特許第6374156号(P6374156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

特許6374156水平多関節ロボットおよび水平多関節ロボットの製造方法
<>
  • 特許6374156-水平多関節ロボットおよび水平多関節ロボットの製造方法 図000002
  • 特許6374156-水平多関節ロボットおよび水平多関節ロボットの製造方法 図000003
  • 特許6374156-水平多関節ロボットおよび水平多関節ロボットの製造方法 図000004
  • 特許6374156-水平多関節ロボットおよび水平多関節ロボットの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374156
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】水平多関節ロボットおよび水平多関節ロボットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   B25J9/06 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-247026(P2013-247026)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-36183(P2015-36183A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】61/864,272
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】北原 康行
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊道
(72)【発明者】
【氏名】栗林 保
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−264067(JP,A)
【文献】 特開平4−304985(JP,A)
【文献】 特開2013−38484(JP,A)
【文献】 特開2005−154062(JP,A)
【文献】 特開平5−288546(JP,A)
【文献】 特開平7−16239(JP,A)
【文献】 特開昭58−223574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向にアームが動作する水平多関節ロボットにおいて、
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドがその先端側に回動可能に連結されるハンド側アーム部と前記ハンド側アーム部の基端側がその先端側に回動可能に連結される第2ハンド側アーム部との少なくとも2個のアーム部を有する前記アームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えるとともに、
少なくとも前記第2ハンド側アーム部に対する前記ハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整された後に、前記本体部に取り付けられた水準器を備えることを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
前記ハンドには、前記搬送対象物が搭載される搭載面が形成され、
前記水準器は、水平方向に対する前記搭載面の傾きが調整された後に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の水平多関節ロボット。
【請求項3】
前記水準器は、気泡管を有する気泡管水準器であり、少なくとも前記第2ハンド側アーム部に対する前記ハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整された後に、前記気泡管内の気泡が前記気泡管に印された基準線の中に収まるように取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の水平多関節ロボット。
【請求項4】
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドがその先端側に回動可能に連結されるハンド側アーム部と前記ハンド側アーム部の基端側がその先端側に回動可能に連結される第2ハンド側アーム部との少なくとも2個のアーム部を有するアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記本体部に取り付けられる水準器とを備え、水平方向に前記アームが動作する水平多関節ロボットの製造方法であって、
少なくとも前記第2ハンド側アーム部に対する前記ハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きを調整した後に、前記本体部に前記水準器を取り付けることを特徴とする水平多関節ロボットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向にアームが動作する水平多関節ロボット、および、水平多関節ロボットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EFEM(Equipment Front End Module)の一部を構成するとともにFOUP(Front Open Unified Pod)と半導体ウエハ処理装置との間で半導体ウエハを搬送する水平多関節ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の水平多関節ロボットは、半導体ウエハが搭載される2個のハンドと、2個のハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えている。アームは、本体部にその基端側が回動可能に連結される第1アームと、第1アームの先端側にその基端側が回動可能に連結される第2アームと、第2アームの先端側にその基端側が回動可能に連結されるとともにその先端側にハンドが回動可能に連結される第3アームとから構成されている。本体部の内部には、第1アームを昇降させるアーム昇降機構が収容されている。
【0003】
また、従来、垂直多関節ロボットとして、ベースと、ベースに固定される胴体と、胴体に回動可能に連結される第1アームと、第1アームに回動可能に連結される第2アームと、第2アームに回動可能に連結される手首アームと、手首アームに回動可能に連結される手先アームとを備える垂直多関節ロボットが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の垂直多関節ロボットでは、第1アームおよび手先アームに原点位置調整用の水準器が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−230256号公報
【特許文献2】実開昭63−147704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FOUPは、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials Institute)規格に基づいて製造されており、FOUPには、複数枚の半導体ウエハが一定のピッチで上下方向に重なるように収容されている。FOUPに収容される複数の半導体ウエハの間には隙間が形成されているが、この隙間は比較的狭くなっている。FOUPと半導体ウエハ処理装置との間で半導体ウエハを搬送する水平多関節ロボットは、FOUPに収容される複数枚の半導体ウエハの間の狭い隙間にハンドを入れてからハンドに半導体ウエハを搭載して取り出さなければならない。そのため、この水平多関節ロボットは、水平方向へハンドが精度良く動作するように精度良く設置されている必要がある。
【0006】
水平多関節ロボットを精度良く設置するために、一般には、水平多関節ロボットの設置時に、アームがある方向へ伸びている状態、アームが他の方向へ伸びている状態およびアームが縮んでいる状態等の様々な状態に水平多関節ロボットの状態を変えながら、水準器を用いて各状態でのハンドの傾き等を調べ、水平方向へハンドが最適な動作を行うことができるように、水平多関節ロボットを設置している。そのため、半導体ウエハを搬送する水平多関節ロボットの設置には時間がかかる。また、この水平多関節ロボットが設置されるEFEMの筺体の内部はそれほど広くないため、水平多関節ロボットの設置作業も困難である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、水平方向にアームが動作する水平多関節ロボットにおいて、比較的短時間で容易に、かつ、水平方向へハンドが精度良く動作するように設置することが可能な水平多関節ロボットを提供することにある。また、本発明の課題は、水平方向にアームが動作する水平多関節ロボットの製造方法において、比較的短時間で容易に、かつ、水平方向へハンドが精度良く動作するように設置することが可能となる水平多関節ロボットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の水平多関節ロボットは、水平方向にアームが動作する水平多関節ロボットにおいて、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドがその先端側に回動可能に連結されるハンド側アーム部とハンド側アーム部の基端側がその先端側に回動可能に連結される第2ハンド側アーム部との少なくとも2個のアーム部を有するアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えるとともに、少なくとも第2ハンド側アーム部に対するハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整された後に、本体部に取り付けられた水準器を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明の水平多関節ロボットの製造方法は、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドがその先端側に回動可能に連結されるハンド側アーム部とハンド側アーム部の基端側がその先端側に回動可能に連結される第2ハンド側アーム部との少なくとも2個のアーム部を有するアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、本体部に取り付けられる水準器とを備え、水平方向にアームが動作する水平多関節ロボットの製造方法であって、少なくとも第2ハンド側アーム部に対するハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きを調整した後に、本体部に水準器を取り付けることを特徴とする。
【0010】
本発明の水平多関節ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが回動可能に連結されるハンド側アーム部と、ハンド側アーム部が回動可能に連結される第2ハンド側アーム部とを備えるとともに、少なくとも第2ハンド側アーム部に対するハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整された後に、本体部に取り付けられた水準器を備えている。また、本発明の水平多関節ロボットの製造方法では、少なくとも第2ハンド側アーム部に対するハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きを調整した後に、本体部に水準器を取り付けている。
【0011】
そのため、本発明では、水平多関節ロボットを設置する際に、水平多関節ロボットに取り付けられた水準器が所定の状態を示すように水平多関節ロボットを設置することで、ハンドが回動可能に連結されるハンド側アーム部の、第2ハンド側アーム部に対する回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが適切な傾きとなって、水平方向に対するハンドの傾きが適切な傾きとなるように、水平多関節ロボットを設置することが可能になる。したがって、本発明では、上述した従来の水平多関節ロボットの設置方法と比較して、比較的短時間で容易に、かつ、水平方向へハンドが精度良く動作するように水平多関節ロボットを設置することが可能になる。また、本発明では、水準器は、本体部に取り付けられている。アームやハンドに水準器が取り付けられていると、たとえば、水準器が気泡管水準器である場合、アームの伸縮状態に応じて、気泡管の中の気泡の位置が変動しやすくなるため、気泡が基準線の中に収まるように水平多関節ロボットを設置しても、設置時のアームの伸縮状態によっては、水平方向に対するハンドの傾きが適切な傾きとなるように、水平多関節ロボットを設置することができないおそれがある。これに対して、水準器が本体部に取り付けられていると、アームの伸縮状態が変わっても、気泡管の中の気泡の位置が変動しにくくなるため、気泡が基準線の中に収まるように水平多関節ロボットを設置することで、設置時のアームの伸縮状態にかかわらず、水平方向に対するハンドの傾きが適切な傾きとなるように、水平多関節ロボットを設置することが可能になる。
【0012】
本発明において、ハンドには、搬送対象物が搭載される搭載面が形成され、水準器は、水平方向に対する搭載面の傾きが調整された後に取り付けられていることが好ましい。このように構成すると、水平多関節ロボットに取り付けられた水準器が所定の状態を示すように水平多関節ロボットを設置することで、水平方向へハンドがより精度良く動作するように水平多関節ロボットを設置することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、水準器は、気泡管を有する気泡管水準器であり、少なくとも第2ハンド側アーム部に対するハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整された後に、気泡管内の気泡が気泡管に印された基準線の中に収まるように取り付けられている。この場合には、水平多関節ロボットを設置する際に、水準器の気泡管の中の気泡が基準線の中に収まるように水平多関節ロボットを設置することで、第2ハンド側アーム部に対するハンド側アーム部の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが適切な傾きとなって、水平方向に対するハンドの傾きが適切な傾きとなるように、水平多関節ロボットを設置することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の水平多関節ロボットでは、比較的短時間で容易に、かつ、水平方向へハンドが精度良く動作するように水平多関節ロボットを設置することが可能になる。また、本発明の水平多関節ロボットの製造方法で製造された水平多関節ロボットでは、比較的短時間で容易に、かつ、水平方向へハンドが精度良く動作するように水平多関節ロボットを設置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかる水平多関節ロボットの斜視図である。
図2図1に示す水平多関節ロボットの、アームが上昇するとともに伸びている状態の斜視図である。
図3図1に示す水平多関節ロボットが使用される半導体製造システムの概略平面図である。
図4図1に示す水平多関節ロボットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(水平多関節ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる水平多関節ロボット1の斜視図である。図2は、図1に示す水平多関節ロボット1の、アーム6が上昇するとともに伸びている状態の斜視図である。図3は、図1に示す水平多関節ロボット1が使用される半導体製造システム9の概略平面図である。図4は、図1に示す水平多関節ロボット1の側面図である。
【0019】
本形態の水平多関節ロボット1は、搬送体対象物である半導体ウエハ2(図3参照)を搬送するためのロボットである。この水平多関節ロボット1は、半導体ウエハ2が搭載される2個のハンド4、5と、ハンド4、5が先端側に回動可能に連結されるとともに水平方向に動作するアーム6と、アーム6の基端側が回動可能に連結される本体部7とを備えている。以下の説明では、水平多関節ロボット1を「ロボット1」とし、半導体ウエハ2を「ウエハ2」とする。また、以下の説明では、上下方向に直交する図1等のX方向を「左右方向」とし、上下方向および左右方向に直交するY方向を「前後方向」とするとともに、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側とする。
【0020】
図3に示すように、ロボット1は、半導体製造システム9に組み込まれて使用される。この半導体製造システム9は、EFEM10と、ウエハ2に対して所定の処理を行う半導体ウエハ処理装置11とを備えている。EFEM10は、半導体ウエハ処理装置11の前側に配置されている。ロボット1は、EFEM10の一部を構成している。また、EFEM10は、FOUP12を開閉する複数のロードポート13と、ロボット1が収容される筺体14とを備えている。筺体14は、左右方向に細長い直方体の箱状に形成されている。筺体14の内部は、清浄空間となっている。すなわち、EFEM10の内部は、清浄空間となっており、EFEM10の内部では所定のクリーン度が確保されている。
【0021】
FOUP12は、SEMI規格に基づいて製造されており、FOUP12には、25枚または13枚のウエハ2が上下方向に重なった状態で収容可能となっている。ロードポート13は、筺体14の前側に配置されている。本形態のEFEM10は、左右方向に所定のピッチで配列される4個のロードポート13を備えており、EFEM10では、4個のFOUP12が左右方向に所定のピッチで配列される。ロボット1は、4個のFOUP12と半導体ウエハ処理装置11との間でウエハ2を搬送する。
【0022】
アーム6は、その基端側が本体部7に回動可能に連結される第1アーム部16と、第1アーム部16の先端側にその基端側が回動可能に連結される第2アーム部17と、第2アーム部17の先端側にその基端側が回動可能に連結される第3アーム部18とから構成されている。すなわち、アーム6は、互いに相対回動可能に連結される3個のアーム部を備えている。第1アーム部16、第2アーム部17および第3アーム部18は、中空状に形成されている。また、本形態では、第1アーム部16の長さと、第2アーム部17の長さと、第3アーム部18の長さとが等しくなっている。本体部7と第1アーム部16と第2アーム部17と第3アーム部18とは、上下方向において、下側からこの順番で配置されている。本形態の第3アーム部18は、ハンド側アーム部であり、第2アーム部17は、第2ハンド側アーム部である。
【0023】
ハンド4、5は、上下方向から見たときの形状が略Y形状となるように形成されており、第3アーム部18に連結される連結部19と、ウエハ2が搭載されるウエハ搭載部20とから構成されている。ハンド4、5は、上下方向で重なるように配置されている。具体的には、ハンド4が上側に配置され、ハンド5が下側に配置されている。また、ハンド4、5は、第3アーム部18よりも上側に配置されている。
【0024】
連結部19は、ハンド4、5の基端側部分を構成しており、第3アーム部18の先端側に回動可能に連結されている。ウエハ搭載部20は、ハンド4、5の先端側部分を構成しており、二股状に形成されている。ウエハ搭載部20の上面は、ウエハ2が搭載される搭載面20aとなっている。すなわち、ハンド4、5には、搭載面20aが形成されている。連結部19と第3アーム部18との連結箇所には、水平方向に対する搭載面20aの傾きを微調整するための調整用ボルト(図示省略)が取り付けられている。また、連結部19と第3アーム部18との連結箇所には、調整用ボルトが螺合するネジ孔が形成されており、調整用ボルトのネジ孔へのネジ込み量によって、水平方向に対する搭載面20aの傾きが調整される。
【0025】
なお、図3では、ハンド5の図示を省略している。また、本形態のロボット1の動作時には、ハンド4とハンド5とが上下方向で重なる場合もあるが、ほとんどの場合、ハンド4とハンド5とは、上下方向で重なっていない。たとえば、図3の二点鎖線で示すように、ハンド4がFOUP12の中へ入り込んでいるときには、ハンド5は、本体部7側へ回転しており、FOUP12の中に入っていない。このときのハンド4に対するハンド5の回転角度は、たとえば、120°〜150°である。
【0026】
本体部7は、筺体21と、第1アーム部16の基端側が回動可能に連結される柱状部材22(図2参照)とを備えている。筺体21は、上下方向に細長い略直方体状に形成されており、上下方向から見たときの筺体21の形状は、略長方形状または略正方形状となっている。また、筺体21の前面および後面は、上下方向と左右方向とから構成される平面に略平行になっており、筺体21の左右の両側面は、上下方向と前後方向とから構成される平面に略平行になっている。また、筺体21の底面は、上下方向に略直交する平面状に形成されている。
【0027】
柱状部材22は、上下方向の細長い柱状に形成されている。第1アーム部16の基端側は、柱状部材22の上端に回動可能に連結されている。筺体21の内部には、柱状部材22を昇降させるアーム昇降機構(図示省略)が収納されている。すなわち、筺体21の内部には、本体部7に対して第1アーム部16を昇降させる(すなわち、アーム6を昇降させる)アーム昇降機構が収納されている。このアーム昇降機構は、たとえば、上下方向を軸方向として配置されるボールネジ、このボールネジに係合するナット部材、および、ボールネジを回転させるモータ等によって構成されている。アーム昇降機構は、図1に示すように、柱状部材22が筺体21に収容される位置と、図2に示すように、柱状部材22が筺体21から上側に突出する位置との間で、アーム6および柱状部材22を昇降させる。
【0028】
柱状部材22は、筺体21の前端側に配置されている。また、左右方向において、柱状部材22は、筺体21の中心位置に配置されている。筺体21の上端側には、上側に突出する突出部21aが形成されている。突出部21aは、柱状部材22の左右両側および後ろ側を囲むように形成されている。突出部21aの上面は、上下方向に直交する平面状に形成されている。また、筺体21の下端の四隅には、水平方向に対するロボット1全体の傾きを微調整するための調整用ボルト(図示省略)が取り付けられるボルト取付部21bが形成されている。ボルト取付部21bには、調整用ボルトが螺合するネジ孔が上下方向に貫通するように形成されており、調整用ボルトのネジ孔へのネジ込み量によって、水平方向に対するロボット1の傾きが調整される。
【0029】
突出部21aの上面側には、図1図2に示すように、水準器23が取り付けられている。すなわち、本体部7には、水準器23が取り付けられている。本形態の水準器23は、気泡管を有する気泡管水準器である。具体的には、水準器23は、上下方向から見たときの気泡管の形状が円形状となっているいわゆる目玉水準器(目玉水平器、全方向水準器)であり、上下方向から見たときの気泡管の中心に円形状の基準線が印されている。なお、水準器23は、水平方向の一方向(たとえば、左右方向)の傾きを確認できる1軸型の気泡管水準器と、水平方向の一方向に直交する方向(たとえば、前後方向)の傾きを確認できる1軸型の気泡管水準器とが組み合わされた2軸型水準器等の目玉水準器以外の気泡管水準器であっても良い。
【0030】
また、ロボット1は、第1アーム部16および第2アーム部17を回動させて第1アーム部16と第2アーム部17とからなるアーム6の一部を伸縮させるアーム部駆動機構と、第3アーム部18を回転駆動する第3アーム駆動機構と、ハンド4を回転駆動する第1ハンド駆動機構と、ハンド5を回転駆動する第2ハンド駆動機構とを備えている。
【0031】
アーム部駆動機構は、図4に示すように、駆動源となるモータ25と、モータ25の動力を減速して第1アーム部16に伝達するための減速機26と、モータ25の動力を減速して第2アーム部17に伝達するための減速機27とを備えている。モータ25は、筺体21の内部に配置されている。減速機26は、本体部7と第1アーム部16とを繋ぐ関節部を構成している。減速機27は、第1アーム部16と第2アーム部17とを繋ぐ関節部を構成している。減速機26、27は、たとえば、波動歯車装置であるハーモニックドライブ(登録商標)である。上述の特許文献1に記載された水平多関節ロボットと同様に、モータ25と減速機26とは、図示を省略するプーリおよびベルトを介して連結され、モータ25と減速機27とは、図示を省略するプーリおよびベルトを介して連結されている。
【0032】
第3アーム部駆動機構は、図4に示すように、駆動源となるモータ28と、モータ28の動力を減速して第3アーム部18に伝達するための減速機29とを備えている。モータ28は、第2アーム部17の先端側の内部に配置されている。減速機29は、第2アーム部17と第3アーム部18とを繋ぐ関節部を構成している。減速機29は、たとえば、ハーモニックドライブ(登録商標)である。モータ28と減速機29とは、たとえば、図示を省略する歯車列を介して連結されている。
【0033】
第1ハンド駆動機構は、図4に示すように、駆動源となるモータ30と、モータ30の動力を減速してハンド4に伝達するための減速機31とを備えている。第2ハンド駆動機構は、第1ハンド駆動機構と同様に、駆動源となるモータ32と、モータ32の動力を減速してハンド5に伝達するための減速機33とを備えている。モータ30、32および減速機31、33は、第3アーム部18の内部に配置されている。減速機31、33は、たとえば、ハーモニックドライブ(登録商標)である。上述の特許文献1に記載された水平多関節ロボットと同様に、減速機31は、モータ30の出力軸に取り付けられ、減速機33は、モータ32の出力軸に取り付けられている。また、ハンド4の連結部19と減速機31とは、図示を省略するプーリおよびベルトを介して連結され、ハンド5の連結部19と減速機33とは、図示を省略するプーリおよびベルトを介して連結されている。
【0034】
ロボット1の製造工程では、ハンド4、5とアーム6と本体部7とが連結されてロボット1が動作可能な状態になると、平面度が確保された所定の基準面上にロボット1が設置される。この状態では、水準器23は、本体部7に取り付けられていない。その後、第2アーム部17に対する第3アーム部18の回動中心軸の上下方向(鉛直方向)に対する傾きが調整される。また、水平方向に対するハンド4、5の搭載面20aの傾きが調整される。
【0035】
具体的には、アーム6がある方向へ伸びている状態、アーム6が他の方向へ伸びている状態、および、アーム6が縮んでいる状態等の様々な状態にロボット1の状態を変えながら、どの状態においても、第2アーム部17に対する第3アーム部18の回動中心軸が鉛直方向に対して所定の角度以上傾くことがないように、筺体21のボルト取付部21bに取り付けられた調整用ボルトによってロボット1全体の傾きを調整することで、第2アーム部17に対する第3アーム部18の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整される。
【0036】
また、様々な状態にロボット1の状態を変えながら、どの状態においても、水平方向に対する搭載面20aの傾きが水平方向に対して所定の角度以上傾くことがないように、連結部19と第3アーム部18との連結箇所に取り付けられた調整用ボルトによって、水平方向に対する搭載面20aの傾きが調整される。なお、上下方向におけるハンド4とハンド5との間隔も調整される。
【0037】
これらの調整が終了すると、水準器23が本体部7に取り付けられる。具体的には、水準器23の気泡管内の気泡が気泡管に印された基準線の中に収まるように、水準器23が本体部7に固定される。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、第2アーム部17に対する第3アーム部18の回動中心軸の鉛直方向に対する傾き、および、水平方向に対するハンド4、5の搭載面20aの傾きが調整された後に、水準器23の気泡管内の気泡が気泡管に印された基準線の中に収まるように、本体部7に水準器23が取り付けられている。そのため、本形態では、EFEM10の筺体14にロボット1を設置する際に、水準器23の気泡管の中の気泡が基準線の中に収まるようにロボット1を設置することで、ハンド4、5が回動可能に連結される第3アーム部18の第2アーム部17に対する回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが適切な傾きとなり、かつ、水平方向に対する搭載面20aの傾きが適切な傾きとなるように、ロボット1を設置することが可能になる。したがって、本形態では、比較的短時間で容易に、かつ、水平方向へハンド4、5が精度良く動作するようにロボット1を筺体14に設置することが可能になる。
【0039】
ここで、ハンド4、5やアーム6に水準器23が取り付けられている場合には、アーム6の伸縮状態に応じて、水準器23の気泡管の中の気泡の位置が変動しやすくなるため、気泡が基準線の中に収まるようにロボット1を筺体14に設置しても、設置時のアーム6の伸縮状態によっては、水平方向へハンド4、5が精度良く動作するようにロボット1を筺体14に設置することができないおそれがある。これに対して、本形態では、水準器23が本体部7に取り付けられているため、アーム6の伸縮状態が変わっても、水準器23の気泡管の中の気泡の位置が変動しにくくなる。したがって、本形態では、水準器23の気泡が基準線の中に収まるようにロボット1を筺体14に設置することで、設置時のアーム6の伸縮状態にかかわらず、水平方向へハンド4、5が精度良く動作するようにロボット1を筺体14に設置することが可能になる。
【0040】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0041】
上述した形態では、第2アーム部17に対する第3アーム部18の回動中心軸の鉛直方向に対する傾き、および、水平方向に対するハンド4、5の搭載面20aの傾きが調整された後に、水準器23の気泡管内の気泡が気泡管に印された基準線の中に収まるように、本体部7に水準器23が取り付けられている。この他にもたとえば、第2アーム部17に対する第3アーム部18の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整された後であって、かつ、水平方向に対する搭載面20aの傾きが調整されていない状態で、水準器23の気泡管内の気泡が気泡管に印された基準線の中に収まるように、本体部7に水準器23が取り付けられても良い。第2アーム部17に対する第3アーム部18の回動中心軸の鉛直方向に対する傾きが調整されていれば、水平方向に対するハンド4、5の傾きを抑制することが可能になるため、この場合であっても、水準器23の気泡管の中の気泡が基準線の中に収まるようにロボット1を筺体14に設置することで、水平方向へハンド4、5が精度良く動作するようにロボット1を筺体14に設置することが可能になる。
【0042】
上述した形態では、水準器23は、本体部7に取り付けられている。この他にもたとえば、水準器23は、アーム6に取り付けられても良いし、ハンド4またはハンド5に取り付けられても良い。また、上述した形態では、水準器23は、気泡管水準器であるが、水準器23は、たとえば、レーザ水準器やデジタル水準器等の気泡管水準器以外の水準器であっても良い。
【0043】
上述した形態では、本体部7は、上下方向に細長い略直方体状に形成されているが、本体部7は、略円柱状に形成されても良いし、上下方向から見たときの形状が略六角形状や略八角形状となる多角柱状に形成されても良い。また、上述した形態では、第3アーム部18の先端側に2個のハンド4、5が取り付けられているが、第3アーム部18の先端側に1個のハンドが取り付けられても良い。また、上述した形態では、アーム6は、第1アーム部16、第2アーム部17および第3アーム部18の3個のアーム部によって構成されているが、アーム6は、2個のアーム部によって構成されても良いし、4個以上のアーム部によって構成されても良い。
【0044】
上述した形態では、半導体製造システム9において、半導体ウエハ処理装置11は、EFEM10の後ろ側に配置されている。この他にもたとえば、半導体ウエハ処理装置11は、EFEM10の右側、左側または左右の両側に配置されても良い。たとえば、図3の二点鎖線で示すように、EFEM10の右側に半導体ウエハ処理装置11が配置されても良い。また、上述した形態では、ロボット1は、ウエハ2を搬送するためのロボットであるが、ロボット1は、液晶用のガラス基板等の他の搬送対象物を搬送するロボットであっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 ロボット(水平多関節ロボット)
2 ウエハ(半導体ウエハ、搬送対象物)
4、5 ハンド
6 アーム
7 本体部
17 第2アーム部(第2ハンド側アーム部)
18 第3アーム部(ハンド側アーム部)
20a 搭載面
23 水準器
図1
図2
図3
図4