(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光照射部は、前記カウント判定部によって前記ブロックの総数に対する前記特徴ブロックの数の割合が前記所定の割合以上であると判定された場合、前記断面形状に対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを前記第2のエネルギーにする、請求項1に記載された3次元造形装置。
前記光照射部は、前記カウント判定部によって前記特徴ブロックの数が前記所定の数以上であると判定された場合、前記断面形状に対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを前記第2のエネルギーにする、請求項3に記載された3次元造形装置。
前記形状判定部は、前記光源の照射領域の面積に対する前記ブロックの面積の割合が所定の割合以内である場合、前記ブロックは前記特徴ブロックであると判定する面積判定部を備えた、請求項5に記載された3次元造形装置。
前記形状判定部は、前記ブロックの内角のうち、前記特徴点を除く頂点を中心とする内角の中で最も小さい内角が鋭角である場合、前記ブロックは前記特徴ブロックであると判定する内角判定部を備えた、請求項5または6に記載された3次元造形装置。
前記形状判定部は、前記ブロックと、前記ブロックと隣合うブロックとが離間している場合、前記離間している距離が所定の距離以下である場合、前記ブロックは前記特徴ブロックであると判定する離間判定部を備えた、請求項5から7までの何れか一つに記載された3次元造形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、長期間、同じ槽を使用して3次元物体を造形していると、槽のうち光が照射された部分が白く濁ることがあった(以下、このことを「白色化」という)。白色化した槽に光を照射し、槽内の光硬化性樹脂を硬化しようとした場合、槽の白色化した部分によって光の一部が遮られ、槽の白色化した部分近傍の光硬化性樹脂が適切に硬化しないことがある。このことによって、所望の断面形状を形成することができず、造形物の品質が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、槽の白色化を抑制することが可能な3次元造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願出願人は、槽が白色化するのは、以下のようなことが原因であることを見出した。樹脂によって形成された槽の表面には、複数の微小な穴が形成されている。その微小な穴に光硬化性樹脂が入り込んだ状態で、光源からの光が照射されると、光硬化性樹脂の一部が微小な穴に入り込んだ状態で硬化する。そして、硬化した樹脂を槽から引き上げる際、微小な穴に入り込んだ状態で硬化した樹脂の一部が穴から引き抜かれないことがある。そのため、槽の微小な穴に硬化した樹脂が残ることで、槽が白色化した。そこで、本願出願人は、微小な穴に入り込んだ状態で硬化した樹脂であっても、硬化した樹脂の硬度がその穴から硬化した樹脂を引き抜くことができる程度の硬度であれば、槽の白色化を抑制することができることを発見した。本願出願人は、光源からの光のエネルギーを調節して、光硬化性樹脂が硬化する硬度を抑えることで、槽の白色化を抑制することができることを発見した。
【0009】
本発明の3次元造形装置は、3次元物体の断面形状を用意し、液体の光硬化性樹脂を硬化させて前記断面形状の樹脂を順次積層することによって前記3次元物体を造形する3次元造形装置である。前記3次元造形装置は、槽と、光学装置と、制御装置とを備えている。前記槽は、樹脂によって形成され、前記光硬化性樹脂を収容する。前記光学装置は、前記槽の下方に配置され、光を発する光源を少なくとも有し、前記光源からの光を前記槽内の前記光硬化性樹脂に照射する。前記制御装置は、前記光学装置を制御する。前記制御装置は、分割部と、分割数算出部と、形状判定部と、カウント部と、カウント判定部と、光照射部とを備えている。前記分割部は、前記断面形状を複数のブロックに分割する。前記分割数算出部は、前記分割部によって分割された前記ブロックの総数を算出する。前記形状判定部は、前記分割部によって分割された複数の前記ブロックのそれぞれの形状が所定の形状であるか否かを判定し、前記所定の形状であると判定された前記ブロックを特徴ブロックとする。前記カウント部は、前記特徴ブロックの数を算出する。前記カウント判定部は、前記分割数算出部によって算出された前記ブロックの総数に対する前記カウント部によって算出された前記特徴ブロックの数の割合が、所定の割合以上であるか否かを判定する。前記光照射部は、前記カウント判定部によって前記割合が前記所定の割合未満であると判定された場合、少なくとも前記特徴ブロックに対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを第1のエネルギーにし、前記カウント判定部によって前記割合が前記所定の割合以上であると判定された場合、少なくとも前記特徴ブロックに対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを前記第1のエネルギーよりも低い第2のエネルギーにする。
【0010】
前記3次元造形装置によれば、形状判定部は、分割部によって分割された複数のブロックのそれぞれの形状が所定の形状であるか否かを判定する。この所定の形状とは、例えば、複雑な形状である。このような複雑な形状を造形する場合、より鮮明に形状を造形するために、光源からの光のエネルギーを高くして造形することがある。しかし、光源からの光のエネルギーを高くし過ぎると、槽の白色化が起こり易くなる。そこで、前記3次元造形装置では、形状判定部によって、分割したブロックが特徴ブロックであるか否かを判定し、カウント部によって特徴ブロックの数を算出する。そして、カウント判定部によって、分割した特徴ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の割合以上であると判定されると、その断面形状は複雑な断面形状であると判定することができる。このとき、少なくとも特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂に光を照射するときに、光源からの光のエネルギーを第1のエネルギーよりも低い第2のエネルギーにすることによって、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂の硬度を小さくすることができる。よって、槽の微小な穴に入り込んだ状態で硬化した樹脂であっても、その硬化した樹脂を槽の微小な穴から引き抜き易くなる。したがって、槽の白色化を抑制することができる。
【0011】
本発明の好ましい一態様によれば、前記光照射部は、前記カウント判定部によって前記ブロックの総数に対する前記特徴ブロックの数の割合が前記所定の割合以上であると判定された場合、前記断面形状に対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを前記第2のエネルギーにする。
【0012】
上記態様によれば、カウント判定部によってブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の割合以上であると判定されたとき、断面形状に対応した領域の光硬化性樹脂に照射される光源からの光のエネルギーを第1のエネルギーより低い第2のエネルギーにする。よって、領域ごとに光のエネルギーを調節するような複雑な制御をすることなく、領域全体に対して光源からの光のエネルギーを低くして、その光を槽内の光硬化性樹脂に照射することができる。
【0013】
本発明の他の3次元造形装置は、3次元物体の断面形状を用意し、液体の光硬化性樹脂を硬化させて前記断面形状の樹脂を順次積層することによって前記3次元物体を造形する3次元造形装置である。前記3次元造形装置は、槽と、光学装置と、制御装置とを備えている。前記槽は、樹脂によって形成され、前記光硬化性樹脂を収容する。前記光学装置は、前記槽の下方に配置され、光を発する光源を少なくとも有し、前記光源からの光を前記槽内の前記光硬化性樹脂に照射する。前記制御装置は、前記光学装置を制御する。前記制御装置は、分割部と、形状判定部と、カウント部と、カウント判定部と、光照射部とを備えている。前記分割部は、前記断面形状を複数のブロックに分割する。前記形状判定部は、前記分割部によって分割された複数の前記ブロックのそれぞれの形状が所定の形状であるか否かを判定し、前記所定の形状であると判定された前記ブロックを特徴ブロックとする。前記カウント部は、前記特徴ブロックの数を算出する。前記カウント判定部は、前記カウント部によって算出された前記特徴ブロックの数が所定の数以上であるか否かを判定する。前記光照射部は、前記カウント判定部によって前記特徴ブロックの数が前記所定の数未満であると判定された場合、少なくとも前記特徴ブロックに対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを第1のエネルギーにし、前記カウント判定部によって前記特徴ブロックの数が前記所定の数以上であると判定された場合、少なくとも前記特徴ブロックに対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを前記第1のエネルギーよりも低い第2のエネルギーにする。
【0014】
前記3次元造形装置によれば、カウント判定部によって、特徴ブロックの数が所定の数以上であると判定されると、その断面形状は複雑な断面形状であると判定することができる。少なくとも特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂に光を照射するときに、光源からの光のエネルギーを第1のエネルギーよりも低い第2のエネルギーにすることによって、樹脂の硬度を小さくすることができる。よって、槽の微小な穴に入り込んだ状態で硬化した樹脂であっても、その硬化した樹脂を槽の微小な穴から引き抜き易くなり、槽の白色化を抑制することができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記光照射部は、前記カウント判定部によって前記特徴ブロックの数が前記所定の数以上であると判定された場合、前記断面形状に対応した領域の前記光硬化性樹脂に光を照射するときに、前記光源からの光のエネルギーを前記第2のエネルギーにする。
【0016】
上記態様によれば、カウント判定部によって特徴ブロックの数が所定の数以上であると判定されたとき、断面形状に対応した領域の光硬化性樹脂に照射される光源からの光のエネルギーを第1のエネルギーより低い第2のエネルギーにする。よって、領域ごとに光のエネルギーを調節するような複雑な制御をすることなく、領域全体に対して光源からの光のエネルギーを低くして、その光を槽内の光硬化性樹脂に照射することができる。
【0017】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記分割部は、抽出部と、特徴点分割部とを備えている。前記抽出部は、前記断面形状の外郭の隣合う線分同士がなす内角が270度以上である場合、前記線分同士の接続点を特徴点として抽出する。前記特徴点分割部は、前記抽出部によって抽出された前記特徴点が複数あり、かつ、前記断面形状の外郭上において隣合う2つの前記特徴点を結ぶ接続線が前記断面形状の領域内にあるとき、前記接続線で分割することで前記断面形状を複数の前記ブロックに分割する。
【0018】
上記態様によれば、上述したように、抽出部によって特徴点を抽出し、特徴点分割部によって断面形状を複数のブロックに分割することで、断面形状における外方に突出した形状を含む部分を1つのブロックとして分割することができる。断面形状の外方に突出した形状は、複雑な形状であり、造形することが難しい。そのため、そのような複雑な形状を含む部分を1つのブロックとして分割することで、形状判定部によって、断面形状の外方に突出した形状を有するブロックを特徴ブロックとして判定することができる。
【0019】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記形状判定部は、前記光源の照射領域の面積に対する前記ブロックの面積の割合が所定の割合以内である場合、前記ブロックは前記特徴ブロックであると判定する面積判定部を備えている。
【0020】
光源の照射領域の面積に対するブロックの面積の割合が所定の割合以内である場合、このブロックは、面積が小さいブロックであると判定することができる。面積が小さいブロックは、複雑な形状で造形することが難しいため、特徴ブロックであるといえる。よって、上記態様によれば、面積判定部によって、ブロックの面積からそのブロックが特徴ブロックであるか否かを判定することができる。
【0021】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記形状判定部は、前記ブロックの内角のうち、前記特徴点を除く頂点を中心とする内角の中で最も小さい内角が鋭角である場合、前記ブロックは前記特徴ブロックであると判定する内角判定部を備えている。
【0022】
ブロックの内角のうち、特徴点を除く頂点を中心とする内角の中で最も小さい内角が鋭角である場合、そのブロックは尖った形状を有しているといえる。尖った形状は、複雑な形状で造形することが難しいため、その尖った形状を有するブロックは、特徴ブロックであるといえる。よって、上記態様によれば、内角判定部によって、ブロックの内角からそのブロックが特徴ブロックであるか否かを判定することができる。
【0023】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記形状判定部は、前記ブロックと、前記ブロックと隣合うブロックとが離間している場合、前記離間している距離が所定の距離以下である場合、前記ブロックは前記特徴ブロックであると判定する離間判定部を備えている。
【0024】
隣合うブロック同士が離間しており、その離間した距離が所定の距離以下である場合、隣合うブロック同士の間隔が狭い。ブロック同士の間隔が狭い場合、ブロック同士の間に小さい空間を形成するように造形するため、その造形は難しい。そのため、ブロック同士の間隔が狭いブロックは、複雑な形状である特徴ブロックであるといえる。よって、上記態様によれば、離間判定部によって、隣合うブロック同士が離間している場合、その離間した距離からそのブロックが特徴ブロックであるか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、槽の白色化を抑制することが可能な3次元造形装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る3次元造形装置について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る3次元造形装置1の縦断面図である。
図2は、3次元造形装置1の平面図である。なお、以下の説明においては、
図1の左、右をそれぞれ3次元造形装置1の前、後とする。また、
図2の上、下をそれぞれ3次元造形装置1の左、右とする。
図1などにおいて、符号F、Rr、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、3次元造形装置1の設置態様を何ら限定するものではない。
【0029】
3次元造形装置1は、3次元物体の断面形状を用意し、液体の光硬化性樹脂を硬化させて断面形状に対応した形状の樹脂を順次積層することによって3次元物体を造形する装置である。「断面形状」とは、3次元物体を所定の厚み(例えば、0.1mm)ごとに平行にスライスした断面の形状のことである。
図1に示すように、3次元造形装置1は、台11と、槽12と、ホルダ13と、光学装置14と、制御装置16を備えている。
【0030】
台11には、開口21が形成されている。開口21は、後述する光硬化性樹脂23に照射する光を通過させる部位である。開口21の形状は特に限定されない。本実施形態では、
図2に示すように、開口21は平面視矩形状に形成されている。
【0031】
図1に示すように、槽12は、台11上に載置される。槽12は、台11に取り付け可能に配置されている。
図2に示すように、槽12は、台11に載置された状態において、台11の開口21を覆っている。
図1に示すように、槽12は、液体の光硬化性樹脂23を収容する。光硬化性樹脂23とは、光を照射することによって硬化することが可能な樹脂のことである。
図2に示すように、槽12は、平面視略矩形状の容器である。槽12は、平面視矩形状の底板12bと、底板12bの左端部、右端部、前端部、後端部からそれぞれ起立した左側板、右側板、前側板、後側板とを備えている。槽12の底板12bは、槽12が台11上に載置された際に、一部が台11の開口21の上方に位置している。ここでは、槽12の底板12bの後部が開口21の上方に位置している。槽12のうち少なくとも底板12bは、光を通過させることが可能な材料によって形成されている。例えば、槽12の底板12bは、透明な樹脂で形成されている。本実施形態では、槽12全体は透明なアクリル樹脂で形成されている。
【0032】
図1に示すように、ホルダ13は、槽12の上方に配置されている。ここでは、ホルダ13は、台11の開口21の上方に配置されている。
図2に示すように、ホルダ13の形状は特に限定されないが、ここでは開口21と同様に、平面視矩形状に形成されている。ホルダ13は、昇降自在な部材である。
図1に示すように、ホルダ13は、後述する光源装置14のプロジェクタ31からの光が照射されて硬化した光硬化性樹脂23を引き上げる。ホルダ13は、下降したときに槽12内の光硬化性樹脂23に浸漬するように構成されている。また、ホルダ13は、上昇するときに、光が照射されて硬化した光硬化性樹脂23を吊り上げるように構成されている。本実施形態では、台11には、上下方向に延びた支柱41が設けられている。支柱41の前部には、スライダ42が取り付けられている。スライダ42は、支柱41に沿って昇降自在であり、モータ43によって上方または下方に駆動される。ここでは、ホルダ13は、昇降自在なスライダ42に取り付けられている。ホルダ13は、モータ43によって上方または下方に駆動される。支柱41は、スライダ42を介して、ホルダ13を昇降自在に間接的に支持している。ただし、支柱41はホルダ13を直接的に支持していてもよい。ホルダ13は支柱41の前方に配置されている。
【0033】
光学装置14は、台11および槽12の下方に配置されている。光学装置14は、槽12内の光硬化性樹脂23に光を照射する装置である。本実施形態では、光学装置14は台11の下方に設けられたケース25に収容されている。光学装置14は、プロジェクタ31と、ミラー32とを備えている。
【0034】
プロジェクタ31は光を発する光源の一例である。ただし、光学装置14の光源はプロジェクタ31に限定される訳ではない。本実施形態では、プロジェクタ31は、台11の前部の下方に配置されている。プロジェクタ31は、槽12の真下に配置されている。プロジェクタ31は、ホルダ13の前方斜め下に配置されている。ここでは、プロジェクタ31には、レンズ34が設けられている。レンズ34は、プロジェクタ31の後部に配置されている。レンズ34を通じて前方から後方に向かってプロジェクタ31からの光が発せられる。ただし、プロジェクタ31の投光方向は特に限定されない。ここでは、プロジェクタ31から発せられる光は、レンズ34の光軸Aを通る水平面の下方よりも上方に多く照射される。
【0035】
ミラー32は、プロジェクタ31から発せられた光を槽12に向かって反射させるものである。本実施形態では、ミラー32は、台11に形成された開口21の下方、かつ、プロジェクタ31の後方に配置されている。ミラー32とプロジェクタ31とは、前後方向に並ぶように配置されている。ミラー32は、前下がりに傾斜して配置されている。プロジェクタ31から発せられた光は、ミラー32によって反射され、台11の開口21を通じて槽12内の光硬化性樹脂23に照射される。ここで、3次元物体を造形するに先立って、プロジェクタ31から発せられた全ての光が開口21を通過するように、光の照射方向を調節する必要がある。本実施形態では、3次元物体を造形するに先立って、プロジェクタ31の位置を調節することによって光の照射方向を調節しているが、ミラー32の角度を調節することによって光の照射方向を調節してもよい。
【0036】
本実施形態では、3次元造形装置1は、脚15を備えている。脚15は、例えば、槽12の底板12bの前部が槽12の底板12bの後部よりも上方に配置されるように、すなわち、槽12が後側に傾くように、槽12を傾斜させるものである。ここでは、脚15は、ケース25の底板に設けられている。
図1では、ケース25の底板の左前部および左後部に設けられた脚15が図示されているが、ケース25の底板の右前部および右後部にも同様の脚15が設けられている。
【0037】
ケース25は、台11を支持している。前側の脚15を後側の脚15よりも長くすることにより、ケース25を後下がりに傾斜させることができる。ケース25が後下がりに傾斜すると、台11の上に載置された槽12も後下がりに傾斜する。本実施形態では、脚15の長さを調節することによって、槽12を傾斜させることが可能である。ここでは、4つの脚15は、それぞれ独立して長さを調節することが可能である。脚15は、ケース25の底面に形成された孔(図示せず)に挿入される軸15aを備えている。この軸15aがケース25の底板に挿入される長さを適宜調節することにより、脚15の長さを調節することができ、槽12を適宜傾斜させることができる。ケース25の底板に対して軸15aの挿入長さを調節する機構は特に限定されない。例えば、軸15aが雄ねじで構成され、ケース25の底板の孔が雌ねじ構成されていてもよい。この場合、軸15aを回転させることにより、脚15の長さを調節することができる。
【0038】
本実施形態では、3次元造形装置1には、カバー45が設けられていてもよい。カバー45は、台11よりも上方に配置された槽12、ホルダ13および支柱41などを覆う部材である。カバー45によって、槽12内の光硬化性樹脂23に外部からのゴミなどが入りにくくすることができる。また、カバー45によって、照射された光が外部に漏れることを防止することができる。カバー45は、光硬化性樹脂23を硬化させる波長を含んだ光を遮断する材料で構成されていることが好ましい。カバー45は、不透明なカバーであってもよい。
【0039】
次に、制御装置16について説明する。制御装置16は、ホルダ13が取り付けられたスライダ42を昇降自在に制御するモータ43、および、光学装置14のプロジェクタ31に接続されている。制御装置16は、モータ43を駆動することによって、スライダ42およびホルダ13を上方または下方に移動させる。また、制御装置16は、プロジェクタ31から発せられる光のエネルギー、光度、光量、波長帯域、形状、および、光を照射させる位置などを制御する。制御装置16の構成は特に限定されない。例えば、制御装置16は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。
図3は、3次元造形装置1の主要要素を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置16は、作成部51と、分割部52と、分割数算出部53と、形状判定部54と、カウント部55と、カウント判定部56と、光照射部57とを備えている。
【0040】
作成部51は、3次元物体の断面形状を作成する。ここでは、作成部51は、断面形状をデータ化したスライスデータを作成する。なお、作成部51は、省略することが可能である。このとき、断面形状のデータは、パーソナルコンピュータなどで予め作成したものであってもよいし、配布された既存の断面形状のデータであってもよい。
【0041】
分割部52は、3次元物体の断面形状を複数のブロックに分割する。ここでは、分割部52では、断面形状の中に複雑な形状が含まれているか否かを判定するための前処理として、断面形状を複数のブロックに分割する。分割部52は、抽出部52aと、特徴点分割部52bとを備えている。
【0042】
抽出部52aは、断面形状を複数のブロックに分割する際、分割する基準となる特徴点を抽出する。本実施形態では、抽出部52aは、断面形状の外郭を形成する複数の線分について、隣合う線分同士がなす内角が所定の内角以上である場合、線分同士の接続点を特徴点とする。この所定の内角は特に限定されないが、例えば、180度以上360度未満が好ましい。ここでは、所定の内角は270度である。所定の内角は、予め定められており、制御装置16に予め保存されている値である。
図4は、断面形状D1を複数のブロックBL11、BL12に分割する一例を示した図である。例えば、
図4では、隣合う線分LS11、LS12がなす内角RP11、および、隣合う線分LS14、LS15がなす内角RP12は、270度以上である。よって、
図4の場合、線分LS11と線分LS12との接続点CP11、および、線分LS14と線分LS15との接続点CP12が特徴点となる。なお、隣合う線分LS12、LS13がなす内角R11、および、隣合う線分LS13、LS14がなす内角R12は、270度未満である。よって、線分LS12と線分LS13との接続点P11、および、線分LS13と線分LS14との接続点P12は、特徴点ではない。このように、本実施形態では、断面形状D1の外郭L1における隣合う線分との接続点のうち、線分の方向が急に変化する接続点を特徴点として抽出している。
【0043】
図3に示す特徴点分割部52bは、抽出部52aによって抽出した特徴点に基づいて3次元物体の断面形状を複数のブロックに分割する。特徴点分割部52bは、抽出部52aによって抽出された特徴点が複数あり、かつ、断面形状の外郭上において隣合う2つの特徴点を結ぶ接続線が断面形状の領域内にあるとき、接続線で分割することで複数のブロックに分割する。
図4では、点P11、P12は特徴点ではないため、断面形状D1の外郭L1上において隣合う特徴点とは、点CP11、CP12となる。そして、特徴点CP11、CP12を結ぶ接続線CL11が断面形状Dの領域内にある。よって、
図4では、接続線CL11を境にして断面形状D1をブロックBL11、BL12に分割することができる。
図5は、断面形状D2を複数のブロックに分割することができない一例を示した図である。
図5のような断面形状D2の場合、点CP21、CP22が特徴点である。断面形状D2の外郭L2上において隣合う2つの特徴点CP21、CP22を結ぶ接続線CL21の一部は、断面形状D2の領域外にある。そのため、この場合、接続線CL21を境にして断面形状D2を複数のブロックに分割することはできない。
【0044】
図3に示す分割数算出部53は、分割部52によって分割されたブロックの総数を算出する。ここでは、分割数算出部53によって算出されたブロックの総数は、制御装置16の記憶領域(図示せず)に保存される。
【0045】
形状判定部54は、分割部52によって分割されたブロックのそれぞれの形状が、予め定められた所定の形状であるか否かを判定する。そして、形状判定部54は、分割されたブロックの形状が所定の形状である場合、そのブロックは特徴ブロックであるとし、ブロックの形状が所定の形状でない場合、そのブロックは非特徴ブロックであるとする。ここで、所定の形状とは、複雑な形状のことである。本実施形態では、形状判定部54は、面積判定部54aと、内角判定部54bと、離間判定部54cと、を備えている。複雑な形状とは、面積判定部54a、内角判定部54b、離間判定部54cの何れかによって所定の形状と判定された形状が複雑な形状である。
【0046】
面積判定部54aは、プロジェクタ31の照射領域AR(
図4参照)の面積に対するブロックの面積の割合が所定の割合(以下、所定の面積割合ともいう。)以内である場合、このブロックの形状は複雑な形状であると判定する。この所定の面積割合は特に限定されず、例えば、プロジェクタ31の照射領域ARの面積の10%である。本実施形態では、プロジェクタ31の照射領域ARの面積および所定の面積割合は、予め定められており、例えば、制御装置16に予め保存されている。
図4では、ブロックBL11の面積は、プロジェクタ31の照射領域ARの面積の10%以下である。そのため、面積判定部54aは、ブロックBL1の形状は複雑な形状であると判定し、ブロックBL11は特徴ブロックであるとする。面積判定部54aでは、面積が小さいブロックを特徴ブロックとしている。
【0047】
内角判定部54bは、ブロックの内角のうち、抽出部52aによって抽出された特徴点を除く頂点を中心とする内角の中で最も小さい内角が鋭角(好ましくは、30度以下)である場合、このブロックは特徴ブロックであると判定する。
図6は、内角判定部54bによって、特徴ブロックと判定されたブロックBL31を有する断面形状D3の一例を示した図である。
図6の断面形状D3では、点CP31、CP32、CP33が特徴点として抽出され、特徴点CP31と特徴点CP32とを結ぶ接続線CL31、および、特徴点CP32と特徴点CP33とを結ぶ接続線CL32を境にして、断面形状D3は、ブロックBL31、BL32、BL33に分割されている。例えば、ブロックBL31において、ブロックBL31の頂点のうち特徴点CP31、CP32を除く頂点は、頂点P31、P32である。そして、頂点P31、P32を中心とする内角R31、R32の中で最も小さい内角は、内角R31である。この内角R31は鋭角である。よって、
図6では、内角判定部54bによって、ブロックBL31は、特徴ブロックであると判定される。一方、ブロックBL32において、ブロックBL32の頂点のうち特徴点CP32、CP33を除く頂点は、頂点P33〜P37である。しかし、この頂点P33〜P37を中心とする内角R33〜R37は、何れも鋭角ではない。よって、内角判定部54bによって、ブロックBL32は、非特徴ブロックであると判定される。内角判定部54bでは、断面形状D3の外郭L3によって形成された形状において、尖っている形状を有するブロックBL31を特徴ブロックとしている。
【0048】
離間判定部54cは、隣合うブロック同士が離間している場合、離間している距離が所定の距離以下である場合、そのブロックは特徴ブロックであると判定する。ここで、所定の距離は特に限定されない。例えば、所定の距離は、0.1mm〜4mmが好ましく、より好ましくは0.1mm〜2mmであり、ここでは、2mmである。この所定の距離は、予め定められており、例えば、制御装置16に予め保存されている。
図7は、離間判定部54cによって、特徴ブロックと判定されたブロックBL41を有する断面形状D4の一例を示した図である。
図7の断面形状D4は、外郭によって3つのブロックBL41、BL42、BL43に分割されている。ここで、ブロックBL41は、ブロックBL42、BL43と離間している。そして、ブロックBL41とブロックBL42とが離間している距離が距離LN41であり、ブロックBL41とブロックBL43とが離間している距離が距離LN42である。なお、「離間している距離」とは、ブロックとブロックとの間の最も短い距離のことである。このとき、仮に、距離LN41、LN42が共に所定の距離より大きい場合、離間判定部54cは、ブロックBL41を非特徴ブロックと判定する。一方、距離LN41、LN42のうち少なくとも何れか一方が所定の距離以下の場合、離間判定部54cは、ブロックBL41の形状は複雑な形状であると判定し、ブロックBL41は特徴ブロックであるとする。離間判定部54cでは、隣合うブロック同士の間隔が狭いとき、そのブロックは特徴ブロックであるとしている。
【0049】
なお、本実施形態では、形状判定部54は、面積判定部54a、内角判定部54bおよび離間判定部54cの少なくとも何れか一つが特徴ブロックであると判定した場合、そのブロックは特徴ブロックであるとする。一方、形状判定部54は、面積判定部54a、内角判定部54bおよび離間判定部54cの全てが非特徴ブロックであると判定した場合、そのブロックは非特徴ブロックであるとする。
【0050】
カウント部55は、形状判定部54によって特徴ブロックと判定されたブロックの数を算出する。ここでは、算出された特徴ブロックの数は、制御装置16の上記記憶領域に格納されている。
【0051】
カウント判定部56は、分割数算出部53によって算出されたブロックの総数に対するカウント部55によって算出された特徴ブロックの数の割合が所定の割合(以下、所定の総数割合ともいう。)以上であるか否かを判定する。所定の総数割合は、特に限定されるものではない。ここでは、所定の総数割合は、50%である。なお、所定の総数割合は、予め定められており、ここでは、制御装置16に予め保存されている。
【0052】
光照射部57は、光源装置14のプロジェクタ31から発せられる光のエネルギーを調節する。ここでは、光照射部57は、カウント判定部56によって、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合未満であると判定された場合、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に光を照射するときに、プロジェクタ31からの光のエネルギーを第1のエネルギーにする。一方、光照射部57は、カウント判定部56によって、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合以上であると判定された場合、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に光を照射するときに、プロジェクタ31からの光のエネルギーを第2のエネルギーにする。ここでは、第2のエネルギーは、第1のエネルギーよりも低い。例えば、第1のエネルギーは、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に照射するプロジェクタ31からの光の通常のエネルギー(通常時に照射する光のエネルギー)である。第1のエネルギーおよび第2のエネルギーは、予め定められており、制御装置16に予め保存されている。なお、ここでは、光照射部57は、形状判定部54によって、非特徴ブロックであると判定されたブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に光を照射するときに、プロジェクタ31からの光のエネルギーを、通常時に照射する光のエネルギーである第1のエネルギーにする。
【0053】
ところで、
図1に示すように、同じ槽12を長期間使用して3次元物体を造形していると、槽12のうち光が照射された部分が白色化することがある。白色化した槽12に光を照射し、槽12内の光硬化性樹脂23を硬化しようとした場合、槽12の白色化した部分によって光の一部が遮られ、槽12の白色化した部分近傍の光硬化性樹脂23が適切に硬化しないことがある。このことによって、所望の断面形状を形成することができず、造形物の品質が低下してしまうおそれがある。この槽12の白色化が発生する原因としては以下のことが考えられる。
【0054】
図8は、槽12の白色化が発生する状態を示す図であり、槽12の拡大図である。
図8に示すように、樹脂によって形成された槽12の表面には、複数の微小な穴12hが形成されている。この微小な穴12hには、光硬化性樹脂23aが入り込む。そのため、微小な穴12hに入り込んだ光硬化性樹脂23aに、プロジェクタ31からの光が照射されると、光硬化性樹脂23aが微小な穴12hに入り込んだ状態で硬化する。そして、ホルダ13によって、硬化した樹脂を槽12から引き上げる際、微小な穴12hに入り込んだ状態で硬化した樹脂23aが微小な穴12hから引き抜かれないことがある。そのため、槽12の微小な穴12hに硬化した樹脂23aが残ることで、槽12が白色化した。そこで、本実施形態では、微小な穴12hに入り込んだ状態で硬化した樹脂23aであっても、硬化した樹脂23aの硬度が、その穴12hから硬化した樹脂23aを引き抜くことができる程度の硬度であれば、槽12の白色化を抑制することができる。プロジェクタ31から発せられた光のエネルギーを低くして、光硬化性樹脂23が硬化する硬度を抑えることで、槽12の白色化を抑制する。ここでは、制御装置16は、分割部52と、分割数算出部53と、形状判定部54と、カウント部55と、カウント判定部56と、光照射部57とによって、プロジェクタ31から発せられる光のエネルギーを適宜調節している。
【0055】
次に、制御装置16によるプロジェクタ31から発せられる光のエネルギーを調節する流れについて、
図9のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、造形したい3次元物体の断面形状を用意する。ここでは、作成部51によって、3次元物体に対応した複数の断面形状を作成する。
【0056】
図9に示すように、ステップS101では、制御装置16は、作成部51によって作成された複数の断面形状のうち、造形する断面形状を読み込む。そして、ステップS102では、ステップS101で読み込んだ断面形状を複数のブロックに分割する。ここでは、例えば、
図4の一例では、分割部52の抽出部52aによって、断面形状D1の頂点の中から特徴点CP11、CP12を抽出する。そして、特徴点分割部52bによって、断面形状D1の外郭L1上において隣合う2つの特徴点CP11、CP12を結ぶ接続線CL11が断面形状D1の領域内にあるとき、接続線CL11で分割することで、ブロックBL11、BL12に分割する。ステップS103では、分割数算出部53によって、分割したブロックの総数を算出する。
【0057】
次に、ステップS104では、形状判定部54によって、分割した複数のブロックのそれぞれの形状が、複雑な形状であるか否かを判定し、複雑な形状であると判定されたブロックを特徴ブロックとする。すなわち、ステップS104では、形状判定部54によって、分割した複数のブロックの中から特徴ブロックを抽出する。本実施形態では、複雑な形状とは、上述したような、面積判定部54aによって判定された面積が小さい形状、内角判定部54bによって判定された先が尖っている形状、および、離間判定部54によって判定されたブロック同士の間隔が狭いような形状のことである。
【0058】
その後、ステップS105では、カウント部55によって、形状判定部54が特徴ブロックと判定したブロックの数を算出する。そして、ステップS106では、カウント判定部56によって、分割数算出部53によって算出されたブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合(例えば、分割したブロック数の50%)以上であるか否かを判定する。このとき、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合以上(YES)である場合、次にステップS107を実行する。一方、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合未満(NO)である場合、次にステップS108を実行する。
【0059】
ステップS106で、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合以上であると判定された場合、次に、ステップS107では、光硬化性樹脂23に照射する光のエネルギーを調節する。ここでは、光照射部57によって、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に照射する光のエネルギーを第1のエネルギーより低い第2のエネルギーにする。なお、非特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に照射する光のエネルギーは、第1のエネルギー、すなわち、通常時のエネルギーのままである。
【0060】
ステップS106で、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合未満であると判定された場合、次に、ステップS108では、光硬化性樹脂23に照射する光のエネルギーを調節しない。ここでは、プロジェクタ31から発せられる光のエネルギーを第2のエネルギーにすることなく、第2のエネルギーよりも高い第1のエネルギー(通常のエネルギー)で、槽12内の光硬化性樹脂23に光を照射する。
【0061】
ステップS107およびステップS108において、光硬化性樹脂23を硬化して、ステップS101で読み込んだ断面形状に対応した形状の樹脂を造形した後、硬化した光硬化性樹脂23をホルダ13によって槽12から引き上げる。その後、図示はしていないが、ステップS101に戻って、次の断面形状を読み込んでもよい。このように、光硬化性樹脂23を硬化して、断面形状に対応した形状の樹脂を造形し、その造形した樹脂を順次積層することで所望の3次元物体の造形物を造形する。
【0062】
なお、本実施形態では、3次元物体を造形する際、最初に造形する断面形状から最後に造形する断面形状に至るまでの間の断面形状に対して、ステップS101からステップS108までの一連の処理を行い、プロジェクタ31から発せられる光のエネルギーを適宜低くしている。しかし、上述した一連の処理は、最初に造形する断面形状から最後に造形する断面形状に至るまでの間の断面形状のうち、一部の断面形状のみに適用してもよい。例えば、ステップS101からステップS108までの一連の処理は、後半に造形する断面形状に適用してもよいし、前半に造形する断面形状に適用してもよい。
【0063】
以上、本実施形態では、
図3に示すように、形状判定部54は、分割部52によって分割された複数のブロックのそれぞれの形状が所定の形状であるか否かを判定する。この所定の形状とは、例えば、上述したような複雑な形状である。このような複雑な形状を造形する場合、より鮮明に形状を造形するために、プロジェクタ31からの光のエネルギーを高くして造形することがある。しかし、プロジェクタ31からの光のエネルギーを高くし過ぎると、槽12(
図1参照)の白色化が起こり易くなる。そこで、本実施形態では、形状判定部54によって、分割したブロックが特徴ブロックであるか否かを判定し、カウント部55によって特徴ブロックの数を算出する。そして、カウント判定部56によって、分割したブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合以上であると判定されると、その断面形状は複雑な断面形状であると判定することができる。このとき、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に照射する光のエネルギーを第1のエネルギーよりも低い第2のエネルギーにすることによって、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23の硬度を小さくすることができる。よって、
図8に示すように、槽12の微小な穴12hに入り込んだ状態で硬化した樹脂23aであっても、その硬化した樹脂23aを槽12の微小な穴12hから引き抜き易くなる。したがって、槽12の白色化を抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、カウント判定部56は、分割したブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合(例えば、50%)以上であるか否かを判定する。断面形状のブロックの総数が多い場合、特徴ブロックの数が多くなり、断面形状のブロックの総数が少ない場合、特徴ブロックの数が少なくなることがある。そこで、本実施形態では、判定対象を、断面形状のブロックの総数に対する割合にしている。このことによって、断面形状のブロックの総数が多い場合であっても少ない場合であっても、そのブロックの総数に対する割合によって、断面形状が複雑な形状であるか否かを判定することができる。よって、断面形状が複雑な形状であるか否かをより正確に判定することができる。
【0065】
上述したように、例えば、
図4に示すように、抽出部52aによって特徴点CP11、CP12を抽出し、特徴点分割部52bによって断面形状D1を複数のブロックBL11、BL12に分割することで、断面形状D1における外方に突出した形状を含む部分を1つのブロック(
図4では、ブロックBL11)として分割することができる。断面形状D1の外方に突出した形状は、複雑な形状であり、造形することが難しい。そのため、そのような複雑な形状を含む部分を1つのブロックBL11として分割することで、形状判定部54によって、断面形状D1の外方に突出した形状を有するブロックBL11を特徴ブロックとして判定することができる。
【0066】
面積判定部54aは、例えば、
図4に示すように、プロジェクタ31の照射領域ARの面積に対するブロックBL11の面積の割合が所定の面積割合(例えば、プロジェクタ31の照射領域ARの面積の10%)以下である場合、そのブロックBL11を特徴ブロックと判定する。このとき、このブロックBL11は、面積が小さいブロックであると判定することができる。面積が小さいブロックBL11は、複雑な形状で造形することが難しいため、特徴ブロックであるといえる。よって、面積判定部54aによって、ブロックの面積からそのブロックが特徴ブロックであるか否かを判定することができる。
【0067】
内角判定部54bは、例えば、
図6に示すように、ブロックBL31の内角のうち、特徴点CP31、CP32を除く頂点P31、P32を中心とする内角R31、R32の中で最も小さい内角R31が鋭角である場合、そのブロックBL31を有する断面形状D3には、外方に尖った形状があるといえる。外方に尖った形状は、複雑な形状で造形することが難しいため、その尖った形状を有するブロックBL31は、特徴ブロックであるといえる。よって、内角判定部54bによって、ブロックの内角からそのブロックが特徴ブロックであるか否かを判定することができる。
【0068】
離間判定部54cは、例えば、
図7に示すように、ブロックBL41と、ブロックBL41と隣合うブロックBL42、BL43とが離間している場合、その離間している距離LN41、LN42の少なくとも何れか一方が所定の距離以下である場合、そのブロックBL41は、特徴ブロックであると判定する。隣合うブロックBL41、BL42、BL43同士が離間しており、その離間した距離LN41、LN42が所定の距離以下である場合、隣合うブロックBL41、BL42、BL43同士の間隔が狭い。ブロックBL41、BL42、BL43同士の間隔が狭い場合、ブロックBL41、BL42、BL43同士の間に小さい空間を形成するように造形するため、その造形は難しい。そのため、隣合うブロックBL42、BL43との間隔が狭いブロックBL41は、複雑な形状である特徴ブロックであるといえる。よって、離間判定部54cによって、隣合うブロック同士が離間している場合、その離間した距離からそのブロックが特徴ブロックであるか否かを判定することができる。
【0069】
以上、本実施形態に係る3次元造形装置1について説明した。しかし、本発明に係る3次元造形装置は、本実施形態に係る3次元造形装置1に限らず、他の種々の形態で実施することができる。
【0070】
<他の実施形態>
上記実施形態では、光照射部57は、カウント判定部56によって、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合以上であると判定された場合、特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に光を照射するときに、光のエネルギーを第1のエネルギーより低い第2のエネルギーにしていた。このとき、非特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に照射する光のエネルギーは、第1のエネルギーであった。しかし、光照射部57は、カウント判定部56によって、ブロックの総数に対する特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合以上であると判定された場合、断面形状に対応した領域の光硬化性樹脂23に光を照射するときに、プロジェクタ31からの光のエネルギーを第2の光源にしてもよい。このことによって、領域ごとに光のエネルギーを調節するような複雑な制御をすることなく、断面形状に対する領域全体に対してプロジェクタ31からの光のエネルギーを低くして、その光を槽12内の光硬化性樹脂34に照射することができる。
【0071】
上記実施形態では、
図3に示すように、カウント判定部56は、ブロックの総数に対するカウント部55によって算出された特徴ブロックの数の割合が所定の総数割合以上であるか否かを判定していた。しかし、カウント判定部56は、カウント部55によって算出された特徴ブロックの数が所定の数以上であるか否かを判定してもよい。この所定の数とは、定数である。所定の数は、予め定められた値であり、制御装置16に予め保存されている。このことによって、カウント判定部56によって、特徴ブロックの数が所定の数以上で判定されると、その断面形状は複雑な断面形状であると判断することができる。このように、判定対象が定数であっても、第1実施形態と同様に、断面形状が複雑な形状であるか否かを判定することができる。このことによって、少なくとも特徴ブロックに対応した領域の光硬化性樹脂23に照射する光のエネルギーを第1のエネルギーよりも低い第2のエネルギーにすることによって、樹脂の硬度を小さくすることができる。よって、
図8に示すように、槽12の微小な穴12hに入り込んだ状態で硬化した樹脂23aであっても、その硬化した樹脂23aを槽12の微小な穴12hから引き抜き易くなり、槽12の白色化を抑制することができる。なお、この場合、光照射部57は、特徴ブロックの数が所定の数未満であると判定されたとき、プロジェクタ31からの光のエネルギーを低くすることなく通常の光のエネルギーである第1のエネルギーで、槽12内の光硬化性樹脂23に光を照射する。
【0072】
しかし、光照射部57は、カウント判定部56によって、特徴ブロックの数が所定の数以上であると判定された場合、断面形状に対応した領域の光硬化性樹脂23に光を照射するときに、プロジェクタ31のエネルギーを第1のエネルギーより低い第2のエネルギーにしてもよい。このことによって、カウント判定部56によって特徴ブロックの数が所定の数以上であると判定されたとき、断面形状に対応した領域全体に対してプロジェクタ31から発せられた光のエネルギーを第1のエネルギーより低くすることができる。よって、領域ごとに光のエネルギーを調節するという複雑な制御をすることなく、領域全体に対してプロジェクタ31からの光のエネルギーを第1のエネルギーよりも低くして、その光を槽12内の光硬化性樹脂23に照射することができる。
【0073】
上記実施形態において、面積判定部54aは、プロジェクタ31の照射領域AR(
図4参照)の面積に対するブロックの面積の割合が所定の面積割合以内である場合、このブロックの形状は複雑な形状であると判定し、このブロックは特徴ブロックであるとしていた。このように、上記実施形態では、ブロックの面積との比較対象がプロジェクタ31の照射領域ARの面積に対する割合であった。しかし、ブロックの面積との比較対象は、プロジェクタ31の照射領域ARの面積に対する割合でなくてもよい。ブロックの面積との比較対象は、断面形状全体の面積に対する割合(例えば、断面形状全体の面積の50%)であってもよい。この場合、面積判定部54aは、断面形状全体の面積に対するブロックの面積の割合が所定の面積割合(例えば、50%)以内である場合、このブロックの形状は複雑な形状であると判定し、このとき、このブロックは特徴ブロックであるとしてもよい。