(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積層コンデンサには、上記の小型化及び大容量化に加え、低コスト化が強く要求されている。
【0007】
一般的な積層コンデンサの製造方法には、大面積のセラミックシートが用いられる。大面積のセラミックシートが用いられる製造方法では、複数の積層コンデンサについて、一括して内部電極の印刷を行い、一括して積層を行うことが可能となる。これにより、積層コンデンサを低コストで製造することができるようになる。
【0008】
その点、特許文献1に記載の技術では、積層コンデンサの各誘電体層ごとに厚さの異なるセラミックシートを準備する必要がある。更に、積層コンデンサにおける内部電極の厚さを各誘電体層ごとに変化させるため、各セラミックシートごとに異なる条件で内部電極の印刷を行う必要がある。このように、特許文献1に係る技術では、製造プロセスが複雑化し、積層コンデンサの製造コストが増大する。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、各誘電体層間の容量のばらつきを抑制可能な積層コンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層コンデンサは、素体と、第1外部電極と、第2外部電極とを具備する。
上記素体は、第1内部電極と、誘電体層と、第2内部電極とが積層された積層体と、上記積層体と接続する第1及び第2保護層とを有する。
上記第1外部電極は、上記素体の第1端面を覆い、上記第1内部電極に接続する。
上記第2外部電極は、上記素体の第2端面を覆い、上記第2内部電極に接続する。
【0011】
この構成では、マンガンの含有量が多く、マグネシウムの含有量が少ない保護層によって酸素の拡散が制御可能となるため、第1及び第2内部電極間の各誘電体層間における容量のばらつきが抑制される。これにより、積層コンデンサの容量を、狙いの設計の容量にすることができる。
【0012】
上記積層体の上記保護層に隣接する部分が、マンガンの含有量が上記積層体の中央部にある誘電層のセラミックスよりも多く上記第1及び第2保護層のセラミックスよりも少なく、マグネシウムの含有量が上記積層体の中央部にある誘電層のセラミックスよりも少なく上記第1及び第2保護層のセラミックスよりも多いセラミックスにより構成されていてもよい。
【0013】
この構成では、積層体の保護層に隣接する部分が、積層体の中央部にあるセラミックスと、保護層を構成するセラミックスとの中間組成であるセラミックスにより構成されている。これにより、積層体と保護層との間のデラミネーションが生じにくくなる。
【0014】
上記第1及び第2保護層では、上記積層体に隣接するセラミックス粒子よりも、上記素体の表面にあるセラミックス粒子の方が、平均粒径が大きくてもよい。
この構成では、積層コンデンサの外面となる保護層の表面の強度が向上する。これにより、積層コンデンサの耐衝撃性が向上する。
【0015】
本発明の一形態に係る積層コンデンサの製造方法では、第1セラミックスにより構成され、第1内部電極が形成される第1セラミックシートが準備される。
上記第1セラミックスにより構成され、第2内部電極が形成される第2セラミックシートが準備される。
マンガンの含有量が上記第1セラミックスよりも多く、マグネシウムの含有量が上記第1セラミックスよりも少ない第2セラミックスにより構成される第3セラミックシートが準備される。
上記第1及び第2セラミックシートとが交互に配置され、上記第1及び第2セラミックシートを挟んで上記第3セラミックシートが配置されるように、上記第1、第2及び第3セラミックシートを積層して積層体が作製される。
【発明の効果】
【0016】
各誘電体層間の容量のばらつきを抑制可能な積層コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0019】
<第1の実施形態>
[積層コンデンサ10の構成]
図1は本発明の第1の実施形態に係る積層コンデンサ10の斜視図である。積層コンデンサ10は、素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15とを具備する。外部電極14,15は、素体11のX軸方向両端部にそれぞれ設けられている。
【0020】
図2は、素体11の斜視図である。
図3は素体11の
図2のA−A'線に沿った断面図であり、
図4は素体11の
図2のB−B'線に沿った断面図である。素体11は、積層体16と、第1保護層17と、第2保護層18とを有する。
【0021】
積層体16は、X軸、Y軸及びZ軸に沿った辺を有する直方体状である。第1保護層17は積層体16のZ軸方向上面(第1主面)に設けられ、第2保護層18は積層体16のZ軸方向下面(第2主面)に設けられている。保護層17,18は、いずれもXY平面に沿って延びる平板状であり、積層体16のZ軸方向上下面の全面を覆っている。
【0022】
積層体16は、X軸に垂直な第1端面T1及び第2端面T2を有する。また、積層体16は、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13とを有する。内部電極12,13は、いずれもXY平面に沿って延びるシート状であり、Z軸に沿って交互に積層されている。第1内部電極12は第1端面T1に露出し、第2内部電極13は第2端面T2に露出している。
【0023】
図1に示すように、積層体16の第1端面T1は第1外部電極14によって覆われ、積層体16の第2端面T2は第2外部電極15によって覆われている。これにより、第1端面T1に露出している第1内部電極12が第1外部電極14に接続され、第2端面T2に露出している第2内部電極13が第2外部電極15に接続されている。
【0024】
上記のような構成により、積層コンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数の誘電体層に電圧が加わる。
【0025】
積層体16は、第1セラミックスによって構成されている。第1セラミックスとしては、内部電極12,13間の各誘電体層の容量を大きくするため、高誘電率の材料が採用される。第1セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が採用可能である。
【0026】
積層体16を構成する第1セラミックスには、マンガン(Mn)及びマグネシウム(Mg)が含まれる。第1セラミックスでは、マンガンの作用によって耐還元性が向上し、マグネシウムの作用によって誘電率のフラットな温度特性が得られる。
【0027】
例えば、第1セラミックスのマンガン含有量は、チタン酸バリウム100molに対して、0.1〜1.0molとすることができる。また、第1セラミックスのマグネシウム含有量は、チタン酸バリウム100molに対して、0.1〜1.0molとすることができる。
【0028】
本実施形態に係る積層コンデンサ10の製造方法では、素体11が還元雰囲気下で焼成される。還元雰囲気下での焼成では、酸素の拡散が制御されていないと、積層体16の各誘電体層間で容量のばらつきが大きくなり、積層コンデンサ10の容量が、狙いとする設計の容量からずれてしまう場合がある。
【0029】
本実施形態に係る積層コンデンサ10では、積層体16のZ軸方向上下面からの酸素の侵入を防止することにより、各誘電体層間における容量のばらつきを抑制するために、保護層17,18が設けられている。
【0030】
保護層17,18は、第2セラミックスによって構成されている。保護層17,18を構成する第2セラミックスは、積層体16を構成する第1セラミックスと、マンガンの含有量、及びマグネシウムの含有量のみが異なる。第2セラミックスでは、マンガンの含有量が第1セラミックスより多く、マグネシウムの含有量が第2セラミックスより少ない。
【0031】
例えば、第2セラミックスのマンガン含有量は、チタン酸バリウム100molに対して、0.5〜2.0molとすることができる。また、第2セラミックスのマグネシウム含有量は、チタン酸バリウム100molに対して、0〜0.5molとすることができる。
【0032】
マンガンの含有量が多く、マグネシウムの含有量が少ない第2セラミックスでは、第1セラミックスよりも酸素の拡散を制御可能である。
【0033】
比較例として、本実施形態に係る積層コンデンサ10の保護層17,18が、積層体16と同様の第1セラミックスによって構成される積層コンデンサを作製した。この積層コンデンサについて、各誘電体層の容量を測定した。そして、各誘電体層の容量の最大値C
MAX、最小値C
MIN、及び平均値C
AVEを用い、ばらつき率D(=100×(C
MAX−C
MIN)/C
AVE)[%]を算出した。その結果、比較例に係る積層コンデンサのばらつき率Dは7[%]であった。
【0034】
本実施形態に係る積層コンデンサ10について、上記の比較例と同様の測定を行い、ばらつき率Dを算出した。その結果、本実施形態に係る積層コンデンサ10のばらつき率Dは3[%]であった。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る積層コンデンサ10では、保護層17,18によって、焼成時における酸素の拡散を制御できる。したがって、積層コンデンサ10の容量は、狙いとする設計の容量からずれにくい。
【0036】
[積層コンデンサ10の製造方法]
図5は、本実施形態に係る積層コンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図6〜8は積層コンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層コンデンサ10の製造方法について、
図5に沿って、
図6〜8を適宜参照しながら説明する。
【0037】
(ステップS1:セラミックシート準備)
図6は、
図5のステップS1〜S3を説明するための図である。
【0038】
まず、積層体16を形成するためのセラミックシート110Uと、保護層17,18を形成するためのセラミックシート111Uとを準備する。セラミックシート110U,111Uは、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート110Uは第1セラミックスによって構成され、セラミックシート111Uは第2セラミックスによって構成される。
【0039】
セラミックシート110U,111Uは、例えば、ロールコーターを用いてシート状に成形することができる。セラミックシート110U,111Uは各積層コンデンサ10ごとに切り分けられておらず、以降のステップS2,S3は、複数の積層コンデンサ10について一括して行うことが可能である。
【0040】
(ステップS2:内部電極印刷)
セラミックシート110Uに、第1内部電極12となる未焼成の第1内部電極12Uを形成してセラミックシート112Uが得られる。また、セラミックシート110Uに、第2内部電極13となる未焼成の第2内部電極13Uを形成してセラミックシート112Uが得られる。内部電極12U,13Uの形成には、例えば、スクリーン印刷法を用いることができる。
【0041】
(ステップS3:積層)
図6に示すようにセラミックシート111U,112U,113Uを積層する。セラミックシート112U,113Uは、Z軸方向に交互に配置される。内部電極12,13が形成されていないセラミックシート111Uは、Z軸方向の最上部及び最下部に配置される。Z軸方向最上部及び最下部におけるセラミックシート111Uの枚数は、保護層17,18の厚さに応じて適宜決定可能である。
【0042】
図6では、説明の便宜上、セラミックシート111U,112U,113Uが各積層コンデンサ10をごとに切り分けられた状態を示している。しかし、作業効率及びハンドリング性などの観点から、セラミックシート111U,112U,113Uは、積層された後に、各積層コンデンサ10をごとに切り分けられることが好ましい。
【0043】
積層されたセラミックシート111U,112U,113Uに対してプレス処理を施すことにより、複数のセラミックシート111U,112U,113Uが一体化し、複数の未焼成の素体11Uが配列された積層シートが得られる。プレス処理の方法としては、例えば、静水圧プレス法を用いることができる。積層シートは、各素体11となる未焼成の各素体11Uごとに切り分けられる。
【0044】
なお、セラミックシート112U,113Uのうち最もZ軸方向下方にあるセラミックシート112U,113U(
図6ではセラミックシート113U)は、セラミックシート110Uではなく、セラミックシート111Uによって形成されている。しかし、この構成は必須ではなく、セラミックシート112U,113Uがいずれもセラミックシート110Uによって形成されていてもよい。
【0045】
図7は、本ステップS3で得られる未焼成の素体11Uの斜視図である。素体11Uでは、セラミックシート112U,113Uが積層体16Uとなり、セラミックシート111Uが保護層17U,18Uとなっている。積層体16Uの第1端面T1Uには第1内部電極12Uが露出し、積層体16Uの第2端面T2Uには第2内部電極13Uが露出している。
【0046】
(ステップS4:外部電極形成)
図8に示すように、積層体16Uの第1端面T1Uを覆うように未焼成の外部電極14Uを設け、積層体16Uの第2端面T2Uを覆うように未焼成の外部電極15Uを設ける。これにより、未焼成の積層コンデンサ10Uが得られる。積層コンデンサ10Uでは、外部電極14Uが第1端面T1Uに露出する第1内部電極12Uに接続し、外部電極15Uが第2端面T2Uに露出する第2内部電極13Uに接続している。
【0047】
(ステップS5:焼成)
図8に示す未焼成の積層コンデンサ10Uを、還元雰囲気下で焼成することにより、
図1に示す積層コンデンサ10が得られる。本ステップS5では、積層体16UのZ軸方向上下面に設けられた保護層17U,18Uによって、積層体16UのZ軸方向上下面からの酸素の拡散を制御できるようになる。
【0048】
このように、本実施形態に係る積層コンデンサ10の製造方法では、各誘電体層間の容量のばらつきが少ない積層コンデンサ10が得られる。このため、本実施形態に係る製造方法によって製造される積層コンデンサ10の容量は、狙いの設計の容量からずれにくい。
【0049】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る積層コンデンサについて説明する。本実施形態では、第1の実施形態と共通の構成について、その説明を適宜省略する。また、本実施形態の構成のうち、第1の実施形態に対応する構成には、第1の実施形態と同様の符号を用いる。
【0050】
[積層コンデンサの構成]
図9,10は、本実施形態に係る積層コンデンサの素体21の断面図である。
図9は素体21のZX平面に平行な断面を示し、
図10は素体21のYZ平面に平行な断面を示している。
【0051】
本実施形態に係る積層コンデンサでは、積層コンデンサの焼成時における積層体26と保護層17,18との間の剥離(デラミネーション)を防止するため、中間部27,28が設けられる。
【0052】
第1中間部27は積層体26のZ軸方向上面に設けられ、第2中間部28は積層体26のZ軸方向下面に設けられている。したがって、第1中間部27は第1保護層17に隣接し、第2中間部28は第2保護層18に隣接する。
【0053】
図11は積層体16のZ軸方向上面を示す平面図であり、
図12は積層体16のZ軸方向下面を示す平面図である。第1中間部27は、積層体26のZ軸方向上面の、第1内部電極12が露出していない領域に設けられている。第2中間部28は、積層体26のZ軸方向下面の、第2内部電極13が露出していない領域に設けられている。
【0054】
また、中間部27,28は、積層体26の1層分のZ軸方向の厚さを有する。つまり、第1中間部27は、積層体26のZ軸方向上面から、上から2層目の第2内部電極13までの領域に配置されている。また、第2中間部28は、積層体26のZ軸方向下面から、下から2層目の第1内部電極12までの領域に配置されている。
【0055】
このように、本実施形態に係る積層コンデンサでは、積層体26を構成する第1セラミックスと、保護層17,18を構成する第2セラミックスとが、直接接しておらず、中間部27,28を介して接続されている。
【0056】
本実施形態では、中間部27,28は、第3セラミックスによって構成されている。中間部27,28を構成する第3セラミックスは、積層体16を構成する第1セラミックス、及び保護層17,18を構成する第2セラミックスと、マンガン及びマグネシウムの含有量のみが異なる。より詳細には、第3セラミックスのマンガンの含有量は、第1セラミックスより多く、第2セラミックスより少ない。また、第3セラミックスのマグネシウムの含有量は、第1セラミックスより少なく、第2セラミックスより多い。
【0057】
つまり、中間部27,28を構成する第3セラミックスは、積層体16を構成する第1セラミックスと、保護層17,18を構成する第2セラミックスとの中間組成を有する。したがって、第3セラミックスは、第1セラミックスと第2セラミックスとの中間の性質を有する。例えば、積層コンデンサの焼成時における第3セラミックスの収縮率は、第1セラミックスの収縮率と、第2セラミックスの収縮率との中間となる。
【0058】
したがって、積層コンデンサの焼成時における第1中間部27の収縮率は、第1セラミックスによって構成される積層体26の収縮率にも、第2セラミックスによって構成される第1保護層17の収縮率にも近い。このため、第1中間部27は、積層コンデンサの焼成時に積層体26及び保護層17から剥離しにくく、積層体26と保護層17とを良好に接続する。
【0059】
また、積層コンデンサの焼成時における第2中間部28の収縮率は、第1セラミックスによって構成される積層体26の収縮率にも、第2セラミックスによって構成される第2保護層18の収縮率にも近い。このため、第2中間部28は、積層コンデンサの焼成時に積層体26及び保護層18から剥離しにくく、積層体26と保護層17とを良好に接続する。
【0060】
したがって、本実施形態に係る積層コンデンサでは、中間部27,28の作用により、積層体26と保護層17,18との間のデラミネーションが生じにくい。
【0061】
なお、中間部27,28は、積層体16の内部電極12,13間に配置されていないため、積層コンデンサの容量に影響を与えない。つまり、本実施形態に係る積層コンデンサでは、容量を変化させることなく、積層体16と保護層17,18と間のデラミネーションを防止することができる。
【0062】
また、中間部27,28を構成する第3セラミックスのマンガン及びマグネシウムの含有量は均一でなくてもよい。例えば、中間部27,28を構成する第3セラミックスは、保護層17,18に近いほどマンガンの含有量が多くなっていてもよい。また、中間部27,28を構成する第3セラミックスは、保護層17,18に近いほどマグネシウムの含有量が少なくなっていてもよい。
【0063】
更に、積層体16のY軸方向の両端部にある、Z軸方向の全範囲にわたって内部電極12,13が設けられていないサイドマージン部19(
図10参照)では、中間部27,28がZ軸方向のより深い位置まで拡張されていてもよい。
【0064】
[積層コンデンサの製造方法]
本実施形態に係る積層コンデンサの中間部27,28は、マンガン及びマグネシウムの組成を調整したセラミックシートを積層することで形成することができる。
【0065】
つまり、第1の実施形態に係る積層工程(
図6参照)において、中間部27,28に対応する部分に、未焼成の中間部27U,28Uを設け、未焼成の中間部27U,28Uを有する積層体16U(
図7参照)を作製してもよい。これにより、焼成後に、本実施形態に係る中間部27,28を有する積層コンデンサが得られる。
【0066】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態に係る積層コンデンサについて説明する。本実施形態では、第1の実施形態と共通の構成について、その説明を適宜省略する。また、本実施形態の構成のうち、第1の実施形態に対応する構成には、第1の実施形態と同様の符号を用いる。
【0067】
[積層コンデンサの構成]
図13は、本実施形態に係る積層コンデンサの素体31の断面図である。
図13は素体31のZX平面に平行な断面を示している。
【0068】
本実施形態に係る素体31は、第1の実施形態に係る素体11とは異なり、3層構造の保護層37,38を有する。第1保護層37は、積層体16のZ軸方向上面に第1層37a、第2層37b、第3層37cの順番に積層されて構成されている。また、第2保護層38は、積層体16のZ軸方向下面に第1層38a、第2層38b、第3層38cの順番に積層されて構成されている。
【0069】
第1層37a,38a、第2層37b,38b、及び第3層37c,38cは、いずれも第1の実施形態に係る保護層17,18と同様の第2セラミックスによって構成されているが、第2セラミックスを構成する誘電体結晶の平均粒径が相互に異なる。具体的には、第1層37a,38aの誘電体結晶の平均粒径が最も小さく、第3層37c,38cの誘電体結晶の平均粒径が最も大きい。
【0070】
本実施形態では、第1層37a,38a、第2層37b,38b、及び第3層37c,38cの誘電体結晶の平均粒径は0.1〜0.5μmである。これに対し、第1層37a,38aの誘電体結晶の平均粒径は0.1〜0.5μmであり、第3層37c,38cの誘電体結晶の平均粒径は0.2〜1.0μmである。
【0071】
積層体16に隣接する第1層37a,38aの誘電体結晶の平均粒径が小さいと、積層コンデンサの焼成時における第1層37a,38aの流動性が高くなる。これにより、焼成後の積層コンデンサにおいて、積層体16と第1層37a,38aとの高い密着性が得られる。したがって、本実施形態に係る積層コンデンサでは、積層体16と保護層37,38との間のデラミネーションを防止することができる。
【0072】
また、誘電体結晶の平均粒径が大きい第3層37c,38cは高い強度を有する。本実施形態に係る積層コンデンサでは、積層コンデンサの外面を構成する第3層37c,38cの強度が高いため、高い耐衝撃性が得られる。
【0073】
[積層コンデンサの製造方法]
図14に示すように、本実施形態に係る積層コンデンサの保護層37,38は、未焼成の保護層37U,38Uから形成される。保護層37U,38Uは、平均粒径の異なる第2セラミックスの粉末によって作製された第1層シート37aU,38aU、第2層シート37bU,38bU、及び第3層シート37cU,38cUにより構成される。第1層シート37aU,38aUの粉末の平均粒径が最も小さく、第3層シート37cU,38cUの粉末の平均粒径が最も大きい。
【0074】
以上により作製される未焼成の素体を焼成することにより、本実施形態に係る素体31を有する積層コンデンサが得られる。
【0075】
なお、本実施形態に係る積層コンデンサの保護層37,38は、
図10に示すような3層構造であることは必須ではない。積層コンデンサでは、保護層37,38における積層体16に接する第1面で誘電体結晶の平均粒径が小さく、保護層37,38における第1面とは反対の第2面で誘電体結晶の平均粒径が大きければ、上記の効果が得られる。
【0076】
したがって、本実施形態に係る積層コンデンサの保護層37,38は、積層体16に隣接する第1面よりも、第1面とは反対の第2面の方が、第2セラミックスを構成する誘電体結晶の平均粒径が大きくなるように構成されていればよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。