を用いてキャリブレータが測定され、その試薬組について検量線が作成される。具体的には、キャリブレータを搭載したラックRが搬送装置3によって搬送され、搬送されたキャリブレータは、測定部2によって吸引される。測定部2は、吸引したキャリブレータを、指定領域55において指定されている試薬組を用いて、指定された測定項目について測定する。得られた測定データは制御部20に入力される。制御部20は、予め装置に入力されたキャリブレータの表示値にしたがって、表示値と測定データとの関係から検量線を作成する。作成した検量線は、検量線の作成に使用された試薬組の情報に対応付けてハードディスク404に格納される。
【0070】
図14は、作成された検量線を示す検量線確認画面60を示している。検量線確認画面60の右側には、縦軸を「dOD」とし、横軸を「AT3%」とする検量線表示領域61が配置され、その左側には、新しい検量線の表62と、比較のための現在の検量線の表63が並んで配置されている。検量線情報表示領域65には、検量線の作成に使用した試薬組の情報が表示される。検量線確認画面60の上部に設けられた「バリデート」ボタン64を押下することで、得られた検量線をバリデートすることができる。検量線がバリデートされると、ハードディスク404に格納された検量線にバリデート済みである旨の情報が付加され、検量線確認画面60の左上に「Validated」と表示される。
【0071】
〔S11:オンホールド検体の再計算〕
ついで、オンホールド検体について分析パラメータを再計算する。オペレータは、メニュー画面100に戻ってジョブリストアイコン130を操作することで、再びジョブリスト画面46を表示部21に表示させる。ジョブリスト画面46において「On Hold」と表示された検体のレコードを選択し、画面上部の「データ操作」の操作メニューを開くと、「手動計算」のコマンドが現れる。手動計算コマンドが選択されると、制御部20は、選択された検体について「On Hold」の状態にある測定項目の測定データをハードディスク404から読み出す。制御部20は、読み出した測定データとともに記憶されている試薬組のロット情報をキーにして、ハードディスク404に記憶されている検量線の中から、対応するバリデート済みの検量線を特定し、読み出した測定データ(dOD/min)をバリデート済みの検量線に適用することで、分析パラメータとして成分濃度(AT3%)を求める。分析パラメータはハードディスク404に格納される。これらの処理が行われると、
図15に示すように、ジョブリスト画面46の測定状態の表示が「On Hold」から、測定および分析がすべて完了したことを示す「Complete」に変わる。
【0072】
〔その他の変形例〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【0073】
前述した実施形態では、試薬自動切り替えによって試薬ロットが変わる場合に、新ロットの試薬を含む試薬組について検量線を作成する場合を例示しているが、試薬バイアルの組み合わせが変わる毎に検量線を作成するようにしてもよい。たとえば、試薬バイアルごとにユニークなIDを付与し、前述した実施形態における試薬ロットの情報に代えて、試薬組に係る各試薬バイアルのIDに対応付けて検量線を作成し、管理するようにしてもよい。
【0074】
また、前述した実施形態では、
図9のステップS612において、検体測定に使用した試薬組に対応するバリデート済みの検量線がない場合に、その試薬組のステータス情報に「On Holdあり」の情報を付加するようにしているが、これに限られない。たとえば、検体測定に使用した試薬組に対応するバリデート済みの検量線があっても、その検量線が作成されてから所定の有効期間を経過している場合には、その検量線は有効な検量線でないと判断して、試薬組のステータス情報に「On Holdあり」の情報を付加してもよい。また、試薬バイアルのIDに対応付けて検量線を管理する場合には、検体測定に使用した試薬バイアルの組み合わせに対応する検量線がなければ、検量線なしと判断してもよい。
【0075】
また、前述した実施形態では、検量線がない試薬組が使用されることになる典型的な例として、試薬自動切り替えによって連続測定の途中で検量線がない試薬組に切り替わる場合を例示して説明したが、本発明の適用対象は試薬自動切り替えの場合に限られない。たとえば、連続測定の開始時点で検量線がない試薬組を使用する場合であっても当然に本発明の範囲に含まれる。
【0076】
前述した実施形態では、オンホールド測定が行われた試薬組を検量線オーダ登録画面に表示し、オペレータが検量線作成のオーダボタンを押下することで検量線が作成されているが、当該試薬組の表示を省略し、自動的に「On Holdあり」の試薬組を使用してキャリブレータを測定し、検量線を作成することもできる。
【0077】
図16は、変形例における検体分析装置1の動作を示すフローチャートである。オペレータによってキャリブレータが試薬庫200にセットされた後、検量線作成が指示されたか否かが制御部20によって判断される(S101)。検量線作成がオペレータによって指示されると(S101でYes)、制御部20は、記憶している試薬組の中から最も優先順位の高い試薬組を用いてキャリブレータを測定し、検量線を作成する(S102)。ここで、制御部20が参照する優先順位は上記実施形態について述べた試薬組の表示の優先順位と同じである。したがって、このフローチャートによれば、「On Holdあり」の試薬組がある場合には、オペレータが指定しなくても、「On Holdあり」の試薬組が自動抽出され、検量線を自動的に作成することができる。
【0078】
また、前述した実施形態では、制御部は、検量線が作成されていない試薬組を用いて検体を測定した場合に当該試薬組を記憶し、記憶した試薬組を使用する検量線を作成する検量線作成オーダを生成し、当該オーダを検量線オーダ登録画面に表示しているが、精度管理(QC)についても同様に本発明を適用することができる。
たとえば、制御部20は、精度管理検体を測定すると、精度管理に使用された試薬ロット組の情報とともに、精度管理結果をハードディスク404に記憶する。制御部20は、試薬自動切り替えによって精度管理が行われていない試薬組を用いて検体を測定した場合に、検体の測定に用いた試薬組に対応する精度管理結果がハードディスク404に記憶されているか否かを判断する。対応する精度管理結果がない場合、制御部20は、その試薬組のステータス情報に、精度管理せずに測定に用いられたことを示す情報を付加してハードディスク404に記憶させる。制御部20は、精度管理検体のオーダ入力画面を表示する場合に、精度管理せずに測定に用いられたことを示すステータス情報が付加されている試薬組を自動抽出し、その試薬組を使用した精度管理測定オーダを自動生成して表示することもできる。この場合、オペレータによる精度管理の実行指示を受け付けると、制御部が、ステータス情報が付加されている試薬組を用いた精度管理を測定部に実行させるようにしてもよい。または、試薬組の表示を省略し、精度管理検体の測定が指示されると、自動的に、ステータス情報が付加されている試薬組を使用して精度管理検体の測定を実行することもできる。