(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開口端部を両端に有するチューブ本体内に弁ポートを有する弁座を固定し、該弁ポートの開口面積を制御する先細部を有するニードル部材を、前記弁座の弁ポートに対し近接または離隔可能に配置し、
前記ニードル部材を前記弁座の弁ポートに対し近接する方向に付勢する付勢部材を、前記ニードル部材と前記チューブ本体の一方の開口端部との間に第1の長さで配置し、貫通孔を有し付勢部材の一端を支持する付勢部材支持部を前記チューブ本体内に固定し、薄肉化されるとともに前記チューブ本体の中心軸線に沿って一方向に延伸され得るばね長さ調整部を前記チューブ本体の外周部の塑性変形によって形成することにより、前記ニードル部材における目標弁開き始め圧力に応じた前記第1の長さとは異なる第2の長さに、前記付勢部材の長さを調整することを含む絞り装置の製造方法。
前記ばね長さ調整部が、前記ニードル部材と前記付勢部材支持部との間における前記付勢部材の長さが前記第1の長さよりも大なる前記第2の長さとなるように、該チューブ本体の中心軸線に沿って一方向に延伸加工されることにより形成されることを特徴とする請求項2記載の絞り装置の製造方法。
前記ばね長さ調整部が、前記ニードル部材と前記付勢部材支持部との間における前記付勢部材の長さが前記第1の長さよりも小なる前記第2の長さとなるように、該チューブ本体の中心軸線に沿って他方向に圧縮加工されることにより形成されることを特徴とする請求項2記載の絞り装置の製造方法。
前記ばね長さ調整部は、複数の環状の溝が前記チューブ本体の中心軸線に沿って間隔をもって、個別に、または、連続して形成されることを特徴とする請求項2記載の絞り装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、本発明に係る絞り装置の第1実施例の構成を示す。
【0016】
絞り装置は、例えば、
図6に概略的に示されるように、冷凍サイクルシステムの配管における凝縮器6の出口と蒸発器2の入口との間に配置されている。絞り装置は、後述するチューブ本体10の一端10E1で、一次側配管Du1に接合されており、冷媒が排出されるチューブ本体10の他端10E2で二次側配管Du2に接合されている。一次側配管Du1は、凝縮器6の出口と絞り装置とを接続し、二次側配管Du2は、蒸発器2の入口と絞り装置とを接続するものとされる。蒸発器2の出口と凝縮器6の入口との間には、
図6に示されるように、蒸発器2の出口に接合される配管Du3と、凝縮器6の入口に接合される配管Du4とにより、圧縮機4が接続されている。圧縮機4は、図示が省略される制御部により駆動制御される。これにより、冷凍サイクルシステムにおける冷媒が、
図6に示される矢印に沿って循環されることとなる。
【0017】
絞り装置は、上述の冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体10と、チューブ本体10の内周部に固定され冷媒の流量を調整する流量調整部を構成する弁座22、および、ニードル部材20と、ニードル部材20を弁座22に対し近接する方向に付勢するコイルスプリング16と、コイルスプリング16の一方の端部を支持するばね受け部12と、を主な要素として含んで構成されている。
【0018】
所定の長さおよび直径を有するチューブ本体10は、例えば、銅製パイプ、または、アルミニウム製パイプで作られ、冷媒が導入される一端10E1で、凝縮器に接続される一次側配管Du1に接合されており、冷媒が排出される他端10E2で蒸発器に接続される二次側配管Du2に接合されている。
【0019】
チューブ本体10の内周部における一端10E1から所定距離、離隔した中間部には、弁座22の外周部が固定されている。弁座22は、かしめ加工によるチューブ本体10の窪み10CA2により形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定されている。チューブ本体10の外周部における窪み10CA2に隣接して弁座22に向き合う部分には、ばね長さ調整部10AJが形成されている。ばね長さ調整部10AJは、後述するように、かしめ治具30(
図5(C)参照)により、チューブ本体10に対しその中心軸線方向に延伸加工が施されることにより、形成される。
【0020】
円筒状の弁座22は、後述するニードル部材20における先細部20Pが挿入される弁ポート22aを内部中央部に有している。弁ポート22aは、所定の直径φDを有し弁座22の中心軸線に沿って一端10E1に向けて延びている。
【0021】
向かい合う平坦面を横断面に有する円柱状のニードル部材20は、例えば、真鍮、または、ステンレス鋼で作られ、弁座22に向かい合う端部に先細部20Pと、コイルスプリング16の他端に向かい合う端部に、突起状のばね受け部20Dとを有している。ニードル部材20における先細部20Pとばねガイド部20Dとの間の部分の外周部の平坦面とチューブ本体10の内周部との間には、
図3に示されるように、流路10aが形成されている。
【0022】
円錐台状の先細部20Pは、テーパ角度を有している。また、先細部20Pの端面は、直径φDよりも小なる直径φaを有している。ニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に当接し弁ポート22aを略閉状態とした後、ニードル部材20の先細部20Pの外周部が、差圧(一端10E1側の冷媒の入口圧力と他端10E2側の冷媒の出口圧力との差)により、弁ポート22aの開口端部の周縁に対し離隔し始める離隔開始タイミングは、コイルスプリング16の付勢力に基づいて設定される。
【0023】
ニードル部材20の先細部20Pの外周部が、弁ポート22aの開口端部の周縁に対し離隔される場合、ニードル部材20の先細部20Pと弁ポート22aの開口端部との間には、絞り部が形成される。絞り部とは、弁ポート22aの縁から先細部20Pの母線への垂線と、先細部20Pの母線との交点が、弁ポート22aの縁22asから最も近い箇所(最狭部)をいう。この垂線が描く円錐面の面積が、絞り部の開口面積となる。
【0024】
ニードル部材20のばねガイド部20Dには、コイルスプリング16の他方の端部が係合されている。また、付勢部材としてのコイルスプリング16の一方の端部には、付勢部材支持部としてのばね受け部12の先細部12bが係合されている。
【0025】
ばね受け部12は、内側中央部に貫通孔12aを有している。ばね受け部12は、かしめ加工によるチューブ本体10の窪み10CA1により形成される突起が食い込むことにより固定されている。コイルスプリング16のばね定数は、所定の値に設定されている。
【0026】
コイルスプリング16の付勢力の調整、即ち、各冷媒に応じたコイルスプリング16の基準高さ(セット長)の調整は、以下のような手順で行われる。
【0027】
基準高さとは、各冷媒に応じたニードル部材20の先細部20Pの上述の所定の離隔タイミングとなるように、設定されたコイルスプリング16の高さをいう。
【0028】
先ず、
図4(A)に示されるように、所定の全長を有するチューブ本体18の内周部18aにおける所定の第1の位置に弁座22が固定される。弁座22は、かしめ加工によるチューブ本体18の窪み18CA2により形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定されている。次に、弁座22が固定されたチューブ本体18内に、順次、ニードル部材20、コイルスプリング16が、チューブ本体18の内周部18aに挿入された後、ばね受け部12がチューブ本体18の内周部18aにおける所定の位置に固定される。これにより、
図1(A)および
図4(B)に示されるように、ばね受け部12は、かしめ加工によるチューブ本体10´の窪み10´CA1により形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定される。その際、弁座22、ニードル部材20、ばね受け部12、および、コイルスプリング16の寸法の製造誤差および、ばね定数のばらつき等を考慮し、コイルスプリング16の初期セット長L´(第1の長さ)は、ニードル部材20の先細部20Pが弁ポート22aの開口端部の周縁に対し離隔し始める離隔開始タイミング(弁開き始め圧力IP)が、必ず、目標の離隔開始タイミング(目標弁開き始め圧力SP)に対して遅くなる(大きくなる)ように設定される。このようにコイルスプリング16が初期セット長L´に設定されることにより、ニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に、目標弁開き始め圧力SP以上の所定の圧力で当接した状態に維持される。
【0029】
続いて、ニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に当接した状態で、チューブ本体10´が、
図5(A)に示されるように、性能測定/延伸装置に配される。
【0030】
その性能測定/延伸装置は、上述のチューブ本体10´の一端10´E1に接続され図示が省略されるエアポンプからの空気をチューブ本体10´内に供給する導入通路32と、チューブ本体10´の他端10´E2に接続されチューブ本体10´からの空気を排出する排出通路36と、排出通路36に接続されるフロート式流量計38と、を含んで構成されている。導入通路32は、エアポンプの吐出側に接続されている。導入通路32には、導入通路32内の圧力を検出する圧力計34が設けられている。性能測定/延伸装置におけるかしめ治具30は、
図5(C)に示されるように、上述のチューブ本体10´におけるばね長さ調整部10AJに対応する位置に位置決めされている。その際、チューブ本体10´は、図示が省略される支持台により、その全体が移動しないように支持されている。
【0031】
かしめ治具30は、例えば、チューブ本体10´の外周部に円周方向に沿って均等間隔で3箇所に、自転可能に配されるかしめローラ30A、30B、30Cを含んで構成されている。
【0032】
かしめローラ30A、30B、30Cは、所定の期間、その外周面が矢印の示す方向に自転しながらチューブ本体10´の外周部における上述のチューブ本体10のばね長さ調整部10AJに対応する部分に、所定の圧力で押し付けられるように構成されている。なお、上述の所定の期間、および、押し付け力は、目標弁開き始め圧力に応じた空気流量が流量計38により検出されるまでの期間に基づいて設定されている。
【0033】
かしめローラ30A、30B、30Cにより、チューブ本体10´の外周部におけるばね長さ調整部10AJに対応する部分は、薄肉化され、弁座22を伴ってチューブ本体10´の中心軸線に沿って一端10´E1方向に延伸されることとなる。その結果、チューブ本体10´の全長が、チューブ本体10´のばね長さ調整部10AJに対応する部分の変位量に応じてチューブ本体18の全長よりも若干長くなることとなる。
【0034】
続いて、かしめローラ30A、30B、30Cが作動状態において、導入通路32を介して上述の目標弁開き始め圧力で設定された空気が、チューブ本体10´内に供給される。かしめローラ30A、30B、30Cが、上述したように、作動しないとき、コイルスプリング16の初期セット長L´が、コイルスプリング16の付勢力が予め目標弁開き始め圧力よりも大きくなるように設定されているのでニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に当接した状態が維持される。コイルスプリング16の初期セット長L´の場合、仮に、弁開き始め圧力IP以上の空気圧力が作用したとき、絞り部の開口面積は、圧力上昇につれて増大することとなり、他端10E2から流出する(二次側配管Du2に流入する)流量が増大する。
【0035】
なお、
図7は、縦軸にチューブ本体10´の他端10´E2から排出されフロート式流量計に導入される空気の流量をとり、横軸にチューブ本体10´の一端10´E1に導入される空気の圧力をとり、コイルスプリング16が初期セット長L´に設定されるときの流量特性を示す特性線Laと、コイルスプリング16がセット長Lに設定されるときの流量特性を示す特性線Lbと、をあらわしている。
【0036】
一方、かしめローラ30A、30B、30Cが所定期間、作動後、チューブ本体10´の全長が、弁座22を伴って大きくなるのでコイルスプリング16の長さが、
図1(B)に示されるように、初期セット長L´(第1の長さ)よりも長いセット長L(第2の長さ)となる。
【0037】
コイルスプリング16のセット長L(第2の長さ)は、上述の目標弁開き始め圧力に応じた付勢力を作用するように設定されている。従って、コイルスプリング16の付勢力が、減少し目標弁開き始め圧力に応じた付勢力に一致するのでニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に対し離隔される。これにより、空気が、
図5(B)に示されるように、弁座22の弁ポート22aおよびばね受け部12の貫通孔12a、他端10E2を通じて排出された後、フロート式流量計38に導入される。フロート式流量計38により、目標弁開き始め圧力SPに応じた空気流量Qaが検出されたとき、かしめローラ30A、30B、30Cの回転が停止される。その際、弁座22が、チューブ本体10の第2の位置に固定されることとなる。従って、流量特性は、
図7における特性線Laから特性線Lbに移行する。
【0038】
そして、ばね長さ調整部10AJが形成されたチューブ本体10が、かしめ治具30から取り外される。従って、コイルスプリング16のばね長さの調整が完了する。
【0039】
なお、上述の例においては、目標弁開き始め圧力に応じた空気流量の検出に基づいてかしめ治具30が制御されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、ニードル部材20の先細部20Pの弁座22の弁ポート22aの開口端部の周縁から離隔するタイミングを位置センサ等により検出することにより、かしめ治具30が制御されてもよい。
【0040】
従って、上述の第1実施例において、コイルスプリング16のばね長さの調整を行う調整ねじ等が不要とされるので各冷媒に応じた弁開き始め圧力を調整することができ、しかも、絞り装置の構造を簡略化し、製造コストを低減できる。
【0041】
図8は、本発明に係る絞り装置の第2実施例の構成を示す。
【0042】
図1(A)、(B)に示される第1実施例においては、ばね長さ調整部10AJが、平坦な外周面を有するかしめローラ30A、30B、30Cより形成されているが、その代わりに、第2実施例は、ばね長さ調整部50AJが、複数の微小な突起部を外周面に有する3個のかしめローラより形成されるものとされる。なお、
図8において、
図1(A)、(B)において示される例において同一とされる構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略される。
【0043】
絞り装置は、上述の冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体50と、チューブ本体50の内周部に固定され冷媒の流量を調整する流量調整部を構成する弁座22、および、ニードル部材20と、ニードル部材20を弁座22に対し近接する方向に付勢するコイルスプリング16と、コイルスプリング16の一方の端部を支持するばね受け部12と、を主な要素として含んで構成されている。
【0044】
所定の長さおよび直径を有するチューブ本体50は、例えば、銅製パイプ、または、アルミニウム製パイプで作られ、冷媒が導入される一端50E1で、凝縮器に接続される一次側配管Du1に接合されており、冷媒が排出される他端50E2で蒸発器に接続される二次側配管Du2に接合されている。
【0045】
チューブ本体50の内周部における一端50E1から所定距離、離隔した中間部には、弁座22の外周部が固定されている。弁座22は、かしめ加工によるチューブ本体50の窪み50CA2により形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定されている。チューブ本体50の外周部における窪み50CA2に隣接して弁座22に向き合う部分には、ばね長さ調整部50AJが形成されている。後述のようにコイルスプリング16のセット長Lが調整された後には、ばね長さ調整部50AJには、円周方向に沿った環状の溝50dが、複数本、中心軸線に沿って所定の間隔で個別に形成されている。なお、溝50dは、斯かる例に限られることなく、例えば、連続的に螺旋状に形成されてもよい。
【0046】
ばね長さ調整部50AJは、かしめ治具(不図示)により、チューブ本体50に対しその中心軸線方向に延伸加工が施されることにより形成される。
【0047】
コイルスプリング16の付勢力の調整、即ち、各冷媒に応じたコイルスプリング16の基準高さ(セット長)の調整は、上述の例と同様に、先ず、所定の全長を有するチューブ本体の内周部における所定の第1の位置に弁座22が固定される。次に、弁座22が固定されたチューブ本体内に、順次、ニードル部材20、コイルスプリング16が、チューブ本体18の内周部18aに挿入された後、ばね受け部12がチューブ本体の内周部における所定の位置に固定される。その際、弁座22、ニードル部材20、ばね受け部12、および、コイルスプリング16の寸法の製造誤差および、ばね定数のばらつき等を考慮し、コイルスプリング16の初期セット長L´は、ニードル部材20の先細部20Pが弁ポート22aの開口端部の周縁に対し離隔し始める離隔開始タイミング(弁開き始め圧力IP)が、必ず、目標の離隔開始タイミング(目標弁開き始め圧力SP)に対して遅くなる(大きくなる)ように設定される。このようにコイルスプリング16が初期セット長L´に設定されることにより、ニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に、目標弁開き始め圧力SP以上の所定の圧力で当接した状態に維持される。
【0048】
続いて、ニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に当接した状態で、チューブ本体が、性能測定/延伸装置(不図示)に配される。なお、性能測定/延伸装置は、
図5(A)に示される例におけるかしめ治具のかしめローラを除き、同様な構成を備えるものとされる。
【0049】
各かしめローラが作動状態とされる場合、チューブ本体の外周部におけるばね長さ調整部50AJに対応する部分は、薄肉化され、弁座22を伴ってチューブ本体の中心軸線に沿って一端方向に延伸されることとなる。その結果、チューブ本体の全長が、チューブ本体のばね長さ調整部50AJに対応する部分の変位量に応じて初期のチューブ本体の全長よりも若干長くなることとなる。
【0050】
続いて、各かしめローラが作動状態において、導入通路32を介して上述の目標弁開き始め圧力で設定された空気が、チューブ本体内に供給される。かしめローラが、上述したように、作動しないとき、コイルスプリング16の初期セット長L´が、コイルスプリング16の付勢力が予め目標弁開き始め圧力よりも大きくなるように設定されているのでニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に当接した状態が維持される。
【0051】
一方、かしめローラが所定期間、作動後、チューブ本体の全長が、弁座22を伴って大きくなるのでコイルスプリング16の長さが、初期セット長L´よりも長いセット長Lとなる。
図8は、コイルスプリング16の長さが、セット長Lとなった状態を示す。
【0052】
コイルスプリング16のセット長Lは、上述の目標弁開き始め圧力に応じた付勢力を作用するように設定されている。従って、コイルスプリング16の付勢力が、減少し目標弁開き始め圧力に応じた付勢力に一致するのでニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート22aの開口端部の周縁に対し離隔される。これにより、空気が、
図5(B)に示されるように、弁座22の弁ポート22aおよびばね受け部12の貫通孔12a、他端50E2を通じて排出された後、フロート式流量計38に導入される。フロート式流量計38により、目標弁開き始め圧力SPに応じた空気流量Qaが検出されたとき、かしめローラの回転が停止される。その際、弁座22が、チューブ本体10の第2の位置に固定されることとなる。従って、絞り部の開口面積が圧力上昇につれて増大することとなる。
【0053】
そして、ばね長さ調整部50AJが形成されたチューブ本体50が、かしめ治具から取り外される。従って、コイルスプリング16のばね長さの調整が完了する。
【0054】
従って、上述の第2実施例においても、コイルスプリング16のばね長さの調整を行う調整ねじ等が不要とされるので各冷媒に応じた弁開き始め圧力を調整することができ、しかも、絞り装置の構造を簡略化し、製造コストを低減できる。
【0055】
図9は、本発明に係る絞り装置の第3実施例の構成を示す。
【0056】
図1(A)、(B)に示される第1実施例においては、ばね長さ調整部10AJが、平坦な外周面を有するかしめローラ30A、30B、30Cより形成されているが、その代わりに、予め、例えば、バルジ成形されたパイプにおけるばね長さ調整部40AJが、固定成形型62および可動成形型64からなる成形型60により形成されるものとされる。
【0057】
なお、
図9および
図10において、
図1(A)、(B)、および、
図5(A)、(B)に示される例における同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0058】
絞り装置は、例えば、
図6に示される例と同様な冷凍サイクルシステムの配管における凝縮器と蒸発器との間に配置されている。
【0059】
絞り装置は、上述の冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体40と、チューブ本体40の内周部に固定され冷媒の流量を調整する流量調整部を構成する弁座24、および、ニードル部材20と、ニードル部材20を弁座24に対し近接する方向に付勢するコイルスプリング16と、コイルスプリング16の一方の端部を支持するばね受け部12と、を主な要素として含んで構成されている。
【0060】
所定の長さおよび直径を有するチューブ本体40は、例えば、銅製パイプ、または、アルミニウム製パイプで作られ、冷媒が導入される一端40E1で、凝縮器に接続される一次側配管Du1に接合されており、冷媒が排出される他端40E2で蒸発器に接続される二次側配管Du2に接合されている。
【0061】
チューブ本体40の内周部における一端40E1から所定距離、離隔した中間部には、弁座24の外周部が固定されている。弁座24は、かしめ加工によるチューブ本体40の窪み40CA2により形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定されている。
【0062】
円筒状の弁座24は、後述するニードル部材20における先細部20Pが挿入される弁ポート24aを内部中央部に有している。弁ポート24aは、ニードル部材20の先細部20Pの先端よりも大なる所定の直径を有し弁座24の中心軸線に沿って一端40E1に向けて延びている小径部と、小径部に連なり漏斗状の拡張部とから構成されている。
【0063】
ニードル部材20の先細部20Pの外周部が、弁ポート24aの開口端部の周縁に対し離隔される場合、ニードル部材20の先細部20Pと弁ポート24aの開口端部との間には、絞り部が形成される。絞り部とは、弁ポート24aの縁から先細部20Pの母線への垂線と、先細部20Pの母線との交点が、弁ポート24aの縁24asから最も近い箇所(最狭部)をいう。この垂線が描く円錐面の面積が、絞り部の開口面積となる。
【0064】
ばね受け部12は、内側中央部に貫通孔12aを有している。ばね受け部12は、かしめ加工によるチューブ本体40の窪み40CA1により形成される突起が食い込むことにより固定されている。コイルスプリング16のばね定数は、所定の値に設定されている。
【0065】
チューブ本体40の外周部における窪み40CA2とチューブ本体40の窪み40CA1との間には、予め、例えば、バルジ成形によりチューブ本体40の半径方向に環状に張り出したばね長さ調整部40AJが形成されている。ばね長さ調整部40AJは、後述するように、固定成形型62および可動成形型64からなる成形型60(
図10参照)により、チューブ本体に対しその中心軸線方向に圧縮加工が施されることにより、形成される。
【0066】
コイルスプリング16の付勢力の調整、即ち、各冷媒に応じたコイルスプリング16の基準高さ(セット長)の調整は、以下のような手順で行われる。
【0067】
基準高さとは、各冷媒に応じたニードル部材20の先細部20Pの上述の所定の離隔タイミングとなるように、設定されたコイルスプリング16の高さをいう。
【0068】
先ず、
図10に示されるように、予め、例えば、バルジ成形により所定位置に形成されたばね長さ調整部40AJを有するチューブ本体の内周部における所定の第1の位置に弁座24が固定される。弁座24は、かしめ加工によるチューブ本体の窪みにより形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定されている。次に、弁座24が固定されたチューブ本体内に、順次、ニードル部材20、コイルスプリング16が、チューブ本体の内周部に挿入された後、ばね受け部12がチューブ本体の内周部における所定の位置に固定される。これにより、ばね受け部12は、かしめ加工によるチューブ本体の窪みにより形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定される。その際、弁座24、ニードル部材20、ばね受け部12、および、コイルスプリング16の寸法の製造誤差および、ばね定数のばらつき等を考慮し、コイルスプリング16の初期セット長L´は、
図11に示されるように、ニードル部材20の先細部20Pが弁ポート24aの開口端部の周縁に対し離隔し始める離隔開始タイミング(弁開き始め圧力IP)が、必ず、目標の離隔開始タイミング(目標弁開き始め圧力SP)に対して早くなる(小さくなる)ように設定される。このようにコイルスプリング16が初期セット長L´に設定されることにより、ニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート24aの開口端部の周縁に、目標弁開き始め圧力SP未満の所定の圧力で当接した状態に維持される。
【0069】
続いて、ニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート24aの開口端部の周縁に当接した状態で、チューブ本体が、
図10に示されるように、性能測定/圧縮装置に配される。
【0070】
その性能測定/圧縮装置は、上述のチューブ本体の一端に接続され図示が省略されるエアポンプからの空気をチューブ本体内に供給する導入通路32と、チューブ本体の他端に接続されチューブ本体からの空気を排出する排出通路36と、排出通路36に接続されるフロート式流量計38と、を含んで構成されている。性能測定/圧縮装置における成形型60の固定成形型62および可動成形型64は、
図10に示されるように、上述のチューブ本体におけるばね長さ調整部40AJを挟んだ位置に位置決めされている。その際、チューブ本体は、図示が省略される支持台により、その全体が移動しないように支持されている。
【0071】
可動成形型64は、ばね長さ調整部40AJを圧縮するように固定成形型62に対し近接し、またはばね長さ調整部40AJを解放するように離隔可能に駆動される。
なお、上述の圧縮力は、目標弁開き始め圧力に応じた空気流量が流量計38により検出されるまでの期間に基づいて設定されている。
【0072】
固定成形型62および可動成形型64により、チューブ本体の外周部におけるばね長さ調整部40AJに対応する部分は、圧縮され、弁座24を伴ってチューブ本体の中心軸線に沿って他端の方向に縮小されることとなる。その結果、チューブ本体の全長が、ばね長さ調整部40AJに対応する部分の変位量に応じて初期のチューブ本体の全長よりも若干短くなることとなる。
【0073】
続いて、成形型60が作動状態において、導入通路32を介して上述の目標弁開き始め圧力で設定された空気が、チューブ本体内に供給される。成形型60が、上述したように、作動しないとき、コイルスプリング16の初期セット長L´が、コイルスプリング16の付勢力が予め目標弁開き始め圧力よりも小さくなるように設定されているのでニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート24aの開口端部の周縁に離隔した状態が維持され、空気がチューブ本体から流れ出ることとなる。コイルスプリング16の初期セット長L´の場合、仮に、弁開き始め圧力IP以上の空気圧力が作用したとき、絞り部の開口面積は、圧力上昇につれて増大することとなり、他端40E2から流出する(二次側配管Du2に流入する)流量が増大する。
【0074】
なお、
図11は、縦軸にチューブ本体の他端から排出されフロート式流量計に導入される空気の流量をとり、横軸にチューブ本体の一端に導入される空気の圧力をとり、コイルスプリング16が初期セット長L´に設定されるときの流量特性を示す特性線Lcと、コイルスプリング16がセット長Lに設定されるときの流量特性を示す特性線Lbと、をあらわしている。
【0075】
一方、成形型60が所定期間、作動後、チューブ本体の全長が、弁座24を伴って小さくなるのでコイルスプリング16の長さが、
図1(B)に示されるように、初期セット長L´よりも短いセット長Lとなる。
【0076】
コイルスプリング16のセット長Lは、上述の目標弁開き始め圧力に応じた付勢力を作用するように設定されている。従って、コイルスプリング16の付勢力が、増大し目標弁開き始め圧力に応じた付勢力に一致するのでニードル部材20の先細部20Pの外周部が弁ポート24aの開口端部の周縁に対し近接される。これにより、空気が、弁座24の弁ポート24aおよびばね受け部12の貫通孔12a、他端40E2を通じて排出された後、フロート式流量計38に導入される。フロート式流量計38により、目標弁開き始め圧力SPに応じた空気流量Qbが検出されたとき、成形型60の可動型64が停止される。その際、弁座24が、チューブ本体40の第2の位置に固定されることとなる。従って、流量特性は、
図11における特性線Lcから特性線Lbに移行する。
【0077】
そして、ばね長さ調整部40AJが形成されたチューブ本体40が、成形型60から取り外される。従って、コイルスプリング16のばね長さの調整が完了する。
【0078】
なお、上述の例においては、目標弁開き始め圧力に応じた空気流量の検出に基づいて成形型60が制御されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、ニードル部材20の先細部20Pの弁座24の弁ポート24aの開口端部の周縁から離隔するタイミングを位置センサ等により検出することにより、成形型60が制御されてもよい。
【0079】
従って、上述の第3実施例においても、コイルスプリング16のばね長さの調整を行う調整ねじ等が不要とされるので各冷媒に応じた弁開き始め圧力を調整することができ、しかも、絞り装置の構造を簡略化し、製造コストを低減できる。