(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電波を送受信するためのアンテナ部を備え、該アンテナ部が定点設置される警報システムであって、送信用アンテナ部および受信用アンテナ部の何れか一方又は双方に、請求項1〜5の何れか一項に記載の導波管スロットアンテナを適用した警報システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、異常を検出し、異常検出時に警報を発するように構成された各種警報装置(警報システム)において、センチメートル波帯の電波を利用することが検討されており、この警報システムに搭載するアンテナ部として導波管スロットアンテナを用いることが検討されている。警報システムとしては、例えば、生体反応を検出することにより対象人物の安否や異常行動を検知する生体反応検出システム、線路などの見通しの悪い場所への侵入者を検出する侵入者検出システム、各種建造物内への侵入者を検知するセキュリティシステム、タンク内部に貯留された液体の残量が所定値を下回ったことを検出する液量管理システムなどを挙げることができる。
【0006】
上述のように、導波管スロットアンテナは、種々の用途への適用が検討されている。しかしながら、特許文献1に記載のように、横断面で継ぎ目のない断面方形の金属管を用いて導波管スロットアンテナを形成するようにした場合、放射スロット等、アンテナ性能を左右する部位の加工に手間を要する。従って、特許文献1に開示された導波管スロットアンテナは量産性が低く、コスト面で難がある。
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明は、所望のアンテナ性能を具備する導波管スロットアンテナを低コストに製造可能とし、もって、種々の用途、特に各種警報システムへの適用を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、導波路の延在方向各部における横断面が方形状をなす導波管に、放射スロットを所定間隔で複数設けてなる導波管スロットアンテナにおいて、導波管は、前記横断面が有端状をなし、相手側と結合されることにより導波路を画成する第1および第2の導波管形成部材からなり、第1の導波管形成部材が平板状に形成されると共に前記複数の放射スロットを有することを特徴とする。
【0009】
上記のように、導波管(導波管スロットアンテナ)を構成する第1の導波管形成部材を、放射スロットを有する平板状の部材とすれば、第1及び第2の導波管形成部材のうち、少なくとも第1の導波管形成部材を、該導波管形成部材を形成するのと同時に放射スロットを形成することのできる加工法、例えば、樹脂又は低融点金属の射出成形や金属板のプレス加工などで形成することができる。そのため、高品質の放射スロットを容易かつ低コストに形成することができ、これを通じて導波管、ひいては導波管スロットアンテナの低コスト化を図ることができる。
【0010】
導波管の具体的な形態の一例として、横断面寸法が相対的に長寸で、互いに平行な一対の広壁と、横断面寸法が相対的に短寸で、互いに平行な一対の狭壁とを有し、第1の導波管形成部材が一対の広壁の何れか一方を有するもの、を挙げることができる。もちろん、第1の導波管形成部材が一対の狭壁の何れか一方を有するものとしても良い。
【0011】
第1及び第2の導波管形成部材は、何れも、樹脂で形成されると共に、少なくとも導波路の画成面に形成された導電性被膜を有するものとすることができる。この場合、第1の導波管形成部材を形成(射出成形)する際には、これと同時に放射スロットを型成形することができる。そのため、所定形状を具備した両導波管形成部材を高精度かつ効率良く量産することができる。また、両導波管形成部材は、少なくとも導波路の画成面に導電性被膜を有するので、導波管内に供給された電波(高周波電流)を導波路に沿って円滑に伝播させることができる。
【0012】
導電性被膜の膜厚は、これが薄過ぎると耐久性に乏しくなり、逆に厚過ぎると被膜形成に多大な時間を要してコスト高を招来する。従って、導電性被膜の膜厚は、0.2μm以上1.5μm以下とするのが好ましい。また、導電性被膜は、単層構造としても良いが、複層構造とするのが好ましく、具体的には、二種以上の金属メッキ被膜を積層させることで導電性被膜を構成するのが好ましい。例えば、金属の中でも特に導電性の高い銅や銀で第1の金属メッキ被膜を形成し、第1の金属メッキ被膜上に、耐久性に富むニッケルで第2の金属メッキ被膜を形成する。これにより、導電性及び耐久性の双方に優れた導電性被膜を得ることができるので、アンテナの信頼性が向上する。
【0013】
第2の導波管形成部材には、放射スロットの形成位置において導波路の断面積を縮小させる内壁を設けることができる。このようにすれば、導波管内(導波路)に供給され、各放射スロットを介してアンテナ外部に放射される電波の放射効率を高めることができる。
【0014】
導波管スロットアンテナには給電口が設けられる。そして、管軸方向で隣り合う2つの内壁のうち、相対的に給電口に近い側の内壁の高さ寸法をh
1、相対的に給電口から遠い側の内壁の高さ寸法をh
2としたとき、h
1≦h
2の関係式を満たすようにすることができる。このようにすれば、各放射スロットを介してアンテナ外部に放射される電波量(電波の強さ)が放射スロット相互間でばらつき難くなり、各放射スロットから概ね等しい量の電波を放射することが可能となる。従って、導波管スロットアンテナの長手方向各部で電波の放射性能にばらつきが生じるのを可及的に回避することができる。
【0015】
導波管スロットアンテナ(導波管)を構成する第1の導波管形成部材は、さらに、内底面に一の放射スロットが開口した複数の窪み部を有するものとすることができる。このようにすれば、グレーティングローブとも称される不要放射を抑制し得るので、アンテナ性能を一層向上することができる。
【0016】
本発明に係る導波管スロットアンテナは、例えば、センチメートル波帯の電波を送受信するためのアンテナ部が定点設置される警報システムにおいて、送信用アンテナ部および受信用アンテナ部の何れか一方又は双方として好ましく用いることができる。そして、本発明に係る導波管スロットアンテナは低コストに製造可能であることから、センチメートル波帯の電波を利用する各種警報システムの低コスト化、高利得化、高効率化ひいては普及に貢献することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上に示すように、本発明によれば、所望のアンテナ性能を具備する導波管スロットアンテナを低コストに製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1(a)(b)に、本発明の第1実施形態に係る導波管スロットアンテナAを備えたアンテナユニット1の平面図及び背面図をそれぞれ示す。
図1に示すアンテナユニット1は、例えばセンチメートル波帯(例えば24GHz帯)の電波を送受信するためのものであって、並列に接続された複数本(図示例では5本)の導波管スロットアンテナAと、各導波管スロットアンテナAに高周波電力を供給する給電導波管9[
図1(b)中に二点鎖線で示す]とを備える。導波管スロットアンテナAを並列に接続するための手段に特段の限定はなく、例えば、接着、両面テープ止め、凹凸嵌合などの固定手段を単独で、あるいは二種以上組み合わせることができる。5本の導波管スロットアンテナAのうち、例えば中央部に配置されたアンテナAは電波の送信(発信)用アンテナとして機能させることができ、その幅方向両側に2本ずつ配置されたアンテナAは電波の受信用アンテナとして機能させることができる。
【0021】
次に、各導波管スロットアンテナAの詳細構造について、
図2(a)(b)も参照しながら説明する。
【0022】
導波管スロットアンテナAは、内部に導波路2を有する導波管10に、その管軸方向(導波路2の延在方向)に沿って放射スロット3を所定間隔で複数設けて構成される。
図1(a)に示す放射スロット3は、その幅方向中央部を通って延びる直線が管軸方向(導波路2の延在方向)に対して45°傾いたものであるが、管軸方向に対する放射スロット3の傾斜角は、用途等に応じて適宜設定することができる。
【0023】
導波管スロットアンテナAを構成する導波管10は、
図2(a)に示すように、横断面寸法が相対的に長寸で、互いに平行な一対の広壁10a,10bと、横断面寸法が相対的に短寸で、互いに平行な一対の狭壁10c,10dとを有し、導波路2の延在方向各部における横断面が方形状(長方形状)をなす方形導波管とされる。本実施形態の導波管10は、
図2(b)に示すように、管軸方向の一端および他端開口を閉塞する一対の終端壁10e,10fをさらに備える。放射スロット3は一方の広壁10aに設けられている。
【0024】
一方の広壁10aには、その外面に開口した窪み部4が管軸方向に沿って複数設けられ、各窪み部4の内底面には一の放射スロット3が開口している。本実施形態の窪み部4は平面視で真円状に形成されたものであるが、窪み部4は、平面視で矩形状、楕円状等に形成されたものであっても良い。このような窪み部4を設けることにより、グレーティングローブとも称される不要放射が抑制される。他方の広壁10bの管軸方向の一端部には、給電口(給電スロット)5が設けられており、この給電口5を介して導波管10内(導波路2)に高周波電力(電波)が供給される。
【0025】
導波管10は、横断面、より詳細には、導波路2の延在方向各部における横断面が有端状をなした第1および第2の導波管形成部材11,12を結合することで形成される。具体的には、
図2(a)に示すように、放射スロット3が設けられた一方の広壁10aを有し、全体として平板状をなす第1の導波管形成部材11と、他方の広壁10b、両狭壁10c,10dおよび両終端壁10e,10fを一体に有する第2の導波管形成部材12とを結合することで導波管10が形成される。要するに、平板状をなす第1の導波管形成部材11と、導波路2の延在方向各部における横断面が凹字状をなす第2の導波管形成部材11,12とを結合することで導波管10が形成される。
【0026】
本実施形態の第1の導波管形成部材11は、樹脂の射出成形品とされ、射出成形と同時に放射スロット3および窪み部4が型成形される。また、第2の導波管形成部材12も樹脂の射出成形品とされ、射出成形と同時に給電口5が型成形される。導波管形成部材11,12の成形用樹脂としては、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)およびポリアセタール(POM)の群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂をベース樹脂としたものが使用され、ベース樹脂には必要に応じて適宜の充填材が添加される。本実施形態では、LCPを主成分とし、これに充填材としてのグラスファイバー(GF)を適量添加した樹脂材料を使用して第1および第2の導波管形成部材11,12を射出成形する。LCPは、PPS等に比べて形状安定性に優れ、かつ成形に伴うバリの発生量を抑制し得る点で好ましい。また、グラスファイバーは、カーボンファイバー(CF)に比して安価でありながら、成形品に高い形状安定性や機械的強度を付与し得る点で好ましい。
【0027】
図2(a)中の拡大図に示すように、第2の導波管形成部材12のうち、少なくとも導波路2の画成面には導電性被膜6が形成されている。同様に、第1の導波管形成部材11のうち、少なくとも導波路2の画成面にも導電性被膜6が形成されている。これにより、樹脂製の両導波管形成部材11,12を結合して形成される導波管10(導波管スロットアンテナA)の導波路2に沿って電波(高周波電流)を円滑に伝播させることができる。なお、導電性被膜6は、導波管形成部材11,12の表面全域に形成しても構わない。このようにすれば、導電性被膜6の形成前におけるマスキングの形成作業と、導電性被膜6の形成後におけるマスキングの除去作業とが不要となるので、被膜形成コスト、ひいては導波管スロットアンテナAの製造コストを抑えることができる。
【0028】
導電性被膜6は、単層の金属メッキ被膜で構成しても構わないが、ここでは、導波管形成部材11,12に析出形成した第1被膜6aと、この第1被膜6a上に析出形成した第2被膜6bとで導電性被膜6を構成している。第1被膜6aは、銅、銀、金等、特に導電性(電波の伝搬性)に優れた金属のメッキ被膜とすることができ、また、第2被膜6bは、ニッケル等、耐久性(耐腐食性)に優れた金属のメッキ被膜とすることができる。導電性被膜6をこのような積層構造とすることにより、導電性被膜6に高い導電性と高い耐久性とを同時に付与することができることに加え、高価な金属である銅や銀等の使用量を抑えてコスト増を抑制することができる。
【0029】
導電性被膜6(6a,6b)の形成方法としては、例えば、電解メッキ法や無電解メッキ法を採用することができるが、無電解メッキ法の方が好ましい。無電解メッキ法の方が、電解メッキ法よりも均一厚みの導電性被膜6(6a,6b)を得易く、所望のアンテナ性能を確保する上で有利となるからである。導電性被膜6の膜厚は、これが薄過ぎると耐久性に乏しくなり、逆に厚過ぎると被膜形成に多大な時間を要してコスト高を招来する。かかる観点から、導電性被膜6の膜厚は0.2μm以上1.5μm以下とする。なお、第1被膜6aの膜厚は0.1〜1.0μm程度とすることができ、第2被膜6bの膜厚は0.1〜0.5μm程度とすることができる。
【0030】
なお、特にコスト面で問題がなければ、導電性被膜6は、三種以上の金属メッキ被膜を積層させたものとすることもできる。
【0031】
以上から、本実施形態に係る導波管スロットアンテナAは、例えば、第1および第2の導波管形成部材11,12を樹脂で射出成形してから、両導波管形成部材11,12のうち、少なくとも導波路2の画成面に導電性被膜6を形成し、その後、両導波管形成部材11,12を結合することで完成する。これにより、一方の広壁10aに放射スロット3および窪み部4が設けられると共に他方の広壁10bに給電口5が設けられた導波管スロットアンテナAが得られる。第1の導波管形成部材11と第2の導波管形成部材12の結合方法は任意であり、例えば、両導波管形成部材11,12の何れか一方に設けた凸部を他方に設けた凹部に嵌合する凹凸嵌合(圧入)、接着、溶着(両導波管形成部材11,12の何れか一方又は双方を溶融させ両者を結合させる方法)などを採用することができる。例示した結合方法は、何れか一種を採用しても良いし、二種以上を組み合わせても良い。
【0032】
両導波管形成部材11,12を接着で結合する場合、接着剤としては、例えば熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、嫌気性接着剤などを使用することができるが、接着剤を硬化させる際に加熱処理が必要となる熱硬化型接着剤では、加熱処理に伴って、樹脂製の導波管形成部材11,12が変形等する可能性がある。そのため、本実施形態のように両導波管形成部材11,12を樹脂製とした場合、両部材11,12を結合させるのに用いる接着剤としては紫外線硬化型接着剤や嫌気性接着剤が好ましい。なお、接着剤は一般に絶縁体であるので、導波路2の画成面に接着剤が付着すると電波の伝搬性に悪影響が及ぶ可能性がある。そのため、両導波管形成部材11,12を接着により結合一体化するようにした場合、導波路2の画成面に接着剤が付着しないように注意を払うことが肝要である。
【0033】
以上で説明したように、本発明では、導波管10(導波管スロットアンテナA)を構成する第1の導波管形成部材11を、放射スロット3を有する平板状に形成した。しかも、両導波管形成部材11,12の双方を、樹脂の射出成形で形成した。このようにすれば、第1の導波管形成部材11を成形するのと同時に放射スロット3および窪み部4を型成形することができ、また、第2の導波管形成部材12を成形するのと同時に放射スロット5を型成形することができる。そのため、導波管10の製造コストを低減し、導波管スロットアンテナAの低コスト化を図ることができる。
【0034】
また、導波管スロットアンテナのアンテナ性能は、例えば、放射スロット3を始めとするアンテナ構成要素の形成態様を変更することで適宜変更することができる。そのため、導波管形成部材11,12を樹脂の射出成形で形成すれば、要求特性に対応した導波管スロットアンテナAを容易に、しかも低コストに量産することができる。
【0035】
上述したように、導波管スロットアンテナAを構成する断面方形の導波管10は、一方が平板状をなす二つの導波管形成部材11,12を結合することで形成される。そのため、導波管10のうち、その内周隅部Dには、両導波管形成部材11,12の結合部C(の一端)が現れる。このような導波管10からなる導波管スロットアンテナAは、特に低周波帯域の電波(例えば、センチメートル波帯の電波)を送信又は受信するためのアンテナとして好ましく用いることができる。これは、上記構造を有する導波管スロットアンテナAを、高周波帯域の電波(例えばミリ波帯の電波)を送信又は受信するためのアンテナとして用いた場合には、導波路2内を流れる電波が上記結合部Cを介して外部に漏れ出す可能性があるのに対し、低周波帯域の電波を送信又は受信するためのアンテナとして用いた場合には、上記のような懸念事項を考慮せずとも足りることに由来する。
【0036】
従って、以上で説明した導波管スロットアンテナA(アンテナユニット1)は、例えば、センチメートル波帯の電波を送受信するためのアンテナ部を備え、このアンテナ部が定点設置される警報システムのアンテナ部として好ましく用いることができる。この種の警報システムとしては、例えば、生体反応を検出することにより対象人物の安否や異常行動を検知する生体反応検出システム、線路などの見通しの悪い場所への侵入者(侵入物)を検出する侵入者(物)検出システム、各種建造物内への侵入者を検知するセキュリティシステム、タンク内部に貯留された液体の残量が所定値を下回ったことを検出する液量管理システムなどを挙げることができる。そして、本発明に係る導波管スロットアンテナAは低コストに製造可能であることから、以上で例示した各種警報システムの低コスト化、高利得化、高効率化ひいては普及に貢献することができる。
【0037】
以上、本発明の第1実施形態に係る導波管スロットアンテナAについて説明を行ったが、この導波管スロットアンテナAには、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことが可能である。以下、本発明の他の実施形態について図面を参照しながら説明するが、以上で説明した第1実施形態に準ずる構成には共通の参照番号を付し、重複説明を出来る限り省略する。
【0038】
図3(a)〜(c)に、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る導波管スロットアンテナAの部分平面図、横断面図および縦断面図を概念的に示す。この実施形態の導波管スロットアンテナAでは、
図3(a)に示すように、複数の放射スロット3を管軸方向に沿って所定間隔で配置してなる放射スロット列を導波管10の幅方向に二列設けると共に、一方の放射スロット列を構成する放射スロット3と他方の放射スロット列を構成する放射スロット3の管軸方向における配設位置を互いに異ならせている。簡単に言うと、この実施形態の導波管スロットアンテナAでは、放射スロット3および窪み部4が千鳥状に複数配置されている。
【0039】
また、この実施形態の導波管スロットアンテナA(導波管10)は、狭壁10c,10dと平行に配設され、導波路2を二条の導波路2A,2Bに分岐させる分岐壁10gと、放射スロット3の形成位置において導波路2(2A,2B)の断面積を縮小させる複数の内壁13とをさらに有する。内壁13は広壁10bの内面に立設されており、管軸方向で隣り合う2つの内壁13,13のうち、相対的に給電口5に近い側の内壁13の高さ寸法をh
1、相対的に給電口5から遠い側の内壁13の高さ寸法をh
2としたとき、h
1≦h
2の関係式を満たすように形成されている[
図3(c)中の拡大図参照]。一方の放射スロット列は導波路2Aに沿って形成され、他方の放射スロット列は導波路2Bに沿って形成される。
【0040】
この実施形態の導波管スロットアンテナAを構成する導波管10も、導波路2の延在方向各部における横断面が有端状をなし、少なくとも導波路2の画成面に導電性被膜6が形成された樹脂製の第1および第2の導波管形成部材11,12を結合することで形成される。具体的には、放射スロット3および窪み部4が設けられた一方の広壁10aを有し、全体として平板状に形成された第1の導波管形成部材11と、給電口5および複数の内壁13が設けられた他方の広壁10b、両狭壁10c,10d、両終端壁10e,10fおよび分岐壁10gを一体に備える第2の導波管形成部材12とを結合することで導波管10が形成される。
【0041】
このように、本発明の第2実施形態に係る導波管スロットアンテナAは、放射スロット3の形成位置において導波路2の断面積を縮小させる内壁13を有する。これにより、導波路2内を伝搬する電波の放射効率を高めることができる。特に、本実施形態のように、管軸方向で隣り合う2つの内壁13,13のうち、相対的に給電口5に近い側の内壁13の高さ寸法をh
1、相対的に給電口5から遠い側の内壁13の高さ寸法をh
2としたとき、h
1≦h
2の関係式を満たすようにすれば、各放射スロット3を介して当該アンテナAの外部に放射される電波量が放射スロット3相互間でばらつき難くなり、各放射スロット3から概ね等しい量の電波を放射することが可能となる。従って、導波管スロットアンテナAの管軸方向各部でアンテナ性能にばらつきが生じるのを可及的に回避することができ、導波管スロットアンテナAの信頼性が向上する。
【0042】
本実施形態の導波管スロットアンテナAは、上記の内壁13を追加的に設けて構成される関係上、構造が複雑化し、製造コストが増大するとも考えられるが、内壁13を有する第2の導波管形成部材12は樹脂製とされるので、内壁13は、第2の導波管形成部材12を射出成形するのと同時に型成形することができる。このようにすれば、導波管スロットアンテナAの構成要素を容易かつ高精度に得ることができ、しかも製造コストを抑えることができる。
【0043】
図示は省略するが、放射スロット列は3列以上設けることも可能である。この場合、分岐壁10gを二以上配設し、導波路2を三条以上の導波路に分岐することができる。
【0044】
図4は、本発明の第3実施形態に係る導波管スロットアンテナAの概略横断面図である。この実施形態の導波管スロットアンテナAが、第1実施形態に係る導波管スロットアンテナAと異なる主な点は、放射スロット3および窪み部4を一方の狭壁10cに設けると共に給電口5を他方の狭壁10dに設けた点(
図4では給電口5の図示を省略している)にある。このような変更に伴って、第1の導波管形成部材11は、一方の狭壁10cを有する平板状に形成される。なお、図示は省略するが、この実施形態においても、第2実施形態で採用した内壁13や分岐壁10gを設けることが可能である。
【0045】
以上では、凹凸嵌合(圧入)、接着、あるいは溶着などの手段で両導波管形成部材11,12を結合一体化することにより導波管10(導波管スロットアンテナA)を形成したが、ネジやボルト等の締結具を用いて両導波管形成部材11,12を結合一体化することにより、導波管10(導波管スロットアンテナA)を形成することも可能である。
【0046】
また、以上で説明した実施形態では、第1及び第2の導波管形成部材11,12の双方を樹脂の射出成形品としたが、両導波管形成部材11,12の何れか一方又は双方は、金属のプレス成形品、あるいは低融点金属(例えば、マグネシウムやアルミニウム)の射出成形品などとすることもできる。この場合、金属の成形品とされた部材については、導電性被膜6が不要となる(導電性被膜6の形成工程を省略することができる)。
【0047】
ここで、送信用アンテナ部および受信用アンテナ部の何れか一方又は双方に、本発明に係る導波管スロットアンテナAを適用可能な警報システムのシステム構成例を
図5に模式的に示す。簡単に述べると、同図に示す警報システムSは、受信用アンテナで受信した反射波等の中から検知対象人物Mに関する各種の情報(ここでは、位置、心拍数および呼吸数に関するデータ)を取得し、取得した各種情報の中に異常があると判定された場合にその異常情報(警報)を情報端末に向けて送信するように構成されたものである。このような警報システムは、例えば、入院患者、新生児、独居老人の様態を監視する様態監視システムとして利用可能である。このような監視システムを導入すれば、入院患者等に常時付き添うことができないような場合でも、入院患者等の様態を常時把握することが可能となる。そのため、医師や看護師の作業負担を軽減することが、また、家族の身体的・精神的負担を軽減することができる。
【0048】
図5に示す警報システムSは、送信波生成部21で生成された送信波W1を検知対象人物Mに向けて発信(送信)する送信用アンテナ22を有する電波送信装置20と、反射波W2を受信する受信用アンテナ31を有する受信装置30と、混合器40と、混合器40で生成された混合波の中から所定の周波数成分を抽出して検知対象人物Mに関する上記の各種情報(データ)を取得すると共に、取得したデータが所定範囲内にあるか否か(各種情報の中に異常項目があるか否か)を判定する判定装置50と、判定装置50で異常項目があると判定された場合に、その異常情報(警報)を情報端末(例えば、個人の携帯端末や監視センタに設置されたPC等)に向けて送信する警報送信装置60とを備える。警報送信装置60から情報端末に向けて警報を送信するための回線は、無線あるいは有線の何れでも構わない。
【0049】
図5に示す警報システムSは、周波数変調された連続波を使用して測距等を行う周波数変調連続波(FMCW)方式のレーダを応用したものであり、詳細には、
図6に示すようなステップを踏んで情報端末に向けて異常情報(警報)を送信する。なお、FMCW方式のレーダは、送信波として連続波を使用することから、送信出力を低くしても所望の信号を得易いという利点がある。また、送信出力を低くできれば、少なくとも電波送信装置20を小型・軽量化することができるので、警報システムSを全体として小型・軽量化できるという利点がある。
【0050】
図6を参照しながら、警報システムSが警報を送信するに至るまでの流れを説明する。まず、電波送信装置20に含まれる送信波生成部21において、図示しない電波発生装置としての電圧制御発振器(VCO)から発せられた電波が図示しない変調・増幅手段で変調(FM変調)および増幅等されて送信波W1が生成され、この送信波W1が送信用アンテナ22から検知対象人物Mに向けて発信される。検知対象人物Mに当たって反射した反射波W2は受信装置30の受信用アンテナ31で受信される。受信用アンテナ31で受信された反射波W2は、受信装置30内に設けられた図示しない増幅・復調手段で増幅・復調された上で混合器40に送り込まれる。混合器40は、電圧制御発振器から発せられた電波の一部と、受信用アンテナ31で受信された反射波W2(厳密には、反射波W2を増幅等することで得られた受信波)とを混合して混合波を生成する。
【0051】
混合波は、判定装置50に導入され、最初にフィルタリング処理が施される。これにより混合波の中から所定の周波数成分が抽出される。抽出された周波数成分は、図示しないアナログ・デジタル変換回路によってデジタル信号(波形データ)に変換された上で信号処理部(図示せず)に導入される。信号処理部に導入された波形データは、FFT解析されることによって複数の周波数データに分解される。個々の周波数データにフィルタリング処理が施されると、検知対象人物Mの位置、心拍数および呼吸数に関するデータが得られる。検知対象人物Mの位置、心拍数および呼吸数に関するデータは、それぞれ、判定装置50内に設けられた図示しない判定部において予め記憶されている閾値と比較されることにより、所定範囲内(閾値の範囲内)にあるか否かが判定される。そして、検知対象人物Mの位置、心拍数および呼吸数の少なくとも一つに異常があると判定されると、警報送信装置60が個人の携帯端末や監視センタに設置されたPC等に向けて異常情報(警報)を送信する。上記の判定処理によって“異常なし”と判定された項目のデータは、例えば判定装置50に設けた記憶部に保存・蓄積される。
【0052】
なお、以上で説明した警報システムSのシステム構成はあくまでも一例であり、用途等に応じて適宜変更可能である。