特許第6374235号(P6374235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374235
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】アンカーボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/06 20060101AFI20180806BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F16B13/06 B
   E04B1/41 503E
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-132658(P2014-132658)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11692(P2016-11692A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】397000160
【氏名又は名称】株式会社豊和
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和明
(72)【発明者】
【氏名】柳井 徹
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−143099(JP,A)
【文献】 特開平11−148505(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0017023(US,A1)
【文献】 特開平08−145031(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3094683(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/06
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面(1)に設けた取付孔(2)に固定するアンカーボルトであって、
円柱面状の外周面に雄ねじ(3)を形成しているロッド(4)と、そのロッド(4)の雄ねじ(3)に螺合する雌ねじ(6)を中心軸に沿って形成しているテーパー部材(7)と、そのテーパー部材(7)に外嵌する拡開部材(8)とを有していて、前記テーパー部材(7)および前記拡開部材(8)は、前記ロッド(4)の長さ方向の中間に配置可能になっており、
前記拡開部材(8)は、前記テーパー部材(7)の外周面に当接する内面(11)を設けている当接部(12)を有していて、前記ロッド(4)の回転に伴って前記テーパー部材(7)がねじ作用で前記ロッド(4)に沿って移動することで、前記テーパー部材(7)の外周面が前記当接部(12)の内面(11)を押し、それによって前記当接部(12)の外周面(15)が前記取付孔(2)の内周面(2a)に押し付けられて、前記アンカーボルトが前記取付孔(2)の内周面(2a)に固定されるようになっており、
前記テーパー部材(7)は、分割面(18)・(19)によって複数個のテーパー片(7a)・(7b)に分割しており、
その分割面(18)・(19)は、前記テーパー部材(7)の雌ねじ(6)を通るように形成していて、それによって前記各テーパー片(7a)・(7b)には、雌ねじ部分(6a)・(6b)をそれぞれ有しており、
向かい合うテーパー片(7a)・(7b)の分割面(18)・(19)どうしには、互いに係合する少なくとも一対の凸部(20)および凹部(21)を配置しており、
前記凸部(20)は、円柱形状または四角柱形状であり、それに合わせて前記凹部(21)の形状が設定されており、
前記テーパー片(7a)・(7b)の前記雌ねじ部分(6a)・(6b)によって前記ロッド(4)の雄ねじ(3)を挟むようにして、対になる前記凸部(20)と前記凹部(21)とを互いに係合することで、前記ロッド(4)の雄ねじ(3)に前記テーパー部材(7)の雌ねじ(6)が螺合するようになっていることを特徴とするアンカーボルト。
【請求項2】
前記凸部(20)は、前記凹部(21)に対して外れない程度に圧入されるようになっていることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩壁の表面やコンクリート製の天井などの壁面に設けた孔に固定するアンカーボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1で示すように、岩壁の表面などにドリルなどを用いて孔を空け、その孔にアンカーボルトを差し込んで固定するものが知られている。
【0003】
詳しくは、特許文献1のアンカーボルトでは、先端面(特許文献1の第2図では右側)に近づくに従って径が大きくなる円錐部材の周面に、内面を円錐面形状に勾配させたC型形状のシェルを係合させている。また、前記円錐部材の中心軸に沿って貫通状に設けた雌ねじにロッドの外周面に形成している雄ねじを螺合させている。
【0004】
そして、岩壁などに空けた孔へ前記アンカーボルトを差し込んだのち、前記ロッドを回転させて、前記円錐部材に対して前記孔から引き抜く方向の引っ張り力を加える。すると、円錐部材が孔の開口側(特許文献1の第2図では左側)へ動いて、その円錐部材の周面がシェルを前記孔の内周面側に押し、それによってシェルの外周面が前記孔の内周面に押し付けられて、前記アンカーボルトが岩壁などに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−159553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアンカーボルトでは、ロッドの先端のみに前記円錐部材および前記シェルを配置しているために、ロッドなどに加わる振動によって前記シェルを支点に当該ロッドが揺動する虞がある。特に、使用目的などによっては前記孔を深く形成し、それに合わせてロッドを長く形成することがあるが(特許文献1の第1図参照)、その場合にはロッドがより振動し易くなる。
【0007】
その対策としては、ロッドの長さ方向の中間位置にも前記円錐部材および前記シェルを配置することが考えられるが、そのアンカーボルトの組み立ての際には、円錐部材をロッドの先端に螺合し、その状態で円錐部材またはロッドを回転させて円錐部材をロッドの中間位置まで移動させる作業が必要である。その円錐部材またはロッドを回転さなければならない分だけアンカーボルトの組み立てに手間と時間とがかかることになる。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解決することを目的として提供されたものであり、ロッドが長くても組み立ての手間などを軽減できるアンカーボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる不都合を解決するために、壁面1に設けた取付孔2に固定するアンカーボルトであって、円柱面状の外周面に雄ねじ3を形成しているロッド4と、ロッド4の雄ねじ3に螺合する雌ねじ6を中心軸に沿って形成しているテーパー部材7と、テーパー部材7に外嵌する拡開部材8とを有していて、テーパー部材7および拡開部材8は、ロッド4の長さ方向の中間に配置可能になっており、拡開部材8は、テーパー部材7の外周面に当接する内面11を設けている当接部12を有していて、ロッド4の回転に伴ってテーパー部材7がねじ作用でロッド4に沿って移動することで、テーパー部材7の外周面が当接部12の内面11を押し、それによって当接部12の外周面15が取付孔2の内周面2aに押し付けられて、アンカーボルトが取付孔2の内周面2aに固定されるようになっており、テーパー部材7は、分割面18・19によって複数個のテーパー片7a・7bに分割しており、その分割面18・19は、テーパー部材7の雌ねじ6を通るように形成していて、それによって各テーパー片7a・7bには、雌ねじ部分6a・6bをそれぞれ有しており、向かい合うテーパー片7a・7bの分割面18・19どうしには、互いに係合する少なくとも一対の凸部20および凹部21を配置しており、凸部20は、円柱形状または四角柱形状であり、それに合わせて凹部21の形状が設定されており、テーパー片7a・7bの雌ねじ部分6a・6bによってロッド4の雄ねじ3を挟むようにして、対になる凸部20と凹部21とを互いに係合することで、ロッド4の雄ねじ3にテーパー部材7の雌ねじ6が螺合するようになっていることを特徴とする。
【0010】
ここでの壁面1には、岩壁やトンネルなどの土木構造物や建築物の天井および側壁などの壁面が含まれる。ここでは、テーパー部材7の外周面がアンカーボルトの基端側ほど径が小さくなる、例えば円錐面形状になっていて、当接部12の内面11が、そのテーパー部材7の外周面に合わせて逆円錐面形状になっている場合や、テーパー部材7の外周面に、基端側に向かうに従ってテーパー部材7の中心軸に近づくように傾斜している平面形状の傾斜面10を設け、当接部12の内面11が、テーパー部材7の傾斜面10に面接触可能な傾斜平面形状になっている場合などが含まれる。テーパー片7a・7bは、三つ以上である場合も含まれる。
【0011】
またここでは、当接部12の外周面15が取付孔2の内周面2aに面接触状態で押し付けられて、その際の摩擦でアンカーボルトが取付孔2の内周面2aに固定される場合や、当接部12の一部が取付孔2の内周面2aに食い込むことで、アンカーボルトが取付孔2の内周面2aに固定される場合などが含まれる。凸部20は、円柱形状や四角柱形状の形状のものが含まれ、それに合わせて凹部21の形状が設定される。
【0012】
詳しくは、凸部20が凹部21に対して外れない程度に圧入されるようになっているものとすることができる。
【0013】
ここでは、例えば、作業者が直接手で、または工具などを使ってテーパー片7a・7bの分割面18・19どうしを押し付け合うことで、凸部20が凹部21に圧入される場合などが該当する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアンカーボルトは、テーパー部材7を複数個のテーパー片7a・7bに分割していて、そのテーパー片7a・7bの雌ねじ部分7a・7bによってロッド4の雄ねじ3を挟むとともに凸部20を凹部21に嵌め込んで当該凸部20と凹部21とを互いに係合する。それにより、テーパー片7a・7bどうしが結合されて一体化して、ロッド4の雄ねじ3にテーパー部材7の雌ねじ6が螺合されるので、ロッド4が長くても、そのロッド4の雄ねじ3の中間にテーパー部材7の雌ねじ6を容易、かつ、迅速に螺合させることができる。
【0015】
つまり、例えば、テーパー部材7をロッド4の端(先端あるいは基端)から締め込んで当該テーパー部材7をロッド4の中間位置に配置する場合よりも、そのテーパー部材7の配置のために要する手間および時間を軽減することができ、その結果、アンカーボルトの取付孔2への固定作業の効率化を図ることができる。
【0016】
しかも、テーパー片7a・7bどうしを結合する際には、凸部20と凹部21とを互いに係合させるので、その結合の際にテーパー片7a・7bどうしがずれることがなく、各テーパー片7a・7bの雌ねじ部分6a・6bをロッド4の雄ねじ3の中間に的確に螺合させることができる。
【0017】
凸部20が凹部21に対して外れない程度に圧入されるようになっていると、あまり強くない力で凸部20を凹部21に係合して、テーパー片7a・7bどうしを一体化することができる。従って、アンカーボルトの施工現場などでテーパー部材7をロッド4の中間位置に容易、かつ、迅速に配置することができ、それによってもアンカーボルトの取付孔2への固定作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るアンカーボルトのテーパー部材を示す正面図である。
図2図1のA―A線矢視断面図である。
図3図1のB―B線矢視断面図である。
図4】アンカーボルトの全体を示す縦断面図である。
図5】本発明のアンカーボルトのテーパー部材をロッドに装着する動作を示す平面図である。
図6】アンカーボルトを取付孔へ差し込む際の状態を示す縦断面図である。
図7】アンカーボルトを取付孔へ差し込んだ状態を示す縦断面図である。
図8】アンカーボルトを取付孔に固定した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るアンカーボルトの一実施例を図1ないし図8に基づいて説明する。前記アンカーボルトは、例えばコンクリート製の天井の壁面1に設けた(空けた)取付孔2に差し込んで固定(保持)するようになっている(図8参照)。その取付孔2は、上向きに穿孔することで形成している。
【0020】
前記アンカーボルトは、図4に示すように、外周面に雄ねじ3を形成している円柱形状のロッド4と、アンカーボルトを前記取付孔2の円柱面形状の内周面2a(図6参照)に固定するための拡開機構5とを有している。その拡開機構5は、ロッド4の先端(図4では上端)近傍と、ロッド4の長さ方向(図4では上下方向)の中間の少なくとも一箇所とに配置している。
【0021】
前記拡開機構5には、前記ロッド4の雄ねじ3が螺合する(締め込まれる)雌ねじ6を中心軸に沿って貫通状に設けているとともに基端側(図4では下端側)に向かうに従って中心軸に近づくように傾斜している四個の平面形状の傾斜面10を外周面に形成しているテーパー部材7と、そのテーパー部材7に外嵌している拡開部材8とを有している。
【0022】
テーパー部材7の外周面は円柱面形状になっていて、そのテーパー部材7の外周面の前後左右の四箇所に前記傾斜面10を形成している。つまり、それらの傾斜面10は、テーパー部材7の周方向に等間隔で配置している。なお、テーパー部材7の傾斜面10は、テーパー部材7の先端(図1では上端)までは形成しておらず、テーパー部材7の傾斜面10よりも先端側は直立面形状に形成している。
【0023】
前記拡開部材8は、図4に示すように、テーパー部材7の各傾斜面10に当接(面接触)可能な傾斜面形状の内面11をそれぞれ有している前後左右の四個の当接部12と、それらの当接部12の先端部(図4では上端部)をつないでいる弾性変形可能な架橋部13とを有している。
【0024】
各当接部12の内面11は、テーパー部材7の各傾斜面10に面接触している状態(図8の状態)で、アンカーボルトの基端側(図8では下端側)に向かうに従ってアンカーボルト(テーパー部材7)の中心軸に近づくように傾斜している。各当接部12の内面11の傾斜角度は、前記テーパー部材7の各傾斜面10の傾斜角度にほぼ等しくなっている。
【0025】
前記架橋部13は、ロッド4の先端側に配置している薄平板状の本体部位13aと、その本体部位13aの縁から架橋部13の外方へ斜め下方向に延びたのち、長さ方向の中間で架橋部13の内方へ屈曲して、その自由端部(図4では下端部)に当接部12の先端部をつないでいる四枚の薄平板状の接続部位13bとを有している。前記接続部位13bは、その自由端部にかしめや溶接などによって前記当接部12の先端部をつないでいる。
【0026】
架橋部13の本体部位13aは、平面視でほぼ正方形状になっていて、その四箇所の頂点部(角部)に前記接続部位13bをそれぞれ連設している。架橋部13の本体部位13aの中央部には、ロッド4が挿通可能な円形形状の挿通孔14を形成している。
【0027】
そして、アンカーボルトを取付孔2内に押し込んだ際には、図6に示すように接続部位13bの中間部が、取付孔2の開口の縁や取付孔2の内周面2aに当接して、架橋部13の内方(ロッド4側)へ押されて接続部位13bが弾性変形し、その際の弾性復元力で接続部位13bの中間部や当接部12が取付孔2の内周面2aに押し付けられる(図7の状態)。それによって拡開部材8は、取付孔2から容易には抜けない程度に取付孔2の内周面2aに保持(仮固定)される。
【0028】
各当接部12の外周面15は、取付孔2の内周面2aと同様の円柱面形状に形成しており、それによって各当接部12の外周面15が取付孔2の内周面2aに面接触可能になっている。当接部12の内面11は、当該当接部12の先端(図4では上端)や基端(図4では下端)までは傾斜状に形成していなくてもよい。
【0029】
前記ロッド4には、不図示の設備機器や配管などが取り付けられる。ロッド4およびテーパー部材7は、ステンレススチールなどで形成してある。拡開部材8の各当接部12は、アルミニウム合金などで形成してあり、前記架橋部13は、ステンレススチールなどで形成してある。
【0030】
前記拡開部材8の各当接部12の外周面15の下部(自由端側)には、複数本(本実施例では二本)の溝16を当該当接部12の長さ方向(図4では上下方向)に並べて形成しており、その溝16は、各当接部12の外周面15の周方向へ延びている。
【0031】
アンカーボルトのテーパー部材7は、図1ないし図3に示す分割面18・19で二個のテーパー片7a・7bに分割している(半割りしている)。その分割面18・19は、テーパー部材7の雌ねじ6の中心軸を通るように形成している。つまり、前記雌ねじ6は、一方のテーパー片7aの雌ねじ部分6aと、他方のテーパー片7bの雌ねじ部分6bとに分割されている。
【0032】
向かい合うテーパー片7a・7bの分割面18・19には、互いに係合する凸部20および凹部21を四対配置している。つまり、それらの凸部20および凹部21の対は、前記雌ねじ部分6a・6bを挟んで両側であって当該テーパー部材7の先端側と基端側との四箇所に配置している。なお、図2および図3では、一方のテーパー片7aの分割面18に凸部20および凹部21を配置するとともに、それに合わせて凹部21および凸部20を他方のテーパー片7bの分割面19に配置しているが、例えば、凸部20または凹部21のうちのいずれか一方を、一方のテーパー片7aの分割面18のみに配置するとともに、凸部20または凹部21のうちの他方を、他方のテーパー片7bの分割面19のみに配置してもよい。また、前記分割面18・19には、凸部20および凹部21の対を一箇所や二箇所のみ配置してもよく、または三箇所あるいは五箇所以上配置してもよい。
【0033】
そして、各対の凸部20を凹部21に対して容易には外れない程度に圧入することで、一方のテーパー片7aの分割面18と他方のテーパー片7bの分割面19とが互いに重ね合わされた状態で結合して一体化される(図2および図3で示す状態)。なお、前記分割面18・19は、図2および図3に示すように、前記傾斜面10から外れた位置に形成することが好ましい。また、一方のテーパー片7aと他方のテーパー片7bとを一体化したのちに、当該テーパー部材7の外周に、環状の合成ゴムやばね鋼をC字状に曲げ加工したリングばねなどを外嵌することで、一方のテーパー片7aと他方のテーパー片7bとをより離れ難くしてもよい。
【0034】
次に、前記拡開機構5のアンカーボルトへの配置について説明すると、例えばロッド4の中間位置(図4の基端側の拡開機構5の配置位置)に拡開機構5を配置する場合には、図5に示すように、一方のテーパー片7aの分割面18と、他方のテーパー片7bの分割面19とを向い合せた状態で、一方のテーパー片7aの雌ねじ部分6aと他方のテーパー片7bの雌ねじ部分6bとでロッド4の中間位置を挟み込むようにして(図5の実線図参照)、前記凸部20と前記凹部21とを係合することで、ロッド4の雄ねじ3に、一方のテーパー片7aの雌ねじ部分6aと他方のテーパー片7bの雌ねじ部分6bがそれぞれ螺合し、その状態で一方のテーパー片7aと他方のテーパー片7bとが結合して一体化する(図5の仮想線図の状態)。
【0035】
次いで、前記拡開部材8の架橋部13の本体部位13aの挿通孔14にロッド4をその先端側から通して、当該拡開部材8を前記ロッド4の中間位置まで移動させて前記テーパー部材7に外嵌する。それによって前記ロッド4の中間位置への拡開機構5の配置が完了する。
【0036】
なお、ロッド4の最先端(図4では最上端)側に配置する拡開機構5は、例えば、一方のテーパー片7aと他方のテーパー片7bとを予め一体化したのち、そのテーパー部材7をロッド4に締め込んでもよい。その場合、図4に示すように、ロッド4の先端部がテーパー部材7の先端面(図4では上端面)から突出するまでテーパー部材7をロッド4に締め込むことになる。また、前述のロッド4の中間位置への拡開機構5の配置と同様に、ロッド4の最先端位置を両方のテーパー片7a・7bで挟み込んで、それらのテーパー片7a・7bを一体化してもよい。その場合でも、ロッド4の先端部はテーパー部材7の先端面から突出している。
【0037】
その後、拡開部材8の架橋部13の本体部位13aの挿通孔14にロッド4を通して、前記ロッド4の最先端側に配置しているテーパー部材7に拡開部材8を外嵌する(図4の状態)。それによって前記ロッド4の最先端位置への拡開機構5の配置が完了する。
【0038】
その各拡開機構5の配置が完了したアンカーボルトを、ロッド4の先端側を上にした姿勢で前記壁面1の取付孔2に差し込む。その際には、図6に示すように、まずロッド4の最先端位置へ配置した拡開機構5の架橋部13の接続部位13bの中間部が取付孔2の開口の縁に当接するが、そのアンカーボルトを取付孔2内に強制的に押し込むことで、前記接続部位13bが弾性変形して拡開機構5が取付孔2内に入り込む。同様にロッド4の中間位置に配置している拡開機構5を取付孔2に差し込むときにも、当該拡開機構5の架橋部13の接続部位13bの中間部が取付孔2の開口の縁に当接するが、アンカーボルトを取付孔2内に強制的に押し込むことで当該拡開機構5が取付孔2内に入り込む。
【0039】
そして、ロッド4の先端面が取付孔2の上面(奥面)に当接するまでアンカーボルトを押し込む(図7の状態)。その際には、各拡開機構5の接続部位13bの弾性復元力によって、当該接続部位13bの中間部や当接部12が取付孔2の内周面2aに押し付けられていて、各拡開機構5の拡開部材8が摩擦などによって取付孔2の内周面2aに、移動および回転不能に仮固定される。その結果、各拡開機構5の拡開部材8の上下移動や周方向への回転が抑えられる。
【0040】
それにより、ロッド4の先端面を前述のように取付孔2の上面に当接させた状態で、ロッド4をその中心軸まわりに回転させた際に、そのロッド4の回転に各拡開機構5のテーパー部材7が連れ立って回転しようとしても、前記仮固定されている各拡開機構5の拡開部材8の当接部12の内面11にテーパー部材7の傾斜面10が面当たりして(当接して)テーパー部材7の回転が抑えられ、テーパー部材7は上下移動のみが許容される。それによってロッド4を所定方向(テーパー部材7が取付孔2の開口側へ移動する方向)へ回転させたときには、テーパー部材7は、回転することなく、ねじ作用で取付孔2の開口側(図7では下側)へ下降(移動)する。
【0041】
また、前述のように当接部12が取付孔2の内周面2aに押し付けられたときには、その当接部12の溝16の上下の縁が取付孔2の内周面2aに引っ掛かり、それによって前記拡開部材8の接続部位13bによる仮固定と相まって拡開部材8が上下方向へ移動することがより抑えられる。
【0042】
前記テーパー部材7の下降により、テーパー部材7の各傾斜面10が拡開部材8の各当接部12の内面11に押し当たって、各当接部12を取付孔2の内周面2a側へ移動させて、各当接部12の外周面15を取付孔2の内周面2aにしっかりと押し付ける。その結果、各当接部12の外周面15と取付孔2の内周面2aとの面どうしの摩擦などによって、アンカーボルトを取付孔2に確実に固定することができる。
【0043】
そのアンカーボルトのロッド4の雄ねじ3に、不図示の設備機器や配管などを固定するためのブラケット23(図8)を装着し、そのブラケット23の下側にナット24(図8)を螺着する。そして、レンチ(スパナ)などの工具でナット24を締め付けて、ブラケット23をアンカーボルトに取り付ける(図8の状態)。
【0044】
そのナット24を締め付けた際には、ロッド4が下方へ引っ張られ、そのロッド4およびテーパー部材7が更に下降する。それにより、テーパー部材7の各傾斜面10によって各当接部12の内面11が取付孔2の内周面2a側へ更に押され、各当接部12の外周面15が取付孔2の内周面2aに強く押し付けられて、アンカーボルトが取付孔2によりしっかりと固定される。なお、ブラケット23を省略して座金(不図示)をナット24の上側に装着してもよい。
【0045】
その取付孔2に固定されたアンカーボルトのロッド4が、前記設備機器などの重量によって下方に引っ張られても、それに伴ってテーパー部材7の各傾斜面10が各当接部12の内面11を強く押すので、各当接部12の外周面15が取付孔2の内周面2aに強く押し付けられる。それによって、アンカーボルトが取付孔2から抜け出ることを確実に防止することができる。
【0046】
このように、アンカーボルトのテーパー部材7を二つのテーパー片7a・7bに分割しているので、例えばロッド4の中間位置をこれらのテーパー片7a・7bで挟み込んで一体化することで、当該ロッド4の中間位置にテーパー部材7を容易、かつ、迅速に配置することができる。
【0047】
つまり、例えば、テーパー部材7をロッド4の端(先端あるいは基端)から締め込んで当該テーパー部材7をロッド4の中間位置に配置する場合よりも、そのテーパー部材7の配置のために要する手間および時間を軽減することができ、その結果、アンカーボルトの前記取付孔2への固定作業の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 壁面
2 壁面の取付孔
2a 取付孔の内周面
3 ロッドの雄ねじ
4 ロッド
5 拡開機構
6 テーパー部材の雌ねじ
6a 一方のテーパー片の雌ねじ部分
6b 他方のテーパー片の雌ねじ部分
7 テーパー部材
7a 一方のテーパー片
7b 他方のテーパー片
8 拡開部材
10 テーパー部材の傾斜面
11 当接部の内面
12 当接部
14 拡開部材の挿通孔
15 当接部の外周面
18 一方のテーパー片の分割面
19 他方のテーパー片の分割面
20 凸部
21 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8