特許第6374312号(P6374312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374312
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61G 7/10 20060101AFI20180806BHJP
   B61G 11/16 20060101ALI20180806BHJP
   B61F 1/10 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B61G7/10
   B61G11/16
   B61F1/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-249897(P2014-249897)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-107936(P2016-107936A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 将彦
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−260881(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/099268(JP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0319281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61G 7/00 − 7/14
B61G 11/00 − 11/18
B61F 1/00 − 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、前記台枠の前後方向の少なくとも一端部に設けられた被取付部と、前記被取付部に取り付けられ、他の鉄道車両と連結可能に構成された連結装置とを備えた鉄道車両において、
前記連結装置は、前記他の鉄道車両と連結するための連結器と、前記連結器と前記被取付部との間に配置され、前記前後方向の衝撃荷重を吸収する緩衝装置とを有しており、
前記被取付部は、前記前後方向に面し且つ前記前後方向における前記鉄道車両の外方側の面であって前記連結装置を取り付けるための取付面を有する取付板と、前記取付板と一体的に形成され、前記取付板の前記前後方向における前記鉄道車両の内方側の面から内方に向かって延在し前記台枠に固定された一対の支持板を有しており、
前記一対の支持板は、前記緩衝装置によって吸収可能な許容荷重を超える衝撃荷重が前記連結装置に生じたときに、前記台枠が塑性変形する前に塑性変形が生じるように構成された、強度が他の部位よりも小さい強度低下部を有していることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
記強度低下部は、前記一対の支持板に穴が形成されることで構成されることを特徴とする請求項に記載の鉄道車両。
【請求項3】
連結された前記他の鉄道車両と対向する前記鉄道車両の対向面から突出し、上下方向に互いに離隔して配置された複数の板状部材をさらに備えており、
前記被取付部は、前記鉄道車両の前記複数の板状部材が前記他の鉄道車両の複数の板状部材と噛み合う位置まで、塑性変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転室や客室に配置された台枠と、台枠に固設された連結装置アンカーと、連結装置アンカーに固定され、他の鉄道車両と連結可能な連結装置とを有する鉄道車両について記載されている。この鉄道車両においては、連結装置アンカーが堅固な構造体から構成されており、連結装置が当該連結装置アンカーを介して台枠に強固に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−5948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、鉄道車両が連結装置を介して他の鉄道車両と連結されている際に、急ブレーキや衝突によって鉄道車両同士が互いに近づき、衝撃荷重が鉄道車両に生じると、ある程度の衝撃荷重は連結装置の緩衝装置が吸収する。しかしながら、上記特許文献1に記載の連結装置アンカーは堅固な構造体からなるため、連結装置の緩衝装置が吸収可能な許容荷重を超える衝撃荷重が生じた場合、連結装置アンカーに伝わった衝撃荷重はそのまま台枠に伝わる。すると、台枠がこの衝撃荷重によって大きく塑性変形してしまう。台枠が塑性変形すると、客室などが損傷する問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、台枠の塑性変形を抑制することが可能な鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄道車両は、台枠と、前記台枠の前後方向の少なくとも一端部に設けられた被取付部と、前記被取付部に取り付けられ、他の鉄道車両と連結可能に構成された連結装置とを備えた鉄道車両において、前記連結装置は、前記他の鉄道車両と連結するための連結器と、前記連結器と前記被取付部との間に配置され、前記前後方向の衝撃荷重を吸収する緩衝装置とを有しており、前記被取付部は、前記前後方向に面し且つ前記前後方向における前記鉄道車両の外方側の面であって前記連結装置を取り付けるための取付面を有する取付板と、前記取付板と一体的に形成され、前記取付板の前記前後方向における前記鉄道車両の内方側の面から内方に向かって延在し前記台枠に固定された一対の支持板を有しており、前記一対の支持板は、前記緩衝装置によって吸収可能な許容荷重を超える衝撃荷重が前記連結装置に生じたときに、前記台枠が塑性変形する前に塑性変形が生じるように構成された、強度が他の部位よりも小さい強度低下部を有している。
【0007】
これによると、緩衝装置によって吸収可能な許容荷重を超える大きな衝撃荷重が連結装置に生じた場合でも、台枠よりも先に被取付部が塑性変形し、当該衝撃荷重を吸収する。このため、連結装置及び被取付部を介して台枠に大きな衝撃荷重が伝わりにくくなる。この結果、台枠が塑性変形しにくくなって、鉄道車両の客室などが損傷しにくくなる。また、被取付部が塑性変形しやすくなる。
【0009】
また、本発明において、前記強度低下部は、前記一対の支持板に穴が形成されることで構成されることが好ましい。これにより、容易に強度低下部を形成することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、連結された前記他の鉄道車両と対向する前記鉄道車両の対向面から突出し、上下方向に互いに離隔して配置された複数の板状部材をさらに備えており、前記被取付部は、前記鉄道車両の複数の板状部材が前記他の鉄道車両の複数の板状部材と噛み合う位置まで、塑性変形可能に構成されていることが好ましい。これにより、被取付部に塑性変形が生じるような衝撃荷重が生じた際に、被取付部は鉄道車両の複数の板状部材が他の鉄道車両の複数の板状部材と噛み合う位置まで塑性変形する。このため、一方の鉄道車両が他方の鉄道車両によじ登ることを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鉄道車両によると、緩衝装置によって吸収可能な許容荷重を超える大きな衝撃荷重が連結装置に生じた場合でも、台枠よりも先に被取付部が塑性変形し、当該衝撃荷重を吸収する。このため、連結装置及び被取付部を介して台枠に大きな衝撃荷重が伝わりにくくなる。この結果、台枠が塑性変形しにくくなって、鉄道車両の客室などが損傷しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る鉄道車両の側面図であり、(b)は鉄道車両の平面図である。
図2図1に示す連結装置アンカー及びその付近の斜視図である。
図3】(a)は連結装置アンカーの側面図であり、(b)は連結装置アンカーを下方から見たときの図である。
図4】(a)は鉄道車両間に衝撃荷重が生じる前の状態を示す状況図であり、(b)は緩衝装置の最大許容荷重とほぼ同等の衝撃荷重が鉄道車両間に生じたときの状態を示す状況図である。
図5】(a)は緩衝装置の許容荷重を超える衝撃荷重が鉄道車両間に生じ連結装置アンカーが塑性変形する前の状態を示す状況図であり、(b)は緩衝装置の許容荷重を超える衝撃荷重が鉄道車両間に生じ連結装置アンカーが塑性変形した後の状態を示す状況図である。
図6】(a)は変形例に係る鉄道車両の部分側面図であり、(b)は緩衝装置の許容荷重を超える衝撃荷重が鉄道車両間に生じ連結装置アンカーが塑性変形した後の状態を示す状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態である鉄道車両について、図1図4を参照しつつ以下に説明する。
【0014】
[鉄道車両の全体構成]
列車100は、図1に示すように、前後方向Aに連結された複数の鉄道車両1,2,3と、隣り合う鉄道車両1,2間に配置されたホロ4と、隣り合う鉄道車両2,3間に配置されたホロ5とを含む。鉄道車両1,2,3はほぼ同様な構成であり、以下では鉄道車両2について詳細に説明する。なお、列車100は、ホロ4,5を有していなくてもよい。
【0015】
[鉄道車両]
鉄道車両2は、図1(a)に示すように、車体10と、車体10の下端部に取り付けられた複数の台車20と、2つの連結装置30とを有する。これら台車20は、前後方向Aに離隔して配置されている。各台車20は、4つの車輪21と、前後方向Aと直交する幅方向Bに延在する2つの車軸22とを有しており、車体10を下方から支持する。台車20は、図示しない駆動装置からの駆動力によって各車軸22が回転することで、4つの車輪21が回転する。これにより、鉄道車両2が進行方向(前方又は後方)に進む。
【0016】
連結装置30は、車体10の前端部の下部及び後端部の下部にそれぞれ1つずつ設けられている。連結装置30は、後述の連結装置アンカー40にその一端が固定されている。連結装置30は、鉄道車両1,3(他の鉄道車両)の連結装置30と連結可能に構成され、鉄道車両1〜3の車両同士を結合し、牽引時の引張力・推進時の圧縮力を伝達する公知の装置である。本実施形態における連結装置30は、連結器31と、緩衝装置32と、取付部33とを有する。連結器31は、他の鉄道車両1,3の連結装置30の連結器31と連結するための公知のものである。取付部33は、連結装置アンカー40にボルトを介して取り付けられる。
【0017】
本実施形態における緩衝装置32は、図4に示すように、シリンダ32aと、このシリンダ32a内で軸方向(前後方向A)に駆動自在に設けられているピストン32bと、シリンダ内に充填されている油とからなる公知の油圧式緩衝装置である。なお、緩衝装置32は、油以外の粘性流体の流動摩擦によって衝撃荷重を吸収する粘性緩衝装置や塑性変形によって衝撃荷重を吸収する塑性緩衝装置(例えば、デフォメーションチューブ)、及び、ゴム式の緩衝装置などを単体又は組み合わせて採用することが可能である。緩衝装置32のピストン32bは、連結器31に固定され、シリンダ32aは取付部33に支持されている。これにより、連結装置30は、車両の連結時、運転中、ブレーキ操作時、及び、衝突時などで生じる鉄道車両1〜3間の前後方向Aにおける衝撃荷重のうち、緩衝装置32が吸収可能な許容荷重内の衝撃荷重を吸収することができる。
【0018】
車体10は、図1に示すように、進行方向と平行な前後方向Aに長尺な直方体状に形成され、底部となる台枠11と、2つの側構体12,13と、2つの妻構体14,15と、屋根構体16と、連結装置アンカー40と、乗り上げ防止装置50とを有している。2つの側構体12,13は、台枠11の幅方向Bの両端部において、上下方向Cに立設され、前後方向Aに延在している。2つの妻構体14,15は、台枠11の前後方向Aの両端部において、上下方向Cに立設され、幅方向Bに延在している。妻構体14は、車体10の前端部に設けられ、鉄道車両1に対向している。妻構体14には、鉄道車両1,2の間を往来できるように貫通路(不図示)が取り付けられている。一方、妻構体15は、車体10の後端部に設けられ、鉄道車両3に対向している。妻構体15には、鉄道車両2,3との間を往来できるように貫通路(不図示)が取り付けられている。
【0019】
また、台枠11上には床面17が形成されている。屋根構体16は、矩形平面形状を有し、その周端部が側構体12,13及び妻構体14,15の上面に固定されている。車体10内には、図1(b)に示すように、客室18が形成されている。客室18は、屋根構体16、床面17、側構体12,13、及び、妻構体14,15で囲まれて構成されている。このように客室18は、台枠11上に構成されている。
【0020】
台枠11は、図2に示すように、その幅方向Bの両端部を形成する側ばり11a1,11a2と、これら側ばり11a1,11a2に架け渡されて幅方向Bに延在する複数の横はり11b1,11b2,11b3と、これら横はり11b1,11b2,11b3に架け渡されて前後方向Aに延在する一対の中はり11cとによって、平面視で略矩形形状に構成されている。一対の中はり11cは、台枠11の幅方向Bの中央部分において、互いに離隔して配置されている。
【0021】
連結装置アンカー40(被取付部)は、図2及び図3に示すように、連結装置30の取付部33を取り付けるための取付板41と、取付板41を支持する支持部42とを有している。取付板41は、前後方向Aに面する取付面41aを有する板状部材である。取付板41は、取付面41aが鉄道車両2の前後方向Aにおける外方側(図2中左方側)に位置するように配置されている。取付面41aには、前後方向Aに貫通する4つの貫通孔41bが形成されている。これら貫通孔41bは、取付部33に形成された4つの貫通孔(不図示)と対応する位置に配置されている。そして、取付面41aに取付部33を当接させた状態で、取付部33の貫通孔と取付板41の貫通孔41bとを位置合わせし、ボルト及びナットで取付部33を取付板41に固定する。こうして、連結装置30と連結装置アンカー41とが強固に組み付けられる。
【0022】
支持部42は、図3に示すように、一対の支持板43と、下当板44と、一対の補強板45と、補強板46とを有する。一対の支持板43は、幅方向Bに関して互いに離隔して配置されている。一対の支持板43は、取付板41の取付面41aとは反対側の面41cの幅方向Bの両端から鉄道車両2の前後方向Aにおける内方(図3中右方)に向かって延在している。各支持板43は、板状部材からなり、図3(a)に示すように、略三角形形状を有する。各支持板43には、幅方向Bに貫通する孔43aが形成されている。孔43aが形成されることで、支持板43の板状部材には強度が他の部位(孔43a以外)よりも低下した強度低下部(すなわち、孔43aの部分)が構成される。孔43aは、図3(a)に示すように、角部が丸まった略三角形状に形成されている。このように支持板43を構成する板状部材に孔43aが形成されることで、支持板43には、水平部43bと垂直部43cと傾斜部43dとが構成される。この垂直部43cが取付板41の面41cに溶接されることで、支持板43が取付板41に一体的に固定される。なお、垂直部43cの上端及び水平部43bの上端は中はり11cに溶接される部位である。傾斜部43dは水平部43bの内方端と垂直部43cの下端とを繋ぐ。
【0023】
下当板44は、図3(b)に示すように、略U字の平面形状を有する板状部材からなる。また、下当板44は、図3(a)に示すように、一対の支持板43の下端面にならって曲げられて構成されている。下当板44は、一対の支持板43及び取付板41に溶接されている。なお、下当板44の内方(図3中右方)端部であって中はり11cと対向する部位は、中はり11cに直接溶接される部位である。
【0024】
一対の補強板45は、幅方向Bに関して互いに離隔して配置されている。一対の補強板45は、取付板41の取付面41aの幅方向Bの両端から鉄道車両2の前後方向Aにおける外方(図3中左方)に向かって延在している。各補強板45は、図3(a)に示すように、略三角形形状を有する板状部材からなる。これら補強板45の垂直辺部が取付面41aに溶接されることで、補強板45と取付板41とが一体的に固定される。
【0025】
補強板46は、取付板41の面41cの幅方向Bの中央から鉄道車両2の前後方向Aにおける内方(図3中右方)に向かって延在する。補強板46は、図3(a)に示すように、略三角形形状を有する板状部材からなる。補強板46の垂直辺部が面41cに、補強板46の下端面が下当板44に溶接されることで、補強板46と取付板41及び下当板44とが一体的に固定される。
【0026】
連結装置アンカー40を構成する、取付板41の上端、一対の支持板43の垂直部43cの上端及び水平部43bの上端、下当板44の内方端部、及び、一対の補強板45の水平辺部が横はり11b2及び中はり11cに溶接されることで、連結装置アンカー40が台枠11に強固に固定される。また、連結装置アンカー40は、これら取付板41、支持部42によってその崩壊荷重が調整されている。具体的には、連結装置30が吸収可能な許容荷重を超える衝撃荷重が鉄道車両2と他の鉄道車両1,3との間に生じたときに、主に連結装置アンカー40の一対の支持板43に形成された孔43a(強度低下部)により、台枠11(すなわち、中はり11c)が塑性変形する前に連結装置アンカー40が塑性変形するように調整されている。
【0027】
乗り上げ防止装置50は、図1(a)に示すように、台枠11の前端面及び後端面(すなわち、鉄道車両2の他の鉄道車両1,3と対向する面)にそれぞれ設けられている。乗り上げ防止装置50は、図2に示すように、台枠11から鉄道車両2の前後方向Aにおける外方に突出し、上下方向Cに互いに離隔して配置された3枚の板状部材51から構成されている。板状部材51は、幅方向Bに延在している。なお、乗り上げ防止装置50は、2枚又は4枚以上の板状部材51から構成されていてもよい。さらに、乗り上げ防止装置50は、台枠11の前後方向の一端面だけに設けられていてもよい。
【0028】
また、鉄道車両1,3に設けられた乗り上げ防止装置50の板状部材51は、上下方向Cに関して、鉄道車両2に設けられた乗り上げ防止装置50の板状部材51とほぼ同じ位置に配置されている。このように乗り上げ防止装置50が上下方向Cに関して同じ位置に配置されていても、鉄道車両1〜3の上下動や車輪21の摩耗などにより、結果的に各鉄道車両1〜3に設けられた乗り上げ防止装置50の板状部材51が上下方向Cにずれる。この結果、図4(b)に示すように、鉄道車両1,2が近接したときに、各鉄道車両1,2に設けられた乗り上げ防止装置50の板状部材51が噛み合う。このため、鉄道車両2が他の鉄道車両1,3に対して、乗り上げるのを抑制することが可能となる。なお、鉄道車両1,3に設けられた乗り上げ防止装置50の板状部材51は、上下方向Cに関して、鉄道車両2に設けられた乗り上げ防止装置50の板状部材51と若干ずれた位置に配置されていてもよい。
【0029】
ここで、鉄道車両1,2間に生じた衝撃荷重を緩衝装置32が吸収するときの動作について、図4及び図5を参照しつつ以下に説明する。例えば、低速走行中の鉄道車両1,2において、急ブレーキをかけた場合や先頭車両(ここでは鉄道車両1)が障害物に衝突した場合など、鉄道車両1,2間には衝撃荷重が生じる。このとき、緩衝装置32が吸収可能な許容荷重内であって最大許容荷重と同程度の衝撃荷重が鉄道車両1,2間に生じた場合、鉄道車両1,2の緩衝装置32は、ピストン32bを縮めながら当該衝撃荷重を吸収する。つまり、ピストン32bは、図4(a)に示すようにシリンダ32aから伸び出した状態から図4(b)に示すようにシリンダ32a内に収納された状態となるように縮む。このとき、ピストン32bが縮む過程において、緩衝装置32が衝撃荷重を吸収する。ピストン32bのほぼ全体がシリンダ32a内に収容されるほどの衝撃荷重(最大許容荷重と同程度)が生じた場合は、鉄道車両1,2の乗り上げ防止装置50同士も噛み合う。
【0030】
一方、高速走行中の鉄道車両1,2において、急ブレーキをかけたり、先頭車両が障害物に衝突すると、鉄道車両1,2間に急激な衝撃荷重が生じる。このような急激な衝撃荷重が鉄道車両1,2間に生じた場合、図5(a)に示すように、ピストン32bは衝撃荷重を吸収するようにある程度シリンダ32a内に収容されるが、油圧式緩衝装置32の速度依存性により、ピストン32bが縮まなくなる。つまり、緩衝装置32が衝撃荷重を吸収しきれずに、ピストン32bの縮む方向への移動が止まる。そして、緩衝装置32の許容荷重を超える衝撃荷重が連結装置30を介して連結装置アンカー40に伝わると、連結装置アンカー40が台枠11よりも先に塑性変形する。連結装置アンカー40の支持部42には孔43a(強度低下部)が形成されており、連結装置アンカー40自体の崩壊荷重が台枠11よりも小さくなっている。このため、図5(b)に示すように、支持部42の傾斜部43dが変形するとともに孔43a(強度低下部)が潰れる。傾斜部43d及び孔43aの変形に伴って、取付板41、一対の補強板45及び補強板46も塑性変形する。こうして、台枠11が塑性変形するよりも前に連結装置アンカー40自体が塑性変形し、当該衝撃荷重を吸収する。なお、低速走行中の鉄道車両1,2においても、高速走行中の鉄道車両1,2と同様に、鉄道車両1,2間に緩衝装置32の許容荷重を超える衝撃荷重が生じた場合、上述と同様に、連結装置アンカー40が台枠11よりも先に塑性変形する。
【0031】
また、連結装置アンカー40は、緩衝装置32のピストン32bがシリンダ32aから最大長伸び出した状態から完全に縮んでいなくても、乗り上げ防止装置50同士が噛み合う位置まで塑性変形可能に構成されている。このため、図5(b)に示すように、乗り上げ防止装置50同士が噛み合う。このように連結装置アンカー40が塑性変形可能であると、連結装置30の許容荷重を超える衝撃荷重が生じたときでも、鉄道車両2の乗り上げ防止装置50が他の鉄道車両1の乗り上げ防止装置50と噛み合う。このため、一方の鉄道車両2が他方の鉄道車両1によじ登る、すなわち、鉄道車両1,2に相互の乗り上がり、及び、鉄道車両1,2の編成座屈(列車座屈)を抑制することができる。
【0032】
以上に述べたように、本実施形態の鉄道車両2によると、他の鉄道車両1,3と連結された状態において、鉄道車両2と他の鉄道車両1,3とが近づくことで生じる衝撃荷重が緩衝装置32によって吸収可能な許容荷重を超える大きな衝撃荷重であっても、台枠11よりも先に連結装置アンカー40が塑性変形し、当該衝撃荷重を吸収する。このため、連結装置30及び連結装置アンカー40を介して台枠11に大きな衝撃荷重が伝わりにくくなる。この結果、台枠11が塑性変形しにくくなって、鉄道車両2の客室18などが損傷しにくくなる。
【0033】
変形例として、連結装置アンカー40は、図6(a)に示すように、列車の先頭車両201の台枠211の前端部の下部に設けられていてもよい。そして、台枠211の前端よりも前方に連結器31が突出した状態で連結装置30が連結装置アンカー40に設けられておればよい。なお、上述の実施形態と同様なものについては、同符号で示し、説明を省略する。例えば、軌道内に他の鉄道車両202(先頭車両201と同様な車両)が停止しており、図6(b)に示すように、当該他の鉄道車両202に先頭車両201が衝突して連結器31同士が噛み合った状態で、上述の実施形態と同様に、緩衝装置32の許容荷重を超える衝撃荷重が連結装置30を介して連結装置アンカー40に伝わると、連結装置アンカー40が台枠211よりも先に塑性変形する。このため、台枠211に大きな衝撃荷重が伝わりにくくなり、台枠211が塑性変形しにくくなって、先頭車両の客室などが損傷しにくくなる。
【0034】
なお、軌道内にトラックなどの障害物が停止しており、当該障害物に先頭車両201が衝突し(連結器31が障害物に衝突し)、連結装置30の許容荷重を超える衝突荷重が連結装置30に生じた場合、連結装置アンカー40が上述と同様に、台枠211よりも先に塑性変形する。このため、台枠211に大きな衝撃荷重が伝わりにくくなり、台枠211が塑性変形しにくくなって、先頭車両の客室などが損傷しにくくなる。
【0035】
加えて、連結装置アンカー40は、その崩壊荷重が台枠11の崩壊荷重よりも小さく、連結装置30の許容荷重を超える衝撃荷重が加えられると塑性変形するほど、崩壊荷重が小さい。一般的に、崩壊荷重と剛性は概ね相関性があり、さらに本実施形態における連結装置アンカー40には強度低下部が形成され、その剛性が低くされている。このため、台枠11の崩壊荷重以上の崩壊荷重を有し剛性の高い従来の連結装置アンカーよりも、本実施形態における連結装置アンカー40の方が弾性変形しやすく、列車100の走行時などの鉄道車両間に生じる前後方向Aに作用する荷重を連結装置30とともに効果的に吸収することが可能となる。この結果、鉄道車両1〜3の客室18における前後方向Aの振動が小さくなり、乗り心地が向上する。
【0036】
連結装置アンカー40は、支持部42に孔43aが形成されることで、鉄道車両間に生じる衝撃荷重が緩衝装置32の許容荷重を超えるときに、台枠11よりも先に塑性変形するようにその崩壊荷重が調整されている。これにより、連結装置アンカー40が塑性変形しやすくするための強度低下部を容易に形成することができる。
【0037】
別の変形例として、支持部42に座ぐり等により板厚減少部を形成することで、連結装置アンカー40に強度低下部を形成してもよい。また、孔43aの形状は四角、多角形、円形など、どのような形状であってもよい。さらに板厚減少部の形状も同様な形状であってもよい。
【0038】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、取付部33を取付面41aに当接させた状態で両者をボルト及びナットで強固に固定し、連結装置アンカー40が塑性変形しても、連結装置アンカー40から連結装置30が外れない構成であったが、台枠11が塑性変形する前に、ボルトが破断されて連結装置30が連結装置アンカーから外れるような構成であってもよい。このように連結装置30が連結装置アンカーから外れるような構成であっても、ボルトが破断しなかった場合における冗長性を保つことができる。
【0039】
また、上述の実施形態においては、連結装置アンカー40は、鉄道車両2の前端部及び後端部の両方に設けられているが、いずれか一方にだけ設けられていてもよい。
【0041】
また、乗り上げ防止装置50は設けられていなくてもよいし、連結装置アンカー40は鉄道車両2の乗り上げ防止装置50が他の鉄道車両1,3の乗り上げ防止装置50に噛み合う位置まで塑性変形不可能に構成されていてもよい。つまり、連結装置アンカー40は少しでも塑性変形可能に構成されていればよい。
【符号の説明】
【0042】
1,3,202 鉄道車両(他の鉄道車両)
2 鉄道車両
11,211 台枠
30 連結装置
31 連結器
32 緩衝装置
40 連結装置アンカー(被取付部)
41 取付板
42 支持部
43 支持板
43a 孔(穴)
51 板状部材
201 先頭車両(鉄道車両)
図1
図2
図3
図4
図5
図6