特許第6374332号(P6374332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374332
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20180806BHJP
【FI】
   A63B53/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-38085(P2015-38085)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-158714(P2016-158714A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 利道
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−299519(JP,A)
【文献】 特開平03−077567(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0232663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部と、クラウン部と、ソール部と、サイド部とを有する中空構造の金属製のヘッド本体を備えるゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部の裏面には、その中央部に、周辺部よりも厚肉である略円形状の円形中央厚肉部が設けられるとともに、前記円形中央厚肉部の周囲に、この円形中央厚肉部に接続することなく離間して、前記円形中央厚肉部の円弧に沿うように円弧状に延びる周辺厚肉部が設けられ、前記周辺厚肉部に対して前記円形中央厚肉部の反対側に、前記フェース部の両側に位置して薄肉領域が更に設けられることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記円形中央厚肉部は、平坦状の上端面と、該上端面から周辺部の薄肉領域へと傾斜して延びる傾斜面とを有することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記周辺厚肉部は、平坦状の上端面と、該上端面から前記円形中央厚肉部の周辺部の前記薄肉領域と前記フェース部の両側に位置する前記薄肉領域の一方とに向けて傾斜して延びる傾斜面とを有することを特徴とする請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記円形中央厚肉部は、前記クラウン部側および前記ソール部側に位置する前記フェース部の周縁付近まで延び、前記周辺厚肉部がトウ側およびヒール側にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記周辺厚肉部の前記傾斜面の両側が前記フェース部の前記クラウン部側および前記ソール部側の周端縁に達するように延びることにより、前記周辺厚肉部が前記円形中央厚肉部の両側に振り分けて分離して設けられることを特徴とする請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記周辺厚肉部が前記円形中央厚肉部と同心的に延びることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記フェース部のスイートスポットがフェースセンターよりも上側で前記円形中央厚肉部に位置されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッドをシャフトの先端に止着して成ることを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、詳細には、中空構造のゴルフクラブヘッド、および、そのようなゴルフクラブヘッドを有するゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空構造の金属製ヘッドにおけるフェース部は、撓み易くすることで、打球時にボールの潰れが抑制され、これにより、ボール変形によるエネルギーロスを少なくして、飛距離の向上が図れることが知られている。したがって、飛距離の向上を図るためには、フェース部の中央領域を撓み易く構成すれば良いが、撓み易くするだけでは、フェース部の強度の低下を来す場合もある。そのため、従来から、フェース部の剛性や反発性を調整するべく、フェース部の裏面に厚肉部やリブを設けることが行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中空構造のゴルフクラブヘッドのフェース部の裏面に凹凸を設けて安定的な反発性能を有するように構成した偏肉フェースを伴うゴルフクラブヘッドが開示されている。具体的には、最も撓み易く強度が要求されるフェース部の中央部の裏面に、2つの中央肉厚部をトウ側とヒール側とにそれぞれ離間して設けるとともに、これらの2つの中央肉厚部からそれぞれフェース部の縁部に向けて傾斜の異なる2段階の傾斜面を延在させ、更に、2つの中央肉厚部からそれぞれクラウン側のフェース部縁部に向けて直線状のリブを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−66535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、フェース部の中央部の裏面を補強するための2つの中央肉厚部に直線状のリブが接続されているため、これらのリブによってフェース部全体の撓みが規制されてしまい、高い反発性能を得ることが難しくなる一方、リブによって応力集中が生じやすくなり、リブの直線に沿ってフェース部が割れ易くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、高い反発性能を可能にしつつ十分な強度も確保できるフェース部を備えるゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、フェース部と、クラウン部と、ソール部と、サイド部とを有する中空構造の金属製のヘッド本体を備えるゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部の裏面には、その中央部に、周辺部よりも厚肉である略円形状の円形中央厚肉部が設けられるとともに、前記円形中央厚肉部の周囲に、この円形中央厚肉部に接続することなく離間して、前記円形中央厚肉部の円弧に沿うように円弧状に延びる周辺厚肉部が設けられ、前記周辺厚肉部に対して前記円形中央厚肉部の反対側に、前記フェース部の両側に位置して薄肉領域が更に設けられることを特徴とする。
【0008】
上記構成では、最も撓み易く強度が要求されるフェース部の中央部の裏面に、この部位の強度を高めるための円形中央厚肉部が設けられるとともに、この円形中央厚肉部の周囲に、円形中央厚肉部に接続することなく離間して、円形中央厚肉部の円弧に沿うように円弧状に延びる周辺厚肉部が設けられるため、すなわち、リブなどによって中央円形厚肉部が周辺厚肉部と繋がらない分散型の厚肉部分布構造をとっているため、高い反発性能を可能にしつつ十分な強度も確保できる。
【0009】
具体的には、フェース部を所望の撓み性を有する所望の肉厚で形成しつつ、最も撓み易い中央部を円形中央厚肉部で補強することにより、高い反発性能を可能にしつつ十分な強度を確保できるが、この場合、中央部の円形中央厚肉部を囲むように肉薄部が配置されるようにすることで、撓みを大きくできるとともに、周辺部を更に周辺厚肉部によって撓みすぎないように補強することで、全体を効果的に撓ませつつその要求される剛性も確保できる。特に、リブなどによって中央円形厚肉部が周辺厚肉部と接続されないため、フェース部の撓みが必要以上に規制されず、所望の高い反発性能を実現できる。また、円形中央厚肉部が円形を成すとともに周辺厚肉部も円弧を成すため、打球時には、円(または円弧)に沿って応力が分散して作用し(応力集中が生じない)、円形(円弧)に沿って撓むこととなり、結果として、フェース部の割れを防止できる。この場合、円形中央厚肉部及び/又は周辺厚肉部は、平坦状の上端面と、該上端面から周辺部の薄肉領域へと傾斜して延びる傾斜面とを有していることが好ましい。そのようにすると、傾斜面によって応力が広範囲に分散してほぼ均一に伝達され、フェース部全体の撓み性を向上させつつフェース部の割れを効果的に防止できる。更に、円形中央厚肉部がクラウン部側およびソール部側に位置するフェース部の周縁付近まで延び、周辺厚肉部がトウ側およびヒール側にそれぞれ振り分けて設けられれば、フェース部が応力集中を伴うことなく広い面積にわたって大きく撓むことができるとともに、応力をほぼ同心的に円弧で広く受けることができるため、フェース部の割れを効果的に抑制できる。
【0010】
また、本発明では、上記構成を有するゴルフクラブヘッドをシャフトの先端に止着して成るゴルフクラブも提供される。なお、本明細書全体にわたって、「略円形」とは、真円以外に楕円形も含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い反発性能を可能にしつつ十分な強度も確保できるフェース部を備えるゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフクラブの正面図である。
図2図1のゴルフクラブのゴルフクラブヘッド部分の正面図である。
図3図2のA−A線に沿う断面図(縦断面図)である。
図4】(a)はゴルフクラブヘッドのフェース部の一部を形成するフェース部材の溶接形態の第1の例を示す斜視図であり、(b)はゴルフクラブヘッドのフェース部を含むフェース部材の溶接形態の第2の例を示す斜視図である。
図5】分かり易くするためにフェース部の裏側に形成された肉厚段差が実線で描かれた、図2のゴルフクラブヘッドのフェース部の正面図である。
図6】分かり易くするためにフェース部の裏側に形成された肉厚段差が実線で描かれた、フェース部の第1の変形例の正面図である。
図7】分かり易くするためにフェース部の裏側に形成された肉厚段差が実線で描かれた、フェース部の第2の変形例の正面図である。
図8】分かり易くするためにフェース部の裏側に形成された肉厚段差が実線で描かれた、フェース部の第3の変形例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るゴルフクラブの一実施形態について詳しく説明する。
ここで、図1図5は本発明に係るゴルフクラブの一実施形態を示し、図1はゴルフクラブの正面図、図2は、図1のゴルフクラブのゴルフクラブヘッド部分の正面図、図3は、図2のA−A線に沿う断面図(縦断面図)、図4の(a)はゴルフクラブヘッドのフェース部の一部を形成するフェース部材の溶接形態の第1の例を示す斜視図、図4の(b)はゴルフクラブヘッドのフェース部を含むフェース部材の溶接形態の第2の例を示す斜視図、図5は、分かり易く図示するためにフェース部の裏側に形成された肉厚段差が実線で描かれた、図2のゴルフクラブヘッドのフェース部の正面図である。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態に係るゴルフクラブ1は、金属やFRPで構成されたシャフト5の先端に、基準水平面Pに対して規定のライ角αおよびロフト角β(図3参照)に設定された中空構造のゴルフクラブヘッド7を止着して構成されている。この場合、ヘッド7を構成するヘッド本体7Aは、特に図2および図3に示されるように、打球が成されるフェース部7aと、フェース部7aの上縁から後方に延出するクラウン部(以下、トップともいう)7bと、フェース部7aの下縁から後方に延出するソール部7cと、クラウン部7bおよびソール部7cの縁部を繋ぐサイド部7dと、このサイド部7dの後方側に位置するバック部7eとを備えている。なお、サイド部7dは、バック部7eを経由するトウ部7fおよびヒール部7gを備えている。
【0015】
ヘッド本体7Aは、例えば、チタン合金(Ti-6Al-4V,Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al)、アルミ系合金、或いは、マグネシウム合金等を鋳造することで一体形成することができ、例えば図4の(a)に示されるように、そのフェース部7aを規定する周縁部よりも内側に所定形状の開口8aを形成しておき、該開口8aに板状のフェース部材8(フェース部7aの一部を形成する)を嵌合してその周囲を例えば溶接(図4の(a)にはその溶接線L2が破線で示される)により接合している。あるいは、図4の(b)に示されるように、フェース部7aを完全に含むカップ状のフェース部材8Aをクラウン部7b側で溶接してもよい(図4の(b)にはその溶接線L3が破線で示される)。
【0016】
この場合、ヘッド本体7Aについては、それを構成する各部材(フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部;外殻体)を個別に形成しておき、夫々を溶着、接着等によって固定したものであっても良いし、複数の部材、或いは各部材の部分的な構成要素を鋳造等で一体形成しておき、それらを溶着、接着等によって固定したものであっても良い。また、フェース部材は、例えば、チタン、チタン合金(Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al,Ti-6Al-4V,SP700,Ti-15V-6Cr-4Al,Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-30Nb-10Ta-5Zr等)を、プレス加工、CNC加工或いは鍛造等することで板状またはカップ状に一体形成されており、例えば、レーザ溶接等の溶接、ろう付け、接着等によって、前記外殻体に接合されている。
【0017】
ヘッド本体7Aには、シャフト5の先端を止着するホーゼル部9が一体形成されている。シャフト5は、ホーゼル部9に形成されるソケット9aのシャフト挿入孔(図示せず)を介して先端部を嵌合してホーゼル部9に止着されている。
【0018】
フェース部7aは、実際に打球が成される部分であり、図2に示されるように、正面から見た状態で上下を規定するトップ側エッジ7P、ソール側エッジ7Q、トウ側エッジ7R、および、ヒール側エッジ7Sによって囲まれた領域として定義される(これらのエッジは、打球面の周囲において、バック側に屈曲される稜線となっている)。なお、図2では、各エッジは、屈曲して示されているが、これらのエッジ(稜線)が湾曲状に形成されている場合には、その湾曲頂部によってエッジが規定される。なお、フェース部7aには、別途、スコアライン7L(図1参照)を形成しておいてもよく、また、フェース部7aが明確になるように、色彩などによって色分けしてもよい。
【0019】
フェース部7aには、例えば、クラウン・ソール方向(以下、上下方向と称することもある)に沿って湾曲するロールが形成されると共に、トウ・ヒール方向(以下、左右方向と称することもある)に沿って湾曲するバルジが形成されており、両方の湾曲部の頂部領域には、フェース部7aの中央(フェースセンター)Cが存在している。
【0020】
ここで、フェース部7aのフェースセンターCの位置の特定方法について説明する。
まず、ヘッドを基準水平面Pに対して規定のライ角でセットして(図2参照)、上記したように定義されるトウ側エッジ7Rおよびヒール側エッジ7Sによってフェース部を把握した際の、トウ・ヒール方向において最大となる幅(最大幅W)を特定する。そして、特定された最大幅Wの中間点において、基準水平面Pに対して垂線L1を引き、トップ側エッジ7Pおよびソール側エッジ7Qと交差する点を、それぞれ7P´,7Q´とする。この両点を結ぶ線分7P´,7Q´の中点がフェースセンターCとなる。
【0021】
図3および図5には、本実施形態のフェース部7aの構造が明確に示される。これらの図から分かるように、フェース部7aは、その裏面の中央部に、周辺部よりも厚肉である円形状の円形中央厚肉部20を有し、この円形中央厚肉部20の周囲には、円形中央厚肉部20に接続することなく離間して、少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の円弧状の周辺厚肉部22,24が円形中央厚肉部20の円弧に沿うように延在して設けられる(周辺厚肉部22,24の曲率の中心が円形中央厚肉部20が位置する内側にある)。なお、前述したように、図5はフェース部7aの正面図であるが、分かり易くするために、フェース部7aの裏面に形成された肉厚段差(稜線)が実線で描かれている。
【0022】
本実施形態において、円形中央厚肉部20および周辺厚肉部22,24は、鋳造等によってフェース部7aに一体形成されており、円形中央厚肉部20は、クラウン部7b側およびソール部7c側に位置するフェース部7aの周縁付近まで延び、周辺厚肉部22,24はトウ側およびヒール側にそれぞれ振り分けて設けられる。この場合、円形中央厚肉部20と各周辺厚肉部22,24との間の最短離間距離は例えば3mm〜7mm、例えば5mmに設定される。この離間距離は、両方の周辺厚肉部22,24において同じであってもよく、あるいは、異なってもよい。異なる場合には、その距離の差が3mm以内であることが好ましい。
【0023】
円形中央厚肉部20は、円形(あるいは、楕円形であってもよい)の平坦状の上端面20aと、上端面20aから周辺部の薄肉領域30へと傾斜して延びるリング状(外形が円形(あるいは、楕円形))の傾斜面20bとを有する。また、周辺厚肉部22,24は、円弧状に延びる平坦状の上端面22a,24aと、上端面22a,24aから周辺部の薄肉領域30,32へと傾斜して円弧状に延びる傾斜面22b,24b(例えば、傾斜面22,24bはその両側がフェース部7aの周縁(例えば、クラウン部7b側およびソール部7c側の周端縁)に達する)とを有する。この場合、円形中央厚肉部20を囲むように平面状を成す薄肉領域30の面に対する円形中央厚肉部20の傾斜面20bの傾斜角度は1.2°〜6°であることが好ましく、また、薄肉領域30の面に対する周辺厚肉部22,24の傾斜面22b,24bの傾斜角度は2°〜15°であることが好ましい。また、円形中央厚肉部20を囲む薄肉領域30の厚さは例えば2.1mmに設定され、フェース部7aの両側(トウ部7f側およびヒール部7g側)に位置される薄肉領域32の厚さは例えば2.0mmに設定される。
【0024】
また、薄肉領域30の厚さを含めた円形中央厚肉部20の厚さは、その上端面20aの部位で、例えば2.2mm〜2.8mmに設定される。また、薄肉領域30の厚さを含めた周辺厚肉部22,24の厚さは、その上端面22a,24aの部位で、例えば2.2mm〜2.7mmに設定され、特に、トウ部7f側に位置する周辺厚肉部22を薄くし、ヒール部7g側に位置する周辺厚肉部24を厚く設定することが好ましい。いずれにしろ、薄肉領域30,32の平面と厚肉部20,22,24の上端面20a,22a,24aとの高低差は0.3mm〜0.8mmに設定される。
【0025】
なお、本実施形態のゴルフクラブヘッド7(フェースブロック7a)において、撓み易いフェース部7aのスイートスポットSは、前述したフェースセンターCよりも上側(特にヒール部7g寄り)で円形中央厚肉部20に位置される(図2参照)。このようにフェースセンターCよりも上側のヒール部7g寄りで円形中央厚肉部20にスイートスポットSを位置させると、撓み易くて割れ易いスイートスポットSの部位で必要な強度を確保できるとともに、つかまりの良いヘッド(返りの良いヘッド)にすることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、最も撓み易く強度が要求されるフェース部7aの中央部の裏面に、この部位の強度を高めるための円形中央厚肉部20が設けられるとともに、この円形中央厚肉部20の周囲に、円形中央厚肉部20に接続することなく離間して、円形中央厚肉部20の円弧に沿うように延びる円弧状の周辺厚肉部22,24が設けられるため、言い換えると、リブなどによって中央円形厚肉部20が周辺厚肉部22,24と繋がらない分散型の厚肉部分布構造をとっているため、高い反発性能を可能にしつつ十分な強度も確保できる。
【0027】
すなわち、本実施形態では、フェース部7aを所望の撓み性を有する適切な肉厚で形成しつつ、最も撓み易い中央部を円形中央厚肉部20で補強しているため、高い反発性能を可能にしつつ十分な強度を確保できるが、その場合、中央部の円形中央厚肉部20を囲むように肉薄領域30を配置することで、撓みを大きくできるとともに、周辺部を更に周辺厚肉部22,24によって撓みすぎないように補強することで、全体を効果的に撓ませつつその要求される剛性も確保できる。特に、リブなどによって中央円形厚肉部20が周辺厚肉部22,24と接続されないため、フェース部7aの撓みが必要以上に規制されず、所望の高い反発性能を実現できる。
【0028】
また、円形中央厚肉部20が円形を成すとともに周辺厚肉部22,24も円弧を成すため、打球時には、円(または円弧)に沿って応力が分散して作用し(応力集中が生じない)、円形(円弧)に沿って撓むこととなり、結果として、フェース部の割れを防止できる。この場合、円形中央厚肉部20及び/又は周辺厚肉部22,24は、平坦状の上端面20a,22a,24bと、該上端面20a,22a,24bから周辺部の薄肉領域30,32へと傾斜して延びる傾斜面20b,22b,24bとを有しているため、傾斜面20b,22b,24bによって応力が広範囲に分散してほぼ均一に伝達され、フェース部7a全体の撓み性を向上させつつフェース部7aの割れを効果的に防止できる。更に、円形中央厚肉部20がクラウン7b部側およびソール部7c側に位置するフェース部7aの周縁付近まで延び、周辺厚肉部22,24がトウ部7f側およびヒール部7g側にそれぞれ振り分けて設けられているため、フェース部7aが応力集中を伴うことなく広い面積にわたって大きく撓むことができるとともに、応力をほぼ同心的に円弧で広く受けることができ、フェース部7aの割れを効果的に抑制できる。
【0029】
図6には、フェース部7aの第1の変形例が示されている。この場合も、図6は正面図であるが、分かり易くするためにフェース部7aの裏側に形成された肉厚段差が実線で描かれている(以下、図8まで同様)。
【0030】
図示のように、この第1の変形例に係るフェース部7aは、前述した実施形態の周辺厚肉部22,24の平坦状の上端面22a,24bが複数に分断されて円弧状に配列されている。すなわち、この第1の変形例では、円形中央厚肉部20の周囲に、円形中央厚肉部20に接続することなく離間して、2つの円弧状の周辺厚肉部22A,24Bが円形中央厚肉部20の円弧に沿うように延在して設けられ、また、周辺厚肉部22A(24B)は、円弧に沿って互いに離間して配列されるとともにそれぞれが円弧状に延びる平坦状の複数(図では3つ)の上端面22aa,22ab,22ac(24aa,24ab,24ac)と、各上端面22aa,22ab,22ac(24aa,24ab,24ac)から周辺部の薄肉領域30,32へと傾斜して円弧状に延びる傾斜面22b(24b)とを有する。
【0031】
なお、それ以外の構成は、前述した実施形態と同様であり、また、各厚肉部の厚さ、各傾斜面の傾斜角、および、円形中央厚肉部と各周辺厚肉部との間の離間距離などに関しても前述した実施形態と同様である。したがって、このような構成においても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
図7には、フェース部7aの第2の変形例が示されている。この変形例では、周辺厚肉部26が円形中央厚肉部20と同心的に延びている。すなわち、図示のように、円形中央厚肉部20の周囲には、円形中央厚肉部20に接続することなく離間して、円形中央厚肉部20と同心的に配置されるリング状の周辺厚肉部26が設けられ、また、この周辺厚肉部26は、リング状を成す平坦面としての上端面26aと、上端面26aから周辺部の薄肉領域30,32へと傾斜して延びるリング状または円弧状の傾斜面26bとを有する。このような構成によれば、周辺厚肉部26が円形中央厚肉部20と同心的に配置されるため、中央部を安定して撓ませることができる。
【0033】
図8には、フェース部7aの第3の変形例が示されている。この第3の変形例に係るフェース部7aは、第2の変形例の周辺厚肉部26の平坦状の上端面26aが複数に分断されて円弧状に配列されている。すなわち、この第3の変形例では、円形中央厚肉部20の周囲に、円形中央厚肉部20に接続することなく離間して、円形中央厚肉部20と同心的に配置されるリング状の周辺厚肉部26Aが設けられ、また、周辺厚肉部26は、1つの円に沿って互いに離間して配列されるとともにそれぞれが円弧状に延びる平坦状の複数(図では9個)の上端面26aa〜26aiと、各上端面26aa〜26aiから周辺部の薄肉領域30,32へと傾斜してリング状または円弧状に延びる傾斜面26bとを有する。このような構成においても、第2の変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。例えば、前述した実施形態では、各厚肉部は、傾斜面を有しているが、傾斜面を有さなくても構わない。また、円形中央厚肉部の周囲に設けられる周辺厚肉部の数も任意である。
【符号の説明】
【0035】
1 ゴルフクラブ
5 シャフト
7 ゴルフクラブヘッド
7a フェース部
7b クラウン部
7c ソール部
7d サイド部
7A ヘッド本体
20 円形中央厚肉部
20a 上端面
20b 傾斜面
22,24,22A,24A,26,26A 周辺厚肉部
22a,24a,26a 上端面
22b,24b,26b 傾斜面
30,32 薄肉領域
C フェースセンター
S スイートスポット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8