特許第6374337号(P6374337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374337
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】鉄道車両構体
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/04 20060101AFI20180806BHJP
   B61D 17/06 20060101ALI20180806BHJP
   B61D 17/08 20060101ALI20180806BHJP
   B61F 1/10 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B61D17/04
   B61D17/06
   B61D17/08
   B61F1/10
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-57837(P2015-57837)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-175559(P2016-175559A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年9月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕一
(72)【発明者】
【氏名】松島 千裕
(72)【発明者】
【氏名】奈良澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】能登 昭吉
(72)【発明者】
【氏名】上田 英樹
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−201313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00,17/04−17/08
B61F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、当該台枠に立設された側構体及び妻構体とを有し、
前記側構体の外板と前記妻構体の外板とが車両の角部で接合されており、
前記車両の前記角部における前記側構体と前記妻構体との内側に配置され、前記車両の上下方向に延在すると共に前記側構体と前記妻構体とに亘って架け渡された結合材が設けられており、
前記台枠の角部が面取り形状とされており、
前記結合材、前記側構体の前記外板及び前記妻構体の前記外板により、前記上下方向に延在する略三角中空構造が形成されている鉄道車両構体であって、
前記台枠の前記角部には、補填部材が取り付けられており、
前記補填部材は、前記上下方向から見て、前記側構体の前記外板と前記妻構体の前記外板との前記車両の前記角部における内側の形状に対応した外形を呈している、鉄道車両構体。
【請求項2】
前記補填部材の剛性は、前記台枠の剛性よりも低い、請求項1に記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記補填部材と前記台枠とは、溶接により接合されている、請求項1又は2に記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
台枠と、当該台枠に立設された側構体及び妻構体とを有し、
前記側構体の外板と前記妻構体の外板とが車両の角部で接合されており、
前記車両の前記角部における前記側構体と前記妻構体との内側に配置され、前記車両の上下方向に延在すると共に前記側構体と前記妻構体とに亘って架け渡された結合材が設けられており、
前記結合材、前記側構体の前記外板及び前記妻構体の前記外板により、前記上下方向に延在する略三角中空構造が形成されている鉄道車両構体であって、
前記台枠の角部は、前記台枠の当該角部以外の部分よりも剛性が低い、鉄道車両構体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両構体として、例えば特許文献1に記載された構造が知られている。特許文献1に記載の鉄道車両構体は、台枠の角部が面取り形状とされており、妻構体の外板と側構体の外板とが車両の角部で接合されており、妻構体と側構体との間に板材からなる結合材が架け渡されている。この鉄道車両構体は、結合材、妻構体の外板及び側構体の外板により、車両の上下方向に延在する略三角中空構造が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−201313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鉄道車両構体では、オフセット衝突時に、略三角中空構造によって妻構体の外板及び側構体の外板に対する衝撃を吸収すると共に、結合材によって衝突する車両同士を引き離す力を作用させ、車体の損傷の低減を図っている。このような効果を実現するための一構成として、従来の鉄道車両構体では、台枠の角部が面取り形状とされている。そのため、従来の鉄道車両構体では、車体において台枠の角部が欠けた外観となるため、意匠性について更なる改善の余地がある。また、従来の鉄道車両構体では、台枠の角部が角部を有していないため、妻構体の外板と側構体の外板とを車両の角部で接合するときに、外板同士の位置合わせが難しかった。
【0005】
本発明は、オフセット衝突時の車体の損傷を低減しつつ、意匠性及び製造時の作業性の向上を図ることができる鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る鉄道車両構体は、台枠と、当該台枠に立設された側構体及び妻構体とを有し、側構体の外板と妻構体の外板とが車両の角部で接合されており、車両の角部における側構体と妻構体との内側に配置され、車両の上下方向に延在すると共に側構体と妻構体とに亘って架け渡された結合材が設けられており、台枠の角部が面取り形状とされており、結合材、側構体の外板及び妻構体の外板により、上下方向に延在する略三角中空構造が形成されている鉄道車両構体であって、台枠の角部には、補填部材が取り付けられており、補填部材は、上下方向から見て、側構体の外板と妻構体の外板との車両の角部における内側の形状に対応した外形を呈している。
【0007】
この鉄道車両構体では、側構体の外板と妻構体の外板とが車両の角部で接合され、側構体と妻構体との間には結合材が架け渡されている。このような構成により、鉄道車両構体には、結合材、側構体の外板及び妻構体の外板より、車両の上下方向に延在する略三角中空構造が形成されている。補填部材は、面取り形状とされた台枠の角部に別部材として取り付けられているため、オフセット衝突時に、例えば、台枠の角部の面に沿って外れる。したがって、オフセット衝突時に、補填部材が他の車両に引っ掛かることを抑制できる。これにより、鉄道車両構体では、略三角中空構造によって側構体の外板及び妻構体の妻外板に対する衝撃を吸収すると共に、結合材によって衝突する車両同士を引き離す力を作用させ、車体の損傷の低減を図ることができる。
【0008】
また、鉄道車両構体では、面取り形状とされている台枠の角部に補填部材が取り付けられている。これにより、台枠の角部が欠けた外観となることを回避でき、意匠性の向上を図ることができる。また、補填部材は、車両の上下方向から見て、側構体の外板と妻構体の外板との角部における内側の形状に対応した外形を呈している。これにより、側構体の外板と妻構体の外板とを接合するときに、補填部材を基準として用いることができる。したがって、側構体の側外板と妻構体の妻外板との角部における位置合わせを容易に行うことができ、製造時の作業性の向上が図れる。
【0009】
一実施形態においては、補填部材の剛性は、台枠の剛性よりも低くてもよい。この構成によれば、オフセット衝突時に、補填部材が破損し易い。そのため、オフセット衝突時に、補填部材に他の車両が引っ掛かることを抑制できる。したがって、補填部材が、車両同士を引き離す作用を阻害することを抑制できる。
【0010】
一実施形態においては、補填部材と台枠とは、溶接により接合されていてもよい。この構成により、台枠と補填部材とを確実に接合しつつ、オフセット衝突時には台枠から外れ易くすることができる。したがって、補填部材が、車両同士を引き離す作用を阻害することを抑制できる。
【0011】
本発明の一側面に係る鉄道車両構体は、台枠と、当該台枠に立設された側構体及び妻構体とを有し、側構体の外板と妻構体の外板とが車両の角部で接合されており、車両の角部における側構体と妻構体との内側に配置され、車両の上下方向に延在すると共に側構体と妻構体とに亘って架け渡された結合材が設けられており、結合材、側構体の外板及び妻構体の外板により、上下方向に延在する略三角中空構造が形成されている鉄道車両構体であって、台枠の角部は、台枠の当該角部以外の部分よりも剛性が低い。
【0012】
この鉄道車両構体では、側構体の外板と妻構体の外板とが車両の角部で接合され、側構体と妻構体との間には結合材が架け渡されている。このような構成により、鉄道車両構体には、結合材、側構体の外板及び妻構体の外板より、車両の上下方向に延在する略三角中空構造が形成されている。台枠の角部は、台枠の当該角部以外の部分よりも剛性が低い。これにより、オフセット衝突時には、台枠の角部が破損し易くなっている。したがって、オフセット衝突時に、台枠の角部が他の車両に引っ掛かることを抑制できる。これにより、鉄道車両構体では、略三角中空構造によって側構体の外板及び妻構体の妻外板に対する衝撃を吸収すると共に、結合材によって衝突する車両同士を引き離す力を作用させ、車体の損傷の低減を図ることができる。
【0013】
また、鉄道車両構体では、台枠が面取りされた形状ではないため、従来のように台枠の角部が欠けた外観となることを回避でき、意匠性の向上を図ることができる。また、側構体の外板と妻構体の外板とを接合するときに、台枠の角部を基準として用いることができる。したがって、側構体の側外板と妻構体の妻外板との角部における位置合わせを容易に行うことができ、製造時の作業性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オフセット衝突時の車体の損傷を低減しつつ、意匠性及び製造時の作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る鉄道車両構体を示す斜視図である。
図2図2(a)は、鉄道車両構体の角部を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示す角部の分解斜視図である。
図3図3は、図2(a)におけるIII−III線に沿った断面構成を示す図である。
図4図4は、図2(a)におけるIV−IV線に沿った断面構成を示す図である。
図5図5(a)は、補填部材を前方から見た斜視図であり、図5(b)は、補填部材を後方から見た斜視図である。
図6図6は、補填部材が取り付けられる台枠を示す斜視図である。
図7図7は、車両の角部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る鉄道車両構体を示す斜視図である。図1に示されるように、鉄道車両構体1は、台枠3と、側構体5と、屋根構体7と、妻構体9と、を備えている。鉄道車両構体1は、台枠3、側構体5、屋根構体7、及び妻構体9が相互に接合されることにより、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
【0018】
台枠3は、車両の床部を構成する構体として鉄道車両構体1の底部に配置されている。側構体5及び妻構体9は、車両の側部を構成する構体として、台枠3の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。側構体5には、乗客及び乗員等が乗り降りするためのドア部4が複数(例えば3ヶ所)設けられている。
【0019】
ドア部4,4間と側構体5の両端部とには、窓部6が設けられている。妻構体9は、乗客及び乗員等が車両間を行き来するための出入口部8が設けられている。屋根構体7は、車両の屋根部を構成する構体であり、車両の構体の上部に空間に蓋をするように配置されている。車両の屋根構体7には、上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナー、及び、パンタグラフ(いずれも図示しない)等を備えている。
【0020】
続いて、鉄道車両構体1の角部10について詳細に説明する。図2(a)は、鉄道車両構体の角部を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示す角部の分解斜視図である。図3は、図2(a)におけるIII−III線に沿った断面構成を示す図である。図4は、図2(a)におけるIV−IV線に沿った断面構成を示す図である。
【0021】
図2(a)、図2(b)及び図3に示されるように、鉄道車両構体1の角部10は、側構体5の側外板20と、妻構体9の妻外板30と、第1柱40と、第2柱50と、結合材60と、により構成されている。
【0022】
側構体5の側外板20と妻構体9の妻外板30とは、角部10において、互いに固定されている。妻外板30は、側構体5側の端部が側構体5の延在方向に沿うように、妻外板30の延在方向に略直行する方向において外側に屈曲した屈曲部32を有している。側構体5の側外板20と妻構体9の妻外板30とは、妻外板30の屈曲部32が側構体5の側外板20の内面20aに対向(当接)するように配置され、溶接により接合されている。
【0023】
第1柱40は、車両の上下方向に延在する部材である。第1柱40は、側構体5の妻構体9側の端部に配置されている。第1柱40は、ステンレス製である。図3に示されるように、第1柱40は、頂部42と、頂部42の両端から頂部42の延在方向に直交する方向に延在する一対のウェブ部44a,44bと、一対のウェブ部44a,44bのそれぞれの端部から外側に頂部42と略平行に張り出す一対のフランジ部46a,46bと、を有している。第1柱40は、断面がハット形状を呈している。第1柱40は、側外板20の内面20aに固定されている。具体的には、第1柱40は、フランジ部46a,46bが側外板20の内面20aに溶接されることにより、側外板20に固定されている。
【0024】
第2柱50は、車両の上下方向に延在する部材である。第2柱50は、妻構体9の側構体5側の端部に配置されている。第2柱50は、ステンレス製であり、互いに略平行に延在する平坦部52a,52bと、一方の平坦部52aの端部と他方の平坦部52bの端部とを連結すると共に、平坦部52a,52bの延在方向に直交する方向に延在する連結部54と、を有している。第2柱50は、断面が略Z形状を呈している。第2柱50は、妻外板30の内面30aに固定されている。具体的には、第2柱50は、平坦部52aが妻外板30の内面30aに溶接されることにより、妻外板30に固定されている。第2柱50の平坦部52bは、妻構体9に配置された骨材9aに溶接により固定されている。
【0025】
結合材60は、第1柱40と第2柱50とに架け渡されている。結合材60は、第1部材62と、第2部材64と、を有している。第1部材62は、板材であり、台枠3の下端部から側外板20の裾絞り部22付近まで車両の上下方向に延在している。第1部材62は、台枠3に溶接により接合されている。第2部材64は、板材であり、第1部材62の上端部から屋根構体7まで車両の上下方向に延在している。第1部材62と第2部材64とは、溶接により接合(連結)されている。
【0026】
第1部材62は、第1部分62aと、第2部分62bと、第3部分62cと、有している。第1部分62a、第2部分62b及び第3部分62cのそれぞれは、板状を呈している。第2部分62bは、第1部分62aの幅方向の一端部に設けられており、第1部分62aに対して所定の角度を成して屈曲している。第3部分62cは、第1部分62aの幅方向の他端部に設けられており、第2部分62bと同様に、第1部分62aに対して所定の角度を成して屈曲している。
【0027】
第2部材64は、第1部分64aと、第2部分64bと、第3部分64cと、を有している。第1部分64a、第2部分64b及び第3部分64cのそれぞれは、板状を呈している。第1部分64aの幅寸法は、第1部材62の第1部分62aの幅寸法と同等である。第2部分64bは、第1部分64aの幅方向の一端部に設けられており、第1部分64aに対して所定の角度を成して屈曲している。第3部分64cは、第1部分64aの幅方向の他端部に設けられており、第2部分64bと同様に、第1部分64aに対して所定の角度を成して屈曲している。
【0028】
上記構成を有する結合材60は、第1柱40を介して側外板20に固定されていると共に、第2柱50を介して妻外板30にそれぞれ固定されている。第2部材64は、第2部分64bが第1柱40の頂部42に溶接により固定されていると共に、第3部分64cが第2柱50の平坦部52aに溶接により固定されている。図2(b)及び図3に示されるように、第1部材62の第1部分62aの外面62sと第2部材64の第1部分64aの外面64sとは、略面一となっている。
【0029】
図4に示されるように、台枠3の角部3Kは、面取り形状となっている。台枠3の角部3Kは、結合材60における第1部材62の第1部分62aの外面62sを含んで構成されている。すなわち、台枠3は、第1部材62の一部を含んで構成されている。台枠3の角部3Kは、結合材60の第2部材64の第1部分64aの外面64sと略面一とされている。このような構成により、鉄道車両構体1の角部10には、結合材60、妻外板30及び側外板20により車両の上下方向に延在する略三角中空構造Sが形成されている。
【0030】
本実施形態では、図2(b)に示されるように、台枠3の角部3Kに補填部材70が設けられている。以下、補填部材70について詳細に説明する。図5(a)は、補填部材を前方から見た斜視図であり、図5(b)は、補填部材を後方から見た斜視図である。
【0031】
補填部材70は、ステンレス製である。補填部材70は、上部72と、底部74と、2つの側部76,78と、を有している。上部72、底部74及び側部76,78のそれぞれは、板材である。上部72、底部74及び側部76,78それぞれの厚みは、略同等である。
【0032】
図4に示されるように、補填部材70は、車両の上下方向から見て、側構体5の側外板20と妻構体9の妻外板30との車両の角部10における内側の形状に対応した外形を呈している。具体的には、補填部材70は、図5(a)及び図5(b)に示されるように、三角柱状を呈している。詳細には、上部72及び底部74は、略三角形状を呈している。上部72及び底部74は、互いに対向する位置に配置されている。側部76,78は、略矩形状を呈しており、上部72と底部74とを連結している。側部76,78は、上部72及び底部74の一角部において、端部が互いに交わっている。補填部材70は、各部が例えば溶接により接合されることで、内部に中空部Hが成されている。また、補填部材70は、上部72、底部74及び側部76,78の各部の縁により、略矩形状の開口部70aが形成されている。
【0033】
補填部材70の側部76の内面76aには、補強部材80が設けられている。補強部材80は、ステンレス製であり、板材である。補強部材80は、例えば、略矩形状を呈している。補強部材80は、例えば、溶接により側部76に固定されている。図7に示されるように、補強部材80は、補填部材70が台枠3に取り付けられた状態において、側構体5側から見たときに、側外板20の下端部と重なる位置に配置されている。図7に示されるように、補強部材80には、補填部材70と側外板20とを接合する溶接部Wが形成される。
【0034】
補填部材70の底部74には、孔84が設けられている。孔84は、例えば円形状を呈しており、底部74を貫通して形成されている。この孔84は、例えば、補填部材70内に水等の液体、或いは異物が入った場合に、それらを外部に排出するために用いられる。
【0035】
上記構成を有する補填部材70は、台枠3(第1部材62)よりも剛性が小さい。すなわち、補填部材70は、外部から衝撃を与えられたとき強度が台枠3の強度よりも小さく、台枠3に比べて破損し易い。補填部材70の剛性を台枠3の剛性よりも小さくする方法としては、例えば、補填部材70を構成する各部の厚みを小さくする。
【0036】
続いて、補填部材70の台枠3への取り付けについて説明する。最初に、補填部材70が取り付けられる台枠3の角部10の構成について説明する。図6は、補填部材が取り付けられる台枠を示す斜視図である。
【0037】
図6に示されるように、台枠3は、例えば、縁部が2重構造を有している。具体的には、台枠3は、内側部材3aと、外側部材3bと、を有している。内側部材3aは、鉄製であり、外側部材3bは、ステンレス製である。内側部材3a及び外側部材3bは、台枠3の縁部に沿って延在している。外側部材3bは、内側部材3aの外側に配置されており、台枠3の外面を形成している。内側部材3aは、断面が略U字形状を呈している。台枠3の角部10では、内側部材3aは、外側部材3bよりも端部3eが突出している。
【0038】
上記構成を有する台枠3に補填部材70を取り付けるときには、補填部材70の開口部70aが台枠3の角部3Kを臨むように位置させる。次に、補填部材70を台枠3に取り付ける。続いて、補填部材70と台枠3とを接合する。具体的には、補填部材70の側部76,78の縁と内側部材3aとの境界部分に、タック溶接を行い、非連続な溶接部を形成する。図7に示されるように、補填部材70と台枠3(外側部材3b)との接合部分には、溶接部を覆うようにシリコン等の封止材Eを設けてもよい。
【0039】
鉄道車両構体1を製造する際には、台枠3に補填部材70を取り付けた後に、側外板20と妻外板30とを取り付ける。具体的には、側外板20と妻外板30とを準備し、鉄道車両構体1の角部10において、側外板20の端部と妻外板30の端部とを接合する。kのとき、補填部材70を基準に、補填部材70の角部において側外板20の端部と妻外板30の端部とが合わさるように、側外板20及び妻外板30の位置決めを行う。側外板20及び妻外板30の位置を決定すると、側外板20及び妻外板30を接合すると共に、側外板20及び妻外板30と台枠3とを溶接により接合する。更に、側外板20及び妻外板30と補填部材70とを溶接により接合する。このとき、補填部材70に設けられた補強部材80の配置された位置に溶接部Wが形成されるように、溶接を行う。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両構体1は、側構体5の側外板20と妻構体9の妻外板30とが車両の角部10で接合され、側構体5と妻構体9との間には結合材60が架け渡されている。このような構成により、鉄道車両構体1には、結合材60、側構体5の側外板20及び妻構体9の妻外板30により、車両の上下方向に延在する略三角中空構造Sが形成されている。補填部材70は、面取り形状とされた台枠3の角部3Kに別部材として取り付けられているため、オフセット衝突時に、結合材60における第1部材62の第1部分62aの外面62sに沿って外れる(破損する)。したがって、オフセット衝突時に、補填部材70が他の車両に引っ掛かることを抑制できる。これにより、鉄道車両構体1では、略三角中空構造Sによって側構体5の側外板20及び妻構体9の妻外板30に対する衝撃を吸収すると共に、結合材60によって衝突する車両同士を引き離す力を作用させ、車体の損傷の低減を図ることができる。
【0041】
本実施形態の鉄道車両構体1では、面取り形状とされている台枠3の角部3Kに補填部材70が取り付けられている。これにより、台枠3の角部3Kが一部欠けた外観となることを回避でき、意匠性の向上を図ることができる。また、補填部材70は、車両の上下方向から見て、側構体5の側外板20と妻構体9の妻外板30との角部10における内側の形状に対応した外形を呈している。これにより、側構体5の側外板20と妻構体9の妻外板30とを接合するときに、補填部材70を基準として用いることができる。したがって、側構体5の側外板20と妻構体9の妻外板30との角部10における位置合わせを容易に行うことができ、製造時の作業性の向上が図れる。
【0042】
本実施形態では、補填部材70の剛性は、台枠3(第1部材62)の剛性よりも低い。この構成によれば、オフセット衝突時に、補填部材70が破損し易い。そのため、オフセット衝突時に、補填部材70に他の車両が引っ掛かることを抑制できる。したがって、補填部材70が、車両同士を引き離す作用を阻害することを抑制できる。
【0043】
本実施形態では、補填部材70と台枠3とは、非連続溶接により接合されている。この構成により、台枠3と補填部材70とを確実に接合しつつ、オフセット衝突時には台枠3から補填部材70を外れ易くすることができる。したがって、補填部材70が、車両同士を引き離す作用を阻害することを抑制できる。
【0044】
本実施形態では、補填部材70は、側外板20及び妻外板30と接合されている。補填部材70が設けられていない場合、側外板20及び妻外板30の下端部は、互いに接合されているのみであり、他の部材に接合されていない。この場合、側外板20及び妻外板30にしわ(歪み)が生じることがある。本実施形態では、側外板20及び妻外板30の下端部が補填部材70に接合されるため、側外板20及び妻外板30にしわが生じることを抑制できる。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、補填部材70がステンレス製であり、内部に中空部Hが設けられている形態を一例に説明したが、補填部材はこれに限定されない。補填部材の材料としては、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)又はゴム等の樹脂性であってもよい。ゴム等により補填部材を形成する場合には、中空部は設けられていなくてもよい。要は、補填部材の剛性が台枠3の剛性よりも低ければよい。
【0046】
上記実施形態では、台枠3と補填部材70とを非連続溶接により接合する形態を一例に説明したが、台枠3と補填部材70との接合方法はこれに限定されない。台枠3と補填部材70とは、車両の走行時等において補填部材70が台枠3から外れるといった事態が生じないと共に、オフセット衝突時(所定の応力が加えられたとき)には台枠3から補填部材70が外れるように接合されていればよい。
【0047】
上記実施形態では、第1柱40及び第2柱50が設けられている形態を一例に説明したが、第1柱40及び第2柱50は設けられていなくてもよい。この場合、結合材60が側外板20及び妻外板30のそれぞれに直接接合される。また、第1柱40だけが設けられていてもよいし、第2柱50だけが設けられていてもよい。
【0048】
上記実施形態では、面取り形状とされた台枠3の角部3Kに台枠3とは別部材である補填部材70が取り付けられた形態を一例に説明した。しかし、台枠3の角部が上記補填部材と同様の機能を有するように構成されていてもよい。
【0049】
具体的には、例えば図6に示される構成において、内側部材3a及び外側部材3bが角部で交わるように延在して、台枠3の角部が形成されている。この構成において、結合材60の第1部材62の第1部分62aよりも外側に位置する台枠の角部は、その他の部分よりも剛性が低い。台枠の角部の剛性を、台枠の他の部分の剛性よりも低くする方法としては、例えば、台枠の角部を構成する部材の厚みを、他の部分の厚みよりも小さくする。
【0050】
このような構成により、台枠の角部は、オフセット衝突時に容易に潰れる(破損する)。したがって、オフセット衝突時に、台枠3の角部が他の車両に引っ掛かることを抑制できる。これにより、他の形態の鉄道車両構体では、略三角中空構造によって側構体の外板及び妻構体の妻外板に対する衝撃を吸収すると共に、結合材によって衝突する車両同士を引き離す力を作用させ、車体の損傷の低減を図ることができる。
【0051】
また、他の形態の鉄道車両構体では、台枠が面取りされた形状ではないため、従来のように台枠の角部が欠けた外観となることを回避でき、意匠性の向上を図ることができる。また、側構体の外板と妻構体の外板とを接合するときに、台枠の角部を基準として用いることができる。したがって、側構体の側外板と妻構体の妻外板との角部における位置合わせを容易に行うことができ、製造時の作業性の向上が図れる。
【0052】
上記実施形態では、各部がステンレス製である形態を一例に説明したが、各部の材料はステンレスに限定されない。各部の材料としては、鋼、アルミ合金、或いはそれらの組合せを用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…鉄道車両構体、3…台枠、3K…角部、5…側構体、9…妻構体、10…角部、20…側外板、30…妻外板、60…結合材、70…補填部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7