特許第6374358号(P6374358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374358
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】鉄道車両構体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/06 20060101AFI20180806BHJP
   B61F 1/10 20060101ALI20180806BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20180806BHJP
   B23K 9/173 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
   B61D17/06
   B61F1/10
   B23K9/00 501C
   !B23K9/173 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-136241(P2015-136241)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-19306(P2017-19306A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河内 正悟
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純敏
(72)【発明者】
【氏名】山中 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 勇太
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−057464(JP,U)
【文献】 特開2011−235733(JP,A)
【文献】 特開2010−149849(JP,A)
【文献】 特開2015−071360(JP,A)
【文献】 特開2009−056999(JP,A)
【文献】 米国特許第03934785(US,A)
【文献】 実開昭54−136209(JP,U)
【文献】 特開2013−71469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00−17/26
B61F 1/00− 1/14
B23K 9/00− 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠と、
前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁と結合された妻構体とを備え、
前記妻構体は、
前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、
前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部とを有し、
前記延出部が前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面及び前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接されており、
前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部が、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部であり、
前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部が設けられておらず、
前記端梁は、前記延出部において前記突出部の上方に位置する上方部と当接し且つ前記端梁の前記下面を含む当接部を有し、
前記延出部は、前記当接部の上面に配置された載置部をさらに有することを特徴とする、鉄道車両構体。
【請求項2】
鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠と、
前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁と結合された妻構体とを備え、
前記妻構体は、
前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、
前記基部と同一部材から構成され、前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部とを有し、
前記延出部が前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面及び前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接されており、
前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部が、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部であり、
前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部が設けられていないことを特徴とする、鉄道車両構体。
【請求項3】
前記端梁は、前記延出部において前記突出部の上方に位置する上方部と当接し且つ前記端梁の前記下面を含む当接部を有し、
前記延出部は、前記当接部の上面に配置された載置部をさらに有することを特徴とする、請求項2に記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記延出部における前記端梁の前記上面との溶接部が、前記延出部と前記基部との境界部分における内側面と前記端梁の前記上面との間に設けられた下向き隅肉溶接部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄道車両構体。
【請求項5】
前記妻構体となる形材の押出方向及び前記端梁となる形材の押出方向が、前記鉄道車両構体の幅方向であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉄道車両構体。
【請求項6】
鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠を作製する台枠作製工程と、
前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部とを有する妻構体を作製する妻構体作製工程と、
前記妻構体作製工程で作製された前記妻構体を前記台枠作製工程で作製された前記台枠の前記端梁と結合させるように、前記延出部を前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面及び前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接する溶接工程とを備え、
前記溶接工程において、
前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部を、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部とし、
前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部を設けず、
前記端梁に、前記延出部において前記突出部の上方に位置する上方部と当接し且つ前記端梁の前記下面を含む当接部を設け、
前記延出部に、前記当接部の上面に配置された載置部をさらに設けることを特徴とする、鉄道車両構体の製造方法。
【請求項7】
鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠を作製する台枠作製工程と、
前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、前記基部と同一部材から構成され、前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部とを有する妻構体を作製する妻構体作製工程と、
前記妻構体作製工程で作製された前記妻構体を前記台枠作製工程で作製された前記台枠の前記端梁と結合させるように、前記延出部を前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面及び前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接する溶接工程とを備え、
前記溶接工程において、
前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部を、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部とし、
前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部を設けないことを特徴とする、鉄道車両構体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台枠と妻構体とを備えた鉄道車両構体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両構体を構成する中空押出形材同士を突き合わせて溶接する技術が記載されている。特許文献1によると、各中空押出形材の溶接端部の外表面部を中空押出形材の一般表面部よりも凹んだ位置に設けることで、溶接ビードが一般表面部より外側に突出せず、溶接ビードを平らに仕上げる必要がなくなり、構体表面を塗装する前にパテによる修正を行うだけで従来の鉄道車両構体と同様なでき栄えを確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−175542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両構体における台枠の端梁と妻構体との結合に特許文献1の技術を適用し、妻構体の下端と端梁の上端とを突き合せて溶接を行う場合、鉄道車両構体の外側及び内側のそれぞれから鉛直方向に関して同じ位置に横向き姿勢で溶接が行われる(特許文献1の図1図2図3)か、鉄道車両構体の外側及び内側の一方から横向き姿勢で溶接が行われる(特許文献1の図4)こととなる。これらのいずれの場合においても、妻構体と端梁との溶接部が、鉛直方向に関して1つの位置に集約されるため、オフセット衝突時に破断し易い。したがって、上記構成では、オフセット衝突に対する鉄道車両構体の強度を十分に確保することができない。
【0005】
また、無塗装車両の場合に、妻構体の外側面に妻構体と端梁との溶接部が設けられると、上記のようにパテによる修正を行った後に表面を塗装するという方法を採用できず、溶接部を平滑化する工程が必要となり、作業負担が大きくなってしまう。無塗装車両以外の場合においても、妻構体の外側面に妻構体と端梁との溶接部が設けられると、特許文献1の技術によれば、パテによる修正を行う必要があり、作業負担が大きくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、オフセット衝突に対する鉄道車両構体の強度の向上と、妻構体と端梁との溶接部の平滑化やパテ修正に係る工程の省略とを共に実現することが可能な、鉄道車両構体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点によると、鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠と、前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁と結合された妻構体とを備え、前記妻構体は、前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部とを有し、前記延出部が前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面及び前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接されており、前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部が、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部であり、前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部が設けられておらず、前記端梁は、前記延出部において前記突出部の上方に位置する上方部と当接し且つ前記端梁の前記下面を含む当接部を有し、前記延出部は、前記当接部の上面に配置された載置部をさらに有することを特徴とする、鉄道車両構体が提供される。
本発明の第2観点によると、鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠と、前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁と結合された妻構体とを備え、前記妻構体は、前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、前記基部と同一部材から構成され、前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部と、を有し、前記延出部が、前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面、及び、前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接されており、前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部が、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部であり、前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部が設けられていないことを特徴とする、鉄道車両構体が提供される。
【0008】
本発明の第観点によると、鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠を作製する台枠作製工程と、前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部とを有する妻構体を作製する妻構体作製工程と、前記妻構体作製工程で作製された前記妻構体を前記台枠作製工程で作製された前記台枠の前記端梁と結合させるように、前記延出部を前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面及び前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接する溶接工程とを備え、前記溶接工程において、前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部を、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部とし、前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部を設けず、前記端梁に、前記延出部において前記突出部の上方に位置する上方部と当接し且つ前記端梁の前記下面を含む当接部を設け、前記延出部に、前記当接部の上面に配置された載置部をさらに設けることを特徴とする、鉄道車両構体の製造方法が提供される。
本発明の第4観点によると、鉄道車両構体の底部を構成する台枠であって、前記鉄道車両構体の幅方向に延在する端梁を有する台枠を作製する台枠作製工程と、前記鉄道車両構体の前部又は後部を構成する妻構体であって、前記端梁の外側面よりも上方に配置される基部と、前記基部と同一部材から構成され、前記基部から下方に向けて前記端梁の外側面に沿って延出し、前記端梁の外側面の上端から下端までの領域と前記鉄道車両構体の長手方向に対向すると共に、前記端梁の前記外側面の下端よりも下方に突出した突出部を含む延出部と、を有する妻構体を作製する妻構体作製工程と、前記妻構体作製工程で作製された前記妻構体を前記台枠作製工程で作製された前記台枠の前記端梁と結合させるように、前記延出部を、前記端梁における前記外側面の上端と繋がる上面、及び、前記外側面の下端と繋がる下面のそれぞれと溶接する溶接工程とを備え、前記溶接工程において、前記延出部における前記端梁の前記下面との溶接部を、前記突出部の内側面と前記端梁の前記下面との間に設けられた上向き隅肉溶接部とし、前記妻構体の外側面に、前記妻構体と前記端梁との溶接部を設けないことを特徴とする、鉄道車両構体の製造方法が提供される。
【0009】
上記第1観点によれば、妻構体と端梁との溶接部が、鉛直方向に関して1つの位置に集約されておらず、少なくとも2つの位置(端梁の上面及び下面)に分散して設けられているため、オフセット衝突時に破断し難い。さらに、溶接部が破断し難いことに加え、妻構体の延出部が端梁の外側面の上端から下端までの領域と対向するため、オフセット衝突に対する鉄道車両構体の強度を向上させることができる。また、妻構体と端梁との溶接部が、妻構体の外側面に設けられないため、当該溶接部の平滑化やパテ修正に係る工程を省略可能である。
【0011】
また、上記第1〜第4観点によれば、上向き隅肉溶接部により、横向き姿勢で溶接が行われる溶接部等に比べ、高い溶接強度を得ることができ、ひいてはオフセット衝突に対する鉄道車両構体の強度をより向上させることができる。
【0012】
上記第1及び第3観点において、前記端梁は、前記延出部において前記突出部の上方に位置する上方部と当接し且つ前記端梁の前記下面を含む当接部を有し、前記延出部は、前記当接部の上面に配置された載置部をさらに有する。上記第2及び第4観点において、前記端梁は、前記延出部において前記突出部の上方に位置する上方部と当接し且つ前記端梁の前記下面を含む当接部を有し、前記延出部は、前記当接部の上面に配置された載置部をさらに有してよい。
【0013】
上記構成によれば、妻構体と端梁との結合をより強固なものとすることができる。
【0014】
前記延出部における前記端梁の前記上面との溶接部が、前記延出部と前記基部との境界部分における内側面と前記端梁の前記上面との間に設けられた下向き隅肉溶接部であってよい。
【0015】
上記構成によれば、下向き隅肉溶接部により、横向き姿勢で溶接が行われる溶接部等に比べ、高い溶接強度を得ることができ、ひいてはオフセット衝突に対する鉄道車両の強度をより向上させることができる。
【0016】
前記妻構体となる形材の押出方向及び前記端梁となる形材の押出方向が、前記鉄道車両構体の幅方向であってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、妻構体と端梁との溶接部が、鉛直方向に関して1つの位置に集約されておらず、少なくとも2つの位置(端梁の上面及び下面)に分散して設けられているため、オフセット衝突時に破断し難い。さらに、溶接部が破断し難いことに加え、妻構体の延出部が端梁の外側面の上端から下端までの領域と対向するため、オフセット衝突に対する鉄道車両構体の強度を向上させることができる。また、妻構体と端梁との溶接部が、妻構体の外側面に設けられないため、当該溶接部の平滑化やパテ修正に係る工程を省略可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る鉄道車両構体の外観斜視図である。
図2図1のII−II線に沿った部分断面図である。
図3図2に示す領域IIIの拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る鉄道車両構体の製造方法を示すフロー図である。
図5(a)は、本発明に係る溶接部の変形例を示す図3の部分拡大図である。b)は、本発明の参考例に係る溶接部を示す図3の部分拡大図である。(c)は、本発明の第2及び第4観点に係る溶接部の変形例を示す図3の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る鉄道車両構体(以下、単に「構体」と称す。)100は、図1に示すように、車両の進行方向に長尺な直方体形状であって、構体100の側部を構成する一対の側構体1,2と、構体100の前部及び後部をそれぞれ構成する一対の妻構体3,4と、構体100の底部を構成する台枠5と、構体100の上部を構成する屋根構体6とで構成される六面体である。側構体1,2は互いに同じ構成であり、妻構体3,4は互いに同じ構成である。
【0020】
台枠5は、図2及び図3に部分的に示すように、構体100の長手方向に延在して床板を受ける複数の中梁5x、各中梁5xの長手方向両端と結合され、構体100の幅方向に延在する一対の端梁5y、構体100の幅方向に延在して床板を受ける複数の横梁(図示略)、各横梁の長手方向両端と結合され、構体100の長手方向に延在する一対の側梁(図示略)等を有する。
【0021】
構体100の各部は、アルミニウムからなる中空の押出形材で構成されている。妻構体3,4となる形材の押出方向及び端梁5yとなる形材の押出方向は、構体100の幅方向である。一方、側構体1,2となる形材の押出方向及び側梁となる形材の押出方向は、構体100の長手方向である。各形材は、例えばミグ(MIG:Metal Inert Gas)溶接により、結合されている。
【0022】
妻構体3,4は、それぞれ、端梁5yと結合されている。以下、図2及び図3を参照して妻構体3について説明するが、上記のとおり妻構体3,4は互いに同じ構成であり、妻構体4についても以下の説明が該当する。また、以下の説明において、「内側面」とは、構体100の内部100aと対向する面をいい、「外側面」とは、構体100の外部100bと対向する面をいう。
【0023】
妻構体3は、端梁5yの外側面5ybよりも上方に配置される基部3xと、基部3xから下方に向けて端梁5yの外側面5ybに沿って延出した延出部3yとを有する。延出部3yは、端梁5yの外側面5ybの上端5yb1から下端5yb2までの領域と、構体100の長手方向に対向している。延出部3yは、さらに、端梁5yの外側面5ybの下端5yb2よりも下方に突出した突出部3ycを有する。
【0024】
妻構体3は、延出部3yにおいて、端梁5yと溶接されている。詳細には、延出部3yが、端梁5yの上面5ya及び下面5ycと、それぞれ溶接部W1,W2を介して溶接されている。ここで、端梁5yの上面5yaは、外側面5ybの上端5yb1と繋がる面である。端梁5yの下面5ycは、外側面5ybの下端5yb2と繋がる面である。妻構体3の外側面3bには、妻構体3と端梁5yとの溶接部が設けられていない。
【0025】
延出部3yにおける端梁5yの上面5yaとの溶接部W1は、延出部3yと基部3xとの境界部分3xyにおける内側面と端梁5yの上面5yaとの間に設けられた、下向き隅肉溶接部(即ち、下向き姿勢で隅肉溶接が行われる溶接部)である。
【0026】
一方、延出部3yにおける端梁5yの下面5ycとの溶接部W2は、突出部3ycの内側面3ycaと端梁5yの下面5ycとの間に設けられた、上向き隅肉溶接部(即ち、上向き姿勢で隅肉溶接が行われる溶接部)である。
【0027】
端梁5yは、延出部3yにおける突出部3ycよりも上方の部分と当接する当接部5yp,5yqと、構体100の長手方向に延出部3yから離隔した離隔部5yrとを有する。当接部5ypは、端梁5yの上面5yaを含む。当接部5yqは、端梁5yの下面5ycを含み、且つ、延出部3yにおいて突出部3ycの上方に位置する上方部3ydと当接する。離隔部5yrは、当接部5yqの上方(当接部5yp,5yq間)に設けられている。
【0028】
延出部3yは、さらに、当接部5yqの上面5yqaに配置された載置部3yqを有する。載置部3yqは、例えば、妻構体3となる形材の下端部を部分的に切除することで形成されたものである。
【0029】
次いで、図4を参照し、構体100の製造方法について説明する。
【0030】
先ず、側構体1,2、妻構体3,4、台枠5及び屋根構体6をそれぞれ作製する(S1)。そしてS1の後、S1で作製した各部材を溶接する(S2)。S2において、妻構体3,4を台枠5の端梁5yと結合させる場合には、延出部3yを端梁5yの上面5ya及び下面5ycと溶接する。このとき、妻構体3の外側面3bには、妻構体3と端梁5yとの溶接部を設けない。
【0031】
以上に述べたように、本実施形態によれば、妻構体3と端梁5yとの溶接部W1,W2が、鉛直方向に関して1つの位置に集約されておらず、少なくとも2つの位置(端梁5yの上面5ya及び下面5yc)に分散して設けられているため、オフセット衝突時に破断し難い。さらに、溶接部W1,W2が破断し難いことに加え、妻構体3の延出部3yが端梁5yの外側面5ybの上端5yb1から下端5yb2までの領域と対向するため、オフセット衝突に対する構体100の強度を向上させることができる。また、妻構体3と端梁5yとの溶接部W1,W2が、妻構体3の外側面3bに設けられないため、当該溶接部W1,W2の平滑化やパテ修正に係る工程を省略可能である。
【0032】
延出部3yは、端梁5yの外側面5ybの下端5yb2よりも下方に突出した突出部3ycを有する。そして、延出部3yにおける端梁5yの下面5ycとの溶接部W2が、突出部3ycの内側面3ycaと端梁5yの下面5ycとの間に設けられた上向き隅肉溶接部である。
【0033】
上記構成によれば、上向き隅肉溶接部により、横向き姿勢で溶接が行われる溶接部等に比べ、高い溶接強度を得ることができ、ひいてはオフセット衝突に対する構体100の強度をより向上させることができる。
【0034】
端梁5yは、延出部3yにおいて突出部3ycの上方に位置する上方部3ydと当接し且つ端梁5yの下面5ycを含む当接部5yqを有する。そして、延出部3yは、当接部5yqの上面5yqaに配置された載置部3yqをさらに有する。
【0035】
上記構成によれば、妻構体3と端梁5yとの結合をより強固なものとすることができる。
【0036】
延出部3yにおける端梁5yの上面5yaとの溶接部W1が、延出部3yと基部3xとの境界部分3xyにおける内側面と端梁5yの上面5yaとの間に設けられた、下向き隅肉溶接部である。
【0037】
上記構成によれば、下向き隅肉溶接部により、横向き姿勢で溶接が行われる溶接部等に比べ、高い溶接強度を得ることができ、ひいてはオフセット衝突に対する構体100の強度をより向上させることができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0039】
・妻構体と端梁との溶接箇所は、少なくとも2つあればよく、3以上あってもよい。
・妻構体と端梁との溶接部は、隅肉溶接、突合せ溶接、その他任意の組み合わせであってよい。例えば、図5(a)に示す変形例のように、端梁5yの上面5yaにおいて、端梁5yの外側面5ybの上端5yb1から構体100の内部100aに向かう領域に、凹部5ya1を形成する。また、延出部3yに、延出部3yと基部3xとの境界部分3xyから構体100の内部100aに向かって延びて凹部5ya1に係合する係合部3yaを形成する。そして、延出部3yにおける端梁5yの上面5yaとの溶接部W1を、係合部3yaの先端と端梁5yの上面5yaとの間に設けられた下向き突合せ溶接部としてよい。ここで、係合部3yaの厚みを、凹部5ya1の深さと等しくしてよい。
・本発明の参考例では図5(b)に示すように、延出部3yにおける端梁5yの下面5ycとの溶接部W2に、突合せ溶接を採用してもよい。
本発明の参考例では、図5(b)に示すように、延出部は、端梁の外側面の下端まで延出してもよい(即ち、突出部を有さなくてもよい)。
上記第2及び第4観点の発明において、延出部は、図5(c)の変形例のように載置部を有さなくてもよい。
本発明の参考例では、妻構体と端梁との溶接に係る溶接姿勢は、特に限定されず、横向き等であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,2 側構体
3,4 妻構体
3b 妻構体の外側面
3x 基部
3y 延出部
3xy 境界部分
3yc 突出部
3yca 内側面
3yd 上方部
3yq 載置
5 台枠
5y 端梁
5ya 端梁の上面
5yb 端梁の外側面
5yb1 上端
5yb2 下端
5yc 端梁の下面
5yq 当接部
5yr 離隔部
6 屋根構体
100 鉄道車両構体
100a 鉄道車両構体の内部
100b 鉄道車両構体の外部
W1,W2 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5