(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374322
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】取外し自在のブレスレット連結装置
(51)【国際特許分類】
A44C 5/14 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
A44C5/14 G
A44C5/14 R
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-541716(P2014-541716)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公表番号】特表2014-533543(P2014-533543A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012073411
(87)【国際公開番号】WO2013076220
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】01870/2011
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513114803
【氏名又は名称】ウブロ ソシエテ アノニム, ジュネーブ
【氏名又は名称原語表記】HUBLOT S.A., GENEVE
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ オリヴェイラ, ステファン
【審査官】
石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0070823(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/055190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレスレット(2a、2b)を取り付けなければならない部材、とりわけ時計ケース(1)に対するブレスレットの取外し自在の連結装置であって、前記ブレスレット(2a、2b)および前記部材の連結端部とそれぞれ一体をなすことが意図された2つの相補的掛合具(3、4)を備える装置において、前記掛合具は前記ブレスレット(2a、2b)の長手方向に対して横断方向を向いており、前記一方の掛合具(3)は、前記他方の掛合具(4)と係合する第1の位置と、その他方の掛合具(4)から脱離する第2の位置の2つの限界位置の間で横断方向と直角な横方向に移動可能であること、および、弾性戻し手段(5)は2つの限界位置の間で横方向に移動可能な前記一方の掛合具(3)を前記第1の位置に保持する傾向を有し、前記部材、とりわけ時計ケース(1)は、取り外し自在の衝止要素(8)用の座部(10)を備え、前記衝止要素(8)は、2つの限界位置の間で移動可能な前記掛合具(3)の第1限界位置を画定し、前記一方の掛合具(3)は前記第1限界位置から前記掛合具(3)の頭部が横方向に押されることにより前記第2の位置に移動し、前記他方の掛合具(4)は、横断方向に配設され、前記2つの掛合具(3、4)の掛合時に前記一方の掛合具(3)の軸部(3c)を受ける切通し部(4b)によって2つの部分に分けられた、掛合要素(4a)を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記部材、とりわけ時計ケース(1)が、前記座部(10)に対する前記取り外し自在の衝止要素(8)の取付け手段(9)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記掛合具(3、4)が、前記掛合具の横断方向に対して直角に2つの前記掛合具(3、4)を係合させるときに、2つの限界位置の間で移動可能な前記掛合具(3)のその第1の限界位置からその第2の限界位置への移動を前記弾性戻し手段(5)の圧力に抗して可能とする鉤留め要素(3f、4f)を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記取外し自在の衝止要素(8)は、移動可能な前記掛合具(3)にアクセスすること、および前記弾性戻し手段(5)に抗して前記掛合具を移動させて前記限界位置の第2の位置に持っていくことを可能にするための開口部(8a)を備える、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
時計ケースまたはブレスレット片部であって、ブレスレット片部または時計ケースに用意された第2の掛合具(4)と連係することが意図された第1の掛合具(3)を備え、前記第1の掛合具は、前記第2の掛合具(4)と係合する第1の位置と、その第2の掛合具(4)から脱離する第2の位置の2つの限界位置の間で横断方向と直角な横方向に移動可能であり、前記弾性戻し手段(5)は、2つの限界位置の間で横方向に移動可能な前記第1の掛合具(3)を前記第1の位置に保持する傾向を有し、
前記時計ケース(1)は、取り外し自在の衝止要素(8)用の座部(10)を備え、前記衝止要素(8)は、2つの限界位置の間で移動可能な前記掛合具(3)の第1限界位置を画定し、前記第1の掛合具(3)は前記第1限界位置から前記掛合具(3)の頭部が横方向に押されることにより前記第2の位置に移動し、前記第1の掛合具(3)は、頭部(3b)と軸部(3c)とを備える押しボタン要素によって二分される掛合要素(3a)を備える、
時計ケースまたはブレスレット片部。
【請求項6】
時計ケースまたはブレスレット片部であって、ブレスレット片部または時計ケースに用意された第1の掛合具と連係することが意図された第2の掛合具を備え、前記第1の掛合具は、前記第2の掛合具(4)と係合する第1の位置と、その第2の掛合具(4)から脱離する第2の位置の2つの限界位置の間で横断方向と直角な横方向に移動可能であり、前記弾性戻し手段(5)は、2つの限界位置の間で横方向に移動可能な前記第1の掛合具(3)を前記第1の位置に保持する傾向を有し、
前記時計ケース(1)は、取り外し自在の衝止要素(8)用の座部(10)を備え、前記衝止要素(8)は、2つの限界位置の間で移動可能な前記掛合具(3)の第1限界位置を画定し、前記第1の掛合具(3)は前記第1限界位置から前記掛合具(3)の頭部が横方向に押されることにより前記第2の位置に移動し、前記第2の掛合具(4)は、横断方向に配設され、前記2つの掛合具(3、4)の掛合時に前記第1の掛合具(3)の軸部(3c)を受ける切通し部(4b)によって2つの部分に分けられた、掛合要素(4a)を備える、
時計ケースまたはブレスレット片部。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置を備える腕時計であって、連結具の一方がブレスレット片部と一体をなし、連結具の他方が時計ケースと一体をなす腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレスレットを取り付けなければならない部材、とりわけ時計ケース、とりわけ時計ケースに対する取外し自在のブレスレット連結装置であって、該ブレスレットおよび該部材の連結端部とそれぞれ一体をなす相補的な2つの掛合具を備える装置に関する。本発明はまた、その装置を備える腕時計にもかかわる。本発明はさらに、他の補完的掛合具と連係するように用意された掛合具を備える時計ケースにもかかわる。最後に、本発明は他の補完的掛合具と連係するように用意された掛合具を備えるブレスレット片部にもかかわる。
【背景技術】
【0002】
時計ケースのラグの間へのブレスレットの最も一般的な取付け法はバネ棒を使って行われるものである。このバネ棒は両端に固定ピンを備えており、一方のピンは、バネ棒の他方の筒状部の中に摺動可能に取り付けられたピストンと一体をなす。筒状部の中に取り付けられたコイルばねは、ピンを筒状凹所の外に突き出させる働きをする。筒状壁の開放端は、ピストンが筒状部の外に飛び出すのを妨げるようにピストンの挿入後に軽く内側に変形される。
【0003】
この取付け形態によるブレスレットの取付けおよび取外しには、ピストンを筒状部の中に押し戻して保持するための工具を使用する必要がある。こうした作業には一定の技量が要求される。また、バネ棒をラグの間に差し込んだとき、ばねがそのピンを押し込むことができるようにラグに設けられた穴を見つける必要がある。そのため、それは誰にでもできる作業というわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、この取付け形態の欠点に対処して、少なくとも部分的に対処して、ブレスレットの交換作業を誰にでもできるものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は基本的に、ブレスレットを取り付けなければならない部材または器具、とりわけ、請求項1で規定するように、時計ケースに対する取外し自在のブレスレット連結装置を対象とする。
【0006】
この装置では、この装置の掛合具は、たとえばブレスレットの長手X方向に対して横断方向であるようなZ方向に向けられており、掛合具の一方は、掛合具の他方と係合する第1の位置と、その他方の掛合具から脱離する第2の位置の2つの限界位置の間で横方向に、たとえばY方向に移動可能である。弾性戻し手段は、2つの限界位置の間で横方向に移動可能な掛合具をその第1の位置に保持する傾向を有する。
【0007】
好ましくは、時計ケースは、取外し自在の衝止要素の座部と、その座部に対するその衝止要素の取付け手段とを備えており、その取外し自在の衝止要素が2つの限界位置の間で移動可能な掛合具の第1の限界位置を画定する。
【0008】
本発明の有利な一実施形態によれば、掛合具は、掛合具の横断方向に対して直角に2つの掛合具を係合させるときに、2つの限界位置の間で移動可能な掛合具のその第1の限界位置からその第2の限界位置への移動を該弾性戻し手段の圧力に抗して生じさせることができるように鉤留め要素を備える。
【0009】
同じく有利には、取外し自在の衝止要素は、移動可能な掛合具にアクセスすること、および弾性戻し手段に抗して掛合具を移動させてその限界位置の第2の位置に持っていくことを可能にするための開口部を備える。
【0010】
この装置は単純であり、特別な工具も技量もなしに、各ユーザがブレスレットの取付けおよび取外しを行えるようにするものである。
【0011】
添付の図面は、本発明の対象装置の一実施形態を模式的かつ例示的に表したものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1の左側部断面の拡大部分断面図である。
【
図1B】
図1の右側部断面の拡大部分断面図である。
【
図2】
図1と同様の図であって、さらに別の2つの部分断面図を備える図である。
【
図3】
図1を反時計回りに90°回転させた拡大部分立面図である。
【
図3A】
図3の携帯時計のBBによる断面図である。
【
図3B】
図3の携帯時計のCCによる断面図である。
【
図4】時計ケースに対する取外し自在のブレスレット結合装置のうちの一方を分解した状態の斜視図である。
【
図5A】本発明による取外し自在の結合装置の一方の掛合具の拡大透視図である。
【
図5B】本発明による取外し自在の結合装置の一方の掛合具の拡大透視図である。
【
図6A】本発明による取外し自在の結合装置の他方の掛合具の拡大透視図である。
【
図6B】本発明による取外し自在の結合装置の他方の掛合具の拡大透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに図示し、以下に説明する実施形態は、携帯時計用ブレスレットの連結にかかわるものであるが、このような装置は、留め金など、時計ケース以外の部材や、さらには宝飾品に対してブレスレットを連結するために使用できることは自明である。
【0014】
図1および2は、両側それぞれにブレスレット片部2a、2bの端部が取外し自在に連結されるようにした時計ケース1を示したものである。
図1および2は、時計ケース1の左側に連結されたブレスレット片部2aの端部と、時計ケース1の右側から分離されたブレスレット片部2bの端部とを示したものである。
【0015】
本発明の対象である連結装置は
図4に示すとおりであり、
図5A、5Bと、6A、6Bに、2つの相補的掛合具3および4をそれぞれ個別に示す。
図1A、1B、2A、2Bおよび4に示すように、掛合具4は、ブレスレット片部2a、2bの端部の一方に挿入されるようになっている。掛合具3は、頭部3bと軸部3cとを備える押しボタン要素によって二分される掛合要素3aを備える。この軸部3cの下面は、戻しばね5(
図4)を受けるための円筒形の凹所3d(
図5B)を有する。時計ケース1のラグ間に設けられた矩形の凹所7の底に設けられた開口部の中にはスリーブ6が取り付けられるようになっている。この矩形の凹所は、掛合要素3aを受け、それを、たとえばZ方向に、ブレスレット2a、2bの長手方向Xに対して横断方向に、位置決めすることができるようになっている。スリーブ6の底と押しボタン軸部3cに設けられた凹所3dの底の間で圧縮される戻しばね5は、掛合具3を時計ケース1の外に向けて押す働きをする。
【0016】
掛合具3の行程を制限するため、押しボタン頭部3bは2つの横方向支持部3eを備える。これらの支持部は、戻しばね5の圧力を受けて衝止具8(
図4)の矩形の開口部8aの2つの対向する縁部に当接するようになっている。この衝止具8は、ケース1のラグ間に位置する座部10に収まるように成形され、時計ケース1のその座部に2つのねじ9で取り付けられる。
【0017】
それぞれのブレスレット片部2a、2bの端部に掛合具4が挿入される。この掛合具4は、ブレスレット2に対して横断方向に、たとえばZ方向に配設された掛合要素4aであって、掛合要素が掛合要素3に掛合されたときに掛合具3の押しボタン軸部3cを受ける切通し部4bによって2つの部分に分けられた掛合要素4aを備える。2つの掛合具3および4のこの組立てが可能となるように、掛合具は横断方向の凹所4c(
図6B)を備える。組立てを容易にして、ブレスレット2の長手方向に、ケース1に向かって押し込む操作で組立てが自動的に行われるようにするため、掛合具3および掛合具4のそれぞれの嵌合面3f、4fは面取りされており、それによって鉤留めにより組立てがなされることで、一方向への組立てが可能となる一方で、反対方向への分離が妨げられる。
【0018】
実際、分離は、
図2Bに示すように、押しボタンの頭部3bを押して、組立て具3を戻しばね6の圧力に抗して移動させること、とりわけY方向に横方向に移動させることでしか得ることはできない。好ましくは、押しボタンの頭部3bは衝止具8のプレートの厚さの中に埋もれさせ、過って押しボタンを操作することがないようにする。その場合、たとえばボールペンさえあれば、その先で押しボタンの頭部3bを操作することによって、組立て具4の凹所4cおよび組立て要素4aから組立て要素3aを外すことができる。
【0019】
この連結装置の設計により、ユーザは衝止具8を取り外す必要がない。衝止具は工場で設置されるものであり、掛合具3および戻しばねについても同様である。ユーザに行うことが求められる操作は、ブレスレットを取り外したいときに押しボタン3bを押すことだけである。ブレスレットを元に戻すときは、掛合具は鉤留めにより組み立てられるようになっているので、ブレスレットの長手軸に沿って時計ケース1の方に押し込むだけでよい。本発明の対象連結装置は、その設計および使用法の単純さのみならず、バネ棒による従来型の取付け法に匹敵する確実性の保証を与えるものである。
【0020】
上に説明した実施形態では、X、Y、Zそれぞれの軸は2つずつが直角をなす。それ以外の実施形態では、それらの軸は必ずしも互いに直角をなすわけではない。軸は互いにほぼ直角であることもできる。とりわけ、X軸とY軸は必ずしも直角をなす必要はない。
【0021】
1つの実施形態では、時計ケースは、ブレスレット片部に用意された第2の掛合具4と連係するようにされた第1の掛合具3を備え、第1の掛合具は、第2の掛合具4と係合する第1の位置と、その第2の掛合具4から脱離する第2の位置の2つの限界位置の間で横方向に移動可能であり、弾性戻し手段5は、2つの限界位置の間で横方向に移動可能な第1の掛合具3を該第1の位置に保持する傾向を有する。
【0022】
この実施形態では、ブレスレット片部は、時計ケースに用意された第1の掛合具と連係することが意図された第2の掛合具を備える。
【0023】
別の実施形態では、ブレスレット片部は、時計ケースに用意された第2の掛合具と連係するようにされた第1の掛合具を備え、第1の掛合具は、第2の掛合具と係合する第1の位置と、その第2の掛合具から脱離する第2の位置の2つの限界位置の間で横方向に移動可能であり、弾性戻し手段は、2つの限界位置の間で横方向に移動可能な第1の掛合具を該第1の位置に保持する傾向を有する。
【0024】
この実施形態では、時計ケースは、ブレスレット片部に用意された第1の掛合具と連係することが意図された第2の掛合具を備える。
【0025】
一実施形態では、腕時計は、ブレスレット片部と一体をなす第1の連結具と、時計ケースと一体をなす第2の連結具とを有する装置を備える。