(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374299
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】容器用注出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20180806BHJP
B65D 47/24 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
B65D47/08 130
B65D47/24 100
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-223244(P2014-223244)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-88547(P2016-88547A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神村 千秋
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−246182(JP,A)
【文献】
特開平09−252968(JP,A)
【文献】
特開2014−193746(JP,A)
【文献】
特表2007−529368(JP,A)
【文献】
米国特許第04942976(US,A)
【文献】
実開平01−161457(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
B65D 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の内容物を入側開口部、注出経路および出側開口部を通して吐出させる注出筒を有し、容器の口頚部に固定保持されるキャップ本体と、該キャップ本体に着脱自在に保持される蓋体とを備えた容器用注出キャップであって、
前記キャップ本体に、下方へ向かうスライドにて容器内から注出筒の注出経路に至るまでの流路を開通させて内容物の流通を可能とする一方、上方へ向かうスライドにて容器内から注出筒の注出経路に至るまでの流路を遮断して内容物の流通を不能とする中栓を配設してなり、該中栓は、該蓋体を閉じると同時に容器内から注出筒の注出経路に至るまでの流路を遮断するものであり、
前記中栓は、容器内の内容物を通過させる連通孔を残して前記注出筒の入側開口部を覆い隠す隔壁と、前記キャップ本体の天板を通してスライド可能に垂下保持され、その下方へのスライドにて該隔壁の連通孔を開放して該注出筒への内容物の流通を可能とするが、その上方へのスライドにて該隔壁の連通孔を閉塞させて該注出筒への内容物の流通を遮断するシャットオフピンとを備え、
前記キャップ本体の天板に、該シャットオフピンの後端部に揺動可能に連係するとともに、その回動を誘導して該シャットオフピンを上下にスライドさせる操作片を設け、
前記操作片は、枢軸を支点にして回動可能であり、かつ、蓋体を閉じるときに該蓋体に設けられた中足によって押圧されて、前記シャットオフピンを上方に向けてスライドさせる屈曲片からなることを特徴とする容器用注出キャップ。
【請求項2】
前記蓋体が、ヒンジを介して前記キャップ本体に回動可能の連結されたものであることを特徴とする請求項1に記載した容器用注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口頚部に装着され、その先端部に設けられた注出筒を通して容器内の内容物を吐出させるのに好適な容器用注出キャップ(ヒンジキャップやオーバーキャップ等)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプーやリンス等の日用品や洗剤、化粧料あるいは消毒液等の各種内容物を充填する容器では、片手によってキャップを取り外して容器内の内容物を簡単に吐出させることができるようにヒンジタイプの蓋体が備えられたキャップあるいはキャップ本体にアンダーカット嵌合によって固定保持される蓋体が備えられたオーバーキャップ等が多用されている。
【0003】
かかるキャップは、蓋体をキャップ本体に合致させる閉栓時には、蓋体の裏側に設けられた筒体がキャップ本体に設けられた注出筒に嵌合し、その嵌合が解除されない限りは内容物を排出することができないようになっている。
【0004】
ところで、この種のキャップは、例えば、容器をバックに入れて持ち歩くときや容器を踏みつけたとき等、蓋体あるいは容器本体に意に反する大きな外力が加わった場合に、蓋体とキャップ本体との嵌合状態が解除されてしまい内容物が漏れ出てしまう不具合があった。また、蓋体とキャップ本体との嵌合状態は、子供であっても比較的容易に解除することが可能であって悪戯等による内容物の漏れ出しを確実に防止できるとはいえない。
【0005】
このため、最近では、意に反する漏れの防止を図ったものやチャイルドプルーフ機能を追加して内容物の漏れ出し(吐出)を回避したものが数多く見られるようになってきており、この点に関する先行技術としては、例えば、特許文献1に開示されたヒンジキャップが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−63553号公報
【0007】
上記文献に開示されたヒンジキャップは、蓋体に、内側凸部を有し蓋体の外側壁に沿ってスライド可能なノブを設け、キャップ本体に、ノブのスライドにて内側凸部に係合して蓋体の開放する向きへの回動を阻止する凹部を設けた構造からなるものであって、これによれば、蓋体のロックとその解除を片手でもって簡単かつ、確実に行うことができるとともに、非ロック状態を維持することによって通常のヒンジキャップと同様の使用が可能であり、しかも、ロック機構の付加による漏れ防止対策およびチャイルドプルーフ機能をも付与することができることから、この種のキャップとしては、極めて有用なキャップであるとされていた。
【0008】
しかしながら、かかるヒンジキャップは、蓋体をロック状態に維持するノブが蓋体の外表面に設けられており、該ノブが意に反してスライドしてしまうことがないとはいえないとともに、蓋体を閉じたのちにノブをロック方向へスライドさせるのを忘れてしまうことも懸念されており、未だ改善の余地が残されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、悪戯や蓋体の意に反する開放に伴う内容物の誤吐出を抑制できる容器用注出キャップを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、容器内の内容物を入側開口部、注出経路および出側開口部を通して吐出させる注出筒を有し、容器の口頚部に固定保持されるキャップ本体と、該キャップ本体に着脱自在に保持される蓋体とを備えた容器用注出キャップであって、前記キャップ本体に、下方へ向かうスライドにて
容器内から注出筒の注出経路に至るまでの流路を開通させて内容物の流通を可能とする一方、上方へ向かうスライドにて
容器内から注出筒の注出経路に至るまでの流路を遮断して内容物の流通を不能とする中栓を配設してなり、該中栓は、該蓋体を閉じると同時に
容器内から注出筒の注出経路に至るまでの流路を遮断するものであ
り、中栓は、容器内の内容物を通過させる連通孔を残して前記注出筒の入側開口部を覆い隠す隔壁と、前記キャップ本体の天板を通してスライド可能に垂下保持され、その下方へのスライドにて該隔壁の連通孔を開放して該注出筒への内容物の流通を可能とするが、その上方へのスライドにて該隔壁の連通孔を閉塞させて該注出筒への内容物の流通を遮断するシャットオフピンとを備え、該キャップ本体の天板に、該シャットオフピンの後端部に揺動可能に連係するとともに、その回動を誘導して該シャットオフピンを上下にスライドさせる操作片を設け、該操作片は、枢軸を支点にして回動可能であり、かつ、蓋体を閉じるときに該蓋体に設けられた中足によって押圧されて、シャットオフピンを上方に向けてスライドさせる屈曲片からなることを特徴とする容器用注出キャップである。
【0012】
蓋体としては、蓋体本体の内側に環状の中足を設け、この中足をキャップ本体にアンダーカット嵌合させて固定保持するオーバーキャップやヒンジを介して回動可能に保持されるヒンジキャップが適用される。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成からなる本発明の注出キャップによれば、蓋体が開放された状態にあってもキャップ本体に設けられた中栓を操作しない限り内容物を注出筒を通して吐出させることはできず、悪戯や意に反する内容物の誤吐出を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の注出キャップによれば、操作片を回動させてシャットオフピンを下方に向けてスライドさせるだけの簡単な操作で内容物の吐出が可能となる。
【0015】
さらに、本発明の注出キャップによれば、内容物が吐出可能な状態におかれたままにあっても、蓋体を閉じると同時に、中栓の連通孔を閉塞させることができるため、その後に蓋体が意に反して開放することがあっても、中栓のシャットオフピンを下方にスライドさせない限り内容物を注出することができず、内容物の誤吐出は規制されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に従う容器用注出キャップの実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面を断面で示した図、(c)は底面図である。
【
図2】
図1に示した注出キャップにおいて、蓋体を開放した状態で示した図である。
【
図3】
図1に示した注出キャップにおいて、内容物の吐出可能な状態を示した図である。
【
図4】(a)は
図2の要部拡大図であり、(b)は
図3の要部拡大図である。
【
図5】
図1に示した注出キャップにおいて、蓋体を閉じる寸前の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1(a)〜(c)は、本発明に従う容器用注出キャップ(合成樹脂等で成形される)を容器の口頚部に装着した状態で模式的に示した図であり、(a)は平面図(蓋体は表示せず)、(b)は側面を断面表示した図、さらに(c)は底面図である。
【0018】
図における符号1は、内容物を充填する容器である。容器1としては、容器1の胴体部分を押し潰して内容物を注出するスクイズ容器(合成樹脂)を用いることができるが、その他の容器を適用することも可能であり、本発明では、スクイズ容器に限定されることはない。また、容器の形状については充填すべき内容物の種類や用途等に応じて適宜変更することが可能であり、ここでは、容器1の全体形状については省略している。
【0019】
また、符号2は、容器用注出キャップの主要構成部分をなすキャップ本体である。このキャップ本体2は、容器1の口頚部1aを取り囲んでその外周面のねじ部1bに係合可能なねじ部を有する周壁2aと、この周壁2aの上端に一体連結して容器1の口頚部1aの開口部分を閉塞する天板2bと、この天板2bにおいて起立するとともに入側開口部2c、注出経路2dおよび出側開口部2eを通して容器1内の内容物を注出する注出筒2fから構成されている。なお、キャップ本体2は、アンダーカットの如き係合手段によって容器1の口頚部1aに固定保持されるものであってもよい。
【0020】
また、符号3は、蓋体である。この蓋体3は、キャップ本体2の背面側でヒンジh
1、h
2、h
3を介して該キャップ本体2に一体連結しており、このヒンジh
1、h
2、h
3によって開閉可能に保持されている。蓋体3は、その下端面がキャップ本体2の上面縁部(天板2bの縁部)に合わさりアンダーカット係合することによって閉姿勢に保持されるものであって、キャップ本体2の天板2bに設けられた注出筒2fはその内側空間に格納される。
【0021】
蓋体3としては、キャップ本体2に嵌合可能な周壁3aと、この周壁3aの上端に一体連結して下向きに開放された内側空間を形成する天面壁3bと、この天面壁3bの裏面中央部に設けられ、蓋体3の閉姿勢で注出筒2fの注出経路2dに嵌合して該注出経路2dを閉塞する筒体3cから構成されるものが用いられる。なお、ヒンジh
2とヒンジh
3によって蓋体3およびキャップ本体2に連結される部材は、蓋体3の設定開放角度を境にして実際の開放角度が設定開放角度よりも小さい場合には、蓋体3をキャップ本体2に押し付ける力を発生させる一方、実際の開放角度が設定開放角度よりも大きくなった場合に蓋体3を背面側へ反りかえらせる力を生じさせる弾性片であって、この弾性片は任意に設けられる。蓋体3としては、ここでは、ヒンジタイプの蓋体を例として説明したが、周壁3aの内側に環状の中足を別途に設け、該中足の下端部をキャップ本体2にアンダーカット嵌合させて蓋体3を固定するオーバーキャップあるいはその他のキャップを用いることも可能であり、本発明では図示の蓋体3に限定されることはない。
【0022】
また、符号4は、蓋体3の前面側(ヒンジh
1の対向位置)で、周壁3aに一体連結する摘み片である。この摘み片4に指先等を引掛け、蓋体3をヒンジh
1を起点にして引き起こすことによって該蓋体3は開放される。
【0023】
符号5は、キャップ本体2の内側に設けられた中栓である。この中栓5は、容器1内の内容物を通過させる連通孔kを残して注出筒2fの入側開口部2cを覆い隠す隔壁5aと、キャップ本体2の天板2aを貫通してスライド可能に垂下保持され、その下方へのスライドにて隔壁5aの連通孔kを開放して注出筒2fへの内容物の注出を可能とし、その上方へのスライドにて隔壁5aの連通孔kを閉塞させて注出筒2fへの内容物の流通を遮断するシャットオフピン5bと、キャップ本体2の天板2bの上に設けられた操作片5cから構成されている。
【0024】
操作片5cは、長手方向の中央部で枢軸sを介して支持され、該枢軸sを支点に回動可能な「く」の字状の断面形状をなす屈曲片(第1の舌片5c
1、第2の舌片5c
2)からなっている。
【0025】
操作片5cの一端(舌片5c
2)には切欠き部5dが形成されており、この切欠き部5dにシャットオフピン5bの後端部(上端部)を揺動可能に連係させ、枢軸sを支点に操作片5cを回動(枢軸sを支点とする引き起こし、押し倒し)させることによってシャットオフピン5bを上下にスライドさせることができるようになっている。
【0026】
シャットオフピン5bは、その本体部分(棒状体)5b
1の下端に第1の環状シール部5b
2を有し、その上端に第2の環状シール部5b
3を有している。第1の環状シール部5b
2は、上部が拡大された円錐台状のものが適用され、第2の環状シール部5b
3は、下部が拡大された円錐台状のものが適用される。
【0027】
シャットオフピン5bの第2の環状シール部5b
3をキャップ本体2の天板2bに垂下保持された筒体2g内に摺動可能に位置させることによって天板2bに設けられた孔(シャットオフピン5bの挿通用の孔)からの液漏れを防止するとともに、第1環状シール部5b
2を隔壁5aに形成された座部5eに適合させることによって容器1内の内容物の、注出筒2fへの流通を遮断する。
【0028】
図2は、本発明に従う容器用注出キャップにつき、蓋体3を開放した状態を示した図であり、
図3は、内容物の吐出を可能とした状態を示した図であり、
図4(a)(b)は、
図2、
図3の要部をそれぞれ拡大して示した図であり、さらに、
図5は、蓋体3を閉じる寸前の状態を示した図である。
【0029】
蓋体3を開放した
図2に示すような状態では、シャットオフピン5bは上方にスライドして
いて第1の環状シール部5b
2が中栓5の座部5eに適合しており、容器1内の内容物の、注出筒2fへの流通が遮断されているため、単に蓋体3を開放しただけでは内容物は吐出することがない。
【0030】
容器1内の内容物を吐出させるには、
図3に示すように、操作片5cを、枢軸sを支点にヒンジh
1側に回動させて舌片5c
2を押し倒せばよい。舌片5c
2の押し倒しに伴いシャットオフピン5bは下方へとスライドし、第1の環状シール部5b
2が座部5eから離れ、これにより隔壁5aの連通孔kは開放されることとなり、容器1内の内容物の、注出筒2fへの流通が可能となる。内容物の吐出に際しては容器1を傾動姿勢あるいは反転姿勢に保持する。
【0031】
内容物の吐出を終えた後においては、そのまま蓋体3を閉じればよく、これにより、
図5に示すように、蓋体3の天面壁3bの裏面に設けられた中足3dにより操作片5cが押圧され、それに伴い操作片5cはキャップ本体2の前面側へと回動する。そして操作片5cの回動により舌片5c
1は押し倒され、シャットオフピン5bが上方へ向けてスライドして連通孔kが閉塞される。
【0032】
シャットオフピン5bの上方へのスライドにより、第1の環状シール部5b
2は座部5eに適合して容器1内の内容物の、注出筒2fへの流通が遮断され、それ以降において、蓋体3が開放されたとしてもシャットオフピン5bを下方に向けてスライドさせない限り内容物を注出することはできず、従って、内容物の誤吐出は抑制されることになる。
【0033】
操作片5cは「く」の字状断面をなす屈曲片を利用した場合について説明したが、梃子の原理を利用してシャットオフピン5bを上下にスライドできるものであればどのような形状のものでも適用可能であり、図示のものに限定されない。
【0034】
また、操作片5cの配置位置に関しては、キャップ本体2の天板2bのどの部位に設定してもかまわない。とくに、ヒンジhの直近に操作片5cを配置した場合にあっては、内容物の注出に際して操作片5cが邪魔になるのを回避することが可能であり、内容物のスムーズな吐出が可能となる。
【0035】
隔壁5aについては、注出筒2fの入側開口部2eを覆い隠す円形のカバー体5a
1と、このカバー体5a
1に一体連結してその内側に座部5eを形成する筒状部材5a
2にて構成されたものを適用することができるが、隔壁5aの形状は、シャットオフピン5bのサイズや形状に応じて任意に変更することができるものであり、図示のものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、悪戯や意に反する蓋体の開放による内容物の誤吐出を抑制し得る容器用注出キャップが提供できる。
【符号の説明】
【0037】
1 容器
1a 口頚部
1b ねじ部
2 キャップ本体
2a 周壁
2b 天板
2c 入側開口部
2d 注出経路
2e 出側開口部
2f 注出筒
2g 筒体
3 蓋体
3a 周壁
3b 天面壁
3c 筒体
3d 中足
4 摘み片
5 中栓
5a 隔壁
5b シャットオフピン
5c 操作片
5d 切欠き部
5e 座部
h
1、h
2、h
3 ヒンジ
k 連通孔
s 枢軸