特許第6374219号(P6374219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱アルミニウム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6374219-熱交換器用フィン材及びその製造方法 図000007
  • 特許6374219-熱交換器用フィン材及びその製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374219
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】熱交換器用フィン材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20180806BHJP
   F28F 13/18 20060101ALI20180806BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180806BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F28F1/32 H
   F28F13/18 B
   F25B39/02 V
   C09D171/02
   C09D7/40
   C09D5/00 Z
   C09D5/16
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-107078(P2014-107078)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-222155(P2015-222155A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】碓井 直人
(72)【発明者】
【氏名】久米 淑夫
(72)【発明者】
【氏名】柏木 真登
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−321159(JP,A)
【文献】 特開昭59−229197(JP,A)
【文献】 特開昭60−050397(JP,A)
【文献】 特開昭63−262238(JP,A)
【文献】 特開昭63−262239(JP,A)
【文献】 特開2012−078081(JP,A)
【文献】 特開2012−076456(JP,A)
【文献】 特開2013−210144(JP,A)
【文献】 特開2008−241237(JP,A)
【文献】 特開2009−235338(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034514(WO,A1)
【文献】 特開2012−117702(JP,A)
【文献】 特開2011−235457(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146077(WO,A1)
【文献】 特開2014−105879(JP,A)
【文献】 特許第5312699(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0074110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F28F 13/18
F25B 39/02
C09D 1/00−10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面に、0.4g/m〜1.2g/mの被着量で設けられたポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物を含有する親水性被膜と、該親水性被膜の上に0.1g/m〜0.5g/mの被着量で設けられたアルミナ粒子、シリカ粒子及びポリオキシエチレン系潤滑剤を含有する水系塗料を塗布乾燥してなる防汚性被膜とが形成されてなり、
前記アルミナ粒子及びシリカ粒子は、Alが1重量部に対してSiOが0.25重量部〜1重量部となるように含有されていることを特徴とする熱交換器用フィン材。
【請求項2】
表面の動摩擦係数が0.2以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用フィン材。
【請求項3】
前記親水性被膜中にフッ素樹脂を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器用フィン材。
【請求項4】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面に、0.4g/m〜1.2g/mの被着量でポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物を含有する親水性被膜を形成し、該親水性被膜の上に0.1g/m〜0.5g/mの被着量でアルミナ粒子、シリカ粒子及びポリオキシエチレン系潤滑剤を含有する水系塗料を塗布乾燥して防汚性被膜を形成する方法であり、前記水系塗料における前記アルミナ粒子及びシリカ粒子は、Alが1重量部に対してSiOが0.25重量部〜1重量部となるように含有することを特徴とする熱交換器用フィン材の製造方法。
【請求項5】
前記基材の表面に形成した前記親水性被膜を洗浄した後に前記防汚性被膜を形成することを特徴とする請求項記載の熱交換器用フィン材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性、防汚性、金型摩耗性に優れる塗膜を形成した熱交換器用フィン材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器用フィン材には、軽量性、加工性、熱伝導性の面で優れるアルミニウムやアルミニウム合金が使用されている。
また、エアコンなどの熱交換器ではエバポレーター側として使用される場合、空気中の水蒸気を凝縮し、その結露水がフィンに水滴として付着すると通風抵抗が増加することによって圧力損失が大きくなり、熱交換器の能力低下が生じる。このため、フィンに凝縮した水を容易に流下させるために、表面に親水性塗膜を形成している。
【0003】
特許文献1には、Zr化合物を用いて金属架橋させたポリアクリル酸等の有機樹脂に、シリカ粒子、ポリエチレングリコールを含有した親水性塗膜をアルミニウム合金基材の表面に形成することが開示されている。
特許文献2には、アルミニウム板に、樹脂とジルコニウムとを含有する下地皮膜層を形成し、その上に、樹脂、コロイダルシリカ、ジルコニウム化合物を含有する親水性被膜層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96416号公報
【特許文献2】特許第4667978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィン材を熱交換器用フィンに加工するためにプレス成形されるが、特許文献記載の親水性塗膜ではモース硬度が高いシリカ粒子が表面層に存在するため、プレス成形時に金型摩耗を生じ易い。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、親水性、防汚性だけでなく、金型摩耗性にも優れる塗膜を形成した熱交換器用フィン材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、親水性、防汚性、金型摩耗性に優れる熱交換器用フィン材について鋭意研究した結果、以下の知見を得た。
ポリアクリル酸を含むアクリル樹脂、ポリビニルアルコール等とともにポリエチレングリコールやポリエチレンオキサイド等のポリオキシエチレン鎖を含む高分子化合物は、親水性を有する塗装材として用いることができる。このポリオキシエチレン鎖を含む高分子化合物を添加することによって、塗膜の硬化反応を促進して密着性を向上する作用があり、更に焼き付け後の被膜に潤滑性を与え、プレス加工時の金型への焼き付きの防止、金型摩耗の抑制等の効果がある。
一方で、ポリオキシエチレン鎖を含む高分子化合物は焼き付け後に被膜の最上層にあると、静電気が発生し易く、親水性、疎水性の汚れ(ほこり等)が付着し易い。この汚れを付着しにくくするためには、親水性被膜上にアルミナ粒子、シリカ粒子を含む水系塗料を塗布、乾燥することで、帯電防止効果を発揮して親水性汚れ、疎水性等の汚れが付着しにくくなる。
【0008】
アルミナ粒子、シリカ粒子を単独で塗布すると固着しにくいため、接着のためにバインダー樹脂を添加するが、ポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物を含有する親水性塗膜上に塗布した場合、親水性塗膜表面の凹凸面にアルミナ粒子、シリカ粒子が入り込み、バインダー樹脂がなくても親水性塗膜に密着し、結露水で洗われてもアルミナ粒子、シリカ粒子は残存する。
この場合、モース硬度が高いシリカ粒子が被膜最上層に存在すると、プレス加工において金型摩耗性が悪化するおそれがある。そこで、親水性被膜上にシリカ粒子よりモース硬度が低いアルミナ粒子を混合させ、更に潤滑性向上のためにポリオキシエチレン系潤滑剤(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)を混合させることにより、潤滑成分が塗膜の最上層に存在し、プレス加工時の金型摩耗性を低減することができる。
また、シリカ粒子単独では親水性が向上するものの、防汚性が不足し、アルミナ粒子単独では防汚性が向上するものの、プレス油塗布後の親水性や耐汚染性が劣化する。したがって、アルミナ粒子とシリカ粒子を混合することにより、親水性と防汚性とを両立することが可能となる。
【0009】
なお、塗膜最上層に潤滑成分であるポリオキシエチレン系潤滑剤を含有させた場合、帯電防止効果が低減するが、エアコン運転によりフィン表面に結露水が付着することによって、潤滑成分が洗い流されて、帯電防止効果を発揮することができる。
以上の知見の下、本発明を以下の解決手段とした。
【0010】
すなわち、本発明の熱交換器用フィン材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面に、0.4g/m〜1.2g/mの被着量で設けられたポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物を含有する親水性被膜と、該親水性被膜の上に0.1g/m〜0.5g/mの被着量で設けられたアルミナ粒子、シリカ粒子及びポリオキシエチレン系潤滑剤を含有する水系塗料を塗布乾燥してなる防汚性被膜とが形成されてなり、前記アルミナ粒子及びシリカ粒子は、Alが1重量部に対してSiOが0.25重量部〜1重量部となるように含有されていることを特徴とする。
【0011】
リカ粒子よりアルミナ粒子の方がモース硬度が低いので、アルミナ粒子の混合比率をシリカ粒子と同等以上とすることにより、金型摩耗を効果的に低減することができる。
【0012】
本発明の熱交換器用フィン材において、表面の動摩擦係数が0.2以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の熱交換器用フィン材において、前記親水性被膜中にフッ素樹脂を含有しているとよい。
親水性被膜中にフッ素樹脂を含有することにより、更に帯電防止効果を発揮して汚れを付着しにくくすることができる。
【0014】
なお、熱交換器に組み立てられた後のフィンにおいては、表面のポリオキシエチレン系潤滑剤は結露水等によって流されてしまうが、アルミナ粒子及びシリカ粒子が混合して付着しているので、防汚性及び親水性を発揮することができる。
【0015】
本発明の熱交換器用フィン材の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面に、0.4g/m〜1.2g/mの被着量でポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物を含有する親水性被膜を形成し、該親水性被膜の上に0.1g/m〜0.5g/mの被着量でアルミナ粒子、シリカ粒子及びポリオキシエチレン系潤
滑剤を含有する水系塗料を塗布乾燥して防汚性被膜を形成する方法であり、前記水系塗料における前記アルミナ粒子及びシリカ粒子は、Alが1重量部に対してSiOが0.25重量部〜1重量部となるように含有することを特徴とする。
【0016】
本発明の熱交換器用フィン材の製造方法において、前記基材の表面に形成した前記親水性被膜を洗浄した後に前記防汚性被膜を形成するとよい。
親水性被膜を洗浄することによって、被膜の凹凸面が大きくなり、アルミナ粒子、シリカ粒子の密着性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、親水性、防汚性だけでなく、金型摩耗性にも優れる塗膜を形成した熱交換器用フィン材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の熱交換器用フィン材の一実施形態における使用前の状態を模式的に示す断面図である。
図2図1の熱交換器用フィン材を熱交換器に組み付けて使用された状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。
熱交換器用フィン材は、図1に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材1と、この基材1の表面に形成された化成被膜2と、この化成被膜2の上に形成された親水性被膜3と、この親水性被膜3の上に形成された防汚性被膜4とを備える。
基材1としては、例えばJIS規格の合金番号で1100、1200、1050、3003等が用いられる。この基材1の表面には、化成被膜2として、クロメート処理された薄いクロメート被膜が形成されている。
【0020】
親水性被膜3は、ポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物を含有する。ポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドなどから選ぶことができる。
また、この親水性被膜3中に、フッ素樹脂5を添加してもよい。フッ素樹脂5としては、PTFEディスパージョン、FEPディスパージョンなどを用いることができる。添加量としては、0.1質量%〜5質量%が好ましい。
この親水性被膜3は、基材1の化成被膜2の上に0.4g/m〜1.2g/mの被着量で設けられる。被着量が0.4g/m未満であると、親水性が不足するとともに、耐汚染性も好ましくない。被着量が1.2g/mを超えると、コスト増を招くだけでなく、基材への密着性が損なわれる。
【0021】
防汚性被膜4は、アルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bからなる微粒子及びポリオキシエチレン系潤滑剤を含有する水系塗料を塗布乾燥して形成されたものである。
アルミナ粒子は、平均粒子径が10nm〜100nmの微粒子であり、その水系分散物であるアルミナゾルとして塗料に添加される。シリカ粒子は、平均粒子径が5nm〜80nmの微粒子であり、その水系分散物であるコロイダルシリカとして塗料に添加される。
これらアルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bの微粒子は、その両方が混在していることが重要であり、これらの混合比は、Alが1重量部に対してSiOが0.25重量部〜1重量部となるように設定される。この場合、モース硬度はシリカ粒子6bが6であるのに対して、アルミナ粒子6aは、それより低く、3.5〜4とされる。このアルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bの微粒子は、防汚性塗料中に固形分として0.5質量%〜5質量%含有するとよい。
【0022】
ポリオキシエチレン系潤滑剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルデシル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の中から選ぶことができる。
【0023】
そして、このような組成からなる防汚性被膜4は、基材1の親水性被膜3の上に0.1g/m〜0.5g/mの被着量で設けられる。その被着量が0.1g/m未満では防汚性が不足し、0.5g/mを超えるとコスト増となるだけでなく、プレス成形時の金型摩耗が大きくなる。
また、この防汚性被膜4表面の動摩擦係数は0.2以下とされる。
【0024】
このように構成される熱交換器用フィン材は、基材1の表面に、リン酸クロメート処理を施して下地膜として化成被膜(クロメート被膜)2を形成した後に、親水性被膜3を形成し、その上に防汚性被膜4を形成することにより製造される。
この場合、親水性被膜3を形成した後、防汚性被膜4を形成する前に、親水性被膜3の表面を水で洗浄する。これにより、親水性被膜3の表面の凹凸が大きくなり、後述するようにアルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bの微粒子の密着性が向上する。
【0025】
このようにして製造される熱交換器用フィン材は、プレス成形により、曲げ、穴明け等の加工がなされ、熱交換器用フィンとして成形された後、熱交換器に組み込まれる。この成形時において、フィン材の表面の防汚性被膜4には、ポリオキシエチレン系潤滑剤が添加されて、動摩擦係数が0.2以下と小さいので、円滑にプレス加工され、フィンにクラック等が発生せず、また金型摩耗も低減することができる。
この場合、防汚性被膜4中に存在するアルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bからなる微粒子は硬質粒子であり、金型を摩耗させるおそれがあるが、シリカ粒子よりもモース硬度の小さいアルミナ粒子が半分以上の量で混在しているので、シリカ粒子単独の場合に比べて金型摩耗が抑制され、かつ、ポリオキシエチレン系潤滑剤の存在により、金型摩耗を低減することができる。
【0026】
そして、このフィン材が熱交換器として組み込まれて使用されると、最初の熱交換器の運転時にフィン上に結露が生じた際に、ポリオキシエチレン系潤滑剤は水溶性であるので、結露した水によって流される。ここで、防汚性被膜4の下に存在している親水性被膜3の表面が露出してしまうと、ポリオキシエチレン鎖を主成分とする高分子化合物により静電気が発生し易く、親水性、疎水性の汚れが付着し易くなるが、防汚性被膜4に含有されていたアルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bの微粒子は、その下層の親水性被膜3の表面が凹凸面であることから、図2に示すように、この凹凸面によって流されずに保持される。前述したように、この親水性被膜3の表面は、製造時の水洗浄によって凹凸が大きくなっているため、アルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bの微粒子が凹凸内に入り込んで残存する。
【0027】
このため、親水性被膜3の表面にアルミナ粒子6a及びシリカ粒子6bの微粒子が密着してなる防汚性被膜11が存在し、フィンとして引き続き、親水性と防汚性を発揮することができる。この場合、シリカ粒子6bとアルミナ粒子6aとを混在させているので、シリカ粒子6bによる親水性と、アルミナ粒子6aによる防汚性との両方の機能を効果的に発揮させることができる。
また、親水性被膜3にフッ素樹脂5が添加される場合は、更に帯電防止効果を発揮して汚れがより付着しにくくなる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を説明する。
化成処理としてリン酸クロメート処理を施したアルミニウム合金板の表面に、表1に示した組成の親水性被膜用塗料をバーコーターで塗布し、オーブンにて220℃(設定温度)×30秒で焼き付けした。その後、親水性被膜の表面を60℃の温水中に10秒間浸漬することによって洗浄し、洗浄後の親水性被膜の上に、表1に示す防汚性被膜用塗料をバーコーターで塗布して、オーブンにて120℃(設定温度)×30秒で焼き付けた。併せて、親水性被膜形成後に水で洗浄せずに、そのまま防汚性被膜を形成したものも作製した。
表1中、親水性被膜の樹脂1、樹脂2は以下の通りとした。
樹脂1:ポリアクリル酸系コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドを混合して得たもの
樹脂2:アクリル酸、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、アクリルアミド共重合体、カルボキシメチルセルロースNa、ポリエチレングリコールを混合して得たもの
この場合、この親水性被膜中にフッ素樹脂を添加したものと添加しなかったものとを作製した。
また、防汚性被膜は、原料1、2、3を表1に示すように混合した塗料により形成され、原料1はアルミナゾル、原料2はコロイダルシリカ、原料3はポリオキシエチレンアルキルエーテルとした。原料1と原料2はその混合比率(重量部)を示している。
そして、表1に示す19種類の組み合わせからなる塗料を表2及び表3の塗布量で塗布して焼き付けた。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
得られた試料につき、被膜の密着性、親水性として各種の接触角、動摩擦係数、防汚性として粉体付着率、金型摩耗性を評価した。
密着性は、1ポンドのハンマーに貼り付けたキムタオル(登録商標)を試料の被膜表面に載置して、往復10回擦った後の被膜の密着状態を観察した。剥離が全く認められず、密着良好と判断されたものを◎、一部剥離のものを○、完全剥離が認められたものを×とした。
親水性については、プレス油乾燥後接触角、乾湿サイクル後接触角、汚染試験後接触角を評価した。
プレス油乾燥後接触角は、試料の被膜表面にプレス油(揮発性油)を塗布し、150℃×5分乾燥後に被膜表面の接触角を測定した。接触角が20°以下のものを○、20°を超えていたものを×とした。
乾湿サイクル後接触角は、試料に対して、流量3L/minの常温流水に8時間浸漬、80℃×16時間乾燥を交互に14サイクル行った後の被膜表面の接触角を測定した。接触角が40°以下のものを○、40°を超えていたものを×とした。
汚染試験後接触角は、汚染物質としてバルミチン酸6gと試料とをビーカーの中に入れて、100℃で6日間加熱暴露後の被膜表面の接触角を測定した。接触角が60°以下のものを○、60°を超えていたものを×とした。
動摩擦係数は、バウデン式摩擦試験機を用い、プレス油を塗布しないで、試料の被膜表面に鋼球サイズφ9/32インチの接触子を200gの荷重で押し付け、試料の表面上を長さ10mmにわたって1往復摺動させたときの摩擦力を測定して、動摩擦係数を求めた。動摩擦係数が0.2以下のものを○、0.2を超えていたものを×とした。
粉体付着率は、100mm×100mmの試料を流量3L/minの常温流水に1時間浸漬後、JIS Z8901で定められる試験用粉体11種、12種のそれぞれを試料の被膜表面に付着させて、画像解析にて付着面積率を測定した。付着面積率が0.1%以下のものを◎、0.2%以下のものを○、0.2%を超えていたものを×とした。
金型摩耗性は、プレス加工で100万回試料を切断し、金型(スリット刃)の摩耗状態を観察した。スリット刃硬度はHRC37〜41のものを使用し、定量評価としてレーザー顕微鏡にて金型(スリット刃)の刃先の摩耗面積を測定し、2次元断面での摩耗面積が100μm以下のものを◎、100μmを超え300μm以下のものを○、300μmを超えたものを×とした。
これらの評価結果を表4及び表5に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
これらの結果から明らかなように、本発明の実施例品は、密着性、親水性、防汚性に優れ、プレス加工時の金型摩耗も生じにくいものであることがわかる。
【符号の説明】
【0037】
1 基材
2 化成被膜
3 親水性被膜
4 防汚性被膜
5 フッ素樹脂
6a アルミナ粒子
6b シリカ粒子
11 防汚性被膜
図1
図2