特許第6374177号(P6374177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン軽金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000002
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000003
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000004
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000005
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000006
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000007
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000008
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000009
  • 特許6374177-プレス切断装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374177
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】プレス切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 23/00 20060101AFI20180806BHJP
   B23D 35/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B23D23/00 C
   B23D35/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-25986(P2014-25986)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-150640(P2015-150640A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】杉野 英男
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−288934(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3166379(JP,U)
【文献】 特開平08−071663(JP,A)
【文献】 特開2008−080387(JP,A)
【文献】 特開2009−269092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 23/00
B23D 35/00
B21D 28/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚肉素材のコーナー部を除肉加工するための、ダイとポンチとを備えたプレス切断装置であって、
前記ポンチは切断面側が下方に位置する左右方向20〜50°のすくい角を有する左右方向刃先線(α)と、切断面側が下方に位置する前後方向20〜50°のすくい角を有する前後方向刃先線(α)とを有し、
前記ポンチとダイとのクリアランスが0.1mm以下であることを特徴とするプレス切断装置。
【請求項2】
請求項記載のポンチを刃先先端が内側になるように左右方向に所定の間隔を隔てて一対有することを特徴とする請求項記載のプレス切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚肉素材のプレス切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイに向けてポンチを加圧するプレス加工の技術分野においては、図9(a)に示すようにダイ101に素材Mを載置し、0〜3°のシャー角を有するポンチ102を上から加圧する。
この場合にポンチの加圧初期においては、ポンチによる剪断面Mが素材に形成されるが、途中で素材にクラックが発生し、その後は図9(b)に示すようにダイとポンチの間に約1mm程度のクリアランスがあり、破断面Mが発生する。
破断面Mは、素材の破断により形成される切断面であり、表面の凹凸が大きく切断寸法にも大きなバラツキが生じ、高い面精度及び寸法精度が要求される部品の製造には、適用できないものであった。
従って、この種の部品の製造方法としては従来、刃具による切削加工が用いられていた。
しかし、切削加工はプレス加工に比較して工数が多く、加工費がアップする要因となる。
【0003】
特許文献1には、Hカット用打抜きポンチ及びその加工方法を開示する。
同公報に開示するポンチは、丸棒にHカット突起体を形成するのが目的であり、中央に長溝を形成し、その両側の歯の形状が左右方向に傾斜するとともに歯の前端縁から後端縁に向けて後端縁が上方になるように傾斜した形状になっている。
ここで、歯の前端縁から素材側の後端縁に向けて、この後端縁が上方に位置するように傾斜させたのは、抜きかすを逃すものであって刃先の後端縁が前端縁よりも後から素材を押圧するものであるため、切断面に破断面が発生する恐れがある。
また、ダイを有していないので丸棒のHカット下部に破断面が発生しやすい問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−288934(特許第2652821号)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、破断面の発生を抑え、面精度及び切断寸法精度の高いプレス切断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ダイとポンチとを備えたプレス切断装置であって、ポンチは切断面側が下方に位置する20〜50°のすくい角からなる刃先を有し、ポンチとダイとのクリアランスが0.1mm以下であることを特徴とする。
【0007】
本明細書では、ダイを下側に位置させ、素材に対してポンチを上側から押圧する状態で上下関係を表現し、素材を切断する際に素材の根元側を後方に位置させた状態で前後方向を表現する。
刃先のすくい角を20〜50°の範囲に設定したのは、20°未満では切断面に破断面が発生しやすく、50°を超えると刃先が弱くなり、寿命が短くなる恐れがあるからである。
従って、好ましくは刃先のすくい角25〜40°の範囲である。
ダイとポンチとの間のクリアランスを0.1mm以下としたのは、クリアランス0.1mmを超えると、素材に破断応力が負荷されやすくなるからである。
よって、クリアランスは好ましくは0.05mm以下、理想的には0.03mm以下である。
【0008】
本発明に係るプレス切断装置は、切断深さが大きい厚肉素材に効果的であり、切断深さのみならず切断の奥行きである切断幅が大きい厚肉素材の切断には、ポンチは切断面側が下方に位置する左右方向20〜40°のすくい角を有する左右方向刃先線と、切断面側が下方に位置する前後方向20〜40°のすくい角を有する前後方向刃先線とを有するようにすることもできる。
また、断面T形状の突出部を素材の端面や側面に切断形成するには、前記ポンチを刃先先端が内側になるように左右方向に所定の間隔を隔てて一対有するようにするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプレス切断装置は、ポンチの刃先に所定のすくい角を設けるとともに、ダイとポンチとの間のクリアランスを0.1mm以下になっているので、切断面に破断面が発生するのを抑え、面精度と寸法精度の高い切断面となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るプレス切断装置を用いてワークを加工する例を示し、(a)は素材、(b)は加工後のワーク形状を示す。
図2】ワークのクランプ方法の説明図を示し、(a)はワークのクランプ前、(b)はワークのクランプ後を示す。
図3】ダイの上に定位部を有し、ワークとの位置関係を示す。(a),(b)は素材Mの突出部Mを定位部12の位置決め部12aに挿入するようにして素材Mをダイ11に載置する状態を示し、(c),(d)は素材をダイの所定位置にセットした状態、(e),(f)はプレス切断後のワークPを示す。
図4】ポンチ及びクランプの動作説明図を示す。(a),(b)はラムに取り付けた上金型とクサビホルダーが上昇した状態、(c),(d)は素材をクランプし、ポンチが下降する状態、(e),(f)はポンチで素材を加工した後の状態を示す。
図5】ポンチと素材(ワーク)との位置関係を示し、(a)〜(c)は側面視、(d),(e)は正面視を示す。
図6】ポンチが素材の抜き加工した途中の状態の模式図を示す。
図7】(a)〜(c)はプレス切断の動作説明図を示す。
図8】シェービング加工の説明図を示す。
図9】従来のプレス加工の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るプレス切断状態の構成例を以下図面に基づいて説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
【0012】
図1に厚肉ワークのプレス切断にて除肉加工をしたワークの例を示し、本実施例はアルミニウム合金の押出材を所定の長さに切削加工した素材Mのコーナー部M図1(b)に示すワーク形状にプレス切断加工した例を示す。
ワークPは、素材Mの中央部に突出部aが残るようにその両側をプレス加工にて除肉し、切除部b,bを形成した例を示す。
【0013】
プレス切断装置10は、ボルスタに取り付けられたダイ11,その上に設けた定位部12及びラムに取り付けられた上金型に設けた一対のポンチ21,22,クサビホルダー35にスプリング35aを介して設けたクサビ34を有する。
図2に示すようにクランプ装置30は、ガイド部31a,31aの間にスライダー31を配置し、スライダー31の前部にクランパー32を取り付けてある。
スライダー31の後部には、図2,4に示すようにクサビ孔33を有し、ラムの下降によりクサビ34が挿入されるとスライダー31が前進し、クランパー32が素材Mを押圧保持する。
クサビ34は、クサビホルダー35にスプリング35aで下方に付勢されながら取り付けられており、図4(b),(c)に示すようにクサビ34のテーパー面がクランパー32を押圧しつつ、スプリング35aが圧縮することでポンチ21,22の下降に対応させている。
素材Mの底部がダイ11の上に載置され、切除部b,bとダイ孔11a,11bが対応するようにダイ11側の定位部12,定位具13とクランパー32のクランプ部32aとで素材Mを位置決め固定する。
その状態を図3(c)に示し、このときの定位部12と素材Mとの位置関係を図3(d)に示す。
ダイ11には、2つのダイ孔11a,11bが設けられ、ダイ孔11a,11bが素材Mの切除するコーナー部Mに対応し、ダイ11の上に位置する定位部12にこのM部がダイ孔11a,11bに位置するようにセットされる凹部(空間部)12aを有する。
【0014】
ポンチ21,22は、図4,5に示すようにクランプ側を正面にして中央の切断面側が下方に位置し、すくい角20〜50°の左右方向刃先線αと、切断面側が下方に位置するすくい角20〜50°の前後方向刃先線αとを有する。
これにより、ポンチ21,22がダイ11に向けて下降すると、図5,6に示すように素材Mが加工され、ワークPが得られる。
ダイ11とポンチ21との関係を図7に模式的に示す。
素材Mのコーナー部Mがダイ孔11aに位置し、ポンチ21のすくい角α1が20〜50°に設定され、ポンチ21とダイ11とのクリアランスdが0.01mmに設定されている。
これにより、素材Mの切断面は剪断面(斜線)が形成され、破断面は殆ど発生しなくなる。
なお、クリアランスのバラツキにより切断の最後部に破断面やバリMが発生した場合には、図8に示すように再度ポンチを下降させ、シェービング加工(仕上げ加工)を施してもよい。
図5(a)〜(c)は、ポンチ21,22の下降に伴う切断の側面視を示し、(d),(e)に正面視を示す。
ポンチに切断面側が下方に位置するように、すくい角α,αからなる左右方向刃先線と前後方向刃先線を形成しているので、図6に示すような切りカス(抜きカス)形状になる。
これにより、切断面の面精度及び加工寸法精度により優れた突出部aを有するワークPが得られる。
【符号の説明】
【0015】
10 プレス切断装置
11 ダイ
11a ダイ孔
11b ダイ孔
12 定位部
13 定位具
21 ポンチ
22 ポンチ
30 クランプ装置
31 スライダー
31a ガイド部
32 クランパー
33 クサビ孔
34 クサビ
a 突出部
b 切除部
d クリアランス
M 素材
剪断面
剪断面
α すくい角
α すくい角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9