(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374197
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】デジタル顕微鏡およびデジタル顕微鏡の作業工程を最適化する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
G02B21/00
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-66613(P2014-66613)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-211626(P2014-211626A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】10 2013 006 994.7
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ガイドク
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シュテール
(72)【発明者】
【氏名】ベンノ ラット
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ ヨクシュ
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ ガイスラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ヴィンテロット
(72)【発明者】
【氏名】マルクス グナウク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クノーブリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】マックス フンク
【審査官】
森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0090127(US,A1)
【文献】
特表2004−535601(JP,A)
【文献】
特開平9−197288(JP,A)
【文献】
特開昭59−192221(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0163715(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/089908(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0231689(US,A1)
【文献】
特開2003−309861(JP,A)
【文献】
特開平11−64228(JP,A)
【文献】
特表2004−514920(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0206843(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/033273(WO,A1)
【文献】
特開平7−15721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡本体(03)に配置された光学系ユニット(02)とデジタル画像処理ユニットと、試料台(04)上に配置される試料(08)の画像を捕捉する顕微鏡イメージセンサとを備えるデジタル顕微鏡において、
前記デジタル顕微鏡は、
前記試料(08)と、前記試料台(04)、前記光学系ユニット(02)または使用者のいずれかとの画像を含む概観画像を観察する少なくとも1つの第一の監視センサと、
監視ユニットとをさらに備え、
前記監視ユニットにおいて、前記少なくとも1つの第一の監視センサのデータが自動的に評価され、前記デジタル顕微鏡の自動制御のために使用され、
前記監視ユニットにおいて、ユーザ入力が、前記概観画像の複数の領域を特定し、所望の倍率を選択するように受け取られて、前記ユーザ入力に応じて、前記試料台を自動的に移動させ、前記光学系ユニットを自動的に調整して前記試料の顕微鏡画像を捕捉する、デジタル顕微鏡。
【請求項2】
前記デジタル顕微鏡は、第二の監視センサを備え、
前記第一の監視センサと前記第二の監視センサが、前記デジタル顕微鏡上の空間的に異なる位置に配置され、
前記第一の監視センサのデータおよび第二の監視センサのデータが、前記監視ユニットにおいて処理されて三次元概観情報とされる、請求項1に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項3】
前記デジタル顕微鏡は、第三の監視センサを備え、
前記第一の監視センサと前記第三の監視センサが、前記デジタル顕微鏡上の空間的に異なる位置に配置され、
前記第一の監視センサのデータと前記第三の監視センサのデータが、前記監視ユニットにおいて処理されて衝突制御情報とされる、請求項2に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項4】
前記第一の監視センサが、イメージセンサ(06、07、09)またはカメラ(41)である、請求項1に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項5】
前記第二の監視センサが、イメージセンサ(06、07、09)である、請求項2に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項6】
前記デジタル顕微鏡は、補助照明装置(21)をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項7】
光学系ユニット(02)と第一の監視センサを備えるデジタル顕微鏡の作業工程を最適化する方法であって、
試料台(04)上に配置された試料(08)の観察時に、前記試料台(04)、前記光学系ユニット(02)、または使用者の画像を含む概観画像を、前記第一の監視センサの第一の観察データとして取得するステップと、
前記概観画像の複数の領域を特定し、所望の倍率を選択するようにユーザ入力を受け取るステップと、
前記第一の監視センサの前記第一の観察データを自動的に分析し、評価し、制御データの生成を行うステップと、
前記制御データを用いて、前記ユーザ入力に応じて、前記試料台を自動的に移動させ、前記光学系ユニットを自動的に調整して前記試料の顕微鏡画像を捕捉し、前記デジタル顕微鏡の複数の作業プロセスを制御するステップとを備える、方法。
【請求項8】
前記デジタル顕微鏡において前記第一の監視センサに対して空間的にずらして配置された第二の監視センサの第二の観察データを取得するステップと、
前記第一の観察データと第二の観察データから前記試料の三次元概観画像または高度マップを生成するステップとをさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の観察データと第二の観察データを前記試料台(04)の大まかな位置決めに使用するステップ、および
前記第一の観察データと第二の観察データをレンズ(01)の焦点の自動調整に使用するステップのうちの少なくとも1つのステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料台(04)の照明が、前記照明のデータの取得中に行われる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に材料顕微鏡検査用および品質管理用途のデジタル顕微鏡およびデジタル顕微鏡の作業工程を最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡検査では、資料作成のために、試料の拡大写真を別のカメラで、または低い解像度で撮影することが多い。生体医学用顕微鏡検査用途では、概観画像、すなわち全体像が、多くの顕微鏡画像をつなぎ合わせる(縫い合わせる)ことによって生成されうる。地勢図(geographic map)のコンピュータ表現では、使用者に追加情報を提供するために概観画像もよく使用される。
【0003】
特許文献1から、コンピュータ制御式顕微鏡の画像表現のためのシステムと方法が知られている。ここでは、まず個々のタイル(tile)から低解像度の拡大画像が生成される。この拡大画像の中の選択された領域を利用して、試料台が所定の位置まで移動され、対応する高解像度画像が全体像のうちの1つのタイルとして生成される。
【0004】
特許文献2は、いくつかの光路とデジタルズーム方式とを使用した連続ズームシステムと方法を開示している。
特許文献3から、全体像カメラと顕微鏡カメラを含む顕微鏡システムが知られている。スイッチを使用することで、隣り合わせに配置されたカメラを切り替えることができ、試料は自動的に、それぞれの選択されたカメラの下で相応に位置決めされる。
【0005】
特許文献4は、画像が解像度の異なる2つの光路に分割され、2つの異なるカメラで記録され、それぞれのモニター上に表示される顕微鏡表示システムを記載している。
顕微鏡を使った試料の検査にあたっては、使用者は通常、その試料がレンズの下に正しく位置決めされているかを、まず目視で確認しなければならず、たとえば、試料とレンズの間の距離を推測して、検査中の試料とレンズの衝突を避ける必要がある。この事前確認は使用者にとって時間のかかることであり、注意深く作業しても、いつでも確実に光学系または試料の破壊を防止できるとはかぎらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願公開第1998/04446 A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2006 0092505 A1号明細書
【特許文献3】日本特許出願公開第7015721 A号明細書
【特許文献4】米国再発行特許第34622 E1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、顕微鏡を用いた作業中の作業工程を簡素化し、実質的に自動化できるようにする改良されたデジタル顕微鏡と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、特許請求項1の特徴を有するデジタル顕微鏡と、請求項7の特徴を有する方法によって解決される。
本発明によるデジタル顕微鏡はまず、よく知られているように、好ましくは旋回可能な顕微鏡本体に配置された光学系ユニットと、デジタル画像処理ユニット(光学エンジン)とを含む。顕微鏡イメージセンサが、検査のために試料台上で位置決めされた試料の画像を捕捉するために使用される。光学系ユニットの機能と画像の捕捉は当業者にとって既知のことであり、したがって、これらの詳細についてはこれ以上説明しない。
【0009】
本発明によれば、デジタル顕微鏡は少なくとも1つの第一の監視センサを含み、その監視データが、顕微鏡検査作業中の作業工程の各種の機能を制御するために使用される。さらに、デジタル顕微鏡は、監視センサのデータを自動評価するための監視ユニットを含む。作業工程の制御は基本的にソフトウェア機能を含む。
【0010】
第一の監視センサは、主として試料を観察するために、好ましくは試料の二次元概観画像を撮影するために使用される。この概観画像をもとにして、たとえば、試料が試料台上で正しく位置決めされているか否かを自動的にチェックすることが可能となる。試料の位置決めに関して、台の概観画像を参照することにより、所望の位置に到達するまでそれをXおよびY方向に移動させることができる。
【0011】
このことはたとえば、概観画像が少なくともある部分において、第一のイメージセンサの顕微鏡画像と一致する場合にあてはまる。既知の画像操作工程では、このような機能が提供される。
【0012】
さらに、概観画像は、顕微鏡作業中に試料に基づくナビゲートを行う際の根拠となり、これは、概観画像内の領域を「指し示し」、所望の倍率を選択することによって、試料台を自動的に移動でき、光学ユニットを選択結果に応じて自動的に調整できることを意味する。
【0013】
概観画像は、特に試料の位置合わせと位置決めのためのライブ画像として使用できる。スナップショット機能により、顕微鏡検査作業中の特定の状況のスナップショットを最善の解像度で撮影することが可能となる。これに加えて、ライブ画像の自動機能とスナップショットのより高い解像度を兼ね備える、ライブ画像とスナップショットの複合型も可能である。
【0014】
概観画像の捕捉と顕微鏡画像の捕捉は、同時にも、逐次的にも、交互にも実行可能である。
本発明の利点は特に、顕微鏡検査作業中の自動作業工程と顕微鏡の操作が、容易かつ有効な方法で大幅に簡素化できることである。
【0015】
本発明による方法は、光学系ユニットと、デジタル画像処理ユニットと、少なくとも1つの第一の監視センサとを含むデジタル顕微鏡の作業工程を最適化するために使用される。まず、試料台上に配置された試料の観察中、または試料台の観察中、または光学系ユニットの観察中、または使用者の観察中に、第一の監視センサの第一の観察データが取得される。
【0016】
これらの第一の観察データが自動的に分析、評価され、第一の観察データから制御データが生成される。
制御データは、各種の構成要素を制御するため、すなわちデジタル顕微鏡の作業工程を制御するために使用される。
【0017】
特に好ましい実施形態において、第一の観察データは二次元概観画像であり、二次元概観画像はすでに上で説明したように使用される。
本発明の好ましい実施形態において、デジタル顕微鏡は第二の監視センサおよび/または追加の監視センサを含む。ここで、個々の監視センサは、好ましい実施形態において、イメージセンサまたはカメラとして具体化され、デジタル顕微鏡内の異なる空間位置に配置される。ここで、有利には、監視ユニットの中の第一の監視センサと第二の監視センサのデータを処理して三次元概観情報にすることができる。
【0018】
あるいは、三次元画像は、異なる試料台の位置または異なる焦点距離での第一の監視センサのデータから、ソフトウェアを使って計算することもできる。
三次元概観情報は、Zトポロジの評価のために、すなわち試料の高さ情報のために使用できる。次にこの情報は、有利には、デジタル顕微鏡のオートフォーカス機能をサポートし、および/または大まかな三次元概観画像の構築に使用される。
【0019】
第三の監視センサが使用される場合、衝突制御はさらに単純な方法で実施できる。この衝突制御は、試料台の移動または光学系ユニットの移動時に有効とすることができ、衝突の恐れがあれば、それぞれの工程を中断できる。
【0020】
この第三の監視センサまたは追加の監視センサはまた、イメージセンサの代わりに、容量型センサ、抵抗型センサ、超音波センサ、赤外線センサ、またはその他適当なセンサとすることもできる。
【0021】
たとえば、接触センサは、試料台の移動中または光学系ユニットの移動中の試料台との接触を検出でき、必要に応じて、衝突の恐れがあれば対応する移動を停止できる。当業者であれば、実現可能な変更形態を着想し、それぞれの必要な構成とセンサの選択を相応に調整するであろう。
【0022】
当然のことながら、作業工程の簡素化のあらゆる可能性のために異なる監視センサを組み合わせることが想定され、これも本発明に含まれる。
第一の監視センサと、任意選択の追加の監視センサは別の設計として作業工程に組み込むことができる。ここで、いくつかのセンサを用いる場合、これらがすべて同じ構成と設計である必要はない。
【0023】
イメージセンサまたはカメラが監視センサとして使用される場合、これらは、
各々が「それ自体の」画像処理プロセッサを含み、
観察データ(画像情報)を、主要媒体プロセッサでさらに処理するために提供し、
観察データ(画像情報)を、デジタル顕微鏡のデジタルプログラマブルロジック(Main−FPGA)でさらに処理するために提供し、
観察データ(画像情報)を「それ自体の」FPGAで評価する。
【0024】
デジタル顕微鏡の他の有利な実施形態はさらに、補助照明装置を含む。
これは、たとえばLEDまたはOLEDによって連続照明光を生成する、別の照明装置とすることができる。
【0025】
しかしながら、有利には、画像撮影と同期して、大きな面積に対して省エネルギな照明を行うことのできるフラッシュライトを使用することも可能である。
補助照明装置のための別の代替形態または変形形態は、試料、用途、顕微鏡のコントラストまたはその他の特徴に適合される構造化照明、たとえばレーザアレイまたはLEDアレイ投射またはパターン投射である。これは、試料の3Dプロファイル情報の生成と特定の領域に関する距離測定に役立ち得る。
【0026】
同様に、測定上の異なる課題ごとに異なるシーケンスで照明することが可能であり、たとえば、移動時間の測定によって、試料に関する距離またはある領域の距離マップ(distance map)を非常に正確に測定できる。
【0027】
上記の選択肢と変形形態はすべて、求められる測定上の課題と顕微鏡の構成に適合することが可能である。
監視センサの機能は、デジタル顕微鏡の自動作業工程に効率的に組み込まれる。具体的な個々の構成によって、必要となるデジタル顕微鏡のハードウェアとソフトウェアにおける統合の程度は異なる。たとえば、概観画像または顕微鏡画像を生成するために試料を再位置決めすること、または逐次的に位置を変更することが必要である場合、試料台の移動をデジタル顕微鏡の制御装置に相応に組み込まなければならない。
【0028】
以下に、本発明によるデジタル顕微鏡を使って実行できる2つの実現可能な作業工程を例にとって説明する。
作業工程1:「開始と最小の視野の設定」
作業工程2:「同じ顕微鏡プレビューにおける別の顕微鏡視野の探索」
他の領域の画像を生成する他の作業工程は、基本ステップとして、
概観画像内の別の中心を選択するステップと、
試料の再位置決めを行うステップと、
画像撮影ステップと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】デジタル顕微鏡のいくつかの監視センサの好ましい配置の概略図を示す。
【
図2】異なる監視センサを有するデジタル顕微鏡の概略図を示す。
【
図3】デジタル顕微鏡における第一の監視センサの実現可能な位置付けの図を示す。
【
図4】デジタル顕微鏡における第一の監視センサと第二の監視センサおよび補助照明装置の実現可能な位置付けの図を示す。
【
図5】監視センサの実現可能な位置付けの他の概略図を示す。
【
図6】倒立デジタル顕微鏡の第一の監視センサの実現可能な位置付けの図を示す。
【
図7】デジタル顕微鏡における第一の監視センサの異なる配置での光路の概略図を示す。
【
図9】異なる被写界深度を有する異なる概観画像を示す。
【
図10】本発明によるデジタル顕微鏡の一例として示される作業工程を示す。
【
図11】三次元概観画像が第一の監視センサで生成される、デジタル顕微鏡の好ましい実施形態を示す。
【
図12】
図11に示される実施形態の三次元概観画像の例を示す。
【
図13】第一の監視センサのみを使用して三次元概観画像を生成する代替案の基本的な略図を示す。
【
図14】センサのフル解像度で捕捉可能な、異なるレンズで撮影された概観画像と顕微鏡写真の大きさの比率を示す。
【
図15】デジタル顕微鏡の特に好ましい実施形態の基本的な略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1において、デジタル顕微鏡の概略図が示されている。デジタル顕微鏡は、レンズ01と、高さ調節可能な光学系ユニット02と、好ましくは旋回可能な顕微鏡本体03と、試料台04とを含む。試料台04は、周知の方法で水平面内でおよび水平面に対して垂直に変位させることができる。
【0031】
デジタル顕微鏡は、本発明によれば、イメージセンサ06(好ましくは、カメラセンサ)として構成された第一の監視センサ(first monitoring sensor)を含む。第一の監視センサは光学系ユニット02に配置され、試料台04に向けられる。イメージセンサ06の観察データに基づき、概観画像が、光学系ユニット内に統合された監視ユニット(図示せず)で生成される。
【0032】
この実施形態では、第二の監視センサ(second monitoring sensor)は、レンズ01に配置された2つのイメージセンサ07で形成され、たとえば、第二の観察データとして、試料台04の位置のライブ・リファレンス(live reference)を提供することができる。この目的のために、試料08における特定の位置または、たとえば図示されていない照明スポットの位置のいずれかを観察することが可能である。あるいは、1つのみのセンサを使用することも、または3つ以上のセンサをレンズの円周に沿って分散させて配置することもできる。
【0033】
さらに別のイメージセンサ09が、試料台04の周囲の状況を観察するための第三の監視センサとして使用される。第三の観察データは、この場合、使用者が正確にその時点において試料台またはレンズの領域で片手または両手を動かしているかどうかを判断するために評価することができる。
【0034】
図2には、監視センサとして使用できるのがイメージセンサだけではないことが示されている。
図2は、上記の基本的構成要素を有するデジタル顕微鏡を概略図で示している。
ここでは、第一の監視センサ、第二の監視センサ、および第三の監視センサは、デジタル顕微鏡の中の異なる位置(本体03、光学系ユニット02)に概観カメラ(overview camera)12として取り付けられる。倒立顕微鏡の場合、概観カメラ13は当然、試料台04の下にも設置できる。さらに、試料台04上に監視センサを赤外線センサ14、容量型または抵抗型センサ16、17として設置でき、その監視データは、顕微鏡検査作業中の作業工程を監視するために監視ユニット内で、評価される。
【0035】
図3〜6に、デジタル顕微鏡内の少なくとも第一の監視センサの位置付けの変形形態が示されている。ここでは、各々の場合において、イメージセンサ06またはカメラセンサが示されているが、本発明をこのセンサの種類に限定することは意図されていない。これらの実施形態の中のイメージセンサ06は、各々の場合において、また別の光学構成要素群18を含む。
【0036】
ここで、
図3は、イメージセンサ06を光学系ユニット02の中央に位置付けた場合を示しており(図a)、これは横から顕微鏡本体03を見ている。図b)では、イメージセンサ06が物面19に対して斜めに向けられ、それによって、物面が常に鮮明に示されるようにすることに関して、「シャインフルーグ(Scheimpflug)」カメラを設置しなければならない。図c)は、物面19に垂直に向けられたイメージセンサ06を示している。補助照明ユニット21が、各々の場合において、顕微鏡本体03に設置される。
【0037】
図4の図a)では、2つのイメージセンサ06が顕微鏡本体03に相互からある距離だけ離して配置されていることがわかる。距離aは、好ましい実施形態では120mmとすることができる。ここでも、補助照明ユニット21が顕微鏡本体03に配置されている。図b)によれば、「シャインフルーグ」カメラが設置され、その一方で、図c)によるイメージセンサ06は、「通常の」概観(normal overview)を生成する。
【0038】
図5は、顕微鏡本体03におけるイメージセンサ06の配置を示しており、観察面22が物面19に対して垂直に向けられている。
図6には、透過光照明装置23を有する倒立顕微鏡におけるセンサの配置が示されている。この場合、光学構成要素群18を有するイメージセンサ06として構成された監視センサが試料台04に配置されている。
【0039】
図7は、デジタル顕微鏡の光学要素の各種の配置を概略図で示している。図a)には光学系の配置が示されており、この場合、レンズ位置POS1とは異なる位置POS2で概観画像を生成するために、試料08を変位させなければならない。図b)には「シャインフルーグ」カメラの配置が示され、その一方で、図c)は別の光学構成要素群が必要とならない構成を示している。光学系ユニットに画像偏向装置を組み込むことができ、これは板ガラス24とまた別の偏向ミラー25を含む。この場合、試料により反射された光は、板ガラス24を介して画像撮影ユニット(図示せず)に、そして画像偏向装置を介してイメージセンサ06に誘導される。
【0040】
図8は、第一のイメージセンサとしてのイメージセンサの、150×150mmの視野内の概観画像の例を示す。
図9は、被写界深度(DoF:depth of field)が異なり、異なる高さで合焦した概観画像の例を示す。図a)では、試料面19は焦点外であり、物体26の表面は焦点が合っており、図b)では、試料面19は焦点が合っている。
【0041】
図10には、実現可能な作業工程の図が示されている。マクロ概観画像27から始まり、概観画像27を80倍に拡大する(画像28)。80倍の倍率では、1μmの解像度の合成顕微鏡画像からなるミクロ画像29が得られる。ミクロ画像29の中の領域31とその倍率を選択することによって、使用者は500倍の顕微鏡画像32を得る。
【0042】
図11は、イメージセンサ06として具体化された第一の監視センサのみと、対応する光学要素群(図示せず)で、試料08の三次元概観画像を生成する基礎的な手順の基本的な図を示す。この例では、センサ06と試料台04の間の距離zが181mmに設定されている。
【0043】
たとえば150×150mmの視野Aの第一の画像が、試料台04の第一の位置POS1で記録される。試料台04の表面上には試料33が設置されている。試料台04の第一の位置POS1は、中心位置(x=0、図示せず)から最大−25mm(x)だけ(by up to -25mm (x))移動される。
【0044】
次に、第二の画像の撮影は、大きさが202×150mmの視野Bの設定で、中心位置から最大+25mm(x)だけ(by up to +25mm (x))移動された試料台04の第二の位置POS2で行われる。次に、写真測量法(photogrammetry)とステレオ測量法(stereogrammetry)を利用したソフトウェアによって、試料33の三次元特性の復元(reconstruction)が行われる。この目的のために使用されるアルゴリズムは、当業者の間で知られている。
【0045】
図12には、ステレオ測量法により生成された三次元概観画像の一例が示されている。図a)はリモコン34の二次元画像を示しており、領域36が枠で囲まれて示されている(ROI−関心領域)。ステレオ測量アルゴリズムによって、リモコン34の高度マップ(elevation map)が作成された(図b))。図c)は、高度マップの拡大図を示している。トポロジがある程度不確実であっても、深さ1mmの詳細部(ROI)の特定が可能である。
【0046】
図13は、イメージセンサ06として構成された1つの第一の監視センサで三次元概観画像を生成する別の可能性を示している。焦点を変えることにより(焦点距離z)、異なる断面(resolution plane)37の図画が生成され、これらの画像から、周知の方法を用いて三次元図画が生成される。
【0047】
図14は、概観画像27に関連して異なる倍率(5倍、1.6倍、0.5倍)と異なる対応する開口数(NA=0.03、0.1、0.3)を有する別々のレンズ38のフル解像度で表示可能な顕微鏡画像を示す。
【0048】
ここで、それぞれの左側の顕微鏡画像39は最小ズームを示しているが、それぞれの右側の顕微鏡画像40は、第一のイメージセンサのフル解像度で表示可能な表面を示しており、これはそれぞれ、試料台の表面積のうち、概観センサで表示可能な概観画像の範囲が130×100mmの場合である。
【0049】
図15は、カメラ41として設計される第一の監視センサを有するデジタル顕微鏡画像の特に好ましい実施配置を概略図で示している。カメラ41と補助照明装置は、ここでは、光学系ユニット02の底面のレンズ01の隣に配置されている。顕微鏡本体03は、周知の方法で旋回軸42の周囲で旋回可能である。試料台08は、この旋回軸42(試料台08の旋回点)と心合わせの状態で整列させる(aligned with this swivel axis 42)ことができる。
【0050】
表1に記されているこの例は、作業工程内の、デジタル顕微鏡のスイッチ投入から画像撮影までの、実現可能な一連のステップを示す。使用者のすべての動作とデジタル顕微鏡の自動動作が表示されている。
【符号の説明】
【0052】
01 レンズ
02 光学ユニット
03 本体
04 試料台
05 −
06 イメージセンサ
07 イメージセンサ
08 試料
09 イメージセンサ
10 −
11 −
12 概観カメラ
13 概観カメラ
14 赤外線センサ
15 −
16 容量型センサ
17 抵抗型センサ
18 光学構成要素群
19 試料面
20 −
21 補助照明装置
22 観察面
23 透過光照明装置
24 板ガラス
25 偏向ミラー
26 物体
27 マクロ概観画像
28 画像
29 ミクロ画像
30 −
31 領域
32 顕微鏡画像
33 試料
34 リモコン
35 −
36 領域(ROI)
37 断面
38 レンズ
39 顕微鏡画像
40 顕微鏡画像
41 カメラ
42 旋回軸