(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底板の両側端部に、後端に互いに内方を向く係合片を設けた左右1対の側板の下端部を取付けた後、前記底板上に、後端に左右方向を向く係合片を設けた1または複数の中仕切を、前記側板との間、または相互間に適宜の間隔を置くようにして立設し、
前記側板の係合片および前記中仕切の係合片を、それぞれ、左右方向を向く折曲片の遊端に前向片を連設した平面視L字状とし、かつ各単位後面板の取付部を、後向片の遊端に、外側方を向く折曲片を連設した平面視L字状とし、さらに
前記側板の係合片および前記中仕切の係合片における前向片の前端に、外側方を向く短寸の折り返し片を連設し、
前記側板と前記中仕切、または互いに隣接する1対の前記中仕切により挟まれた収容空間の前方より、左右幅を、前記各収容空間の左右幅とほぼ同一か、または前記各収容空間の左右幅より小とした前記単位後面板を、前記各収容空間内において後方に移動させたとき、前記折り返し片の後縁に、前記各単位後面板の取付部における後向片に設けた係止爪を係合させて、前記各単位後面板の前方への移動を阻止させ、その後、左右の前記側板の上端間に天板を架設することを特徴とする中仕切を有する収納家具の組立方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の収納家具の組立方法によると、中仕切を後面板に取付ける際、互いに隣接する中仕切間、または中仕切と側板との間の狭い空間を通して、中仕切の後端と後面板との結合作業を行わなければならず、その作業性が悪く、作業が面倒である。
特に、中仕切の高い位置の後端に設けた取付片を、後面板に設けたスリット等に嵌合させたり、その状態で、下部の取付片を、後面板や底板に設けたスリット等に嵌合させたり、ねじ止めしたりする作業が困難を極めている。
【0006】
上記の作業性を向上させるため、特許文献2に記載されているように、天板と底板と後面板と両側板とを組み合わせて形成した箱体を、開口が上方を向くようにして、水平の当て板上に倒伏させて、中仕切の取付け作業を行うことも知られているが、このように、箱体を倒伏させたり起立させたりすること自体に大きな労力を要し、作業性がよいとは言い難い。
【0007】
さらに、特許文献4に記載されているものにおいては、両側板の折曲片に後面板の係合レール部を上方よりスライドさせて差し込む関係から、折曲片や係合レール部の加工精度を高くしなければ、円滑に差し込むことができなかっり、後面板が大重量の場合は、後面板を、一人の作業者では両側板より上方に持ち上げることができない等の問題がある。
【0008】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑みてなされたもので、組み立てようとする筐体の後方や上方に、組み立てのための十分な作業空間を確保できない場合でも、簡単かつ迅速に組み立てることができ、構造が簡単で、しかも組立前の構成材料を容易に搬送しうるようにした、中仕切を有する収納家具、およびその簡単な組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)中仕切を有する収納家具において、底板と、下端部が前記底板の両側端部に取付けられ、かつ後端に互いに内方を向く係合片が設けられた左右1対の側板と、前記側板との間、または相互間に適宜の間隔を置くようにして前記底板上に立設されることにより、左右の
前記側板間に複数の収容空間を形成し、かつ後端に左右方向を向く係合片が設けられた1または複数の中仕切と、左右幅を、前記各収容空間の左右幅とほぼ同一か、またはそれより小とし、かつ両側部に、前記側板の係合片または
前記中仕切の係合片の前面に当接することにより、
前記側板および
前記中仕切の後端より後方への移動が阻止されるようにした取付部が形成された複数の単位後面板と、左右の
前記側板の上端間に架設された天板とを備え
、前記側板の係合片および中仕切の係合片を、それぞれ、左右方向を向く折曲片の遊端に前向片を連設した平面視L字状とし、かつ前記各単位後面板の取付部を、後向片の遊端に、外側方を向く折曲片を連設した平面視L字状とし、前記側板の係合片および前記中仕切の係合片における前記前向片の前端に、外側方を向く折り返し片を連設し、前記折り返し片の後縁に、前記各単位後面板の取付部における前記後向片に設けた係止爪を前方より係合させて、前記各単位後面板の前方への移動を阻止する。
【0010】
このような構成によると、左右の側板や中仕切の下端部を底板に取り付けた後、各単位後面板を、左右の中仕切同士、または中仕切と側板との間に形成される収容空間を通して、組み立て途中の筐体の前方から後方に向けて挿入し、各単位後面板の両側部を左右の側板または中仕切の後端に設けた係止片に係止させた後、それらの上端に天板を取付けることにより、筐体を簡単に組み立てることができ、特に、各単位後面板を、筐体の前方から簡単に組み付けることができるので、組み立てようとする筐体の後方や上方に組み立てのための十分な作業空間を確保できない場合でも、組み立て作業を簡単に行うことができる。
しかも、筐体の各構成要素の構造を簡素化し、安価に製造することができるだけでなく、後面板を、幅狭の複数の単位後面板に分割してあるので、組立前の構成材料をコンパクトに梱包して、容易に搬送することができる。
さらに、このような構成によると、各単位後面板の両側部におけるL字状の取付部を、L字状の係合片に前方より嵌合することにより、各単位後面板の後方への脱落を防止しうるだけでなく、左右の中仕切同士、または中仕切と側板との相互の左右方向の位置ずれやがたつきを確実に防止することができる。
また、このような構成によると、折り返し片の後縁に、各単位後面板の取付部における後向片に設けた係止爪が係合することにより、各単位後面板の前方への移動が阻止され、上記(2)項の構成と相俟って、各単位後面板の前後左右の動きが確実に規制され、組立後の筐体の剛性を高めることができる。
また、各単位後面板を、組み立て途中の筐体に、前方から押し込むだけで、簡単に組み付けることができ、筐体の組立作業性を高めることができる。
【0019】
(
2)上記(1
)において、
前記底板の側面と
前記底板に対向する
前記側板の内側面とのいずれか一方に有頭ピンを突設し、
かつ対向する他方に、前記有頭ピンの拡大頭部が挿通しうる大径部と前記有頭ピンの軸部は挿通しうるが
前記拡大頭部は挿通できない小径部とを前後方向に並べて連設してなる係合孔を設け、さらに、前記側板の内側面に、前記有頭ピンの軸部が前記係合孔の小径部に係合したときに、前記底板の上面に当接しうるようにした水平片を設け、前記有頭ピンの軸部が前記係合孔の小径部に係合したときに、前記水平片に設けたねじ挿通孔が、
前記底板の上面に設けたねじ孔に整合するようにする。
【0020】
このような構成によると、各側板を、底板に簡単に取り付けることができる。
すなわち、各側板の下端部を、有頭ピンの拡大頭部が係合孔の大径部に嵌合するようにして、底板の側端面に当接させ、次いで、有頭ピンの軸部が係合孔の小径部に係合するように、各側板を前後方向に移動させる。
すると、各側板の水平片が底板の上面に当接して、各側板の支持が安定するとともに、このとき、水平片に設けたねじ挿通孔が、底板の上面に設けたねじ孔に整合するので、このねじ挿通孔を通して、止めねじをねじ孔に螺合して、水平片を底板の上面に簡単に締め付けることができる。
【0021】
(
3)上記(
2)項において、
前記底板の上面と
前記水平片とのいずれか一方または両方に、
前記有頭ピンの拡大頭部が
前記係合孔の大径部に挿通しうる位置に
前記側板が位置していることを示す目印を付設する。
【0022】
このような構成によると、目印を手がかりにして、各側板の下端部を底板の側端面に当接させるだけで、有頭ピンの拡大頭部を、目視することなく、係合孔の大径部に簡単に嵌合することができる。
【0023】
(
4)中仕切を有する収納家具の組立方法において、底板の両側端部に、後端に互いに内方を向く係合片を設けた左右1対の側板の下端部を取付けた後、前記底板上に、後端に左右方向を向く係合片を設けた1または複数の中仕切を、前記側板との間、または相互間に適宜の間隔を置くようにして立設し、
前記側板の係合片および前記中仕切の係合片を、それぞれ、左右方向を向く折曲片の遊端に前向片を連設した平面視L字状とし、かつ各単位後面板の取付部を、後向片の遊端に、外側方を向く折曲片を連設した平面視L字状とし、さらに前記側板の係合片および前記中仕切の係合片における前向片の前端に、外側方を向く短寸の折り返し片を連設し、前記側板と
前記中仕切、または互いに隣接する1対の
前記中仕切により挟まれた収容空間の前方より、左右幅を、
前記各収容空間の左右幅とほぼ同一か、または
前記各収容空間の左右幅より小とした
前記単位後面板を、
前記各収容空間内において後方に移動させたとき、前記折り返し片の後縁に、前記各単位後面板の取付部における後向片に設けた係止爪を係合させて、前記各単位後面板の前方への移動を阻止させ、その後、左右の
前記側板の上端間に天板を架設する。
【0024】
このような方法によると、筐体を簡単に組み立てることができ、特に、各単位後面板を、筐体の前方から簡単に組み付けることができるので、組み立てようとする筐体の後方や上方に組み立てのための十分な作業空間を確保できない場合でも、組み立て作業を簡単に行うことができる。
しかも、各単位後面板の両側部におけるL字状の取付部を、L字状の係合片に前方より嵌合することにより、各単位後面板の後方への脱落を防止しうるだけでなく、左右の中仕切同士、または中仕切と側板との相互の左右方向の位置ずれやがたつきを確実に防止することができる。
さらに、このような方法によると、折り返し片の後縁に、各単位後面板の取付部における後向片に設けた係止爪が係合することにより、各単位後面板の前方への移動が阻止され、上記(9)項の方法と相俟って、各単位後面板の前後左右の動きが確実に規制され、組立後の筐体の剛性を高めることができる。
また、各単位後面板を、組み立て途中の筐体に、前方から押し込むだけで、簡単に組み付けることができ、筐体の組立作業性をさらに高めることができる。
【0031】
(
5)上記(
4)
項において、
前記底板の側面とそれに対向する
前記側板の内側面とのいずれか一方に突設した有頭ピンを、それに対向するように他方のものに設けた係合孔における前記有頭ピンの拡大頭部が挿通しうる大径部に嵌合し、次いで、前記有頭ピンの軸部が、前記係合孔における
前記大径部の前後いずれかに並ぶように連設した、前記有頭ピンの軸部は挿通しうるが
前記拡大頭部は挿通できない小径部に係合するように、前記側板を前後方向に移動させ、そのとき、
前記側板の内側面に設けた水平片を底板の上面に当接させて、前記側板を
前記底板上に支持させ、さらに、前記水平片に設けたねじ挿通孔に挿通した止めねじを、前記底板の上面に設けたねじ孔に螺合して締め付けることにより、前記水平片を
前記底板に固着する。
【0032】
このような方法によると、各側板を、底板の側面に、簡単かつ迅速に取付けることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、組み立てようとする筐体の後方や上方に、組み立てのための十分な作業空間を確保できない場合でも、簡単かつ迅速に組み立てることができ、構造が簡単で、しかも組立前の構成材料を容易に搬送しうるようにした、中仕切を有する収納家具、およびその簡単な組立方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の中仕切を有する収納家具の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の中仕切を有する収納家具の一実施形態における1個の扉を開いた状態を斜め前方より見た外観斜視図、
図2は、同じく、扉を外した状態の分解斜視図である。
【0036】
この収納家具は、スチール製の組立式ロッカーとしてあり、平面視方形の底板1と、左右1対の側板2、2と、後面板3と、天板4とによって構成された筐体5と、この筐体5内に、左右の側板2、2との間、または相互間に適宜の間隔を置くようにして底板1上に立設されることにより、左右の側板2、2間に複数の収容空間A1、A2、A3を形成するようにした1または複数の中仕切6と、各収容空間A1、A2、A3の前方に開閉可能に設けられた複数の扉7とを備えている。
図示の例では、中仕切6を2個とし、収容空間および扉7を3個としてあるが、中仕切6を1個もしくは3個以上としたり、または中仕切6を全く設けないこともあり、扉7の数も、形成される収容空間A1・・・の数に合わせて、1個、2個、または4個以上とすることもある。
【0037】
底板1は、平面視方形の上面板1aと、その前端、後端、および両側端より垂下する前片1b、後片1c、および両側片1d、1dとを備えている。
左右の側片1dの前後部には、各側板2の下部内面に突設した有頭ピン8の拡大頭部8aの外径より大径とした大径部9aと、有頭ピン8の軸部8bの外径より大径、かつ拡大頭部8aの外径より小径とした小径部9bとを前後方向に並べて連設してなる洋梨形の係合孔9が、大径部9aに対して小径部9bが後斜め下方に位置するようにしてそれぞれ設けられている。
【0038】
各側板2の内面における前後の有頭ピン8、8よりわずかに上方の部分には、内方を向く前後方向に長い水平片10が設けられており、前後の有頭ピン8の拡大頭部8aを、係合孔9における大径部9aに嵌合し、その状態から、有頭ピン8の軸部8bが係合孔9における小径部9bに係合するように各側板2を後下方に移動させたとき、上記水平片10が底板1の上面に当接するようにしてある。
【0039】
各側板2の水平片10には、有頭ピン8の軸部8bが係合孔9における小径部9bに係合し、かつ水平片10が底板1の上面に当接したとき、底板1の上面における前部に設けたねじ孔11と整合するようにしたねじ挿通孔12が設けられている。
【0040】
底板1の上面におけるねじ挿通孔12の前方には、側板2が、有頭ピン8の拡大頭部8aと係合孔9の大径部9aとが整合する位置に位置したとき、水平片10のねじ挿通孔12と左右方向に整合するようにした、位置決め用の目印となる位置決め孔13が設けられている。
この位置決め孔13に代えて、単なるマークとしたり、水平片10にも、ねじ挿通孔12に代えて、上記マークと整合するようにしたマークを付設してもよい。
【0041】
底板1における上面板1aの四隅に近い部分には、上面板1aの下方に設けた不陸調整用のアジャスタ14(
図3参照)を操作するための4個の作業孔15が設けられている。
【0042】
また、底板1における上面板1aの前部には、後述する各中仕切6の前部下端に設けられた下向き突片30が嵌合される左右方向に長い長方形の左右2個の係合孔16、16が、同じく上面板1aの後部には、後述する各中仕切6の後端寄りの下端に設けられた下向き突片31が嵌合される前後方向に長いスリット状の左右2個の係合孔17、17が、左右の側板2、2と相互間とに適宜の間隔を置いてそれぞれ設けられている。
【0043】
さらに、上面板1aの前部における両側部には、後述する扉7のヒンジ軸52を受止するための1個の軸受孔18が、また各係合孔16の前方には、左右1対の軸受孔18、18が設けられている。これらの合計6個の軸受孔18を設けたのは、各収容空間A1、A2、A3の前方に、開き勝手の異なる扉7を選択的に取付けることができるようにするためである。
【0044】
各側板2は、縦長の長方形の化粧板19の前端に、ほぼ角筒状の縦框20が設けられ、同じく後端に、筐体5の内方を向くほぼ平面視L字状の係合片21が設けられ、同じく下端部に、縦框20と係合片21との下端部同士を連結する上向きコ字状断面の下枠22とその上方の上記水平片10とが設けられ、同じく上端部に、縦框20と係合片21との上端部同士を連結するほぼ角筒状の上枠23が設けられたものよりなっている。
【0045】
縦框20の前面と内側面との角部には、扉7の側端部を収容するための凹入段部20aが形成されている。
各側板2の後端の係合片21は、化粧板19の後端から筐体5の内方を向く折曲片21aと、その遊端より前方を向く前向片21bと、その前端より外側方を向く短寸の折り返し片21cとからなっている。
【0046】
各側板2の下枠22の内側面に、上記の前後1対の有頭ピン8、8が突設されており、同じく上枠23の内側面の後部には、上記有頭ピン8と同様の有頭ピン24が突設され、また上枠23の内側面の前部には、ねじ孔25が設けられている。
【0047】
各中仕切6は、縦長の長方形の仕切板26の前端に、角筒状をなして左右方向に突出する縦框27が設けられ、同じく後端に、平面視L字状をなして左右両方向に突出する係合片28、28が設けられ、同じく上端に、右方または左方に直角に折曲された折曲片29が設けられたものよりなっている。
【0048】
各係合片28は、仕切板26の後端から右方および左方を向く折曲片28aと、その遊端より前方を向く前向片28bと、その前端より仕切板26の方向を向く短寸の折り返し片28cとからなっている。
【0049】
縦框27の下端には、前述した底板1の係合孔16に嵌合される底面視コ字状の下向き突片30が、また仕切板26の後端部の下端には、底板の係合孔17に嵌合される、前後方向に長い下向き突片31が設けられている。
【0050】
また、縦框27の上端には、後述する天板4の上框44の下面に設けた係合孔47に下方より嵌合する上向き突片32が設けられ、仕切板26の後端上部には、天板4の後枠45が嵌合するようにした方形の切欠き33が設けられている。
【0051】
後面板3は、左右幅を各収容空間A1、A2、A3の左右幅とほぼ同一か、またはそれより小とした複数の単位後面板3A、3B、3Cからなるものとして、各収容空間A1、A2、A3内に配設されている。
【0052】
各単位後面板3A(各単位後面板3A、3B、3Cは、互いに同一構造であるので、以下の説明においては、単位後面板3Aのみについて説明する)は、縦長の長方形の基板34の左右の端部に、後向片35aの遊端に、外側方を向く折曲片35bを連設してなる平面視L字状の取付部35が設けられ、同じく下端に、後向片36aの後端に下向片36bを連設してなる側面視倒立L字状の係合片36が設けられ、同じく上端に、後向片37aの後端に上向片37bを連設してなる側面視L字状の係合片37が設けられたものよりなっている。
【0053】
各基板34の上下部には、基板34の一部を前方に向けて平面視台形状に打ち出すことにより形成した上下方向を向く係合孔とした左右1対の棚用の受け部38が設けられている。
【0054】
また、各取付部35の後向片35aの上下複数箇所には、
図8に示すように、後向きコ字状の切り込み39を設けることにより形成した前方を向く弾性舌片40の前端部中央に、左右の後向片35a、35aより互いに対向する方向に三角形をなして突出する係止爪41が設けられている。
この係止爪41と等高をなす折曲片35bの遊縁には、目印のための浅い切欠き42が設けられている。
【0055】
各収容空間A1に、各単位後面板3Aを前方より挿入して、後方に向けて押し入れたとき、各単位後面板3Aの左右の取付部35、35が、側板2の係合片21および中仕切6の係合片28(中央の単位後面板3Bにおいては、左右の中仕切6の係合片28)に嵌合され、各取付部35の折曲片35bが係合片21、28における折曲片21a、28aに当接すると、各係止爪41が係合片21、28における折り返し片21c、28cの遊端部の後縁に係合し、各単位後面板3Aの前後方向の移動が阻止されるようになっている。
【0056】
天板4は、平面視方形の水平板43の前端に、下方に向けてJ字状に折曲形成された上框44が設けられ、同じく後端に、下方に向けてL字状に折曲形成された後枠45が設けられ、同じく左右の両側端に、下方に向けてJ字状に折曲形成された側枠46、46が設けられたものよりなっている。
【0057】
上框44は、水平板43の前端より垂下する前片44aと、その下端から後方を向く下片44bと、その後端から上方を向く上向片44cとからなり、下片44bには、底板1の上面板1aにおける2個の係合孔16、16と6個の軸受孔18とに上下に対応する2個の係合孔47、47と6個の軸受孔48とが設けられている。
【0058】
各側枠46の後端部には、後端および後枠45に亘って開口する横向きU字状の係合溝49が設けられており、また各側枠46の前端部には、ねじ挿通孔50が設けられている。
【0059】
天板4の水平板43には、各収容空間A1、A2、A3に連通するように、3個の配線挿通孔51と、それを開閉する着脱可能なキャップ51aとが設けられている。
【0060】
3枚の扉7は、この例ではいずれも左開きタイプのものとしてあり、右端部の上下面より上下方向に突出するヒンジ軸52、52を、対応する天板4の軸受孔48および底板1の軸受孔18に嵌合することにより、筐体5の前面に左右方向に並べて設けられている。
各ヒンジ軸52は、扉7の上下面より出没自在に設けられ、かつ内蔵したばね(図示略)の作用により、突出する方向に付勢されている。
【0061】
各扉7の前面には、把手53と施錠装置54とが設けられ、後面には、鏡55、傘立て56、しずく受け57等(
図1参照)が設けられているが、それらは本発明には直接関係しないので、詳細な説明は省略する。
【0062】
各収容空間A1、A2、A3の上下部には、上棚(棚板)58と下棚(棚板)59とが設けられている。
上棚58および下棚59は、
図16および
図17に示すように、前方に開口する平面視コ字状のフレーム60の前部を除くほぼ3分の2の範囲に亘って、互いに平行をなす複数の横桟61の両端部を溶接することにより形成されている。
【0063】
フレーム60の後端部には、それぞれが左右2個(1個または3個以上とすることもある)の下向き係止片62a、62aを備える左右1対の係止部62が設けられている。
【0064】
フレーム60の左右1対の前端部は、各棚58、59の前端より突出する左右1対の前向き突軸63、63とし、上棚58における左右の前向き突軸63、63の前端部には、下向き折曲部63a、63aが、また下棚59における左右の前向き突軸63、63の前端部には、上向き折曲部63b、63bがそれぞれ設けられている。
なお、この下向き折曲部63a、63aおよび上向き折曲部63b、63bは、省略して実施することもある。
【0065】
上棚58におけるフレーム60の前後方向の中間部には、正面視倒立台形状または上向きコ字状をなすハンガー受け64の両端部が溶接されている。
【0066】
次に、この中仕切を有する収納家具の組立方法の一実施要領について説明する。
図3に示すように、底板1を、床面(図示略)上に水平に載置した後、各側板2をほぼ垂直として、その下端部を底板1の側面に接近させ、
図4に示すように、底板1の上面における位置決め孔13と水平片10のねじ挿通孔12とが左右に整合するのを目視により確認しつつ、各側板2を底板1の側面に向かって移動させ、前後の有頭ピン8、8の各拡大頭部8aを、底板1の各側片1dにおける前後の係合孔9における大径部9aに嵌合し、次いで、各側板2を後下方にわずかに平行移動させて、各有頭ピン8の軸部8bを各係合孔9の小径部9bに係合させる。
【0067】
このとき、各側板2の水平片10は底板1の側部上面に当接するとともに、ねじ挿通孔12が底板1のねじ孔11に整合する。
この状態で、
図5に示すように、止めねじ65を、ねじ挿通孔12を通して、底板1のねじ孔11に螺合して締め付けることにより、水平片10を底板1に固着する。
このとき、各側板2は、前後の有頭ピン8の軸部8bが各係合孔9の小径部9bに係合し、かつ水平片10が底板1の上面に当接した状態で、止めねじ65により固着されていることによって、底板1の側面に強固に固着される。
【0068】
次に、
図6に示すように、各中仕切6を、前後方向を向くほぼ垂直として、その下端の下向き突片30を、底板1の対応する係合孔16に、また下向き突片31を、底板1の対応する係合孔17にそれぞれ嵌合して、底板1上に立設する。
【0069】
次に、
図7に示すように、収容空間A1を形成する左方の側板2と左方の中仕切6との間に、単位後面板3Aを、その下端が上端より後方に位置するように斜めとして、前方から後方に移動させ、下方の係合片36の下向片36bが底板1の後端より後方に突出した後、基板34の下端を中心として、単位後面板3Aを後方に向けて起立するように回動させ、左右の取付部35を、側板2の係合片21および中仕切6の係合片28内に下端部より漸次上方に亘って押し入れて行く。
【0070】
その途中で、係止爪41が係合片21における折り返し片21cの遊端および係合片28における折り返し片28cの遊端を通過する際に、抵抗力が発生するので、その際は、取付部35における折曲片35bの遊端に設けられた切欠き42を目印として、その直前の基板34の側部を後方に向けて強く押し込むか、または叩き込む。それによって、係止爪41が係合片21における折り返し片21cの遊端および係合片28における折り返し片28cの遊端を通過して、単位後面板3Aがほぼ垂直をなし、各取付部35の折曲片35bが係合片21における折曲片21aの前面および係合片28における折曲片28aの前面に当接すると、単位後面板3Aの前後方向および左右方向の移動が阻止されるとともに、側板2と中仕切6とが互いに強固に結合される(
図20参照)。
また、係合片36の後向片36aが底板1の上面に当接することにより、単位後面板3Aの荷重が安定よく底板1に受止されるとともに、
図9に示すように、係合片36の下向片36bが底板1の後面に当接することにより、後面板3Aの下端が前方に移動するのが確実に阻止される。
【0071】
なお、左方の中仕切6を底板1上に立設した後、それと左方の側板2との間に形成される収容空間A1内に単位後面板3Aを取付け、その後、右方の中仕切6を底板1上に立設した後、その左右の収容空間A2、A3に単位後面板3B、3Cを順次取付けてもよいし、2個の中仕切6、6を先に底板1上に立設した後、収容空間A1、A2、A3に単位後面板3A、3B、3Cを順次取付けるようにしもよい。
【0072】
すべての単位後面板3A、3B、3Cの取付作業が完了した後、天板4を、
図10に示すように、後下向き傾斜状態で、その後端部の左右の係合溝49に、左右の側板2、2の内面に突設した有頭ピン24の軸部24bが係合し、かつ有頭ピン24の拡大頭部24aが、
図11に示すように、天板4内に進入するようにして、後下方に移動しつつ、前部を徐々に下降させ、天板4が水平に近づく直前に、
図12に示すように、上框44の下面に設けた各係合孔47に、中仕切6の上向き突片32をそれぞれ嵌合させる。
【0073】
天板4が水平になるのと同時に、天板4の後端面が、単位後面板3A、3B、3Cの上方の係合片37における上向片37bの前面に当接し、かつ
図13に示すように、天板4の前部の両側下面が、左右の側板2の縦框20の上端に当接するとともに、天板4の左右のねじ挿通孔50が、各側板2のねじ孔25に整合する。
【0074】
この状態で、
図13に示すように、止めねじ66を、ねじ挿通孔50を通して、側板2のねじ孔25に螺合して締め付けることにより、天板4は、後部において係合溝49が有頭ピン24の軸部24bに係合していることと、前部が止めねじ66により螺着されていることとによって、側板2に対して、前後、左右、および上下のいずれの方向に対しても移動不能として強固に結合され、また、各中仕切6に対しても、後枠45が切欠き33に係合するとともに、後枠45の後面に係合片37の上向片37bが当接し、かつ前部の係合孔47に、上向き突片32が嵌合していることにより、前後、左右、および上下のいずれの方向に対しても移動不能として、強固に結合される。
【0075】
このように、この実施形態においては、わずかに4個の止めねじ65、66を締めつけるだけで、内部に中仕切6を設けた剛性の高い強固な筐体5を形成することができる。
【0076】
各扉7は、
図14および
図15に示すように、下端のヒンジ軸52を、底板1における対応する軸受孔18に嵌合した後、上端のヒンジ軸52を、内蔵したばねの付勢力に抗して、下方に押し込んだ状態で、扉7の上端を天板4の上框44の下面に潜入させ、ヒンジ軸52を天板4における対応する軸受孔48に整合させて、内蔵したばねの付勢力により、軸受孔48内に突入させることにより簡単に筐体5に装着することができる。
【0077】
次に、上棚58および下棚59の取付要領について説明する。
図18に示すように、上棚58および下棚59を、各扉7を取付ける前の(取付けた後でもよい)各収容空間A1、A2、A3のそれぞれに前方より挿入する。このとき、各収容空間A1、A2、A3の入口の幅は、上棚58および下棚59の横幅より狭いので、各上棚58および下棚59を、左右いずれかの方向に斜めに傾けて挿入するのがよい。
【0078】
次いで、
図19に2点鎖線で示すように、上棚58は、後部を下向き傾斜させた状態で、前端の下向き折曲部63aを、側板2における縦框20の後面、または中仕切6における縦框27の後面における、各単位後面板3A、3B、3Cの上方の受け部38とほぼ等高の位置に設けた係合孔67に嵌合する。
【0079】
次いで、上棚58全体を若干前方に移動させた後、同じく
図19に2点鎖線で示すように、上棚58の後端部が各単位後面板3A、3B、3Cの受け部38より上方に位置するように、上棚58の後端部を上向き回動させる。
その後、上棚58全体を若干後方に移動させつつ、上棚58の後端部を下向き回動させ、各係止部62におけるいずれかの下向き係止片62aを、受け部38に上方より嵌合させる。
【0080】
これにより、上棚58は、後端部の下向き係止片62aが受け部38に嵌合していることと、前向き突軸63の前端部が係合孔67に嵌合していることとにより、下方と、前後および左右の移動が阻止され、各収容空間A1、A2、A3内に安定よく保持される。
【0081】
下棚59は、
図19に2点鎖線で示すように、後部を上向き傾斜させた状態で、前端の下向き折曲部63aを、側板2における縦框20の後面、または中仕切6における縦框27の後面における、各単位後面板3A、3B、3Cの下方の受け部38とほぼ等高の位置に設けた係合孔68に嵌合する。
【0082】
次いで、下棚59の後端部を下向き回動させ、各係止部62におけるいずれかの下向き係止片62aを、下方の受け部38に上方より嵌合させる。
これにより、下棚59も、上棚58と同様に、各収容空間A1、A2、A3内に安定よく保持される。
【0083】
上棚58の前端に下向き折曲部63aを設け、下棚59の前端に上向き折曲部63bを設けた理由は、各収容空間A1、A2、A3における上棚58の取付位置の上方には、上棚58を大きく後上向き傾斜させるだけのスペースがなく、また下棚59の取付位置の下方には、下棚59を大きく後下向き傾斜させるだけのスペースがないからである。
【0084】
次に、上棚58および下棚59における各係止部62に、それぞれ2個の下向き係止片62a、62aを設けた理由について説明する。
図20に示すように、左右の収容空間A1、A3における側板2の化粧板19と中仕切6の仕切板26との間隔は、中間の収容空間A2における左右の仕切板26、26の間隔より、各側板2における縦框20の凹入段部20aより外側の部分の厚さ分だけ大となっている。これは、3枚の扉7の左右幅を同一とし、かつ閉止したときの左右の扉7の側端面を、側板2により覆うようにしてあるためである。
【0085】
この収容空間A1、A2、A3の左右幅の相違に伴って、左右の単位後面板3A、3Cの左右幅を、中間の単位後面板3Bの左右幅より大とし、かつ生産性の向上を図るため、左右の単位後面板3A、3C同士を、互いに同一形状としてある。
それに対して、各収容空間A1、A2、A3に取付ける上棚58および下棚59の共通化を図るため、各係止部62を、それぞれ2個の下向き係止片62a、62aを備えるものとし、そのいずれかを、単位後面板3A、3B、3Cの前面における受け部38に選択的に嵌合係止させることにより、単位後面板3A、3B、3Cにおける受け部38の配置の相違を許容しうるようにしてある。
【0086】
すなわち、
図20に示す例では、収容空間A2、A3における単位後面板3B、3Cには、上棚58および下棚59における各係止部62の右方の下向き係止片62aを受け部38に嵌合し、収容空間A1における単位後面板3Aには、上棚58および下棚59における各係止部62の左方の下向き係止片62aを受け部38に嵌合してある。
【0087】
なお、収容空間A1、A2、A3の左右幅をすべて同一とし、かつ単位後面板3A、3B、3Cもすべて同一形状とすれば、上棚58および下棚59における各係止部62を、1個の下向き係止片62aのみを有するものとすることができることはもちろんである。
また、
図20における中央の単位後面板3Bにおける左右の受け部38、38に、中央の上棚58における左右の係止部62、62のそれぞれ内側の下向き係止片62a、62aを係止させるような態様とすることもある。
【0088】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、例えば、次のような変形した態様での実施が可能である。
(1) 底板1の両側面に設ける係合孔9を、その上縁が水平をなすように、大径部9aに対して小径部9bが後斜め上方を向くようにし、かつ側板2の水平片10を底板1の上面に当接させたとき、有頭ピン8の拡大頭部8aが大径部9aに嵌合しうる高さに維持されるようにする。
このような構成によると、側板2の水平片10を底板1の上面に当接させて、側板の荷重を底板1に受止させた状態で、水平片10を底板1の上面に対して摺動させつつ、有頭ピン8の拡大頭部8aを大径部9aに嵌合させたり、軸部8bを小径部9bに係合させたりすることができ、組み立て作業性をさらによくすることができる。
(2) 底板1の側面に有頭ピン8を突設し、それが嵌合される係合孔9を、側板2の内面に設ける。
(3) 係合孔9を、だるま孔とする。
(4) 側板2の後端の係合片21、および中仕切6の後端の係合片28を、互いに左右方向に対向する折曲片21a、28aのみとし、その前面に、各単位後面板3A、3B、3Cの基板34の側部とした取付部の後面が当接するようにする。
このような構成としても、下方の係合片36における下向片36bを底板1の後面に当接させ、かつ上方の係合片37における上向片37bを天板4の後面に当接させるだけで、各単位後面板3A、3B、3Cは、筐体5から前後方向に外れることはない。
また、この状態で、各単位後面板3A、3B、3Cの両側部の適所を、折曲片21a、28aに、ねじ止め、接着、その他の手段により、適宜止着または係着させてもよい。