(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記横移動手段は、前記PCa横梁上を走行可能なチルローラ又はチルタンクを備え、前記PCa縦桁横移動工程では、当該横移動手段により前記PCa縦桁を横移動すること
を特徴とする請求項1に記載の橋梁の架設方法。
前記PCa縦桁の長さ方向の各端を持ち上げる複数のジャッキを前記吊りビームの下となる前記PCa横梁上にそれぞれ載置し、これらのジャッキを用いて前記吊りビームを押し上げて当該PCa縦桁を前記PCa横梁から持ち上げ離間させ、前記横移動手段を撤去する横移動手段撤去工程を有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の橋梁の架設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、プレキャスト製のPCa縦桁の揚重手段と横移動手段を分離してPCa縦桁の横移動と別のPCa縦桁の揚重を同時に施工可能な橋梁の架設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る橋梁の架設方法は、橋脚又は橋台上にプレキャスト製のPCa横梁を設置した後、それらのPCa横梁間にプレキャスト製の複数のPCa縦桁を並列して架け渡す橋梁の架設方法において、PCa縦桁を横移動する横移動手段を前記PCa横梁上に設置する横移動手段設置工程と、前記PCa縦桁に長さ方向の両端から外側へ張り出す吊りビームを取り付ける吊りビーム取付工程と、を有し、PCa縦桁を揚重する揚重手段を用いて前記横移動手段の上に前記吊りビームが載置されるように前記PCa縦桁を吊り降ろすPCa縦桁揚重工程を行った後、前記横移動手段を用いて前記PCa縦桁を所定の位置まで横移動するPCa縦桁横移動工程と、前記PCa横梁上に架け渡し可能な高さまで前記揚重手段により別のPCa縦桁を揚重するPCa縦桁揚重工程と、を同時並行して行うことを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る橋梁の架設方法は、第1発明において、前記横移動手段は、前記PCa横梁上を走行可能なチルローラ又はチルタンクを備え、前記PCa縦桁横移動工程では、当該横移動手段により前記PCa縦桁を横移動することを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る橋梁の架設方法は、第1発明又は第2発明において、前記PCa縦桁の長さ方向の各端を持ち上げる複数のジャッキを前記吊りビームの下となる前記PCa横梁上にそれぞれ載置し、これらのジャッキを用いて前記吊りビームを押し上げて当該PCa縦桁を前記PCa横梁から持ち上げ離間させ、前記横移動手段を撤去する横移動手段撤去工程を有することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る橋梁の架設方法は、第1発明ないし第3発明のいずれかの発明において、前記PCa縦桁揚重工程では、架設桁を用いて前記PCa縦桁を揚重することを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る橋梁の架設方法は、第1発明ないし第3発明のいずれかの発明において、前記PCa縦桁揚重工程では、組立解体不要のクレーンを用いて前記PCa縦桁を揚重することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、PCa縦桁横移動工程とPCa縦桁揚重工程を同時並行して行うので、PCa縦桁の横移動と別のPCa縦桁の揚重を同時に施工可能となり、1日当たり架設できる桁の数が増え、結果的に、橋梁の架設作業の作業期間を短縮して車線規制(通行規制)の期間や施工費を大幅に削減することができる。
【0014】
特に、第2発明によれば、チルローラ又はチルタンクを備えた横移動手段によりPCa縦桁を横移動するので、特別な動力を要することなく人力でPCa縦桁を横移動して所定の位置に容易に微調整して設置することができる。このため、第2発明によれば、さらに橋梁の架設作業の作業期間を短縮して施工費を削減することができる。
【0015】
特に、第3発明によれば、横移動手段撤去工程を有するので、特別な動力を要することなくジャッキを用いて簡単にPCa縦桁を所定の位置に設置することが可能となり、吊りビームの他のPCa縦桁への盛替え作業も迅速に行うことができる。このため、第3発明によれば、さらに橋梁の架設作業の作業期間を短縮して施工費を削減することができる。
【0016】
特に、第4発明によれば、前記PCa縦桁揚重工程では、架設桁を用いて前記PCa縦桁を揚重するので、渓谷に架かる橋などクレーン等を設置できるスペースがない場所でも、PCa縦桁の揚重作業を行うことができる。また、クレーン等を搬入する経路が無い場合や搬入経路に重量制限や時間制限などがある場合もPCa縦桁の揚重作業が容易である。
【0017】
特に、第5発明によれば、PCa縦桁揚重工程では、組立解体不要のクレーンを用いて前記PCa縦桁を揚重するので、クレーンや架設桁の組み払し作業が必要ない。このため、第5発明によれば、さらに橋梁の架設作業の作業期間を短縮して施工費を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る橋梁の架設方法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<橋梁の上部工>
先ず、
図1〜
図4を用いて、本発明の実施形態に係る橋梁の架設方法において架設される橋梁の上部工(上部構造)について説明する。橋梁の上部工1は、
図1に示すように、後述の下部工(下部構造物)の上に単数又は複数の支承S1を介して載置された複数の横梁2と、これらの横梁2に架け渡された主桁である縦桁3など、から構成されている。なお、図示形態は、下部工として2つの橋台4と1つの橋脚5からなる橋を例示したが、例えば、
図2に示すように、2つの橋台2上にそれぞれ横梁2を設置し、その間に1つの縦桁3を架け渡した単純桁の橋にも勿論適用することができる。
【0021】
(横梁)
この横梁2は、所定の異形鉄筋及びPC鋼材が配置され、塩化物イオンの浸透及びアルカリ骨材反応等を抑制するため高炉スラグ微粉末を混合した呼び強度40N/mm
2のコンクリートからなる工場等で予め製作されて現地へ搬入されるプレキャストプレストレストコンクリート製のPCa横梁であり、橋台4又は橋脚5上に橋軸直角方向を長手方向として載置される。なお、この横梁2,2’は、早強セメント単味を用いたコンクリートより初期の水和反応が遅いため給熱養生を行って製作する。
【0022】
横梁2は、
図1に示すように、橋梁の橋軸方向の端部となる橋台4上に支承S1を介して載置され、一側面側にのみ縦桁3の長手方向の端部を載置するフランジ2fが形成された鉛直断面がL字状のPCa横梁である。また、横梁2’は、
図2に示すように、橋梁の中間地点となる橋脚5上に支承S1を介して載置され、縦桁3の長手方向の端部を載置するフランジ2fが両側に形成された鉛直断面が逆T字状のPCa横梁である。
【0023】
(縦桁)
縦桁3は、横梁2と同様に、高炉スラグ微粉末を混合した呼び強度40N/mm
2のコンクリートからなるPCa縦桁である。この縦桁3は、
図3に示すように、軽量化のため断面略ロの字状の中空に形成されており、橋軸方向となる長手方向にPC鋼材によりプレストレスが導入されたプレテンション方式のPCa縦桁である。勿論、縦桁3には、ポストテンション方式でプレストレスを導入することも可能である。但し、プレテンション方式の方が、現地でのプレストレス導入の手間が省けるため好ましい。
【0024】
図3に示すように、横梁2のフランジ2f上に水勾配を付けるための高さ調整モルタル6が打設され、この高さ調整モルタル6の上に、複数の縦桁3が、橋軸方向を長手方向として所定間隔を置いて複数並列されている。また、これらの複数の縦桁3は、
図4に示すように、長手方向の端部において、間詰めの場所打ちコンクリート硬化後に、横締めPC鋼材PC1によりポストテンション方式でプレストレスが付与され互いに連結されている。なお、
図3に示す本実施形態に係る橋梁の上部工1には、4%の水勾配が付くように高さ調整モルタル6が打設されている。
【0025】
なお、この縦桁3には、後述の吊りビーム取付用のPC鋼棒アンカー(
図9参照)と、ジャッキによる昇降時の転倒防止ガイド取付用アンカー(図示せず)がプレキャスト打設時に設置され埋設されている。
【0026】
(横梁と縦桁との連結)
横梁2,2’と縦桁3との連結は、横梁2,2’に予め埋め込まれたインサート(図示せず)に連結ボルト(図示せず)を螺合させて、このインサートに接続するアンカーボルトにこの連結ボルトが延長接続され、縦桁3に設けられたスリーブ(図示せず)を介してこのボルトにより横梁2,2’のフランジ2fに縦桁3の長手方向の端部が緊結されて接続固定されている。
【0027】
(縦桁と縦桁との連結)
また、
図4に示すように、横梁2,2’の梁成は、縦桁3の成と略同程度であり、横梁2のフランジ2fの厚み分だけ、横梁2,2’の上部にスペースができることとなる。このスペースに、縦桁3から突出する鉄筋に重ね継手長を確保して所定の配筋を行ったうえ現場打ちのコンクリートを打設して場所打ち連結部7が形成されている。この場所打ち連結部7により橋軸方向に沿って縦に隣接する縦桁3と縦桁3、及び横梁2,2’とが一体化されて連結されている。なお、上部工1の耐久性を向上させるため、場所打ち連結部7の最小かぶり厚さは、60mm確保されている。
【0028】
以上、本発明に係る橋梁の架設方法において架設される橋梁の上部工1(上部構造)について説明したが、下部工である橋台4や橋脚5は、一般的な通常の橋台や橋脚であるため詳細な説明は省略する。また、橋梁の上部工1には、
図3に示すように、必要に応じて縦桁3の上に地覆・壁高欄等が設置される。
【0029】
また、支承S1も一般的な支承であれば種々の支承を採用することができ、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る橋梁の上部工1では、上部工1に作用する水平力を低減するため、鋼材プレート間にゴム弾性体が介装された免振(免震)支承であるゴム支承が採用されている。
【0030】
このような橋梁の上部工1によれば、支承上のPCa横梁を介してプレテンション中空桁を架設する構造であるため、対面交通規制の期間及び工期を短縮することができるだけでなく、高価な支承数を大幅に低減して、コストを縮減することができる。
【0031】
また、橋梁の上部工1によれば、天候により品質が左右されない工場等でのプレキャスト部材を用いるとともに、コンクリート中のセメントを高炉スラグに置換したものを用いているため、耐久性が向上するだけでなく、塩化物イオンの浸透及びアルカリ骨材反応を抑制することができる。
【0032】
さらに、橋梁の上部工1によれば、鉄橋と比べて騒音や低周波空気振動の少ないコンクリート製であるため、環境負荷が少ない。また、鉄鋼製造の副産物である高炉スラグ微粉末を使用し、セメントの使用量を低減しているため、CO
2排出量を約40%削減することができ、この点でも環境負荷を低減することができる。
【0033】
<橋梁の架設方法>
次に、本発明の実施形態に係る橋梁の架設方法について説明する。
【0034】
[第1実施形態]
先ず、
図5〜
図10を用いて、第1実施形態に係る橋梁の架設方法について説明する。本実施形態に係る橋梁の架設方法では、横梁や縦桁の揚重手段として架設桁を用いる。架設桁(エレクションガーダー)は、シングルガーダー又はダブルガーダーいずれでもよいが、本実施形態では、80t×35mスパンのシングルガーダーを例示して説明する。
【0035】
(1)事前準備(架設桁の設置)
本実施形態に係る橋梁の架設方法では、事前準備として揚重手段である架設桁の設置、即ち、エレクションガーダーGを組み立てる。通常、橋梁の桁を架設する径間毎にエレクションガーダーGを組み立てるが、第1実施形態に係る橋梁の架設方法では、2径間に亘るエレクションガーダーを組み立てる(
図6等参照)。具体的には、図示する下部構造である複数の橋脚51〜54において、橋脚51と橋脚52の間の径間に桁(縦桁3)を架設する場合、エレクションガーダーGを支える支柱C1,C2として、橋脚52を飛ばして前方支柱C1を橋脚53上に、後方支柱C2を橋脚51上に設置する。
【0036】
このようなエレクションガーダーGを組み立てる場合、先ず初めに、橋梁の橋台に続く接合ヤードから橋台まで桁引き出し用の軌道を敷設する。そして、この軌道上で、トラッククレーン等を用いてエレクションガーダーGを接合ヤード上に組み立てる。そして、組み立てたエレクションガーダーGを手延べ、送り出しローラーを使用して橋台から送り出すとともに、エレクションガーダーGを支える支柱C1,C2を順次移設して行き、橋梁の桁を架設する径間まで送り出すことにより、エレクションガーダーGを所望の径間に設置する。
【0037】
なお、前方支柱C1より前方の部分を指す符号TGは、手延べ桁TGであり、符号T1,T2は、エレクションガーダーG上を走行可能に構成され、吊り荷を昇降するチェーンブロック等の昇降機を備えた2台の巻き上げ装置T1,T2である。
【0038】
(2)横梁揚重工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、横梁揚重工程S1を行う。この横梁揚重工程S1では、
図6に示すように、エレクションガーダーG上を走行する2台の巻き上げ装置T1,T2のうち、後方巻き上げ装置T2のみを使用して、トレーラー等で搬入して台車上に荷卸しした前述の横梁3を台車から、回転自在な回転吊り具T3を天秤に1点吊りで吊り上げ揚重する。なお、このとき、横梁3の下方に本沓となる前述のゴム支承S1を取り付けると好ましい。
【0039】
(3)横梁設置工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、横梁設置工程S2を行う。この横梁設置工程S2では、
図7に示すように、横梁2を設置する下部工である橋脚52の上方で回転吊り具T3を用いて吊り上げた横梁2を90度回転させたうえ、後方巻き上げ装置T2の昇降機を用いて横梁2を下降させ、橋脚52上に予めセットしてある仮沓S2上に据え付ける。
【0040】
そして、横梁揚重工程S1、横梁設置工程S2を繰り返し、前述の縦桁3を架け渡す橋脚51、橋脚52上にそれぞれ2本の横梁2を設置したら、次工程へ進む。
【0041】
(4)横移動手段設置工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、横移動手段設置工程S3を行う。この横移動手段設置工程S3では、前述の縦桁3を横移動する横移動手段として、水平移動自在な受け架台UGを設置する(
図9、
図10参照)。
【0042】
この受け架台UGは、
図9、
図10に示すように、例えば、2台の12t用のチルタンクTTと、これらのチルタンクTTに架け渡された高さ(成)が200mmのH形鋼からなるビーム受けピースH1から構成されている。勿論、チルタンクTTは、重量物を載荷した状態で水平移動が自在な構成であればよく、例えば、チルローラであっても構わない。
【0043】
この受け架台UGは、安全に横梁2上を水平移動自在とするため、横取り用のガイドレールGL上を走行するように構成されている。このガイドレールGLは、高さ(成)が180mmの溝形鋼をウェブ面が下になるように設置したものである。
【0044】
この横移動手段設置工程S3では、前述のように、縦桁3が水勾配を付けて設置される関係上、横梁設置工程S2で設置した横梁2上に、先ず、水勾配に応じて高さ調整モルタル6’を敷設するなどして高さ調整を行って、ガイドレールGLが水平になるように設置する。勿論、モルタルで高さを調整するのではなく、鋼板片や木板片などからなる高さ調整プレートを噛ましてガイドレールGLが水平になるように設置してもよい。
【0045】
そして、水平に設置したガイドレールGL上に前述の受け架台UGを設置する。このとき、チルタンクTTは、専用治具などを用いてボルト止めされるなど、ビーム受けピースH1に強固に接合する。なお、受け架台UGは、2セット以上用意すると縦桁3の横移動の同時並行作業が可能となり好ましい。
【0046】
(5)吊りビーム取付工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、吊りビーム取付工程S4を行う。この吊りビーム取付工程S4では、
図9、
図10に示すように、前述の縦桁3に吊りビームTBを取り付ける。この吊りビームTBは、高さ(成)が250mmの2本の溝形鋼をウェブの背面同士で接合したビーム材である。
【0047】
この吊りビーム取付工程S4では、
図9に示すように、縦桁3に予め埋設された高付着力のアンカーボルトであるPC鋼棒アンカーGA(螺子付高強度異形鋼材アンカー)にPC鋼棒GP(螺子付高強度異形鋼棒)を螺合させて接続し、吊りビームTBの鋼材が縦桁3に接触して傷がつかいないように噛ませ材K1を介してPC鋼棒GPに吊りビームTBを緊結(ボルト止め)することで、縦桁3に吊りビームTBを取り付ける。
【0048】
なお、前述の横移動手段設置工程S3と吊りビーム取付工程S4は、横移動手段設置工程S3が横梁2上で作業を行い、吊りビーム取付工程S4が揚重前の縦桁3上で行うので、必ずしも説明した順番で行う必要はなく、同時に別々に行ってもよいし、吊りビーム取付工程S4の後に横移動手段設置工程S3を行ってもよい。要するに、次工程である縦桁揚重工程S5の前に、これらの工程で行う作業が完了していればよい。
【0049】
(6)縦桁揚重工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、縦桁揚重工程S5を行う。この縦桁揚重工程S5では、
図8に示すように、2台の巻き上げ装置T1,T2を用いてそれぞれの巻き上げ装置T1,T2の昇降装置で縦桁3の片端ずつを持ち上げ揚重し、巻き上げ装置T1,T2を走行させることで架設径間に引き出し移動する。
【0050】
そして、巻き上げ装置T1,T2が架設径間の所定の位置まで到達したら巻き上げ装置T1,T2チェーンブロック等の昇降機を用いて受け架台UGの上面に吊りビームTBが当接するまで縦桁3をそれぞれ下降させ、横梁2の2つの受け架台UG間に縦桁3を架け渡して載置する。
【0051】
(7)縦桁横移動工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、縦桁横移動工程S6を行う。この縦桁横移動工程S6では、
図9等に示すように、縦桁3の長手方向の両端に作業員を配置し、各作業員が力を合せて人力で各端の吊りビームTBを押すことで、横移動手段である受け架台UGのチルタンクTTを回転させて、縦桁3をガイドレールGLに沿って水平移動(横移動)させ、縦桁3を架設する所定の位置まで運ぶ。なお、
図9に示すように、このとき作業員が横梁2上から落下するのを防止するため落下防止手摺STを取り付けて縦桁3の横移動(横取り)作業を行う。
【0052】
このように、縦桁横移動工程S6では、作業員の人力だけで横移動ができるため、揚重手段であるエレクションガーダーG及びその巻き上げ装置T1,T2は、横移動の際には必要なくなる。よって、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、エレクションガーダーGを用いて別の縦桁3の縦桁揚重工程S5を縦桁横移動工程S6と同時並行して行う。このため、1日当たり架設できる縦桁の数が増え、結果的に、橋梁の架設作業の作業期間を短縮して車線規制(通行規制)の期間や施工費を大幅に削減することができる。
【0053】
(8)横移動手段撤去工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、横移動手段撤去工程S7を行う。この横移動手段撤去工程S7では、
図9に示すように、所定の位置まで横移動した縦桁3において、各吊りビームTB直下の横梁2上面に油圧ジャッキJを挿置し、油圧ジャッキJにより縦桁3の吊りビームTBをジャッキアップして、チルタンクTTを始め横移動手段である受け架台UGを撤去する。撤去した受け架台UGは、ガイドレールGL上を水平移動させて別の縦桁3の横移動手段設置工程S3、縦桁横移動工程S6等において用いる。
【0054】
(9)縦桁設置工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、縦桁設置工程S8を行う。この縦桁設置工程S8では、前述の縦桁3に予め埋設された転倒防止ガイド取付用アンカーに、横ブレ防止用の案内板である転倒防止ガイドを取り付けたうえ、ジャッキアップした油圧ジャッキJをジャッキダウンして縦桁3を正確に下降させて横梁2のフランジ2fの所定の位置に縦桁3を据え付け設置する。
【0055】
このように、この縦桁設置工程S8では、転倒防止ガイドを取り付けて油圧ジャッキJをジャッキダウンするため、各油圧ジャッキJのジャッキダウン操作のタイムラグや油圧ジャッキJの設置位置の偏り等により縦桁3の重心が油圧ジャッキJから外れて回動・転倒することを防止することができ、より安全に作業を行うことができる。
【0056】
(10)吊りビーム撤去工程
次に、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図5に示すように、吊りビーム撤去工程S9を行う。この吊りビーム撤去工程では、吊りビームTBの緊結(ナット)を緩めて吊りビームTB及びPC鋼棒GPを外して撤去する。撤去した吊りビームTBは、揚重前の別の縦桁3に移設して新たな吊りビーム取付工程S4、縦桁横移動工程S6等において用いる。
【0057】
このように、桁を架設する架設径間において全ての縦桁3を横梁2間に架設するまで、前述の横移動手段設置工程S3〜吊りビーム撤去工程S9の各工程を繰り返し、横梁2間に所定数の縦桁3を架設する。このとき、揚重手段であるエレクションガーダーGが1つであっても前述のように縦桁揚重工程S5以降の各工程を縦桁横移動工程S6等とオーバーラップさせて行うことができる。
【0058】
そして、横梁2間に所定数の縦桁3を全て架設し終わると、エレクションガーダーGの支柱C1,C2を橋脚52,54にそれぞれ移設して、エレクションガーダーGを前方に送り出し、次の架設径間の架設作業に移る。
【0059】
以上述べた第1実施形態に係る橋梁の架設方法によれば、縦桁横移動工程S6と縦桁揚重工程S5を同時並行して行うので、1日当たり架設できる桁の数が増え、結果的に、橋梁の架設作業の作業期間を短縮して車線規制(通行規制)の期間や施工費を大幅に削減することができる。
【0060】
また、第1実施形態に係る橋梁の架設方法によれば、チルタンクTTを備えた受け架台UGにより縦桁3を横移動するので、特別な動力を要することなく人力で縦桁3を横移動して所定の位置に容易に微調整して設置することができる。
【0061】
その上、第1実施形態に係る橋梁の架設方法によれば、横移動手段撤去工程S7を有するので、特別な動力を要することなく油圧ジャッキJを用いて簡単に縦桁3を所定の位置に設置することが可能となり、吊りビームTBの他の縦桁3への盛替え作業も迅速に行うことができる。
【0062】
さらに、第1実施形態に係る橋梁の架設方法によれば、揚重手段として架設桁であるエレクションガーダーGを用いて、縦桁3を揚重するので、渓谷に架かる橋などクレーン等を設置できるスペースがない場所でも、縦桁3の揚重作業を行うことができる。また、クレーン等を搬入する経路が無い場合や搬入経路に重量制限や時間制限などがある場合も縦桁3の揚重作業が容易である。
【0063】
[第2実施形態]
次に、
図5、
図11、
図12を用いて、第2実施形態に係る橋梁の架設方法について説明する。第2実施形態に係る橋梁の架設方法が、第1実施形態に係る橋梁の架設方法と相違する点は、横梁や縦桁の揚重手段だけであるので、その点についてのみ説明し、他の説明は省略する。
【0064】
図11、
図12に示すように、横梁や縦桁の揚重手段として一般道を自走可能で組立解体不要なトラッククレーンやラフタークレーンなどの25t〜70tクラスのクレーンCLを用いる。このため、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、第1実施形態に係る橋梁の架設方法において、(1)事前準備として説明した架設桁であるエレクションガーダーGの設置工程は必要ない。
【0065】
また、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、
図11に示すように、横梁揚重工程S1や縦桁揚重工程S5において、前述のクレーンCLを橋脚51,52の背面又は側面に2台据え付け、2台のクレーンCLで縦桁3等の長手方向の両端をそれぞれ吊り上げ、1本の縦桁3を相番しながら2台のクレーンCLで揚重する。
【0066】
また、縦桁3や横梁2の搬入は、縦桁3等を積載したトレーラーを架設径間の側面まで乗り入れ、トレーラーから直接縦桁3や横梁2の揚重を行う。揚重手段として自走可能な25t〜70tクラスのクレーンCLを用いて2台一組で作業するため、縦桁3などの重量物を揚重する場合は、作業半径が限られる。しかし、本実施形態に係る橋梁の架設方法では、前述のように、受け架台UG等の横移動手段を用いて縦桁3を設置位置まで横移動するので、大型のクレーンを使用しなくても縦桁3の架設作業が可能となる。
【0067】
このように、第2実施形態に係る橋梁の架設方法によれば、縦桁揚重工程S5では、組立解体不要のクレーンCLを用いて縦桁3を揚重するので、クレーンや架設桁の組み払し作業が必要ない。このため、さらに橋梁の架設作業の作業期間を短縮して施工費を削減することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態に係る橋梁の架設方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。