特許第6374250号(P6374250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374250
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】接合部の補強治具
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20180806BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20180806BHJP
   F16B 2/12 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F16B7/04 301B
   F16B5/02 E
   F16B7/04 B
   F16B2/12 B
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-146240(P2014-146240)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23659(P2016-23659A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】597033085
【氏名又は名称】岡山市
(73)【特許権者】
【識別番号】397012923
【氏名又は名称】大成機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宗友 信夫
(72)【発明者】
【氏名】矢野 光信
(72)【発明者】
【氏名】安井 忍
(72)【発明者】
【氏名】戸継 昭人
(72)【発明者】
【氏名】西原 陽介
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−316767(JP,A)
【文献】 特開2005−147243(JP,A)
【文献】 独国特許出願公告第01196449(DE,B2)
【文献】 特開2013−204636(JP,A)
【文献】 特開2005−090505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/04
F16B 2/12
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筒状部材の端部から径外方向に突出した第一突出部と第二筒状部材の端部から径外方向に突出した第二突出部とを連結ボルトで接合した接合部に装着され、
前記連結ボルトの頭部又はナットが当接する前記第一突出部の外側面を押圧する第一挟持部材と、
前記第二突出部の外側面を押圧する第二挟持部材と、
前記第一挟持部材と前記第二挟持部材とを、前記第一突出部および前記第二突出部の接合方向に近接させて固定する締結機構と、を備え、
前記第一挟持部材は、前記第一突出部の外側面において、前記第一筒状部材の周方向に沿った前記頭部又は前記ナットの両側の領域を押圧する二つの押圧部を有し、
前記接合方向から見たとき、前記第一挟持部材が前記第一突出部を押圧する押圧中心から前記第一筒状部材の中心までの距離と、前記第二挟持部材が前記第二突出部を押圧する押圧中心から前記第二筒状部材の中心までの距離との差は、前記頭部又は前記ナットの半径より小さく構成されている接合部の補強治具。
【請求項2】
記接合方向から見たとき、前記二つの押圧部の押圧中心を結んだ線分の少なくとも一部が前記頭部又は前記ナットに含まれている請求項1に記載の接合部の補強治具。
【請求項3】
前記第一突出部の外周面よりも径方向外側の位置において、前記第一挟持部材および前記第二挟持部材のうち、いずれか一方に挿入部が形成され、いずれか他方に前記接合方向に沿って前記挿入部を内部に受け入れる被挿入部が形成され、
前記締結機構は、前記挿入部と前記被挿入部とを前記接合方向に引き寄せて固定する請求項1又は2に記載の接合部の補強治具。
【請求項4】
前記第一挟持部材、前記第二挟持部材および前記締結機構で構成される治具本体は、前記第一筒状部材の周方向に沿って複数配置され、
前記複数の治具本体に取り付けられ、前記治具本体が前記径外方向へ移動するのを規制するバンド部材を備えている請求項3に記載の接合部の補強治具。
【請求項5】
前記バンド部材は、前記第一挟持部材又は前記第二挟持部材の外側面に当接する環状の鍔状部と、前記第一挟持部材又は前記第二挟持部材の外側面の径方向外側の位置において、前記鍔状部から前記接合方向に沿って立設する外壁部とを有している請求項4に記載の接合部の補強治具。
【請求項6】
前記締結機構は締結ボルトを有し、
前記バンド部材は、前記締結ボルトが挿入される貫通孔を有する円環平板状に形成され、前記第一挟持部材又は前記第二挟持部材の外側面と前記締結ボルトの頭部との間に配置される請求項4に記載の接合部の補強治具。
【請求項7】
前記挿入部と前記被挿入部とは、前記接合方向に垂直な断面形状が相対回転不能な形状に構成されている請求項3から6のいずれか一項に記載の接合部の補強治具。
【請求項8】
前記被挿入部の外面は、前記第一突出部の外周面と当接している請求項3から7のいずれか一項に記載の接合部の補強治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両筒状部材の端部から径外方向に突出した突出部どうしの接合部を補強する補強治具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記補強治具として、例えば特許文献1には、一対のフランジ接合部の連結ボルト(文献ではボルトとナット)に対して個別に取付けられる一対の挟持部材と、これら挟持部材が接合部の外側面のうち連結ボルトより径内方向の部位を押圧した状態で、両挟持部材を接合部の接合方向に引き寄せて固定する締結機構(文献では結合部材)とを備えた構成が開示されている。この締結機構は、両挟持部材のうち、接合部の外周面よりも径外方向に形成した一対のボルト螺合孔に、両ネジボルトを螺合して構成されている。
【0003】
また、両挟持部材は夫々、ボルト頭部又はナットを逃がす逃げ孔あるいはボルト頭部又はナットを収容する凹み部を有している。上記構成により、接合部の連結ボルトに沿って補強治具を取り付けることができるので、ボルトの補強及びボルトの老朽化に対して対応することが可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4157413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐震性をより向上させるために、既存或いは新設の接合部を、地下埋設管路耐震継手の技術基準(案)(昭和52年、国土開発技術研究センター)に基づく耐震管路と同等(両筒状部材の離脱防止力が3DkN以上(Dは呼び径))の耐震性能A級の性能を有するものに補強することが望まれる。また、接合部を軸方向に引き離す引張力や径方向に位置ずれさせる剪断力が作用した場合でも、接合部の離間や位置ずれを防止し、内部を通流する流体の漏洩を確実に防止することが望まれる。さらに、老朽化した補修弁などは、特に、弁箱と短管との接合部における連結ボルトが腐食による強度低下を招いていることが多い。このため、補修弁の交換作業に際して接合部の隙間から漏水し、最終的に接合部の連結が外れるおそれがあるので、連結ボルト周りを補強することが望まれる。
【0006】
一方、引用文献1のように従来の補強治具にあっては、一対のボルト螺合孔に亘って螺合させた両ネジボルトにより締付固定されており、一対の挟持部材は実質的に一対のボルト螺合孔及び両ネジボルトのみで締付固定されているに過ぎない。このため、接合部に引張力或いは剪断力が作用した際には、一対の挟持部材を介して一対のボルト螺合孔と両ネジボルトとの螺合箇所に集中し、両ネジボルトが伸長したり、螺合箇所のねじ山が破壊したりすることで、接合部の連結が外れるおそれがある。
【0007】
また、特許文献1の補強治具は、逃げ孔又は凹み部を有した一対の挟持部材が、接合部の外側面のうち、連結ボルトより径内方向の部位を押圧する形態である。このため、補修弁における弁箱と短管との接合部のように、接合部を挟んで両側の管径が異なり、連結ボルトより径内方向の部位の空間が狭隘である場合、これら挟持部材の押圧部を該空間に挿入することができない。しかも、連結ボルトの軸方向から挟持部材の押圧部を該空間に挿入することとなるので、例えば補修弁の端部に他の部材と接合するフランジを設けている場合、該フランジが邪魔になって挿入し難い。
【0008】
一方、大径となる弁箱側の接合部に当接する挟持部材の押圧部のみ径外方向に引退させることも考えられるが、夫々の接合部に対する押圧作用点が径方向にずれて、大きな曲げ力が連結ボルトに付与される。その結果、連結ボルトが破損して、接合部から漏水するおそれがある。特に、長期間に亘って交換されていない補修弁などは、連結ボルトの強度が極度に低下していることも想定されるので、従来の補強治具では対応が難しく改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、あらゆる接合部における連結ボルト周りを補強することが可能で、接合部の離間や位置ずれを防止できる補強治具を合理的に構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る接合部の補強治具の特徴構成は、第一筒状部材の端部から径外方向に突出した第一突出部と第二筒状部材の端部から径外方向に突出した第二突出部とを連結ボルトで接合した接合部に装着され、前記連結ボルトの頭部又はナットが当接する前記第一突出部の外側面を押圧する第一挟持部材と、前記第二突出部の外側面を押圧する第二挟持部材と、前記第一挟持部材と前記第二挟持部材とを、前記第一突出部および前記第二突出部の接合方向に近接させて固定する締結機構と、を備え、前記第一挟持部材は、前記第一突出部の外側面において、前記第一筒状部材の周方向に沿った前記頭部又は前記ナットの両側の領域を押圧する二つの押圧部を有し、前記接合方向から見たとき、前記第一挟持部材が前記第一突出部を押圧する押圧中心から前記第一筒状部材の中心までの距離と、前記第二挟持部材が前記第二突出部を押圧する押圧中心から前記第二筒状部材の中心までの距離との差は、前記頭部又は前記ナットの半径より小さく構成されている点にある。本構成によると、第一挟持部材の二つの押圧部を周方向に沿った連結ボルトの両側に配置しているので、補強治具を接合部に装着する際、二つの押圧部は連結ボルトの頭部又はナットを挟むように径方向に沿ってスムーズに挿入される。このため、従来のように押圧部を連結ボルトの軸方向から挿入する場合に比べ、例えば補修弁の端部に設けられたフランジが邪魔になるといった不都合が解消される。このため、従来のように押圧部を連結ボルトの軸方向から挿入する場合に比べ、例えば補修弁の端部に設けられたフランジが邪魔になるといった不都合が解消される。また、二つの押圧部は径方向に沿って挿入されるので、連結ボルトより径内側部位の空間が狭隘である場合でも、補強治具を接合部に確実に挿入することができる。しかも、連結ボルトの両側を押圧するので押圧面積を広く確保することが可能となり、連結ボルト周りの接合部の補強が確実なものとなる。本構成では、第一挟持部材の押圧作用点の筒状部材中心からの距離と、第二挟持部材の押圧作用点の筒状部材中心からの距離との差は、連結ボルト頭部又はナットの半径より小さく構成されている。つまり、連結ボルトの頭部又はナットを基準として、第一挟持部材の押圧作用点と第二挟持部材の押圧作用点とが、径方向に大きくずれることがない。このため、従来のように、連結ボルトより径内側部位の空間が狭隘で、第一挟持部材の押圧部と第二挟持部材の押圧部を径方向に位置ずれさせた場合に、補強治具の傾倒や外れ、連結ボルトに無理な曲げ力が掛かって破損するといった不都合が解消される。よって、接合部における連結ボルト周りの補強作業が確実なものとなる。
【0011】
他の特徴構成として、前記接合方向から見たとき、前記二つの押圧部の押圧中心を結んだ線分の少なくとも一部が前記頭部又は前記ナットに含まれている点にある。本構成によると、第一挟持部材の二つの押圧部を周方向に沿った連結ボルトの両側に配置しているので、補強治具を接合部に装着する際、二つの押圧部は連結ボルトの頭部又はナットを挟むように径方向に沿ってスムーズに挿入される。このため、従来のように押圧部を連結ボルトの軸方向から挿入する場合に比べ、例えば補修弁の端部に設けられたフランジが邪魔になるといった不都合が解消される。
【0012】
また、二つの押圧部は径方向に沿って挿入されるので、連結ボルトより径内側部位の空間が狭隘である場合でも、補強治具を接合部に確実に挿入することができる。しかも、連結ボルトの両側を押圧するので押圧面積を広く確保することが可能となり、連結ボルト周りの接合部の補強が確実なものとなる。
【0013】
このように、簡便な構成であらゆる接合部における連結ボルト周りを補強することのできる補強治具を提供することができた。
【0014】
【0015】
【0016】
他の特徴構成は、前記第一突出部の外周面よりも径方向外側の位置において、前記第一挟持部材および前記第二挟持部材のうち、いずれか一方に挿入部が形成され、いずれか他方に前記接合方向に沿って前記挿入部を内部に受け入れる被挿入部が形成され、前記締結機構は、前記挿入部と前記被挿入部とを前記接合方向に引き寄せて固定する点にある。
【0017】
本構成によると、夫々の挟持部材の押圧部を両突出部の外側面に各別に当て付けた状態で締結機構を締付けると、両挟持部材が接合方向に引き寄せられるにつれて、挿入部と被挿入部とが軸方向で重なった状態となる。
【0018】
これにより、夫々の挟持部材が締結機構により締付固定された状態で、両突出部を径方向に位置ずれさせる剪断力が作用した場合や、両突出部を軸方向に引き離す引張力が作用して両挟持部材の押圧部が開き方向の力を受けた場合でも、締結機構の締結部位に加えて、挿入部と被挿入部との重なり部位でもこれらの力を受け止めるので、締結機構の締結部位に掛かる応力の低減を図ることができる。したがって、補強治具による両突出部の接合強度を向上させて、両突出部の離間やずれ及びこれらに伴う流体の漏洩が防止され、耐震性能の向上が図られる。よって、連結ボルト周りを補強しつつ、両突出部の離間や位置ずれを確実に防止することができる。
【0019】
他の特徴構成は、前記第一挟持部材、前記第二挟持部材および前記締結機構で構成される治具本体は、前記第一筒状部材の周方向に沿って複数配置され、前記複数の治具本体に取り付けられ、前記治具本体が前記径外方向へ移動するのを規制するバンド部材を備えている点にある。
【0020】
接合部に剪断方向或いは引張方向の力が作用した場合、治具本体は径外方向に移動して脱落するおそれがある。しかしながら、本構成のように径外方向への移動を規制するバンド部材を設けることで治具本体の脱落が阻止される。よって、連結ボルト周りの接合部の強度を長期間に亘って確保することができる。
【0021】
他の特徴構成は、前記バンド部材は、前記第一挟持部材又は前記第二挟持部材の外側面に当接する環状の鍔状部と、前記第一挟持部材又は前記第二挟持部材の外側面の径方向外側の位置において、前記鍔状部から前記接合方向に沿って立設する外壁部とを有している点にある。
【0022】
本構成によると、バンド部材を挟持部材に装着するに際し、環状の鍔状部を第一挟持部材又は第二挟持部材の外側面に引っ掛ければよいので、組付けが容易である。また、環状の鍔状部と外壁部とを設けるといった簡便な構成で複数の治具本体の脱落が阻止できるので、効率的である。よって、簡便な構成でありながら、連結ボルト周りの接合部の強度を長期間に亘って確保することができる。
【0023】
他の特徴構成は、前記締結機構は締結ボルトを有し、前記バンド部材は、前記締結ボルトが挿入される貫通孔を有する円環平板状に形成され、前記第一挟持部材又は前記第二挟持部材の外側面と前記締結ボルトの頭部との間に配置される点にある。
【0024】
本構成のように、円環平板状のバンド部材を挟持部材の外側面と締結ボルトの頭部との間に設けることで、締結ボルトの締結力によってバンド部材は強固に固定される。その結果、周方向に沿って配置された複数の治具本体のうち、いずれかの治具本体に径外方向への力が作用して脱落しそうになっても、周方向に沿って固定されたバンド部材が所望の抵抗力を発揮し、脱落を確実に防止することができる。しかも、バンド部材は円環平板状であるので、材料コストを節約することができる。
【0025】
他の特徴構成は、前記挿入部と前記被挿入部とは、前記接合方向に垂直な断面形状が相対回転不能な形状に構成されている点にある。
【0026】
本構成によれば、挿入部と被挿入部とが接合方向周りで相対回転不能な状態で係合されるので、一対の挟持部材どうしの相対回転を防止することができる。これにより、挟持部材どうしの相対位置関係を所望の位置関係に固定することができる。よって、締結ボルトの締結作業や治具本体の接合部への装着作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】両筒状部材の分解斜視図である。
図2】両筒状部材の平面図である。
図3】両筒状部材の縦断面図である。
図4】第一挟持部材の概略構成を示す図である。
図5】第二挟持部材の概略構成を示す図である。
図6】補強治具の装着状態を示す斜視図である。
図7】両挟持部材の概略構成を示す図である。
図8】補強治具の装着状態を示す平面図である。
図9】補強治具の装着状態を示す縦断面図である。
図10】両挟持部材の押圧状態を示す平面図である。
図11】別実施形態1に係る補強治具の装着状態を示す平面図である。
図12】別実施形態2に係る補強治具の装着状態を示す縦断面図である。
図13】他の実施形態に係る補強治具の装着状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る接合部の補強治具Pの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、補強治具Pの一例として、補修弁Xの短管T(第一筒状部材の一例)と弁箱V(第二筒状部材の一例)との接合部における連結ボルト4を補強する場合を説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0029】
図1図3には、短管Tと弁箱Vとの接合部が示される。鋳鉄製の短管Tの一端には、弁箱Vの第二突出部1Bが接合される矩形状の第一突出部1Aが、径外方向に突出形成されている。短管Tの他端には、空気弁や作業弁などが取付けられる円盤状のフランジ部Taが径外方向に突出形成されている。また、鋳鉄製の弁箱Vの一端には、短管Tの第一突出部1Aが接合される矩形状の第二突出部1Bが、径外方向に突出形成されている。弁箱Vの他端には、水道管の分岐管などが取付けられる円盤状のフランジ部Vaが径外方向に延出形成されている。
【0030】
第一突出部1Aには、接合方向(軸方向)に貫通する複数の貫通孔3a(本実施形態では、4ヶ所ずつ)が周方向で等間隔に形成され、第二突出部1Bには、一端が閉塞された孔部3b(本実施形態では、4ヶ所ずつ)が周方向で等間隔に形成されている。孔部3bの内周面には雌ネジ部3cが形成されており、孔部3bの閉塞端面まで連結ボルト4の雄ネジ部4bを螺合することで、両突出部1A,1Bが接合されている。つまり、図2図3に示すように、両突出部1A,1Bは、連結ボルト4を埋め込んだ状態で固定されている。
【0031】
図3に示すように、弁箱Vの内部には、ボール弁体Vbが収納されており、開閉操作によりボール弁体Vbが回動し、流路の連通、非連通が切換えられる。このため、弁箱Vは、短管Tより大径に構成されており、両突出部1A,1Bの径外方向の突出量が夫々異なっている。
【0032】
以下、両突出部1A,1Bにおいて、短管T或いは弁箱Vが突出する側の面を外側面1a,1aとし、両突出部1A,1Bが連結ボルト4により連結された際に接合方向(軸方向、以降「接合方向と称する。」)で相互に対向する面を接合面1b,1bとし、さらに、両突出部の1A,1Bの径方向外方側の面を外周面1c,1cとして説明する。
【0033】
図6に示すように、補強治具Pは、両突出部1A,1Bに装着される治具本体Paを備えている。
【0034】
治具本体Paは、連結ボルト4の頭部4aが当接する第一突出部1Aの外側面1aにおいて、頭部4aの両側領域を押圧する二つの押圧部6B,6Bを備えた第一挟持部材6と、第二突出部1Bの外側面1aを押圧する押圧部5Cを備えた第二挟持部材5と、を備えている。また、これら第一挟持部材6および第二挟持部材5を、両突出部1A,1Bの接合方向に引き寄せて(近接させて)締付固定する締結機構7を備えている。これら押圧部6B,5Cの両突出部1A,1Bに対向する押圧面6e,5eには、例えば、押圧面6e,5eに細かな凹凸を形成したり、ゴム部材を押圧面6e,5eの表面に張り付けたりして、両突出部1A,1Bの外側面1a,1aに対して摩擦抵抗が生じるように摩擦加工が施されている。
【0035】
なお、本実施形態における連結ボルト4は、頭部4aを有する六角ボルトの例を示しているが、両ネジボルトをナット(不図示)で締め付ける構成としても良い。この場合、第一突出部1Aの外側面1aにナットが当接し、第一挟持部材6の二つの押圧部6B,6Bは、ナットの両側領域を押圧する。また、本実施形態では、埋め込み式の連結ボルト4の例を示しているが、ボルト(両ネジボルト含む)とナット形式の連結ボルト4の場合、第二挟持部材5に、第二突出部1Bの外側面1aにおいて、ナットの両側領域を押圧する二つの押圧部5C,5Cを設けても良い。
【0036】
図4に示すように、第一挟持部材6は、金属部材により構成され、横断面視で外面6a及び内面6bが四角形状の有底角筒状に形成された被挿入部6Aと、被挿入部6Aの一端部においてこの被挿入部6Aの外面6aの四辺のうちの一辺から外方側に向かって二股状に延出する二つの押圧部6B,6Bとを一体的に備えて構成されている。
【0037】
被挿入部6Aは、横断面視で正方形状に形成され(図4(c)参照)、被挿入部6Aの内部には、両突出部1A,1Bの接合方向に沿って、後述する第二挟持部材5の挿入部5Aを受け入れる筒状内部空間6cが形成されている。つまり、図6に示すように、治具本体Paが両突出部1A,1Bに装着されるとき、第一突出部1Aの外周面1cよりも径方向外側の位置において、第二挟持部材5に挿入部5Aが形成され、第一挟持部材6に接合方向に沿って挿入部5Aを内部に受け入れる被挿入部6Aが形成されている。
【0038】
筒状内部空間6cは横断面視で概略正方形状に形成され、横断面視で正方形状の挿入部5Aの外径よりも若干大きく形成されている。このため、図6に示すように、挿入部5Aの外面5aと被挿入部6Aの内面6bとの接合方向に垂直な断面形状は、挿入部5Aを被挿入部6Aの筒状内部空間6cに挿入すると、挿入方向(筒状内部空間6cの長手方向)には摺動可能であるが、挿入方向周り(筒状内部空間6cの長手方向に沿った軸周り)での相対回転が不能となるように形成されている。
【0039】
また、筒状内部空間6cにおいて、押圧部6B,6Bが形成された側とは反対側は開口形成されている。また、筒状内部空間6cにおいて、押圧部6B,6Bが形成された側は、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aを挿入可能で且つ頭部7bを挿通不能な挿通孔6dが、被挿入部6Aの底部を貫通する状態で開口形成されている。なお、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aが挿通孔6dに挿通された状態では、雄ネジ部7aの外周面と挿通孔6dの内周面との間には、所定の隙間が形成される(図9参照)。
【0040】
二つの押圧部6B,6Bは、側面視で腕の長さが同一の二股状に形成され(図4(a)参照)、縦断面視で矩形状に形成されている(図4(a)のVb−Vb断面である図4(b)参照)。また、二つの押圧部6B,6Bのうち筒状内部空間6cの開口側の先端部位が、被挿入部6Aの外面6aと垂直な押圧面6e,6eとして形成されている。
【0041】
図8に示すように二つの押圧部6B,6Bは、第一突出部1Aの外側面1aにおいて、短管Tの周方向に沿った連結ボルト4の頭部4aの両側の領域を押圧するように構成されている。つまり、二つの押圧部6B,6Bは、被挿入部6Aの外面6aから外方側に向かって連結ボルト4の頭部4aの外径より大きな間隔を維持しつつ延出し、頭部4aを収容するU字状の頭部収容部6fを形成している。両挟持部材6,5を両突出部1A,1Bに径外方向から装着すると、この頭部収容部6fが頭部4aに当接しない状態で、二つの押圧部6B,6Bが第一突出部1Aの外側面1aを押圧することとなる。
【0042】
図5に示すように、第二挟持部材5は、金属材料により構成され、横断面視で外面5aが四角形状且つ内周面5bが円形状の有底角筒状に形成された挿入部5Aと、挿入部5Aの一端部においてこの挿入部5Aの外面5aから全周に亘って外方側に延出する鍔状部5Bと、鍔状部5Bの四辺のうちの一辺からさらに外方側に延出する押圧部5Cとを一体的に備えて構成されている。
【0043】
挿入部5Aは、横断面視で正方形状に形成され(図5(c)参照)、内部には、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aを挿通可能な円筒状の筒状内部空間5cが形成されている。筒状内部空間5cの内径は、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aの外径よりも若干大径に形成されている。
【0044】
鍔状部5Bは、側面視で正方形状に形成され、中央部に筒状内部空間5cが貫通形成されている(図5(a)参照)。
【0045】
筒状内部空間5cにおいて、鍔状部5B及び押圧部5Cが形成された側は開口形成され、鍔状部5B及び押圧部5Cが形成された側とは反対側は、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aが螺合可能な雌ネジ部5dが、挿入部5Aの底部を貫通する状態で開口形成されている。つまり、雌ネジ部5dは、挿入部5Aにおける筒状内部空間5cの内周面5bにおいて、鍔状部5B及び押圧部5Cが形成された側とは反対側の端部に形成されている。
【0046】
押圧部5Cは、側面視で若干先窄み形状に形成され(図5(a)参照)、縦断面視で先端側に行くにつれて雌ネジ部5d側に傾斜するテーパー形状に形成されている(図5(a)のIVb−IVb断面である図5(b)参照)。また、押圧部5Cのうち雌ネジ部5d側の面の先端部位が、挿入部5Aの外面5aと垂直な押圧面5eとして形成されている。
【0047】
図9図10に示すように、両突出部1A,1Bの接合方向から見たとき、第一挟持部材6の二つの押圧部6B,6Bが第一突出部1Aを押圧する押圧中心K1,K2から短管Tの中心Otまでの距離R1(押圧中心K1,K2を結んだ線分から短管Tの中心Otまでの距離R1)と、第二挟持部材5の押圧部5Cが第二突出部1Bを押圧する押圧中心K3から弁箱Vの中心Ovまでの距離R2との差(|R1−R2|)は、連結ボルト4の頭部4aの半径rより小さく構成されている。
【0048】
つまり、二つの押圧部6B,6Bの押圧中心K1,K2を結んだ線分が、連結ボルト4の軸芯近傍を通過し、押圧部5Cの押圧中心K3が、両突出部1A,1Bの接合方向から見たとき、連結ボルト4の頭部4aの領域に含まれることとなる。これにより、二つの押圧部6B,6Bの押圧中心K1,K2および押圧部5Cの押圧中心K3は、連結ボルト4の頭部4aが第一突出部1Aの外側面1aを押圧する押圧領域から径方向に離間することがない。よって、連結ボルト4の締結力を阻害するような曲げ力が連結ボルト4に作用することがなく、連結ボルト4の破損を防止することができる。
【0049】
一方、二つの押圧部6B,6Bの押圧中心K1,K2を結んだ線分が、連結ボルト4の軸芯近傍を通過しない場合でも、両突出部1A,1Bの接合方向から見たとき、少なくともこの線分の一部および押圧部5Cの押圧中心K3が、連結ボルト4の頭部4aの領域に含まれていることが好ましい。なお、第二挟持部材5が二つの押圧部5C,5Cを有する場合は、両突出部1A,1Bの接合方向から見たとき、二つの押圧部5C,5Cの押圧中心を結んだ線分の少なくとも一部が、連結ボルト4の頭部4aの領域に含まれていることが好ましい。
【0050】
図6図9に示すように、締結機構7は、被挿入部6Aの外側から挿通孔6dを介して筒状内部空間6c内に挿入される上述の締結ボルト7Aと、挿入部5Aの内周面5bに形成された雌ネジ部5dとから構成されている。締結ボルト7Aは、雄ネジ部7aと、六角穴を形成した円形状の頭部7bと、を有している。なお、締結ボルト7Aの頭部7bは、六角穴に限定されず、多角形状の穴を形成していれば良く、また、内部に六角穴を設けず、外形を六角形状など多角形状に構成しても良い。
【0051】
図8に示すように、両突出部1A,1Bは複数の連結ボルト4で接合されているので、治具本体Paは、短管Tや弁箱Vの周方向に沿って複数装着されることとなる。このため、両突出部1A,1Bの接合部に剪断方向或いは引張方向の力が作用した場合、治具本体Paは径外方向に移動した後、接合方向下方に脱落するおそれがある。
【0052】
そこで、図8図9に示すように、本実施形態の補強治具Pは、両突出部1A、1Bに装着された複数の治具本体Paが径外方向へ移動するのを規制するバンド部材Pbを設けている。バンド部材Pbは、金属材料で構成され、第一挟持部材6の外側面6gに当接する円環状の鍔状部21と、第一挟持部材6の外側面6gの径方向外側の位置において、鍔状部21から接合方向に沿って立設する円環状の外壁部22とを有している。
【0053】
鍔状部21は、第一挟持部材6の外側面6gに載置され、接合方向に位置決めされる。
また、外壁部22は、先端側に第一挟持部材6の被挿入部6Aを径内方向に膨出した膨出部22aを有している。この膨出部22aが被挿入部6Aの外面6aを径内方向に押圧することで、治具本体Paが径外方向へ移動するのを規制している。
【0054】
さらに、バンド部材Pbは、周方向において二分割され、各分割バンド部材25,25の両端部どうしがボルト23及びナット24で締結されることで円環形状となるように形成されている。このため、ボルト23及びナット24の締結力によって、膨出部22aが被挿入部6Aの外面6aに対して所望の押圧力を作用させ、治具本体Paが径外方向へ移動するのを防止している。なお、分割バンド部材25,25どうしの接続は、ボルト23とナット24に限定されず、一方の分割バンド部材25に雌ネジ部を設けてボルトを螺合する形態にしても良い。また、バンド部材Pbを二部材とせずに、一部材として被挿入部6Aの外面6aに嵌め込む形態としても良いし、三部材以上で構成しても良い。
【0055】
また、円環状の鍔状部21が第一挟持部材6の外側面6gに当接することで、バンド部材Pbが治具本体Paから脱落するのを阻止している。本実施形態では、締結ボルト7Aの頭部7bを六角穴付き円形状に構成することで、六角ボルトに比べて、常にバンド部材Pbの鍔状部21を締結ボルト7Aの頭部7bに近付けて設置することができる。その結果、第一挟持部材6の外側面6gへの当接面積を確保することが可能となり、バンド部材Pbが治具本体Paから脱落し難いものとなっている。なお、鍔状部21は円環状に限定されず、外面を多角形状に形成した角環状に構成しても良いし、外壁部22を円環状に形成せず、治具本体Paの位置する箇所にのみ設けても良い。また、鍔状部21の径方向内側に、締結ボルト7Aの頭部7bを収容する複数の切欠き部を形成しても良い。
【0056】
次に、複数の連結ボルト4により連結された両突出部1A,1Bの接合部に、補強治具Pを装着する作業工程について説明する。
【0057】
図6に示すように、両突出部1A、1Bの外周面1c,1cよりも径方向外側の位置で、第二挟持部材5の挿入部5Aを、第一挟持部材6の被挿入部6Aの筒状内部空間6cに、接合方向に沿って挿入する。その際、挿入部5Aの外面5aと被挿入部6Aの内面6bとが横断面視で相対回転不能な正方形状に形成されているので、第二挟持部材5の押圧部5Cと第一挟持部材6の押圧部6Bとを同方向に延出させた所望の相対位置関係に位置決めした状態で、容易に挿入させることができる。
【0058】
次いで、締結ボルト7Aを、接合方向における被挿入部6Aの外側から挿通孔6dを介して筒状内部空間6c内に挿入し、仮固定する。このとき、図7に示すように、挿入部5Aと被挿入部6Aとが係合している状態において、縦断面視で第二挟持部材5の押圧部5Cと挿入部5Aの外面5aと第一挟持部材6の二つの押圧部6B,6Bと被挿入部6Aの外面6aとによりU字形状の凹部が形成される。この凹部を両突出部1A,1Bに装着する際には、被挿入部6Aの外面6aを、両突出部1A、1Bの外周面1c,1cの少なくとも一方に当接させる。つまり、被挿入部6Aの外面6aを、両突出部1A,1Bの外周面1c,1cとの当接によって設定装着位置に規制する装着規制部として機能することとなる。これによって、治具本体Paの両突出部1A,1Bに対する位置決めが行われるので、装着作業が容易である。
【0059】
これら挿入部5Aと被挿入部6Aとの係合および締結ボルト7Aの仮固定は、一旦、接合方向において、第二挟持部材5の押圧部5Cの押圧面5eと第一挟持部材6の押圧部6Bの押圧面6eとの間隔が、第一突出部1Aの外側面1aと第二突出部1Bの外側面1aとの間隔よりも若干大きくなる程度に行われる。つまり、接合方向における挿入部5Aと被挿入部6Aとの重なり部位の大きさ(挿入距離)、及び、押圧面5eと押圧面6eとの間隔をそれぞれ適宜設定することができる。このため、両突出部1A,1Bの呼び径や設計圧力に応じて肉厚が変更される場合でも、重なり部位の大きさを調整することで、第二挟持部材5及び第一挟持部材6を両突出部1A,1Bに良好に締付固定することができる。
【0060】
続いて、前記凹部を設定装着位置に装着した後、押圧部6Bが延出する側における被挿入部6Aの外面6aを両突出部1A,1Bの外周面1c,1cの少なくとも一方に径外方向から当接させる。この状態で、第一挟持部材6の二つの押圧部6B,6Bの押圧面6eを第一突出部1Aの外側面1aに当接させ、且つ、第二挟持部材5の押圧部5Cの押圧面5eを連結ボルト4の両側における第二突出部1Bの外側面1aに当接させるまで、挿入部5A及び被挿入部6Aを接合方向に引き寄せる。
【0061】
次いで、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aを、筒状内部空間6cに挿入されている挿入部5Aの雌ネジ部5dに螺合させて、締結ボルト7Aの頭部7bが被挿入部6Aの外側面6gに当接するまで、本固定する。このとき、締結ボルト7Aは、短管Tおよび弁箱Vのフランジ部Ta,Vaより径方向外側の位置にあるため、締付作業が容易である。なお、上述した締結ボルト7Aの仮固定を行わずに、本固定のみとしても良い。
【0062】
締結ボルト7Aを締付固定すると、両挟持部材6,5の押圧部6B,5Cが突出部1A,1Bの外側面1a,1aに当接した状態で、挿入部5Aが被挿入部6Aの内部に固定され、挿入部5Aと被挿入部6Aとが接合方向で重なった状態となる。このため、両突出部1A,1Bを径方向に位置ずれさせる剪断力が作用した場合や、両突出部1A,1Bを軸方向に引き離す引張力が作用して両挟持部材6,5の押圧部6B,5Cが開き方向の力を受けた場合でも、締結機構7の締結部位に加えて、挿入部5Aと被挿入部6Aとの重なり部位でもこれらの力を受け止めるので、締結機構7の締結部位に掛かる応力の低減を図ることができる。
【0063】
また、図9に示すように、締付固定した状態では、挿入部5Aの雌ネジ部5dが、締結ボルト7Aの頭部7bに近接した位置に位置することから、雌ネジ部5dと締結ボルト7Aの雄ネジ部7aとの螺合箇所が、締結ボルト7Aの頭部7bが被挿入部6Aの外側面6gと当接する位置に近接する。つまり、接合方向における締結ボルト7Aの頭部7bと当該螺合箇所との距離が比較的小さい。これにより、両突出部1A,1Bに剪断力や引張力が作用した場合でも、締結ボルト7Aの伸びや破壊を良好に防止することができる。
【0064】
また、雌ネジ部5dを、筒状内部空間5c,6c内における挿入部5Aと被挿入部6Aとの重なり部位に位置させているので、締結ボルト7Aの長さを比較的短くすることが可能となる。よって、締結ボルト7Aの先端が筒状内部空間5c,6cの外部に突出することを良好に防止することができる。しかも、本実施形態では、両突出部1A,1Bの外周面1c,1cの径方向外側位置にある挿入部5A及び被挿入部6Aの配設箇所と、締結ボルト7Aの配設箇所とを兼用している。これにより、両突出部1A,1Bに装着された治具本体Pa及び締結ボルト7Aの接合方向での寸法や径方向での寸法の何れをも小さくすることができ、省スペース化を図ることができる。
【0065】
さらに、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aが挿通孔6dに挿通された状態では、雄ネジ部7aの外周面と挿通孔6dの内周面との間に所定の隙間が形成される。このため、両突出部1A,1Bに剪断方向(径方向)への力が作用して、万が一、締結ボルト7Aが径方向に若干変位した場合でも、締結ボルト7Aの雄ネジ部7aが挿通孔6dに当接することがなく、締結ボルト7Aの伸びや破壊を防止することができる。
【0066】
次いで、上記治具本体Paを装着後、両突出部1A,1Bにおける、その他の全ての連結ボルト4に対して、別の治具本体Paを径外方向から順次装着する。次いで、図8に示すように、分割バンド部材25,25を、夫々径方向外側から複数の治具本体Paに接近させ、鍔状部21を被挿入部6Aの外側面6gに引っ掛けた状態で、両端部をボルト23とナット24で締付固定する。このとき、図9に示すように、バンド部材Pbの膨出部22aと被挿入部6Aの外面6aとが当接することで、治具本体Paが径外方向へ移動するのを阻止している。
【0067】
本実施形態では、膨出部22aと鍔状部21との間において、外壁部22と被挿入部6Aの外面6aとに隙間を設けている。このため、分割バンド部材25,25を締付固定した際、その締付力は膨出部22aに効果的に伝達され、治具本体Paを径内方向に押し付けることとなる。しかも、この膨出部22aは、径方向視において、両突出部1A,1Bと重複した位置に設けられており、挿入部5Aおよび被挿入部6Aが膨出部22aと両突出部1A,1Bの外周面1c,1cとの間に径方向に沿って挟まれる。よって、両突出部1A,1Bに剪断力が作用して、その外周面1c,1cに当接している被挿入部6Aが径方向に離間しようとした場合でも、膨出部22aが所望の押付力を発揮して治具本体Paの脱落を確実に防止することができる。
【0068】
このように、補修弁Xに補強治具Pを装着することで、両突出部1A,1Bの接合部、特に連結ボルト4周りを確実に補強することができる。このとき、第一挟持部材6に二股状の押圧部6B,6Bを設けることで、第一突出部1Aの外側面1aのうち連結ボルト4より径内側部位の空間が狭隘な場合でも、治具本体Paを径外方向から容易に装着することができる。しかも、二つの押圧部6B,6Bは、連結ボルト4の両側に位置することから、押圧面積を広く確保することが可能となる。また、上述したように、第一挟持部材6の二つの押圧部6B,6Bが第一突出部1Aを押圧する押圧中心K1,K2と、第二挟持部材5の押圧部5Cが第二突出部1Bを押圧する押圧中心K3とを連結ボルト4の頭部4a近傍に配置することで、連結ボルト4に対する負荷を低減することができる。
【0069】
ところで、補修弁Xの交換時には、短管Tのフランジ部Taに作業弁を取付け、この作業弁に水道本管と分岐管との接続口を閉塞するための機材を取り付けて補修弁Xに流体が迂回しない状態にする。この作業工程中に、これらの接続機材から補修弁Xの両突出部1A,1Bに大きな荷重や曲げ応力が伝播され、流体圧を受けると破断するおそれがある。
このような状態を回避するために、予め両突出部1A,1Bを上述したような補強治具Pで補強することが有意義である。
【0070】
[別実施形態1]
以下、本発明に係る別実施形態1について、上述した実施形態と異なる構成のみ、図11を用いて説明する。なお、図面の理解を容易にするため、同じ部材には同じ名称及び符号を用いて説明する。
【0071】
本実施形態では、バンド部材Pbは、第一挟持部材6の外側面6gと締結ボルト7Aの頭部7bとの間に配置され、締結ボルト7Aが挿入される貫通孔8を有する円環平板状に形成してある。
【0072】
この場合でも、締結ボルト7Aの締結力にとってバンド部材Pbは強固に固定されるので、周方向に沿って配置された複数の治具本体Paが径外方向に移動しそうになっても、周方向に沿って固定されたバンド部材Pbが所望の抵抗力を発揮して脱落を防止することができる。なお、本実施形態におけるバンド部材Pbを分割して、複数の分割バンド部材を結合する形態としても良い。この結合形態としては、分割バンド部材の両端部に、夫々窪み部と凸部とを形成して係合する形態や、折返し部を形成して係合する形態などが考えられる。
【0073】
[別実施形態2]
以下、本発明に係る別実施形態2について、上述した実施形態と異なる構成のみ、図12を用いて説明する。なお、図面の理解を容易にするため、同じ部材には同じ名称及び符号を用いて説明する。
【0074】
本実施形態では、第二挟持部材50を、一対の脚部50A,50Bを備えたコの字状部材により構成し、第一挟持部材60を、脚部50Bに形成された2箇所の貫通雌ネジ孔50aに螺合される雄ネジ軸部70aを備えた二本のボルト70A,70Aにより構成している。第一挟持部材60となる二本のボルト70A,70Aは、ボルト70Aの頭部70bと第二挟持部材50とを、両突出部1A,1Bの接合方向に近接させて固定する締結機構70としても機能する。第一挟持部材60は、第一突出部1Aの外側面1aのうち、連結ボルト4の頭部4aの周方向に沿った両側の領域を押圧する二つの押圧部60B,60Bを有し、第二挟持部材50は、脚部50Aの先端部に、第二突出部1Bの外側面1aを押圧する押圧部50Cを有している。
【0075】
本実施形態においても、第一挟持部材60の二つの押圧部60B,60Bが第一突出部1Aを押圧する押圧中心と、第二挟持部材5の押圧部5Cが第二突出部1Bを押圧する押圧中心とを連結ボルト4の頭部4a近傍に配置することで、連結ボルト4に掛かる負荷を低減することができる。
【0076】
また、本実施形態では、別実施形態1に係るバンド部材Pbを採用している。このバンド部材Pbは、第二挟持部材50の脚部50Bの外側面とボルト70Aの頭部70bとの間に配置される。よって、ボルト70Aの締結力にとってバンド部材Pbは強固に固定されるので、周方向に沿って配置された複数の治具本体Paが径外方向に移動しそうになっても、周方向に沿って固定されたバンド部材Pbが所望の抵抗力を発揮して脱落を防止することができる。
【0077】
なお、別実施形態1に係るバンド部材Pbに代えて、第二挟持部材50の外側面に当接する円環状の鍔状部と、第二挟持部材50の外側面の径方向外側の位置において、鍔状部から接合方向に沿って立設する円環状の外壁部とを有するバンド部材Pbを使用しても良い。
【0078】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、補修弁Xの両突出部1A,1Bに補強治具Pを装着する例を示したが、流体機器どうしの接続フランジや配管どうしの接続フランジなどの締結ボルト周りを補強するために使用しても良い。この場合、筒状部材の端部から径外方向に突出する接続フランジが、上述した実施形態における両突出部1A,1Bに該当する。
(2)第一挟持部材6の二つの押圧部6B,6Bや第二挟持部材5の押圧部5Cの形状は、適宜変更が可能である。例えば、第一挟持部材6の二つの押圧部6B,6Bの先端部を拡径させた二股状にして、第一突出部1Aとの当接面積を大きく確保しても良い。この場合、補強治具Pがより安定する。また、第二挟持部材5の押圧部5Cは、第二突出部1Bの外側面1aの凹部に係合する凸部を形成しても良いし、先端部を拡径させても良い。
(3)上述した実施形態では、第二挟持部材5に挿入部5Aを設け、第一挟持部材6に被挿入部6Aを設けるように構成したが、第二挟持部材5に被挿入部を設け、第一挟持部材6に挿入部を設ける構成としてもよい。
(4)上述した実施形態では、第二挟持部材5の挿入部5Aと第一挟持部材6の被挿入部6Aとの形状を横断面視において正方形状としたが、挿入部5Aと被挿入部6Aとが挿入された状態で接合方向周りでの相対回転が不能に構成されていれば、どのような形状であっても良い。例えば、横断面視で楕円形状、多角形状等に構成することができる。なお、挿入部5Aと被挿入部6Aとの形状を、横断面視において円形に構成しても良い。
(5)上述した実施形態における第一挟持部材6、第二挟持部材5、及び締結機構7の構成は、適宜変更することができる。例えば、図13に示すように、第二挟持部材51の挿入部51Aを第一挟持部材61の被挿入部61Aに挿入可能な外径を備えた角棒状に構成し、第一挟持部材61の被挿入部61Aを筒状に構成する。そして、挿入部51Aの先端側には、雄ネジ部52aを備えたボルト52が接合方向に突出形成され、被挿入部61A内に挿入部51Aが相対回転不能に嵌合した状態で、締結ナット53が被挿入部61Aの外方から外面側に当接するまで螺合される構成としてもよい。
(6)上述した実施形態における両突出部1A,1Bを連結する連結ボルト4は、六角ボルトや両ネジボルトに限定されず、六角穴付きボルト等どのような形態であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る接合部の補強治具は、流体機器内、流体機器と配管、流体機器どうし又は配管どうしの接合部を補強するための治具として利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1A 第一突出部
1B 第二突出部
1a 外側面
4 連結ボルト
4a 頭部
5 第二挟持部材
5A 挿入部
5C 押圧部
6 第一挟持部材
6A 被挿入部
6g 外側面
7 締結機構
7A 締結ボルト
7b 頭部
21 鍔状部
22 外壁部
K1,K2 第一突出部を押圧する押圧中心
K3 第二突出部を押圧する押圧中心
P 補強治具
Pa 治具本体
Pb バンド部材
T 短管(第一筒状部材)
V 弁箱(第二筒状部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13