(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
過熱水蒸気の生成、化学合成、化学分解、オイルの改質、水の改質、還元反応のうち、いずれかの用途に用いられる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のマイクロ波処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、チャンバにプロペラを配置すると、その分、チャンバのスペースが狭くなる。また、プロペラを回転駆動する機構を配置する必要がある。このため、マイクロ波処理装置の構造が複雑になる。
【0008】
そこで、本発明は、スペース効率が高く、構造が簡単で、アプリケータ内におけるマイクロ波の分布のばらつきを抑制可能なマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明のマイクロ波処理装置は、筒状であって導入口が開設された側周壁を有するハウジングと、該ハウジングの内部に区画され該導入口に連通するマイクロ波導入室と、を有するアプリケータと、該導入口を介してマイクロ波を該マイクロ波導入室に導入する導波管と、を備えるマイクロ波処理装置であって、前記ハウジングの前記側周壁の軸方向に直交する方向を径方向として、該側周壁の内周面の該径方向断面は、延在方向が互いに異なる複数の辺からなる多角形状を呈しており、前記マイクロ波導入室に対して、前記マイクロ波は、該内周面に沿って導入されることを特徴とする。ここで、側周壁の「軸方向」とは、筒状の側周壁の筒軸方向をいう。
【0010】
仮に、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに等しい一対の辺を含む多角形状を呈している場合(例えば、側周壁の内周面の径方向断面が、4以上の偶数の辺からなる正多角形(正方形、正六角形など)状を呈している場合)、延在方向が互いに等しい一対の辺(面)間において、マイクロ波が繰り返し反射されやすい。このため、当該一対の面間に、局所的にマイクロ波が集中する領域が発生してしまう。したがって、マイクロ波導入室におけるマイクロ波の分布がばらつきやすい。
【0011】
これに対して、本発明のマイクロ波処理装置の場合、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに異なる複数の辺からなる多角形状を呈している。すなわち、側周壁の内周面の径方向断面を構成する複数の辺のうち、任意の一対の辺は、互いに平行ではない。このため、マイクロ波導入室において、局所的にマイクロ波が集中する領域が発生しにくい。したがって、マイクロ波導入室におけるマイクロ波の分布のばらつきを、抑制することができる。
【0012】
また、仮に、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに等しい一対の辺を含む多角形状を呈している場合、導波管からマイクロ波導入室に導入されたマイクロ波が、内周面における反射により、マイクロ波導入室から導波管に逆流しやすい。
【0013】
これに対して、本発明のマイクロ波処理装置の場合、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに異なる複数の辺からなる多角形状を呈している。このため、導波管からマイクロ波導入室に導入されたマイクロ波が、マイクロ波導入室から導波管に逆流するのを抑制することができる。
【0014】
また、本発明のマイクロ波処理装置の場合、マイクロ波導入室に対して、マイクロ波が、側周壁の内周面に沿って導入される。マイクロ波は、内周面に沿って、回転するように、マイクロ波導入室を伝播する。このため、マイクロ波導入室において、局所的にマイクロ波が集中する領域が発生しにくい。したがって、マイクロ波導入室におけるマイクロ波の分布のばらつきを、抑制することができる。
【0015】
また、本発明のマイクロ波処理装置の場合、マイクロ波導入室にプロペラを配置する必要がない。このため、アプリケータのスペース効率が高い。また、プロペラが不要な分、アプリケータの構造が簡単である。
【0016】
(2)上記(1)の構成において、前記マイクロ波導入室に対して、前記マイクロ波は、前記内周面の前記径方向断面の内接円の接線方向に沿って導入される構成とする方がよい。本構成によると、確実に、マイクロ波導入室に対して、マイクロ波を、側周壁の内周面に沿って導入することができる。
【0017】
(3)上記(1)または(2)の構成において、前記内周面の前記径方向断面は、3以上の奇数の前記辺からなる正多角形状を呈している構成とする方がよい。仮に、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに等しい一対の辺を含む多角形状を呈している場合(例えば、側周壁の内周面の径方向断面が、4以上の偶数の辺からなる正多角形(正方形、正六角形など)状を呈している場合)、延在方向が互いに等しい一対の辺(面)間において、マイクロ波が繰り返し反射されやすい。このため、当該一対の面間に、局所的にマイクロ波が集中する領域が発生してしまう。したがって、マイクロ波導入室におけるマイクロ波の分布がばらつきやすい。
【0018】
これに対して、本構成の場合、側周壁の内周面の径方向断面が、3以上の奇数の辺からなる正多角形状を呈している。このため、内周面の径方向断面の重心を挟んで、辺と頂点とが対向している。すなわち、内周面の径方向断面の重心を挟んで、辺と辺とが対向していない。したがって、マイクロ波導入室におけるマイクロ波の分布のばらつきを、確実に抑制することができる。
【0019】
また、仮に、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに等しい一対の辺を含む多角形状を呈している場合、導波管からマイクロ波導入室に導入されたマイクロ波が、内周面における反射により、マイクロ波導入室から導波管に逆流しやすい。
【0020】
これに対して、本構成の場合、側周壁の内周面の径方向断面が、3以上の奇数の辺からなる正多角形状を呈している。このため、導波管からマイクロ波導入室に導入されたマイクロ波が、マイクロ波導入室から導波管に逆流するのを抑制することができる。
【0021】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、さらに、前記マイクロ波導入室に配置され、前記マイクロ波が透過する反応容器を備える構成とする方がよい。本構成によると、処理対象物を、反応容器に収容することができる。そして、反応容器を透過したマイクロ波により、処理対象物を、直接あるいは間接的に、処理することができる。
【0022】
(5)上記(4)の構成において、さらに、前記反応容器に収容され、前記マイクロ波を吸収し発熱する発熱体を備える構成とする方がよい。本構成によると、マイクロ波のエネルギにより、発熱体を発熱させることができる。また、発熱体の熱により、処理対象物を処理、つまり加熱することができる。すなわち、マイクロ波により、処理対象物を、間接的に加熱することができる。
【0023】
(6)上記(4)または(5)の構成において、前記反応容器は、前記ハウジングを貫通する反応管である構成とする方がよい。本構成によると、反応管内部において処理対象物を流動させることにより、処理対象物を連続的に処理することができる。
【0024】
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、過熱水蒸気の生成、化学合成、化学分解、オイルの改質、水の改質、還元反応のうち、いずれかの用途に用いられる構成とする方がよい。本構成によると、マイクロ波導入室に導入されたマイクロ波を用いて、過熱水蒸気の生成、化学合成、化学分解、オイルの改質、水の改質、還元反応のうち、いずれか一つを行うことができる。
【0025】
なお、「過熱水蒸気の生成」とは、水から過熱水蒸気が生成される一連の過程のうち、少なくとも一部(例えば、水が加熱され昇温される過程、水が加熱され水蒸気が生成される過程、水蒸気が加熱され昇温される過程、水蒸気が加熱され過熱水蒸気が生成される過程、過熱水蒸気が加熱され昇温される過程など)をいう。
【0026】
(8)上記課題を解決するため、本発明のマイクロ波導入方法は、筒状の側周壁を有するハウジングと、該ハウジングの内部に区画されるマイクロ波導入室と、を有するアプリケータの、該マイクロ波導入室に対するマイクロ波導入方法であって、前記ハウジングの前記側周壁の軸方向に直交する方向を径方向として、該側周壁の内周面の該径方向断面は、延在方向が互いに異なる複数の辺からなる多角形状を呈しており、前記マイクロ波導入室に対して、マイクロ波を、該内周面に沿って導入することを特徴とする。ここで、側周壁の「軸方向」とは、筒状の側周壁の筒軸方向をいう。
【0027】
上記(1)で説明したように、本発明のマイクロ波導入方法によると、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに異なる複数の辺からなる多角形状を呈している。このため、マイクロ波導入室において、局所的にマイクロ波が集中する領域が発生しにくい。したがって、マイクロ波導入室におけるマイクロ波の分布のばらつきを、抑制することができる。
【0028】
また、本発明のマイクロ波導入方法によると、側周壁の内周面の径方向断面が、延在方向が互いに異なる複数の辺からなる多角形状を呈している。このため、マイクロ波導入室に導入されたマイクロ波が、マイクロ波導入室から逆流するのを抑制することができる。
【0029】
また、本発明のマイクロ波導入方法によると、マイクロ波導入室に対して、マイクロ波が、側周壁の内周面に沿って導入される。マイクロ波は、内周面に沿って、回転するように、マイクロ波導入室を伝播する。このため、マイクロ波導入室において、局所的にマイクロ波が集中する領域が発生しにくい。したがって、マイクロ波導入室におけるマイクロ波の分布のばらつきを、抑制することができる。
【0030】
また、本発明のマイクロ波導入方法によると、マイクロ波導入室にプロペラを配置する必要がない。このため、アプリケータのスペース効率が高い。また、プロペラが不要な分、アプリケータの構造が簡単である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、スペース効率が高く、構造が簡単で、アプリケータ内におけるマイクロ波の分布のばらつきを抑制可能なマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法の実施の形態について説明する。
【0034】
<第一実施形態>
図1に、本実施形態のマイクロ波処理装置の斜視図を示す。
図2に、
図1のII−II方向(径方向)断面図を示す。
図3に、
図1のIII−III方向(軸方向)断面図を示す。
【0035】
[マイクロ波処理装置の構成]
まず、本実施形態のマイクロ波処理装置の構成について説明する。
図1〜
図3に示すように、マイクロ波処理装置1は、アプリケータ2と、導波管3と、反応管4と、発熱体5と、を備えている。
【0036】
(アプリケータ2)
アプリケータ2は、ハウジング20と、マイクロ波導入室21と、を備えている。ハウジング20は、筒体200と、前後一対の端板201d、201eと、を備えている。筒体200は、ステンレス鋼製であって、側周壁200aと、前後一対のフランジ部200d、200eと、を備えている。側周壁200aは、前後方向(軸方向)に延在する正五角形の筒状を呈している。
図2に示すように、側周壁200aの内周面200bの径方向(詳しくは、内周面200bの径方向断面の内接円C1の、径方向)断面は、5つの辺L1〜L5からなる正五角形状を呈している。5つの辺L1〜L5は、内周面200bを構成する5つの面F1〜F5に、対応している。側周壁200aの下壁(側周壁200aの一部)には、導入口200cが開設されている。導入口200cは、下側の辺L1(下側の面F1)の左右方向全長に亘って開口している。すなわち、導入口200cは、
図2に示す内接円C1の接線方向に延在している。
図1、
図3に示すように、前後一対のフランジ部200d、200eは、筒体200の前後方向両端から、径方向外側に張り出している。
【0037】
端板201dは、ステンレス鋼製であって、円板状を呈している。端板201dは、図示しないボルトおよびナットにより、前側のフランジ部200dに、取り付けられている。端板201dは、筒体200の前側の開口を、封止している。同様に、端板201eは、ステンレス鋼製であって、円板状を呈している。端板201eは、図示しないボルトおよびナットにより、後側のフランジ部200eに、取り付けられている。端板201eは、筒体200の後側の開口を、封止している。マイクロ波導入室21は、ハウジング20の内部に配置されている。マイクロ波導入室21は、導入口200cに連通している。
【0038】
(導波管3、反応管4、発熱体5)
導波管3は、ステンレス鋼製であって、左右方向に延在する角筒状を呈している。
図2に示すように、導波管3の上流端には、マイクロ波発生装置90が接続されている。マイクロ波発生装置90は、図示しないマグネトロンを備えている。マグネトロンは、2.45GHzのマイクロ波M1を発生する。導波管3の下流端は、導入口200cに伏設されている。すなわち、導入口200cを介して、導波管3とマイクロ波導入室21とは連通している。
【0039】
反応管4は、石英ガラス製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。
図1に透過して示すように、反応管4は、ハウジング20を前後方向に貫通している。
図2、
図3に示すように、反応管4は、マイクロ波導入室21に露出している。反応管4は、側周壁200aの内周面200bの重心(内接円C1の中心)G1に配置されている。反応管4の内部には流路40が配置されている。
【0040】
発熱体5は、炭化ケイ素の粒体である。
図2、
図3に示すように、多数の発熱体5は、流路40のうちマイクロ波導入室21に収容されている部分に、充填されている。発熱体5は、反応管4と比較して、マイクロ波M1を吸収しやすい。反応管4は、発熱体5と比較して、マイクロ波M1を透過しやすい。
【0041】
[マイクロ波導入方法]
次に、本実施形態のマイクロ波導入方法について説明する。
図2に示すように、導波管3の延在方向と、側周壁200aの下側の辺L1(下側の面F1)の延在方向と、は一致している。また、導波管3の断面は、辺Laを備えている。辺Laは、導波管3の左端(下流端)壁の内側の面Faに、対応している。導波管3の辺Laと、側周壁200aの辺L2と、は直線状に連なっている。言い換えると、導波管3の面Faと、側周壁200aの面F2と、は平面状に、つまり面一に連なっている。
【0042】
マイクロ波M1は、導波管3、導入口200cを経由して、マイクロ波発生装置90から、マイクロ波導入室21に、伝播する。具体的には、まず、マイクロ波M1は、側周壁200aの辺L1(面F1)に沿って、導波管3を伝播する。続いて、マイクロ波M1は、導波管3の辺La(面Fa)および側周壁200aの辺L2(面F2)に沿って、導波管3およびマイクロ波導入室21を伝播する。このように、マイクロ波導入室21に対して、マイクロ波M1は、側周壁200aの内周面200bに沿って導入される。
図2に矢印で示すように、マイクロ波導入室21に導入されたマイクロ波M1は、内周面200bに沿って、一方向(
図2における時計回り方向)に回転しながらマイクロ波導入室21を伝播する。
【0043】
図2に示すように、内周面200bの径方向断面は、5つの辺L1〜L5からなる正五角形状を呈している。ここで、辺L2(面F2)付近から辺L4(面F4)、辺L5(面F5)に向かって進行するマイクロ波M2、M3を仮定する。マイクロ波M2は、辺L4(面F4)に反射される。同様に、マイクロ波M3は、辺L5(面F5)に反射される。しかしながら、辺L2(面F2)と辺L4(面F4)とは互いに平行ではない。同様に、辺L2(面F2)と辺L5(面F5)とは互いに平行ではない。このため、辺L4(面F4)や辺L5(面F5)に反射されても、マイクロ波M2、M3は、辺L2(面F2)の方向、つまり入射方向に、戻りにくい。残りの4つの辺L1(面F1)、辺3(面3)〜辺5(面5)付近から重心G1を挟んで反対側に進行するマイクロ波についても、同様に、入射方向に戻りにくい。このため、マイクロ波M2が、マイクロ波導入室21において、散乱しやすい。したがって、マイクロ波導入室21におけるマイクロ波の分布のばらつきを、抑制することができる。
【0044】
特に、辺L1(面F1)付近から重心G1を挟んで反対側に進行するマイクロ波M4は、辺L1(面F1)の方向、つまり導入口200cの方向に、戻りにくい。このため、マイクロ波M4が、マイクロ波導入室21から導波管3に逆流するのを抑制することができる。
【0045】
[過熱水蒸気の生成方法]
次に、本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法を用いた過熱水蒸気の生成方法について説明する。
図3に示すように、反応管4の後端(上流端)には、蒸発器91が接続されている。蒸発器91は、常温の水を加熱することにより、温度150℃程度の過熱水蒸気V1を生成する。過熱水蒸気V1は、反応管4の流路40に流れ込む。過熱水蒸気V1は、流路40を、後側(上流側)から前側(下流側)に流動する。ここで、流路40には、多数の発熱体5が充填されている。多数の発熱体5は、反応管4の側周壁を透過したマイクロ波M1〜M4(
図2参照)を吸収し、発熱する。流路40を流動する過熱水蒸気V1は、発熱体5により加熱され、温度800℃程度の過熱水蒸気V2となる。反応管4の前端(下流端)には、処理炉92が接続されている。処理炉92においては、過熱水蒸気V2を用いて、セラミックスの脱脂が行われる。
【0046】
[作用効果]
次に、本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法の作用効果について説明する。
図2に示すように、側周壁200aの内周面200bの径方向断面は、5つの辺L1〜L5からなる正五角形状を呈している。5つの辺L1〜L5の延在方向は、互いに異なっている。5つの辺L1〜L5のうち、任意の一対の辺(例えば、辺L2と辺L4、辺L2と辺L5など)は、互いに平行ではない。このため、マイクロ波導入室21において、局所的にマイクロ波M1〜M4が集中する領域が発生しにくい。したがって、マイクロ波導入室21におけるマイクロ波M1〜M4の分布のばらつきを、抑制することができる。また、導波管3からマイクロ波導入室21に導入されたマイクロ波M1〜M4が、マイクロ波導入室21から導波管3に逆流するのを抑制することができる。よって、逆流したマイクロ波M1〜M4による反射電力からマイクロ波発生装置90のマグネトロンを保護する機器(例えばアイソレータなど)に要するコストを、削減することができる。
【0047】
また、
図2に示すように、マイクロ波導入室21に対して、マイクロ波M1は、側周壁200aの内周面200bに沿って導入される。具体的には、マイクロ波導入室21に対して、マイクロ波M1は、内周面200bの径方向断面の内接円C1の接線方向に沿って導入される。マイクロ波M1は、内周面200bに沿って、一方向に回転するように、マイクロ波導入室21を伝播する。このため、マイクロ波導入室21において、局所的にマイクロ波M1〜M4が集中する領域が発生しにくい。したがって、マイクロ波導入室21におけるマイクロ波M1〜M4の分布のばらつきを、抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法の場合、マイクロ波導入室21にマイクロ波散乱用のプロペラを配置する必要がない。このため、アプリケータ2のスペース効率が高い。また、プロペラが不要な分、アプリケータ2の構造が簡単である。
【0049】
また、
図2に示すように、マイクロ波M1〜M4は、反応管4の側周壁を透過可能である。また、流路40には、多数の発熱体5が充填されている。発熱体5は、マイクロ波M1〜M4を吸収することにより、発熱する。
図3に示すように、多数の発熱体5の隙間を過熱水蒸気V1が通過する際に、高温の発熱体5と、低温の過熱水蒸気V1と、の間で熱交換が行われる。当該熱交換により、過熱水蒸気V2が生成される。多数の発熱体5は、マイクロ波導入室21の前後方向全長に亘って配置されている。このため、本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法によると、所望の温度(特に高温)の過熱水蒸気V2を生成することができる。
【0050】
<第二実施形態>
本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法との相違点は、アプリケータに前後一対の導波管が接続されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図4に、本実施形態のマイクロ波処理装置の軸方向断面図を示す。なお、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0051】
図4に示すように、側周壁200aの下壁(側周壁200aの一部)には、前後一対の導入口200c、200cbが開設されている。導入口200c、200cbは、各々、下側の面F1の左右方向全長に亘って開口している。
【0052】
アプリケータ2には、前後一対の導波管3、3bが接続されている。このうち、導波管3の下流端は、導入口200cに伏設されている。すなわち、導入口200cを介して、導波管3とマイクロ波導入室21とは連通している。導波管3の左端(下流端)壁の内側の面Faと、側周壁200aの面F2と、は平面状に、つまり面一に連なっている。また、導波管3bの下流端は、導入口200cbに伏設されている。すなわち、導入口200cbを介して、導波管3bとマイクロ波導入室21とは連通している。導波管3bの左端(下流端)壁の内側の面Fbと、側周壁200aの面F2と、は平面状に、つまり面一に連なっている。
【0053】
本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法によると、一対の導波管3、3bを介して、マイクロ波導入室21に、マイクロ波M1を導入することができる。
【0054】
<第三実施形態>
本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法との相違点は、導波管が上下方向(詳しくは、
図2に示す辺L2の延在方向)に延在している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図5に、本実施形態のマイクロ波処理装置の径方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、マイクロ波発生装置は省略して示す。
【0055】
図5に示すように、導波管3の延在方向と、側周壁200aの内周面200bの径方向断面の辺L2と、内接円C1の接線方向と、は一致している。導波管3の辺Laと、側周壁200aの辺L2と、は直線状に連なっている。言い換えると、導波管3の面Faと、側周壁200aの面F2と、は平面状に、つまり面一に連なっている。
【0056】
本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法の場合であっても、マイクロ波導入室21に対して、マイクロ波M1を、内周面200bに沿って導入することができる。
【0057】
<第四実施形態>
本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法との相違点は、アプリケータに上下一対の導波管が接続されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図6に、本実施形態のマイクロ波処理装置の径方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、マイクロ波発生装置は省略して示す。
【0058】
図6に示すように、側周壁200aの下壁(側周壁200aの一部)には、導入口200cが開設されている。導入口200cは、下側の辺L1(面F1)の全長に亘って開口している。同様に、側周壁200aの左上壁(側周壁200aの一部)には、導入口200ccが開設されている。導入口200ccは、左上側の辺L3(面F3)の全長に亘って開口している。
【0059】
アプリケータ2には、上下一対の導波管3、3cが接続されている。このうち、導波管3の下流端は、導入口200cに伏設されている。すなわち、導入口200cを介して、導波管3とマイクロ波導入室21とは連通している。導波管3の左端(下流端)壁の内側の辺Laと、側周壁200aの辺L2と、は直線状に連なっている。言い換えると、導波管3の左端(下流端)壁の内側の面Faと、側周壁200aの面F2と、は平面状に、つまり面一に連なっている。また、導波管3cの下流端は、導入口200ccに伏設されている。すなわち、導入口200ccを介して、導波管3cとマイクロ波導入室21とは連通している。導波管3cの右上端(下流端)壁の内側の辺Lcと、側周壁200aの辺L4と、は直線状に連なっている。言い換えると、導波管3cの右上端(下流端)壁の内側の面Fcと、側周壁200aの面F4と、は平面状に、つまり面一に連なっている。
【0060】
本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法によると、一対の導波管3、3cを介して、マイクロ波導入室21に、マイクロ波M1を導入することができる。また、マイクロ波導入室21に、同じ方向(
図6における時計回り方向)に、マイクロ波M1を導入することができる。
【0061】
<第五実施形態>
本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法との相違点は、筒体が正七角形の筒状を呈している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図7に、本実施形態のマイクロ波処理装置の径方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、マイクロ波発生装置は省略して示す。
【0062】
図7に示すように、側周壁200aは、前後方向(軸方向)に延在する正七角形の筒状を呈している。すなわち、側周壁200aの内周面200bの径方向(詳しくは、内周面200bの径方向断面の内接円C1の、径方向)断面は、7つの辺L1〜L7からなる正七角形状を呈している。7つの辺L1〜L7は、内周面200bを構成する7つの面F1〜F7に、対応している。側周壁200aの下壁(側周壁200aの一部)には、導入口200cが開設されている。導入口200cは、下側の辺L1(下側の面F1)の左右方向全長に亘って開口している。すなわち、導入口200cは、
図2に示す内接円C1の接線方向に延在している。導波管3の下流端は、導入口200cに伏設されている。導入口200cを介して、導波管3とマイクロ波導入室21とは連通している。
【0063】
本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のマイクロ波処理装置1のように、側周壁200aが正七角形の筒状を呈している場合であっても、第一実施形態のマイクロ波処理装置と同様に、マイクロ波導入室21におけるマイクロ波M1の分布のばらつきを、抑制することができる。また、導波管3からマイクロ波導入室21に導入されたマイクロ波M1が、マイクロ波導入室21から導波管3に逆流するのを抑制することができる。
【0064】
<第六実施形態>
本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法との相違点は、筒体が不等辺六角形の筒状を呈している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図8に、本実施形態のマイクロ波処理装置の径方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、マイクロ波発生装置は省略して示す。
【0065】
図8に示すように、側周壁200aは、前後方向(軸方向)に延在する不等辺六角形の筒状を呈している。すなわち、側周壁200aの内周面200bの径方向断面は、6つの辺L1〜L6からなる不等辺六角形状を呈している。6つの辺L1〜L6は、内周面200bを構成する6つの面F1〜F6に、対応している。側周壁200aの下壁(側周壁200aの一部)には、導入口200cが開設されている。導入口200cは、下側の辺L1(下側の面F1)の左右方向全長に亘って開口している。導波管3の下流端は、導入口200cに伏設されている。導入口200cを介して、導波管3とマイクロ波導入室21とは連通している。
【0066】
本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のマイクロ波処理装置1のように、側周壁200aが不等辺六角形の筒状を呈している場合であっても、第一実施形態のマイクロ波処理装置と同様に、マイクロ波導入室21におけるマイクロ波M1の分布のばらつきを、抑制することができる。また、導波管3からマイクロ波導入室21に導入されたマイクロ波M1が、マイクロ波導入室21から導波管3に逆流するのを抑制することができる。
【0067】
<第七実施形態>
本実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法との相違点は、マイクロ波導入室において、反応管が螺旋状に延在している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図9に、本実施形態のマイクロ波処理装置の斜視図を示す。なお、
図1と対応する部位については、同じ符号で示す。
図9に透過して示すように、反応管4は、マイクロ波導入室において、螺旋状に延在している。反応管4の流路40のうち、マイクロ波導入室に収容されている部分には、多数の発熱体が充填されている。流路40においては、化学合成処理が行われる。
【0068】
本実施形態のマイクロ波処理装置1およびマイクロ波導入方法と、第一実施形態のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のマイクロ波処理装置1によると、反応管4が螺旋状を呈している。このため、マイクロ波導入室における反応管4の延在距離を長くすることができる。また、マイクロ波導入室における反応管4の表面積を広くすることができる。したがって、化学合成処理を促進することができる。
【0069】
<その他>
以上、本発明のマイクロ波処理装置およびマイクロ波導入方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0070】
ハウジング20の材質は、特に限定しない。反応管4の材質に対して、マイクロ波M1〜M4を反射しやすければよい。例えば、金属であってもよい。反応管4の材質は、特に限定しない。発熱体5の材質に対して、マイクロ波M1〜M4を透過しやすければよい。例えば、石英、アルミナ、窒化ケイ素、ムライトなどのセラミックスであってもよい。発熱体5の材質は、特に限定しない。反応管4の材質に対して、マイクロ波M1〜M4を吸収しやすければよい。例えば、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンなどのセラミックスであってもよい。
【0071】
ハウジング20の内周面200bの径方向断面の形状は、特に限定しない。3以上の奇数の辺からなる正多角形状(例えば、正三角形状、正九角形状など)であってもよい。全ての辺の長さが互いに異なる不等辺多角形状(例えば、不等辺四角形状、不等辺八角形状など)であってもよい。
【0072】
マイクロ波導入室21における反応管4の配置場所は、
図2に示す重心G1でなくてもよい。重心G1から径方向にずれた位置に、反応管4を配置してもよい。マイクロ波導入室21におけるマイクロ波M1〜M4の分布は均一である。このため、反応管4の位置によらず、
図3に示す高温の過熱水蒸気V2を生成することができる。また、マイクロ波導入室21に複数の反応管4を配置してもよい。また、マイクロ波導入室21における反応管4の延在形状は、特に限定しない。
図1に示す直線状、
図9に示す螺旋状、渦巻状、C字状、U字状、V字状、サイン波状、矩形波状などであってもよい。
【0073】
また、マイクロ波導入室21に、閉空間を区画する反応容器を配置してもよい。すなわち、処理対象物に、
図1〜
図9に示すような反応管4による連続処理ではなく、反応容器によるバッチ処理を、施してもよい。また、マイクロ波導入室21に、反応管4を配置しなくてもよい。すなわち、マイクロ波導入室21に、直接、処理対象物を配置してもよい。また、流路40に発熱体5を配置しなくてもよい。すなわち、発熱体5を介さずに、マイクロ波M1〜M4により、流路40の処理対象物を、直接、加熱してもよい。また、導波管3の配置場所、配置数は、特に限定しない。また、マイクロ波発生装置90から発射されるマイクロ波M1の周波数は、2.45GHzの他、800MHz〜30GHzであってもよい。
【0074】
また、ハウジング20を構成する部品数は、特に限定しない。例えば、筒体200と、端板201dおよび端板201eのうち少なくとも一方と、が一体物であってもよい。ハウジング20は、筒状の側周壁200aを備えていればよい。
【0075】
マイクロ波処理装置1の用途は特に限定しない。例えば、
図1〜
図8に示す過熱水蒸気の生成、
図9に示す化学合成、化学分解、オイルの改質(低分子化)、水の改質、還元反応などに、マイクロ波処理装置1を用いてもよい。
【0076】
化学合成の具体例としては、口紅の成分であるピログルタミン酸のラウリルエステルの合成が挙げられる。マイクロ波処理装置1を用いると、触媒(例えばp(パラ)−トルエンスルホン酸)や溶媒(例えばトルエン)を用いることなく、エステル化反応が完了する。このため、ラウリルエステルから溶媒を除去する作業が不要になる。また、エステル化反応に要する時間やエネルギを節約することができる。
【0077】
また、化学合成の具体例としては、青色顔料である銅フタロシアニンの合成が挙げられる。例えば、1,2−ジシアノベンゼン、硫酸銅無水物、エチレングリコールを混合、撹拌した溶液を、マイクロ波処理装置1で加熱することにより、銅フタロシアニンを合成することができる。本例の場合も、反応に要する時間やエネルギを節約することができる。
【0078】
また、化学合成の具体例としては、バイオディーゼルの製造が挙げられる。例えば、パーム原油にアルカリ触媒(例えばNaOH)とメタノールとを加え、マイクロ波処理装置1で加熱することにより、バイオディーゼル(脂肪酸メチル)を製造することができる。
【0079】
また、化学合成の具体例としては、金属(例えばAuなど)ナノ微粒子の合成が挙げられる。例えば、溶媒、還元剤として多価アルコールを、加熱源としてマイクロ波M1〜M4を、各々用いる「マイクロ波−ポリオール法」に、マイクロ波処理装置1を用いてもよい。
【0080】
水の改質の具体例としては、光触媒(例えば二酸化チタン)を入れた反応管4に汚水を通過させ、マイクロ波M1〜M4(好ましくは紫外線も併用)を反応管4に照射することにより、汚水中の有機物を分解する汚水処理が挙げられる。なお、本例のように、マイクロ波M1〜M4を、光触媒から・OHラジカルを発生させるために用いてもよい。すなわち、マイクロ波M1〜M4を、処理対象物の加熱以外の用途で用いてもよい。
【0081】
マイクロ波処理装置1を過熱水蒸気の生成に用いる場合、反応管4の流路40においては、水から過熱水蒸気V2が生成される一連の過程のうち、少なくとも一部が実行されればよい。例えば、水が加熱され昇温される過程、水が加熱され水蒸気が生成される過程、水蒸気が加熱され昇温される過程、水蒸気が加熱され過熱水蒸気が生成される過程、過熱水蒸気が加熱され昇温される過程から選ばれる、一以上の過程が実行されればよい。