(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374296
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ガイドレール嵌合構造及びウィンドウレギュレータ
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
E05F11/48 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-222267(P2014-222267)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-89400(P2016-89400A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】今岡 隆之
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−150060(JP,A)
【文献】
特許第4637522(JP,B2)
【文献】
特許第5134842(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38−11/48
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールと、嵌合体と、前記嵌合体に挿入される挿入体とを有し、前記ガイドレールに前記嵌合体が嵌合されるガイドレール嵌合構造であって、
前記嵌合体は、前記ガイドレールの端部に嵌合する嵌合部と、前記挿入体が外側から挿入される挿入孔と、を備え、
前記嵌合部が前記ガイドレールと嵌合することによって、前記挿入体の少なくとも一部が覆われ、且つ、前記挿入体が脱離抑制状態となり、且つ、前記嵌合体の外面に開口した開口部から前記挿入体の脱離抑制状態が視認可能となる、
ガイドレール嵌合構造。
【請求項2】
前記嵌合体は、挿入された前記挿入体の頭部が嵌合する嵌合座を有し、
前記嵌合部へ嵌合した前記ガイドレールが、前記嵌合座に嵌合した前記頭部の一部を覆うように、前記挿入孔と交差する、
請求項1に記載のガイドレール嵌合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドレール嵌合構造を有し、
前記嵌合体が方向転換部材であり、
前記挿入体が取付ボルトである、
ウィンドウレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレールに嵌合体が嵌合されるガイドレール嵌合構造及びこのガイドレール嵌合構造を有するウィンドウレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
挿入体が挿入された嵌合体がガイドレールに嵌合されたガイドレール嵌合構造を有する装置として、ボルトが挿入されたケーブルガイドがガイドレールに嵌合された構造を有するウィンドウレギュレータがある。ウィンドウレギュレータは、自動車の窓ガラスを昇降させる装置として普及している(例えば、特許文献1参照)。ウィンドウレギュレータは、例えば、窓ガラスを保持するキャリアプレートと、キャリアプレートの昇降をガイドするガイドレールと、キャリアプレートの上部及び下部に取り付けられたケーブルと、ガイドレールの端部でケーブルが伝達する力の方向を転換するケーブルガイドと、ケーブルを引き操作する駆動部とを備え、窓ガラスを昇降させる。
【0003】
ケーブルガイドには、ウィンドウレギュレータを、例えば、自動車のドアパネルに固定するための固定用のボルトが取り付けられる。ケーブルガイドに取り付けられたボルトの先端がケーブルガイドから突出し、突出したインサートボルトの先端が、例えば、自動車のドアパネルに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−150060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケーブルガイドにボルトを取り付ける一つの方法として、インサート成型がある。しかしながら、インサート成型は、難しい技術であり、所定の強度や正確な位置での固定には成形精度が要求される。また、ケーブルガイドにインサート成型されたインサートボルトが空転または脱落しないようにするため、インサートボルトに切削加工を施すなど製造工程が複雑になる場合もある。
【0006】
また、特許文献1のように、ケーブルガイドにシャフトを取り付ける場合においては、プーリ及びケーブルガイド本体がガイドレールに取り付けられるため、各部品の寸法精度が要求され、しかも、それぞれ嵌合させるために組立工数も必要となる。
【0007】
本発明の目的は、容易に組み付けることができるガイドレール嵌合構造及びウィンドウレギュレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るガイドレール嵌合構造は、ガイドレールと、嵌合体と、前記嵌合体に挿入される挿入体とを有し、前記ガイドレールに前記嵌合体が嵌合されるガイドレール嵌合構造であって、前記嵌合体は、前記ガイドレールの端部に嵌合する嵌合部と、前記挿入体が外側から挿入される挿入孔と、を備え、前記嵌合部が前記ガイドレールへ嵌合することによって、前記挿入体の少なくとも一部が覆われ、且つ、前記挿入体が脱離抑制状態となり、且つ、前記嵌合体の外面に開口した開口部から前記挿入体の脱離抑制状態が視認可能となる構成を採る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数及び組み付け時の工数を抑制し、挿入体をケーブルガイドに脱落不能に容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るウィンドウレギュレータを示す正面図
【
図2】
図1のウィンドウレギュレータにおける、ケーブルガイドについての部分拡大斜視図
【
図3】
図1のケーブルガイドにおける、ケーブルガイドについての分解斜視図
【
図5】
図1のケーブルガイドにボルトおよびガイドレールが取り付けられた状態の正面図
【
図6】
図5のケーブルガイドについてのA−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るウィンドウレギュレータ1の構成を示す正面図である。以下、ウィンドウレギュレータ1の構成について、
図1を用いて説明する。以下の説明では、ウィンドウレギュレータ1を自動車に適用した場合を想定し、この自動車における上方及び下方を上下の方向の定義として用いる。
【0013】
ウィンドウレギュレータ1は、キャリアプレート11と、ガイドレール12と、上昇用ケーブルおよび下降用ケーブルを含むケーブル13と、ケーブルガイド14と、取付ボルト(以下、単に「ボルト」という)15(
図3参照)と、モータ16と、図示せぬドラムとを備える。
【0014】
キャリアプレート11は、ガイドレール12に沿って移動可能な部材であり、窓ガラスと接続される部材である。キャリアプレート11には、例えば、窓ガラスの下部に取り付けられたガラスホルダが接続され、窓ガラスがガラスホルダを介して固定される。キャリアプレート11の上部にはケーブル13の一端が取り付けられ、キャリアプレート11の下部にはケーブル13の他端が取り付けられる。
【0015】
ガイドレール12は、キャリアプレート11の昇降をガイドする。ガイドレール12は、上下方向に亘るように配置され、横断面の形状がコ字状になっている。ただし、ガイドレール12の横断面の形状は、コ字状に限らず、L字状、円弧状、さらには、これらの形状が変形したものであってもよい。
【0016】
ケーブル13は、上昇用ケーブルの一端がキャリアプレート11の上部に取り付けられ、下降用ケーブルの一端がキャリアプレート11の下部に取り付けられ、上昇用ケーブルおよび下降用ケーブルの他端が取り付けられて捲回されるドラムの駆動によってキャリアプレート11を昇降させる。
【0017】
ケーブルガイド14(嵌合体に相当)は、ガイドレール12の端部に設けられ、ケーブル13をガイドしながら、ケーブル13の移動方向を転換する。すなわち、ケーブルガイド14は、ケーブル13が伝達する力の方向を転換する。また、ケーブルガイド14には、ボルト15が固定される。なお、ケーブルガイド14の詳細については後述する。
【0018】
ボルト15(挿入体に相当)は、ケーブルガイド14の挿入孔21に挿入され、挿入されたボルト15が、例えば、自動車のドアパネルに接続される。これによって、ボルト15は、ウィンドウレギュレータ1をドアパネルに固定する。ボルト15は、挿入孔21に挿入される部位である軸部31と、軸部31の径より大きい径を有し、軸部31の端部に接続された頭部32とを備える。
【0019】
本実施の形態のガイドレール嵌合構造は、上述したガイドレール12、ケーブルガイド14、ボルト15を有し、ガイドレール12にケーブルガイド14が嵌合される構造をいう。
【0020】
モータ16は、電力の供給を受けて、図示せぬドラムを回転させる。モータ16は、ドラムにトルクを出力する出力軸を備え、出力軸がドラムの回転軸と直接または間接的に接続されている。モータ16は、出力軸を正回転または逆回転させる。
【0021】
ドラムには、ケーブル13が巻回されている。ドラムが回転することにより、ケーブル13が巻き取り及び繰り出しされる。
【0022】
次に、上述したケーブルガイド14について、
図2〜
図5を用いて説明する。
図2は、
図1のケーブルガイド14についての部分拡大斜視図である。
図3は、
図1のケーブルガイド14についての分解斜視図である。
図4は、
図1のケーブルガイド14の下面図である。
図5は、
図1のケーブルガイド14にボルト及びガイドレールが取り付けられた状態の正面図である。
図6は、
図5のケーブルガイドについてのA−A線断面図である。
【0023】
ケーブルガイド14は、挿入孔21、U字溝22、嵌合部23を備えている。
【0024】
挿入孔21は、ボルト15がケーブルガイド14を貫通して挿入される孔であり、挿入孔21が延びる方向軸と嵌合部23が延びる方向軸とが交差するように設けられている。また、挿入孔21は、ボルト15の頭部32が移動する空間部とボルト15の軸部31が挿通される軸孔とを有し、前記空間部には挿入されたボルト15の頭部32が当接して嵌合する嵌合座41(
図6参照)を有している。
【0025】
U字溝22は、ケーブルガイド14の下面を除く外周部分にあたる半円状の円弧部分に形成され、このU字溝22に沿ってケーブル13が配索される。ケーブル13は、U字溝22に沿って摺動する。
【0026】
嵌合部23は、ケーブルガイド14の下部に形成され、ガイドレール12の端部が嵌合する孔である。嵌合部23は、挿入孔21のうち、ボルト15の頭部32が移動する空間部と接続するように設けられている。嵌合部23は、ボルト15が挿入孔21に挿入された後に、ガイドレール12に嵌合させられる。
【0027】
なお、
図2及び
図3では、ボルト15の頭部32及び挿入孔21を四角柱状とし、ボルト15の空転を防止している。ただし、ボルトの頭部は四角柱状に限らず、六角柱状などの多角柱状でもよく、嵌合座41と嵌合可能であって軸部より径の大きい頭部を有するボルトであればよい。
【0028】
ケーブルガイド14は、キャリアプレート11の可動範囲を広くするため、ガイドレール12に取付けられた際のガイドレール12の長さ方向が短くなるような大きさとされ、略半円状となっている。このため、U字溝22の強度の確保が可能な位置に、挿入孔21および嵌合部23が設けられている。本発明では、ケーブルガイド14にケーブル13を配索して、ケーブル13がケーブルガイド14をガイドレール12に押しつけるようにすることにより、ケーブルガイド14がガイドレール12から外れることを防止している。
【0029】
また、
図5に示すように、ケーブルガイド14の嵌合部22がガイドレール12に嵌合することによって、ガイドレール12の端部はケーブルガイド14の挿入孔21まで進入して、ガイドレール12が挿入孔21と交差する。このとき、ボルト15の頭部32の少なくとも一部が、ガイドレール12によって覆われて、嵌合座41とガイドレール12とで挟まれて、ガイドレール12の端部がボルト15の頭部32に当接することによりボルト15の移動が抑制されるので、ボルト15がケーブルガイド14からの脱離が抑制された状態(脱離抑制状態)となる。これにより、部品点数及び組み付け時の工数を抑制することができる。また、挿入孔21の開口部からボルト15の頭部32の一部が視認可能となっている。すなわち、ボルト15が配置されていることが視認可能であり、また、ボルト15が脱離抑制状態であることも視認可能となっている。これにより、ボルト15が挿入孔21に挿入されていること、及び、ガイドレール12がケーブルガイド14に差し込まれていることを同時に確認することができる。
【0030】
このように、本実施の形態のガイドレール嵌合構造では、ケーブルガイド14の嵌合部22がガイドレール12に嵌合することによって、ケーブルガイド14の挿入孔21に挿入されたボルト15の頭部32の少なくとも一部がガイドレール12によって覆われ、且つ、ボルト15が脱離抑制状態となる。これにより、インサート成型を行うことなく、ケーブルガイド14にボルト15を挿入してガイドレール14を嵌合するだけの簡単な組み付けによって、ボルト15を脱離抑制状態とすることができるので、部品点数及び組み付け時の工数を抑制し、低コストで、ボルト15をケーブルガイド14に脱落不能に容易に取り付けることができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、ケーブルガイドを嵌合体として説明したが、本発明はこれに限らず、プーリの回転軸が取り付けられる支持部を嵌合体としてもよい。ただし、この場合、プーリの回転軸は支持部から突出していなくてもよい。
【0032】
また、本実施の形態では、ケーブルガイドに挿入する挿入体としてボルトを例に説明したが、本発明はこれに限るものではない。挿入体の例としては、固定具、軸状体などが挙げられる。固定具としては、ボルト、ネジなど、ガイドレールと嵌合体とからなるガイドレール嵌合構造体を自動車等の車体等の固定対象物に固定させるためのものである。また、軸状体としては、ケーブルガイドをプーリとプーリの回転軸を支持する支持部とに替えた場合のプーリの回転軸など軸状の部材であれば何でもよい。
【0033】
また、本実施の形態では、ケーブルガイドをガイドレールへ嵌合した際、ガイドレールがケーブルガイドの挿入孔に進入すると説明したが、本発明はこれに限らず、ガイドレールが直接または間接的に別部材を押し込むことによって、別部材が挿入孔に進入してもよい。このとき、この別部材によって、ボルトの頭部の少なくとも一部が覆われればよい。
【0034】
また、本実施の形態では、ウィンドウレギュレータを
図1に示すような構成を例に説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ケーブルを引き操作する駆動部と、2つのプーリと、2つのプーリの間を移動するように配置されたキャリアプレートと、キャリアプレートの上部と下部に取り付けられ、2つのプーリ及び駆動部を通るように配索されたケーブルとを備えるウィンドウレギュレータでもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、ガイドレールをウィンドウレギュレータに用いる場合を例に説明したが、本発明はこれに限らず、カーテンレール、スライド式ドアなどスライド対象物をガイドレールに沿って移動させる装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ガイドレールに嵌合体が嵌合されるガイドレール嵌合構造及びウィンドウレギュレータに適用できる。
【符号の説明】
【0037】
11 キャリアプレート
12 ガイドレール
13 ケーブル
14 ケーブルガイド
15 ボルト
16 モータ
21 挿入孔
22 U字溝
23 嵌合部
31 軸部
32 頭部
41 嵌合座