(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に実施形態を掲げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0023】
[実施形態1]
(ダイボンドフィルム3)
図1に示すように、ダイボンドフィルム3の形態は、フィルム状である。ダイボンドフィルム3は、透明性が高いため、超音波映像装置を使用せずにボイドを観察できる。したがって、半導体装置を犠牲にせずに観察可能で、半導体装置の歩留まりを向上できる。また、半導体装置の不良を低減できる。
【0024】
ダイボンドフィルム3のヘイズは、25%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。25%以下であるので、透明性が高く、超音波映像装置を使用せずにボイドを観察できる。ダイボンドフィルム3のヘイズの下限は特に限定されず、例えば0%以上である。ダイボンドフィルム3のヘイズの下限は、例えば0.5%以上でもよい。
なお、ヘイズは、実施例に記載の方法で測定できる。
【0025】
ヘイズは、無機充填材によりコントロールできる。例えば、無機充填材を配合しないこと、平均粒径の小さい無機充填材を使用することにより、ヘイズを小さくできる。
【0026】
ダイボンドフィルム3において、波長600nmの光線の透過率が85%を越えることが好ましく、90%以上がより好ましい。85%を越えると、目視でボイドを観察できる。なお、観察には光学顕微鏡などを使用できる。
【0027】
波長600nmの光線の透過率は、フィラーの粒径によりコントロールできる。例えば、フィラーの粒径を小さくすることにより、85%を越える透過率が得られる。
【0028】
ダイボンドフィルム3において、波長400nmの光線の透過率が85%を越えることが好ましい。85%を越えると、ボイド検出装置、具体的には、光学顕微鏡などでボイドを観察できる。
【0029】
波長400nmの光線の透過率は、フィラーの粒径によりコントロールできる。例えば、フィラーの粒径を小さくすることにより、85%を越える透過率が得られる。
【0030】
ダイボンドフィルム3において、波長400nm〜600nmの全領域における光線の透過率が85%を越えることが好ましい。85%を越えると、目視やボイド検出装置でボイドを観察できる。
【0031】
光線の透過率は実施例に記載の方法で測定できる。
【0032】
ダイボンドフィルム3において、200%に引き伸ばした状態における波長600nmの光線の透過率が、引き伸ばしていない状態における波長600nmの光線の透過率に比べて5%以上低いことが好ましい。ダイボンドフィルム3を引き伸ばすことでダイボンドフィルム3を視認し易くなるため、ダイボンドフィルム3の有無を容易に確認できる。ダイシング・ダイボンドフィルムにおいては、ダイシング・ダイボンドフィルムを引き伸ばすことでダイボンドフィルム3の有無を容易に確認できる。なお、透過率が低下するのは、引き伸ばしによりダイボンドフィルム3に含まれるポリマーに方向性が生じるためと推察される。
【0033】
ダイボンドフィルム3において、200%に引き伸ばした状態における波長600nmの光線の透過率は、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。70%以下であると、ダイボンドフィルム3の有無を容易に確認できる。200%に引き伸ばした状態における波長600nmの光線の透過率の下限は特に限定されないが、例えば、5%である。
【0034】
ダイボンドフィルム3において、5%に引き伸ばした状態における波長600nmの光線の透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。80%以上であると、エキスパンド後も透明性を維持できる。
【0035】
ダイボンドフィルム3は熱硬化性を持つことが好ましい。
【0036】
ダイボンドフィルム3は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBTなどの飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0037】
アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基などが挙げられる。
【0038】
また、重合体(アクリル共重合体)を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸などの様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸などの様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどの様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などの様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0039】
アクリル樹脂のなかでも、重量平均分子量が10万以上のものが好ましく、30万〜300万のものがより好ましく、50万〜200万のものがさらに好ましい。上記数値範囲内であると、接着性及び耐熱性に優れるからである。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。
【0040】
ダイボンドフィルム3中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
【0041】
ダイボンドフィルム3は、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより、熱安定性を向上できる。
【0042】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物などの含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0043】
エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型などのエポキシ樹脂が用いられる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性などに優れるからである。
【0044】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンなどが挙げられる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0045】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、例えば、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0046】
ダイボンドフィルム3中の熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
【0047】
ダイボンドフィルム3は、無機充填材を含んでもよい。透明性を高めるために、平均粒径が小さい無機充填材を使用することが好ましい。
【0048】
無機充填材の平均粒径は、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下である。150nm以下であると、ダイボンドフィルム3の透明性を高められる。一方、無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは25nm以上である。10nm以上であると、フィラーの凝集による透過率の低下を防ぐことができる。
なお、平均粒径は、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0049】
無機充填材としては、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカなど)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素などが挙げられる。無機充填材としては、導電性を持つものも好適に使用できる。導電性を持つ無機充填材としては、例えば、はんだ、ニッケル、銅、銀、金などが挙げられる。なかでも、線膨張係数を良好に低減できるという理由から、シリカ、アルミナが好ましく、シリカがより好ましい。
【0050】
シリカとしては、シリカ粉末が好ましく、溶融シリカ粉末がより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末が好ましい。
【0051】
ダイボンドフィルム3中の無機充填材の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。一方、無機充填材の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
【0052】
ダイボンドフィルム3は、前記成分以外にも、フィルム製造に一般に使用される配合剤、例えば、架橋剤などを適宜含有してよい。
【0053】
ダイボンドフィルム3は、通常の方法で製造できる。例えば、前記各成分を含有する接着剤組成物溶液を作製し、接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を乾燥させることで、ダイボンドフィルム3を製造できる。
【0054】
接着剤組成物溶液に用いる溶媒としては特に限定されないが、前記各成分を均一に溶解、混練又は分散できる有機溶媒が好ましい。例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレンなどが挙げられる。塗布方法は特に限定されない。溶剤塗工の方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、リバースコーター、コンマコーター、パイプドクターコーター、スクリーン印刷などが挙げられる。なかでも、塗布厚みの均一性が高いという点から、ダイコーターが好ましい。
【0055】
基材セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙などが使用可能である。接着剤組成物溶液の塗布方法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、塗布膜の乾燥条件は特に限定されず、例えば、乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間で行うことができる。
【0056】
ダイボンドフィルム3の製造方法としては、例えば、前記各成分をミキサーにて混合し、得られた混合物をプレス成形してダイボンドフィルム3を製造する方法なども好適である。ミキサーとしてはプラネタリーミキサーなどが挙げられる。
【0057】
ダイボンドフィルム3の厚みは特に限定されないが、5μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。5μm未満であると、反りが生じた半導体ウエハや半導体チップと接着しない箇所が発生し、接着面積が不安定となる場合がある。また、ダイボンドフィルム3の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。100μmを超えると、ダイアタッチの荷重によってダイボンドフィルム3が過度にはみ出し、パッドを汚染する場合がある。
【0058】
ダイボンドフィルム3は、半導体装置の製造に使用できる。具体的には、被着体と半導体チップとを接着するために使用できる。被着体としては、リードフレーム、インターポーザ、半導体チップなどが挙げられる。
【0059】
ダイボンドフィルム3は、ダイシング・ダイボンドフィルムの形態で使用することが好ましい。この形態で使用すると、ダイシング・ダイボンドフィルムに貼り付けられた状態の半導体ウエハをハンドリングすることが可能で、半導体ウエハ単体でハンドリングする機会を減らすことができる。
【0060】
(ダイシング・ダイボンドフィルム10)
図2に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム10は、ダイシングテープ1、及びダイシングテープ1上に配置されたダイボンドフィルム3を備える。
【0061】
ダイシングテープ1は、基材11及び基材11上に配置された粘着剤層12を備える。ダイボンドフィルム3は粘着剤層12上に配置されている。
【0062】
基材11において、波長400nm〜600nmの全領域における光線の透過率は低いことが好ましい。ダイシング・ダイボンドフィルム10と半導体ウエハ4を貼り合わせる際に、基材11のエッジなどを基準として位置合わせできるためである。波長400nm〜600nmの全領域における光線の透過率は、好ましくは0%〜20%であり、より好ましくは0%〜10%である。20%以下であると、基材11のエッジなどを基準として位置合わせできる。
【0063】
基材11は、粘着剤層12と接する第1主面11a及び第1主面11aに対向した第2主面11bで両面を定義される。第2主面11bの表面粗さRaは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。0.5μm以上であると、光を散乱して不透明化するためセンサーによる位置認識が可能になる。一方、第2主面11bの表面粗さRaの上限は特に限定されない。第2主面11bの表面粗さRaの上限は、例えば5μmである。
【0064】
基材11としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙などが挙げられる。
【0065】
基材11は、位置認識を容易にするために染料や顔料を含んでいてもよい。
【0066】
基材11はまた、紫外線透過性を持つことが好ましい。
【0067】
基材11の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0068】
基材11の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5μm〜200μm程度である。
【0069】
粘着剤層12の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの一般的な感圧性接着剤を用いることができる。感圧性接着剤としては、半導体ウエハやガラスなどの汚染をきらう電子部品の超純水やアルコールなどの有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0070】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0071】
アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0072】
更に、アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性などの点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0073】
アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止などの点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。
【0074】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーなどの数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤などの添加剤を用いてもよい。
【0075】
粘着剤層12は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線などの放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。
【0076】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合などの放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0077】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマーなどのベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0078】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分などを含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分などが粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0079】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0080】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0081】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などが挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
【0082】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分などは、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0083】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線などにより硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマーなどのベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0084】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシランなどの光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物などの光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤などが挙げられる。
【0085】
前記放射線硬化型の粘着剤層12中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層12に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物であり、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。放射線照射により着色する化合物の使用割合は、適宜設定できる。
【0086】
粘着剤層12の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止やダイボンドフィルム3の固定保持の両立性などの点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0087】
ダイシング・ダイボンドフィルム10のダイボンドフィルム3は、通常、セパレーターにより保護されている。
【0088】
ダイシング・ダイボンドフィルム10は、通常の方法で製造できる。例えば、ダイシングテープ1の粘着剤層12とダイボンドフィルム3とを貼り合わせることで、ダイシング・ダイボンドフィルム10を製造できる。
【0089】
(積層フィルム2)
図3〜4に示すように、積層フィルム2は、セパレーター9と、セパレーター9上に配置された複数のダイシング・ダイボンドフィルム10とを備える。ダイシング・ダイボンドフィルム10は、セパレーター9上に一定の間隔を置いて複数配置されている。
【0090】
セパレーター9は、実用に供するまでダイボンドフィルム3を保護する保護材として機能できる。セパレーター9はダイボンドフィルム3上に半導体ウエハを貼着する際に剥がされる。セパレーター9としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙なども使用可能である。
【0091】
[半導体装置の製造方法]
半導体装置の製造方法について説明する。
【0092】
図5に示すように、半導体ウエハ4にダイシング・ダイボンドフィルム10を圧着する。半導体ウエハ4としては、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、化合物半導体ウエハなどが挙げられる。化合物半導体ウエハとしては、窒化ガリウムウエハなどが挙げられる。
【0093】
圧着方法としては、例えば、圧着ロールなどの押圧手段により押圧する方法などが挙げられる。
【0094】
圧着温度(貼り付け温度)は、35℃以上が好ましく、37℃以上がより好ましい。圧着温度の上限は低い方が好ましく、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下である。低温で圧着することにより、半導体ウエハ4への熱影響を防止することが可能で、半導体ウエハ4の反りを抑制できる。
【0095】
また、圧力は、1×10
5Pa〜1×10
7Paであることが好ましく、2×10
5Pa〜8×10
6Paであることがより好ましい。
【0096】
次に、
図6に示すように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。つまり、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を切り出す。ダイシングは、常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシング・ダイボンドフィルム10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式などを採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、ダイシング・ダイボンドフィルム10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。
【0097】
ダイシング・ダイボンドフィルム10に接着固定された半導体チップ5を剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシング・ダイボンドフィルム10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法などが挙げられる。
【0098】
ここでピックアップは、粘着剤層12が紫外線硬化型である場合、該粘着剤層12に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層12のダイボンドフィルム3に対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップ5を損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間などの条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。
【0099】
図7に示すように、ピックアップした半導体チップ5を、ダイボンドフィルム3を介して被着体6に接着固定して、半導体チップ付き被着体61を得る。半導体チップ付き被着体61は、被着体6、被着体6上に配置されたダイボンドフィルム3、及びダイボンドフィルム3上に配置された半導体チップ5を備える。
【0100】
ダイアタッチ温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。また、ダイアタッチ温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。150℃以下とすることにより、反りの発生を防止できる。
【0101】
続いて、半導体チップ付き被着体61を加圧下で加熱することによりダイボンドフィルム3を熱硬化させて、半導体チップ5と被着体6とを固着させる。加圧下でダイボンドフィルム3を熱硬化させることにより、ダイボンドフィルム3と被着体6との間に存在するボイドを消滅させることが可能で、ダイボンドフィルム3が被着体6と接触する面積を確保できる。
【0102】
加圧下で加熱する方法としては、例えば、不活性ガスが充填されたチャンバー内に配置された半導体チップ付き被着体61を加熱する方法などが挙げられる。
加圧雰囲気の圧力は、好ましくは0.5kg/cm
2(4.9×10
−2MPa)以上、より好ましくは1kg/cm
2(9.8×10
−2MPa)以上、さらに好ましくは5kg/cm
2(4.9×10
−1MPa)以上である。0.5kg/cm
2以上であると、ダイボンドフィルム3と被着体6との間に存在するボイドを容易に消滅させることができる。加圧雰囲気の圧力は、好ましくは20kg/cm
2(1.96MPa)以下、より好ましくは18kg/cm
2(1.77MPa)以下、さらに好ましくは15kg/cm
2(1.47MPa)以下である。20kg/cm
2以下であると、過度な加圧によるダイボンドフィルム3のはみ出しを抑制できる。
【0103】
加圧下で加熱する際の加熱温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは170℃以上である。80℃以上であると、ダイボンドフィルム3を適度な硬さとすることが可能で、加圧キュアによりボイドを効果的に消失させることができる。加熱温度は、好ましくは260℃以下、より好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。260℃以下であると、硬化前のダイボンドフィルム3の分解を防ぐことができる。
【0104】
加熱時間は、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.2時間以上、さらに好ましくは0.5時間以上である。0.1時間以上であると、加圧の効果を充分に得ることができる。加熱時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。
【0105】
図8に示すように、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッドとをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線などが用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは120℃以上であり、該温度は、好ましくは250℃以下、より好ましくは175℃以下である。また、その加熱時間は数秒〜数分間(例えば、1秒〜1分間)行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0106】
続いて、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する封止工程を行う。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上であり、該加熱温度は、好ましくは185℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0107】
必要に応じて、封止物を更に加熱をしてもよい(後硬化工程)。これにより、封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化できる。加熱温度は適宜設定できる。
【0108】
以上のとおり、ダイボンドフィルム3を介して半導体チップ5を被着体6に固定する工程と、半導体チップ5を被着体6に固定する工程の後に、ダイボンドフィルム3を硬化させる工程とを含む方法により、半導体装置を好適に製造できる。
【0109】
(変形例1)
図9に示すように、変形例1では、ダイボンドフィルム3は、半導体ウエハ4を貼りつけるための貼り付け部31及び貼り付け部31の周辺に配置された非貼り付け部32を備える。非貼り付け部32には、マーク301が設けられている。非貼り付け部32にマーク301が設けられているので、ダイボンドフィルム3とダイシングテープ1を貼り合わせる際に、容易に位置合わせできる。また、ダイボンドフィルム3の有無を容易に判別できる。また、品質検査をする際に、ダイボンドフィルム3の形状の異常を検出できることがある。
【0110】
マーク301は、光学的に認識できる。例えば、マーク301において、波長400nm〜600nmの全領域における光線の透過率は、好ましくは0%〜20%であり、より好ましくは0%〜10%である。20%以下であると、センサーによって容易に位置認識できる。
【0111】
非貼り付け部32にマーク301を設ける方法は特に限定されず、例えば、インクジェットでマーク301を設ける方法、ダイボンドフィルム3の塗工時にパターンを形成しながら塗工してマーク301を設ける方法、フィルム又はテープを貼り付けることによりマーク301を設ける方法などがある。
【0112】
(変形例2)
図10に示すように、変形例2では、セパレーター9は、ダイボンドフィルム3と接した積層部91、積層部91の外周に配置された外周部92、及び外周部92の周辺に配置された周辺部93を備える。積層部91はダイボンドフィルム3と接する。一方、外周部92及び周辺部93は、ダイボンドフィルム3と接していない。
【0113】
外周部92の全体に、切り込み901が設けられている。外周部92に切り込み901が設けられているので、ダイボンドフィルム3とダイシングテープ1を貼り合わせる際に、容易に位置合わせできる。
【0114】
容易に位置認識できるという理由から、切り込み901の深さは、好ましくは5μm〜45μmである。
【0115】
(変形例3)
図11に示すように、変形例3では、外周部92の一部に切り込み901が設けられている。
【0116】
(変形例4)
図12に示すように、変形例4では、積層部91の縁全体に切り込み901が設けられている。積層部91の縁に切り込み901が設けられているので、ダイボンドフィルム3とダイシングテープ1を貼り合わせる際に、容易に位置合わせできる。なお、積層部91の縁の一部に切り込み901が設けられていてもよい。
【0117】
(その他)
上述の各変形例は適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0119】
実施例で使用した成分について説明する。
アクリルゴム:ナガセケムテックス(株)製のテイサンレジンSG−P3(エポキシ基を含むアクリル酸エステル共重合体、Mw:85万、ガラス転移温度:12℃)
シリカフィラー1:アドマテックス社製のYA050C(シリカ、平均粒径:50nm)
シリカフィラー2:アドマテックス社製のSO−E1(シリカ、平均粒径:250nm)
シリカフィラー3:アドマテックス社製のSO−E2(シリカ、平均粒径:500nm)
【0120】
[ダイシング・ダイボンドフィルムの作製]
表1に記載の配合比に従い、アクリルゴム及びシリカフィラーをメチルエチルケトン(MEK)に溶解、分散させ塗工に適した粘度の接着剤組成物溶液を得た。その後、接着剤組成物溶液をシリコーン離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下では、離型処理フィルムともいう)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させて、ダイボンドフィルム(厚さ25μm)を得た。
【0121】
ダイボンドフィルムを、ダイシングテープ(日東電工(株)製のP2130G)の粘着剤層上に25℃で貼り付けて、ダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0122】
[評価]
ダイシング・ダイボンディングフィルムを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
(ヘイズ)
ダイシング・ダイボンディングフィルムからダイシングテープを取り除いて、ダイボンドフィルムを得た。
ダイボンドフィルムを濁度計(日本電色工業製のNDH2000)の試料室にセットして、光源D65を用いて、ヘイズを測定した。
【0124】
(ダイボンドフィルムの光線透過率)
ダイシング・ダイボンディングフィルムからダイシングテープを取り除いて、ダイボンドフィルムを得た。
ダイボンドフィルムをフィルムホルダー(FLH−741、株式会社島津製作所製)に固定し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製のV−670DS)を用いて、測定速度2000nm/min、スポット径2mm(直径)、測定範囲350〜800nmで平行透過率を測定した。
【0125】
(200%延伸されたダイボンドフィルムの光線透過率)
ダイシング・ダイボンディングフィルムからダイシングテープを取り除いて、ダイボンドフィルムを得た。
ダイボンドフィルムから縦2cm×横4cm×厚さ25μmの試験用フィルムを切り出した。試験用フィルムに2つのポリイミドテープを1cmの間隔を置いて貼り付けた。これにより、試験用フィルム及び試験用フィルム上に1cmの間隔を置いて配置された2つのポリイミドテープを備える試験片を得た。試験片の試験用フィルムを、ポリイミドテープの間隔が2cmになるまで延伸した。延伸した状態の試験片を、直径2mmの測定マスクにテープで固定した。次いで、試験片をフィルムホルダー(FLH−741、株式会社島津製作所製)にセットし、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V−670DS)を用いて、測定速度2000nm/min、スポット径2mm(直径)、測定範囲350〜800nmで、試験用フィルムの延伸された部分の平行透過率を測定した。
【0126】
(ダイシングテープの光線透過率)
ダイシング・ダイボンディングフィルムからダイボンドフィルムを取り除いて、ダイシングテープを得た。
ダイシングテープをフィルムホルダー(FLH−741、株式会社島津製作所製)に固定し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V−670DS)を用いて、測定速度2000nm/min、スポット径2mm(直径)、測定範囲350〜800nmで平行透過率を測定した。なお、ダイシングテープの基材の第2主面に向かって、光を照射した。
【0127】
(表面粗さRa)
ダイシングテープの基材の第2主面について、表面粗さRaを測定した。
表面粗さは、JIS B 0601に基づき、Veeco社製の非接触三次元粗さ測定装置(NT3300)を用いて測定した。測定条件は、50倍とし、測定値は、測定データにMedian filterをかけて求めた。測定は、測定箇所を変更しながら5回行い、その平均値を表面粗さとした。
【0128】
(プロセス性)
研磨により厚み50μmに調整されたシリコンウエハをダイシング・ダイボンディングフィルムに60℃で0.1MPaの圧力で貼り合せた。ダイシング装置(DFD6361、株式会社ディスコ製)を用いてシリコンウエハ及びダイボンドフィルムを5mm×5mmのサイズに切断して、ダイボンド用チップを得た。ダイボンド用チップは、チップ及びチップ上に配置されたダイボンド剤を備える。ダイボンド装置(SPA−300、株式会社新川製)を用いて、面積5mm×5mmの底面を備え底面の中央に直径1mmの吸着孔が設けられたラバーコレットを用いて、120℃、0.1秒、0.1kgの条件で、ダイボンド用チップをフラットな銅リードフレーム上にボンディングした。これにより、チップ付きリードフレームを得た。超音波映像装置(株式会社日立パワーソリューションズ製のHybrid SAT)を用いて、チップ付きリードフレームについてボイドの有無を確認した。1mm以上のボイドが観察されたチップ付きリードフレームを選択し、チップの側面から光学顕微鏡(キーエンス社製のVHX−2000)で、ボイドが観察できるかどうかを確認した。ボイドが確認できた場合は○と判定し、確認できなかった場合は×と判定した。
【0129】
【表1】