特許第6374243号(P6374243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374243
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】装飾積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/12 20060101AFI20180806BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B32B37/12
   B05D3/06 Z
   B32B17/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-140853(P2014-140853)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-16587(P2016-16587A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松永 信隆
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−074546(JP,A)
【文献】 特開2011−190133(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/038413(WO,A1)
【文献】 特開昭63−135207(JP,A)
【文献】 特開2011−071055(JP,A)
【文献】 特開2011−068618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00− 7/26
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
B29C 65/00−65/82
C03C 27/00−29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第1の基板と、上記第1の基板の上に配置された画像層と、上記画像層の上に配置されたプライマー層と、上記プライマー層の上に配置された、光透過性を有する第2の基板と、を備え、上記画像層及び上記プライマー層は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている装飾積層体の製造方法であって、
上記第1の基板の上に上記画像層を形成する画像層形成工程と、
上記第1の基板の上であって上記画像層が形成されていない箇所と、上記第2の基板の上との少なくとも一方に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる硬化プライマー層形成工程と、
上記硬化プライマー層の上に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して、未硬化の状態にしておく、未硬化プライマー層形成工程と、
上記未硬化プライマー層形成工程の後に、未硬化の状態にしてあるプライマー層が上記第1の基板及び上記第2の基板に挟まれるように重ねあわせて、光を照射して、当該未硬化の状態にしてあるプライマー層を硬化させる積層工程と、
を含み、
上記第1の基板及び上記第2の基板のうち、上記硬化プライマー層形成工程において上記硬化プライマー層を形成する基板はガラス基板であることを特徴とする装飾積層体の製造方法。
【請求項2】
上記画像層上に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる第1基板上硬化プライマー層形成工程を、上記未硬化プライマー層形成工程の前に含むことを特徴とする請求項1に記載の装飾積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾積層体の製造方法及び装飾積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板ガラス上にプライマー層を介してインクジェット印刷された板ガラスの印刷面側の面を中間膜と接触させて、合わせガラス化した装飾合わせガラスが記載されている。
【0003】
特許文献2には、ラッカー塗料の膜を2つのガラス板の間に設置する積層化粧部材が記載されている。
【0004】
特許文献3には、室内から外を見た場合に透視性があって外の風景を眺めることができ、また外から見た場合にはカラー模様図案のみが眺められるカラー模様付装飾積層ガラス板を得ることを目的とした、カラー模様付装飾積層ガラス板の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−190133号公報(2011年9月29日公開)
【特許文献2】特開2011−514849号公報(2011年5月12日公開)
【特許文献3】特開平7−291681号公報(1995年11月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
板ガラス等を積層する際に、特許文献1及び3のように加熱圧着する場合、大掛かりな装置が必要になる。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、より簡易に製造可能な装飾積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る装飾積層体の製造方法は、光透過性を有する第1の基板と、上記第1の基板の上に配置された画像層と、上記画像層の上に配置されたプライマー層と、上記プライマー層の上に配置された、光透過性を有する第2の基板と、を備え、上記画像層及び上記プライマー層は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている装飾積層体の製造方法であって、上記第1の基板の上に上記画像層を形成する画像層形成工程と、上記画像層の上及び上記第2の基板の上のうち少なくとも一方に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して、未硬化の状態にしておく、未硬化プライマー層形成工程と、上記未硬化プライマー層形成工程の後に、未硬化の状態にしてあるプライマー層が上記第1の基板及び上記第2の基板に挟まれるように重ねあわせて、光を照射して、当該未硬化の状態にしてあるプライマー層を硬化させる積層工程と、を含む。
【0009】
光を照射することでプライマーを硬化させて製造することができるので、簡易に製造可能である。なお、特許文献2のような接着剤を使用する必要がないので、ガラス等の素材及びインクを侵して、画像を劣化させることを防ぐという利点も有する。
【0010】
本発明に係る装飾積層体の製造方法では、上記第2の基板の上に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる第2基板上硬化プライマー層形成工程を、上記未硬化プライマー層形成工程の前に含むことがより好ましい。
【0011】
第2の基板上に直接、未硬化の状態のプライマー層が接触すると、第2の基板が未硬化の状態のプライマー層をはじくことで、未硬化の状態のプライマー層の表面張力の影響が出ることがある。例えば、未硬化の状態のプライマー層がだまになったり、未硬化の状態のプライマー層の表面に凹凸が生じたりすることがある。このまま第1の基板と積層させると、画像にムラが生じているような外観になる虞がある。そこで、第2の基板上に、未硬化の状態のプライマー層を形成する前に、プライマー層を形成してすぐに硬化させておくことで、第2の基板が未硬化の状態のプライマー層をはじくことを防ぎ、表面張力の影響を抑えることができる。これにより、未硬化プライマー層がだまになること等を防ぐことができる。また、硬化プライマー層の上に未硬化プライマー層を設ける場合には、未硬化プライマー層の表面が平滑化(レベリング)され、積層したときに空気及び埃等の異物の混入を防ぎ、より高品質な装飾積層体となる。
【0012】
本発明に係る装飾積層体の製造方法では、上記第1の基板の上であって、上記画像層が形成されていない箇所に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる第1基板上硬化プライマー層形成工程を、上記未硬化プライマー層形成工程の前に含むことがより好ましい。
【0013】
第1の基板が露出した箇所に直接、未硬化の状態のプライマー層が在ると、当該箇所が未硬化の状態のプライマー層をはじくことで、未硬化の状態のプライマー層の表面張力の影響が出ることがある。例えば、未硬化の状態のプライマー層がだまになったり、未硬化の状態のプライマー層の表面に凹凸が生じたりすることがある。このまま第2の基板と積層させると、画像にムラが生じているような外観になる虞がある。そこで、当該箇所に、未硬化の状態のプライマー層を形成する前に、プライマー層を形成してすぐに硬化させておくことで、第1の基板が未硬化の状態のプライマー層をはじくことを防ぎ、表面張力の影響を抑えることができる。これにより、未硬化プライマー層がだまになること等を防ぐことができる。また、硬化プライマー層の上に未硬化プライマー層を設ける場合には、未硬化プライマー層の表面が平滑化(レベリング)され、積層したときに空気及び埃等の異物の混入を防ぎ、より高品質な装飾積層体となる。
【0014】
本発明に係る装飾積層体の製造方法では、上記画像層上に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる第1基板上硬化プライマー層形成工程を、上記未硬化プライマー層形成工程の前に含んでもよい。
【0015】
第1の基板及び第2の基板のツヤが装飾の外観に与える影響を抑え、表面をマットのような風合いにすることができる。
【0016】
また、本発明に係る装飾積層体は、光透過性を有する第1の基板と、上記第1の基板の上に配置された画像層と、上記画像層の上に配置されたプライマー層と、上記プライマー層の上に配置された、光透過性を有する第2の基板と、を備え、上記画像層及び上記プライマー層は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている。
【0017】
光を照射することでプライマーを硬化させて製造することができるので、簡易に製造可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より簡易に製造可能であり、且つ、空気等の異物の混入が抑制された装飾積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る装飾積層体の一実施形態の構造を示す模式図である。
図2】本発明に係る装飾積層体の別の実施形態の構造を示す模式図である。
図3】本発明に係る装飾積層体の製造方法の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<装飾積層体>
〔実施形態1〕
まず、本発明に係る装飾積層体について、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る装飾積層体の一実施形態である装飾積層体10の構成を模式的に示した図である。
【0021】
装飾積層体10は、板ガラス11(第1の基板)、カラーインク層12(画像層)、プライマー層13、14、15、板ガラス16(第2の基板)を備えている。
【0022】
板ガラス11及び板ガラス16は光透過性を有しているので、積層させた後に光を照射するとプライマー層14に光を到達させることができる。これにより、板ガラス11及び16を簡易に接着することができる。
【0023】
本実施形態では、本発明に係る装飾積層体が備える第1の基板及び第2の基板として板ガラスを用いるが、本発明はこれに限定されるものではなく、光透過性を有する基板であれば、装飾積層体の用途等に応じて様々なものを採用することができる。例えば、ガラス板、アクリル板等が挙げられる。
【0024】
カラーインク層12は、所望の画像が印刷された層である。カラーインク層は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている。つまり、インクを塗布した後、光を照射することで硬化させることができる。中でも、紫外線硬化型化合物を含むインクであることが好ましい。
【0025】
紫外線硬化型化合物としては、例えば、紫外線の照射により重合する硬化型モノマー及び硬化型オリゴマーが挙げられる。硬化型モノマーとしては、例えば、低粘度アクリルモノマー、ビニルエーテル類、オキセタン系モノマー又は環状脂肪族エポキシモノマー等が挙げられる。硬化型オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマーが挙げられる。
【0026】
また、カラーインク層12を形成するインクは、所望の画像を形成するために、所望の着色成分を含むものを用いればよい。着色成分としては、例えば、顔料、染料が挙げられる。
【0027】
以下の実施形態では、紫外線硬化型化合物を含む紫外線硬化型インクを用いて各層を形成するものとして説明する。
【0028】
プライマー層13は、カラーインク層12の上に形成されている。本実施形態では、クリアインクで形成されている。クリアインクでプライマー層13を形成することで板ガラスのツヤを抑え、表面をマットのような風合いにすることもできる。
【0029】
プライマー層13は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている。これにより、プライマー層13の材料を塗布後、すぐに硬化させることができる。
【0030】
光硬化性化合物を含むインクの説明は、カラーインク層12における説明に準じる。ただし、カラーインク層12を形成するインクは、着色成分を含むことがあるが、プライマー層13は透明インクであることが好ましい。光を透過しやすくするためである。プライマー層13が光を透過しやすいことにより、プライマー層14の硬化を効率よく行うことができる。また、透明インクであれば、カラーインク層12の装飾の色合いへの影響を低減できる。
【0031】
また、プライマー層13を形成するインクは、光を照射することが硬化するものであればよく、例えば、ミマキエンジニアリング社製LH100を好ましく採用することができる。
【0032】
プライマー層14は、板ガラス11及び板ガラス16を接着するためのものである。プライマー層14は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている。光硬化性化合物を含むインクの説明は、カラーインク層12における説明に準じる。ただし、カラーインク層12を形成するインクは、着色成分を含むことがあるが、プライマー層14は透明インクであることが好ましい。カラーインク層12の装飾の色合いへの影響を低減するためである。
【0033】
また、プライマー層14は、予め、プライマー層13及びプライマー層15の上にそれぞれ設けられたプライマー層であって、未硬化の状態であったものを重ねあわせて硬化させたものである(以下、未硬化の状態のプライマー層を「未硬化プライマー層」という。)。プライマー層13及びプライマー層15の上、同じ種類のインクで未硬化プライマー層を形成して、重ねあわせて硬化させることで、一層のプライマー層14が形成される。また、当該未硬化プライマー層が異なる種類のインクから形成される場合、本発明に係る装飾積層体において、第1の基板及び第2の基板を接着させる機能を果たしているプライマー層は2層になり得る。
【0034】
プライマー層14を形成するための未硬化プライマー層は、本実施形態では、プライマー層13及びプライマー層15のそれぞれの上に設けるが、本発明はこれに限定されない。本発明では、未硬化プライマー層を画像層の上及び第2の基板の上のうち少なくとも一方に形成すればよく、また、未硬化プライマー層と、画像層の上又は第2の基板との間には、予め、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させたプライマー層(以下、硬化されたプライマー層を「硬化プライマー層」という。)を設けておいてもよい。いずれの構成であっても、簡易に接着できるという効果を奏することができる。
【0035】
プライマー層14を形成するインクの種類としては、光を照射することで硬化するものであればよく、例えば、ミマキエンジニアリング社製PR100を好ましく採用することができる。
【0036】
プライマー層15は、板ガラス16の上に設けられた硬化プライマー層である。板ガラス16と、直接未硬化プライマー層とが接触すると、板ガラス16の濡れ性が無いことなどの理由により、板ガラス16が未硬化プライマー層をはじく。未硬化プライマー層は板ガラス16にはじかれると、表面張力の影響を受ける。これにより、例えば、表面にだまができたり、凹凸ができたりする。このような状態で板ガラス11及び板ガラス16を積層させると、画像にムラが生じているような外観になる虞がある。そこで、プライマー層15を予め設けておくことにより、板ガラス16が未硬化プライマー層をはじくことを防ぎ、表面張力の影響を抑えることができる。これにより、未硬化プライマー層がだまになることを防ぐことができる。また、硬化プライマー層の上に未硬化プライマー層を設ける場合には、未硬化プライマー層の表面が平滑化(レベリング)され、積層したときに空気及び埃等の異物の混入を防ぎ、より高品質な装飾積層体となる。
【0037】
プライマー層15は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている。光硬化性化合物を含むインクの説明は、カラーインク層12における説明に準じる。ただし、カラーインク層12を形成するインクは、着色成分を含むことがあるが、プライマー層15は透明インクであることが好ましい。光を透過しやすくするためである。プライマー層15が光を透過しやすいことにより、プライマー層14の硬化を効率よく行うことができる。また、透明インクであれば、カラーインク層12の装飾の色合いへの影響を低減できる。
【0038】
また、プライマー層15を形成するインクは、光を照射することが硬化するものであればよく、例えば、ミマキエンジニアリング社製LH100を好ましく採用することができる。
【0039】
また、プライマー層13及びプライマー層15を形成するインクは、互いに同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
【0040】
〔実施形態2〕
本発明に係る装飾積層体について、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る装飾積層体の一実施形態である装飾積層体20の構成を模式的に示した図である。ここでは、装飾積層体10と異なる点のみ主に説明し、同じ機能を有する部材については同じ符号を付して、説明を省略する。
【0041】
装飾積層体20は、板ガラス11の上にカラーインク層12が形成されていない箇所が存在する点で装飾積層体10と異なる。
【0042】
板ガラス11の表面上であって、カラーインク層12が形成されていない箇所には、プライマー層13を形成するためのインクが塗布されている。
【0043】
板ガラス11の表面上であって、カラーインク層12が形成されていない箇所に、直接、未硬化プライマー層が接すると、上述のように表面張力の影響が出ることがある。本実施形態では、当該箇所に、予めプライマー層13を設けておくことにより、板ガラス11が未硬化プライマー層をはじくことを防ぐことができる。また、硬化プライマー層の上に未硬化プライマー層を設ける場合には、未硬化プライマー層の表面を平滑化することができる。
【0044】
また、カラーインク層12、及び、カラーインク層12が形成されていない箇所に塗布されたプライマー層13を形成するためのインクによって形成された層の上に、プライマー層13を形成するためのインクがさらに塗布されている。これにより、カラーインク層12の隙間を埋め、さらに、カラーインク層12の上も覆ったプライマー層13が形成されている。ただし、カラーインク層12及びそのすき間に形成されたプライマー層13の上のプライマー層13は形成しなくてもよい。カラーインク層12及びそのすき間に形成されたプライマー層13があれば、板ガラス11が未硬化プライマー層をはじくことを防ぐことができる。よって、カラーインク層12及びそのすき間にプライマー層13を形成した後に、プライマー層14や後述するサブプライマー層14’を形成したり、対向するプライマー層15上にプライマー層14を形成して積層したりしてもよい。
【0045】
<装飾積層体の製造方法>
本発明に係る装飾積層体の製造方法について、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係る装飾積層体の一実施形態である装飾積層体10を製造する方法を模式的に示す図である。
【0046】
図3の(a)に示すように、板ガラス11の表面にカラーインク層12、プライマー層13、プライマー層14の一部となるサブプライマー層14’を形成したものと、板ガラス16の表面にプライマー層15、プライマー層14の一部となるサブプライマー層14’’を形成したものとを準備する。
【0047】
〔画像形成工程〕
具体的には、まず、板ガラス11の表面にカラーインク層12を形成する(画像形成工程)。本実施形態において、カラーインク層12を形成するための紫外線硬化型インクはインクジェットによって印刷する。
【0048】
本発明に係る装飾積層体の製造方法における、画像形成工程及び以降の工程において、カラーインク層12、プライマー層13、14、15を形成するためのインクを塗布する手段は特に限定されないが、全てのインクの塗布を、当該インクを硬化させるための光を照射する機能を有するインクジェットによって行うことがより好ましい。第1の基板と第2の基板とを接着するまでを一台のインクジェット装置で行なうことが可能であり、且つ、接着は容易に行えるため、装飾積層体を極めて簡易に製造することができる。
【0049】
また、カラーインク層12はインクを塗布した後、紫外線を照射して硬化させる。紫外線を照射する方法としては、例えば、インクジェットによってインクを吐出する際に、ヘッドに隣接して設けた紫外線照射器によって紫外線を照射しながら印刷を行なってもよい。また、カラーインク層12を形成するためのインクを全て吐出した後に、板ガラス11の表面全体に紫外線を照射してもよい。また、ヘッドに隣接して設けた紫外線照射器によって仮硬化を行ない、次いで、板ガラス11の表面全体に紫外線を照射して本硬化を行なってもよい。
【0050】
〔第1基板上硬化プライマー層形成工程〕
次に、カラーインク層12の上に紫外線硬化型インクを塗布して硬化させることでプライマー層13を形成する。
【0051】
また、上記実施形態2のように、板ガラス11上にカラーインク層12が形成されていない箇所が在る場合には、カラーインク層12の上に紫外線硬化型インクを塗布する前に、当該箇所に紫外線硬化型インクを塗布して、硬化させる。これにより、上述のように、板ガラス11が未硬化プライマー層をはじくことを防ぎ、表面張力の影響を抑えることができる。
【0052】
板ガラス11上のカラーインク層12が形成されていない箇所に、プライマー層13を形成する場合には、カラーインク層12の画像データを反転させた反転データを用いて、当該インクを塗布すればよい。
【0053】
本実施形態では、第1基板上硬化プライマー層形成工程は画像形成工程と同様にインクジェットによって行う。プライマー層13を形成するためのインクを塗布した後に、紫外線を照射して硬化させる。紫外線を照射する方法については、画像形成工程での説明に準じる。
【0054】
〔第2基板上硬化プライマー層形成工程〕
また、板ガラス16の上に、紫外線硬化型インクを塗布して硬化させることでプライマー層15を形成する(第2基板上硬化プライマー層形成工程)。これにより、上述のように、板ガラス11が未硬化プライマー層をはじくことを防ぎ、表面張力の影響を抑えることができる。
【0055】
本実施形態では、第2基板上硬化プライマー層形成工程は画像形成工程と同様にインクジェットによって行う。プライマー層15を形成するためのインクを塗布した後に、紫外線を照射して硬化させる。紫外線を照射する方法については、画像形成工程での説明に準じる。
【0056】
〔未硬化プライマー層形成工程〕
次に、紫外線硬化型インクをプライマー層13及びプライマー層15のそれぞれの上に塗布して、未硬化の状態にしておくことで、サブプライマー層14’及びサブプライマー層14’’を形成する。
【0057】
具体的には、プライマー層14を形成するための紫外線硬化型インクをプライマー層13及びプライマー層15の上に塗布する。このインクの塗布は、画像形成工程、第1基板上硬化プライマー層形成工程及び第2基板上硬化プライマー層形成工程と同様にインクジェットで行なう。ここで、未硬化の状態にしておくために、紫外線を照射しなくてもよいし、完全に硬化しない程度の照度で紫外線を照射して、仮硬化させてもよい。
【0058】
未硬化の状態にしておき、後述の積層工程で光を照射するので、容易に、板ガラス11及び16の接着を行なうことができる。
【0059】
なお、サブプライマー層14’及びサブプライマー層14’’は、本実施形態では、プライマー層13及びプライマー層15のそれぞれの上に設けるが、本発明はこれに限定されない。上述の通り、本発明では、未硬化プライマー層を画像層の上及び第2の基板の上のうち少なくとも一方に形成すればよく、また、未硬化プライマー層と、画像層の上又は第2の基板との間には、予め、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させたプライマー層を設けておいてもよい。いずれの構成であっても、第1の基板と第2の基板とを簡易に接着できる。
【0060】
〔積層工程〕
未硬化プライマー層形成工程の後、板ガラス11と、板ガラス16とを、サブプライマー層14’及び14’’が接するように重ねあわせる。次に、紫外線を照射して、未硬化の状態にしてあるサブプライマー層14’及び14’’を硬化させることで、硬化したプライマー層14を形成する。
【0061】
紫外線を照射する方法は特に限定されないが、例えば、重ねあわせたあとの装飾積層体10の片面又は両面から紫外線を照射すればよい。
【0062】
なお、サブプライマー層14’及び14’’を重ねあわせた後、紫外線を照射する前に、水平方向に動かしてもよい。摺動等させることで、空気がより抜けやすくなり、空気の混入をより抑制することができる。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
<付記事項>
以上のように、本発明に係る装飾積層体の製造方法の一実施形態は、板ガラス11と、板ガラス11上に配置されたカラーインク層12と、カラーインク層12の上に配置されたプライマー層13、14、15と、プライマー層15の上に配置された、板ガラス16と、を備え、カラーインク層12及びプライマー層13、14、15は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている装飾積層体の製造方法であって、板ガラス11の上にカラーインク層12を形成する画像層形成工程と、カラーインク層12の上及び板ガラス16の上のうち少なくとも一方に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して、未硬化の状態にしておく、未硬化プライマー層形成工程と、上記未硬化プライマー層形成工程の後に、未硬化の状態にしてあるサブプライマー層14’、14’’が板ガラス11及び板ガラス16に挟まれるように重ねあわせて、光を照射して、当該未硬化の状態にしてあるプライマー層を硬化させる積層工程と、を含む。
【0065】
光を照射することでプライマーを硬化させて製造することができるので、簡易に製造可能である。なお、特許文献2のような接着剤を使用する必要がないので、ガラス等の素材及びインクを侵して、画像を劣化させることを防ぐという利点も有する。
【0066】
本発明に係る装飾積層体の製造方法の一実施形態では、板ガラス16の上に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる第2基板上硬化プライマー層形成工程を、未硬化プライマー層形成工程の前に含む。
【0067】
板ガラス16に直接、未硬化プライマー層が接触すると、板ガラス16が未硬化プライマー層をはじくことで、未硬化プライマー層の表面張力の影響が出ることがある。例えば、未硬化プライマー層がだまになったり、未硬化プライマー層の表面に凹凸が生じたりすることがある。このまま板ガラス11と積層させると、画像にムラが生じているような外観になる虞がある。そこで、板ガラス16上に、未硬化プライマー層を形成する前に、プライマー層15を形成してすぐに硬化させておくことで、板ガラス16が未硬化プライマー層をはじくことを防ぎ、表面張力の影響を抑えることができる。これにより、未硬化プライマー層がだまになること等を防ぐことができる。また、プライマー層15の上に未硬化プライマー層を設ける場合には、未硬化プライマー層の表面が平滑化(レベリング)され、積層したときに空気及び埃等の異物の混入を防ぎ、より高品質な装飾積層体となる。
【0068】
本発明に係る装飾積層体の製造方法の一実施形態では、板ガラス11の上であって、カラーインク層12が形成されていない箇所に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる第1基板上硬化プライマー層形成工程を、未硬化プライマー層形成工程の前に含む。
【0069】
板ガラス11が露出した箇所に直接、未硬化プライマー層が在ると、当該箇所が未硬化プライマー層をはじくことで、未硬化プライマー層の表面張力の影響が出ることがある。例えば、未硬化プライマー層がだまになったり、未硬化プライマー層の表面に凹凸が生じたりすることがある。このまま板ガラス16と積層させると、画像にムラが生じているような外観になる虞がある。そこで、当該箇所に、未硬化プライマー層を形成する前に、プライマー層を形成してすぐに硬化させておくことで、板ガラス11が未硬化プライマー層をはじくことを防ぎ、表面張力の影響を抑えることができる。これにより、未硬化プライマー層がだまになること等を防ぐことができる。また、プライマー層13の上に未硬化プライマー層を設ける場合には、未硬化プライマー層の表面が平滑化(レベリング)され、積層したときに空気及び埃等の異物の混入を防ぎ、より高品質な装飾積層体となる。
【0070】
本発明に係る装飾積層体の製造方法の一実施形態では、カラーインク層12上に、光硬化性化合物を含むインクを塗布して硬化させる第1基板上硬化プライマー層形成工程を、上記未硬化プライマー層形成工程の前に含む。
【0071】
板ガラス11及び板ガラス16の表面のツヤが装飾の外観に与える影響を抑え、表面をマットのような風合いにすることができる。
【0072】
また、装飾積層体10は、板ガラス11と、板ガラス11の上に配置されたカラーインク層12と、カラーインク層12の上に配置されたプライマー層13、14、15と、プライマー層15の上に配置された、板ガラス16と、を備え、カラーインク層12及びプライマー層13、14、15は、光硬化性化合物を含むインクによって形成されている。
【0073】
光を照射することでプライマーを硬化させて製造することができるので、簡易に製造可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば、表札、ネームプレート、オブジェ等に利用可能な装飾物に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10、20 装飾積層体
11 板ガラス(第1の基板)
12 カラーインク層(画像層)
13、14、15 プライマー層
14’、14’’ サブプライマー層
16 板ガラス(第2の基板)
図1
図2
図3