特許第6374334号(P6374334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374334
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】品質改良された米飯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20180806BHJP
【FI】
   A23L7/10 E
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-49398(P2015-49398)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-167999(P2016-167999A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2016年3月28日
【審判番号】不服2017-1741(P2017-1741/J1)
【審判請求日】2017年2月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591173213
【氏名又は名称】三和澱粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】藤居 実咲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 揚
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 槙原 進
【審判官】 佐々木 正章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−235480(JP,A)
【文献】 特開2012−65645(JP,A)
【文献】 特開2007−176908(JP,A)
【文献】 特開平8−116895(JP,A)
【文献】 特開平8−116893(JP,A)
【文献】 特開平7−289180(JP,A)
【文献】 特開2000−41598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00 - 7/104
A23L 5/00 - 5/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要成分としてデキストロース当量DE3.0の天然ワキシーコーンスターチ加水分解物であるデキストリンを含有し、米飯のほぐれ性、艶および食感の改良剤である粉末状または顆粒状の米飯用品質改良剤を炊飯後の米飯の表面で溶解するように振り掛けて添加する品質改良された米飯の製造方法であって、前記米飯用品質改良剤の添加量が、炊飯後の米飯100質量部に対して前記デキストリンを0.5〜3質量部添加する量である品質改良された米飯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯後の米飯のほぐれ性、その他の品質を改良する米飯用品質改良剤およびそのような品質改良剤を含有する米飯、並びに品質改良された米飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの日本人にとって主食である米飯は、近年の外食産業やコンビニエンスストア等の普及により、工場で大量生産された米飯加工品として接する機会が増えてきている。
【0003】
米飯加工品を工場で大量に製造するには、炊き上がった米飯をほぐれやすくしてから機械に導入し、予め機械への付着を防いだり成型や計量を容易にしておく必要がある。
そのために、従来の米飯加工品には、液状油脂に乳化剤等を加えて乳化させた炊飯用乳化油脂などが添加されていることが多い。
【0004】
米飯のほぐれ性を向上させる添加剤としては、液状油脂以外にもモノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤や、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチンなどの増粘多糖類が知られている。
【0005】
また、米飯のほぐれ性を向上させるために、澱粉質や糖質を添加することが知られており、炊飯工程前にデキストランを添加することが知られている(特許文献1)。また、難消化性デキストリンとペクチンを添加すること(特許文献2)、炊飯の前にエーテル化反応や酸化処理をした加工澱粉を添加すること(特許文献3)が知られている。
【0006】
澱粉分解物を添加して米飯のほぐれ性を向上させる場合に、10%水溶液に於ける浸透圧が約8〜100mosmolの澱粉分解物を添加することが知られており(特許文献4)、単糖類、二糖類、三糖類を含有しない澱粉分解物を添加すること(特許文献5)も知られている。
【0007】
さらに、米飯の食感や艶感を改良する方法として、DE10〜15程度に酵素変性したワキシースターチを精米に対し2〜10重量%添加する方法(特許文献6)、アミロースの比率が20重量%以上のうるち米に、DE2〜5程度に分解したアミロペクチン100%のでんぷんの中間分解物を添加する方法(特許文献7)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−328728号公報
【特許文献2】特開平9−75022号公報
【特許文献3】特開2002−65184号公報
【特許文献4】特開平7−135914号公報
【特許文献5】特開2000−41598号公報
【特許文献6】特開昭55−148068号公報
【特許文献7】特開平7−289180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記した特許文献1〜3に記載された発明は、米飯に本来含まれていない添加物や抽出物を利用するため、米飯特有の食感や食味が悪くなってしまう問題点があり、ほぐれ性の点でも十分なものではなかった。
【0010】
また、特許文献1、3に記載された発明では、炊飯工程の前に添加剤を添加するため、炊飯時の加熱により添加剤が変性して着色または変色したりし、炊飯時の容量や加熱スピードによって、所期した添加効果を安定的に得ることが困難になるという問題点もある。
【0011】
また、特許文献4、5に記載の方法にも、浸漬した米へ澱粉分解物を添加して一緒に炊き上げる方法、または炊き上がる直前の蒸らしの時間帯に合わせ酢とともに澱粉分解物を添加して寿司飯を作製する方法が開示されているが、上記同様に炊飯時の加熱により澱粉分解物の変性や着色、炊飯時の容量や加熱スピードによる所期した効果が不安定になるなどの問題がある。
【0012】
また、米飯加工品は家庭での炊飯と異なり、物流や保管を伴うため実際に喫食するまでの待機時間が長くなる。そのため、炊きたての食感をそのまま維持し、見た目にも艶感が保たれるようにする要望に応えることは容易ではなかった。
【0013】
需要者の種々の要望に応えるために、例えば増粘多糖類、酒粕やそのエキス、ビタミン剤、化工澱粉、ヘミセルロース、酵素、米麹といったもののように、本来は米飯の表面や内部に含まれない物質を使用すると、米飯本来の食感や食味ではなくなり、米飯特有の食感や艶感を維持するという点では、未だ十分満足できるものはなかった。
またこれらの添加剤には、米飯加工品に求められる「ほぐれ性」の効果はなかった。
【0014】
特許文献6、7には、浸漬した米へ澱粉分解物を添加して一緒に炊き上げる方法が開示されているが、炊飯時の加熱によって澱粉分解物が変性して着色または変色したり、炊飯時の容量や加熱スピードによって、安定した添加効果が得られないという問題を有していた。
【0015】
このように従来技術では多くの解決すべき問題点を有しているが、これらを全て解決できる手段はなく、本願の発明では、これらの問題を一挙に解決して米飯加工品を大量生産する機械との付着性や成型性を改善し、例えば計量も容易に行なえる程度に米飯のほぐれ性を向上させ、しかも米飯本来の食感や食味を維持できる米飯添加用の品質改良剤とし、また「ほぐれ性」と共に品質の改善された米飯とし、さらには「ほぐれ性」と共に食感や食味等の品質の改良された米飯の製造方法にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述のように本願の発明者らは、ほぐれ性と艶およびまたは食感の改良を両立できる米飯用品質改良剤を目的として鋭意検討し、その結果、米飯にも含まれる澱粉の加水分解物であるデキストリンを炊飯後の米飯に対して添加することにより、所期した目的を達成できることを見出したことにより、この発明を完成したものである。
すなわち、上記の課題を解決するために、この発明は、炊飯された米飯に対して添加する品質改良剤からなり、主要成分としてデキストリンを含有する米飯用品質改良剤としたのである。
【0017】
上記したように構成されるこの発明の米飯用品質改良剤は、通常、米飯に含まれる澱粉の加水分解物であるデキストリンを、炊飯後の米飯に添加することによって、水分を含んだ米飯粒の表面に液体の膜となって保持され、米粒同士の粘着性は適度に低減するので、米飯がほぐれやすくなり、咀嚼するときに口中でバラケやすくなって食べやすくなり、また米飯加工機械との付着性が抑制されて、食品加工時の作業性や成型性が改善される。
【0018】
また、デキストリンは、本来、炊飯された米飯にも含まれている澱粉の加水分解物であるから、異味や異臭はなく、米飯本来の食感や食味の品質を維持できると共に、米粒の表面に液体の膜が形成されて米粒表面の艶が良くなる。
【0019】
上記のような作用効果が充分に得られるように、上記デキストリンは、デキストロース当量DE2〜36のデキストリンであることが好ましい。このような適度の低分子量化されたデキストリンは、米飯粒の表面に液体の膜となって保持されるとき、その液体の低粘性によって、米粒同士の粘着性は適度に低減して米飯が適度にほぐれやすくなる。
このようにして、上記米飯用品質改良剤が、米飯のほぐれ性、艶および食感の改良剤として適用されるものになる。
【0020】
また、上記米飯用品質改良剤は、炊飯された米飯に対して添加する際に、米飯の表面に均一に溶け込みやすく、また均一に振り掛ける作業性が容易であるように、粉末状または顆粒状の米飯用品質改良剤であることが好ましい。
【0021】
上記米飯用品質改良剤の炊飯された米飯に対する添加量は、米粒の表面に存在する水分量に対応して容易に溶解するように、炊飯後の米飯100質量部に対してデキストリンを0.5〜3質量部添加する量であることが好ましい。
【0022】
上記した米飯用品質改良剤が炊飯後に添加されることにより、米飯がほぐれやすくなり、食べて咀嚼するときに口中でバラケやすくなって食べやすく、また米飯加工機械との付着性が抑制されて、食品加工時の作業性や成型性が改善された米飯になる。
【0023】
上記の米飯用品質改良剤を使用するに当たり、主要成分のデキストリンを加熱変性しないように、炊飯後の米飯に対して米飯用品質改良剤を添加することが好ましい。
【0024】
その際、米飯用品質改良剤の添加量は、炊飯後の米飯100質量部に対してデキストリンを0.5〜3質量部添加する量であることが、上記のように所期した作用効果として、米飯がほぐれやすく、咀嚼時にバラケやすくなって食べやすく、また米飯加工機械との付着性が抑制され加工時の作業性や成型性を改善し、かつ米飯本来の食感や食味の品質を維持するために好ましい。
すなわち、このような作用効果のある米飯用品質改良剤を、炊飯後の米飯に対して添加することにより、所期した作用効果を奏するように品質改良された米飯を製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明は、炊飯された米飯に対して添加する品質改良剤であり、その主要成分としてデキストリンを含有する米飯用品質改良剤としたので、米飯加工品を大量生産する機械との付着性や成型性を改善し、例えば計量も容易に行なえる程度に米飯のほぐれ性を向上させ、しかも米飯本来の食感や食味を維持できる米飯添加用の品質改良剤となる利点がある。
米飯用品質改良剤が炊飯後に添加された米飯は、また「ほぐれ性」と共に品質の改善された米飯となり、さらには米飯用品質改良剤を、炊飯後の米飯に対して添加することにより、「ほぐれ性」と共に食感や食味等の品質改良された米飯の製造方法になるという利点がある。
【0026】
またこのように、米飯のほぐれ性が向上し、艶、食感が長時間維持されるため、外食産業やコンビニエンスストア等で消費される米飯加工品の大量製造を容易にし、流通段階や保管中にも品質を維持することが可能になる利点もある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の米飯用品質改良剤は、主要成分としてデキストリンを含有し、炊飯後の米飯に添加して使用され、例えば炊飯後の蒸らし工程の米飯に添加して使用できる。
デキストリンは、原料の澱粉を酸もしくは酵素または両方を併用して加水分解して得られる。加水分解した後は、脱色、イオン精製、ろ過、乾燥を適宜に行なってもよい。
【0028】
原料澱粉としては、コメ、モチゴメ、トウモロコシ、モチトウモロコシ、アミロトウモロコシ、モロコシ、コムギ、オオムギ、サトイモ、リョクトウ、バレイショ、ユリ、カタクリ、チューリップ、カンナ、エンドウ、シワエンドウ、クリ、クズ、ヤマノイモ、カンショ、ソラマメ、インゲンマメ、サゴ、タピオカ(キャッサバ)、ワラビ、ハス、ヒシ、バナナ等の天然澱粉、及びこれらに物理処理を施した澱粉であり、前記処理としては、湿熱処理、加熱処理、老化処理等が例示される。上記した澱粉は1種を用いてもよく、または2種以上を混合して用いても良い。
【0029】
原料澱粉の加水分解に用いる酸としては、塩酸、シュウ酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。また、加水分解に用いられる酵素としては、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼなどが挙げられる。
【0030】
デキストリンを含有する米飯用品質改良剤は、炊飯後の米飯に添加して用いる。炊飯後の米飯に添加することで、米飯のほぐれ性、艶およびまたは食感の改良効果を最大限得ることができる。
デキストリンを含有する米飯用品質改良剤を炊飯時以前に添加すると、炊飯時の加熱によって米飯が着色される場合があり、またデキストリンの加熱変性によって所期した添加効果を安定して得られない場合がある。
【0031】
この発明の米飯用品質改良剤は、デキストリンを主要成分として含有するものであれば、どのような形態(剤型)であってもよいが、粉末状、あるいは顆粒状であることが望ましい。炊飯後の米飯に添加する際に、作業性が良く、スプレーなどの特別な装置を必要とせず、さらに米飯に対する濃度を高めながら、均一に添加することができるからである。
因みに、溶液状の米飯用品質改良剤では、米飯に過剰の水分等の液体を追加することになり、食味等にも好ましくないからである。
【0032】
米飯用品質改良剤には、デキストリン以外に、増粘多糖類、化工澱粉、化工澱粉分解物、難消化性デキストリン、乳化剤、ペプチド、タンパク質、脂質、油脂などを含有させることができる。ただし、炊飯後の米飯の食感や食味が悪くならないように、これらの成分の添加量はデキストリンよりも少ない含有量とするのが好ましい。
【0033】
米飯用品質改良剤は、含有するデキストリンの割合が、炊飯後の米飯およびまたは炊飯の蒸らし工程の米飯100質量部に対して0.5〜3質量部となるように添加することが望ましい。デキストリンの割合が0.5質量部より少ないと添加効果が小さくなり、所望とするほぐれ性、艶およびまたは食感の改良効果が得られない。デキストリンの割合が3質量部より多いと米飯に対する濃度が高くなり過ぎ、米飯表面に粘りが出てしまいほぐれ性が悪くなるからである。
【0034】
米飯用品質改良剤に用いられるデキストリンは、澱粉を加水分解したものであり、DE2〜36のものを用いることが望ましい。好ましくはDE2〜25が望ましく、さらに好ましくはDE2〜9が望ましい。
【0035】
DEが低すぎると、粘度が高くなって米飯に添加した際に、米飯表面に粘りが出てしまいほぐれ性が悪くなる。DEが高すぎると、甘味が大きくなり米飯の食味が変化してしまう。なお、DEは澱粉の分解程度を表す指標であり、Dextrose Equivalentの頭文字をとったものである。DEはソモギ変法により測定することができる(澱粉糖関連工業分析法11〜13ページ;澱粉糖技術部会編)。なお、この発明でいうデキストリンは、難消化性デキストリンや焙焼デキストリンを含まない。
【0036】
またデキストリンを含有する米飯用品質改良剤を添加した米飯に係る発明において、品質改良の対象となる米飯は、炊飯されたものであればどのような形態でもよく、米飯、寿司飯、炊き込みご飯、混ぜご飯などが挙げられる。さらに米飯を加工したピラフ、チャーハン、リゾット、雑炊、茶漬け、おにぎりなど、寿司飯を加工した握り寿司、ちらし寿司、いなり寿司などを含むものである。
【0037】
さらにデキストリンを含有する米飯用品質改良剤を炊飯後の米飯に添加する工程を含む米飯の製造方法に係る発明において、米飯用品質改良剤を添加する際に、米飯はほぐして均一にすることが好ましい。
【実施例】
【0038】
製造例1(デキストリン粉末A)
ワキシーコーンスターチ10kgに水を加えて混合して固形分38%のスラリーを調製し、水酸化ナトリウムにてpH6に調整した。次に、α−アミラーゼ(天野エンザイム社製:クライスターゼL−1)を3g添加し、90℃に加温して加水分解反応を行なった。その後、珪藻土ろ過、活性炭脱色、イオン交換処理を行い、スプレー乾燥してデキストリン粉末Aを得た。得られたデキストリン粉末AのDEは3.0であった。
【0039】
製造例2(デキストリン粉末B)
α−アミラーゼ(天野エンザイム社製:クライスターゼL−1)の量を7gとしたこと以外は、製造例1と全く同様にしてデキストリン粉末Bを得た。得られたデキストリン粉末BのDEは7.6であった。
【0040】
製造例3(デキストリン粉末C)
コーンスターチ10kgに水を加えて混合し、固形分38%のスラリーを調製し、水酸化ナトリウムにてpH6に調整した。次に、α−アミラーゼ(天野エンザイム社製:クライスターゼL−1)を9g添加し、90℃に加温して加水分解反応を行なった。その後、珪藻土ろ過、活性炭脱色、イオン交換処理を行い、スプレー乾燥してデキストリン粉末Cを得た。デキストリン粉末CのDEは10.6であった。
【0041】
製造例4(デキストリン粉末D)
ワキシーコーンスターチ10kgに水を加えて混合して固形分38%のスラリーを調製し、水酸化ナトリウムにてpH6に調整した。次に、α−アミラーゼ(天野エンザイム社製:クライスターゼL−1)を3g添加し、90℃に加温して加水分解反応を行なった。その後、スプレー乾燥してデキストリン粉末Dを得た。デキストリン粉末DのDEは3.0であった。
【0042】
[実施例58、比較例1、参考例1、2
生米750gを洗米し、水200gを加えて室温で1時間浸漬した。水切り後、全体の重量が1762.5gとなるように水を加え、電気炊飯器により炊飯、次いで蒸らしを行なって炊飯米を得た。ステンレスボウルに炊飯米400gを入れ、そこにデキストリン粉末4g(対米飯1%)を添加し、ゴムベラで30秒間混合し、デキストリン粉末を均一に分散させた。
その際の米飯のバラケ易さとゴムベラへの付着程度を、作製当日のほぐれ性として評価した。なお、デキストリン粉末を添加しない場合にも同様に評価した(比較例1)。結果を表1中に示した。
【0043】
さらに、得られた米飯をおにぎり成型用の型に80g詰め、三角形のおにぎりを作製した。成型したおにぎりの艶感および食感の柔らかさ、咀嚼時の「バラケ易さ」を評価した。おにぎりを密閉容器中で室温で1日間、15℃で1日間および2日間保管した後にも、同様の艶感と食感、「バラケ易さ」の評価を行ない、結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
<ほぐれ性>
◎:非常にほぐれ良い、○:ほぐれ良い、△:ほぐれ悪い、×:非常にほぐれ悪い
<艶>
◎:非常に艶がある、○:艶がある、△:艶がない、×:艶が無くくすんでいる
<食感>
◎:適度に軟らかい、○:やや軟らかい、△:やや硬い、×:非常に硬い
<バラケ易さ>
◎:非常にバラケ易い、○:バラケ易い、△:バラケ難い、×:非常にバラケ難い
【0046】
デキストリン粉末を添加すると、米飯のほぐれ性が良くなり、艶があって、軟らかく好ましい食感と咀嚼時のバラケ易さが得られた。また、室温および低温で保存した場合にもその効果が持続していることが分った。
【0047】
[実施例9〜11、比較例2、3]
実施例5と同様に炊飯米を作製し、ステンレスボウルに入れた炊飯米400gに対して、デキストリン粉末Aを2g、4g、12g(対米飯0.5%、1%、3%)添加して、実施例5〜8に記載のほぐれ性、艶、食感、バラケ易さの評価を行なった。また、デキストリン粉末を添加しない場合(比較例2)、デキストリン粉末Aを20g(対米飯5%)添加した場合(比較例3)にも同様の評価を行なった。結果を表2に示した。
【0048】
【表2】
【0049】
デキストリン粉末の添加量が0.5〜3%の場合には、米飯のほぐれ性が良くなり、艶があって、やわらかく好ましい食感と咀嚼時のバラケ易さが得られた。また、室温および低温で保存した場合にもその効果が持続していることが分った。
【0050】
[実施例1215、比較例4、参考例3、4
実施例5と同様に炊飯米を作製し、ステンレスボウルに入れた炊飯米400gに対して、デキストリン粉末4g(対米飯1%)、市販混ぜご飯の素(ミツカン製:おむすび山(登録商標)青菜)10gを添加して、実施例5、参考例1、2に記載のほぐれ性、艶、食感、バラケ易さの評価を行なった。デキストリン粉末を添加せずに混ぜご飯の素だけを添加した場合にも同様の評価を行なった(比較例4)。結果を表3に示した。
【0051】
【表3】
【0052】
表3に示される結果からも明らかなように、デキストリン粉末を添加すると、米飯のほぐれ性が良くなり、艶があって、やわらかく好ましい食感と咀嚼時のバラケ易さという品質改良効果が得られた。また、室温で保存した場合にもその効果が持続しており、家庭で混ぜご飯を作る際にもデキストリン粉末の添加が有効であることが判った。
【0053】
炊飯後の米飯にデキストリンを添加することにより、米飯特有の食感や食味を維持し、米飯のほぐれ性を向上させることができる。このことから、米飯加工品の大量生産時に生じる機械への付着や成型、計量の不良といった問題を解決でき、良質な米飯加工品の提供が可能となる。また、家庭用の混ぜご飯の素にデキストリンを添加することにより、ほぐれ易さや食感に優れた混ぜご飯を簡単に作ることができた。