(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヘッドレスト又はシートバックに収納された状態からガス供給を受けて、シート幅方向から見て乗員の頭部に対するシート上方で膨張展開される上ダクトを含む第1バッグと、
前記頭部に対するシート前方で膨張展開される前膨張部を含み、前記第1バッグからガス供給を受けて前記上ダクトにおけるシート前後方向の前端からシート下方に向けて膨張展開される第2バッグと、
前記第1バッグ又は第2バッグからガス供給を受けて、前記頭部に対するシート幅方向の両側で膨張展開される一対の第3バッグと、
前記第1バッグ、第2バッグ、及び一対の第3バッグを一体の袋体として繋ぐ繋ぎ部と、
一端が前記第1バッグにおけるシート前後方向の後部、前記ヘッドレスト又は前記シートバックに接続されると共に、他端が前記第2バッグに接続され、該第2バッグのシート下方への膨張展開に伴って負荷される張力によって前記第2バッグを後方に引っ張る張力構造体と、
を備えた乗員保護装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る乗員保護装置10について、
図1〜
図7に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UPは、車両用シート12の前方向(着座者の向く方向)、上方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート前後方向の前方を向いた場合の左右を示すものとする。なお、この実施形態では、車両用シート12は、シート前後方向が車両の前後方向に一致され、シート上下方向が車両の上下方向に一致され、シート幅方向が車幅方向に一致されている。そして、各図に適宜記す矢印INは、車両用シート12が搭載された車両としての自動車における車幅方向の車両中央側を示している。
【0020】
(乗員保護装置の概略全体構成)
図1、
図2、
図4に示されるように、乗員保護装置10は、車両用シート12に搭載されている。車両用シート12は、図示しない自動車の車体における車幅方向中央に対し左右何れか(本実施形態では左側)にオフセットして配置されている。この車両用シート12は、シートクッション14と、該シートクッション14の後端に下端が連結されたシートバック16と、シートバック16の上端に設けられたヘッドレスト18とを有して構成されている。
【0021】
ヘッドレスト18は、
図5に示されるように、シートバック16に取り付けられたヘッドレスト本体19と、ヘッドレスト18の後部意匠を構成するバックボードとして機能するモジュールケース34(後述)とを含んで構成されている。ヘッドレスト本体19は、ヘッドレストステー19Sを介してシートバック16に取り付けられている。ヘッドレストステー19Sは、シートバック16に支持された下部19SLに対し上部19SUが前方に位置しており、該下部19SLと上部19SUとが傾斜した中間部19SCにて連結されて構成されている。
【0022】
なお、
図1、
図2、
図4等は、保護すべき乗員のモデルとして衝突試験用のダミー(人形)Dが車両用シート12のシートクッション14に着座した状態を図示している。ダミーDは、例えばWorldSID(国際統一側面衝突ダミー:World Side Impact Dummy)のAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)である。このダミーDは、衝突試験法で定められた標準的な着座姿勢で着座しており、車両用シート12は、当該着座姿勢に対応した基準設定位置に位置している。以下、説明を分かり易くするために、ダミーDを「着座者D」と称する。
【0023】
乗員保護装置10は、着座者Dを各種形態の衝突から保護するための多方位エアバッグ装置20と、サイドエアバッグ装置22と、シートベルト装置24とを備えて構成されている。以下、シートベルト装置24、サイドエアバッグ装置22について概略構成を説明し、その後、多方位エアバッグ装置20の詳細構成を説明することとする。
【0024】
シートベルト装置24は、3点式のシートベルト装置とされており、一端がリトラクタ26に引き出し可能に巻き取られたベルト(ウエビング)28の他端がアンカ24Aに固定されている。ベルト28にはタングプレート24Tがスライド可能に設けられており、このタングプレート24Tをバックル24Bに係止させることで、ベルト28が着座者Dに装着されるようになっている。そして、ベルト28は、着座者Dへの装着状態で、該ベルト28のうちリトラクタ26からタングプレート24Tまでのショルダベルト28Sが着座者Dの上体に装着され、タングプレート24Tからアンカ24Aまでのラップベルト28Lが着座者Dの腰部Pに装着される構成である。
【0025】
この実施形態では、シートベルト装置24は、リトラクタ26、アンカ24A、及びバックル24Bが車両用シート12に設けられている、所謂シート付のシートベルト装置とされている。また、この実施形態では、リトラクタ26は、作動されることで強制的にベルト28を巻き取るプリテンショナ機能を有する。リトラクタ26のプリテンショナ機能は、後述するECU60によって作動されるようになっている。
【0026】
サイドエアバッグ装置22は、インフレータ22Aと、サイドエアバッグ22Bとを備えて構成されており、サイドエアバッグ22Bの折り畳み状態でシートバック16における車幅方向外側の側部に収納されている。インフレータ22Aは、作動されるとサイドエアバッグ22B内でガスを発生するようになっている。このガスによってサイドエアバッグ22Bは、シートバック16の側部から前方に突出され着座者Dに対する車幅方向外側で膨張展開する構成とされている。この実施形態では、サイドエアバッグ22Bは、着座者Dの腰部P、腹部A、胸部B、肩部Sに対する車幅方向外側で膨張展開する構成とされている。
【0027】
(多方位エアバッグ装置の構成)
図1及び
図4(A)に示されるように、多方位エアバッグ装置20は、エアバッグとしての多方位エアバッグ30と、インフレータ32と、モジュールケース(エアバッグケースともいう)34とを有して構成されている。多方位エアバッグ30は、後述するようにインフレータ32がガス供給可能に接続された状態で折り畳まれ、モジュールケース34内に収納されている。このようにモジュール化された多方位エアバッグ装置20は、シートバック16上においてヘッドレスト18に設けられている。以下、具体的に説明する。
【0028】
<多方位エアバッグ>
多方位エアバッグ30は、平断面視で
図3(A)に示されるように、着座者Dの頭部H(以下、単に「頭部H」という場合がある)を前方及び左右両側方から取り囲むように膨張展開される一体の袋体として構成されている。より具体的には、
図1〜
図3に示されるように、多方位エアバッグ30は、ダクト状に膨張展開されるフレームダクト35と、頭部Hの前方で展開される前展開部36と、頭部Hの左右両側方で展開される一対の横展開部38とを含んで構成されている。
【0029】
多方位エアバッグ30は、少なくともフレームダクト35と、前展開部36の後述する前膨張部40と、横展開部38の後述する横膨張部44とが、連通状態で区画された一体の袋体として構成されており、折り畳み状態でヘッドレストに収納されている。この実施形態における多方位エアバッグ30は、頭部Hの上方で展開される上展開部48と、頭部Hの後方で展開される後展開部55とをさらに含んで構成されている。
【0030】
[フレームダクト]
フレームダクト35は、シート幅方向の両側にそれぞれ設けられて一対を成しており、それぞれ側面視で(シート幅方向から見て)下向きに開口する「U」字状に膨張展開される構成である。具体的には、フレームダクト35は、膨張展開状態における側面視で、ヘッドレスト18に沿って上下に延びる後ダクト35Rと、後ダクト35Rの上端から前方に延びる上ダクト35Uと、上ダクト35Uの前端から垂下される前ダクト35Fとを含んでいる。
図6にフラットパターンにて示すように、後ダクト35Rの下端には、後述するようにインフレータ32からガスが供給されるガス供給口を成す供給筒56が繋がっている。
【0031】
このフレームダクト35における上ダクト35U及び後ダクト35Rが本発明における第1バッグに相当する。また、フレームダクト35における前ダクト35Fが、前展開部36における後述する前膨張部40と共に本発明における第2バッグに相当する。
【0032】
[前展開部]
前展開部36は、頭部Hの正面で展開される部分を含む前膨張部40と、前膨張部40を複数の膨張部に区画する非膨張部42とを含んで構成されている。この実施形態では、前膨張部40は、それぞれ上下方向を長手方向としてシート幅方向に隣接して膨張展開される一対の上下膨張部40Aと、一対の上下膨張部40Aの下方に位置する下膨張部40Lとを含んで構成されている。一対の上下膨張部40Aは、頭部Hの前方(正面)で膨張展開される構成とされ、下膨張部40Lは、着座者Dの胸部B及び肩部Sの前方で膨張展開される構成とされている。
【0033】
非膨張部42は、一対の上下膨張部40Aをシート幅方向に区画する非膨張部42Aと、各上下膨張部40Aとフレームダクト35の前ダクト35Fとの間に介在される非膨張部42Bとを含んで構成されている。この実施形態では、非膨張部42Aは上下に延びる線状のシームにて構成され、非膨張部42Bは上下に延びる環(無端)状のシームにて囲まれた部分として構成されている。また、前膨張部40は、下膨張部40Lの長手方向両端において、連通部40R(
図6参照)を通じて前ダクト35Fの下部と連通されている。また、下膨張部40Lには、一対の上下膨張部40Aの下端が全体として連通されている。
【0034】
[横展開部]
横展開部38は、ガス供給を受けて頭部Hの側方で膨張展開される横膨張部44を主要部として構成されている。この実施形態では、膨張展開状態の横膨張部44は、側面視で下向きに開口するU字状を成すシームである非膨張部46を介して接続されているフレームダクト35によって、後方、上方、前方の三方から囲まれており、側面視で略矩形状を成している。この横膨張部44は、その前端側がフレームダクト35の前ダクト35Fを介して間接的に前膨張部40に接続されている。また、横膨張部44すなわち横展開部38は、側面視で頭部Hのほぼ全体にラップする大きさ(面積)を有している。この横展開部38の横膨張部44が本発明における第3バッグに相当する。
【0035】
左右の横展開部38は、
図3(B)に示されるように、多方位エアバッグ30の膨張展開状態で、それぞれの横膨張部44の下端44Bが着座者Dの肩部S上に接触するようになっている。この横膨張部44の下端44Bの肩部Sに対する接触によって、膨張展開状態の多方位エアバッグ30の着座者D(の頭部H)に対する上下方向の位置が決まる構成である。この位置決め状態で多方位エアバッグ30は、通常の着座姿勢をとる着座者Dに対して、前展開部36、左右の横展開部38、及び後述する上展開部48の何れも頭部Hと接触しない(隙間が形成される)構成とされている。
【0036】
[上展開部及び後展開部]
上展開部48は、
図6に示されるように、それぞれシート幅方向を長手方向として膨張展開される前後一対のクロス膨張部48Aと、前後のクロス膨張部48A間を繋ぐ布状の非膨張部48Bとを含んで構成されている。また、上展開部48は、前側のクロス膨張部48Aと前展開部36(一対の上下膨張部40A)の上端とを繋ぐ布状の非膨張部48Cを含んで構成されている。なお、後側のクロス膨張部48Aは、後展開部55を介してモジュールケース34に接続されている(図示省略)。この実施形態では、後展開部55は、布状の非膨張部とされている。
【0037】
前後のクロス膨張部48Aは、後述するようにフレームダクト35の上ダクト35Uからガス供給を受けて、一対の上ダクト35Uをシート幅方向に連結して膨張展開されるようになっている。これにより、前後のクロス膨張部48Aは、上ダクト35Uとで連続する一体の膨張部を、頭部Hの上方で展開させる構成とされている。また、非膨張部48Bは、前後のクロス膨張部48A間で、上ダクト35Uをシート幅方向に繋いで展開されるようになっている。一方、後展開部55は、一対のフレームダクト35の後ダクト35Rをシート幅方向に繋いで展開されるようになっている。
【0038】
[フラットパターン]
次に、多方位エアバッグ30の各部へのガス供給経路について、
図6に示すフラットパターンを参照しつつ説明する。多方位エアバッグ30は、周縁部の一部が接合される前でかつ折り畳みの前には、
図6に示されるような展開形状(フラットパターン)とされている。この展開形状の多方位エアバッグ30は、OPW(One Piece Wovenの略)により一体の袋体として形成されている。なお、例えば2枚の織物の周縁を縫い合わせる方法(Cut & Sew)にて多方位エアバッグ30を一体の袋体として形成しても良い。
【0039】
多方位エアバッグ30は、
図6に示す状態から、フレームダクト35の上ダクト35Uが上展開部48の側縁48Sに縫合等により接合されると共に、フレームダクト35の後ダクト35Rが後展開部55の側縁55Sに縫合等により接合されている(図示省略)。また、一端が上ダクト35Uに連通された状態でフレームダクト35の上ダクト35Uから突出された前後一対の連通筒54の他端が、縫合等によってクロス膨張部48Aのシート幅方向両端の開口端部48Dに連通状態で接合されている。一方、フレームダクト35の後ダクト35Rの下端からは、該後ダクト35Rに連通された供給筒56が下向きに突出されている。
【0040】
左右の供給筒56は、モジュールケース34内でヘッドレスト18をシート幅方向に挟んで配置されており、それぞれインフレータ32からのガスが通過されるようになっている。すなわち、多方位エアバッグ30は、左右の供給筒56を通じて、先ずはフレームダクト35にガスが供給される構成とされている。図示は省略するが、インフレータ32は、ディフューザ等の分流手段を介して左右の供給筒56に連通状態で接続されている。
【0041】
また、多方位エアバッグ30では、上記した通り、前膨張部40における下膨張部40Lのシート幅方向両側の端部に形成された連通部40Rを通じて、フレームダクト35から前膨張部40にガスが供給されるようになっている。前膨張部40では、下膨張部40Lに供給されたガスが、一対の上下膨張部40Aに供給される構成である。
【0042】
さらに、多方位エアバッグ30では、非膨張部46の前下端の下方に形成された連通部44R1を通じて、フレームダクト35から横膨張部44にガスが供給されるようになっている。この実施形態では、横膨張部44における非膨張部46の後下端の下方に形成された連通部44R2を通じても、フレームダクト35から横膨張部44にガスが供給されるようになっている。なお、多方位エアバッグ30は、連通部44R2が形成されない構成としても良い。
【0043】
上記構成の多方位エアバッグ30において、フレームダクト35における上ダクト35Uと前ダクト35Fとの境界部分、フレームダクト35と横膨張部44との間に位置する非膨張部46、連通部44R1、44R2が、本発明の第1〜第3バッグを一体の袋体として繋ぐ繋ぎ部に相当する。
【0044】
<その他>
以上説明した多方位エアバッグ30は、上記の通りフラットパターンから周縁の一部が接合された状態から折り畳まれ、ヘッドレスト18内(モジュールケース34)に収納されるようになっている。多方位エアバッグ30の折り畳み形態については、展開誘導布58の構成と併せて、モジュールケース34の構成と共に後述する。
【0045】
また、着座者Dを拘束しない無拘束の膨張展開状態の多方位エアバッグ30は、
図1に示されるように、着座者Dを拘束しない無拘束の膨張展開状態のサイドエアバッグ22Bに側面視で重ならない(ラップしない)構成とされている。換言すれば、多方位エアバッグ30とサイドエアバッグ22Bとは、互いの無拘束の膨張展開状態で、少なくとも側面視でラップする膨張展開部分を互いに有しない構成とされている。また、
図2に示されるように、無拘束の膨張展開状態の多方位エアバッグ30は、着座者Dを拘束しない無拘束の膨張展開状態のサイドエアバッグ22Bに正面視で重ならない構成とされている。
【0046】
[張力構造体]
また、
図1に示されるように、多方位エアバッグ装置20すなわち乗員保護装置10は、前ダクト35Fの膨張展開に伴って該前ダクト35Fを後方に引っ張る張力構造体64を備えている。
図2及び
図3では図示は省略するが、張力構造体64は、多方位エアバッグ30のシート幅方向の両外側に設けられている。
図7(A)、
図7(B)にも示されるように、張力構造体64は、後端がフレームダクト35の後部を成す後ダクト35Rに接続されると共に、前端が前ダクト35Fにおける上下に離れた2箇所に接続されている。
【0047】
より具体的には、張力構造体64は、後ストラップ64Rと、前上ストラップ64FUと、前下ストラップ64FLとを含んで構成されている。後ストラップ64Rは、多方位エアバッグ30の膨張展開状態で前後方向に延び、後端が接続点66Rにて後ダクト35Rに接続されている。前上ストラップ64FU、前下ストラップ64FLは、それぞれの後端が接続点68にて後ストラップ64Rの前端に接続されている。前上ストラップ64FUの前端は、接続点66FUにて前ダクト35Fの上部に接続されている。前下ストラップ64FLの前端は、接続点66FLにて前ダクト35Fの下部に接続されている。
【0048】
なお、各接続点66R、66FU、66FLは多方位エアバッグ30に対する固定点とされ、接続点68は多方位エアバッグ30に対しては非接続(非固定)点とされている。この実施形態では、張力構造体64は、多方位エアバッグ30の膨張展開状態で、側面視で横臥した「Y」字状を成す構成とされている。
【0049】
張力構造体64は、多方位エアバッグ30と共に折り畳まれた(外ロール折りされた)状態でヘッドレスト18内に収納されている。そして、張力構造体64は、多方位エアバッグ30の膨張展開過程で、前ダクト35Fの下方への膨張展開に伴って接続点66FU、66FLが上下に離れることで、前後方向の張力が負荷され、該張力によって前ダクト35Fを後方に引っ張る構成とされている。この引張作用については、本実施形態の作用と共に後述する。
【0050】
[インフレータ]
インフレータ32は、燃焼式又はコールドガス式のものが採用され、作動されることで発生したガスを多方位エアバッグ30内に供給するようになっている。この実施形態では、インフレータ32は、シリンダ型のインフレータとされ、モジュールケース34内でシート幅方向を長手方向として配置されている。このインフレータ32は、後述する制御装置としてのECU60によって作動が制御されるようになっている。
【0051】
[モジュールケース]
図1及び
図5に示されるように、モジュールケース34は、シートバック16上におけるヘッドレスト本体19の後方に配置されている。この実施形態では、モジュールケース34は、ヘッドレスト18(の後部意匠)を構成するバックボードとされている。すなわち、本実施形態におけるモジュールケース34は、多方位エアバッグ装置20の要素と、ヘッドレスト18の要素とを兼ねて構成されている。したがって、多方位エアバッグ30は、ヘッドレスト18の後部の内側(内部)に配設されていることとなる。
【0052】
モジュールケース34は、正面視ではヘッドレスト本体19の上端よりも上方に突出すると共に、ヘッドレスト本体19に対しシート幅方向の両側に張り出している。すなわち、モジュールケース34は、ヘッドレスト本体19を後方から覆っている。この実施形態では、モジュールケース34は、ヘッドレスト本体19の後部を上方及び左右両側方から覆っており、上記の通りヘッドレスト18の後部意匠を構成している。
【0053】
より具体的には、モジュールケース34は、ベース部34Bと、後壁としての主壁34Mと、シート幅方向に対向する一対の側壁34Sとを主要部として構成されている。ベース部34Bは、シートバック16の上端に対する固定部とされている。
【0054】
主壁34Mは、ベース部34Bの後端から上方に延出されており、シートバック16上に固定された下端に対し上端が前方に位置するように前傾され、かつ側面視で後上向きに凸となる湾曲形状を成している。主壁34Mは、正面視でヘッドレスト本体19の上端よりも上方に突出すると共に、ヘッドレスト本体19に対しシート幅方向の両側に張り出している。
【0055】
主壁34Mとヘッドレスト本体19との間には、折り畳み状態の多方位エアバッグ30を収納する空間が形成されている。また、主壁34Mの上端は、ヘッドレスト本体19の上方まで至っている。この主壁34Mの上端部とヘッドレスト本体19との間を、膨張展開過程の多方位エアバッグ30が通過する構成とされている。
【0056】
一対の側壁34Sは、主壁34Mのシート幅方向両端から前方に延出されており、側面視でヘッドレスト本体19の後部を覆っている。一対の側壁34Sとヘッドレスト本体19との間を、膨張展開状態の多方位エアバッグ30における主に後ダクト35Rが通る構成とされている。
【0057】
以上説明したモジュールケース34は、ヘッドレスト本体19との間に折り畳み状態の多方位エアバッグ30を収納している。また、この多方位エアバッグ30の左右の供給筒56は、モジュールケース34内で、上記の通りヘッドレスト本体19をシート幅方向に挟んで配置されている。そして、ディフューザ等の分流手段を介して左右の供給筒56に接続されたインフレータ32が、そのスタッドボルトがモジュールケース34のベース部34Bを貫通した状態で、シートバックフレームに締結されている。
【0058】
また、多方位エアバッグ30は、外ロール折りされてモジュールケース34内に収納されている。外ロール折りとは、
図5に示されるように側面視でフレームダクト35の展開過程を逆向きに、前端側から上方側かつ後方側に向けたロール状の折り態様とされている。換言すれば、外ロール折りは、
図5に想像線にて示されるように、多方位エアバッグ30の展開過程でロール折り部分30Rが頭部H側とは反対側に位置する折り態様とされる。上記の通り横展開部38が上展開部48及び後展開部55に接合されている多方位エアバッグ30は、前展開部36及びフレームダクト35が外ロール折りされる前に横展開部38が内側に折り込まれている。なお、
図5においては、張力構造体64の図示を省略している。
【0059】
この折り畳み状態の多方位エアバッグ30は、少なくとも一部がヘッドレスト本体19のヘッドレストステー19Sにおける上部19SU、中間部19SCの後方に配置されている。この実施形態のヘッドレスト本体19は、ヘッドレストステー19Sにおける上部19SU、中間部19SCの後方のクッション材(パッド)19Cが薄く形成され、該クッション材19Cとモジュールケース34との間に折り畳み状態の収納空間が形成されている。多方位エアバッグ30は、インフレータ32からガス供給を受けると、外ロール折りが解消されながら、クッション材19Cとモジュールケース34との間からモジュールケース34外に向けて膨張展開される構成である。
【0060】
この際、モジュールケース34の主壁34Mは、膨張展開過程の多方位エアバッグ30を後方から支持する(前方へ向かうための反力をとる)構成されている。またこの際、モジュールケース34の主壁34Mは、上記した側面視での湾曲形状により、膨張展開過程の多方位エアバッグ30を前方(前上方)に向けて案内する構成とされている。したがって、この実施形態における主壁34Mは、支持壁、案内壁として機能するようになっている。
【0061】
また、このモジュールケース34内では、誘導布としての展開誘導布58が多方位エアバッグ30と共に折り畳まれて収納されている。モジュールケース34内で展開誘導布58は、上記の通り外ロール折りされた多方位エアバッグ30に対する外側(主壁34M側)に配置された基部がインフレータ32又は多方位エアバッグ30における基端側の部分である後展開部55に接続されている。一方、展開誘導布58の先端側は多方位エアバッグ30のロール折り部分30Rをロール方向(
図5では時計方向)とは反対向き(反時計方向)に覆うように該外ロール折り部分30Rの内側(ヘッドレスト18側)に配置されている。
【0062】
この展開誘導布58は、
図5に想像線にて示されるように多方位エアバッグ30の膨張展開(ロール折り解消)に伴ってモジュールケース34外に導出され、多方位エアバッグ30に先行して該多方位エアバッグ30と車室天井との間で展開されるようになっている。また、展開誘導布58は、乗員保護装置10が適用された自動車の天井材よりも多方位エアバッグ30に対する摩擦係数が小さくされている。この実施形態では、展開誘導布58の車室天井側の面はシリコンコートが施されており、展開誘導布58の多方位エアバッグ30との接触面はシリコンコートが施されない低摩擦面とされている。
【0063】
図4(B)に示されるように、正面視でモジュールケース34とヘッドレスト本体19との間はエアバッグドア33にて閉止されている。エアバッグドア33は、多方位エアバッグ30の展開圧によって脆弱部であるティアライン33Tをきっかけに開裂されることで、該多方位エアバッグ30の前方への膨張展開を許容する構成とされている。
【0064】
(ECUの構成)
乗員保護装置10を構成する多方位エアバッグ装置20、サイドエアバッグ装置22、及びシートベルト装置24は、
図4(A)に示されるように、制御装置としてのECU60によって制御されるようになっている。具体的には、多方位エアバッグ装置20のインフレータ32、サイドエアバッグ装置22のインフレータ22A、シートベルト装置24のリトラクタ26(プリテンショナ機能)は、それぞれECU60に電気的に接続されている。また、ECU60は、衝突センサ62(又はセンサ群)と電気的に接続されている。
【0065】
ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいて、適用された自動車に対する各種形態の前面衝突(の発生又は不可避であること)を後述する衝突形態毎に検知又は予測可能とされている。また、ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいて、適用された自動車に対する側面衝突(の発生又は不可避であること)を検知又は予測可能とされている。
【0066】
ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいて側面衝突を検知又は予測すると、インフレータ22A、32を作動させるようになっている。また、ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいて前面衝突を検知又は予測すると、インフレータ32、リトラクタ26を作動させるようになっている。なお、ECU60がインフレータ32、リトラクタ26を作動させる前面衝突の形態は、フルラップ前面衝突、オフセット前面衝突等とされる。
【0067】
そして、ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいて前面衝突のうち車幅方向一方側に所定値以上オフセットした位置への前面衝突を検知又は予測すると、インフレータ22A、32、及びリトラクタ26を作動させるようになっている。このような車幅方向一方側に所定値以上オフセットした位置への前面衝突には、斜め衝突や微小ラップ衝突等が含まれる。
【0068】
ここで、斜め衝突(MDB斜突、オブリーク衝突)とは、例えばNHTSAにて規定される斜め前方からの衝突(一例として、衝突相手方との相対角15°、車幅方向のラップ量35%程度の衝突)とされる。この実施形態では、一例として相対速度90km/hrでの斜め衝突が想定されている。また、微小ラップ衝突とは、自動車の前面衝突のうち、例えばIIHSにて規定される衝突相手方との車幅方向のラップ量が25%以下の衝突とされる。例えば車体骨格であるフロントサイドメンバに対する車幅方向外側への衝突が微小ラップ衝突に該当する。この実施形態では、一例として相対速度64km/hrでの微小ラップ衝突が想定されている。
【0069】
(作用及び効果)
次に、第1の実施形態の作用について説明する。先ず、多方位エアバッグ30の展開性と頭部Hの拘束性に係る基本作用について説明し、その後、各種の衝突形態に対する着座者の保護作用、多方位エアバッグ30の展開性等に係る他の作用を説明することとする。
【0070】
<基本作用の説明>
[フレームダクトによる作用効果]
多方位エアバッグ30は、インフレータ32からガスが供給されると、モジュールケース34及び展開誘導布58に案内され、外ロール折りが解消されながら、ヘッドレスト18から前方に向けて膨張展開される。モジュールケース34、展開誘導布58、外ロール折りによる作用効果は後述する。
【0071】
多方位エアバッグ30の膨張展開について具体的に説明すると、多方位エアバッグ30は、左右の供給筒56から左右のフレームダクト35にガスが供給されると、フレームダクト35は、後ダクト35R、上ダクト35U、前ダクト35Fの順で膨張展開される。この際、上ダクト35Uは、側面視において頭部Hの上方で前向きに膨張展開され、該上ダクト35Uの前端は頭部Hの上方を通過する。前膨張部40は、フレームダクト35から連通部40Rを通じてガス供給を受けて頭部Hに対する前方で膨張展開される。また、一対の横膨張部44は、それぞれ連通部44R1、44R2を通じてフレームダクト35からガス供給を受けて、頭部Hに対する側方で該頭部Hをシート幅方向に挟むように膨張展開される。これにより、頭部Hは、前膨張部40を含む前展開部36、それぞれ横膨張部44を含む一対の横展開部38によって、前方及びシート幅方向の両側方(三方)から囲まれる。
【0072】
ここで、多方位エアバッグ30では、シート幅方向から見て前端が頭部Hに対する前方に至る上ダクト35Uが前膨張部40、横膨張部44に対し先行して膨張展開される。そして、多方位エアバッグ30の膨張展開過程で上ダクト35Uの前端が頭部Hを越えてから、該上ダクト35Uを含むフレームダクト35における頭部Hに対する前方に至った前ダクト35Fからガス供給を受けた前膨張部40が頭部Hに対する前方で膨張展開される。これにより、前膨張部40を頭部Hに対する前方で高い確度で膨張展開させることができる。そして、このように展開性に寄与するフレームダクト35を備えない構成と比較して、前膨張部40を頭部Hに近接して膨張展開させることができる。
【0073】
このように、第1の実施形態に係る乗員保護装置10では、一体の袋体として構成された多方位エアバッグ30がヘッドレスト18に収納された構成において、前膨張部40を頭部Hの前方で膨張展開させるための多方位エアバッグ30の展開性と、該多方位エアバッグ30による頭部Hの拘束性とを両立することができる。
【0074】
[張力構造体による作用効果]
また、張力構造体64を備えない比較形態の場合、多方位エアバッグの展開性の観点からは問題ないが、膨張展開完了時における前膨張部40を頭部Hに対し一層近接させるには限界がある。この対策として、前膨張部40よりも大容量である前膨張部を備えた比較形態の場合、膨張展開しながら頭部Hの上方を通過する過程で、多方位エアバッグの前膨張部が頭部H又はルーフに干渉しやすい。この多方位エアバッグは、膨張展開過程で頭部H又はルーフに干渉すると、適正な姿勢又配置での膨張展開が阻害される場合がある。
【0075】
ここで、多方位エアバッグ装置20すなわち乗員保護装置10は、前ダクト35Fの膨張展開に伴って該前ダクト35Fを後方に引っ張る張力構造体64を備えている。これにより、頭部Hに対し前方に離れて膨張展開される前膨張部40を該前膨張部40の下方(シート下方)への膨張展開に伴って頭部Hに近づける(後方に移動させる)ことができる。
【0076】
具体的には、多方位エアバッグ30の膨張展開の初期には、
図7(A)に示されるように、フレームダクト35の上ダクト35Uが頭部H(
図7(A)では図示省略)の上方を通過する(超える)ように膨張展開される。この際、前ダクト35F(の一部)はロール折り部分30Rとして展開されていないため、張力構造体64は、前上ストラップ64FU、前下ストラップ64FLが重なるように展開され、側面視で略直線状を成している。また、膨張開始前の横膨張部44は、前ダクト35F(張力構造体64の前端)の前方への移動を阻害しない(余長がある状態となっている)。なお、横膨張部44は、膨張展開が完了されると、その余長が解消されるようになっている。
【0077】
そして、上ダクト35Uから前ダクト35Fにガスが供給されると、
図7(B)に示されるように、前ダクト35Fはロール折り部分30Rの折りが解消されながら、上ダクト35Uの前端から下向きに膨張展開される。これに伴って、前展開部36(前膨張部40)もロール折り部分30Rの折りが解消されながら、下向きに展開される。この前ダクト35Fの膨張展開に伴って、張力構造体64は、前下ストラップ64FLの前ダクト35Fへの接続点66FLが前上ストラップ64FUの前ダクト35Fへの接続点66FUに対し下方に離れる。このため、張力構造体64の前後長(接続点66Rと接続点66FLとの前後距離)が前ダクト35Fの膨張展開に伴って短くなり、該張力構造体64によって前ダクト35Fの下部が後方に引っ張られる。
【0078】
したがって、左右の前ダクト35Fと非膨張部42Bを介して繋がっている前膨張部40は、連通部40Rを通じて前ダクト35Fからガス供給を受けて膨張展開されつつ、後方すなわち頭部Hへ向けて移動される。すなわち、前膨張部40が頭部Hに近接される。
【0079】
以上説明したように、乗員保護装置10では、多方位エアバッグ30の膨張展開の初期には該多方位エアバッグ30の前部(前ダクト35F、前膨張部40)を頭部Hに対し大きく前方へ移動させ、該多方位エアバッグ30の展開性を確保することができる。そして、多方位エアバッグ30の膨張展開の終期には、張力構造体64によって前膨張部40を頭部Hに近接させることができる。
【0080】
このように、乗員保護装置10は、ヘッドレスト18に収納された多方位エアバッグ30の展開性を確保しつつ該多方位エアバッグ30を頭部Hに一層近接して展開させ、該多方位エアバッグ30による頭部Hの拘束性を向上することができる。すなわち、乗員保護装置10は、多方位エアバッグ30の展開性と該多方位エアバッグ30による頭部Hの拘束性とをより高度に両立することができる。
【0081】
また、張力構造体64は、前端側の接続点66FU、66FLが前ダクト35Fにおける上下方向に離れた位置に設定される簡単な構造で、該前ダクト35Fの上下方向(下方へ)の膨張展開に伴って該前ダクト35Fを後方に引っ張る機能を得ることができる。しかも、張力構造体64の前部が前上ストラップ64FUと前下ストラップ64FLとに分かれているため、例えば、側面視で三角形状を成す張力構造体(本発明の範囲に含まれる変形例)と比較して、張力構造体をコンパクトに構成することができる。
【0082】
<側面衝突の場合>
ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいて側面衝突を検知又は予測すると、インフレータ22A、32を作動させる。これにより、
図1、
図2に示されるように、サイドエアバッグ装置22のサイドエアバッグ22Bが着座者Dに対する車幅方向の外側で膨張展開されると共に、多方位エアバッグ装置20の多方位エアバッグ30が着座者Dの頭部Hを取り囲むように膨張展開される。以下に説明するニアサイドの側面衝突は、着座者Dに対し車幅方向で近い側の車両側面への側面衝突であり、ファーサイドの側面衝突は、着座者Dに対し車幅方向で遠い側の車両側面への側面衝突である。したがって例えば、着座者Dが運転席乗員である場合、ニアサイドの側面衝突は運転席側への側面衝突であり、ファーサイド側面衝突は助手席側への側面衝突である。
【0083】
[ニアサイドの側面衝突]
側面衝突が車幅方向における車両用シート12の設置側で生じた場合、着座者Dは、サイドエアバッグ22Bによって上体のサイドドア側への移動が制限されると共に、車幅方向外側の横展開部38によって頭部Hのサイドウインドウガラス側への移動が制限される。すなわち、着座者Dは、サイドエアバッグ22B及び車幅方向外側の横展開部38によって、上体及び頭部Hにおいて拘束され、側面衝突に対し保護される。
【0084】
これにより、頭部Hの衝突側への移動を制限することができる。しかも、横展開部38が横膨張部44を含んでいるため、頭部Hの拘束過程で横膨張部44の変形によるエネルギ吸収が果たされる。例えば頭部Hがサイドウインドウガラスまで移動する場合でも、頭部Hに入力される荷重のピークが小さく抑えられる。
【0085】
さらに、サイドエアバッグ22B及び車幅方向外側の横展開部38による着座者Dの保護後の揺り戻しの際には、該着座者Dの頭部Hは、車幅方向中央側の横展開部38にて反衝突側への移動が制限される。これにより、例えば、着座者Dの頭部Hと隣席のシートバックや隣席乗員との干渉が抑制される。
【0086】
[ファーサイドの側面衝突]
一方、側面衝突が車幅方向における車両用シート12の設置側とは反対側で生じた場合、着座者Dは、車幅方向中央側の横展開部38によって頭部Hの衝突側(車幅方向の中央側)への移動が制限される。すなわち、着座者Dは、車幅方向中央側の横展開部38によって、頭部Hが拘束され、側面衝突に対し保護される。
【0087】
これにより、頭部Hの衝突側への移動を制限することができる。しかも、横展開部38が横膨張部44を含んでいるため、頭部Hの拘束過程で横膨張部44の変形によるエネルギ吸収が果たされる。例えば頭部Hが隣席のシートバックや隣席乗員と干渉し得る領域まで移動する場合でも、頭部Hに入力される荷重のピークが小さく抑えられる。
【0088】
さらに、車幅方向中央側の横展開部38による着座者Dの頭部Hの保護後の揺り戻しの際には、該着座者Dは、車幅方向外側の横展開部38及びサイドエアバッグ22Bにて反衝突側への移動が制限される。これにより、例えば、着座者Dの頭部Hとサイドウインドウガラスとの干渉が抑制される。
【0089】
<フルラップ又はオフセット前面衝突>
ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいてフルラップ前面衝突を検知又は予測すると、インフレータ32、リトラクタ26を作動させる。これにより、シートベルト装置24のベルト28がリトラクタ26により強制的に巻き取られると共に、多方位エアバッグ装置20の多方位エアバッグ30が着座者Dの頭部Hを取り囲むように膨張展開される。
【0090】
フルラップ前面衝突の場合、着座者Dは、慣性によってまっすぐ前方へ移動する。なお、シートベルト装置24のベルト28が装着されている着座者Dの前方への移動は、腰部Pを中心に着座者Dの上体が前傾する形態となる。着座者Dは、ショルダベルト28Sによって拘束され(前方への移動に対する抵抗を受け)つつ、頭部Hが多方位エアバッグ30の前展開部36に接触する。これにより、頭部Hは、前展開部36の一対の上下膨張部40Aによって、前方への移動が制限される。また、前膨張部40の下膨張部40Lが着座者Dの胸部B、肩部Sに前方から接触し、該前膨張部40の下膨張部40Lによって着座者Dの上体(頭部H)の前方への移動が制限される。
【0091】
特に、上記の通り前ダクト35Fの下方への膨張展開に伴って前膨張部40の下部が後方に引っ張られるため、該前膨張部40の下膨張部40Lが着座者Dの肩部S、胸部Bに押し付けられる。これにより、頭部Hの前方への移動前に着座者Dの上体をしっかり拘束(エネルギ吸収)することができ、頭部Hの前方への移動が一層効果的に制限される。
【0092】
このように、着座者Dは、前展開部36によって、頭部H及び上体が拘束され、フルラップ前面衝突に対し保護される。すなわち、着座者Dの頭部H及び上体の前方への移動を制限することができる。
【0093】
しかも、前展開部36の前膨張部40が着座者Dの前方で膨張展開されるため、頭部H、胸部B、肩部Sの拘束過程で前膨張部40の変形によるエネルギ吸収が果たされる。これにより、例えば、頭部Hが車室内構成品(ステアリングホイールやインストルメントパネル等)と干渉し得る領域まで移動する場合でも、頭部Hに入力される荷重のピークが小さく抑えられる。
【0094】
以上、フルラップ前面衝突の場合を説明したが、例えば相手方車両との車幅方向のラップ量が50%程度であるオフセット前面衝突の場合の作用も、上記したフルラップ前面衝突の場合と概ね同様である。
【0095】
<斜め衝突又は微小ラップ衝突>
ECU60は、衝突センサ62からの情報に基づいて斜め衝突を検知又は予測すると、インフレータ22A、32、及びリトラクタ26を作動させる。これにより、シートベルト装置24のベルト28がリトラクタ26により強制的に巻き取られると共に、多方位エアバッグ装置20の多方位エアバッグ30が着座者Dの頭部Hを取り囲むように膨張展開される。また、サイドエアバッグ装置22のサイドエアバッグ22Bが着座者Dに対する車幅方向の外側で膨張展開される。以下、斜め衝突の場合についてさらに説明するが、微小ラップ衝突の場合における乗員保護装置10による着座者Dの保護態様についても、斜め衝突の場合の乗員保護装置10による着座者Dの保護態様と概ね同様である。
【0096】
[ニアサイドの斜め衝突]
斜め衝突が車幅方向における車両用シート12の設置側への斜め衝突であった場合、着座者Dは、
図3(A)に矢印Xにて示すように、前方に移動しつつ、車体に対し車幅方向の衝突側である車幅方向外側に移動する。この場合も、3点式のシートベルト装置24が装着された着座者Dの前方への移動は、腰部Pを中心に前傾する形態となる。
【0097】
この場合、着座者Dは、サイドエアバッグ22B並びに多方位エアバッグ30を構成する前展開部36及び車幅方向外側の横展開部38によって、斜め前方衝突側(フロントピラー側)への移動が制限される。すなわち、着座者Dは、サイドエアバッグ22B並びに多方位エアバッグ30を構成する前展開部36及び車幅方向外側の横展開部38によって、上体及び頭部Hにおいて拘束され、斜め衝突に対し保護される。
【0098】
これにより、頭部Hの斜め前方衝突側への移動を制限することができる。しかも、前展開部36及び車幅方向外側の横展開部38は、それぞれ前膨張部40、横膨張部44を含んでいる。このため、頭部H等の拘束過程で前膨張部40及び横膨張部44の少なくとも一つの膨張部の変形によるエネルギ吸収が果たされる。これにより、例えば、頭部Hがフロントピラーまで移動する場合でも、頭部Hに入力される荷重のピークが小さく抑えられる。
【0099】
[ファーサイドの斜め衝突]
斜め衝突が車幅方向における車両用シート12の設置側とは反対側への斜め衝突であった場合、着座者Dは、
図3(A)に矢印Yにて示すように、前方に移動しつつ、車体に対し車幅方向の衝突側である車幅方向中央側に移動する。この場合も、3点式のシートベルト装置24が装着された着座者Dの前方への移動は、腰部Pを中心に前傾する形態となる。
【0100】
この場合、着座者Dは、多方位エアバッグ30を構成する前展開部36及び車幅方向中央側の横展開部38によって、斜め前方衝突側(センタクラスタ側)への移動が制限される。すなわち、着座者Dは、前展開部36及び車幅方向中央側の横展開部38によって、頭部Hにおいて拘束され、斜め衝突に対し保護される。
【0101】
これにより、頭部Hの斜め前方衝突側への移動を制限することができる。しかも、前展開部36及び車幅方向中央側の横展開部38は、それぞれ前膨張部40、横膨張部44を含んでいる。このため、頭部H等の拘束過程で前膨張部40及び横膨張部44の少なくとも一つの膨張部の変形によるエネルギ吸収が果たされる。これにより、例えば、頭部Hがインストルメントパネルやセンタクラスタ等の車室内構成品まで移動する場合でも、頭部Hに入力される荷重のピークが小さく抑えられる。
【0102】
<衝突に対する保護作用のまとめ>
以上説明したように、第1の実施形態に係る乗員保護装置10では、ヘッドレスト18に収納された多方位エアバッグ30を膨張展開させて、側面衝突、斜め衝突を含む各種形態の前面衝突(複数方向からの衝突)に対し着座者Dを効果的に保護することができる。そして、多方位エアバッグ30は、前展開部36、横展開部38が上展開部48等とで頭部Hを取り囲むように展開される一体の袋体として構成されている。このため、多方位エアバッグ30は、各展開部が強固に繋がっていると共に、頭部H、胸部B、肩部Sを拘束する際の荷重(反力)が車両用シート12に支持される。したがって、多方位エアバッグ30は、複数のエアバッグ(膨張部)が乗員の拘束の際に接合される構成と比較して、大きな拘束力で乗員を拘束することができる。
【0103】
一方、乗員保護装置10では、多方位エアバッグ30がヘッドレスト18(ヘッドレスト本体19の後方に設けられたモジュールケース34)内に収納されている。このため、乗員保護装置10は、例えば、乗員の頭部を上方から囲むように配置されたガス供給パイプが常時車室内に突出している構成と比較して、同等以上の乗員保護性を確保しつつ作動前における見栄えが良好である。また、乗員保護装置10(主に多方位エアバッグ装置20)は、車両用シート12の前後位置調整、高さ調整、リクライニング動作等を妨げることがない。
【0104】
また、乗員保護装置10では、多方位エアバッグ30とサイドエアバッグ22Bとが互いの無拘束での膨張展開状態において側面視で重ならない。このため、多方位エアバッグ30及びサイドエアバッグ22Bが共に膨張展開される衝突形態において、互いの膨張展開に干渉することがなく適正に膨張展開される。したがって、多方位エアバッグ30によって着座者Dの頭部Hを拘束し、サイドエアバッグ22Bによって着座者Dの肩部Sから腰部Pまでの範囲を側方から拘束することができる。
【0105】
<その他の作用効果>
[適正な膨張展開による拘束性向上]
また、乗員保護装置10を構成する多方位エアバッグ装置20では、多方位エアバッグ30の横展開部38を構成する横膨張部44の下端44Bが着座者Dの肩部S上に接触することで、着座者Dに対する多方位エアバッグ30の上下方向の位置が決まる。このため、例えば着座者Dの体格や適正範囲の着座姿勢の個人差によらず、多方位エアバッグ30を上下方向の適切な位置で膨張展開させることができる。これにより、多方位エアバッグ30による着座者Dの拘束性(移動制限性能)が向上される。
【0106】
[多方位エアバッグ自体による膨張展開性の確保]
またさらに、多方位エアバッグ30は、外ロール折りされた状態でヘッドレスト18内に収納されている。このため、多方位エアバッグ30における膨張展開過程で折りを解かれる部分であるロール折り部分30Rがフレームダクト35の上方に位置する。このため、折りを解かれる部分が下方すなわち着座者Dの頭部H側に位置する構成と比較して、多方位エアバッグ30は、フレームダクト35へのガス流通に伴って前方へ展開されつつ着座者Dの頭部Hを越える態様で展開されやすい。
【0107】
特に、多方位エアバッグ30では、前膨張部40が一対のフレームダクト35の前ダクト35Fのそれぞれに接合されている。このため、前膨張部40(前展開部36)は、前ダクト35Fの膨張展開に伴って上下に展開されてから、膨張されることとなり、膨張展開過程で頭部Hに干渉し難い。また、多方位エアバッグ30では、各横膨張部44が対応するフレームダクト35の前ダクト35F及び上ダクト35Uのそれぞれに接合されている。このため、横膨張部44(横展開部38)は、前ダクト35Fの膨張展開に伴って展開されてから膨張されることとなり、膨張展開過程で頭部Hに干渉し難い。
【0108】
また、多方位エアバッグ30は、シート幅方向に離間して膨張展開される一対のフレームダクト35の上ダクト35Uを連結するクロス膨張部48Aを有する。すなわち、多方位エアバッグ30のクロス膨張部48Aと一対の上ダクト35Uとで連続する一体の膨張部を頭部Hの上方に形成するため、一体の袋体として構成された多方位エアバッグ30は、安定して膨張展開されやすい。
【0109】
[展開誘導布による多方位エアバッグの膨張展開性の確保]
さらに、乗員保護装置10を構成する多方位エアバッグ装置20は、多方位エアバッグ30と接触する側の面が低摩擦面とされた展開誘導布58を備えている。この展開誘導布58は、多方位エアバッグ30の膨張展開に伴って、該多方位エアバッグ30に先行して自動車の車室天井に沿って展開される。この展開誘導布58は、多方位エアバッグ30に対して車室天井材よりも低摩擦であるため、展開誘導布58を備えない構成と比較して、多方位エアバッグ30をスムースに膨張展開させることができる。
【0110】
これにより、膨張展開過程の多方位エアバッグ30が、車室天井や該天井に設けられた部材等に引っ掛かることが展開誘導布58にて抑制される。換言すれば、多方位エアバッグ30を前方に向けて膨張展開させるガイド(上方への移動を制限するリミッタ)として車室天井を利用しつつ、該多方位エアバッグ30をスムースに膨張展開させることができる。
【0111】
[モジュールケースによる多方位エアバッグの膨張展開性の確保]
またさらに、乗員保護装置10を構成する多方位エアバッグ装置20では、モジュールケース34がヘッドレスト本体19に対し上方及びシート幅方向の両側に張り出している。このため、モジュールケース34における正面視でヘッドレスト本体19に対しシート幅方向に張り出している部分(ヘッドレスト本体19との隙間部分)から多方位エアバッグ30を前方へ展開させることができる。これにより、ヘッドレスト本体19を上部のみから前方へ展開される多方位エアバッグを備えた構成と比較して、多方位エアバッグ30の膨張展開を短時間で完了させることができる。
【0112】
また、モジュールケース34は、ヘッドレスト本体19の後方で該ヘッドレスト本体19との間に多方位エアバッグ30を収納しており、その主壁34Mが膨張展開過程の多方位エアバッグ30を後方から支持する。このため、多方位エアバッグ30は、膨張展開に伴って主壁34Mによって後方から反力が支持され、後方に向かうことなく前方に向けて膨張展開される。これにより、モジュールケース34に主壁が支持壁(の機能)を有しない構成と比較して、多方位エアバッグ30を適正な態様(位置、形状)で膨張展開させることができる。
【0113】
さらに、モジュールケース34の主壁34Mは、下端に対し上端が前方に位置するように、側面視で後上向きに凸となる湾曲形状を成している。このため、ヘッドレスト本体19の後方で折り畳み状態とされた多方位エアバッグ30は、膨張展開初期にはモジュールケース34内で上方に向かいつつ、モジュールケース34外へ展開される際には主壁34Mによって上前方に向けて案内される。すなわち、膨張展開過程の多方位エアバッグ30は、モジュールケース34の主壁34Mによって前上方に案内されることで、着座者Dの頭部Hを越えつつ前方へ展開される。これにより、主壁34Mが案内壁(の機能)を有しない構成と比較して、多方位エアバッグ30を適正な態様(経路)で膨張展開させることができる。
【0114】
[モジュールケース等による他の効果]
また、乗員保護装置10を構成する多方位エアバッグ装置20では、多方位エアバッグ30及びインフレータ32を収納したモジュールケース34をヘッドレスト本体19の後方に配置している。このため、例えば多方位エアバッグ30及びインフレータ32をシートバック16内に収納する構成と比較して、車両用シート12の構造による制約を受け難い。換言すれば、車両用シート12の構造を大きく変更することなく、該車両用シート12に多方位エアバッグ装置20を設けることができる。
【0115】
さらに、折り畳み状態の多方位エアバッグ30は、ヘッドレストステー19Sにおける上部19SU、中間部19SCの後方に配置されている。これにより、多方位エアバッグ30は、例えば、上下方向に沿ったストレート形状のヘッドレストステー19Sの後方に配置される構成と比較して、クランク状を成すヘッドレストステー19Sに対する後方の広いスペースに配置される。これにより、モジュールケース34を含むヘッドレスト18を全体としてコンパクトに構成しつつ、該ヘッドレスト18内に多方位エアバッグ30を収納することができる。さらに、折り畳み状態の多方位エアバッグ30が着座者Dの頭部Hの近くに配置されることとなるため、該多方位エアバッグ30を短時間で着座者Dの頭部Hを取り囲む態様で膨張展開させることができる。
【0116】
(張力構造体の変形例)
上記した第1の実施形態では、張力構造体64が横臥した「Y」字状を成す例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8に示されるように、張力構造体64に代えて、横臥した「T」字状を成す張力構造体70を備えた構成としても良い。
【0117】
具体的には、張力構造体70は、接続点66FUと接続点66FLとを結ぶ上下ストラップ70Vと、上下ストラップ70Vの上下方向中間部と接続点66Rとを繋ぐ前後ストラップ70Hとを含んで構成されている。上下ストラップ70Vと前後ストラップ70Hの前端との接続点72は、多方位エアバッグ30に対しては非接続(非固定)点とされている。
【0118】
本変形例に係る張力構造体70を備えた構成によっても、第1の実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。なお、本変形例において、上下ストラップ70Vにおける接続点72と接続点66FUとを繋ぐ部分を本発明における前上ストラップ、上下ストラップ70Vにおける接続点72と接続点66FLとを繋ぐ部分を本発明における前下ストラップと捉えることができる。また、本変形例において、前後ストラップ70Hを本発明における後ストラップと捉えることができる。
【0119】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について、
図9に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と基本的に同様の構成、作用については、第1の実施形態と同一の符号を付与し、その説明及び図示を省略する場合がある。
【0120】
図9には、第2の実施形態に係る乗員保護装置80が、
図7(B)に対応する模式的な側面図にて示されている。この図に示されるように、乗員保護装置80を構成する多方位エアバッグ装置20は、張力構造体64に代えて、張力構造体82を備えている。
【0121】
張力構造体82は、接続点66FUと接続点66Rとを結ぶストラップ82Sと、接続点66FLで前ダクト35Fに接続されストラップ82Sの中間部が通される通し部としてのループタブ82Tとを主要部として構成されている。なお、本実施形態における接続点66Rは、後ダクト35Rの下端近傍に設定されている。
【0122】
張力構造体82は、多方位エアバッグ30と共に折り畳まれた(外ロール折りされた)状態でヘッドレスト18内に収納されている。そして、張力構造体82は、多方位エアバッグ30の膨張展開過程で、前ダクト35Fの下方への膨張展開に伴ってストラップ82Sの中間部がループタブ82Tにより下方に移動されて屈曲形状(側面視で横臥した「L」字状)とされるようになっている。これにより張力構造体82は、接続点66FL、66R間で前後方向の張力が負荷され、該張力によって前ダクト35Fを後方に引っ張る構成とされている。
【0123】
この引張作用について、第1の実施形態と異なる部分を主に補足する。多方位エアバッグ30の膨張展開の初期には、前ダクト35F(の一部)はロール折り部分30Rとして展開されていないため、張力構造体82のストラップ82Sは、側面視で略直線状(又は弛んだ状態)に展開される。そして、前ダクト35Fが上ダクト35Uの前端から下向きに膨張展開されると、これに伴って、張力構造体82は、ストラップ82Sの中間部がループタブ82Tによって下方に移動される。このため、ストラップ82Sが直線状から「L」字状に屈曲されて前後長(接続点66Rと接続点66FLとの前後距離)が前ダクト35Fの膨張展開に伴って短くなり、該張力構造体82によって前ダクト35Fの下部が後方に引っ張られる。
【0124】
本実施形態に係る張力構造体82は、第1の実施形態に係る張力構造体64、70と比較して、前膨張部40の後方への移動量を大きくすることができる。この点につき、以下に説明する。なお、多方位エアバッグ30の膨張展開の初期には、張力構造体64、70、80は傾斜した直線状を成すため、以下の説明は正確ではないが、理解を容易にするため単純化して説明する。例えば、第1の実施形態の変形例に係る張力構造体70では、接続点66FU、66FLを重ねた状態と、
図8に示す状態とで、上下ストラップ70V(接続点66FU、66FL間の距離)の略半分の長さ分だけ前後長が短くなる。なお、張力構造体64における前後長が短くなる量は張力構造体70よりも小さい。これに対して、張力構造体82では、概ね接続点66FU、66FL間の距離だけストラップ82Sの前後長が短くなる。
【0125】
したがって、上記の通り、張力構造体82は、張力構造体64、70と比較して、前膨張部40の後方への移動量を大きくすることができる。換言すれば、張力構造体82は、上下の接続点66FU、66FLで前ダクト35Fに固定されている構成と比較して、前膨張部40を後方に大きく移動させることができる。なお、第1の実施形態及び変形例に係る張力構造体64、70は、張力構造体82と比較して製造が容易である。張力構造体64、70は、要求される前膨張部40の引張量等に応じて適宜選択されれば良い。
【0126】
この作用効果に加え、第2の実施形態に係る乗員保護装置80は、第1の実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。なお、第2の実施形態では、ループタブ82Tが単独で通し部を構成した例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、2箇所が前ダクト35F(第2バッグ)の下部に接続された帯状部材と該前ダクト35Fの基布とで通し部を構成しても良い。
【0127】
(その他の変形例)
なお、上記した各実施形態では、乗員保護装置10がサイドエアバッグ装置22を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、乗員保護装置10がサイドエアバッグ装置22を備えない構成としても良い。また、乗員保護装置10がサイドエアバッグ装置を備える構成において、サイドエアバッグ装置が車両用シート12に設けられる構成には限定されない。例えば、サイドドア等に設けられたサイドエアバッグ装置を備えて乗員保護装置10が構成されても良い。さらに、上記した各実施形態では、乗員保護装置10が車幅方向外側のサイドエアバッグ装置22を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、乗員保護装置10は、車幅方向外側のサイドエアバッグ装置22に代えて又は加えて、車幅方向中央側に配置されるサイドエアバッグ装置を備える構成としても良い。
【0128】
また、上記した各実施形態では、乗員保護装置10がシートベルト装置24を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、乗員保護装置10がシートベルト装置24を備えない構成としても良い。また、乗員保護装置10がシートベルト装置を備える構成において、シートベルト装置が車両用シート12に設けられる構成には限定されない。例えば、リトラクタやアンカ、バックル等が車体側に設けられた構成としても良い。また、乗員保護装置10がシートベルト装置を備える構成において、該シートベルト装置は3点式に限られることはなく、4点式や2点式のシートベルト装置であっても良い。
【0129】
さらに、上記した実施形態では、車両用シート12がシート幅方向を車幅方向に一致させて配置された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両用シート12は車体に対し斜めに配置されても良く、車体に対する向きが変更(上下軸回りに回転)可能である構成としても良い。このような構成において、着座者Dの頭部Hを取り囲んで膨張展開される多方位エアバッグ30を備えた構成は、該頭部Hの良好な保護に寄与し得る。また、膨張展開前の多方位エアバッグ30等は、ヘッドレスト18に収納されているため、車室内面や車室内構成品と干渉し難く、車両用シート12の車体に対する向きの変更動作を阻害することが抑制又は防止される。
【0130】
またさらに、上記した各実施形態では、多方位エアバッグ装置20がヘッドレスト18に収納された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、多方位エアバッグ装置がシートバック16に収納された構成としても良く、バケットタイプのシートのようにヘッドレスト一体型のシートバックに収納された構成としても良い。さらに、多方位エアバッグ装置20は、シートバック16とヘッドレスト18とに跨って設けられても良い。すなわち、本発明は、ヘッドレストとシートバックとが明確に区別される構成に適用されるのには限られない。また例えばシートバック16がバックボードを備える構成では、バックボードとシートバック本体との間に多方位エアバッグ装置20を収納する構成としても良い。また、多方位エアバッグ装置20をヘッドレスト内に設ける構成においては、ヘッドレストの機能を果たせる形態であれば足り、例えばヘッドレストのクッション材と表皮材との間に多方位エアバッグ装置20を設けても良い。
【0131】
また、上記した各実施形態では、多方位エアバッグ30が正面視におけるモジュールケース34とヘッドレスト本体19の上部及び左右両側部との間を通って膨張展開される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、多方位エアバッグ30、74がヘッドレスト本体19の上方のみから展開される構成としても良い。
【0132】
さらに、上記した各実施形態では、多方位エアバッグ30が上展開部48を含んで構成された例を示したが、本発明はこれに限定されない。多方位エアバッグは、少なくとも上ダクトを含むフレームダクト、前膨張部及び左右の横膨張部を含んで構成されれば足りる。したがって、本発明は、前ダクト35Fを有する構成に限られず、例えば、上ダクト35Uの前端から第2バッグとしての前膨張部40にガスが供給される構成としても良い。この構成では、張力構造体64、70、82等の前部が第2バッグとしての前膨張部40に接続される構成とすることができる。また、フレームダクトは、フレームダクト35のように左右一対設けられる構成には限られず、例えば、頭部Hの上方を通過するように膨張展開される一つの膨張展開部として構成としても良い。
【0133】
またさらに、上記した実施形態では、前膨張部40の下膨張部40Lが着座者Dの肩部S及び胸部Bの双方に対する前方で膨張展開される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、下膨張部40Lが、肩部S及び胸部Bの何れか一方に対する前方で膨張展開される構成であっても良い。
【0134】
さらに、上記した各実施形態では、多方位エアバッグ30が外ロール折りされた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、多方位エアバッグ30が蛇腹折りなどの他の折り畳み態様でヘッドレスト18等に収納されても良い。
【0135】
またさらに、上記した各実施形態では、多方位エアバッグ装置20が展開誘導布58を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、展開誘導布58を備えない構成としても良い。また例えば、展開誘導布58を設ける構成に代えて、車室天井の天井材を低摩擦材にて構成したり、車室天井に低摩擦処理を施したりしても良い。
【0136】
また、上記した各実施形態では、張力構造体が多方位エアバッグ30のシート幅方向の両外側に設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、張力構造体を横展開部38に対する内側に配置しても良い。
【0137】
さらに、上記した各実施形態では、張力構造体の一端である後端が多方位エアバッグ30の後ダクト35Rに接続された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、張力構造体の一端である後端が多方位エアバッグ30の他の部分に接続された構成としも良く、ヘッドレスト18(ヘッドレスト本体19、モジュールケース34)又はシートバック16に接続された構成としも良い。
【0138】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で各種変更して実施可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施形態、変形例の構成(要素)を適宜組み合わせ又は組み替えても良い。