特許第6374247号(P6374247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

特許6374247タイヤ用ライン塗布装置およびタイヤ用ライン塗布方法
<>
  • 特許6374247-タイヤ用ライン塗布装置およびタイヤ用ライン塗布方法 図000003
  • 特許6374247-タイヤ用ライン塗布装置およびタイヤ用ライン塗布方法 図000004
  • 特許6374247-タイヤ用ライン塗布装置およびタイヤ用ライン塗布方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374247
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】タイヤ用ライン塗布装置およびタイヤ用ライン塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20180806BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20180806BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20180806BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20180806BHJP
   F04B 11/00 20060101ALI20180806BHJP
   F04B 43/12 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B05C11/10
   B05C5/00 101
   B05D3/00 B
   B29D30/06
   F04B11/00 Z
   F04B43/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-143993(P2014-143993)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-19938(P2016-19938A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】伊田 真悟
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−198767(JP,A)
【文献】 特開平07−186298(JP,A)
【文献】 特開平02−233170(JP,A)
【文献】 特開2014−069102(JP,A)
【文献】 特開2004−188400(JP,A)
【文献】 特開2011−003203(JP,A)
【文献】 特開2010−075889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00− 21/00
B05D 1/00− 7/26
B29C 44/00− 44/60
B29C 67/30− 67/24
B29D 30/00− 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出加工されたタイヤ材料を搬送しながら、その表面に連続的にインクを塗布してラインのマーキングを施すタイヤ用ライン塗布装置であって、
前記インクが収容されたインク補給タンクと、
前記タイヤ材料の表面に前記ラインをマーキングするマーカーと、
前記インク補給タンクから供給された前記インクを前記マーカーに圧送するポンプと
を備え、
前記ポンプとしてチューブポンプが用いられており、
前記ポンプと前記マーカーとを連結する搬送経路に、前記チューブポンプの脈動により生じるインクの圧力変動を吸収するアキュームレーターが設けられており、
前記ポンプと前記マーカーとを連結する搬送経路の前記アキュームレーターの下流側に、切換速度を調整可能な切換弁が設けられて
前記ポンプの動作中に、前記切換弁を切換えて前記ポンプから前記マーカーへの前記インクの圧送を開始する際、前記アキュームレーター内部の圧力が上昇するまで前記切換弁の切換え動作を遅らせることにより、マーキングが開始される前に前記マーカーおよび前記インク補給タンクのいずれにもインクが流れない時間を一時的に生じさせることができるように構成されていることを特徴とするタイヤ用ライン塗布装置。
【請求項2】
前記マーカーが、
胴体部と、
前記胴体部の一端側に設けられた先端部と、
前記先端部の先に形成されて、前記インクを吐出する吐出口と、
前記胴体部から前記先端部を経て前記吐出口に通じる貫通孔とを
有しており、
前記吐出口の口径が0.8〜3mmであり、前記胴体部における前記貫通孔の径が0.8〜4mmであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ライン塗布装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のタイヤ用ライン塗布装置を用いて、押出加工されたタイヤ材料の表面に連続的にラインのマーキングを施すタイヤ用ライン塗布方法であって、
前記ポンプの動作中に、前記切換弁を切換えて前記ポンプから前記マーカーへの前記インクの圧送を開始する際、前記アキュームレーター内部の圧力が上昇するまで前記切換弁の切換え動作を遅らせることを特徴とするタイヤ用ライン塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機から押出されたタイヤ材料の表面に材料識別用のマーキングを施すタイヤ用ライン塗布装置およびタイヤ用ライン塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程においては、成形機から押出されたトレッドゴムなどのタイヤ材料を搬送しながら、その表面にマーカー(塗布用ガン)を用いてインクで連続的に識別用ラインのマーキングを施すことが一般に行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このマーキングに使用される従来のタイヤ用ライン塗布装置(以下単に「ライン塗布装置」とも言う)の一例の概略構成を図3に示す。図3に示すように、従来のライン塗布装置31は、インクが収容されたインク補給タンク32と、インク補給タンク32からインクを圧送するポンプ33と、ラインA1のマーキングを施すためにインクをタイヤ材料Aの表面に塗布するマーカー34と、ポンプ33から圧送されたインクの供給先を切換える切換弁36(電磁弁)と、インクを搬送する配管35とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−184218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のライン塗布装置には、以下に示すような問題があった。
【0006】
即ち、従来のライン塗布装置においては、一定の狭い幅で均一なラインのマーキングを施す必要があるため、インクの使用流量が少なく、脈動の小さいダイヤフラム式のポンプが採用されていた。しかし、このダイヤフラム式のポンプはその原理上、異物(インクのカスや固形物)がインク内に混入し易く、この異物がダイヤフラムに付着して、急にインクを送れなくなるトラブルが発生していた。
【0007】
次に、マーカーにはインクを通す貫通孔が形成されているが、この貫通孔に溜ったインクの表面張力が弱いため、不使用時、マーカーが周辺設備に当たった場合や人が誤って触れた場合、その衝撃や振動でマーカーの吐出口からインクが垂れ落ち、マーカー内部に空気が侵入することがある。この場合、次回使用時には空気が排出されるまでインクが吐出されず、不良品(リジェクト)が発生する恐れがあった。
【0008】
また、マーカー内部でインクが固化することもあり、その際には、作業者が細い棒を用いてマーカーの先端の吐出口からその内部を洗浄する必要があり、生産性の低下を招く要因となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、インクが送れなくなるトラブル、マーカー内部への空気の侵入、作業者の洗浄に伴う生産性の低下を招く恐れがないタイヤ用ライン塗布技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明によれば上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
請求項1に記載の発明は、
押出加工されたタイヤ材料を搬送しながら、その表面に連続的にインクを塗布してラインのマーキングを施すタイヤ用ライン塗布装置であって、
前記インクが収容されたインク補給タンクと、
前記タイヤ材料の表面に前記ラインをマーキングするマーカーと、
前記インク補給タンクから供給された前記インクを前記マーカーに圧送するポンプと
を備え、
前記ポンプとしてチューブポンプが用いられており、
前記ポンプと前記マーカーとを連結する搬送経路に、前記チューブポンプの脈動により生じるインクの圧力変動を吸収するアキュームレーターが設けられており、
前記ポンプと前記マーカーとを連結する搬送経路の前記アキュームレーターの下流側に、切換速度を調整可能な切換弁が設けられて
前記ポンプの動作中に、前記切換弁を切換えて前記ポンプから前記マーカーへの前記インクの圧送を開始する際、前記アキュームレーター内部の圧力が上昇するまで前記切換弁の切換え動作を遅らせることにより、マーキングが開始される前に前記マーカーおよび前記インク補給タンクのいずれにもインクが流れない時間を一時的に生じさせることができるように構成されていることを特徴とするタイヤ用ライン塗布装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
前記マーカーが、
胴体部と、
前記胴体部の一端側に設けられた先端部と、
前記先端部の先に形成されて、前記インクを吐出する吐出口と、
前記胴体部から前記先端部を経て前記吐出口に通じる貫通孔とを
有しており、
前記吐出口の口径が0.8〜3mmであり、前記胴体部における前記貫通孔の径が0.8〜4mmであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ライン塗布装置である。
【0014】
請求項に記載の発明は、
請求項1または請求項2に記載のタイヤ用ライン塗布装置を用いて、押出加工されたタイヤ材料の表面に連続的にラインのマーキングを施すタイヤ用ライン塗布方法であって、
前記ポンプの動作中に、前記切換弁を切換えて前記ポンプから前記マーカーへの前記インクの圧送を開始する際、前記アキュームレーター内部の圧力が上昇するまで前記切換弁の切換え動作を遅らせることを特徴とするタイヤ用ライン塗布方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インクが送れなくなるトラブル、マーカー内部への空気の侵入、作業者の洗浄に伴う生産性の低下を招く恐れがないタイヤ用ライン塗布技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るタイヤ用ライン塗布装置の概略構成図である。
図2】従来のタイヤ用ライン塗布装置のマーカーと本発明の一実施の形態に係るタイヤ用ライン塗布装置のマーカーとを比較する断面図である。
図3】従来のタイヤ用ライン塗布装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照して説明する。
【0018】
1.基本構成
図1は本実施の形態に係るタイヤ用ライン塗布装置の概略構成図である。本実施の形態に係るライン塗布装置1の基本的な構成は、従来のライン塗布装置と同様であり、図1に示すように、インク補給タンク2と、電磁弁(切換弁の一例)4と、ポンプTPと、マーカー5と、チューブ状の配管20〜23とを備えている。以下、本実施の形態に係るライン塗布装置1の基本的な構成を具体的に説明する。
【0019】
インク補給タンク2は、その内部にインクが収容されており、流出口2bが配管20を介してポンプTPに連結されている。また、ポンプTPは、配管21、電磁弁4、および配管23を介してインク補給タンク2に接続され、また配管21、電磁弁4、および配管22を介してマーカー5にも接続されている。
【0020】
そして、電磁弁4は、流入口4a、第1流出口4b、および第2流出口4cを有しており、ポンプTPの流出口は配管21を介して流入口4aに接続され、第1流出口4bは配管23を介してインク補給タンク2の流入口2aに接続され、第2流出口4cは配管22を介してマーカー5の流入口5aに接続されている。
【0021】
そして、マーキング実施時には電磁弁4の切換えにより、ポンプTPから圧送されたインクが、図1中の矢印F4、F1、F2に示すように、配管21、22を経由してマーカー5の流入口5aに流れ、マーカー5の先端の吐出口からインクが吐出されてタイヤ材料Aに塗布され、ラインA1のマーキングが施される。
【0022】
一方、マーキング停止時には電磁弁4の切換えにより、ポンプTPから圧送されたインクが、図1中の矢印F4、F1、F3に示すように、配管21、23を経由してインク補給タンク2に戻され、インクがインク補給タンク2→ポンプTP→インク補給タンク2→ポンプTP…と循環することにより、インクを撹拌する。
【0023】
2.本実施の形態の特徴
以上の通り、本実施の形態のライン塗布装置の基本的な構成は、従来のライン塗布装置と変わらないが、前記したように、従来のライン塗布装置では、(1)インクが送れなくなるトラブル、(2)マーカー内部への空気の侵入、(3)作業者の洗浄に伴う生産性の低下が問題点となっていた。本実施の形態に係るライン塗布装置では、以下の各々の構成により上記した各問題点を解決している点に、本実施の形態の特徴がある。
【0024】
(1)「インクが送れなくなるトラブル」の解決
本実施の形態に係るライン塗布装置1においては、「インクが送れなくなるトラブル」を解決するために、ポンプTPとしてチューブポンプが用いられる。具体的には、チューブポンプのチューブTP1が外径変換継手Jにより配管20、21と接続されている。
【0025】
チューブポンプは、弾力性のあるチューブTP1をローラでしごいてチューブTP1内のインクを圧送する構成になっているため、従来のダイヤフラム式のポンプに比べて異物の混入に強く、インクを送れなくなるというトラブルを解決することができる。
【0026】
しかし、その一方で、チューブポンプは脈動が大きいという性質を有しており、一定の狭い幅で均一なラインのマーキングを施すことが難しい。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、さらに、ポンプTPとマーカー5とを連結する搬送経路に、ポンプTPの大きな脈動により生じる搬送経路の内部のインクの圧力変動を吸収するアキュームレーター(脈動防止器)3を設けている。
【0028】
具体的には、アキュームレーター3は、上記した搬送経路としての配管21に連結されている。これにより、配管21の内部のインクの圧力を略一定に保つことができ、ポンプTPとして脈動が大きいチューブポンプを採用していても、脈動に伴う配管21の内部のインクの圧力変動を抑制して、マーカー5の先端の吐出口からのインクの吐出量の変動を抑え、一定の狭い幅で均一なラインのマーキングを施すことができる。
【0029】
このように、本実施の形態においては、ポンプTPとして異物の混入に強いチューブポンプを用い、このチューブポンプの脈動を抑制するためにアキュームレーター3を設置している。この結果、インクを送ることができないトラブルの発生を防止しながら、一定の狭い幅で均一なラインのマーキングを施すことができる。
【0030】
このようなアキュームレーター3は、配管をチーズTで分岐させ、分岐先に内径4mm、外径6mm、長さ150〜300mm程度のチューブを設け、チューブ先端にプラグP(メクラ)を設けることにより作製することができる。このアキュームレーター3は、下を向けると内部にインクが侵入するため、常に上向きに設置することが好ましい。上記ではチューブの長さを150〜300mm程度としたが、短くするほど脈動防止機能は小さくなり、長くすれば大きくなる。
【0031】
(2)「マーカー内部への空気の侵入」の解決
前記した「マーカー内部への空気の侵入」を防止するために、マーカーの胴体部における貫通孔の径を従来よりも細くしている。以下、図2に基づいて従来のマーカーと対比しながら説明する。
【0032】
図2は、従来のマーカーと本実施の形態に係るタイヤ用ライン塗布装置に用いられるマーカーとを比較する断面図であり、(a)は従来のライン塗布装置のマーカー、(b)は本実施の形態に係るライン塗布装置のマーカーを示している。
【0033】
図2に示すように、いずれのマーカー5、34も、円筒形状の胴体部52、34aと、円錐形状の先端部54、34cを有している。そして、先端部54、34cには、インクを吐出する吐出口56、34dが形成されている。また、マーカー5、34の胴体部52、34aと先端部54、34cの内部には、吐出口56、34dに向けて先細りとなっている貫通孔53、34bが設けられている。
【0034】
ここで、図2(a)に示す従来のマーカー34では、貫通孔34bに溜ったインクの表面張力が弱いため、不使用時にマーカー34が周辺設備に当たった場合や人が誤って触れた場合の衝撃や振動で吐出口34dからインクが垂れ落ちてマーカー34内部に空気が侵入して溜まり易かった。
【0035】
これに対して、図2(b)に示すマーカー5では、胴体部52における貫通孔53の径が、従来のマーカー34の貫通孔34bの径よりも細くなるように設定されているため、貫通孔53に溜ったインクの表面張力が従来よりも大きくなる。
【0036】
この結果、マーカー5に衝撃や振動が加えられても、吐出口56からインクが垂れ落ち難く、マーカー5内部に空気が侵入して溜まることを抑制することができ、次回使用時にインクを直ちに吐出することができ、不良品の発生を適切に防止することができる。
【0037】
なお、図2(b)では、胴体部52における貫通孔53の径を2mmとしているが、0.8〜4mmであればよい。また、図2(b)では、インクの太さおよび吐出量を考慮して、吐出口56の口径を1mmとしているが、0.8〜3mmであればよい。但し、貫通孔の径は吐出口の口径よりも大きくなるように設定される。
【0038】
(3)「作業者の洗浄に伴う生産性の低下」の解決
次に、「作業者の洗浄に伴う生産性の低下」を防止するために、上記したマーキングの停止と実施の切換えにおいて電磁弁4による切換え動作を遅らせる。これにより、インクをマーカー5に一時的に多く流して、マーカー5内部を洗浄(フラッシング)することができる。
【0039】
具体的には、アキュームレーター3の下流側に設けられた電磁弁4に、マーキング停止時からマーキング実施時への切換速度を調整することができる電磁弁4を用い、この電磁弁4による切換え動作を遅らせることで、マーカー5およびインク補給タンク2のいずれにもインクが流れない時間を一時的に生じさせる。
【0040】
この時間帯においても、ポンプTPの動作は継続されるため、配管21内の圧力の上昇に伴いアキュームレーター3内部の圧力が上昇する。この状態で、電磁弁4がマーカー5の方へ切換わると、アキュームレーター3内の上昇した圧力によりインクがマーカー5に一時的に多く流れるため、マーカー5内部の貫通孔および吐出口が洗浄される。これにより、作業者の洗浄を省略することができ、生産性を向上させることができる。
【実施例】
【0041】
1.実施例および比較例
(1)実施例
図1に示す本実施の形態に係るタイヤ用ライン塗布装置を用いて、押出加工されたタイヤ材料の上にマーキングを施した。
【0042】
(2)比較例
比較例として、図3に示す従来のタイヤ用ライン塗布装置を用いて、実施例と同様にタイヤ材料の上にマーキングを施した。
【0043】
(3)実施例と比較例の相違について
表1に、実施例のマーキングを行うに際して、比較例に用いたタイヤ用ライン塗布装置から変更した構成を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において、比較例から実施例へ変更した主な内容は以下の通りである。
【0046】
(a)インク補給タンクからインクを圧送するポンプとして、異物の混入に強く、インクが送れなくなるトラブルの発生が少ないチューブポンプを用いた。
【0047】
(b)チューブポンプは脈動が大きいため、この脈動を吸収することができるように、ポンプと電磁弁の間の配管にアキュームレーターを設置した。
【0048】
(c)マーカーの貫通孔内に溜まったインクの表面張力を大きくするために、マーカーの貫通孔の径を従来のマーカーの6mmから2mmに変更した(図2参照)。なお、マーカーの先端の吐出口の径は、従来と同様に1mmとした。
【0049】
(d)マーキングの停止と実施の切換において電磁弁をゆっくりと切換えることができるように、切換え速度を調整できる電磁弁を用いて、インクが流れない時間帯を4〜10秒間生じさせ、アキュームレーター内部の圧力を上昇させた。
【0050】
2.評価
マーキングの実施におけるインクに混入した異物の影響、マーカーの吐出口からのインクの垂れ落ち、およびマーカーの吐出口の洗浄作業の要否についての評価を行った。以下、評価結果を示す。
【0051】
(a)実施例では、インクを圧送するポンプとして、異物の混入に強いチューブポンプを用いたことにより、インクに混入した異物によってインクを送れなくなるようなトラブルの発生が適切に防止されていることが確認できた。
【0052】
(b)さらに、ポンプと電磁弁の間の配管に、脈動を吸収することができるアキュームレーターを配置することにより、チューブポンプの大きな脈動に伴う配管の内部のインクの圧力変動を抑制し、マーカーの吐出口からのインクの吐出量の変動も抑えて、一定の狭い幅で均一なラインのマーキングを施すことができることが確認できた。
【0053】
(c)また、マーカーの貫通孔の径を従来よりも小さな2mmにすることにより、貫通孔に溜ったインクの表面張力が強くなり、マーカーの吐出口からインクが垂れ落ちることが防止されて、マーカーの貫通孔に空気が入ることを防止できることが確認できた。
【0054】
(d)マーキングの停止と実施とを切換える際に電磁弁の動作を遅くしてゆっくりと切換えることができるようにしたことにより、高い圧力でインクがマーカーに一時的に多く供給されて、フラッシング効果によりマーカーの内部を洗浄することができ、従来のような手作業による洗浄作業が不要となることが確認できた。
【0055】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、31 タイヤ用ライン塗布装置
2、32 インク補給タンク
2a インク補給タンクの流入口
2b インク補給タンクの流出口
3 アキュームレーター
4 電磁弁
4a 電磁弁の流入口
4b 電磁弁の第1流出口
4c 電磁弁の第2流出口
5、34 マーカー
5a マーカーの流入口
20〜23、35 配管
33、TP ポンプ
34a、52 胴体部
34b、53 貫通孔
34c、54 先端部
34d、56 吐出口
36 切換弁
A タイヤ材料
A1 ライン
F1〜F4 インクの流れ方向を示す矢印
J 外径変換継手
P プラグ
T チーズ
TP1 チューブ
図1
図2
図3