(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面を参照して、揺動型減速機を駆動するモータに対する制御技術に関する様々な実施形態が以下に説明される。制御技術は、以下の説明によって、明確に理解可能である。
【0032】
<本発明者等が見出した揺動型減速機の課題>
一般的に、減速機は、弾性、バックラッシや角度伝達誤差といった伝達特性を有する。これらの伝達特性は、減速機が組み込まれた装置の動作精度を悪化させる。産業用ロボットといった技術分野において、波動歯車装置や揺動型減速機が用いられることが多い。波動歯車装置や揺動型減速機は、一般的な減速機と比べて、精度よく動力を伝達することができる。
【0033】
揺動型減速機は、高い減速比で動力を伝達することができ、且つ、非常に小さなバックラッシを有する。揺動型減速機は、小型であり、且つ、高い剛性を有する。これらの特性を鑑みて、揺動型減速機は、大型ロボットや産業用ロボット中において、高い剛性が要求される部位にしばしば利用される。
【0034】
揺動型減速機は、環状に配列された複数の内歯と、複数の内歯に噛み合う揺動歯車部と、を有する。揺動歯車部は、内歯によって規定される定円に内接しながら移動する。
【0035】
揺動型減速機を設計する設計者は、揺動型減速機の設計上及び/又は製造上の理由から、揺動歯車部に形成された孔に、シャフトや他の部材を挿通させることがある。しかしながら、孔が形成された部位は、揺動歯車部の剛性を局所的に低下させることもある。
【0036】
本発明者等は、揺動歯車部に形成された孔が、モータの回転角と、揺動型減速機の回転角と、の間の角度誤差に周期的な変動を与え、角度伝達誤差を大きくすることを見出した。揺動歯車部に形成された孔に起因する角度伝達誤差を低減する制御技術が、以下に説明される。
【0037】
<減速機システム>
図1は、減速機システム100の例示的な機能構成を表す概略的なブロック図である。
図1を参照して、減速機システム100が説明される。
【0038】
減速機システム100は、モータ200と、エンコーダ300と、制御回路400と、揺動型減速機500と、を備える。モータ200は、制御回路400の制御下で、揺動型減速機500を駆動する。本実施形態において、制御装置は、制御回路400によって例示される。
【0039】
エンコーダ300は、モータ200に取り付けられてもよい。エンコーダ300は、モータ200の回転角を表す入力回転角に関する入力情報を生成する。本実施形態において、入力情報は、モータ200の回転角を表す。代替的に、入力情報は、モータ200の角速度やモータ200の回転角に関する他の情報を表してもよい。本実施形態の制御原理は、入力情報が表す特定の内容に限定されない。
【0040】
本実施形態において、入力情報を生成する装置として、エンコーダ300が利用される。代替的に、入力情報を生成することができる他の装置が、減速機システム100に用いられてもよい。本実施形態の制御原理は、入力情報を生成するための特定の技術に限定されない。
【0041】
制御回路400は、微分器410と、状態観測器420と、補正部430と、指令情報生成部440と、駆動部450と、を含む。上述の入力情報は、エンコーダ300から微分器410へ出力される。微分器410は、入力情報が表す回転角に対して微分演算し、モータ200の角速度を算出する。モータ200の角速度に関する角速度情報は、微分器410から状態観測器420及び指令情報生成部440へ出力される。本実施形態において、角度取得部は、微分器410によって例示される。入力情報が、モータ200の角速度を表すならば、角度取得部は、入力情報が入力される入力ポートであってもよい。本実施形態の制御原理は、角度取得部の特定の構造や特定の機能に限定されない。
【0042】
状態観測器420は、揺動型減速機500の揺動歯車部に形成された孔の数に基づいて、入力情報によって表される入力回転角と、揺動型減速機500の回転角を表す出力回転角と、の間の角度誤差θ
sを推定する。角度誤差θ
sは、以下の数式によって定義されてもよい。本実施形態において、推定部は、状態観測器420によって例示される。
【0044】
角度誤差θ
sに関する上述の定義式は、揺動型減速機500の角速度の変数(ω
L)を含む。しかしながら、本実施形態の制御原理は、揺動型減速機500の出力動作の直接的な測定を要することなく、角度誤差θ
sを推定することを可能にする。角度誤差θ
sを推定するための様々な演算技術は、後述される。角度誤差θ
sの推定値を表すデータは、状態観測器420から補正部430へ出力される。
【0045】
補正部430は、第1電流決定部431と、第2電流決定部432と、補正処理部433と、を含む。角度誤差θ
sの推定値を表すデータは、状態観測器420から第1電流決定部431及び第2電流決定部432へ出力される。第1電流決定部431は、角度誤差θ
sの推定値を表すデータに応じて、補償電流の大きさを表す補償電流値を決定する。第2電流決定部432は、角度誤差θ
sの推定値を表すデータに応じて、状態フィードバック電流の大きさを表す状態フィードバック電流値を決定する。補正処理部433は、指令情報生成部440によって生成された指令電流値を、補償電流値と状態フィードバック電流値とを用いて補正する。
【0046】
本実施形態において、補正部430は、補償電流値に加えて、状態フィードバック電流値を用いて、指令電流値を補正する。代替的に、補正部430は、補正電流値のみを用いて、指令電流値を補正してもよい。本実施形態の制御原理は、指定電流値を補正するための特定の演算技術に限定されない。
【0047】
指令情報生成部440は、位置指令生成部441と、速度指令生成部442と、電流指令生成部443と、を含む。位置指令生成部441は、エンコーダ300から、上述の入力情報を受け取る。位置指令生成部441は、外部装置(図示せず)から、モータ200の回転角を指示する指示情報を受け取る。位置指令生成部441は、入力情報を、指示情報と対比し、指示情報によって指定された回転角からのモータ200の現在の回転角の偏差を算出する。算出された偏差に関する偏差情報は、位置指令生成部441から速度指令生成部442へ出力される。
【0048】
速度指令生成部442は、微分器410からモータ200の角速度を表す角速度情報を受け取る。速度指令生成部442は、偏差情報と、角速度情報と、を用いて、速度を指示する速度指令情報を生成する。速度指令情報は、速度指令生成部442から電流指令生成部443へ出力される。
【0049】
電流指令生成部443は、速度指令情報に基づいて、指令電流値を決定する。指令電流値を表す情報は、電流指令生成部443から補正処理部433へ出力される。補正処理部433は、上述の如く、指令電流値を、補償電流値と状態フィードバック電流値とを用いて補正する。
【0050】
指令情報生成部440は、一般的なフィードバック制御技術を用いて、指令電流値を決定してもよい。したがって、本実施形態の制御原理は、指令電流値を決定するための特定の方法に限定されない。
【0051】
補正処理部433は、指令電流値を、補償電流値と状態フィードバック電流値とを用いて補正し、モータ200へ供給される供給電流の大きさを設定する。モータ200へ供給される供給電流の大きさを表す供給電流情報は、補正処理部433から、状態観測器420及び駆動部450へ出力される。
【0052】
駆動部450は、供給電流情報によって表される大きさの電流を、駆動信号として、モータ200へ出力する。モータ200は、駆動信号に応じて、回転運動をする。
【0053】
本実施形態において、駆動部450は、制御回路400に組み込まれた駆動回路として形成される。代替的に、駆動部450は、制御回路400から分離されてもよい。例えば、駆動部450は、上述の供給電流情報から駆動信号を生成するプログラムを実行するデジタルシグナルプロセッサであってもよい。本実施形態の制御原理は、駆動部450の特定の構造や特定の機能に限定されない。
【0054】
上述の如く、状態観測器420は、モータ200の角速度に関する角速度情報を、微分器410から受け取り、且つ、モータ200へ供給される供給電流の大きさを表す供給電流情報を、補正処理部433から受け取る。状態観測器420は、角速度情報と供給電流情報とを、上述の角度誤差θ
sの推定に利用する。
【0055】
<揺動型減速機>
図1を参照して説明された減速機システム100の原理は、様々な揺動型減速機を駆動するために利用可能である。
【0056】
図2A及び
図2Bは、例示的な揺動型減速機500Aを示す。
図2Aは、揺動型減速機500Aの概略的な断面図である。
図2Bは、
図2Aに示されるA−A線に沿う揺動型減速機500Aの概略的な断面図である。揺動型減速機500Aは、
図1を参照して説明された揺動型減速機500として利用可能である。
図1乃至
図2Bを参照して、揺動型減速機500Aが説明される。
【0057】
揺動型減速機500Aは、外筒部510と、キャリア部520と、揺動歯車部530と、駆動機構540と、を備える。
図2A及び
図2Bは、入力軸210を示す。入力軸210は、
図1を参照して説明されたモータ200のシャフトであってもよい。
図1を参照して説明されたエンコーダ300は、入力軸210に取り付けられ、入力軸210の回転角を表す入力回転角に関する入力情報を生成してもよい。
【0058】
外筒部510は、外筒511と、複数の内歯ピン512と、を含む。外筒511は、キャリア部520、揺動歯車部530及び駆動機構540が収容される円筒状の内部空間を規定する。入力軸210は、円筒状の内部空間の中心軸に沿って延出する。各内歯ピン512は、入力軸210の延出方向に延びる円柱状の部材である。各内歯ピン512は、外筒511の内壁に形成された溝部に嵌入される。したがって、各内歯ピン512は、外筒511によって適切に保持される。
【0059】
複数の内歯ピン512は、入力軸210周りに略一定間隔で配置される。各内歯ピン512の半周面は、外筒511の内壁から入力軸210に向けて突出する。したがって、複数の内歯ピン512は、揺動歯車部530と噛み合う内歯として機能する。
【0060】
キャリア部520は、基部521と、端板部522と、位置決めピン523と、固定ボルト524と、を含む。キャリア部520は、全体的に、円筒形状をなす。キャリア部520は、外筒部510に対して相対的に回転することができる。キャリア部520が、固定されるならば、外筒部510は、入力軸210の回転に応じて回転する。外筒部510が固定されるならば、キャリア部520は、入力軸210の回転に応じて回転する。入力軸210は、キャリア部520又は外筒部510の回転軸RXに沿って延出する。
【0061】
基部521は、基板部525と、3つのシャフト部526と、を含む。3つのシャフト部526それぞれは、基板部525から端板部522に向けて延びる。3つのシャフト部526それぞれの先端面には、ネジ孔527及びリーマ孔528が形成される。位置決めピン523は、リーマ孔528へ挿入される。この結果、端板部522は、基部521に対して精度よく位置決めされる。固定ボルト524は、ネジ孔527に螺合する。この結果、端板部522は、基部521に適切に固定される。
【0062】
揺動歯車部530は、基板部525と端板部522との間に配置される。3つのシャフト部526は、揺動歯車部530を貫通し、端板部522に接続される。
【0063】
揺動歯車部530は、第1揺動歯車531と、第2揺動歯車532と、を含む。第1揺動歯車531は、基板部525と第2揺動歯車532との間に配置される。第2揺動歯車532は、端板部522と第1揺動歯車531との間に配置される。
【0064】
第1揺動歯車531は、形状及び大きさにおいて、第2揺動歯車532と同様である。第1揺動歯車531及び第2揺動歯車532は、内歯ピン512に噛み合いながら、外筒511内を周回移動する。したがって、第1揺動歯車531及び第2揺動歯車532の中心は、入力軸210の回転軸RX周りを周回することとなる。
【0065】
第1揺動歯車531の周回位相は、第2揺動歯車532の周回位相から略180°ずれている。第1揺動歯車531は、外筒部510の複数の内歯ピン512のうち半数に噛み合う間、第2揺動歯車532は、複数の内歯ピン512のうち残りの半数に噛み合う。したがって、揺動歯車部530は、外筒部510又はキャリア部520を回転させることができる。
【0066】
駆動機構540は、3つの伝達歯車541と、3本のクランク軸542と、主軸受部543と、3つのクランク軸受部544と、を含む。入力軸210の先端部には、3つの伝達歯車541と噛み合う歯車部211が形成される。したがって、3つの伝達歯車541は、入力軸210から駆動力を受けることができる。
【0067】
3つのクランク軸542それぞれは、第1端部545と、第2端部546と、を含む。第1端部545は、キャリア部520の基板部525によって取り囲まれる。第2端部546は、キャリア部520の端板部522によって取り囲まれる。
【0068】
3つのクランク軸542それぞれは、円柱状のシャフト部547と、第1クランク部548と、第2クランク部549と、を含む。シャフト部547は、第1端部545から第2端部546まで軸線AXに沿って真っ直ぐに伸びる。第1クランク部548及び第2クランク部549は、軸線AXから偏心した円板状の部材である。第1揺動歯車531と第2揺動歯車532との間の周回位相差は、第1クランク部548及び第2クランク部549によって決定される。
【0069】
伝達歯車541は、第1端部545に取り付けられる。入力軸210が回転すると、3つのクランク軸542それぞれは回転する。この結果、第1クランク部548及び第2クランク部549は、軸線AX周りに偏心回転する。
【0070】
主軸受部543は、外筒部510とキャリア部520との間に配置される。主軸受部543は、第1主軸受551と、第2主軸受552と、を含む。第1主軸受551は、外筒部510内で、基部521を回転可能に支持する。第2主軸受552は、外筒部510内で、端板部522を回転可能に支持する。したがって、キャリア部520は、外筒部510に対して相対的に回転することができる。
【0071】
3つのクランク軸受部544それぞれは、第1クランク軸受553と、第2クランク軸受554と、を含む。第1クランク軸受553は、第1クランク部548と第1揺動歯車531との間に配置される。第1クランク軸受553は、第1クランク部548を回転可能に支持する。クランク軸542が回転すると、第1クランク部548が偏心回転するので、第1揺動歯車531は、複数の内歯ピン512と噛み合いながら、外筒部510内で周回移動することができる。第2クランク軸受554は、第2クランク部549と第2揺動歯車532との間に配置される。第2クランク軸受554は、第2クランク部549を回転可能に支持する。クランク軸542が回転すると、第2クランク部549が偏心回転するので、第2揺動歯車532は、複数の内歯ピン512と噛み合いながら、外筒部510内で周回移動することができる。
【0072】
上述の「数3」において用いられた減速比R
gは、入力軸210の歯車部211、伝達歯車541、内歯ピン512の数、第1揺動歯車531及び第2揺動歯車532の歯数によって決定される。
【0073】
<角度伝達誤差の発生因子>
図3は、揺動型減速機500Aの概略図である。
図2A及び
図3を参照して、角度伝達誤差の発生因子となる孔が説明される。
【0074】
図3は、外筒部510内に配置された揺動歯車533を示す。揺動歯車533は、
図2Aを参照して説明された第1揺動歯車531及び第2揺動歯車532それぞれに対応する。したがって、揺動歯車533に関する説明は、第1揺動歯車531及び第2揺動歯車532の両方に適用可能である。
【0075】
揺動歯車533には、中央孔534、3つのクランク孔535及び3つのシャフト孔536が形成されている。
【0076】
図2Aを参照して説明された入力軸210は、中央孔に挿通される。中央孔534は、
図2Aを参照して説明された入力軸210の直径よりも長い直径を有する。したがって、揺動歯車533は、外筒部510の内壁に沿って周回移動することができる。
【0077】
クランク孔535内には、クランク軸542及びクランク軸受部544が配置される。クランク孔535は、クランク軸542とクランク軸受部544とによって全体的に満たされるので、クランク孔535の領域は、略剛体としてみなされる。したがって、クランク孔535は、角度伝達誤差にほとんど寄与しないと考えられる。
【0078】
シャフト孔536には、
図2Aを参照して説明されたシャフト部526が挿通される。揺動歯車533の上述の周回運動を許容するため、シャフト孔536は、シャフト部526の断面より広く形成される。
【0079】
図4は、揺動歯車533に作用する力を表す概略図である。
図3及び
図4を参照して、角度伝達誤差を生じさせる孔が説明される。
【0080】
図4は、各内歯ピン512から延びる直線Lを示す。各直線Lは、揺動歯車533中の点Pに向けて延びる。
図4の各直線Lは、揺動歯車533が、内歯ピン512から受ける力を表す。したがって、
図4は、内歯ピン512から受ける力が、揺動歯車533中の一点に集中することを表す。
【0081】
図4は、外筒部510の中心点Cを更に示す。揺動歯車533が、外筒部510内で周回移動すると、点Pは、中心点C周りに円軌跡を描きながら移動する。中央孔534は、中心点Cを中心として形成されるので、揺動歯車533が周回移動している間、中央孔534から点Pまでの距離は略一定である。このことは、中央孔534が、角度伝達誤差にほとんど寄与しないことを意味する。
【0082】
中央孔534とは異なり、3つシャフト孔536は、中心点Cから偏心した位置に形成される。点Pが、3つのシャフト孔536のうち1つに近づくと、点Pに接近されたシャフト孔536の周囲で変形が生じやすくなる。したがって、シャフト孔536は、角度伝達誤差の発生因子となる。
【0083】
<制御原理>
図5は、減速機システム100の制御ブロック線図である。
図1、
図2A、
図3及び
図5を参照して、減速機システム100が更に説明される。
【0084】
図5に示される制御ブロック線図は、アクチュエータセクションと制御セクションとに分けられる。アクチュエータセクションは、
図1を参照して説明されたモータ200及び揺動型減速機500を表す。制御セクションは、
図1を参照して説明された制御回路400を表す。
【0085】
アクチュエータセクションは、揺動歯車部に形成された孔に起因する角度伝達誤差の振動成分を表すブロックを、一般的な2慣性共振系モデルに追加することによって作成されている。2慣性共振系モデルは、周知であるので、角度伝達誤差の振動成分θ
errを算出する振動成分ブロック110が、主に説明される。以下の表は、アクチュエータセクションにおいて用いられる記号の定義を示す。
【0087】
振動成分ブロック110は、以下の数式から、角度伝達誤差の振動成分θ
errを算出する。
【0089】
振幅A
kは、揺動型減速機500に加わる負荷に影響される変数として考えられてもよい。揺動型減速機500に加わる負荷が大きいならば、振幅A
kは、大きな値であってもよい。揺動型減速機500に加わる負荷が小さいならば、振幅A
kは、小さな値であってもよい。
【0090】
位相φ
kは、揺動型減速機500の構造によって決定される変数として考えられてもよい。位相φ
kの値は、揺動歯車部に形成された孔の配置パターンや他の構造的因子に応じて、決定されてもよい。
【0091】
上述の数式は、揺動型減速機500の様々な構造の角度伝達誤差の振動成分θ
errの算出ために利用可能である。揺動型減速機500の揺動歯車部は、1つの揺動歯車を有してもよい。代替的に、揺動型減速機500の揺動歯車部は、複数の揺動歯車を有してもよい。したがって、揺動歯車部の孔の数kは、以下の数式によって表されてもよい。
【0093】
上述の「数5」が、
図2Aを参照して説明された揺動型減速機500Aに適用されるならば、「N
g」の値は、「2」(第1揺動歯車531及び第2揺動歯車532)である。「k
e」は、角度伝達誤差に寄与する孔の数を意味する。したがって、上述の「数5」が、
図2Aを参照して説明された揺動型減速機500Aに適用されるならば、「k
e」の値は、「3」(3つのシャフト孔536(
図3を参照))である。
【0094】
アクチュエータセクションにおいて、2慣性系共振系モデルから算出された角度伝達誤差θ
Sから振動成分θ
errを差し引いた量が、角度伝達誤差として取り扱われる。制御セクションは、振動成分θ
errが低減されるように構築される。
【0095】
制御セクションには、微分ブロック411が示されている。微分ブロック411は、
モータ200の回転角θ
Mに対して微分演算を行い、モータ200の角速度ω
Mを算出する。微分ブロック411は、
図1を参照して説明された微分器410に対応する。
【0096】
制御セクションには、オブザーバ421が示されている。オブザーバ421は、角度伝達誤差の角周波数ω
d(すなわち、上述の「数4」の角周波数成分)を算出する。角周波数ω
dは、以下の数式によって表されてもよい。
【0098】
上述の「数6」が、
図2Aを参照して説明された揺動型減速機500Aに適用されるならば、「N
p」の値は、内歯ピン512の本数である。
【0099】
オブザーバ421は、角周波数ω
dを行列成分として含む離散時間状態空間モデルを用いて、角度誤差θ
sを推定する。オブザーバ421は、上述の離散時間状態空間モデルを用いて、モータ200の角速度ω
Mと、揺動型減速機500の角速度ω
Lと、を更に推定してもよい。オブザーバ421は、
図1を参照して説明された状態観測器420に対応する。
【0100】
制御セクションには、第1BPFブロック434、トルク算出ブロック435、動力学補償器436及び第2BPFブロック437が示されている。推定された角度誤差θ
sを表す角度誤差データは、オブザーバ421から第1BPFブロック434へ出力される。第1BPFブロック434は、角度誤差データから角度伝達誤差の角周波数ω
dで変動する周波数成分を抽出するバンドパスフィルタとして機能する。第1BPFブロック434によって処理された角度誤差データは、トルク算出ブロック435へ出力される。
【0101】
トルク算出ブロック435は、角度誤差θ
sに、揺動型減速機500のバネ特性を表す伝達関数K
sを乗算し、角周波数ω
dで振動するトルク振動τ
sを表すトルク振動データを生成する。トルク振動データは、トルク算出ブロック435から動力学補償器436へ出力される。本実施形態において、トルク算出部は、第1BPFブロック434とトルク算出ブロック435とによって例示される。
【0102】
トルク算出ブロック435によって算出されたトルク振動τ
sは、揺動歯車部に形成された孔によって引き起こされたトルク振動に対応する。動力学補償器436は、トルク振動τ
sが低減されるように、補償電流値I
cmpを算出し、電流データを生成する。補償電流値I
cmpを表す電流データは、動力学補償器436から第2BPFブロック437へ出力される。
【0103】
第2BPFブロック437は、電流データから角度伝達誤差の角周波数ω
dで変動する周波数成分を抽出するバンドパスフィルタとして機能する。抽出された周波数成分のデータによって、指令電流値の補正に用いられる補償電流値I
cmpが最終的に決定される。本実施形態において、電流算出部は、動力学補償器436と第2BPFブロック437とによって例示される。第1BPFブロック434、トルク算出ブロック435、動力学補償器436及び第2BPFブロック437は、
図1を参照して説明された第1電流決定部431に対応する。
【0104】
制御セクションには、状態フィードバック制御を行う状態フィードバックブロック438が示されている。上述の如く、角度誤差θ
sの推定値を表すデータ、モータ200の角速度ω
Mの推定値を表すデータ及び揺動型減速機500の角速度ω
Lの推定値を表すデータは、オブザーバ421から状態フィードバックブロック438へ出力される。状態フィードバックブロック438は、角度誤差θ
sの推定値を表すデータ、モータ200の角速度ω
Mの推定値を表すデータ及び揺動型減速機500の角速度ω
Lの推定値を表すデータを用いて、状態フィードバック電流の大きさを表す状態フィードバック電流値I
sfbを決定する。状態フィードバック制御に関する様々な演算技術が、状態フィードバックブロック438に適用されてもよい。本実施形態の制御原理は、状態フィードバック電流値I
sfbを決定するための特定の演算技術に限定されない。
【0105】
制御セクションには、加え合わせ点461,462が示されている。加え合わせ点461において、指令電流値I
cmdに正の補償電流値I
cmpが加入される。加え合わせ点462において、指令電流値I
cmdに負の状態フィードバック電流値I
sfbが加入される。加え合わせ点461,462は、
図1を参照して説明された補正処理部433に対応する。
【0106】
制御セクションには、加え合わせ点444が示されている。加え合わせ点444には、外部装置(図示せず)によって指示されたモータ200の目標回転角θ
Mrefを表す信号が入力される。加えて、加え合わせ点444には、モータ200の回転角θ
Mを表す信号が入力される。モータ200の回転角θ
Mを表す信号は、
図1を参照して説明されたエンコーダ300によって生成される信号に対応する。加え合わせ点444において、目標回転角θ
Mrefとモータ200の回転角θ
Mとの間の差が算出される。加え合わせ点444は、
図1を参照して説明された位置指令生成部441に対応する。
【0107】
制御セクションには、PD制御の比例項として用いられる伝達関数K
ppを表す比例項ブロック445、PD制御の微分項として用いられる伝達関数K
pdを表す微分項ブロック446及び加え合わせ点447,448が示されている。比例項ブロック445において、目標回転角θ
Mrefとモータ200の回転角θ
Mとの間の差及び伝達関数K
ppが乗算される。微分項ブロック446において、微分ブロック411によって算出されたモータ200の角速度ω
M及び伝達関数K
pdが乗算される。加え合わせ点447において、これらの乗算の結果得られた差分値が、速度指令値ω
Mrefとして決定される。
【0108】
速度指令値ω
Mrefは、加え合わせ点448に入力される。微分ブロック411によって算出されたモータ200の角速度ω
Mも、加え合わせ点448に入力される。加え合わせ点448において、速度指令値ω
Mrefと角速度ω
Mとの差(速度偏差)が算出される。比例項ブロック445、微分項ブロック446及び加え合わせ点447,448は、
図1を参照して説明された速度指令生成部442に対応する。
【0109】
制御セクションには、PI制御の比例項として用いられる伝達関数K
pを表す比例項ブロック471、PI制御の積分項として用いられる伝達関数K
i/sを表す積分項ブロック472及び加え合わせ点473が示されている。加え合わせ点448において算出された速度偏差に関するデータは、比例項ブロック471及び積分項ブロック472それぞれにおいて処理される。比例項ブロック471での処理によって得られたデータ及び積分項ブロック472での処理によって得られたデータは、加え合わせ点473で足し合わされる。この結果、指令電流値I
cmdが決定される。比例項ブロック471、積分項ブロック472及び加え合わせ点473は、
図1を参照して説明された電流指令生成部443に対応する。
【0110】
上述の如く、指令電流値I
cmdは、加え合わせ点461,462において、補償電流値I
cmp及び状態フィードバック電流値I
sfbによって補正される。補正された指令電流値I
cmdによって規定される大きさの電流が、その後、モータ200へ供給される。
【0111】
図6は、制御回路400の例示的な制御動作を表す概略的なフローチャートである。
図1、
図5及び
図6を参照して、制御回路400の制御動作が説明される。
【0112】
(ステップS105)
ステップS105において、エンコーダ300は、モータ200の回転角θ
Mを検出する。検出された回転角θ
Mを表す信号は、エンコーダ300から微分器410(微分ブロック411)へ出力される。その後、ステップS110が実行される。
【0113】
(ステップS110)
ステップS110において、微分器410(微分ブロック411)は、モータ200の角速度ω
Mを算出する。角速度ω
Mは、以下の数式によって算出されてもよい。角速度ω
Mの算出の後、ステップS115が実行される。
【0115】
(ステップS115)
ステップS115において、状態観測器420(オブザーバ421)は、角度伝達誤差の角周波数ω
dを算出する(上述の「数6」を参照)。その後、ステップS120が実行される。
【0116】
(ステップS120)
ステップS120において、状態観測器420(オブザーバ421)の離散時間状態空間モデルが設定される。ステップS115において算出された角周波数ω
dは、離散時間状態空間モデルの行列成分として用いられる。離散時間状態空間モデルの設定の後、ステップS125が実行される。
【0117】
(ステップS125)
ステップS125において、状態観測器420(オブザーバ421)は、角度誤差θ
s(上述の「数3」を参照)、モータ200の角速度ω
M及び揺動型減速機500の角速度ω
Lといった状態量を推定する。角度誤差θ
sの推定値を表すデータは、第1電流決定部431へ出力される。角度誤差θ
sの推定値を表すデータ、モータ200の角速度ω
Mの推定値を表すデータ及び揺動型減速機500の角速度ω
Lの推定値を表すデータは、第2電流決定部432へ出力される。その後、ステップS130が実行される。
【0118】
(ステップS130)
ステップS130において、第1電流決定部431は、第1BPFブロック434及び第2BPFブロック437の中心周波数ωを設定する。第1BPFブロック434及び第2BPFブロック437の中心周波数ωは、上述の「数6」を参照して説明された角周波数ω
dを算出するための数式から算出されてもよい(すなわち、ω=ω
d)。中心周波数ωの設定の後、ステップS135が実行される。
【0119】
(ステップS135)
ステップS135において、第1電流決定部431は、第1BPFブロック434及び第2BPFブロック437の離散時間状態空間モデルが設定される。ステップS130において算出された角周波数ωは、第1BPFブロック434及び第2BPFブロック437の散時間状態空間モデルの行列成分として用いられる。離散時間状態空間モデルの設定の後、ステップS140が実行される。
【0120】
(ステップS140)
ステップS140において、第1電流決定部431(第1BPFブロック434)は、角度誤差θ
sの推定値を表すデータから、角周波数ωで変動する周波数成分を抽出する。その後、ステップS145が実行される。
【0121】
(ステップS145)
ステップS145において、第1電流決定部431(トルク算出ブロック435)は、角度誤差θ
sの推定値を表すデータからトルク振動τ
sを表すトルク振動データを生成する。ステップS140において、不要な周波数成分が、角度誤差θ
sの推定値を表すデータから取り除かれているので、第1電流決定部431(トルク算出ブロック435)は、トルク振動τ
sを精度よく算出することができる。トルク振動データの生成の後、ステップS150が実行される。
【0122】
(ステップS150)
ステップS150において、第1電流決定部431(動力学補償器436)は、トルク振動データから補償電流値I
cmpを算出する。その後、ステップS155が実行される。
【0123】
(ステップS155)
ステップS155において、第1電流決定部431(第2BPFブロック437)は、補償電流値I
cmpを表すデータから角周波数ωで変動する周波数成分を抽出し、指令電流値I
cmdの補正に用いられる補償電流値I
cmpを決定する。ステップS155において、不要な周波数成分が、補償電流値I
cmpを表すデータから取り除かれるので、指令電流値I
cmdは、補償電流値I
cmpによって精度よく補正される。補償電流値I
cmpの決定の後、ステップS160が実行される。
【0124】
(ステップS160)
ステップS160において、指令情報生成部440(位置指令生成部441,速度指令生成部442)は、速度指令値ω
Mrefを算出する。速度指令値ω
Mrefは、以下の数式から算出されてもよい。速度指令値ω
Mrefの算出の後、ステップS165が実行される。
【0126】
(ステップS165)
ステップS165において、速度偏差が加算される。ステップS165における処理は、以下の数式によって表されてもよい。速度偏差の加算の後、ステップS170が実行される。
【0128】
(ステップS170)
ステップS170において、電流指令生成部443は、指令電流値I
cmdを算出する。指令電流値I
cmdは、以下の数式から算出されてもよい。指令電流値I
cmdの算出の後、ステップS175が実行される。
【0130】
(ステップS175)
ステップS175において、第2電流決定部432(状態フィードバックブロック438)は、状態フィードバック電流値I
sfbを算出する。状態フィードバック電流値I
sfbは、以下の数式から算出されてもよい。状態フィードバック電流値I
sfbの算出の後、ステップS180が実行される。
【0132】
(ステップS180)
ステップS180において、補正処理部433(加え合わせ点462)は、指令電流値I
cmdに、負の状態フィードバック電流値I
sfbを加入する。ステップS180における処理は、以下の数式によって表されてもよい。指令電流値I
cmdへの状態フィードバック電流値I
sfbの加入の後、ステップS185が実行される。
【0134】
(ステップS185)
ステップS185において、補正処理部433(加え合わせ点461)は、指令電流値I
cmdに、正の補償電流値I
cmpを加入する。ステップS185における処理は、以下の数式によって表されてもよい。指令電流値I
cmdへの補償電流値I
cmpの加入の後、ステップS190が実行される。
【0136】
(ステップS190)
ステップS190において、補正処理部433は、指令電流値I
cmdを駆動部450のD/Aチャネルへ出力する。駆動部450は、指令電流値I
cmdに応じて、駆動信号をモータ200へ出力する。
【0137】
<状態観測器>
図1、
図5及び
図6を参照して、状態観測器420(オブザーバ421)が説明される。
【0138】
図5に示されるアクチュエータセクションにおいて、状態変数x及び入力uは、以下の数式で表される。
【0140】
図5に示されるアクチュエータセクションにおける状態方程式は、以下の数式によって与えられる。
【0142】
連続系における状態観測器420(オブザーバ421)の状態方程式及び行列は、以下の数式によって与えられる。
【0144】
離散時間モデルへの上述の連続時間モデルの変換によって、以下の状態方程式及び行列が得られる。
【0146】
図6を参照して説明されたステップS120において、上述の「数17」に示される行列の演算が実行される。
【0147】
<バンドパスフィルタ>
図5及び
図6を参照して、第1BPFブロック434及び第2BPFブロック437が説明される。
【0148】
第1BPFブロック434及び第2BPFブロック437の伝達関数は、以下の数式によって表されてもよい。以下の数式中、「Q」は、ゲイン曲線の鋭さ(通過域幅)を決定する選択度(Quality Factor)を表す。
【0150】
第1BPFブロック434及び第2BPFブロック437の連続時間モデルから離散時間モデルへの変換によって、以下の行列が得られる。
【0152】
図6を参照して説明されたステップS130において、上述の「数19」に示される行列の演算が実行される。
【0153】
<動力学補償器>
図5及び
図6を参照して、動力学補償器436が説明される。
【0154】
動力学補償器436は、補償電流I
cmpから外乱トルクτ
disまでの伝達関数の逆システムとして設定される。動力学補償器436は、以下の数式によって表される。
【0156】
<実証試験>
本発明者等は、
図2Aを参照して説明された揺動型減速機500Aの設計原理に基づいて構築された減速機を用いて、角度伝達誤差の低減効果を検証した。使用された減速機は、2つの揺動歯車(N
g=2)と、40本の内歯ピン(N
p=40)と、を備える。各揺動歯車には、3つのシャフト孔(k
e=3)が形成されている。
【0157】
減速機は、40本の内歯ピンを備えるので、各揺動歯車が、外筒部の内壁に沿って一周するのに、クランク軸は40回転する必要がある。クランク軸が1回転する間、各揺動歯車に、6回の剛性変動が生ずる。したがって、各揺動歯車が、外筒部の内壁に沿って一周する間に、減速機内では、240回の剛性変動が発生することとなる。
【0158】
図7A及び
図7Bは、実証試験の結果を表すグラフである。
図7Aは、補償電流値による補正がない条件下で得られた試験データを示す。
図7Bは、補償電流値による補正がある条件下で得られた試験データを示す。
【0159】
図7A及び
図7Bの横軸は、減速機の出力回転角を表す。
図7A及び
図7Bの縦軸は、角度伝達誤差を表す。
図7A及び
図7Bに示される角度伝達誤差は、正規化され、パーセンテージで表される。
図7A及び
図7Bのグラフの縦軸の縮尺は等しいので、
図7Aに示される角度伝達誤差と
図7Bに示される角度伝達誤差との間の直接的な比較は可能である。
【0160】
図7Aに示されるデータと
図7Bに示されるデータとの間の比較から、補償電流値による補正がある条件下において、角度伝達誤差は、約30%低減されることが実証された。
【0161】
本発明者等は、
図7A及び
図7Bに示されるデータを用いて、FFT解析を行った。本実施形態の制御原理によって角度伝達誤差が低減されているならば、240の角周波数成分が補償電流によって低減されていることとなる。
【0162】
図8A及び
図8Bは、FFT解析の結果を表すグラフである。
図8Aは、
図7Aに示されるデータから得られたFFT解析の結果を示す。
図8Bは、
図7Bに示されるデータから得られたFFT解析の結果を示す。
【0163】
図8A及び
図8Bのグラフの横軸は、角周波数を示す。
図8Aのグラフと
図8Bのグラフとを対比すると、240の角周波数成分が、大幅に低減されていることが分かる。したがって、本実施形態の制御原理が、角度伝達誤差を効果的に低減できることが実証された。
【0164】
上述の様々な実施形態の原理は、空調機器の制御に対する要求に適合するように、組み合わされてもよい。