特許第6374252号(P6374252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374252
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ペット用循環型自動給水器
(51)【国際特許分類】
   A01K 39/02 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   A01K39/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-146736(P2014-146736)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-21886(P2016-21886A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】今泉 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】日下 浩辰
(72)【発明者】
【氏名】松木 健
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0189548(US,A1)
【文献】 特開2014−097010(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0017839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 39/00
A01K 7/00
E03B 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーターボウル内が仕切壁によって前後に仕切られて、その仕切壁よりも前側に貯水室が設けられるとともに、後側にポンプ室が設けられ、
前記貯水室の下側に、一端側が前記貯水室の底面に開口され、かつ他端側が前記ポンプ室に開口された通水路が設けられ、
前記貯水室の底面における前記通水路の一端側開口にフィルターが設けられ、
前記ポンプ室の上方に溢水部が設けられるともに、その溢水部から前記貯水室にかけて、貯水室側に下り傾斜する傾斜水路が設けられ、
前記ポンプ室内の水を前記溢水部に汲み上げるための揚水ポンプが設けられ、
前記ポンプ室内の水が前記揚水ポンプによって前記溢水部に汲み上げられて、前記傾斜水路に供給されるとともに、その水が前記傾斜水路を流下して前記貯水室に導入され、その水が前記フィルターおよび前記通水路を通って前記ポンプ室に導入されるようにしたことを特徴とするペット用循環型自動給水器。
【請求項2】
前記貯水室は、その前側に設けられた緩流水路と、その緩流水路の内側において前記仕切壁に隣接する排水ゾーンとを有し、
前記フィルターが、前記排水ゾーンの底面のほぼ全域にわたる大きさに形成されている請求項1に記載のペット用循環型自動給水器。
【請求項3】
前記貯水室の底面に凹陥部が形成されるとともに、その凹陥部に前記フィルターが嵌め込まれて取り付けられている請求項1または2に記載のペット用循環型自動給水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、犬や猫等のペットの飲み水を自動的に循環させつつ供給できるようにしたペット用循環型自動給水器に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットとして飼育される犬や猫に水を与える場合、水を貯留したウォーターボウル等の適当な水飲み容器を所定の箇所に設置しておき、その容器からペットに水を与えるようにするのが一般的である。ところがこのような水の与え方では、水飲み容器内の水が長時間放置される場合があり、衛生上好ましくない。
【0003】
そこで、近年になって、下記特許文献1に示すように水を自動的に循環させつつ供給するようにした循環型自動給水器(水遣り器)が提案されている。
【0004】
このペット用循環型自動給水器は、水を貯留しておくウォーターボウルを備え、そのウォーターボウル内に平面視で円環状の水路が形成されており、送風機からの風力によって、ウォーターボウル内の水を上記円環状水路に沿って循環させるようにしている。そしてウォーターボウル内を循環する水をペットに飲用させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−333860号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のペット用循環型自動給水器においては、循環する水に、ペットの体毛、食べかす、塵埃等のゴミが混入されるため、そのゴミの除去用にフィルターが設置されている。
【0007】
例えば上記特許文献2に示す循環型自動給水器においては、循環する水の流れ方向に対し直交してフィルターが垂直に配置されており、そのフィルターに、循環する水を通過させてゴミを除去するようにしている。
【0008】
しかしながら、このようにフィルターを垂直に配置している場合、ウォーターボウル内の水位が低下すると、フィルターの上部が水面上に配置されることがある。その場合、フィルターの水面上の部分は、水が通過せず濾過材として機能しないため、フィルターの濾過性能を十分に発揮できないという課題があった。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、フィルターの濾過性能を十分に発揮させることができるペット用循環型自動給水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
【0011】
[1]ウォーターボウル内が仕切壁によって前後に仕切られて、その仕切壁よりも前側に貯水室が設けられるとともに、後側にポンプ室が設けられ、
前記貯水室の下側に、一端側が前記貯水室の底面に開口され、かつ他端側が前記ポンプ室に開口された通水路が設けられ、
前記貯水室の底面における前記通水路の一端側開口にフィルターが設けられ、
前記ポンプ室の上方に溢水部が設けられるともに、その溢水部から前記貯水室にかけて、貯水室側に下り傾斜する傾斜水路が設けられ、
前記ポンプ室内の水を前記溢水部に汲み上げるための揚水ポンプが設けられ、
前記ポンプ室内の水が前記揚水ポンプによって前記溢水部に汲み上げられて、前記傾斜に供給されるとともに、その水が前記傾斜水路を流下して前記貯水室に導入され、その水が前記フィルターおよび前記通水路を通って前記ポンプ室に導入されるようにしたことを特徴とするペット用循環型自動給水器。
【0012】
[2]前記貯水室は、その前側に設けられた緩流水路と、その緩流水路の内側において前記仕切壁に隣接する排水ゾーンとを有し、
前記フィルターが、前記排水ゾーンの底面のほぼ全域にわたる大きさに形成されている前項1に記載のペット用循環型自動給水器。
【0013】
[3]前記貯水室の底面に凹陥部が形成されるとともに、その凹陥部に前記フィルターが嵌め込まれて取り付けられている前項1または2に記載のペット用循環型自動給水器。
【0014】
[4]前記貯水室の底面が、前記フィルターの上面によって構成されている前項3に記載のペット用循環型自動給水器。
【発明の効果】
【0015】
発明[1]のペット用循環型自動給水器によれば、貯水室の底面にフィルターを設置しているため、貯水室の水位が低くとも、フィルター全域を水面下に配置することができ、フィルター全域を常時、濾過部として機能させることができ、濾過性能を十分に発揮させることができる。
【0016】
発明[2]のペット用循環型自動給水器によれば、フィルターの設置面積を大きくすることができ、濾過性能をより一層向上させることができる。
【0017】
発明[3][4]のペット用循環型自動給水器によれば、フィルターを貯水室の底部に収まり良く適合させることができ、美観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はこの発明の実施形態であるペット用循環型自動給水器を示す斜視図である。
図2図2は実施形態のペット用循環型自動給水器を示す平面図である。
図3図3は実施形態の給水器を示す正面図である。
図4図4は実施形態の給水器を示す側面断面図である。
図5図5は実施形態の給水器におけるウォーターボウルをフィルターを分離した状態で示す斜視図である。
図6図6は実施形態の給水器におけるトップファンネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1はこの発明の実施形態であるペット用循環型自動給水器を示す斜視図、図2は平面図、図3は正面図、図4は側面断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、この実施形態のペット用循環型自動給水器は、犬や猫等のペット用として好適に用いられるものである。この給水器は、ウォーターボウル1と、トップファンネル3とを基本的な構成要素として備えている。
【0021】
なお、以下の説明においては、発明の理解を容易にするため、図2の平面図に向かって下側を「前側」、上側を「背面側(後側)」、左側を「左側」、右側を「右側」とし、図3の正面図に向かって下側を「下側」、上側を「上側」として説明する。
【0022】
ウォーターボウル1は、例えば硬質合成樹脂の成形品によって構成されており、平面視形状が略円形に形成された底壁11と、その底壁11の外周縁部に立ち上がり状に一体形成され、かつ平面視形状が略円環状に形成された周囲壁12とを備えている。このウォーターボウル1は、上方に開放されており、さらに周囲壁12は、二重壁構造によって構成されている。
【0023】
図4および図5に示すようにウォーターボウル1の内面における前後方向の中間部よりもやや後側の位置に、ウォーターボウル1を前後に仕切る仕切壁15が立ち上がり状に一体形成されている。仕切壁15は、その左右方向の中間部が前方に膨出するように形成されており、その膨出部が半円筒形状の柱状部151として構成されている。
【0024】
ウォーターボウル1内における仕切壁15よりも前側の部分は貯水室20として構成されるともに、仕切壁15よりも後側の部分はポンプ室23として構成されている。
【0025】
またウォーターボウル1内の貯水室20における底壁11には、仕切壁15の近傍に、下側に凹んだ凹陥部16が形成されている。この凹陥部16は、平面視において半円扇型状に形成されており、凹陥部16の弦に相当する部分が仕切壁15に隣接するとともに、円弧に相当する部分が、ウォーターボウル1の周囲壁12の前半周部から内側に所定の間隔をおいて配置されている。
【0026】
なお後述するが、ウォーターボウル1内の貯水室20のうち、凹陥部16に対応する領域が、排水ゾーン22として構成されるとともに、それ以外の領域、つまりウォーターボウル1内の排水ゾーン22の外側における周囲壁12の前半周部に沿った領域が、緩流水路21として構成されている。
【0027】
本実施形態において、凹陥部16は排水ゾーン22(貯水室20)の一部を構成するものではなく、排水ゾーン22と凹陥部16とは互いに別の部位として捉えている。
【0028】
また本実施形態において貯水室20(排水ゾーン22)の底壁の上面位置は、凹陥部16の上端開口面と一致するようになっている。
【0029】
図5に示すように、仕切壁15の下端部の右側(他端側)には、凹陥部16内に対応して、切欠状の通水口17が形成されている。そしてウォーターボウル1内において、ポンプ室23と排水ゾーン22とが凹陥部16および通水口17を介して通水可能に連通されており、排水ゾーン22内の飲用水Wが凹陥部16および通水口17を介してポンプ室23に流入されるようになっている。
【0030】
本実施形態において、仕切壁15の下端部の左側(一端側)には、上記の通水口17のように仕切壁15の前後を連通する連通口は形成されておらず、凹陥部16内に流入した飲用水Wは、仕切壁15の下端右側の通水口17だけを通ってポンプ室23内に導入されるようになっている。
【0031】
ここで本実施形態においては、凹陥部16および通水口17によって通水路が構成されている。さらにこの通水路16,17の一端側開口(上流側開口)は、凹陥部16の上端開口によって構成されるとともに、通水路16,17の他端側開口(下流側開口)は、通水口17によって構成されている。つまり、通水路16の一端側は、排水ゾーン22(貯水室20)の底面に開口されるとともに、他端側は、ポンプ室23に開口されている。
【0032】
凹陥部16内には、その前後の内周壁面に沿ってフィルター設置用段部161が形成されている。この段部161の上端位置は、凹陥部16の上端開口面(排水ゾーン22の底面)よりも、後述するフィルター25の厚みの分だけ下方に配置されている。
【0033】
フィルター25は、平面視において、凹陥部16の形状に対応して、半円扇形に形成されている。そしてこのフィルター25が、凹陥部16に嵌め込まれて適合状態に収容されている。このようにフィルター25を設置した状態では、フィルター25の下面側が凹陥部16内の段部161に支持されることによって、フィルター25の下面と凹陥部16の底面との間に間隔が設けられ、その間に水路が形成される。さらにフィルター25の上面が凹陥部16の上端開口面に一致し、排水ゾーン22(貯水室20)の底面として構成されるようになっている。
【0034】
この構成においては、排水ゾーン22内の飲用水Wは、フィルター25を介して通水路16,17を通過してポンプ室23に導入されるようになっている。
【0035】
なお本実施形態においては、貯水室20(排水ゾーン22)内の飲用水Wは全てフィルター25を通過してポンプ室23に送り込まれるようになっている。
【0036】
本実施形態において、ポンプ室23の底面は、貯水室20の底面(フィルター25の上面)よりも24mm〜39mm程度低い位置に設定されている。なお、ポンプ室23の底面と凹陥部16の底面とは同じ高さ(同レベル)に設定されている。
【0037】
図4に示すようにポンプ室23には、左右方向の中間位置における仕切壁15の近傍には、揚水ポンプ26が設置されている。この揚水ポンプ26は、その吐出口261を上向きに配置した状態で、ポンプ室23の底面に支持されている。さらにこの揚水ポンプ23の吸込口(図示省略)は、ポンプ室23の底面近傍において開口されている。これにより揚水ポンプ23は、底面付近の飲用水Wが吸込口(図示省略)から吸い込まれて、吐出口261から上向きに吐出されるようになっている。本実施形態において、ポンプ室23の底面の高さは、ポンプ26が設置されている面(設置面)を基準とする。
【0038】
図4に示すように、ウォーターボウル1の周囲壁12は、既述した通り二重壁構造によって構成されている。周囲壁12の内壁のうち前側半周の内壁121における下部は外側に向かって傾斜するように配置されている。また、前側半周の内壁121と底壁11との間のコーナー部は、曲率半径を有する円弧状の断面形状を有している。
【0039】
なお、前側半周の内壁121は、後に詳述する緩流水路21の外側(一方側)の側壁を構成している。
【0040】
図1図4および図6に示すように、ウォーターボウル1内に配置されるトップファンネル3は、例えば硬質合成樹脂の成形品によって構成されており、ウォーターボウル1内の所領領域を覆う略ドーム状に形成されている。
【0041】
トップファンネル3の外周壁には、排水ゾーン22の上方を覆う排水ゾーンカバー部32と、ポンプ室23の上方を覆うポンプ室カバー部33とを備えている。本実施形態においては、排水ゾーンカバー部32および/またはポンプ室カバー部33によって、カバー部材が構成されている。
【0042】
トップファンネル3の後半の周縁部、つまりポンプ室カバー部33の下端周縁部は、ウォーターボウル1の周囲壁12における後縁部、つまりポンプ室23の後縁部上方に対応して配置されている。
【0043】
またトップファンネル3の前半の周縁部、つまり排水ゾーンカバー部32の下端周縁部は、ウォーターボウル1の底面近傍に配置されるように下方まで延びており、ウォーターボウル1の内部における排水ゾーン22の前周縁部に対応して配置されている。そして本実施形態においては、この排水ゾーンカバー部32のウォーターボウル1内に配置される部分(下側部)によって、ウォーターボウル1の貯水室20内が、緩流水路21と排水ゾーン22とに仕切られている。こうして、ウォーターボウル1内における周囲壁12の前半内壁121と、排水ゾーンカバー部32の下端部との間に、平面視において略半円弧状(三日月状)の緩流水路21が形成されている。換言すると、周囲壁12の前半内壁121を一方側(外側)の側壁とし、かつ排水ゾーンカバー部32の下端部を他方側(内側)の側壁とする緩流水路21が形成されている。
【0044】
トップファンネル3における排水ゾーンカバー部32の両側部には切欠部321が形成されており、この切欠部321によって緩流水路21と排水ゾーン22とが通水可能に連通されている。従って緩流水路21内の飲用水Wは切欠部321を通って排水ゾーン22内に流入されるようになっている。ここで本実施形態においては、切欠部321によって通水口(通水路)が構成されている。
【0045】
なお、本実施形態においては、排水ゾーンカバー部32の下端中間部と緩流水路21の底壁11との間にも狭い隙間が形成されるようになっており、この狭い隙間によっても、緩流水路21内と排水ゾーン22内とが連通されている。
【0046】
また本実施形態においては、ウォーターボウル1の底面における緩流水路21に対応する領域は、緩流水路21の一端部(左端部)から他端部(右端部)に向かって下向きに緩やかに傾斜する傾斜面に形成されている。これにより緩流水路21内の飲用水Wは、自重によって、緩流水路21の一端側(上流側)から他端側(下流側)にかけて流動するようになっている。
【0047】
一方、トップファンネル3の外周面における上端部から排水ゾーンカバー部32の下端縁部の左側部(一側部)にかけての領域には、その領域が下側に凹陥形成されることによって、急流水路35が形成されている。
【0048】
トップファンネル3の上端部における急流水路35内の領域には、その領域が凹陥形成されることによって、皿状(凹球面状)の溢水部31が形成されている。この溢水部31の底壁における左右方向の中間部のやや後側には、下方に垂直に延びる送水パイプ36が一体に形成されている(図4参照)。この送水パイプ36の上端は、溢水部31の底面において開放されており、噴出口37として構成されている。
【0049】
また送水パイプ36の下端開口部は、上記揚水ポンプ26の吐出口261に連結されている。これにより、揚水ポンプ26によって吸い上げられたポンプ室23内の飲用水Wは、送水パイプ36を通って噴出口37から溢水部31に供給されて、溢水部31からオーバーフローして急流水路35に流出されるようになっている。
【0050】
本実施形態において、急流水路35は、傾斜水路を構成している。この急流水路35は、溢水部31を上側として、下端側が上記緩流水路21の一端側(左側)に開放されている。つまり、急流水路35は、溢水部31から緩流水路21に向けて下り傾斜する傾斜面によって構成されている。
【0051】
さらに急流水路35は、その一部に急勾配の急斜面を有している。具体的には、急流水路35は、上端から下端にかけて次第に勾配がきつくなるような凸面湾曲形状に形成されており、上端部はほぼ水平に近い緩やかな緩斜面によって構成されるとともに、下側部はぼぼ垂直に近い急斜面によって構成されている。これにより溢水部31から急流水路35に導入された飲用水Wは、自重によって急流水路35を流下する際に、次第に流速を増して、勢いよく緩流水路21の一端側に流れ込むようになっている。
【0052】
ここで本実施形態においては、急流水路21の下側部が急勾配に形成されているが、それだけに限られず、本発明においては、急流水路35の少なくとも一部が急勾配に形成されていれば良い。さらに本発明においては、急流水路21の水路全域を急勾配に形成するようにしても良い。要は、急流水路35を流れる飲用水Wの流速が、緩流水路21に比べて速くなるように、急流水路35の一部に急勾配が形成されていれば良い。
【0053】
なお本実施形態においては、トップファンネル3の下端周縁部に係合突起(図示省略)が形成されており、その突起がウォーターボウル1の周囲壁12の係合孔(図示省略)に着脱自在に係合することによって、トップファンネル3がウォーターボウル1に着脱自在に取り付けられている。
【0054】
本実施形態のペット用循環型給水器においては、ポンプ室23、送水パイプ36、溢水部31、急流水路35、緩流水路21、排水ゾーン22、通水路16,17によって飲用水Wの循環流路が形成されている。そして、その循環流路において、排水ゾーン22およびポンプ室23は、トップファンネル3のカバー部32,33によって上方が覆われて閉塞されているのに対し、緩流水路21、溢水部31、急流水路35は覆われておらず、水面が上方に開放されている。本実施形態では、このように水面が上方に開放された流路、具体的には緩流水路21、溢水部31、急流水路35を水面開放部と称している。よって本実施形態において、貯水室20の水面開放部は緩流水路21によって構成されている。
【0055】
さらに本実施形態において、貯水室20の水面開放部(緩流水路21)の底面の高さは、緩流水路21の最も低い位置を基準としている。例えば緩流水路21が断面V字状に形成されているような場合には、V溝の下端(谷底部)が底面の高さとなる。つまり、本発明において、水面開放部(緩流水路21)の底面に対し、ポンプ室23の底面が低く設定されていると言う場合、水面開放部(緩流水路21)の最も低い位置に対し、ポンプ室の底面(ポンプ設置面)が低く設定されているということである。
【0056】
以上のように構成された本実施形態のペット用循環型給水器においては、図4に示すように飲用水Wをその水位が仮想線Laで示す最大水位(最高水位)よりも少し低い位置までウォーターボウル1内に貯留する。参考までに本実施形態の給水器において、ウォーターボウル1内に最大水位Laまで飲用水Wを注入した際にはその水量が約950mlとなり、最小水位Laまで飲用水を注入した際には水量が約350mlとなる。なお言うまでもなく、最小水位Lbまで飲用水Wを貯留した状態では、揚水ポンプ26の吸込口(図示省略)は水面下に位置するようになっている。
【0057】
本実施形態においては、最大水位Laを示す目印(メモリ)が仕切壁15に記載されており、水位を目視で正確に確認できるようになっている。
【0058】
こうしてウォーターボウル1内に飲用水Wを注入した状態で、揚水ポンプ26を駆動すると、ポンプ室23内の飲用水Wが揚水ポンプ26によって汲み上げられて、送水パイプ36を介して噴出口37から噴出されて溢水部31に導入される。溢水部31に導入された飲用水Wは溢水部31をオーバーフローして急流水路35に導入されて、その飲用水Wは急流水路35を勢いよく流下して緩流水路21の左側(上流側)に導入される。緩流水路21に導入された飲用水Wは、急流水路35を流下する際の水勢に加えて、緩流水路21自体の傾斜勾配によって、緩流水路21を緩やかに一端側(上流側)から他端側(下流側)に向けて流動していく。また緩流水路21を流動する飲用水Wは、排水ゾーンカバー部32の両側の切欠部321を通って排水ゾーン22内に導入される。排水ゾーン22内に導入された飲用水Wは、フィルター25を通って濾過された後、通水路16,17を介してポンプ室23内に導入される。
【0059】
こうして飲用水Wが自動給水器内を循環する一方、犬や猫等のペットは、溢水部31、急流水路35あるいは緩流水路21等の水面開放部を流れる水Wを適宜飲用するものである。
【0060】
以上のように構成された本実施形態のペット用循環型自動給水器によれば、循環流路の飲用水Wが全て滞りなく流動するため、特に溢水部31、急流水路35および緩流水路21等の水面開放部において、飲用水Wが滞りなく流動するため、水Wが滞留する淀みが形成されることがなく、ペットの体毛、食べかす、塵埃等のゴミが滞留することがない。また水Wにゴミが混入されたとしても、水Wと共にゴミは、排水ゾーン22に速やかに送り込まれて、排水ゾーンカバー部32によって隠蔽される。従って、水面開放部の水面上にゴミが浮遊せず、しかも、ペットが水Wと一緒にゴミも飲用するような不具合も確実に防止でき、良好な美観を確保できるとともに、衛生的にも優れた給水環境を提供することができる。
【0061】
また排水ゾーン22に流入された飲用水Wは、混入するゴミがフィルター25によって取り除かれた後、通水路16,17を介してポンプ室23に導入される。よってこの点においても、ゴミ等の不要物が混入された飲用水Wが、溢水部31、急流水路35および緩流水路21等の水面開放部を流動するのを確実に防止することができる。
【0062】
さらに本実施形態においては、ウォーターボウル1の周囲壁12における前周縁部内壁121、つまり緩流水路21の外側(一方側)の側壁を、外側に向かって下り傾斜する傾斜面に形成している。このため、急流水路35から流れ落ちた飲用水Wは、緩流水路21において内側から外側に向かう水Wの流れが形成されて、その流れに沿って飲用水Wは外側を多く流れるようになる。従って緩流水路21内においては中心側(内側)よりも外側の方が飲用水Wの流れが速くなり、ゴミをスムーズに外側に誘導することができる。その結果、ゴミを緩流水路21から効率良く除去できて、淀みが形成されるのを、より確実に防止することができる。
【0063】
また本実施形態の自動給水器においては、飲用水Wが急流水路35から緩流水路21に勢いよく導入されるため、飲用水Wが適度に撹拌されて、水面上にゴミが浮遊するのを防止することができる。このため、水W内に混入するゴミをより確実に排水ゾーン22に送り込むことができ、美観および衛生環境をより一層向上させることができる。
【0064】
また本実施形態の自動給水器においては、排水ゾーン22の底面からポンプ室23に至る通水路16,17を形成するとともに、その通水路16,17の上流側端部開口、つまり排水ゾーン22の底面に、フィルター25を水平に配置しているため、フィルター全域を集塵領域(濾過領域)として有効に利用でき、効率良く集塵することができる。すなわち仮に仕切壁15等に排水ゾーン22およびポンプ室23間を連通する通水孔を形成し、その通水孔にフィルターを垂直配置に設置した場合には、排水ゾーン22内の水位が低下すると、フィルターの一部が水面上に配置されることがある。その場合、フィルターの水面上の部分は、集塵部(濾過部)として機能せず、フィルター全域を有効に活用することができなくなってしまう。
【0065】
そこで本実施形態においては、排水ゾーン22の底面にフィルター25を設置しているため、排水ゾーン22内の水位にかかわらず、フィルター25は常時水面下に配置される。従って、水位が低くなろうとも、水Wが循環している限り、フィルター全域を集塵部(濾過部)として機能させることができ、効率良く集塵(濾過)することができる。
【0066】
その上さらに、排水ゾーン22の底面にフィルター25を設置しているため、底面に沈殿してしまうゴミも確実にフィルター25によって回収することができ、より一層濾過性能を向上させることができる。
【0067】
さらに本実施形態においては、排水ゾーン22の底面にフィルター25を設置しているため、フィルター25の設置面積を大きく確保することができる。このため本実施形態のように、排水ゾーン22の底面のほぼ全域に対応する大きさのフィルター25、つまり濾過面積が広い大サイズのフィルター25を難なく採用することができ、濾過性能をより一層向上させることができる。
【0068】
さらに本実施形態においては、排水ゾーン22の底面に凹陥部16を形成し、その凹陥部16にフィルター25を嵌め込むことによって、フィルター25の上面を排水ゾーン22の底面に一致させるようにしているため、フィルター25を排水ゾーン22内に収まり良く適合させることができ、より一層美観を向上させることができる。
【0069】
また本実施形態においては、緩流水路21の底面、つまり貯水室20の水面開放部の底面よりも、ポンプ室23の底面を低く設定しているため、ポンプ室23内の不用意な水位低下を未然に認識でき、水不足による揚水ポンプ26の停止等の不具合を有効に防止することができる。すなわち、揚水ポンプ26を確実に作動させるには、ポンプ室23内に所定の水位(最小水位Lb)以上の水位を確保する必要がある。この水位は、比較的高いものであり、例えば一般のユーザーの中には、所定の水位よりも低くとも、水Wが少し残っていれば、揚水ポンプ26を差し支えなく作動できるという謝った認識を持っているユーザーも存在しているのが現状である。
【0070】
このような背景の下、仮に貯水室20の底面に対し、ポンプ室23の底面を同一の高さ、または高く設定していると、ポンプ室23の水位が所定の水位(最小水位)よりも低い場合であっても、緩流水路21等の貯水室20には多少、水Wが残っているため、ユーザーは水量は足りていると誤認してしまう。その結果、水Wの補給のタイミングを逃してしまい、水不足が生じて、揚水ポンプ26が停止して水Wの循環が滞る等の不具合が発生してしまう。
【0071】
そこで本実施形態においては、ポンプ室23の底面を緩流水路21の底面よりも低く設定しているため、緩流水路21の水位が低くともポンプ室23の水位を十分に確保することができる。換言すると、ポンプ室23の水位が低くて給水が必要な場合には、緩流水路21にほとんど水Wが残っていない状態となるため、ユーザーは緩流水路21内の水Wの残存量をみれば、給水が必要か否かを簡単かつ正確に把握することができる。このためユーザーが給水の時期を見逃すような不具合を確実に防止でき、ユーザーは必要時に確実に水Wの補給を行うことができ、水不足によるポンプ停止等の不具合を確実に防止することができる。
【0072】
さらに本実施形態においては、排水ゾーン22の底面に対し、ポンプ室23の底面を低く設定しているため、自然流下によって飲用水Wを排水ゾーン22から通水路16,17を通ってポンプ室23内にスムーズに流動させることができる。
【0073】
なお上記実施形態においては、トップファンネル3における溢水部31を、下方に凹陥した皿状(凹球面状)に形成しているが、それだけに限られず、本発明においては、溢水部31を、平面状や、上方に膨出した山状(凸球面状)に形成するようにしても良い。
【0074】
また上記実施形態においては、緩流水路21をその上流側(一端側)から下流側(他端側)に向けて下方に緩やかに傾斜する緩斜面によって構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、緩流水路21に勾配を付けなくとも良い。例えば緩流水路21をその一端側から他端側にかけて勾配を付けずにほぼ水平(平坦)に形成しておき、急流水路35から飲用水Wが緩流水路21の一端側に流入された際の水Wの勢い(慣性力)によって、飲用水Wを緩流水路21の一端側から他端側に流動させるようにしても良い。
【0075】
さらに緩流水路21に緩斜面を形成する場合、必ずしも緩流水路21の全域に勾配を付ける必要はなく、緩流水路21の少なくとも一部を緩斜面によって構成するようにしても良い。
【0076】
また上記実施形態においては、緩流水路21において、水Wが左側から右側に流れるように構成しているが、言うまでもなく、本発明においては、緩流水路21を水が右側から左側に流れるように構成しても良い。
【0077】
また上記実施形態においては、ウォーターボウル1の前周縁部が平面視円弧状に形成されているが、本発明においては、必ずしも、ウォーターボウル自体の外周前縁部を平面視円弧状に形成する必要はなく、ウォーターボウル内に設けられる緩流水路を平面視円弧状に形成すれば良い。つまり、緩流水路が平面視円弧状に形成されていれば、ウォーターボウル自体の外周形状は特に限定されず、例えば円形、楕円形、長円形、三角形、四角形等の多角形、さらには異形状等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明のペット用循環型自動給水器は、犬や猫等のペットの飲み水供給用として用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1:ウォーターボウル
15:仕切壁
16:凹陥部
20:貯水室
21:緩流水路
22:排水ゾーン
23:ポンプ室
25:フィルター
26:揚水ポンプ
31:溢水部
35:急流水路(傾斜水路)
W:水(飲用水)
図1
図2
図3
図4
図5
図6