(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374336
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/02 20140101AFI20180806BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
B23K26/02 A
H05K3/00 N
H05K3/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-57093(P2015-57093)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-175101(P2016-175101A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植野 泰延
(72)【発明者】
【氏名】西村 利弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一雄
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−156570(JP,A)
【文献】
特開平10−323785(JP,A)
【文献】
特開2002−361463(JP,A)
【文献】
特開2004−276101(JP,A)
【文献】
特表2012−502465(JP,A)
【文献】
特開2003−131714(JP,A)
【文献】
特開2001−223456(JP,A)
【文献】
特開平8−174256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の距離隔てた複数のレーザ照射系と、被加工物に設けられた複数の基準マークを読み取って前記レーザ照射系の各々の加工位置を補正するための補正情報を得るための基準マーク読取り部であって前記レーザ照射系毎に設けられるものとを有し、前記被加工物の加工範囲を前記レーザ照射系毎に分割するようにしたレーザ加工装置において、前記基準マーク読取り部の各々に対し対応するレーザ照射系の加工範囲よりも広い領域に亘って互いに一部の領域が重複するように前記基準マークを読み取らせ、前記レーザ照射系の各々による加工においては対応する前記基準マーク読取り部によって得られた補正情報を用いて加工するように制御する制御部を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
所定の距離隔てた複数のレーザ照射系による各々の加工位置を、被加工物に設けられた複数の基準マークを前記レーザ照射系毎に設けた基準マーク読取り部によって読取ることにより補正するようにしたレーザ加工方法において、前記基準マーク読取り部の各々による基準マークの読取りにおいては対応するレーザ照射系の加工範囲よりも広い領域に亘って互いに一部の領域が重複するように読取り、前記レーザ照射系の各々による加工においては対応する前記基準マーク読取り部によって得られた補正情報を用いて加工することを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、例えばプリント基板のような被加工物にレーザを使用して穴明け加工を行うためのレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザを使用した穴明け加工においては、例えば、特許文献1や2に開示されているように、プリント基板上に設けられた基準マークとなるアライメントマークを予め読取って設計値に対するずれ量を求め、加工位置の補正をするようになっている。
図3は上記の如きアライメントマークを有するプリント基板を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。図において、1は加工テーブル2に載置されたプリント基板、3はプリント基板1上に設けられたアライメントマークである。A1〜3、B1〜3、C1〜3、D1〜3のそれぞれはアライメントマーク3によって規定される加工エリアである。予め加工を行う前に、各加工エリアを規定する4個のアライメントマーク3の位置情報によって当該加工エリアでの補正情報を算出しテーブルに格納しておく。ある加工エリアを加工する場合は、対応する補正情報をテーブルから読み出して加工位置の補正を行うようになっている。
なお、ここでは同じ列に属する加工エリアをブロック、A1〜3の加工エリアが属する列をブロックA、B1〜3の加工エリアが属する列をブロックB、C1〜3の加工エリアが属する列をブロックC、D1〜3の加工エリアが属する列をブロックDと呼ぶことにする。従って、プリント基板1の加工領域は複数のアライメントマーク3によってブロック分けされていることになる。
【0003】
ところで、プリント基板上で所定の距離隔てた複数個所の加工を同時に行うことで高速化をはかったいわゆる多軸型のレーザ加工装置が知られており、
図4は2軸型レーザ加工装置のブロック図である。
このレーザ加工装置では、穴明け加工すべきプリント基板1を載置する加工テーブル2に対し、レーザ発振器4と二つのレーザユニット5と6を搭載する加工ユニット7が設けられ、加工テーブル2を加工ユニット7に対して相対的移動させることにより、プリント基板1の複数の加工エリアが順番に加工されるようになっている。一軸目となるレーザユニット5と二軸目となるレーザユニット6には、それぞれレーザ発振器4から出射されたレーザを受光し、そこからプリント基板1に照射することによって穴明けを行うレーザ照射系8とプリント基板1上のアライメントマーク等の必要情報を光学的に読取るためのCCDカメラ9が設けられる。
10は加工プログラムに従って加工テーブル2、レーザユニット4と5、レーザ発振器7の動作を制御する、例えばプログラム制御の処理装置によって実現される全体制御部である。全体制御部10は、CCDカメラ9にて読み取ったアライメントマークに基づいて、レーザユニット5、6が加工を行う際に用いる加工エリア毎の補正情報を算出して内部にあるテーブルに格納しておくようになっている。全体制御部10は、ここで説明する以外の制御機能も有し、図示されていない箇所にも接続されている。
【0004】
図5は、
図3に示したプリント基板を
図4に示した2軸型のレーザ加工装置で加工する場合を説明するための図である。一軸目と二軸目のレーザユニット5、6の軸間距離はブロック幅のちょうど2倍になっている。ブロックAとBを含む範囲P1、ブロックCとDを含む範囲P2とに分け、アライメントマーク3の読取り及び穴明け加工の両方について、範囲P1を一軸目のレーザユニット5、範囲P2を二軸目のレーザユニット6で行う。従って、レーザユニット5、6は、それぞれのCCDカメラで読み取ったアライメントマークに基づいた補正情報に基づいて、それぞれのレーザ照射系で穴明け加工を行うことができる。
【0005】
図6は、上記における加工の変遷図である。(a)は、一軸目のレーザユニット5でブロックA、これと同時に二軸目のレーザユニット6でブロックCが加工される状態を示す。(b)は、次の段階で一軸目のレーザユニット5でブロックB、これと同時に二軸目のレーザユニット6でブロックDが加工される状態を示す。
【0006】
図6は、一軸目と二軸目のレーザユニット5、6の軸間距離がブロック幅のちょうど2倍になっている場合であるが、
図7に示すようにプリント基板1が3つのブロックA、B、Cからなり、
図8に示すように一軸目と二軸目のレーザユニット5、6の軸間距離がブロック幅の1.5倍となって整数倍にならない場合もある。この場合、アライメントマークの読取り及び穴明け加工の両方について、レーザユニット5、6でどのように分担するのかが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2006-75932号公報
【特許文献2】特開平2010-240694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
所定の距離隔てた複数個所の加工を同時に行う多軸型のレーザ加工において、軸間距離が被加工物に設けられた基準マークで規定されるブロック幅の整数倍にない場合でも、補正情報を適切に求め、適用し、加工位置精度の高い穴明け加工ができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載のレーザ加工装置においては、所定の距離隔てた複数のレーザ照射系と、被加工物に設けられた複数の基準マークを読み取って前記レーザ照射系の各々の加工位置を補正するための補正情報を得るための基準マーク読取り部であって前記レーザ照射系毎に設けられるものとを有し、前記被加工物の加工範囲を前記レーザ照射系毎に分割するようにしたレーザ加工装置において、前記基準マーク読取り部の各々に対し対応するレーザ照射系の加工範囲よりも広い領域に亘って互いに一部の領域が重複するように前記基準マークを読み取らせ、前記レーザ照射系の各々による加工においては対応する前記基準マーク読取り部によって得られた補正情報を用いて加工するように制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載のレーザ加工方法においては、所定の距離隔てた複数のレーザ照射系による各々の加工位置を、被加工物に設けられた複数の基準マークを前記レーザ照射系毎に設けた基準マーク読取り部によって読取ることにより補正するようにしたレーザ加工方法において、前記基準マーク読取り部の各々による基準マークの読取りにおいては対応するレーザ照射系の加工範囲よりも広い領域に亘って互いに一部の領域が重複するように読取り、前記レーザ照射系の各々による加工においては対応する前記基準マーク読取り部によって得られた補正情報を用いて加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定の距離隔てた複数個所の加工を同時に行う多軸型のレーザ加工において、軸間距離が被加工物に設けられた基準マークで規定されるブロック幅の整数倍にない場合でも、補正情報を適切に求め、適用し、加工位置精度の高い穴明け加工ができるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例となる2軸型レーザ加工装置のブロック図である。
【
図3】アライメントマークを有するプリント基板を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図5】
図4に示したプリント基板を
図4に示した2軸型のレーザ加工装置で加工する場合を示す図である。
【
図7】3つのブロックA、B、Cからなるプリント基板を示す図である。
【
図8】一軸目と二軸目のレーザユニットの軸間距離がブロック幅の整数倍にならない場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
本発明の一実施例について説明する。
図1は、本発明の一実施例となる2軸型レーザ加工装置のブロック図である。
図8に示す一軸目と二軸目のレーザユニットの軸間距離がアライメントマークで規定されるブロック幅の1.5倍であるプリント基板を加工する場合を説明する。
図1において、
図4と同じものには同じ番号を付してあり、
図4と異なる点は、全体制御部10の内部に、レーザユニット5のための補正情報を格納しておくための第1テーブル11とレーザユニット6のための補正情報を格納しておくための第2テーブル12の二つのテーブルが設けられていることである。
【0014】
本実施例においては、全体制御部10の制御の下で以下のように動作する。
先ずは、加工を開始する前にレーザユニット5のCCDカメラ9によりブロックAとBから成る範囲L1にあるアライメントマーク3を読み取り、ブロックAとBの補正情報を算出し、第1テーブル11に格納しておく。次に、レーザユニット6のCCDカメラ9によりブロックBとCから成る範囲L2にあるアライメントマーク3を読み取り、ブロックBとCの補正情報を算出し、第2テーブル12に格納しておく。
従って、中間にあるブロックBについては、レーザユニット5と6の両方のCCDカメラ9により重複するようにアライメントマーク3を読み取り、それぞれに基づく補正情報を第1テーブル11、第2テーブル12の両方に格納しておくことになる。
次に、レーザユニット5と6による加工を開始するが、ブロックAとブロックBの左半分から成る範囲N1を加工するのはレーザユニット5で、ブロックBの右半分とブロックCから成る範囲N2を加工するのはレーザユニット6で行う。
プリント基板1の範囲N1を加工する場合は、レーザユニット5のための補正情報を格納しておくための第1テーブル11から読み出した補正情報を用い、レーザユニット5内のレーザ照射系8で加工する。また、プリント基板1の範囲N2を加工する場合は、レーザユニット6のための補正情報を格納しておくための第2テーブル12から読み出した補正情報を用い、レーザユニット6内のレーザ照射系8で加工する。
【0015】
図2は、この場合における加工の変遷図である。(a)は、一軸目のレーザユニット5でブロックAの左半分A−L、これと同時に二軸目のレーザユニット6でブロックBの右半分B−Rが加工される状態を示す。(b)は、一軸目のレーザユニット5でブロックAの右半分A−R、これと同時に二軸目のレーザユニット6でブロックCの左半分C−Lが加工される状態を示す。(c)は、一軸目のレーザユニット5でブロックBの左半分B−L、これと同時に二軸目のレーザユニット6でブロックCの右半分C−Rが加工される状態を示す。
従って、特にブロックBについて言えば、加工を行うレーザ照射系8が属するレーザユニット内の方のCCDカメラ9で読み取ったアライメントマーク3に基づいて算出した補正情報が用いられることになる。
【0016】
CCDカメラ9で読み取ったアライメントマーク3に基づいて算出される補正情報は、それが属する同一レーザユニット内のレーザ照射系8で加工することを前提に算出されるものである。従って、異なるレーザユニット内のレーザ照射系8で加工する場合に用いられると、加工位置の補正が正しく行われる保証はない。
以上の実施例によれば、各ブロックA、B、Cの穴明け加工においては、それぞれ加工を行うレーザ照射系8が属するレーザユニット5、6内のCCDカメラ9で読み取ったアライメントマーク3に基づく補正情報が用いられるので、加工位置精度の高い穴明け加工ができる。
【0017】
以上の実施例においては、2軸型レーザ加工装置において3個のブロックから成るプリント基板を加工する場合であるが、5個のブロックから成るプリント基板であっても良く、この場合、各アライメントマークの読取りは1軸当たり3ブロック、加工は1軸当たり2.5ブロック分担すれば良いことは、上記実施例から容易に類推できる。
また2軸以上の例えば4軸型レーザ加工装置で、6個のブロックから成るプリント基板を加工する場合は、各アライメントマークの読取りは1軸当たり2ブロック、加工は1.5ブロックずつ分担すれば良いことも同様に類推できる。
【0018】
以上、被加工物がプリント基板の場合の実施例を説明したが、本発明は加工位置を補正するための補正情報を得るための複数の基準マークによって加工領域がブロック分けされた被加工物をレーザ加工する場合に適用できる。
【符号の説明】
【0019】
1:プリント基板 2:加工テーブル 3:アライメントマーク 4:レーザ発振器
5、6:レーザユニット 7:加工ユニット 8:レーザ照射系
9:CCDカメラ 10:全体制御部 11:第1テーブル 12:第2テーブル