(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374347
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20180806BHJP
F16B 21/08 20060101ALI20180806BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20180806BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20180806BHJP
F16B 5/12 20060101ALI20180806BHJP
F16B 5/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
F16B5/10 H
F16B21/08
F16B5/06 R
F16B5/07 D
F16B5/12 R
F16B5/00 D
F16B5/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-100456(P2015-100456)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-217390(P2016-217390A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】直井 創
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−070693(JP,A)
【文献】
特開2013−228068(JP,A)
【文献】
特開2013−228069(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/065121(WO,A1)
【文献】
実開平03−098309(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12
F16B 21/00−21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貫通孔が形成された上層パネルと、前記第1貫通孔に挿通される突起が突設された下層パネルとを積層した状態で互いに連結するべく、前記突起に設けられた第2貫通孔に挿通されるクリップであって、
前記クリップが挿通される方向であるクリップ挿通方向に沿って延在する本体を備え、前記本体は、前記クリップが前記両パネルに取り付けられた取り付け状態において前記第2貫通孔を画定する前記突起の内周面と前記上層パネルとに保持される中央部と、前記クリップ挿通方向に沿って前記中央部に隣接する両端部とを備え、
前記両端部の下面が、前記中央部から遠ざかるにつれて上方に向かうように傾斜又は湾曲しており、
前記中央部の下面には、前記クリップ挿通方向に沿って突条が形成され、前記突条は、前記第1貫通孔の前記クリップ挿通方向の長さよりも長いことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
第1貫通孔が形成された上層パネルと、前記第1貫通孔に挿通される突起が突設された下層パネルとを積層した状態で互いに連結するべく、前記突起に設けられた第2貫通孔に挿通されるクリップであって、
前記クリップが挿通される方向であるクリップ挿通方向に沿って延在する本体を備え、前記本体は、前記クリップが前記両パネルに取り付けられた取り付け状態において前記第2貫通孔を画定する前記突起の内周面と前記上層パネルとに保持される中央部と、前記クリップ挿通方向に沿って前記中央部に隣接する両端部とを備え、
前記両端部の下面が、前記中央部から遠ざかるにつれて上方に向かうように傾斜又は湾曲しており、
前記本体の上面に出没可能に設けられた弾性係止体をさらに備え、
前記弾性係止体は、前記取り付け状態において、前記第2貫通孔を画定する前記突起の縁部に対して前記クリップ挿通方向の両側から対向する1対の係止面を備えたことを特徴とするクリップ。
【請求項3】
前記弾性係止体は、前記本体に片持ち支持された1対の弾性係止片からなり、前記1対の係止面は、前記1対の弾性係止片の遊端側に形成されたことを特徴とする請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記1対の弾性係止片は、前記本体の前記両端部に形成された1対の端壁に支持され、前記1対の端壁の上面は、前記中央部の上面よりも高いことを特徴とする請求項3に記載のクリップ。
【請求項5】
前記本体は、上下方向及び前記クリップ挿通方向に直交する方向に互いに離間した1対の側壁を備え、
前記1対の側壁は、前記中央部及び前記両端部の一部を構成し、
前記1対の側壁の少なくとも一方の側壁は、上下方向及び前記クリップ挿通方向に直交する方向の外側に膨出した膨出部を備え、
前記膨出部は、前記取り付け状態において、前記突起の前記第2貫通孔を画定している内面に当接するように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクリップ。
【請求項6】
前記1対の側壁は、前記上下方向及び前記クリップ挿通方向に直交する方向の内側において、前記膨出部に整合する位置から内側に突出し、かつ互いの先端が離間して対向する1対の突出部を備えることを特徴とする請求項5に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルを積層した状態で連結するクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
工具を使わずに積層された2枚のパネルを連結するための手段として、様々な形態のクリップが提案されている。
【0003】
特許文献1には、端部近傍に貫通孔が形成された上層パネルと、端部近傍に門形突起が形成された下層パネルとを連結するためのクリップが記載されている。このクリップは、側面視でコ字形状を呈し、門形突起が貫通孔に挿入された状態で積層された2枚のパネルに対し、コ字形状の開放面を両パネルの端部に向けた状態でスライドさせて取り付けられる。コ字形状の下側にあたる下片は下層パネルの下面に当接し、コ字形状の上側にあたる上片は、上層パネルの上面に当接しており、上片の先端に設けられたフックが、門形突起の孔を通過した状態で門形突起に係合する。門形突起と貫通孔との係合によって、2枚のパネルが互いに水平方向にずれることが防止され、クリップが2枚のパネルを挟持することによって、2枚のパネルが互いに離間する方向に移動することが防止される。
【0004】
特許文献2には、貫通孔が形成された上層パネルと、門形突起が形成された下層パネルとを連結するためのクリップが記載されている。このクリップは、下面の略全体が上層パネルの上面に当接し、本体に支持された弾性体が門形突起の上梁の下面を押圧することによって、上層パネル上に固定される。門形突起と貫通孔との係合によって、2枚のパネルが互いに水平方向にずれることが防止され、クリップが門形突起と上層パネルとに押圧されることによって、2枚のパネルが互いに離間する方向に移動することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−117907号公報
【特許文献2】特開2013−228068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のクリップは、2枚のパネルの端部近傍の平板部分に適用されることが予定された形状である。特許文献2に記載のクリップは、端部近傍以外の部分にも適用できるが、湾曲した部分への適用は困難であり、また、クリップの長手方向に沿ってクリップを挿入するため、他の部品が近接して空間が狭い場合には取り付けが困難となる。
【0007】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、湾曲したパネルにも適用でき、取り付け作業が容易なクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある側面は、第1貫通孔(42)が形成された上層パネル(38)と、前記第1貫通孔に挿通される突起(44)が突設された下層パネル(40)とを積層した状態で互いに連結するべく、前記突起に設けられた第2貫通孔(50)に挿通されるクリップ(2)であって、前記クリップが挿通される方向であるクリップ挿通方向に沿って延在する本体(4)を備え、前記本体は、前記クリップが前記両パネルに取り付けられた取り付け状態において前記第2貫通孔を画定する前記突起の内周面と前記上層パネルとに保持される中央部(14)と、前記クリップ挿通方向に沿って前記中央部に隣接する両端部(16)とを備え、前記両端部の下面が、前記中央部から遠ざかるにつれて上方に向かうように傾斜又は湾曲していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、連結されるべきパネルが湾曲していても、クリップによりパネルを連結することができ、クリップの取り付け及び取り外し作業が容易となる。
【0010】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記中央部の下面には、前記クリップ挿通方向に沿って突条(30)が形成され、前記突条は、前記第1貫通孔の前記クリップ挿通方向の長さよりも長いことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、突条によって、クリップの取り付け及び取り外し作業時の上層パネルとの摩擦が軽減され、作業が容易になるとともに、取り付け状態におけるクリップが、上下方向において第2貫通孔の上部を画定する突起の内周面と上層パネルの上面とに安定して挟持され、上下方向のガタツキが抑制される。
【0012】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記本体の上面に出没可能に設けられた弾性係止体(6)をさらに備え、前記弾性係止体は、前記取り付け状態において、前記第2貫通孔を画定する前記突起の縁部に対して前記クリップ挿通方向の両側から対向する1対の係止面(34)を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、取り付け状態において、クリップの前後方向への意図しない抜け出しが防止されるとともに、取り付け作業時に節度感が得られる。
【0014】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記弾性係止体は、前記本体に片持ち支持された1対の弾性係止片からなり、前記1対の係止面は、前記1対の弾性係止片の遊端側に形成されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、前側及び後側のいずれからでも、クリップの取り付け及び取り外しを行うことができる。
【0016】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記1対の弾性係止片は、前記本体の前記両端部に形成された1対の端壁(10)に支持され、前記1対の端壁の上面は、前記中央部の上面よりも高いことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、誤ってクリップを上下逆にした状態で組付けることが防止できる。また、クリップの取り付け及び取り外し作業を行う際に、クリップの前端及び後端を押しやすくなる。さらに、弾性係止片を支持するための強度を確保しやすくなる。
【0018】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記本体の上面に出没可能に設けられた弾性係止体をさらに備え、前記弾性係止体に、前記取り付け状態において、前記第2貫通孔を画定する前記突起の縁部に前記クリップ挿通方向の一方の側から対向する第1係止面が形成され、前記本体に、前記取り付け状態において、前記縁部に前記クリップ挿通方向の他方の側から対向する第2係止面が形成されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、前側及び後側の一方からのみ、クリップの取り付け及び取り外しを行うことができるクリップを提供できる。
【0020】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記本体は、上下方向及び前記クリップ挿通方向に直交する方向に互いに離間した1対の側壁(8)を備え、前記1対の側壁は、前記中央部及び前記両端部の一部を構成し、前記1対の側壁の少なくとも一方の側壁は、上下方向及び前記クリップ挿通方向に直交する方向の外側に膨出した膨出部(18)を備え、前記膨出部は、前記取り付け状態において、前記突起の前記第2貫通孔を画定している内面に当接するように構成されたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、膨出部が突起の前記第2貫通孔を画定している内面に弾発的に当接するため、取り付け状態におけるクリップの左右方向のガタツキを抑えることができる。
【0022】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記1対の側壁は、前記上下方向及び前記クリップ挿通方向に直交する方向の内側において、前記膨出部に整合する位置から内側に突出し、かつ互いの先端が離間して対向する1対の突出部を備えることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、側壁が互いに対向している方向の内側に撓んだときに1対の突出部の先端が互いに当接することによって、側壁が撓みすぎて破損することを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
以上の構成によれば、湾曲したパネルにも適用でき、取り付け作業が容易なクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図7】実施形態に係るクリップによるパネルの連結構造の斜視図
【
図8】実施形態に係るクリップによるパネルの連結構造の断面図
【
図9】実施形態に係るクリップの誤組付が防止される状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の係るクリップ2を説明する。なお、説明において、上下、前後及び左右の方向は図面に示す方向に従うが、これらは、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、クリップ2は、任意の方向に回転した状態で使用できる。
【0027】
まず、
図1〜5を参照して、クリップ2の形状を説明する。クリップ2は、樹脂を素材とする一体成形品であり、例えば、熱可塑性樹脂であるポリアセタール(POM)から形成される。クリップ2は、外形の大枠が概ね前後に長手方向を有する直方体形状を呈しており、クリップ2の中心を通り前後方向に直交する平面、及びクリップ2の中心を通り左右方向に直交する平面に対して対称形をなし、また、クリップ2の中心を通る上下方向軸に対して、180°回転すると同形となる対称性を備える。クリップ2は、本体4と、本体4に支持される弾性係止体6とを備える。
【0028】
本体4は、前後方向に延在する1対の側壁8と、1対の側壁8の前後端のそれぞれを連結するように設けられた1対の端壁10とを備える。1対の側壁8及び1対の端壁10によって、上下に開放した開口12が形成される。以下、側壁8の前後方向の中央を含む部分を本体4の中央部14といい、中央部14に隣接する側壁8の前後方向の両端近傍部分及び端壁10を本体4の両端部16という。
【0029】
1対の側壁8は、前後方向に長辺を、上下方向に短辺を有する壁であって、互いに左右方向に対向している。1対の側壁8の左右方向の外側の面には、前後方向の中央が外側に膨出するように1対の膨出部18が設けられている。1対の膨出部18の各々は、前後方向の中央に形成された平面状の膨出面20と、膨出面20の前後方向に隣接して前後方向の中央に向かうにしたがって外側に膨出するテーパー面22とを備える。膨出面20及びテーパー面22は、それぞれ上下方向に平行な平面を形成している。1対の側壁8の左右方向の内側の面には、前後方向の中央が内側に突出するように1対の突出部24が設けられている。1対の突出部24は、膨出部18と左右方向に整合する位置にあるが、その前後方向幅は、膨出部18より短い。1対の突出部24の先端は互いに離間した状態で対向している。1対の側壁8は、端壁10に両持ち支持されているため、1対の膨出部18は、1対の突出部24の先端が互いに当接するまで、左右方向の内側に撓むことができる。
【0030】
1対の側壁8の下面には、本体4の中央部14に相当する部分において、上下方向に直交する底面26が形成され、本体4の両端部16に相当する部分において、前後方向の端に向かうに従って上方に向かうように傾斜している傾斜面28が形成されている。底面26には、下方に突出して前後方向に延在する突条30が、両傾斜面28との境界間に形成されている。傾斜面28に代えて、湾曲面が形成されてもよい。湾曲面とする場合は、下に凸に湾曲させることが好ましい。1対の側壁8の上面は、上下方向に直交する平面をなしている。
【0031】
端壁10は、下端において、傾斜面28に面一をなすように滑らかに連続している。端壁10の上端は、側壁8の上面よりも上方に位置する。側壁8の上面に繋がる端壁10の面は、前後方向の端側に向かうにつれて上方に向かうように傾斜している。端壁10の前後方向外側の面は、前後方向に直交する平面が、下端から上端まで延びている。
【0032】
弾性係止体6は、1対の端壁10にそれぞれ片持ち支持された1対の弾性係止片32からなる。1対の弾性係止片32は、各々、対応する端壁10の前後方向の内側から中央に向かって延出し、1対の側壁8の左右方向の内側の面から離間している。弾性係止片32の上面は、基端側においては上下方向に略直交する平面をなしており、遊端側においては、遊端に向かうにつれて上方に向かうように傾斜している。弾性係止片32の上面の基端側は、側壁8の上面と略同じ高さであり、遊端側は、側壁8の上面よりも高く、かつ遊端に向かうにつれて高くなるように傾斜している。弾性係止片32の下面は、上下方向の肉厚が略一定となるように上面に沿って延びている。1対の弾性係止片32の遊端側には、互いに対向する係止面34が形成されている。係止面34は、側壁8の上面より上側に位置する部分にのみ形成され、下側には前後方向の中央に突出する爪36が設けられる。爪36を設けず、弾性係止片32の遊端面全体を係止面34としてもよい。弾性係止片32は、遊端側が上下に変位して本体4の側壁8の上面に対して出没可能に設けられている。
【0033】
次に、
図6を参照して、クリップ2によって連結される上層パネル38及び下層パネル40について説明する。上層パネル38及び下層パネル40は、例えば、二輪車のカウル等の部材であるが、これに限定されない。
【0034】
上層パネル38には、上下方向に貫通する第1貫通孔42が形成されている。第1貫通孔42は、平面視で、左右方向に長辺を有する矩形を呈する。上層パネル38は、第1貫通孔42の近傍において、前後方向に湾曲しており、その曲率は、クリップ2の側壁8の底面26及び両傾斜面28を近似する円弧の曲率よりも小さい。なお、上層パネル38の第1貫通孔42の近傍は、平板状、すなわち曲率が0であってもよい。
【0035】
下層パネル40の上面には、門形の突起44が形成されている。突起44は、左右1対の脚柱46と、1対の脚柱46の上端間に架け渡された上梁48とから形成される。1対の脚柱46、上梁48および下層パネル40の上面によって、前後方向に貫通する第2貫通孔50が形成されている。換言すると、前後方向に主面を有する長方形の平板に、矩形の第2貫通孔50を形成することによって門形の突起44が形成されている。下層パネル40は、突起44の近傍で、上層パネル38の第1貫通孔42の近傍と同じ曲率で前後方向に湾曲している。なお、下層パネル40は、上層パネル38の第1貫通孔42の近傍が平板状であるときは、平板状となる。また、第1貫通孔42又は突起44の近傍では、上層パネル38の下面と下層パネル40の上面とが曲率が密着して積層するように、曲率が略等しければよく、上層パネル38及び下層パネル40の厚さが変動している場合には、上層パネル38の上面と下層パネル40の下面とは、曲率が異なっていてもよい。平面視において、突起44の前後方向厚さは、第1貫通孔42の前後方向長さに略等しいか、わずかに小さく、突起44の左右方向幅は、第1貫通孔42の内周の左右方向幅に略等しいか、わずかに小さい。
【0036】
クリップ2の寸法と上層パネル38及び下層パネル40の寸法との関係について説明する。クリップ2を上層パネル38及び下層パネル40に取り付けた取り付け状態において、クリップ2の本体4が上層パネル38の上面と突起44の上梁48の下面とによって挟持されるように、クリップ2の本体4の中央部14の上下方向高さ、すなわち、1対の側壁8の前後方向の中央付近の高さは、上層パネル38の第1貫通孔42の縁における上面と突起44の上梁48の下面と上下方向距離に略等しい。製造誤差を突条30の弾性によって吸収できるように、1対の側壁8の前後方向の中央付近の高さの設計値を、上層パネル38の第1貫通孔42の縁における上面と突起44の上梁48の下面と上下方向距離の設計値よりも、突条30の突出高よりも小さい程度のわずかな差で、大きくしてもよい。
【0037】
クリップ2の取り付け状態において、クリップ2の本体4が突起44の脚柱46の左右方向の内面間に弾発的に当接するように、クリップ2の本体4の中央部14の左右方向幅、すなわち、一対の側壁8の膨出部18の外面間距離は、突起44の1対の脚柱46の内面間距離より大きく、一対の側壁8の膨出部18の外面間距離から1対の突出部24の先端間距離を引いた値は、1対の脚柱46の内面間距離よりも小さい。
【0038】
クリップ2の取り付け状態において、突条30が第1貫通孔42を跨ぐように、突条30の前後方向長さは、第1貫通孔42の前後方向長さよりも長い。
【0039】
クリップ2の取り付け状態において、1対の弾性係止片32の係止面34が、突起44に対して前後方向に整合しかつ離間した状態で、互いに対峙するように、一対の係止面34間の前後方向距離は、突起44の上梁48の前後方向厚さよりも長い。代替的に、クリップ2取り付け時に、1対の係止面34が、突起44の上梁48に当接するように、一対の係止面34間の前後方向距離を、突起44の上梁48の前後方向厚さに等しくしてもよい。爪36の上面は、上梁48の下面から離間するように、高さが設定される。
【0040】
次に、クリップ2の上層パネル38及び下層パネル40への取り付け方法について説明する。
図7及び8は、クリップ2を積層された上層パネル38及び下層パネル40に取り付けた状態を示す。
【0041】
突起44が第1貫通孔42に挿入されるように、下層パネル40と上層パネル38とを重ね合わせる。次にクリップ2を第2貫通孔50に挿通する。
図6及び
図7に示すように、突起44の第2貫通孔50の方向を前後方向とすると、前後方向がクリップ2の第2貫通孔50への挿通方向となる。クリップ2及び突起44は対称形であるため、クリップ2は、前端側及び後端側のいずれからでも第2貫通孔50に挿入させることができる。
【0042】
以下、クリップ2を前端側から取り付ける場合について説明する。なお、後端側から取り付ける場合は、以下の説明の前後方向が逆になる。まず、左右方向を軸にクリップ2の前側を下に傾けた状態で、端壁10の上端から、クリップ2の前端側を第2貫通孔50に挿入する。その後、クリップ2の後端側の端壁10の後面を指で押し込み、本体4の傾斜面28、次いで底面26の突条30を、上層パネル38の第1貫通孔42を画定する周縁近傍の上面に摺動させる。このとき、前側の弾性係止片32の遊端側が、上梁48の下面を摺動して押圧されるため、弾性係止片32は、その遊端が側壁8の上面と同じ高さになるまで本体4に没入するように弾性変形する。このとき、さらに、クリップ2は、左右方向を軸に回転し、クリップ2の前後方向と上層パネル38及び下層パネル40の前後方向が一致するように姿勢を変える。さらに、クリップ2を押し込むと、前側の弾性係止片32の遊端側が、第2貫通孔50を通過し、弾性によって、本体4の側壁8の上面に対して上方に突出した位置に戻り、クリップ2は取り付け状態になる。
【0043】
クリップ2の取り付け状態において、
図8に示すように、爪36は、突起44から離間している。また、1対の係止面34間の距離は、上梁48の前後方向の厚さよりも長いため、1対の係止面34の双方を、突起44から離間した位置に配置できる。側壁8の上面が上梁48の下面に当接し、突条30が上層パネル38の上面に当接しているため、これらの間の摩擦力によって、クリップ2の前後方向への移動が抑制される。摩擦力を超える力がクリップ2の前後方向に加わったときは、1対の係止面34の一方が上梁48に係止される位置で、クリップ2の前後方向への移動が規制される。クリップ2は、上梁48と上層パネル38とによって挟持されているため、上下方向への移動が規制され、また、1対の脚柱46によって挟持されているため、左右方向への移動が規制される。このように、クリップ2は、前後、上下及び左右方向への移動が規制されるため、取り付け状態が維持される。
【0044】
クリップ2が取り付けられた状態において、第1貫通孔42の内周面が突起44に係止されるため、上層パネル38の下層パネル40に対する前後方向及び左右方向への移動は規制される。上層パネル38と下層パネル40との上下方向における互いの離間は、クリップ2が、上層パネル38の上面と下層パネル40に設けられた突起44の上梁48の下面とに挟持されているため、規制される。従って、上層パネル38及び下層パネル40は、積層された状態でクリップ2によって連結される。
【0045】
クリップ2を上層パネル38及び下層パネル40から取り外す方法について説明する。クリップ2は、前端側及び後端側のいずれの側を使っても第2貫通孔50から取り外すことができる。以下、クリップ2を前端側を使って取り外す場合について説明する。なお、後端側を使って取り外す場合は、以下の説明の前後方向が逆になる。まず、前端側の弾性係止片32の遊端側を指で押し下げる。前端側の弾性係止片32の遊端側が側壁8の上面により下方に没入したら前端側の端壁10の前面を押し、クリップ2を後方に摺動させる。前端側の弾性係止片32の遊端側が第2貫通孔50に侵入したら、前端側の弾性係止片32の遊端側を押していた指を離し、そのまま、前端側の端壁10の前面を押し続ける。前端側の弾性係止片32の遊端側が第2貫通孔50を通過したら、左右方向を軸にクリップ2を後端側が上方に向かうように傾けながら、クリップ2の前端側を第2貫通孔50から抜き去る。
【0046】
クリップ2の作用効果について説明する。
【0047】
クリップ2の取り付け状態では、上下方向において、片持ち梁又は両持ち梁のような弾性の大きな弾性部材ではなく、弾性の小さい1対の側壁8が突起44の上梁48の下面と上層パネル38の上面とに挟持されるため、クリップ2の上下方向の固定が安定し、連結された上層パネル38及び下層パネル40のガタツキが抑えられる。
【0048】
側壁8の底面26に突条30が形成されているため、底面26と上層パネル38の上面との摩擦抵抗が軽減され、クリップ2の挿入及び抜き去りが容易になる。また、側壁8の高さが上層パネル38の上面から上梁48の下面との上下方向距離よりもわずかに大きくとも、その差が突条30の弾性変形によって吸収され、上層パネル38の上面と上梁48の下面との間に側壁8を挿入することができる。
【0049】
本体4の両端部16の下面が傾斜面28からなるため、クリップ2の取り付け及び取り外しが容易になるとともに、湾曲した上層パネル38及び下層パネル40にも取り付けることができる。クリップ2は、中央部14の底面26が、側壁8の上面に平行な平面からなり、かつ、突起44の上梁48の下面と上層パネル38の上面とに挟持される部位が弾性の小さい側壁8であってガタツキが小さいため、平板状のパネルの連結にも使用することができる。異なる形状のパネルに対して共通のクリップ2を使用することができるため、部品の共通化に資する。
【0050】
弾性係止片32によって、取り付け状態におけるクリップ2の前後方向への移動を規制できるとともに、クリップ2を取り付ける際に節度感が得られる。
【0051】
クリップ2は、前側と後側とが対称形であるため、前端側及び後端側のいずれからでも取り付け及び取り外しを行うことができる。
【0052】
側壁8は、1対の端壁10に両持ち支持されているので、側壁8の前後方向中央が左右方向に変位するように弾性変形する。さらに、側壁8の左右方向外側には、膨出部18が設けられているため、クリップ2の取り付け状態において、膨出部18が、突起44の1対の脚柱46の左右の両内面に弾発的に当接する。そのため、左右方向のガタツキが押さえられるとともに、膨出部18と1対の脚柱46の左右の両内面との摩擦力が増大し、取り付け状態におけるクリップ2の前後方向の移動を抑制する。さらに、1対の側壁8の左右方向の内側には、1対の突出部24が設けられているため、その先端同士が当接する位置で1対の側壁8の左右方向内側への撓みを規制し、撓み過ぎによる側壁8の破損を防止できる。
【0053】
図9に示すように、端壁10の上端が側壁8の上面よりも高いため、クリップ2を上下逆にして第2貫通孔50に挿入しようとしても、端壁10の上端が第1貫通孔42に係止されるため、端壁10は第2貫通孔50を通過することができない。従って、クリップ2の誤組付を防止できる。また、端壁10の前後方向外側の面は、下端から上端まで延びている大きな平面からなるため、クリップ2の取り付け作業時に、指で押し易くなっている。また、端壁10の上端を高くして、端壁10が大きくなっているため、弾性係止片32を支持するための強度が確保される。
【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上層パネル及び下層パネルの間に、第1貫通孔と同形の貫通孔を有する中間層パネルが1枚以上積層されていてもよい。クリップ本体を有底形状とし、側壁の外面に突条を設けてもよい。第2貫通孔が形成された突起は、門形以外の形状でもよい。膨出部は一方の側壁にのみ形成されてもよい。弾性係止体は、対向する1対の係止面を備えた1つの両持ち梁から形成されてもよい。また、必ずしもクリップを対称形にする必要はなく、例えば、両端部の下面の曲率が互いに異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
2...クリップ、4...本体、6...弾性係止体、8...側壁、10...端壁、14...中央部、16...両端部、18...膨出部、24...突出部、26...底面、28...傾斜面、30...突条、32...弾性係止片、34...係止面、38...上層パネル、40...下層パネル、42...第1貫通孔、44...突起、50...第2貫通孔