(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記有機凝集・沈降剤を、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態の廃水中に添加することで、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集・沈降剤が共存する状態を生じさせている請求項1に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法。
  前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存した廃水になる前の用水に予め前記有機凝集・沈降剤を添加しておき、さらにこの水を使用することで、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集・沈降剤が共存する状態を生じさせている請求項1に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法。
  前記粗大な懸濁物質と、前記微細な懸濁物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で10〜70である請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法。
  前記有機凝集・沈降剤が、カチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万〜1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法。
  前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集・凝結・沈降させた後に、さらに凝集・凝結・沈降した沈殿物を除去する請求項1〜9のいずれか1項に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法。
【背景技術】
【0002】
  例えば、製鐵所において発生する廃水としては、連続鋳造工程における直接冷却廃水、圧延工程における直接冷却廃水、高炉、転炉、電炉工程における集塵廃水、屋外原料貯蔵ヤードから発生する雨水廃水などがあるが、その量は大量である。また、これらの廃水中には、下記に述べるように、いずれも、微細な懸濁物質のみならず、鉄等の金属粉や、水砕スラグ、石炭粉・コークス粉等の粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質(以下、粗大SSとも呼ぶ)が含まれている。後述するように、このような廃水から懸濁物質を除去する場合は、先ず、粗大な懸濁物質を沈降分離等の方法で予め除去した後、除去後の廃水を種々の凝集剤を用いて更に処理して、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質(以下、微細SSとも呼ぶ)を、凝集沈降させて除去することが多い。
【0003】
  図5は、廃水中に含有されている上記したような粗大SSと微細SSとを含む懸濁物質(SS)を除去処理する従来の方法の一例であり、鋼材圧延ラインの圧延工程における直接冷却廃水の処理の概要を模式的に示したものである。
図5に示したように、直接冷却廃水は、SSを除去処理されて処理水となった後、再び直接冷却水として循環使用されている。したがって、その処理水は、懸濁物質の少ない、より清澄なものであることが望まれる。以下に、
図5を参照して、従来行われている直接冷却廃水の処理の手順を説明する。先ず、圧延工程では、冷却水がスプレーノズル等から鋼材表面へ噴射されて、鋼材を冷却する。その際に使用された冷却水は、鋼材圧延ラインの下に作られた、
図5中に1で示したスケールスルースと呼ばれる開放樋に流れ落ちる。これが、直接冷却廃水と呼ばれているものであり、種々の懸濁物質を含むものになる。具体的には、この直接冷却廃水中には、鋼材表面から剥がれ落ちたスケールと呼ばれる50μm以上の粒径を持つ大き目の懸濁物質や、鋳造や圧延に用いられるロールの軸用潤滑油や圧延油や、これらのロールと鋼材との摩擦により生じる微細な鉄粉等が含まれており、少なくとも粗大SSと微細SSとが混在したものとなっている。なお、鋼材製造ラインにおける連続鋳造工程で生じる直接冷却廃水も同様の性状のものであり、その処理も、上記と同様に行われることが多い。
【0004】
  上記でスケールスルース1に流れ落ちた大量の直接冷却廃水は、
図5中に3で示したスケールピットと呼ばれる槽へと激しい流れによって排水されて、ピット内に貯溜される。スケールピットは、直接冷却廃水中に存在している粒径の大きなスケール(粗大SS)の沈殿分離を主目的としたものであり、Over  Flow  Rateが約10m/hr以上程度の比較的小さな槽である。
【0005】
  先に述べたように、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水に対しての従来の処理では、先ず、このスケールピット3において、粒径の大きな懸濁物質(すなわち、粗大SS)を沈殿分離し、その後に、粗大SSを取り除いた廃水について、後段に設けた凝集沈殿設備8やろ過機9、更には電磁フィルター(不図示)等において、主に粒径50μmに満たない微粒子(すなわち、微細SS)を除去処理することが行われている。そして、上記のようにして粗大SSと微細SSを除去後、処理水を冷却塔4などに通水することで冷却して、再び直接冷却用水として工場へ給水するのが一般的である。
【0006】
  上記したようにして行われている従来の、直接冷却廃水からの懸濁物質の除去処理方法では、懸濁物質の沈降を効率よく行うことを目的として、凝集剤が使用されている。使用される凝集剤は、廃水の性状に応じて選択されており、更には各種の凝集剤を組み合わせて使用することが一般的になっている。例えば、鉄鋼圧延廃水の水処理方法に関する特許文献1では、鉄鋼圧延に使った水を回収してなる原水に、無機凝集剤であるポリ塩化アルミニウム(PAC)及び有機凝集剤を注入する工程を有することを前提とした上で、これらの注入量を調整することで、懸濁物質濃度を、より大幅且つ有利に低減させ得るとしている。また、特許文献2では、鉄鋼業等から生じる含油廃水を、PACで処理するにあたり、有機凝集剤であるカチオン系ディスパージョン型(共)重合体を添加し、次いで凝集沈澱処理及び脱水処理に付する方法が提案されている。また、特許文献3では、自動車工業廃水等の鉱油が混入した廃水において、特有のカチオン性有機凝集剤を添加した後、アニオン性有機凝集剤を添加し凝集させフロックを分離することが提案されている。
【0007】
  更に、特許文献4では、先に述べた圧延工程における直接冷却廃水の水処理方法において、無機凝集剤の硫酸バンドやPACを使用すると、冷却水中の硫酸イオンや塩素イオンが増加し、冷却水と接触する圧延機、ロール等の機器類の腐食を促進し、冷却水中に微細な酸化鉄(Fe
2O
3)を発生させるという問題があり、このような酸化鉄は、凝集処理によっても十分に除去することはできないとしている。そして、特許文献4に記載の技術では、その対策として、アンモニア、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン又はアルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの重縮合物等のカチオン系有機凝集剤を用いて凝集処理し、該処理水に特有のスケール防止剤を添加することが有効であるとしている。
【0008】
  また、特許文献5には、製鐵所において発生する廃水の一つである転炉排ガス集塵水の処理に関し、湿式集塵器にて湿式集塵処理して得られるダストを含む集塵水を粗粒分離器に導入して粗粒ダストを分離した後、シックナーで凝集沈殿処理する際に、湿式集塵器の出口から該粗粒分離器の間の集塵水及び/又は粗粒分離器に高分子凝集剤を添加することが提案されている。そして、上記構成とすることで、粗粒分離器での粗粒ダストの回収率を高め、転炉排ガスダストのリサイクルコストの低減、リサイクル効率の向上を図ることができるとされている。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
  上記したように、例えば、製鐵所において大量に発生する直接冷却廃水中から懸濁物質を除去する処理では、無機系や有機系の各種凝集剤から選択された複数種類の凝集剤が使用されている。ここで、製鐵所における直接冷却廃水の量は大量であるため、凝集剤にかかる費用も多大になるので、より安価で、且つ少ない量で高い凝集沈降効率を達成する技術の開発が要望されている。また、従来の技術において、複数種類の凝集剤は別々に廃水に添加されるとしても、その添加地点は、通常は水処理設備内に入ってからである。例えば、
図5に示した例において、水処理設備における最初の処理槽である先に述べたスケールピット3内に、粗大SSの沈殿をより早める目的で凝集剤を添加することも場合によってはあり得るが、この場合の凝集剤は、通常、無機凝集剤が用いられている。一方、有機凝集剤は、本来、微細SSを凝集させて大きなフロックとし凝集沈降するために用いられており、
図5に示した例では、スケールピット3内で粗大SSを沈殿した後の、廃水中の微細SSを凝集沈殿させる目的で使用されている。具体的には、
図5に示した例では、有機凝集剤は、凝集沈殿設備を構成する広大な沈殿池8に添加されている。そして、撹拌機を用いて、直接冷却廃水等の被処理水と凝集剤との混合を促進させる必要がある場合もある。混合を促進する方法としては、例えば、沈殿池内に撹拌機を設置してもよいが、沈殿池が広大な場合には、沈殿池の前段に撹拌槽を設け、該撹拌槽で予め被処理水と凝集剤とを混合させた後、沈殿池に導入するといったことが行われている。その場合は、使用する凝集剤にかかる費用に加えて、撹拌機や撹拌槽にかかる設備費及び維持費が別途必要となるので、撹拌機等の使用を伴わない処理方法の開発が望まれる。
【0011】
  また、従来の処理方法では、先に述べたように、スケールピット内で粗大SSを沈殿した後、粗大SSを取り除いた廃水について、凝集沈殿設備で処理を行っているため、沈殿池、または、その沈殿池の前段に設けられた撹拌槽に流入する廃水中の懸濁物質は、前述した通り、粒径50μmに満たない微粒子(微細SS)となっている。このため、種々の凝集剤を用いてフロックとしたとしても、その沈降速度は、大きくても2〜3m/hr程度であり、迅速なものではない。したがって、従来の処理方法では、この微細SSからなるフロックの沈降速度を下回るOver  Flow  Rateを持つ大きさの広大な沈殿池が必要となる。このことは、処理設備の規模が極めて大きくなることを意味している。
【0012】
  これに対し、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水のような、鉄を主成分とする懸濁物質を含む廃水の場合は、大きな沈殿池の代わりに、電磁フィルターやろ過機を懸濁物質の除去に用いることも行われている。
図5に例示した設備では、沈殿池8を有する凝集沈殿設備と、ろ過機9を併用している。しかし、電磁フィルターやろ過機は、設備費がかかることに加えて、その維持管理が煩雑で高額である上に、これらに捕捉された懸濁物質を定期的に排出することを目的とした逆流洗浄が必須になる。そして、この逆流洗浄の廃水の処理には更に設備も薬品も必要となる。
【0013】
  また、前記した特許文献4に記載の技術においては、下記の課題がある。先に述べたように、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水における懸濁物質の除去では、通常、無機凝集剤のみ、または、無機凝集剤と有機凝集剤とを併用するため、無機凝集剤に由来するCl
-やSO
42-といった腐食性陰イオンが処理水に混入することが起こる。そして、一般的に、これらの処理水は冷却された後、再び冷却水として工場へ給水されるため、上記した腐食性陰イオンの濃度が冷却塔等で水分が蒸発することで上昇すると、循環系統の配管やスプレーノズルの腐食を促進する恐れがある。
【0014】
  また、こうした直接冷却廃水における懸濁物質の除去処理では、油分と微細な鉄粉等の懸濁物質とが強固に吸着し合った高油分スラッジが沈殿池において大量に発生する。この高油分スラッジは、産業廃棄物として廃棄処理されるか、製鐵原料としてリサイクルされており、殆どの場合、濃縮、脱水する工程が必要となる。しかし、特開2002−275549号公報にも記載されているように、高油分スラッジは、濃縮不良や脱水不良が起こり易い上に、燃焼性が非常に悪いため、含まれる油分が焼結機内で充分に燃焼できずに油蒸気が発生し、排ガスの集塵装置内に蓄積されて自然発火や爆発を引き起こすことがあるという問題がある。
【0015】
  上記した高油分スラッジにおける濃縮不良や脱水不良といった課題に対する解決策としては、油分の含有量が少ない他のスラッジと混合させた後に濃縮脱水処理する方法や、焼却処理する方法がある。しかし、これらの方法は、高油分スラッジに混合させるための低油分スラッジの量に限りがある場合や、焼却炉の余力が大きくない場合は、採用することができないので、高油分スラッジの濃縮不良や脱水不良における問題に対する根本的な解決策とはなっていない。このため、従来の方法で大量に発生する高油分スラッジにおける課題の根本的な解決策を見出すことができれば、極めて有用である。
【0016】
  また、前記した特許文献5に記載の技術は、上記に挙げた技術とは処理対象とする廃水が異なり、転炉排ガス集塵水の処理に関し、その目的は、微粒を凝集沈澱処理する前に粗粒分離器で行う粗粒ダストの分離の回収率を高めることである。この方法によっても、その後にシックナーで凝集沈殿処理して粗粒分離器で分離できない微粒を処理することを必須としており、粗粒分離器で分離した粗粒ダストの回収効率を高める以上の効果を得てはいない。さらに、その向上の程度は、粗粒分離器に高分子凝集剤を使用しない場合に比べて1.1〜1.3倍であるとされており、その向上効果は十分とは言い難い。これに対し、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とを同時に一括して、しかも迅速に除去処理できる技術が開発されれば、極めて有用である。
【0017】
  上記のような状況から、本発明者らは、特に、製鐵所において発生するような多様な懸濁物質を含む廃水中の懸濁物質を除去処理する方法において、下記の効果が得られ、しかも、少なくとも、廃水中の粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とを、さらには油分を含むものであったとしても、これらを、同時に一括して、スケールピット等のOver  Flow  Rateが10m/hr以上となる比較的小さな水槽で、分離、除去処理することを可能にする技術が提供できれば、極めて有用であると認識するに至った。製鐵所においては、例えば、循環使用されることが多い、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水等の懸濁物質を含有する各種廃水に対し、(1)簡略化された設備で処理して迅速に清澄な処理水を得ることができ、(2)維持管理費が低く、(3)できれば処理水への悪影響を生じ得る無機凝集剤を用いることなく、(4)廃水中に、金属やコークス等の懸濁物質に加えて油分が懸濁していたとしても、処理によってリサイクル困難なスラッジを発生しない、経済的で簡便な廃水中の懸濁物質の除去方法が望まれる。
【0018】
  したがって、本発明は、例えば、前述したような製鐵所において発生する、粗大SSと微細SSとが併存している各種廃水中の懸濁物質を分離除去する際に下記のことを達成できる、工業上、極めて有用な廃水中の懸濁物質の除去処理方法を提供することを目的とする。すなわち、懸濁物質の除去処理に際し、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させているにもかかわらず、別々に処理していた従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質の処理水を迅速に得ることができることに加え、同一に処理することを可能にすることで、凝集剤の総使用量を従来よりも低減することを可能とし、さらに、設備を大幅に簡略化することで設備費及び維持管理費を縮小でき、更に、発生する凝集沈降した沈殿物のリサイクル費の低減、場合によっては無機凝集剤を使用することに起因して処理水に混入される配管の腐食を促進する物質の低減をも達成できる技術の提供を可能とすることを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0019】
  上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、凝集剤を用い、廃水中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための廃水中の懸濁物質の除去処理方法であって、上記凝集剤として少なくとも1種の有機凝集剤を用い、少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたことを特徴とする廃水中の懸濁物質の除去処理方法を提供する。
【0020】
  上記した本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、前記有機凝集剤を、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態の廃水中に添加することで、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせている上記の廃水中の懸濁物質の除去処理方法が挙げられる。さらに、この廃水中の懸濁物質の除去処理方法において、前記廃水が、製鐵所において発生する廃水であり、前記有機凝集剤を廃水に添加する位置が、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存している廃水が発生する地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点であることが挙げられる。
【0021】
  上記した本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法の別の好ましい形態としては、前記粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存した廃水になる前の用水に予め前記有機凝集剤を添加しておき、さらにこの水を使用することで、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせている廃水中の懸濁物質の除去処理方法が挙げられる。さらに、この廃水中の懸濁物質の除去処理方法において、前記廃水が、製鐵所において発生する廃水であり、前記粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存した廃水になる前の用水が、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを、前記有機凝集剤の存在下、同一の処理で凝集沈降させて、これらを同時に除去処理した後に得られる処理水である、該処理水を循環使用する系で、該処理水への前記有機凝集剤の添加を、その使用基準を満たすまでに用水の処理がなされた地点から、該用水を使用する給水地点に至るまでのいずれかの地点で行う請求項4に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法ことが挙げられる。
【0022】
  上記した本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法の別の好ましい形態としては、更に、下記のことが挙げられる。前記粗大な懸濁物質が、粒径が50μm以上のものであり、前記微細な懸濁物質が、粒径が50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上であること;前記乱流状態の水のレイノズル数が、8000以上であること;前記有機凝集剤が、カチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万〜1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上であること;前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質が、金属粉、水砕スラグ、石炭粉又はコークス粉の少なくともいずれかであり、場合によっては更にこれらいずれかの物質と油分とが併存していること;前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させた後に、さらに凝集沈降した沈殿物を除去することである。
【0023】
  本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法において使用する有機凝集剤としては、特に限定されないが、例えば、下記に挙げるものを好適に使用することができる。更に、本発明では、このような有機凝集剤の他に無機凝集剤を併用しないように設計することが、より好ましい。
  下記一般式(1)及び(2)を必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万〜1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上、より好ましくは、0.2meq/g以上であるものが挙げられる。
(上記式中の、R
1、R
2は、CH
3又はC
2H
5を、R
3は、H、CH
3又はC
2H
5を表す。X
-は、アニオン性対イオンを表す。)
【0024】
  また、本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法によって処理する廃水は、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存した状態にあるものであればいずれのものも対象とすることができるが、例えば、大量処理が必要となる下記に挙げるような廃水を、処理対象とすることができる。本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法は、例えば、製鐵所の連続鋳造工程における鋼材の直接冷却廃水、製鐵所の圧延工程における鋼材の直接冷却廃水、製鐵所の高炉、転炉、電炉工程における集塵廃水、製鐵所の屋外原料貯蔵ヤードから発生する雨水廃水、製鐵所の高炉滓から水砕を得る際に発生する冷却廃水等の処理に好適に用いることができる。
 
【発明の効果】
【0025】
  本発明によれば、例えば、製鐵所等において発生する、粗大SSと微細SSとが併存している各種廃水中の懸濁物質を分離除去する際に、例えば、Over  Flow  Rateが10m/hr以上の比較的小さな槽のみで、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、従来技術で処理した場合と比べてSSをより速やかに沈降させることができ、しかも、得られる処理水を、これらの懸濁物質を別々に処理していた従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質のものにできる、工業上、極めて有用な廃水中の懸濁物質の除去処理方法が提供される。すなわち、本発明の処理プロセスを採用することで、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、しかも従来技術と比べて明らかに迅速に凝集沈降させることが可能になったことで、凝集剤の総使用量を従来よりも低減することが可能になり、更に設備を大幅に簡略化することもできるので、設備費及び維持管理費を縮小でき、これらに加えて、発生する凝集沈降した沈殿物のリサイクル費の低減、無機凝集剤を使用することに起因して処理水に混入される配管の腐食を促進する物質の低減をも達成できる。また、本発明の処理プロセスによって得られる処理水は、従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質を示すので、そのまま循環使用することが可能であり、さらに、発生する凝集沈降した沈殿物は、水離れのよい取り扱い易いものになるといった利点もあり、沈殿物の処理にかかる費用を従来の方法の場合よりも大幅に低減できるという効果も得られる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0027】
  以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明者らは、先に述べた従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、無機凝集剤の使用を停止する一方で、有機凝集剤を添加した際に、或いは、有機凝集剤の添加が行われた以降に、該有機凝集剤と、粗大SSと微細SSとが、流速が0.5m/秒以上と速く、且つ、乱流状態となる中に共存する状態を生じさせる、という極めて単純な方法によって、廃水中に存在している、或いは、廃水中に存在することとなる、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、極めて効率よく迅速に凝集沈降させることができる、という従来技術の常識を覆す驚くべき事実を見出して本発明を達成した。この結果、上記した本発明の処理方法によれば、従来の懸濁物質の除去処理方法と比較して、下記に挙げる種々の効果を得ることができる。まず、従来、粗大SSの沈降の促進に用いていた無機凝集剤の使用の必要がなく、また、粗大SSの処理の後段で微細SSを取り除く必要がなくなるので、そのための設備が不要となり、その結果、従来処理の場合よりも、設備費及び維持管理費を縮小できる。更に、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、極めて迅速にこれらのSSを凝集沈降させることができることに加え、その沈殿物は、従来の処理で生じていた汚泥とは全く異なり、脱水性が良好で、油分の含有率も低いため、その後の処理が極めて容易であり、沈殿物の処理のために従来の処理で必要のあった設備費及び維持管理費が大幅に削減できる。更に、得られる処理水は、無機凝集剤の使用に起因して混入する塩素イオンや硫酸イオンの問題がないことに加え、従来の懸濁物質の除去処理方法で得られた処理水と同等以上の清澄な水質であり、懸濁物質の残留が極めて少ないものであり、後段で、更に微細SSを取り除くことなく良好な冷却水として再利用できる画期的なものである。
 
【0028】
  より具体的には、本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法では、少なくとも1種の有機凝集剤を用い、少なくとも、粗大なSSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、上記した優れた作用・効果が得られる。
 
【0029】
  先に述べたように、製鐵所において発生する廃水では、通常、粒径が50μm以上のものを粗大SS、粒径が50μmに満たないものを微細SSとして扱い、粗大SSを取り除いた廃水に対し、後段で、微細SSを凝集沈殿等の処理をしてこれらを処理しているが、本願発明では、これらの粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたことを特徴としている。処理する廃水中における粗大SSと微細SSとの併存状態は特に限定されないが、本発明者らの検討によれば、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上である廃水であれば、これらを一緒に安定した状態で良好に処理することができることがわかった。また、本発明者らの検討によれば、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)は、0.5以上であればよく、むしろ大きい場合に良好な処理ができ、例えば、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比が100程度であっても問題なく処理できる。本発明者らが確認したところ、製鐵所において発生する廃水の、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)は、懸濁物質の比重にもよるが、例えば、その大半が、5〜100程度或いは10〜70程度であった。さらに、本発明者らの検討によれば、これらのいずれの廃水に対しても、本発明の処理方法を適用することで、廃水中の異なる大きさの懸濁物質を、同一の処理で、例えば、Over  Flow  Rateが10m/hr以上の比較的小さな槽のみで、極めて迅速に沈降させることができ、これに加えてその処理水は、従来の処理では容易に達成することができなかった清澄なものとなる。
 
【0030】
  本発明で規定する「流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態」が意味するところは、有機凝集剤の使用状態を、従来の撹拌しながらの緩やかな流動状態の中で処理するのでなく、本発明の顕著な効果が得られる激しい流動状態に、粗大なSSと微細SSと有機凝集剤とを共存させることを意味している。流速が0.5m/秒以上の速さで流動している状態であればよいが、より好ましくは、流速が1.0m/秒以上の速さで流動している状態となることが好ましい。更に、その流動状態が、乱流状態であることを要するが、より具体的には、水のレイノズル数が8000以上、更に好ましくは、水のレイノズル数が10000以上である状態となっている水の中に、粗大なSSと微細SSとが併存し、更に有機凝集剤が共存する状態を生じさせればよい。本発明の上記構成は、従来の懸濁物の処理方法の場合のように撹拌設備等を別に設けて達成する必要がなく、下記に述べるように、工場内で生じている廃水の激しい流れを懸濁物質の除去処理に巧みに利用することで達成できるので、その設備的なメリットは極めて大きい。
 
【0031】
  本発明で規定する上記した水の状態を生じさせる方法としては、例えば、下記(1)のそのような状態の廃水中に有機凝集剤を添加する方法や、下記(2)の、粗大なSSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水に、予め有機凝集剤を添加する方法が挙げられる。
 
【0032】
(1)有機凝集剤を、粗大なSSと微細SSとが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態の廃水中に添加する。その場合における有機凝集剤の好ましい添加の位置としては、粗大なSSと微細SSとが併存している廃水が発生する地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点が挙げられる。
(2)粗大なSSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水に予め前記有機凝集剤を添加しておき、さらにこの水を使用することで、粗大なSSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせる。その場合における有機凝集剤の添加の位置の一例としては、粗大なSSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水が、前記粗大なSSと微細SSとを、前記有機凝集剤の存在下、同一の処理で凝集沈降させて、これらを同時に除去処理した後に得られる処理水を循環使用する系において、前記有機凝集剤の添加を、その使用基準を満たすまでに用水の処理がなされた地点から、該用水を使用する給水地点に至るまでのいずれかの地点で行うことが挙げられる。
 
【0033】
  上記(1)及び(2)について、製鐵所の連続鋳造工程や圧延工程において発生する直接冷却廃水を例にとって具体的に説明すれば、上記(1)でいう「粗大なSSと微細SSとが併存している廃水の発生地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点」とは、以下の地点を含むものである。先ず、冷却水がスプレーノズル等から鋼材表面へ噴射されて、鋼材を冷却した時点で、冷却水は直接冷却廃水となるので、この地点が「廃水の発生地点」である。また、「廃水の発生地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点」は、鋼材を冷却後、直接冷却廃水となってスケールスルースと呼ばれる開放樋に流れ落ちて、この開放樋を流れて、水処理設備であるスケールピットに至るので、この間の一連の地点とその近傍の地点を意味している。
 
【0034】
  上記したことから、本発明において、有機凝集剤の添加は、粗大なSSと微細SSとが併存している廃水となっているスケールスルースに流れ落ちる地点で行っても、スケールスルースのいずれかの地点で行っても、スケールピットに排水される直前の激しい流れの中に添加させても、スケールピット入口付近に添加しても、スケールピットポンプのサクション付近に添加してもよい。
 
【0035】
  また、上記(2)でいう「その使用基準を満たすまでに用水の処理がなされた地点から、該用水の給水地点に至るまでのいずれかの地点」とは、スケールピット以降、沈殿池、ろ過機、電磁フィルター等の懸濁物質の除去設備の出口地点(すなわち処理水の排出口)から、冷却塔を通じて、上記した廃水の発生地点まで、及び、スケールピット下流側からスケールスルースへと循環流を生じさせるスケールピットポンプのサクション近傍から、先に説明した廃水の発生地点までを意味している。
 
【0036】
  本発明者らの検討によれば、少なくとも1種類の有機凝集剤を用い、特に、該有機凝集剤が、粗大なSSと微細SSとが併存し、水と共に激しく流動している状態の中に共存する状態を生じさせると、高い効果が得られることがわかった。より具体的には、有機凝集剤を、粗大SS及び微細SSと激しい混合状態で共存させた場合に、有機凝集剤の凝結・凝集・沈降効果がより顕著に発揮され、粗大SSと微細SSが同一の処理で、従来技術では達成できていなかった速度で速やかに凝集沈降して、その上澄み液が従来にない清澄なものとなることを見出した。更に、これらが共存した状態で、激しく流動している時間がある程度確保された方がより高い効果が得られることと、添加作業の容易性から、例えば、
図1中に2で示したように、スケールスルースのスケールピット3からできるだけ遠い地点で有機凝集剤を添加することが好ましいこともわかった。このように構成すれば、例えば、直接冷却廃水がスケールスルースを流れていくいずれの地点でも、有機凝集剤と粗大SSと微細SSとが激しい混合状態となる。その結果、驚くべきことに、スケールピット3に排出された時点で、直接冷却廃水中の粗大SSと微細SSとを含む懸濁物質は、凝結・凝集中である、または既に凝結・凝集しているため、沈殿物と清澄な処理水とに速やかに分離する。また、例えば、
図1に例示したような、処理水を冷却水として循環使用する系において、スケールピット3からできるだけ遠い地点として、例えば、先に説明した廃水の発生地点の前の、得られた処理水を用水に使用することとなる給水地点に至るまでを選択し、廃水になる前の用水に有機凝集剤を添加することも有効である。勿論、処理水を循環使用する系でなくても、用水に予め有機凝集剤を添加し、当該用水を使用することで、本発明で規定する「有機凝集剤が、粗大なSSと微細SSとが併存し、水と共に激しく流動している状態の中に共存する状態を生じさせる」ものであってもよい。
 
【0037】
  本発明者らは、これらの理由について、有機凝集剤を上記したような地点で、廃水或いは用水に添加すると激しく混合され、その状態で、まず、有機凝集剤が、共存している粗大SSに対して特に高い凝集効果、更に強い凝結効果を示し、その結果、粗大SSの凝結・凝集が速やかに生じ、その際に、併存している微細SSが、この有機凝集剤によって形成された粗大な凝集物内に取り込まれ、これらのことによって、同一処理による速やかで効率のよい良好な凝集沈降という本発明の優れた効果が得られたものと考えている。特に、廃水が溝や液路内を流動している場合は、微細SSが廃水内を活発に動いているので、微細SSが、粗大な凝集物内により取り込まれやすくなったものと推論している。更に、このようなメカニズムで得られたと考えられる、本発明の処理方法によって得られる凝集した沈降・沈殿物は、従来の、凝集剤を添加して沈殿槽内に沈降させることで得られた汚泥とは明らかに異なり、脱水性がよく、油分の含有率も低い。このため、その後の処理が極めて容易なものになり、従来、沈降・沈殿物の2次処理にかかっていたコストの大幅な低減が可能になる。
 
【0038】
  本発明で使用する有機凝集剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系、ポリアミン系、およびジアリルアンモニウム系の化合物から選ばれる有機凝集剤を用いることができる。本発明者らの検討によれば、下記に挙げる有機凝集剤を用いれば、より顕著な効果が得られる。具体的には、下記一般式(1)及び(2)を必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万〜1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上であるものを用いることが有効である。
(上記式中の、R
1、R
2は、CH
3又はC
2H
5を、R
3は、H、CH
3又はC
2H
5を表す。X
-は、アニオン性対イオンを表す。)
 
【0039】
  本発明で有機凝集剤として利用することができる上記したカチオン性の共重合体は、上記式(1)及び式(2)で表されるモノマーをそれぞれ5モル%以上含む原料モノマーから、その重量平均分子量及びpH7におけるカチオンコロイド当量値が、本発明で規定する範囲内となるようにすることで誘導できる。具体的には、特許第2779732号公報に記載の合成方法が利用できる。また、両性の共重合体は、例えば、特許第3352835号公報に記載されているように、上記式(1)及び(2)で表されるカチオン性モノマーに、その他のモノマーとしてイタコン酸やアクリル酸等のアニオン性モノマーを適宜混合して原料モノマーとすることで、同様の方法で得ることができる。
 
【0040】
  上記式(1)で示されるモノマーの代表的なもとしては、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩酸塩等が挙げられる。また、式(2)で示されるモノマーの代表例としては、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドが挙げられる。これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
 
【0041】
  本発明者らは、上記したような原料モノマーから得られる有機凝集剤について詳細に検討した結果、本発明の目的をより高レベルで安定して達成させるためには、上記したような原料モノマーから得られるカチオン性又は両性の共重合体が、下記の要件を満たすものであることを要することを見出した。具体的には、上記した有機凝集剤の場合は、上記原料モノマーから誘導される共重合体の中でも、重量平均分子量が100万〜1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上であるであることが好ましい。その、より好ましい範囲は、重量平均分子量とカチオンコロイド当量値との兼ね合いによっても異なるが、重量平均分子量が200万〜1100万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.2〜1.9meq/gである弱カチオン〜強カチオンのものを使用するとよい。
 
【0042】
  重量平均分子量が上記範囲内よりも小さ過ぎると十分なSS除去効果が得られず、一方、大き過ぎるとその粘度が上昇し、使用し難くなる。上記カチオンコロイド当量値は、有機凝集剤中のカチオン密度、すなわち、カチオン性を示す官能基の量を示すものである。本発明に使用する有機凝集剤のカチオンコロイド当量値は、コロイド滴定法により測定した値であるが、ポリビニル硫酸カリウム溶液で滴定する方法で求めた値である。
 
【0043】
  上記に例示した有機凝集剤は、カチオン性のものであるが、本発明はこれに限定されるものでなく、対象とする廃水によってはアニオン性やノニオン性の有機凝集剤を使用することもできる。例えば、本発明者らの検討によれば、転炉からの集塵廃水の場合は、カチオン性の有機凝集剤を用いた場合よりも、アニオン性の有機凝集剤を用いた方が大きな効果が得られる。また、石炭ヤードの雨水排水などからの石炭・コークス等の炭素系の粉塵を含有する廃水を処理する場合には、微アニオン性或いはノニオン性の有機凝集剤の使用が適している。
 
【0044】
  本発明者らの検討によれば、上記した共重合体を主成分とする有機凝集剤を、例えば、製鐵工場の熱間圧延工程から大量に排出される、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊している状態の直接冷却廃水に、該処理廃水に対して0.1mg/L以上、例えば、2mg/L程度と微少量添加するだけで、廃水中の懸濁物質が速やかに凝集沈降して、しかも、その上澄みは、目視において濁りの見られない極めて清澄なものになる。これに対し、この有機凝集剤を、従来のように、予め廃水中から粗大SSを除去した後に行う凝集沈降処理に使用した場合には、上記したような顕著な効果は得られず、微細SSが凝集沈降する傾向はみられるものの、その上澄みは、目視において濁りがあり、明らかに十分なものではなかった。このことは、上記した有機凝集剤によってもたらされるより本発明の顕著な凝結・凝集・沈降効果は、微細なSSと共に、粒径が50μm以上の粗大なSSが併存している場合に発揮されるものであり、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊している状態の廃水を処理することが重要であることを示している。
 
【0045】
  更に、本発明者らの検討によれば、上記有機凝集剤は、先に述べたように、例えば、上記熱間圧延工程からの直接冷却廃水が、水処理設備である「スケールピット」に至るまでの廃水が激しく流動している「スケールスルース」と呼ばれている溝や液路に添加するとより高い効果が得られる。すなわち、製鐵所において発生する廃水中の懸濁物質には、比重の大きな鉄粉が多く含まれているため、懸濁物質の沈降を防止する必要があり、このスケールスルースの流れは1〜5m/秒程度と極めて速いものとなっている。本発明者らの検討によれば、この速い廃水の流れ中に有機凝集剤を単に添加するだけで、先に述べた本発明で規定する要件を満たし、その結果、本発明の顕著な効果を得ることができる。また、先にも述べたように、この場合に、有機凝集剤を、水処理設備である「スケールピット」に対してより上流側に添加することがより効果的である。特に、上記有機凝集剤の添加を廃水の発生地点の近傍で行うことで、「スケールスルース」を経由して「スケールピット」に至るまでの廃水が激しく流動している状態の時間をより長く確保できるようになるが、このようにした方が、本発明のより高い効果を得ることができる。これらのことは、有機凝集剤を添加する場合は、廃水が激しく流動している場所に添加し、有機凝集剤と、粗大SS及び微細SSを激しい混合状態で反応させた方が、該有機凝集剤を使用したことによる凝結・凝集・沈降効果が、より速やかにより顕著に発揮されることを示している。先述したように、スケールスルースと呼ばれている溝や液路では、廃水が速い流れの中で激しく流動しており、例えば、水処理設備に廃水が導入される前のこの地点を巧みに利用すれば、別途、撹拌装置等の設備を設ける必要がなく、有機凝集剤を添加する地点を適宜に設計するという簡便な手段によって、後述する工業上、極めて優れた種々の効果を得ることが可能になる。このため、本発明で規定する要件を達成するためには、従来のスケールスルースと呼ばれている溝や液路のままでも勿論よいが、場合によっては、例えば、溝や液路内に障害物や回転羽等を設置するといった方法で、流れがより乱流となるように工夫してもよい。いずれにしても、本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法においては、有機凝集剤と、除去処理の対象である粗大SSおよび微細SSを激しい混合状態で反応させることがより好ましく、このようにすれば、有機凝集剤の使用量を低減できるとともに、添加した有機凝集剤によって、より高い凝結・凝集・沈降効果を得ることができる。
 
【0046】
  本発明の特徴は、少なくとも、粗大なSSと微細なSSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせることにあるが、有機凝集剤を添加する地点を、上記に挙げたような各地点とすることで、本発明で規定する上記要件を容易に満足する処理ができる。本発明の処理方法によれば、上記した極めて簡便な方法によって、以下に挙げる工業上極めて有用な種々の効果が得られる。本発明の処理方法によって得られる主な効果、またはメリットを4つ述べる。
 
【0047】
(1)水処理プロセスの簡略化
  有機凝集剤の添加地点を工夫するだけで、廃水中の粗大なSSと微細なSSが有機凝集剤とよく混合されることで、微細な鉄粉や油と粒径の大きなスケールとが極めて速やかに凝集し、沈降させることができ、従来は、粗大な懸濁物質を処理するためのスケールピットでは除去できなかった微細な鉄粉や油も、スケールピット、またはそれに類する比較的小さい槽で沈殿分離でき、スケールピットの出側で、従来と同等或いはそれ以上のレベルまで懸濁物質の混入を低減した清浄な処理水が得られる、簡易且つ迅速な処理が可能になる。
  上記の結果、従来の廃水中の微細なSSの除去処理において必要とされていた、沈殿池やろ過機、電磁フィルターといった、微細鉄粉や油の分離設備が不要となる。これに伴い、撹拌機や、ろ過機や電磁フィルターを使用した場合に必要となっていた逆流洗浄排水処理設備も不要となる。
  また、本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法では無機凝集剤が不要となることから、そのためのタンクやポンプ、撹拌機、送液ライン等の設備も不要となる。
  したがって、製鐵所において大量に発生する、粗大なSSと微細なSSとが共存している状態の廃水に対して、新たに懸濁物質の除去処理設備を建設する場合には、上記に関連した設備スペース、及び建設費が大幅に削減できる。
(2)維持管理費の縮小
  沈殿池やろ過機が不要となり、スケールピットの出側から処理水を冷却塔へ直接送水できるため、必要なポンプの台数を減らすことができ、電気代を含む維持管理費が大幅に縮小できる。
(3)腐食の低減
  本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法では無機凝集剤を必要としないため、ポリ塩化アルミニウムや、硫酸バンド等に代表される無機凝集剤に含まれる、腐食性陰イオンである、Cl
-や、SO
42-が処理水中に混入することを著しく低減できる。このため、凝集沈殿、及び冷却処理した処理水を、再度工場へ給水する場合、その配管系等、ならびに生産する鋼材表面の腐食を軽減することが可能となる。
(4)鉄スラッジのリサイクル促進
  本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法を採用し、粗大なSSと微細なSSとを同一の処理で凝集沈降させたことによってスケールピットにおいて発生する、粒径の大きなスケール、微細な鉄粉、及び油からなるスラッジは、脱水性と濃縮性がよく、重量あたりの油含有率が小さいため、その運搬及びリサイクルが簡便にできる。
 
【0048】
  図1は、本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法を連続鋳造工程の直接冷却廃水処理に適用した場合の好適な一実施形態を示す模式図である。
図1に示したように、連続鋳造工程から発生する直接冷却廃水は、連続鋳造ラインからスケールスルース1に流れ落ち、廃水は、スケールスルース1の内部を激しく流動しながら、スケールピット3へと移動する。
図1に示した例では、有機凝集剤2が、直接冷却廃水が流動していくスケールスルース1の最上流部分で添加されている。それ故、有機凝集剤2と直接冷却廃水は、スケールスルース1内の激しい流れの中で混合され、スケールピット3内に排水される。その結果、スケールピット3内では、廃水中のスケール、微粒鉄粉、油の凝結・凝集したものが極めて速やかに沈降分離される。そのため、スケールピット3内の上澄水は清澄なものとなるので、そのまま上澄水を冷却塔4へ揚水する。最後に、冷却塔4で冷却されて得られた処理水は、直接冷却水として再び工場へ給水される。
 
【実施例】
【0049】
  実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0050】
<確認試験例>
  まず、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させることの優位性について、下記のようにして確認試験を行った。検討には、
図4に示した従来の熱間圧延工程において発生する、スケールピット3への流入水を採水し、これを確認試験に使用した。具体的には、採水したスケールピット流入水を2つに分け、一方のスケールピット流入水はそのままの状態で試験に用い、他方のスケールピット流入水は、その中の粒径50μm以上のSS(粗大SS)を除去したものを用いた。上記したそれぞれの水に対して、後述する実施例で使用した有機凝集剤を同量添加してよく混合した後、複数の同じ形状の縦長の筒状容器内にそれぞれ同量ずつ入れて、一番長いもので20分間となるように静置させて、各時点における沈降状態を観察した。そして、沈降状態を客観的に評価するため、静置時間の異なる処理水を、筒状容器の底面から一定の高さから採水し、採水したそれぞれの水(処理水)について、JIS  K0102に則して、SS濃度を分析した。
【0051】
  表1に、上記の試験結果を示した。その結果、表1に示した通り、本発明で規定している、粗大SSと微細SSとを同一に処理した「粗大SSありの系」と、従来の処理で行われている「粗大SSなしの系」では、その沈降速度に大きな違いがあることが確認された。例えば、SS濃度が15mg/lの処理水を得る場合の沈降時間が、「粗大SSありの系」では、僅か2分間で済むのに対し、従来の処理で行われている「粗大SSなしの系」では8分間必要であった。このことから、本発明で規定した、粗大SSと微細SSとを同一に処理する「粗大SSありの系」とすることで、従来の方法に比べてSSを極めて迅速に沈降させることができることが確認された。
【0052】
【0053】
  上記した、従来より行われている「粗大SSなしの系」で処理した場合と、本発明で新たに行った「粗大SSありの系」で処理した場合の比較試験で、SSの沈降速度に顕著な差が生じた理由について、本発明者らは、「粗大SSありの系」で処理した場合は、粗大SSと微細SSとが共存する状態の被処理水へ有機凝集剤を添加することで、両SSの凝集体が速やかに生成されたことで、その沈降速度が、従来技術で「粗大SSなしの系」の処理を行う前に行われている粗大SSのみの処理の場合と同程度以上になったためと考えている。
【0054】
  上記した確認試験の結果から、従来の「粗大SSなしの系」で処理する場合には、粗大SSの処理には比較的小さな槽(例えば、設計Over  Flow  Rate:10〜50m/hr程度)であるスケールピットを使用し、その後の微細SSの処理には、大きな沈殿槽(例えば、設計Over  Flow  Rate:0.5〜4.0m/hr程度)を用い、場合によっては更にろ過機等が必要であったのに対し、本発明で規定した「粗大SSありの系」を適用することで、上記したスケールピットのような比較的小さな槽のみを使用することで、従来の処理法と同等以上の処理水質が得られることが示唆された。つまり、上記した試験結果は、本発明で新たに規定する「粗大SSありの系」での処理によって、従来技術の「粗大SSなしの系」で行われていた、凝集沈殿処理によっては決して得ることができなかった顕著な効果が達成されることを確認した。
【0055】
<実施例1、2、比較例1>
  本実施例の概要を
図2に示した。本実施例では、
図1に示したものと同様に、連続鋳造工程において発生するスプレー系冷却廃水に対して、有機凝集剤2をスプレー系冷却廃水が流動していくスケールスルース1の最上流部分で添加した。そして、スケールピット3で得た上澄み水を、電磁フィルター5で処理後に、冷却塔4で冷却し、再度、冷却水として使用した。本実施例では、有機凝集剤2として、前記した一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分として、それぞれ20モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]ベンジルジメチルアンモニウム・クロリド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロリド共重合体(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性のものを用いた。その重量平均分子量は300万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.6〜1.0meq/g程度であるものを用いた。そして、スケールスルース1内の廃水に対し、該有機凝集剤を、0mg/l(無添加)、1mg/l、2mg/lとなるように連続添加した。なお、上記で処理したスプレー系冷却廃水における粗大SSと微細SSとの比(粗/微)は、その質量比で、5〜20程度であった。
【0056】
  そして、上記の処理後に、JIS  K0102に則して、スプレー戻水6(処理水A)、スプレー直送水7(処理水B)のSS濃度及びn−Hex抽出物質濃度(油分)を測定した。尚、ここでいうスプレー戻水とは、スケールピット3の出側の水(上澄み水)のことであり、スプレー直送水とは電磁フィルター5で処理後に、冷却された水(処理後の冷却水)のことである。また、比較例1として、有機凝集剤を添加しない場合についても、SS濃度及びn−Hex抽出物質濃度(油分)を測定した。
【0057】
  表2に、上記の有機凝集剤の添加試験の結果を示した。実施例1として、有機凝集剤を1mg/lとなるように添加することで、スプレー戻水のSS濃度は19mg/l、n−Hex抽出物質濃度は5mg/lになり、無添加時(比較例1)と比べ、両汚濁物質の濃度が半減することを確認した。また、スプレー直送水においては、SS濃度が10mg/l、n−Hex抽出物質濃度が4mg/lという良好な水質が得られた。
【0058】
  更に、実施例2として、有機凝集剤を2mg/lとなるようにして添加した以外は上記と同様にして試験したところ、スプレー戻水のSS濃度は9mg/lになり、n−Hex抽出物質濃度は2mg/lになった。このスプレー戻水水質は、有機凝集剤の添加濃度が1mg/lで後段の電磁フィルター5で処理を行ったスプレー直送水と同等の水質である。したがって、有機凝集剤を2mg/lになるように添加した場合は、電磁フィルター5による処理を停止しても、良好な水質を維持可能であると考えられる。
【0059】
【0060】
<実施例3>
  本実施例では、従来のスケールピット3の後段に設ける処理設備を停止することが可能か否かを判断することを目的として、最も水質が悪化すると考えられる、スケール揚げ時の処理水質の悪化の有無を確認した。スケール揚げとは、スケールピット底層に堆積する沈殿物であるスケールスラッジをクラム重機で浚渫することである。スケール揚げ時には、堆積していたスケールの巻揚げが発生するため、一時的な水質の悪化が起こると考えられる。本実施例では、実施例1の場合と同様の構成とし、廃水量に対して、2mg/lとなるようにスケールスルース上流で有機凝集剤を連続添加して処理した。
【0061】
  スケール揚げの開始直後(開始5分後)、終了間際(終了10分前)、終了後(終了5分後)のスプレー戻水のSS及びn−Hex抽出物質の濃度を測定した。表3に、このスケール揚げ時における水質確認試験の結果をまとめて示した。スプレー戻水のSSは7〜8mg/l、n−Hex抽出物質は2mg/lとなり、最も水質が悪化すると考えられる、スケール揚げ時の前後でも、水質変動がほとんど見られないことを確認した。以上の結果から、発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法を採用することで、従来、必要とされていたスケールピット後段の処理設備は、停止可能になると判断した。
【0062】
【0063】
<実施例4、5、比較例2>
  実施例4、5と比較例2では、製鋼工程でつくられた鋼片を熱間圧延する際に、ロール冷却、鋼材や鋼片の冷却やスケール落としなどに使用された水(直接冷却廃水)を対象とした。
  先ず、比較のために、
図4に示した、上記の対象水に対する通常の懸濁物質の除去処理であるプロセスで処理し、これを比較例2とした。具体的には、先ず、スケールピット3において無機凝集剤2’を添加すると共に、粗大スケールを沈降分離し、その後段に配置した沈殿池8において微粒の懸濁物質と油分を除去後、冷却塔4で冷却処理して処理水を得、これを冷却水とした。この場合の処理水A(6)と、処理水B(7)を分析し、これらの結果を表4と表5に示した。
【0064】
  実施例4、5として、
図3に示したプロセスで、有機凝集剤の添加量を変えた以外は同様にして廃水中の懸濁物質の除去処理を行った。具体的には、
図3に示した通り、スケールピット3への無機凝集剤の添加をすることなく、実施例1及び実施例2と同様に、スケールスルース1の上流に有機凝集剤2を添加した。そして、スケールピット3の出側の処理水Aを分析した。処理水のSS濃度及びn−Hex抽出物質濃度の分析は、JIS  K0102に準拠して行い、試験結果を表4に示した。
【0065】
  表4に示した通り、有機凝集剤を添加したことにより、処理水AのSS及びn−Hex抽出物質は、比較例2の処理に比べて良好に除去できた。また、実施例4の方法で処理した処理水AのSS濃度は16mg/lであり、n−Hex抽出物質濃度は2mg/lであった。更に、実施例5の方法で処理した処理水AのSS濃度は4mg/lであり、n−Hex抽出物質濃度は1mg/lであった。これらの結果から、比較例2における処理水Aよりも水質が改善できた。
【0066】
【0067】
  また、表4に示した実施例4、5の処理水Aと、
図4で示した比較例2の従来の処理方法で処理した結果得られた処理水Bの水質を表5に示したが、これらを比較すると、実施例4、5の処理水Aは、比較例2の処理水Bに比べ、SS及びn−Hex抽出物質の濃度が同等以下であった。このことから、無機凝集剤を添加せずとも、スケールスルースに有機凝集剤を添加することにより、沈殿池を除外しても従来と同等以下まで汚濁物質を除去できると考えられる。
【0068】
【0069】
<参考例6>
  本発明をより明確にするため、薬剤を添加する水の流速やレイノルズ数が、薬剤の効果に与える影響について、圧延工場の直接冷却廃水を対象とした室内試験で、その流速条件を8通りに設定し、その処理水SS濃度を比較して評価し、本発明で規定する要件の意味するところについての確認を行った。その結果、表6に示したように、想定流速が0.5m/秒を超えると大幅に処理水濁度の改善が確認され、それ以上想定流速を上げても処理水濁度の改善効果は小さいことを確認した。
【0070】
【0071】
  以上の結果から、表6に示されているように、本発明の処理方法を適用する場合は、必要量の有機凝集剤を適宜な位置で添加することで、粗大なSSと微細なSSとが併存し、有機凝集剤が共存している状態が、少なくとも流速が0.5m/秒以上で、且つ、レイノルズ数8000以上の乱流状態の水の中に生じている場合に、望ましくは、流速が1.0m/秒以上で、且つ、レイノルズ数10000以上の乱流状態の水の中に生じている場合に、本発明の効果が顕著に認められることが確認できた。このため、本発明の処理方法を適用する際には、廃水の発生地点から、廃水が移動して処理設備に入るまでの各地点における廃水の流速及びレイノルズ数を測定し、上記において好適な結果が得られることが確認された測定値を有する地点を把握し、その上で、粗大なSSと微細なSSとが併存し、有機凝集剤が共存している状態となるように、有機凝集剤を添加する地点を決定することが好ましい。