特許第6374192号(P6374192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374192異方性導電フィルム、接続方法、及び接合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374192
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム、接続方法、及び接合体
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20180806BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01R11/01 501A
   H01R43/00 H
   C09J4/02
   C09J175/06
   C09J7/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-61132(P2014-61132)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-185399(P2015-185399A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】國吉 敦史
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−001765(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046189(WO,A1)
【文献】 特開2012−067281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/00−11/32
H01R 43/00
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が20,000以下、かつガラス転移温度が60℃未満であるポリエステルウレタン(A)と、
数平均分子量が20,000以上30,000以下、かつガラス転移温度が60℃以上100℃以下であるポリエステルウレタン(B)と、
ラジカル重合性物質と、
有機過酸化物とを含有し、
前記ポリエステルウレタン(A)の数平均分子量[Mn(A)]と、前記ポリエステルウレタン(B)の数平均分子量[Mn(B)]との比率[Mn(B)/Mn(A)]が、2.0以上3.0以下であることを特徴とする異方性導電フィルム。
【請求項2】
ポリエステルウレタン(A)及びポリエステルウレタン(B)の合計の含有量が、18質量%〜75質量%である請求項1に記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
数平均分子量が20,000以下、かつガラス転移温度が60℃未満であるポリエステルウレタン(A)と、
数平均分子量が20,000以上30,000以下、かつガラス転移温度が60℃以上100℃以下であるポリエステルウレタン(B)と、
ラジカル重合性物質と、
有機過酸化物とを含有し、
前記ラジカル重合性物質が、2官能(メタ)アクリレート及び3官能(メタ)アクリレートを含有し、
前記2官能(メタ)アクリレートと、前記3官能(メタ)アクリレートとの質量比率〔2官能(メタ)アクリレート:3官能(メタ)アクリレート〕が、30:70〜80:20であることを特徴とする異方性導電フィルム。
【請求項4】
2官能(メタ)アクリレート及び3官能(メタ)アクリレートの合計の含有量が、18質量%〜75質量%である請求項3に記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
ポリエステルウレタン(A)と、ポリエステルウレタン(B)との質量比率(A:B)が、30:70〜80:20である請求項1から4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
イミダゾールシランを含有する請求項1から5のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
基板の端子と、電子部品の端子とを異方性導電接続させる接続方法であって、
前記基板の端子上に、請求項1から6のいずれかに記載の異方性導電フィルムを貼り付ける貼付工程と、
前記異方性導電フィルム上に前記電子部品を載置する載置工程と、
前記電子部品を加熱押圧部材により加熱及び押圧する加熱押圧工程とを含み、
前記加熱押圧工程における前記押圧が、1MPa〜3MPaであることを特徴とする接続方法。
【請求項8】
基板と電子部品とを請求項1から6のいずれかに記載の異方性導電フィルムの硬化物を介して異方性導電接続させた、接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルム、並びに前記異方性導電フィルムを使用した接続方法、及び前記接続方法を用いて作製された接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電フィルムは、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)やIC(Integrated Circuit)チップの端子と、LCD(Liquid Crystal Display)パネルのガラス基板上に形成された電極とを互いに電気的に接続する場合を始めとして、種々の端子同士を接着すると共に互いに電気的に接続する場合に用いられている。
【0003】
従来、異方性導電フィルムによる接続においては、160℃以上で行うと、部材によっては熱ダメージが起こることがあり、4MPa以上で行うと、部材によっては物理的ダメージが起こることがあり、10秒以上で行うと、生産効率があまり良くないという問題がある。
【0004】
そこで、近年、異方性導電フィルムを用いた接続では、部材への熱及び物理的ダメージの抑制、並びに、生産効率の向上の要求が高くなってきている。そのため、140℃程度の低温、3MPa程度の低圧、及び5秒程度の短時間で、接続信頼性に優れ、接着強度が高く、導電性粒子の潰れ具合が良好で、かつ基板からの異方性導電フィルムの浮き上がりのない異方性導電フィルムによる接続が求められている。
【0005】
回路接続用接着物として、酸当量が5KOHmg/g〜500KOHmg/gである接着剤を用いることにより、接着力を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この提案の技術では、回路接続を4MPa(高圧)、20秒(長時間)で行っているため、部材へ物理的ダメージを与えてしまい、更に生産効率が良くないという問題がある。
【0006】
対向する電極間のスペースを、導電性粒子の直径よりも狭くすることにより、前記導電性粒子が、対向する電極に押しつぶされ、電極間の導通を確保することにより、低圧で回路接続を行う技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この提案の技術では、回路接続を170℃(高温)で行っているため、部材へ熱ダメージを与えてしまうという問題がある。
【0007】
接着剤組成物として、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有するラジカル硬化型接着剤組成物を用いることにより、異方性導電フィルムを短時間
で接続することを可能にする技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この提案の技術では、異方性導電フィルムによる接続を160℃(高温)で行っているため、部材へ熱ダメージを与えてしまうという問題がある。
【0008】
また、熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル発生剤と、溶解度パラメーターが9.0以上のシランカップリング剤とを含有する接着剤組成物を用いることにより、無機基材に対して強い接着強度を得る技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この提案の技術では、回路接続を175℃(高温)、15秒(長時間)で行っているため、部材へ熱ダメージを与え、更に生産効率が良くないという問題がある。
【0009】
そのため、これらの提案の技術では、近年要求されている、140℃程度の低温、3MPa程度の低圧、及び5秒程度の短時間で、接続信頼性に優れ、接着強度が高く、導電性粒子の潰れ具合が良好で、かつ基板からの浮き上がりのない異方性導電フィルムを用いた接続を実現することはできていないという問題がある。
【0010】
したがって、低温、低圧、及び短時間で、接続信頼性に優れ、接着強度が高く、導電性粒子の潰れ具合が良好で、かつ基板から浮き上がらない接続が可能な異方性導電フィルム、並びに前記異方性導電フィルムを用いた接続方法、及び接合体が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−169632号公報
【特許文献2】特開2012−067281号公報
【特許文献3】国際公開第07/046189号パンフレット
【特許文献4】特開2007−177204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、低温、低圧、及び短時間で、接続信頼性に優れ、接着強度が高く、導電性粒子の潰れ具合が良好で、かつ基板から浮き上がらない接続が可能な異方性導電フィルム、並びに前記異方性導電フィルムを用いた接続方法、及び接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 数平均分子量が20,000以下、かつガラス転移温度が60℃未満であるポリエステルウレタン(A)と、
数平均分子量が20,000以上30,000以下、かつガラス転移温度が60℃以上100℃以下であるポリエステルウレタン(B)と、
ラジカル重合性物質と、
有機過酸化物とを含有することを特徴とする異方性導電フィルムである。
<2> ポリエステルウレタン(A)と、ポリエステルウレタン(B)との質量比率(A:B)が、30:70〜80:20である前記<1>に記載の異方性導電フィルムである。
<3> ポリエステルウレタン(A)の数平均分子量[Mn(A)]と、ポリエステルウレタン(B)の数平均分子量[Mn(B)]との比率[Mn(B)/Mn(A)]が、2.0以上3.0以下であり、
前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)の合計の含有量が、18質量%〜75質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<4> ラジカル重合性物質が、2官能(メタ)アクリレート及び3官能(メタ)アクリレートを含有し、
前記2官能(メタ)アクリレートと、前記3官能(メタ)アクリレートとの質量比率〔2官能(メタ)アクリレート:3官能(メタ)アクリレート〕が、30:70〜80:20であり、
前記2官能(メタ)アクリレート及び前記3官能(メタ)アクリレートの合計の含有量が、18質量%〜75質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<5> イミダゾールシランを含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<6> 基板の端子と、電子部品の端子とを異方性導電接続させる接続方法であって、
前記基板の端子上に、前記<1>から<5>のいずれかに記載の異方性導電フィルムを貼り付ける貼付工程と、
前記異方性導電フィルム上に前記電子部品を載置する載置工程と、
前記電子部品を加熱押圧部材により加熱及び押圧する加熱押圧工程とを含み、
前記加熱押圧工程における前記押圧が、1MPa〜3MPaであることを特徴とする接続方法である。
<7> 前記<6>に記載の接続方法を用いて作製されたことを特徴とする接合体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、低温、低圧、及び短時間で、接続信頼性に優れ、接着強度が高く、導電性粒子の潰れ具合が良好で、かつ基板から浮き上がらない接続が可能な異方性導電フィルム、並びに前記異方性導電フィルムを用いた接続方法、及び接合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(異方性導電フィルム)
本発明の異方性導電フィルムは、ポリエステルウレタン(A)と、ポリエステルウレタン(B)と、ラジカル重合性物質と、有機過酸化物とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0016】
<ポリエステルウレタン(A)>
前記ポリエステルウレタン(A)の数平均分子量としては、20,000以下であり、8,000以上20,000以下が好ましく、10,000以上20,000以下がより好ましく、10,000以上15,000以下が特に好ましい。前記ポリエステルウレタン(A)の数平均分子量が、20,000を超えると、導電性粒子を十分に潰すことができず接続が不安定となる。
前記ポリエステルウレタン(A)のガラス転移温度としては、60℃未満であり、40℃以上60℃未満が好ましい。前記ポリエステルウレタン(A)のガラス転移温度が、60℃以上であると、導電性粒子を十分に潰すことができず接続が不安定となる。
本発明において、ポリエステルウレタンとは、エステル結合と、ウレタン結合とを有するポリマーである。
【0017】
<ポリエステルウレタン(B)>
前記ポリエステルウレタン(B)の数平均分子量としては、20,000以上30,000以下であり、22,000以上28,000以下が好ましい。前記ポリエステルウレタン(B)の数平均分子量が、20,000未満であると接続信頼性が優れないことがあり、30,000を超えると、導電性粒子を十分に潰すことができず接続が不安定となる。
前記ポリエステルウレタン(B)のガラス転移温度としては、60℃以上100℃以下であり、65℃以上85℃以下が好ましい。前記ポリエステルウレタン(B)のガラス転移温度が、60℃未満であると接続信頼性が優れず、100℃を超えると、接着性に優れない。
【0018】
前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)の数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。前記GPCにおいて、検量線は、標準ポリスチレンを用いる。
【0019】
前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。前記DSCにおいては、例えば、アルミニウムパンに収容した5mgの試料を用い、20℃から150℃までを、昇温速度10℃/分間で昇温して測定を行う。
【0020】
前記異方性導電フィルムにおいて、前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)が併用されていることの確認方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の方法などが挙げられる。
前記異方性導電フィルムから、樹脂成分(前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)の混合物)をTHF(テトラヒドロフラン)を用いて抽出する。抽出した樹脂成分を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。
測定結果において、2つのピーク(二峰性)が得られた場合には、そのピークに基づいて、分取し、2つの樹脂成分を得る。得られた2つの樹脂成分それぞれについて、前述の方法により、数平均分子量、及びガラス転移温度を測定する。なお、2つのピークが近く、一方が他方の肩として見られる場合にも、二峰性と判断する。
また、前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)の分子量が近く、HPLCの測定結果において、2つのピークが明確に得られない場合には、溶剤溶解性の差による分離を行うこと、比重差を利用して分離を行うこと、GPCチャートの山の前半と後半の裾野部分を分取して分析することなどにより、前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)を区別することができる。
【0021】
前記ポリエステルウレタン(A)と、前記ポリエステルウレタン(B)との質量比率(A:B)としては、30:70〜80:20が好ましく、40:60〜60:40がより好ましい。前記ポリエステルウレタン(A)と、前記ポリエステルウレタン(B)との質量比率(A:B)において、前記ポリエステルウレタン(A)の割合が、30:70未満であると、接着強度及び接続信頼性が優れないことがあり、80:20を超えると、接着強度、及び接続信頼性が優れないことがある。
前記異方性導電フィルムにおける、前記ポリエステルウレタン(A)と、前記ポリエステルウレタン(B)との質量比率(A:B)は、例えば、配合量から算出する方法、前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)が併用されていることの確認方法において分取された前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)の質量から求める方法などが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルウレタン(A)の数平均分子量[Mn(A)]と、前記ポリエステルウレタン(B)の数平均分子量[Mn(B)]との比率[Mn(B)/Mn(A)]としては、1.0以上が好ましく、2.0以上3.0以下がより好ましい。前記ポリエステルウレタン(A)の数平均分子量[Mn(A)]と、前記ポリエステルウレタン(B)の数平均分子量[Mn(B)]との比率[Mn(B)/Mn(A)]が、1.0未満であると、接続信頼性が優れないことがあり、3.0を超えると、導電性粒子を十分に潰すことができず接続が不安定となることがある。
【0023】
前記異方性導電フィルムにおける、前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)の合計の含有量としては、18質量%〜75質量%が好ましく、30質量%〜65質量%がより好ましい。前記ポリエステルウレタン(A)及び前記ポリエステルウレタン(B)の合計の含有量が、18質量%未満であると、接着不足になることがあり、75質量%を超えると、硬化物不足が生じ、接続信頼性に優れないことがある。
【0024】
<ラジカル重合性物質>
前記ラジカル重合性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本発明における(メタ)アクリレートとは、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」を意味する。
【0025】
前記単官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記2官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記3官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
前記4官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記5官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記6官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記ラジカル重合性物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。
【0026】
前記異方性導電フィルムにおける、前記2官能(メタ)アクリレート及び前記3官能(メタ)アクリレートの合計の含有量としては、18質量%〜75質量%が好ましく、30質量%〜65質量%がより好ましい。前記異方性導電フィルムにおける、前記2官能(メタ)アクリレート及び前記3官能(メタ)アクリレートの合計の含有量が、18質量%未満であると、硬化不足が生じ、接続信頼性に優れないことがあり、75質量%を超えると、接着不足になることがある。
【0027】
<有機過酸化物>
前記有機過酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。
【0028】
前記異方性導電フィルムにおける、前記有機過酸化物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0029】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イミダゾール系、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等のシランカップリング剤、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等の無機フィラー、熱可塑性樹脂、ゴム成分等の柔軟剤等などが挙げられるが、ガラスに対する接着性を向上させる点で、イミダゾールシランが好ましい。
【0030】
(接続方法)
本発明の接続方法は、貼付工程と、載置工程と、加熱押圧工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記接続方法は、基板の端子と、電子部品の端子とを異方性導電接続させる接続方法である。
【0031】
<貼付工程>
前記貼付工程としては、前記基板の端子上に、異方性導電フィルムを貼り付ける工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
<<基板>>
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、セラミック基板、フレキシブルプリント基板などが挙げられる。
【0033】
<載置工程>
前記載置工程としては、前記異方性導電フィルム上に前記電子部品を載置する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
<<電子部品>>
前記電子部品としては、異方性導電性接続の対象となる、端子を有する電子部品であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ICチップ、TABテープ、液晶パネル、フレキシブル基板などが挙げられる。
前記ICチップとしては、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)における液晶画面制御用ICチップなどが挙げられる。
【0035】
<加熱押圧工程>
前記加熱押圧工程としては、前記電子部品を加熱押圧部材により加熱及び押圧する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記加熱押圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱機構を有する押圧部材などが挙げられる。前記加熱機構を有する押圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートツールなどが挙げられる。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、130℃〜150℃が好ましく、130℃〜140℃がより好ましい。
前記押圧の圧力としては、1MPa〜5MPaであり、1MPa〜3MPaが好ましい。
前記加熱及び押圧の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2秒間〜5秒間が好ましい。
【0036】
(接合体)
本発明の接合体は、本発明の前記接続方法により製造される。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
<異方性導電フィルムの作製>
ポリエステルウレタン(A)(商品名:UR4410、東洋紡株式会社製、数平均分子量;10,000、ガラス転移温度;56℃)を40質量部、ポリエステルウレタン(B)(商品名:UR8200、東洋紡株式会社製、数平均分子量;25,000、ガラス転移温度;73℃)を10質量部、2官能アクリレート(商品名:M−1600、東亞合成株式会社製、ウレタンアクリレート)を25質量部、3官能アクリレート(商品名:M−315、東亞合成株式会社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート)を25質量部、開始剤(商品名:パーロイルL、日油株式会社製、脂肪族系ジアシルパーオキサイド)を2質量部、開始剤(商品名:ナイパーBW、日油株式会社製、ベンゾイルパーオキサイド)を2質量部、カップリング剤(商品名:IM−1000、JX日鉱日石エネルギー株式会社製、イミダゾールシラン)を1.5質量部、及び導電性粒子(Au−Niめっき樹脂粒子、商品名:ミクロパールAU、平均粒径4μm、積水化学工業株式会社製)を質量部、を配合した異方性導電組成物を得た。
得られた異方性導電組成物を、離型PET(ポリエチレンテレフタレート、大きさ250mm、平均厚み50μm)上に塗布した後、80℃で乾燥し、離型PET上に平均厚み25μmの異方性導電フィルムを得た。
【0039】
<接合体の製造>
以下の方法により接合体を製造した。
電子部品として、ITO薄膜を形成したガラス基板を用いた。
基板として、フレキシブルプリント基板(銅配線:ライン/スペース=100μm/100μm)を用いた。
前記基板上に、前記異方性導電フィルム(フィルム幅2.0mm)を配置した。続いて、前記異方性導電フィルム上に、前記電子部品を載置した。続いて、140℃、2MPa、5秒間の条件で、前記電子部品を加熱及び押圧し、接合体を得た。
【0040】
<導通抵抗の測定>
各接合体について、初期及び信頼性後(温度85℃、湿度85%RH、250hr投入後)の導通抵抗値は、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて測定した。測定方法としては、4端子法を用い、電流1mAを流して行った。
以下の基準で評価した。結果を表1−1に示す。
○:2Ω未満
△:2Ω以上10Ω未満
×:10Ω以上
【0041】
<接着強度の測定>
ガラス基板とCOF(Chip On Film)の接合体の初期及び信頼性後(温度85℃、湿度85%RH、250hr投入後)の接着強度について、引っ張り試験機(品番:RTC1201、AND社製)を用いて測定した。測定速度を50mm/minとし、COFを90度方向に引き上げた時の接着強度を測定した。
以下の基準で評価した。初期と信頼性後の結果を表1−1に示す。
◎:10N/cm以上
○:5N/cm以上10N/cm未満
△:3N/cm以上5N/cm未満
×:3N/cm未満
【0042】
<導電性粒子の潰れ具合>
異方性導電フィルムに含まれる導電性粒子について、金属顕微鏡(商品名:MX50、オリンパス社製)を用いて、接合体作製後の前記導電性粒子の潰れ具合を観察した。導電性粒子の明らかな変形が認められたとき、導電性粒子が潰れているものと判断した。
以下の基準で評価した。結果を表1−1に示す。
○:導電性粒子が潰れている
×:導電性粒子が潰れていない
【0043】
<耐浮き性>
金属顕微鏡(商品名:MX50、オリンパス社製)を用いて、初期及び信頼性後(温度85℃、湿度85%RH、250hr投入後)の異方性導電フィルムの基板に対する耐浮き性を観察した。
以下の基準で評価した。初期と信頼性後の結果を表1−1に示す。
○:顕微鏡で浮きが0/10(10サンプル中)
△:顕微鏡で浮きが1/10
×:顕微鏡で浮きが2以上/10
【0044】
(実施例2〜15、比較例1〜10)
実施例1において、材料の種類、及び配合量を、表1−1〜表1−5のように変更した以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムの作製、及び接合体の製造を行った。
また、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1〜表1−5に示す。
【0045】
【表1-1】
【0046】
【表1-2】
【0047】
【表1-3】
【0048】
【表1-4】
【0049】
【表1-5】
ポリエステルウレタンA :UR4410、東洋紡株式会社製(数平均分子量;10,000、ガラス転移温度;56℃)
ポリエステルウレタンA’ :UR5537、東洋紡株式会社製(数平均分子量;20,000、ガラス転移温度;34℃)
ポリエステルウレタンB :UR8200、東洋紡株式会社製(数平均分子量;25,000、ガラス転移温度;73℃)
ポリエステルウレタンB’ :UR4125、東洋紡株式会社製(数平均分子量;20,000、ガラス転移温度;67℃)
ポリエステルウレタンC :UR1350、東洋紡株式会社製(数平均分子量;30,000、ガラス転移温度;46℃)
ポリエステルウレタンD :UR8400、東洋紡株式会社製(数平均分子量;25,000、ガラス転移温度;106℃)
ポリエステルウレタンE :UR1700、東洋紡株式会社製(数平均分子量;16,000、ガラス転移温度;92℃)
ポリエステルウレタンF :UR1400、東洋紡株式会社製(数平均分子量;40,000、ガラス転移温度;83℃)
2官能アクリレート :M−1600、東亞合成株式会社製
3官能アクリレート :M−315、東亞合成株式会社製
開始剤1 :パーロイルL、日油株式会社製
開始剤2 :ナイパーBW、日油株式会社製
カップリング剤 :IM−1000、JX日鉱日石エネルギー株式会社製
導電性粒子 :Au−Niめっき樹脂粒子、商品名:ミクロパールAU、平均粒径4μm、積水化学工業株式会社製
【0050】
2種類の特定のポリエステルウレタンを含有する異方性導電フィルムを用いることで、140℃(低温)、2MPa(低圧)、5秒間(短時間)で、接合体を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の異方性導電フィルムにより、低温、低圧、及び短時間で、接続信頼性に優れ、接着強度が高く、導電性粒子の潰れ具合が良好で、かつ基板から浮き上がらない接続が可能となる。