特許 6374282 反応装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6374282

(24)【登録日】2018年7月27日

(45)【発行日】2018年8月15日

(54)【発明の名称】反応装置

(51)【国際特許分類】

   G01N 30/60 20060101AFI20180806BHJP

【ＦＩ】

   G01N30/60 E

   G01N30/60 B

【請求項の数】6

【全頁数】7

(21)【出願番号】特願2014-196333(P2014-196333)

(22)【出願日】2014年9月26日

(65)【公開番号】特開2016-70664(P2016-70664A)

(43)【公開日】2016年5月9日

【審査請求日】2017年9月19日

(73)【特許権者】

【識別番号】591245543

【氏名又は名称】東京理化器械株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100086210

【弁理士】

【氏名又は名称】木戸 一彦

(74)【代理人】

【識別番号】100128358

【弁理士】

【氏名又は名称】木戸 良彦

(72)【発明者】

【氏名】長田 慶秀

【審査官】 高田 亜希

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１３−２２３８３０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 実開平０４−１２６１６１（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 米国特許第０８８０１９２４（ＵＳ，Ｂ２）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｇ０１Ｎ ３０／００−３０／９６

Ｇ０１Ｎ １／００− １／４４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

反応触媒を充填したカラムの入口側に可動栓を設けた反応装置において、前記可動栓は、前記反応触媒をフィルタを介して押圧するピストン部材と、該ピストン部材をカラム軸線に沿って移動可能にガイドするガイド手段と、前記カラムの入口端内部に挿入される挿入部を有する円柱状のプラグと、該プラグをカラムの入口端に保持するキャップと、前記ピストン部材と前記プラグとの間に縮設された可動栓押動バネとを備え、前記プラグは、中央部軸線方向に形成された反応流体導入路と、プラグ外端部に設けられて前記反応流体導入路に連通する反応流体導入管接続部と、プラグ外周に設けられてカラム内周面との間をシールするシール材とを有し、前記ピストン部材には、該ピストン部材の前面触媒側と後面バネ側とを連通させる反応流体通路が設けられていることを特徴とする反応装置。

【請求項2】

前記反応流体通路は、前記カラムの内周面と前記ピストン部材の外周面との間に設けられていることを特徴とする請求項１記載の反応装置。

【請求項3】

前記反応流体通路は、前記ピストン部材に設けられた貫通孔であることを特徴とする請求項１又は２記載の反応装置。

【請求項4】

前記ガイド手段は、前記ピストン部材の軸線方向に形成されたガイド孔と、前記プラグの内端から延出して前記ガイド孔内に軸線方向に移動可能に挿通されるガイドノズルとで形成され、前記ガイドノズルの内部に、前記反応流体導入路が連続して形成されていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれか１項記載の反応装置。

【請求項5】

前記プラグの周壁に、第２の反応流体を導入する第２反応流体導入部が設けられるとともに、前記プラグの内部に、第２反応流体導入部から導入された第２の反応流体を前記ピストン部材と前記プラグとの間にガイドする第２反応流体ガイド通路が設けられていることを特徴とする請求項１乃至４のいずれか１項記載の反応装置。

【請求項6】

前記キャップは、該キャップの開口側内周に設けられた雌ねじ部を、前記カラムの入口端外周に設けられた雄ネジ部に螺合してカラムの入口端に固着されることを特徴とする請求項１乃至５のいずれか１項記載の反応装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、反応装置に関し、詳しくは、反応触媒を充填した金属製のカラムの一端から反応流体を導入してカラム内で反応させ、カラムの他端から反応生成物を導出する反応装置であって、特に、カラムの入口側に設けられる可動栓の構造に関する。

【背景技術】

【0002】

充填剤や反応触媒などの粉粒体を充填したカラムやリアクタでは、流体の通過に伴って粉粒体の位置が微妙に変化し、内部に空隙が発生することがある。空隙が発生すると、流体の流れに影響を与えるため、安定性や再現性が損なわれることがある。このため、ネジやバネを利用した可動栓を用いて空隙を埋めることが行われている（例えば、特許文献１，２参照。）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平８−４３３７３号公報

【特許文献2】実開平４−１２６１６１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかし、特許文献１に記載されているネジを利用した可動栓は、人手で調整する必要があるため、面倒なだけでなく、粉粒体の圧縮力に差が生じるおそれもある。また、特許文献２に記載されているバネを利用した可動栓は、均圧パイプを使用して可動栓両側の圧力を均等にしてバネの負担を軽減しているが、クロマト用のカラムの場合は、均圧パイプを通って可動栓の後部側に流入した試料が、試料供給パイプから充填剤に直接供給される試料と混合しないように、可動栓外周とカラム内周との間に可動栓の前後を隔てるためのシール材（Ｏリング）を設ける必要があった。このため、特許文献２に記載されている充填カラムは、均圧パイプを設けたり、可動栓外周にシール材を設けたりするため、構造が複雑になり、また、部品点数も多くなるといった問題を有していた。

【0005】

そこで本発明は、部品点数の削減及び構造の簡略化を図りながら、反応装置用カラム（フローリアクタ）に充填した反応触媒に空隙が発生することを確実に防止できる反応装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記目的を達成するため、本発明の反応装置は、反応触媒を充填したカラムの入口側に可動栓を設けた反応装置において、前記可動栓は、前記反応触媒をフィルタを介して押圧するピストン部材と、該ピストン部材をカラム軸線に沿って移動可能にガイドするガイド手段と、前記カラムの入口端内部に挿入される挿入部を有する円柱状のプラグと、該プラグをカラムの入口端に保持するキャップと、前記ピストン部材と前記プラグとの間に縮設された可動栓押動バネとを備え、前記プラグは、中央部軸線方向に形成された反応流体導入路と、プラグ外端部に設けられて前記反応流体導入路に連通する反応流体導入管接続部と、プラグ外周に設けられてカラム内周面との間をシールするシール材とを有し、前記ピストン部材には、該ピストン部材の前面触媒側と後面バネ側とを連通させる反応流体通路が設けられていることを特徴としている。

【0007】

さらに、本発明の反応装置は、前記反応流体通路が前記カラムの内周面と前記ピストン部材の外周面との間に設けられていること、前記反応流体通路が前記ピストン部材に設けられた貫通孔であることを特徴としている。

【0008】

また、前記ガイド手段が、前記ピストン部材の軸線方向に形成されたガイド孔と、前記プラグの内端から延出して前記ガイド孔内に軸線方向に移動可能に挿通されるガイドノズルとで形成され、前記ガイドノズルの内部に、前記反応流体導入路が連続して形成されていることを特徴としている。さらに、前記プラグの周壁に、第２の反応流体を導入する第２反応流体導入部が設けられるとともに、前記プラグの内部に、第２反応流体導入部から導入された第２の反応流体を前記ピストン部材と前記プラグとの間にガイドする第２反応流体ガイド通路が設けられていること、前記キャップは、該キャップの開口側内周に設けられた雌ねじ部を、前記カラムの入口端外周に設けられた雄ネジ部に螺合してカラムの入口端に固着されることを特徴としている。

【発明の効果】

【0009】

本発明の反応装置によれば、可動栓をシールするシール材は、プラグとカラムとの間のシール材のみであり、ピストン部材の外周面にはシール材を設けていないので、従来の構造に比べてシールが容易であり、可動栓の動きも円滑にすることができる。さらに、ピストン部材に設けた反応流体通路によって可動栓におけるピストン部材の前後を均圧化できるので、可動栓押動バネのバネ力（ばね定数）をより小さくすることが可能となり、可動栓のストロークを大きくすることができる。また、キャップをカラムに螺合にて固着することにより、キャップの着脱を容易に行うことができ、可動栓の着脱も容易となる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本発明の反応装置の一形態例を示すもので、可動栓が後退位置にある状態を示す要部断面図である。

【図2】同じく、可動栓が前進した状態を示す要部断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

本形態例に示す反応装置は、反応用の反応触媒１１を充填したカラム（フローリアクタ）１２の入口端から反応流体を導入してカラム内で反応させ、カラム１２の出口端から反応生成物を導出するもので、カラム１２の入口側には、反応触媒１１を押圧して空隙の発生を防止するための可動栓１３が設けられている。

【0012】

前記可動栓１３は、前記反応触媒１１をフィルタ１４を介して押圧するピストン部材１５と、該ピストン部材１５をカラム軸線に沿って移動可能にガイドするガイド手段１６と、前記カラム１２の入口端内部に挿入される挿入部１７ａを有する円柱状のプラグ１７と、該プラグ１７をカラムの入口端に保持するキャップ１８と、前記ピストン部材１５と前記プラグ１７との間に圧縮された状態で設けられた可動栓押動バネ１９とを備えている。また、ピストン部材１５の外周面と前記カラム１２の内周面との間には、ピストン部材１５の前面触媒側と後面バネ側とを連通させる反応流体通路２１となる隙間が設けられている。さらに、ピストン部材１５の後部側１５ａ及びプラグ１７の前部側１７ｂは、カラム１２の内径より小さな同一の外径で形成されており、これらとカラム１２の内周面との間に、前記可動栓押動バネ１９を収納するためのバネ収納室２０が形成されている。

【0013】

前記プラグ１７は、中央部軸線方向に形成された第１反応流体導入路２２と、プラグ外端部に設けられて前記第１反応流体導入路２２に連通する第１反応流体導入管２３の接続部２４と、プラグ外周に設けられてカラム内周面との間をシールするシール材（Ｏリング）２５を取り付けるためのシール材取付溝２６とを有している。

【0014】

シール材取付溝２６は、カラム１２の入口側に挿入される小径の内部フランジ２６ａと、カラム１２の入口側端部に当接する大径の外部フランジ２６ｂとの間に形成されており、外部フランジ２６ｂの外面がキャップ１８に押圧されて固定されるとともに、カラム１２とプラグ１７との間がシール材２５によってシールされる。

【0015】

前記ガイド手段１６は、円筒形のピストン部材１５の軸線方向に貫通した状態で形成されたガイド孔２７と、プラグ１７の内端から延出して前記ガイド孔２７内に軸線方向に移動可能に挿通されるガイドノズル２８とで形成され、ガイドノズル２８の内部には、プラグ１７に形成した前記第１反応流体導入路２２が連続して形成されている。

【0016】

前記キャップ１８は、中央に前記プラグ１７の外部側が挿通される開口１８ａを有し、該開口１８ａの外周部で前記外部フランジ２６ｂを押圧する天板２９と、天板２９の外周に形成された円筒部３０とを有しており、円筒部３０の内周下半部には、カラム１２の入口端外周に設けられた雄ネジ部１２ａに螺合する雌ねじ部１８ｂが形成されている。

【0017】

また、キャップ１８から外部に突出したプラグ１７の周壁には、第２反応流体を導入するための第２反応流体導入部３１が設けられるとともに、プラグ１７の内部には、第２反応流体導入部３１から導入された第２反応流体をピストン部材１５とプラグ１７との間にガイドする第２反応流体ガイド通路３２が設けられている。

【0018】

第２反応流体導入部３１は、プラグ１７の周壁に穿設された導入孔３３と、プラグ１７の外周に上下一対のＯリング３４，３４を介して設けられるリング状の接続ブロック３５と、該接続ブロック３５の接続口３６に接続された第２反応流体導入管３７の接続部材３８と、接続ブロック３５をキャップ１８との間に保持するクリップ３９とを備えている。

【0019】

第２反応流体導入管３７から導入される第２反応流体は、接続ブロック３５の流入部３５ａから導入孔３３に導入され、第２反応流体ガイド通路３２を通ってピストン部材１５とプラグ１７との間に流入した後、バネ収納室２０からピストン部材１５の外周面とカラム１２の内周面との間の反応流体通路２１を通って反応触媒１１内に流入する。これにより、中央の第１反応流体導入路２２から反応触媒１１の中央部に流入する第１反応流体の周囲を包み込むように第２反応流が流入する状態になるので、両反応流体同士の反応効率を向上させることができる。

【0020】

図１に示す状態で、第１反応流体導入路２２から第１反応流体が、第２反応流体導入部３１から第２反応流体が、所定圧力、所定流量、所定温度で導入されて触媒反応が進行するとともに、反応触媒１１が僅かずつ移動して触媒間に空隙が発生しそうになると、図２に示すように、可動栓押動バネ１９の付勢力によってピストン部材１５が前進し、フィルタ１４を介して反応触媒１１を押圧することにより、反応触媒１１内で空隙が発生することを防止する。

【0021】

このとき、ピストン部材１５は、従来のようにピストン部材１５の外周にシール材が設けられていないので、ピストン部材１５を円滑に前進させることができ、反応触媒中に空隙が発生することを確実に防止できる。さらに、ピストン部材１５の移動が円滑になることから、可動栓押動バネ１９のバネ力を小さくすることができるので、可動栓押動バネ１９を小さくしても、バネ力を十分に保持しながら、ストロークを大きくすることができ、反応触媒１１の充填状態変化量が大きくても十分かつ確実に追随することができる。

【0022】

また、プラグ１７の挿入部１７ａをカラム１２の入口端に保持するキャップ１８を、該キャップ１８に設けられた雌ねじ部１８ｂと、カラム１２の入口端外周に設けられた雄ネジ部１２ａに螺合してカラム１２の入口端に固着するように形成することにより、カラム１２への可動栓１３の組み付けを容易かつ確実に行うことができる。加えて、カラム１２の入口部内周に、開口端を拡開させた円錐状のシール面１２ｂを形成しておくことにより、シール材２５のシール性を確保することができる。さらに、一つのシール材２５で可動栓１３をシールすることができるので、部品点数の削減や組み付け性の向上などを図ることができる。

【0023】

なお、第２反応流体導入部を設けずに、あらかじめ第１反応流体と第２反応流体とを混合した流体を第１反応流体導入路からカラム内に導入するようにしてもよい。この場合、第１反応流体導入路から導入された流体が、ピストン部材とプラグとの間に，直接又は反応流体通路を通ってピストン部材の後部側に位置するバネ収納室内に流入することにより、ピストン部材の前後を均圧化することができる。また、キャップの固着手段は任意であり、第２反応流体導入部をバネ収納室の周囲のカラムの周壁に設けることもできる。さらに、ピストン部材に反応流体通路となる貫通孔を設けることもできる。

【符号の説明】

【0024】

１１…反応触媒、１２…カラム、１２ａ…雄ネジ部、１２ｂ…シール面、１３…可動栓、１４…フィルタ、１５…ピストン部材、１５ａ…後部側、１６…ガイド手段、１７…プラグ、１７ａ…挿入部、１７ｂ…前部側、１８…キャップ、１８ａ…開口、１８ｂ…雌ねじ部、１９…可動栓押動バネ、２０…バネ収納室、２１…反応流体通路、２２…第１反応流体導入路、２３…第１反応流体導入管、２４…接続部、２５…シール材、２６…シール材取付溝、２６ａ…内部フランジ、２６ｂ…外部フランジ、２７…ガイド孔、２８…ガイドノズル、２９…天板、３０…円筒部、３１…第２反応流体導入部、３２…第２反応流体ガイド通路、３３…導入孔、３４…Ｏリング、３５…接続ブロック、３６…接続口、３７…第２反応流体導入管、３８…接続部材、３９…クリップ

【図1】

【図2】